説明

電波発射源推定方向表示装置及び電波発射源推定方向表示方法

【課題】電波発射源による電波を受信した際に、地図上における自己の位置及び自己の位置に対する電波発射源の推定方向を容易に認識することができる電波発射源推定方向表示装置を提供する。
【解決手段】電波発射源からの電波を受信するアンテナ部と、到来方向を推定する到来方向推定処理部7と、アンテナ部の位置情報を取得するGPS受信機10と、アンテナ部の方位情報を取得する方位センサ11と、GPS受信機10により取得された位置情報に基づいてアンテナ部周辺の地図情報を取得するとともに、到来方向推定処理部7により推定された到来方向と方位センサにより取得された方位情報とに基づいてアンテナ部で受信した電波の到来方位を算出し、算出した到来方位とアンテナ部の位置とを取得した地図情報に重ね合わせて出力する地図表示処理部12と、アンテナ部で受信した電波の到来方位及びアンテナ部の位置を示した地図を表示する表示部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電波発射源の方向を推定し、推定した方向を地図上に表示する電波発射源推定方向表示装置及び電波発射源推定方向表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波の発射源を視覚的に把握することができる電波発射源可視化装置は、違法電波の発射源の監視や、機器が発生する不要輻射の解析、さらには電波発信器を携帯した被探索者の探索等、様々な場面において利用されている。
【0003】
一般的な電波発射源可視化装置は、例えば複数のアンテナ素子を平面上に配列したアレーアンテナで電波を受信し、その受信した電波を用いた電波ホログラフィ法等に基づいて電波到来方向を推定する。この場合における受信電波の推定到来方向は、アレーアンテナの中心を原点とした方位角および仰角で表される。
【0004】
また、電波発射源可視化装置は、カメラを備えており、当該カメラによる撮影画像と電波ホログラフィ等の電波到来方向の推定結果とを重ねて表示し、電波が発生している場所を認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−128667号公報
【特許文献2】特開2007−248422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電源発射源可視化装置は、上述したようにアレーアンテナの中心を原点とした方位角を認識することができるものの、絶対的な到来方位を知ることはできず、地図上において電波発射源の推定方向を特定することは困難であるという問題がある。
【0007】
1例として、複数の探索者が電波発信器を携帯した被探索者の探索を行う場合を考える。例えば、電波発射源可視化装置によるカメラの撮影画像中に建築物があり、その建築物から電波が発射されていることを認識した探索者は、他の探索者にもその建築物の内部を探索するように指示することができる。しかしながら、特に目印の無い方向から電波が発射されている場合には、探索者は、自己の位置に対する電波発射源の方角を認識し、自ら探索を行うことはできるものの、他の探索者に対して電波発射源が存在すると考えられる地点を伝えるのは困難である。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、電波発射源による電波を受信した際に、地図上における自己の位置及び自己の位置に対する電波発射源の推定方向を容易に認識することができる電波発射源推定方向表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の電波発射源推定方向表示装置は、上記課題を解決するために、電波発射源からの電波を受信するアンテナ部と、前記アンテナ部で受信した電波の到来方向を推定する推定処理部と、前記アンテナ部の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記アンテナ部の方位情報を取得する方位センサと、前記位置情報取得部により取得された位置情報に基づいて前記アンテナ部周辺の地図情報を取得するとともに、前記推定処理部により推定された到来方向と前記方位センサにより取得された方位情報とに基づいて前記アンテナ部で受信した電波の到来方位を算出し、算出した到来方位と前記アンテナ部の位置とを取得した地図情報に重ね合わせて出力する地図表示処理部と、前記地図表示処理部により出力された地図情報に基づいて、前記アンテナ部で受信した電波の到来方位及び前記アンテナ部の位置を示した地図を表示する表示部とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の形態の電波発射源推定方向表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の形態の電波発射源推定方向表示装置の表示部による推定方向表示のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電波発射源推定方向表示装置及び電波発射源推定方向表示方法の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1の電波発射源推定方向表示装置の構成を示すブロック図である。本実施例の電波発射源可視化装置は、アレーアンテナ2、アンテナ切替部3、リファレンスアンテナ4、周波数変換部5、A/D変換部6、到来方向推定処理部7、カメラ部8、画像合成処理部9、GPS受信機10、方位センサ11、地図表示処理部12、及び表示部13により構成される。
【0013】
アレーアンテナ2は、平面上に格子状に配置された複数のアンテナ素子1−1〜1−nにより構成され、図示されない電波発射源からの電波を受信する。
【0014】
アンテナ切替部3は、アレーアンテナ2において、順次受信するアンテナ素子1−1〜1−nを切り替える。
【0015】
リファレンスアンテナ4及びアレーアンテナ2は、共通の周波数帯の到来波を捕捉可能な受信アンテナである。また、アレーアンテナ2の形状、種類、アンテナ素子の総数、およびアンテナ素子を配置するための間隔等は、測定対象や測定目的等により任意である。さらに、アレー面の反対側から入射する電波の感度を抑えるために、アレーアンテナ2を配置する平面を反射板とすることも可能である。
【0016】
なお、アンテナ素子1−1〜1−nのいずれか一つをリファレンスアンテナ4として利用することも可能である。この場合における電波発射源可視化装置は、リファレンスアンテナ4を別に取り付ける機構的な構造が不要になるという利点を有する。
【0017】
また、アレーアンテナ2及びリファレンスアンテナ4は、本発明のアンテナ部に対応するということができ、電波発射源からの電波を受信する。
【0018】
周波数変換部5は、リファレンスアンテナ4及びアレーアンテナ2で受信した電波を増幅するとともに、サンプリング可能な中間周波数帯域に周波数変換する。
【0019】
A/D変換部6は、周波数変換部5により周波数変換されたアナログ信号をディジタル信号に変換する。
【0020】
到来方向推定処理部7は、本発明の推定処理部に対応し、アンテナ部で受信した電波の到来方向を推定する。具体的には、到来方向推定処理部7は、リファレンスアンテナ4の受信電波と選択されたアンテナ素子1−1〜1−nの受信電波間の位相差を検出し、電波ホログラフィー法による受信電波の到来方向推定処理を行う。この到来方向推定処理部7における電波ホログラフィー法による到来方向の推定処理は、従来から知られている技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0021】
なお、到来方向推定処理部7により推定された発射電波の到来方向は、アレーアンテナ2の向きを基準とする相対的な方位角及び仰角を示すものであり、絶対的な方位等を示すものではない。
【0022】
カメラ部8は、本発明の撮影部に対応し、アンテナ部(アレーアンテナ2)の近傍に設置され、アンテナ部(アレーアンテナ2)の向きに連動して風景を撮影する。なお、カメラ部8をアレーアンテナ2の位相中心から離れた場所に設置する場合は、視差による補正を行うことにより、正確に合成画像を得ることができる。
【0023】
画像合成処理部9は、本発明の画像処理部に対応し、アンテナ部で受信した電波を画像処理し、カメラ部8により撮影された風景と合成した合成画像を生成する。具体的には、画像合成処理部9は、到来方向推定処理部7による到来方向推定結果を電波強度に応じて画像化したものとカメラ部8により撮影された画像とを重ね合わせて合成画像を作成する。
【0024】
GPS受信機10は、本発明の位置情報取得部に対応し、アンテナ部の位置情報を取得する。具体的には、GPS受信機10は、GPS(Global Positioning System)衛星から送られてくる測位用の電波を受信し、アレーアンテナ2の緯度・経度等の位置情報を取得する。
【0025】
方位センサ11は、アンテナ部の方位情報を取得する。具体的には、方位センサ11は、例えば磁気方位センサであり、地磁気を利用してアレーアンテナ2が現在向いている絶対的な方位の情報を取得する。
【0026】
地図表示処理部12は、GPS受信機10により取得された位置情報に基づいてアンテナ部(アレーアンテナ2)周辺の地図情報を取得する。その際に、地図表示処理部12は、位置情報に基づいて、例えば自己が有するデータベースからアレーアンテナ2の現在位置周辺の地図情報を取り出してもよいし、インターネット等のネットワークを介して地図情報を取得してもよい。
【0027】
さらに、地図表示処理部12は、到来方向推定処理部7により推定された到来方向と方位センサ11により取得された方位情報とに基づいて、アンテナ部で受信した電波の到来方位を算出し、算出した到来方位とアンテナ部の位置とを取得した地図情報に重ね合わせて出力する。
【0028】
すなわち、到来方向推定処理部7により推定された到来方向は、アレーアンテナ2の向きを基準とした相対的な方向(アレーアンテナ2の向きに対して何度方向であるかといった情報)であるため、このままでは地図上に表示することができない。そこで、地図表示処理部12は、アレーアンテナ2の向きを基準とした相対的な推定到来方向と、方位センサ11により取得された絶対的な方位の情報とに基づいて、電波の絶対的な到来方位を算出し、電波の到来方位を地図上に表示することを可能にする。
【0029】
表示部13は、例えばディスプレイ等であり、地図表示処理部12により出力された地図情報に基づいて、アンテナ部で受信した電波の到来方位及びアンテナ部の位置を示した地図を表示する。さらに、表示部13は、画像合成処理部9により生成された合成画像を表示する。
【0030】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。ここでは、複数の探索者が電波発信器を携帯した被探索者の探索を行う場合を考える。各探索者は、本実施例の電波発射源推定方向表示装置を携帯しているが、必ずしも全ての構成を各探索者が携帯する必要は無い。例えば、電波発射源推定方向表示装置の表示部13にあたる構成のみが離れた位置に設けられ、監視者は、アンテナ部やGPS受信機10、方位センサ11等を携帯した各探索者から送られてくる情報を表示部13を介して監視する構成としてもよい。あるいは、各探索者は、表示部13の役割を担うノートパソコン等を携帯していてもよい。
【0031】
各探索者が携帯するアレーアンテナ2は、図示されない電波発射源からの電波を受信する(本発明の受信ステップに対応)。その際に、アンテナ切替部3は、アレーアンテナ2において、順次受信するアンテナ素子1−1〜1−nを切り替える。また、リファレンスアンテナ4及びアレーアンテナ2は、共通の周波数帯の到来波を捕捉する。
【0032】
周波数変換部5は、リファレンスアンテナ4及びアレーアンテナ2で受信した電波を増幅するとともに、サンプリング可能な中間周波数帯域に周波数変換する。
【0033】
A/D変換部6は、周波数変換部5により周波数変換されたアナログ信号をディジタル信号に変換する。
【0034】
到来方向推定処理部7は、アンテナ部で受信した電波の到来方向を推定する(本発明の推定処理ステップに対応)。具体的には、到来方向推定処理部7は、リファレンスアンテナ4の受信電波と選択されたアンテナ素子1−1〜1−nの受信電波間の位相差を検出し、電波ホログラフィー法による受信電波の到来方向推定処理を行う。
【0035】
また、各探索者が携帯しているカメラ部8は、アンテナ部(アレーアンテナ2)の近傍に設置され、アンテナ部(アレーアンテナ2)の向きに連動して風景を撮影する。このカメラ部8による撮影は、探索者のボタン操作等によって行われてもよいし、定期的に行われてもよいし、アンテナ部が発射源からの電波を受信したときにのみ行われてもよい。
【0036】
画像合成処理部9は、アンテナ部で受信した電波を画像処理し、カメラ部8により撮影された風景と合成した合成画像を生成する。
【0037】
GPS受信機10は、アンテナ部の位置情報を取得する(本発明の位置情報取得ステップに対応)。アレーアンテナ2を携帯する探索者は、常に移動を行うことが多いため、GPS受信機10により取得される位置情報も常に変化することになる。
【0038】
方位センサ11は、アンテナ部の方位情報を取得する(本発明の方位情報取得ステップに対応)。アレーアンテナ2を携帯する探索者は、常に向きを変えることが多いため、位置情報と同様に、方位センサ11により取得される方位情報も常に変化することになる。
【0039】
地図表示処理部12は、GPS受信機10により取得された位置情報に基づいてアンテナ部(アレーアンテナ2)周辺の地図情報を取得するとともに、到来方向推定処理部7により推定された到来方向と方位センサ11により取得された方位情報とに基づいて、アンテナ部で受信した電波の到来方位を算出し、算出した到来方位とアンテナ部の位置とを取得した地図情報に重ね合わせて出力する(本発明の地図表示処理ステップに対応)。
【0040】
最後に、表示部13は、地図表示処理部12により出力された地図情報に基づいて、アンテナ部で受信した電波の到来方位及びアンテナ部の位置を示した地図を表示する(本発明の表示ステップに対応)。さらに、表示部13は、画像合成処理部9により生成された合成画像を表示する。
【0041】
図2は、本発明の実施例1の電波発射源推定方向表示装置の表示部13による推定方向表示のイメージを示す図である。図2に示す画面表示の左側に描かれた「可視化画面」は、表示部13が画像合成処理部9により生成された合成画像を表示したものであり、カメラ部8により撮影された風景中に受信電波の推定到来方向を電波強度に応じて可視化した画像を重ね合わせて表示している。例えば探索者が表示部13をノートPCとして携帯している場合には、探索者は、左の「可視化画面」を見ることにより、電波発射源が存在すると思われる方向を認識することができる。
【0042】
また、図2に示す画面表示の右側に描かれた「地図画面」は、表示部13が地図表示処理部12により出力された地図情報に基づいて、アンテナ部で受信した電波の到来方位及びアンテナ部の位置を示した地図を表示したものである。例えば探索者が表示部13をノートPCとして携帯している場合には、探索者は、右の「地図画面」を見ることにより、電波発射源が存在すると思われる絶対的な方位を地図上で具体的に把握することができる。また、探索者は、右の「地図画面」を見ることにより、他の探索者に電波発射源が存在する可能性のある場所を容易に知らせることができる。
【0043】
例えば、探索者は、自己の位置を緯度・経度で知らせるとともに、その位置を基準とした電波発射源の絶対的な方位(北方向に対して何度方向に電波発射源が存在するといった内容)を他の探索者に知らせてもよいし、ネットワーク等を介して「地図画面」の情報を直接他の探索者に送ってもよい。
【0044】
なお、表示部13は、必ずしも「可視化画面」と「地図画面」とを同一画面上に一緒に表示する必要はなく、ユーザの操作等に応じて画面を切り替える構成でもよい。
【0045】
図2に示す「可視化画面」は、従来の電波発射源可視化装置においても可能な表示画面であるため、本実施例の電波発射源推定方向表示装置における重要な点は、「地図画面」を表示する点である。したがって、本実施例の電波発射源推定方向表示装置は、「地図画面」のみを表示するものでもよい。その場合には、カメラ部8と画像合成処理部9とは必須の構成ではない。
【0046】
しかしながら、「可視化画面」と「地図画面」とを表示部13に表示させることにより、探索者は、より的確に電波発射源の存在する方向を把握することができる。例えば、図2に示す「可視化画面」は、実際に探索者が見ている風景である。この「可視化画面」には建物が写っており、探索者は、電波発射源がその建物の左手側から電波を発射しているらしいことがわかる。さらに、探索者は、建物の位置も表示された「地図画面」を確認することにより、自己の位置及び自己の向いている方位を確認するとともに、電波発射源の具体的な方位角を把握することができる。
【0047】
なお、表示部13による表示方法は、上述した方法に限定されるものではなく、種々の変型が可能である。例えば、表示部13は、「可視化画面」における電波到来方向の表示を電波強度に応じた色で表示する以外にも、色以外の数字、記号、マーク等で表示してもよい。さらに、表示部13は、「地図画面」において建物以外の様々な情報を記載した地図を使用してもよい。
【0048】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る電波発射源推定方向表示装置によれば、電波発射源による電波を受信した際に、地図上における自己の位置及び自己の位置に対する電波発射源の推定方向を容易に認識することができる。
【0049】
すなわち、探索者等のユーザは、受信した電波の絶対的な到来方位を地図上で容易に把握することができ、特に目印の無い方向から電波が発射されている場合においても、第三者に対して電波発射源が存在すると考えられる地点を容易に伝えることができる。
【0050】
なお、変形例として、本実施例の電波発射源推定方向表示装置は、アンテナ部の姿勢情報を取得する姿勢センサを備えていてもよい。この姿勢センサは、到来方向推定処理部7に接続されており、取得したアレーアンテナ2の姿勢情報を到来方向推定処理部7に出力する。
【0051】
到来方向推定処理部7は、アンテナ部で受信した電波の到来方向を推定する際に、姿勢センサにより取得した姿勢情報を使用して到来方向を推定する。到来方向推定処理部7は、姿勢センサを備えない場合においても電波の到来方向としてアレーアンテナ2に対する相対的な仰角を推定することができたが、姿勢センサを備えることにより、アレーアンテナ2の姿勢情報を得ることができるため、電波の到来方向を推定する際に地面に対する絶対的な仰角を求めることができ、より正確な到来方向の推定ができる。
【0052】
アレーアンテナ2は、それを携帯するユーザの姿勢によって様々な角度の傾斜を有することが考えられる。そのため、アレーアンテナ2の姿勢情報を姿勢センサで得ることは、電波の到来方向を正確に推定する上で大きな貢献が期待できる。
【0053】
また、この姿勢センサは、GPS受信機10に接続され、取得したアレーアンテナ2の姿勢情報をGPS受信機10に出力する構成でもよい。
【0054】
この場合に、GPS受信機10は、姿勢センサにより取得した姿勢情報に基づいて、測位衛星を選択し、アンテナ部の位置情報を取得する。一般的に、低仰角の測位衛星の情報を用いて測位を行うと、マルチパスによる位置精度への影響が大きいので、仰角マスク等を使用して精度の低下を防止するGPS受信機が存在する。本実施例のように、GPS受信機10を携帯したユーザが移動する場合を想定すると、GPS受信機10は、ユーザの姿勢によって様々な角度の傾斜を持つと考えられる。そのため、GPS受信機10が有する仰角マスク機能は、その傾斜角によっては本来捕捉できる衛星を低仰角と誤認し、捕捉可能な衛星数が減少する可能性がある。
【0055】
しかしながら、上述したように姿勢センサを備えている場合には、GPS受信機10は、アレーアンテナ2の姿勢情報を得ることができるため、測位衛星が低仰角であるか否かを正確に判別し、適切に測位衛星を選択することができるので、より正確にアレーアンテナ2の位置情報を得ることができる。
【0056】
アレーアンテナ2の正確な位置情報を得ることは、本実施例の電波発射源推定方向表示装置には特に有益である。図2で示すような「地図画面」を表示部13に表示する場合には、基準位置となるアレーアンテナ2の位置が不正確に表示されると、それに伴って、電波の推定到来方向も誤って地図上に表示されるからである。
【0057】
本実施例の電波発射源推定方向表示装置は、姿勢センサを備えることにより、GPS受信機10において取得する位置情報がより正確なものとなり、それに伴ってより正確な電波発射源の推定方向表示を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1−1〜1−n アンテナ素子
2 アレーアンテナ
3 アンテナ切替部
4 リファレンスアンテナ
5 周波数変換部
6 A/D変換部
7 到来方向推定処理部
8 カメラ部
9 画像合成処理部
10 GPS受信機
11 方位センサ
12 地図表示処理部
13 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波発射源からの電波を受信するアンテナ部と、
前記アンテナ部で受信した電波の到来方向を推定する推定処理部と、
前記アンテナ部の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記アンテナ部の方位情報を取得する方位センサと、
前記位置情報取得部により取得された位置情報に基づいて前記アンテナ部周辺の地図情報を取得するとともに、前記推定処理部により推定された到来方向と前記方位センサにより取得された方位情報とに基づいて前記アンテナ部で受信した電波の到来方位を算出し、算出した到来方位と前記アンテナ部の位置とを取得した地図情報に重ね合わせて出力する地図表示処理部と、
前記地図表示処理部により出力された地図情報に基づいて、前記アンテナ部で受信した電波の到来方位及び前記アンテナ部の位置を示した地図を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする電波発射源推定方向表示装置。
【請求項2】
前記アンテナ部の近傍に設置され、前記アンテナ部の向きに連動して風景を撮影する撮影部と、
前記アンテナ部で受信した電波を画像処理し、前記撮影部により撮影された風景と合成した合成画像を生成する画像処理部とを備え、
前記表示部は、前記画像処理部により生成された合成画像を表示することを特徴とする請求項1記載の電波発射源推定方向表示装置。
【請求項3】
前記アンテナ部の姿勢情報を取得する姿勢センサを備え、
前記推定処理部は、前記アンテナ部で受信した電波の到来方向を推定する際に、前記姿勢センサにより取得した姿勢情報を使用して到来方向を推定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電波発射源推定方向表示装置。
【請求項4】
前記アンテナ部の姿勢情報を取得する姿勢センサを備え、
前記位置情報取得部は、前記姿勢センサにより取得した姿勢情報に基づいて測位衛星を選択し、前記アンテナ部の位置情報を取得することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電波発射源推定方向表示装置。
【請求項5】
電波発射源からの電波をアンテナ部で受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した電波の到来方向を推定する推定処理ステップと、
前記アンテナ部の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記アンテナ部の方位情報を取得する方位情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップにより取得された位置情報に基づいて前記アンテナ部周辺の地図情報を取得するとともに、前記推定処理ステップにより推定された到来方向と前記方位情報取得ステップにより取得された方位情報とに基づいて前記アンテナ部で受信した電波の到来方位を算出し、算出した到来方位と前記アンテナ部の位置とを取得した地図情報に重ね合わせて出力する地図表示処理ステップと、
前記地図表示処理ステップにより出力された地図情報に基づいて、前記受信ステップで受信した電波の到来方位及び前記アンテナ部の位置を示した地図を表示する表示ステップと、
を備えることを特徴とする電波発射源推定方向表示方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−47473(P2012−47473A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187159(P2010−187159)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】