説明

電波送受体の検出装置、検出システム及び検出方法

【課題】特定の空間の中に置き忘れられた鍵の未検出を防止し、特定の空間の外にある鍵の誤検出を防止する。
【解決手段】検出装置10は、第一アンテナ11が特定の空間2内に向けて送信する第一検出信号SG1と第二検出信号SG2、及び第二アンテナ12が送信する妨害信号SGDを制御する制御部14と、電波送受体20が、受信した第一検出信号SG1及び第二検出信号SG2に対して送信する応答信号SGRを受信する第三アンテナ13が受信した応答信号に基づいて電波送受体の存在位置を判定する判定部15とを備え、制御部14は、特定の空間2が閉空間となったことを検出した場合に、第二検出信号SG2を打ち消す妨害信号SGDとを同時に送信するように制御し、判定部15は、応答信号SGRを第三アンテナ13が受信した場合に、電波送受体20が特定の空間2内に存在すると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波送受体の検出装置、検出システム及び検出方法に関し、特に、特定の空間内に電波送受体を置いたまま施錠してしまう、いわゆる閉じ込みの防止のため、電波送受体の存在を検出する検出装置、検出システム及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両、建物、ロッカーなどにおいて、施錠の確実性や利便性を向上させるために、オートロック機能が多く採用されている。特に、車両のトランクに代表されるように、扉などを閉めると同時に自動的に施錠される機構が多く採用されている。一方、解錠に必要な鍵を中に置き忘れると、解錠のためにスペアキーや専門家などが必要となり、鍵の閉じ込みは、施錠の確実性と利便性の裏返しとして常に問題として付き纏っている。
【0003】
近年では、車両のキーレスエントリーシステムに代表されるように、施解錠の対象物に設けられた施解錠制御装置と、鍵に設けられた回路装置との間で、電波の送受信を行い、対象物の施解錠を行うことが知られている。このようなシステムの場合、上述した鍵の閉じ込み問題に対し、施解錠制御装置から鍵に対して信号を送信し、鍵からの返信信号を要求することにより、鍵の探索が行われることが多い。そして、鍵の探索によって、対象物の空間内に鍵が置き忘れられていると検出された場合には、対象物の施錠を行わない等の処理が行われることが多い。その際、鍵が置き忘れられているにもかかわらず鍵を検出しないという事態を防止しなければならない。同時に、鍵の置き忘れがないにもかかわらず鍵を誤って検出してしまうという事態も防止しなければならない。即ち、鍵の未検出と誤検出とを防止するために、鍵の検出の精度を向上させることが求められる。
【0004】
このような問題に対応し、例えば、車両内の鍵(携帯機)の閉じ込みや検出精度の向上に対して提案を行っている先行技術として、特許文献1と2などがある。
特許文献1では、車両に固有の認証情報であるIDコードを記録した携帯機と、IDコードをもとに携帯機がトランク内に存在するかどうかを問い合わせるトランク内無線電波を送信するトランク内発信機と、トランクが施錠状態であるか解錠状態であるかを検知・識別するトランク制御部と、トランクの施解錠を制御するスマート制御部とを備えたトランクの施解錠制御装置が開示されている。そのスマート制御部は、トランクが解錠状態から施錠状態に変化することに応じて、トランク解錠時に携帯機が車室内に存在したかどうかの履歴を確かめる車室側処理と、トランク内探索処理を実行する。そして、車室側処理で携帯機が車室内に存在せず、且つトランク内探索処理で携帯機がトランク内に閉じ込められていると判断することを条件に、閉じ込みをユーザに知らせるための警報を鳴らすなどの閉じ込み時の電気的処理を実行することが開示されている。
【0005】
特許文献2に開示の技術は、車両の固有の識別コードを割り当てられた無線端末を備えた携帯機が、車両の内部に存在するのか又は外部に存在するのかを、制御装置が正確に判定するためのものである。特許文献2では、その携帯機と送信手段である車外アンテナの通信可能範囲を限定するために、車外の送信手段である車外アンテナから正規の認識要求無線信号を送信すると同時に、車内の送信手段である車内アンテナから認証要求無線信号を打ち消すための妨害波を送信することが開示されている。その妨害波を送信することにより、車両の内部での認証要求無線信号が打ち消され、車両内部での認証通信を成立させず、車両外部の認証通信のみを成立させる車両用遠隔操作装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−77408号公報
【特許文献2】特開2006−233533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の先行技術においては、鍵として固有の識別コードと通信機能を備えた携帯機を前提としつつ、携帯機の閉じ込みの判定や、携帯機が車両内部に存在するか否かの判定精度の向上を行っていた。しかしながら、施錠することにより保護する領域や空間(例えば、車両の中、建物・部屋の中、ロッカーの中)における携帯機の検出において、その領域や空間に携帯機があるにもかかわらず検出できなかったり、その領域や空間に携帯機がないにもかかわらず誤って検出してしまったりすることがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、施錠することにより保護する領域や空間(以下、「特定の空間」と言う。)の中に置き忘れられた、鍵としての固有の識別コードと通信機能を備えた携帯機の未検出を防止する検出システム、検出装置及び検出方法を提供することである。かつ、特定の空間の外にある鍵が特定の空間の中に存在すると誤検出してしまうことを防止する検出システム、検出装置及び検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、特定の空間内における電波送受体の存在を検出する検出装置であって、第一アンテナと、第二アンテナと、その第一アンテナがその特定の空間内に向けて送信する第一検出信号と第二検出信号、及びその第二アンテナが送信する妨害信号を制御する制御部と、その電波送受体が、その第一検出信号及びその第二検出信号を受信し、受信したその第一検出信号及びその第二検出信号に対して送信する応答信号を受信する第三アンテナと、その第三アンテナが受信したその応答信号に基づいてその電波送受体の存在位置を判定する判定部と、を備え、その制御部は、その特定の空間が閉空間となったことを検出した場合に、その第一検出信号の送信のタイミングと異なるタイミングで、その第二検出信号とその第二検出信号を打ち消すその妨害信号とを同時に送信するように制御し、その判定部は、その第一検出信号又はその第二検出信号のいずれかに対してその応答信号をその第三アンテナが受信した場合に、その電波送受体がその特定の空間内に存在すると判定する、検出装置が提供される。
これによれば、特定の空間の中に存在する電波送受体の未検出を防止し、かつ、特定の空間の外にある電波送受体の誤検出を防止する検出装置を提供できる。
【0010】
さらに、その制御部は、その第一検出信号及びその第二検出信号の強度を調節することにより、その第一アンテナが、その第一検出信号を第一信号強度で、その第二検出信号をその第一信号強度より強い強度の第二信号強度で、送信する、ように制御することを特徴としてもよい。
これによれば、検出信号の強度を調節することにより、検出信号が到達して電波送受体が受信できる範囲を細やかに設定できると共に、アンテナの個数や位置に依存することなく、コスト安く検出装置を提供できる。
【0011】
さらに、その制御部は、その第一信号強度を、その特定の空間の外側であって、その特定の空間から所定距離以上の空間に存在するその電波送受体が検知せず、その特定の空間の内側であって、その妨害信号を検知する空間に存在するその電波送受体が検知する、ように制御し、その第二信号強度を、その特定の空間の外側であって、その妨害信号を検知しない空間に存在するその電波送受体が検知せず、その特定の空間の内側であって、その第一検出信号を検知しない空間に存在するその電波送受体が検知する、ように制御することを特徴としてもよい。
これによれば、特定の空間の中にある電波送受体を確実に検出し、かつ、特定の空間の外にある電波送受体の検出を行わない検出装置を提供できる。
【0012】
さらに、その制御部は、さらにその妨害信号の強度を調節することにより、その妨害信号を、その特定の空間の内側であって、その第一検出信号を検知しない空間に存在するその電波送受体が検知しないように制御することを特徴としてもよい。
これによれば、妨害信号の強度を調節することにより、検出信号が到達して電波送受体が受信できる範囲を高い精度で設定できる検出装置を提供できる。
【0013】
さらに、その特定の空間は、車両のトランクの内部空間であり、その電波送受体は、そのトランクを開閉するための携帯機であり、その特定の空間が閉空間となることは、そのトランクを閉じることである、ことを特徴としてもよい。
これによれば、車両のトランクの内部空間の中にある携帯機の未検出を防止し、かつ、その空間の外にある携帯機の誤検出を防止する検出装置を提供できる。
【0014】
さらに、その第二アンテナは、その車両の車外である後部バンパーに取り付けられ、その第一アンテナは、その後部バンパーより前方に取り付けられ、その特定の空間内におけるその電波送受体がその第一検出信号を検知しない空間の位置は、そのトランクの左右両側隅かつ底近傍であり、その特定の空間内におけるその電波送受体がその妨害信号を検知する空間の位置は、その車両の車体とそのトランクの蓋との間の隙間のそのトランクの底からの高さと略同じ高さであり、そのトランクの左右両側隅ではない、ことを特徴としてもよい。
これによれば、車両のトランクの内部空間の中にある携帯機を確実に検出し、かつ、その空間の外にある携帯機の検出を行わない検出装置を提供できる。
【0015】
さらに、その第一アンテナとその第三アンテナは、一のアンテナからなることを特徴としてもよい。
これによれば、コスト安く検出装置を提供できる。
【0016】
別の観点によれば、上記課題を解決するために、特定の空間内における電波送受体の存在を検出する検出方法であって、その特定の空間が閉空間となったことを検出する第一ステップと、第一検出信号と第二検出信号を異なるタイミングで、かつ、その第二検出信号の一部を打ち消す妨害信号をその第二検出信号と同時に送信する第二ステップと、その第一検出信号又はその第二検出信号のいずれかに対して、固有の識別コードを有するその電波送受体が応答する応答信号を受信した場合に、その電波送受体がその特定の空間内に存在すると判定する第三ステップとを有する検出方法が提供される。また、その第二ステップにおいて、その第一検出信号を送信した後に、その第二検出信号を送信することを特徴としてもよい。また、その第二ステップにおいて、その第二検出信号を送信した後に、その第一検出信号を送信することを特徴としてもよい。
この構成によれば、特定の空間の中に存在する電波送受体の未検出を防止し、かつ、特定の空間の外にある電波送受体の誤検出を防止する検出方法を提供できる。
【0017】
さらに、その第一検出信号は、その特定の空間内の一の空間にあるその電波送受体は検知するが、他の空間にあるその電波送受体は検知しない信号であり、その第二検出信号は、その特定の空間内に存在するその電波送受体が検知する信号であり、その特定の空間内において、その電波送受体がその第一検出信号を検知しない空間とその妨害信号を検知する空間が重ならないように、かつ、その妨害信号を検知する空間とその第一検出信号を検知する空間が重なるように、送信する、ことを特徴としてもよい。
これによれば、特定の空間の中にある電波送受体を確実に検出し、かつ、特定の空間の外にある電波送受体の検出を行わない検出方法を提供できる。
【0018】
さらに、その第一検出信号を送信するステップとその第二検出信号を送信するステップの間に、その電波送受体がその特定の空間内に存在するか否かを判定する中間判定ステップをさらに有し、その中間判定ステップは、その電波送受体が応答する応答信号を受信した場合に、その電波送受体がその特定の空間内に存在すると判定すると共に、後続のステップを行わないことを特徴としてもよい。
これによれば、効率的で迅速な検出方法を提供できる。
【0019】
別の観点によれば、固有の識別コードを有する電波送受体と、特定の空間内におけるその電波送受体の存在を検出する検出装置とを備える検出システムであって、その検出装置は、第一アンテナと、第二アンテナと、その第一アンテナが送信する第一検出信号と第二検出信号、及びその第二アンテナが送信する妨害信号を制御する制御部と、その電波送受体が送信する応答信号を受信する第三アンテナと、その第三アンテナが受信したその応答信号に基づいてその電波送受体の存在位置を判定する判定部と、を備え、その電波送受体は、その第一検出信号及びその第二検出信号を受信する受信部と、受信したその第一検出信号及びその第二検出信号に対して応答信号を送信する送信部と、を備え、その制御部は、その特定の空間が閉空間となった場合に、その第一検出信号の送信のタイミングと異なるタイミングで、その第二検出信号とその第二検出信号を打ち消すその妨害信号とを同時に送信するように制御し、その判定部は、その第一検出信号又はその第二検出信号のいずれかに対してその応答信号をその第三アンテナが受信した場合に、その電波送受体がその特定の空間内に存在すると判定する検出システムが提供される。
これによれば、特定の空間の中に存在する電波送受体の未検出を防止し、かつ、特定の空間の外にある電波送受体の誤検出を防止する検出システムを提供できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、特定の空間の中に存在する、固有の識別コードと通信機能を備えた鍵の未検出を防止し、かつ、特定の空間の外にある鍵の誤検出を防止する検出システム、検出装置及び検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第一実施例の基本構成ブロック図。
【図2】本発明に係る第二実施例を示す、(A)車両の背面図、(B)トランク部分の平面図、(C)A−A断面における断面図(トランクリッドが閉まっている場合)。
【図2D】本発明に係る第二実施例における、特定の空間が閉空間になることを説明するためのトランク部分のみを示した説明図。
【図3】本発明に係る第二実施例における、第一検出信号による検知空間を示す、(A)トランク部分の平面図(その1)、(B)トランク部分の平面図(その2)、(C)B−B断面における断面図、(D)A−A断面における断面図。
【図4】本発明に係る第二実施例における、第二検出信号による検知空間を示す、(A)トランク部分の平面図(その1)、(B)トランク部分の平面図(その2)、(C)B−B断面における断面図、(D)A−A断面における断面図。
【図5】本発明に係る第二実施例における、妨害信号の受信空間を示す、(A)トランク部分の平面図、(B)A−A断面における断面図。
【図6】本発明に係る第二実施例における、第二検出信号による検知空間と妨害信号の受信空間を示す、(A)トランク部分の平面図、(B)A−A断面における断面図。
【図7】本発明に係る第二実施例におけるシステムブロック図。
【図8】本発明に係る第三実施例におけるフローチャート図(その1)。
【図9】本発明に係る第三実施例におけるフローチャート図(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態では、特定の空間が閉空間となった場合に、制御部は、電波送受体を検出するための一の検出信号と、他の検出信号及びこの他の検出信号を打ち消す妨害信号とを、異なるタイミングで送信する。そして、これらの検出信号のいずれかに対して、電波送受体から応答信号を制御部が受信した場合に、その電波送受体は特定の空間内に存在すると判定する。
【0023】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
(第一実施例)
図1は、本発明に係る第一実施例の検出システム1の基本構成を示す。検出システム1は、固有の識別コードを有する電波送受体20と、この電波送受体20の存在を検出するための検出装置10とを備える。
【0024】
電波送受体20は、検出装置10が送信する第一検出信号及び第二検出信号を受信する受信部21と、受信した第一検出信号及び第二検出信号に対して応答信号を送信する送信部22と、を備え、検出装置10が送信する検出信号を受信した場合に、その検出信号に対して、固有の識別コードと共に応答信号を送信する。
【0025】
検出装置10は検出信号を送信する。その検出信号を受信した電波送受体20は応答信号を送信する。検出装置10がその応答信号を識別コードと共に受信した場合には、その識別コードを有する電波送受体20の存在を確認し、その電波送受体20が特定の空間2の中に存在すると判定する。例えば、検出信号が届かないような離れた空間に存在する電波送受体20’は、応答信号を送信することができない。したがって、検出装置10は、電波送受体20’が特定の空間2に存在すると判定することはできない。
【0026】
検出装置10は、第一アンテナ11と、第二アンテナ12と、電波送受体20が送信する応答信号SGRを受信する第三アンテナ13と、第一アンテナ11が送信する第一検出信号SG1と第二検出信号SG2、及び第二アンテナ12が送信する妨害信号SGDを制御する制御部14と、第三アンテナ13が受信した応答信号SGRに基づいて電波送受体20の存在位置を判定する判定部15と、を備える。
【0027】
制御部14は、特定の空間2が閉空間となったことを示す信号SGESを受けた場合に、第一検出信号SG1の送信のタイミングと異なるタイミングで、第二検出信号SG2と第二検出信号SG2を打ち消す妨害信号SGDとを同時に送信するように制御し、第一検出信号SG1と第二検出信号SG2は第一アンテナ11から送信され、妨害信号SGDは第二アンテナ12から送信される。電波送受体20が第一検出信号SG1又は第二検出信号SG2を検知した場合には、電波送受体20は応答信号SGRを送信する。判定部15は、応答信号SGRを第三アンテナ13が受信した場合に、電波送受体20が特定の空間2の中に存在すると判定する。
【0028】
ここで、特定の空間2が閉空間になるとは、特定の空間2の外から内へ物理的にアクセスできない状態になることをいい、例えば、扉が締められたり、施錠されたりすることを言う。また、第一検出信号SG1の送信のタイミングと、第二検出信号SG2と妨害信号SGDとを送信するタイミングは異なっている。検出装置10は、先に第一検出信号SG1を送信し、後に第二検出信号SG2と妨害信号SGDとを送信してもよい。また逆に、先に第二検出信号SG2と妨害信号SGDとを送信し、後に第一検出信号SG1を送信してもよい。
【0029】
制御部14は、電波送受体20を検出するための検出信号を、第一検出信号SG1と第二検出信号SG2とに二度に分けて送信するように制御する。さらに、第二検出信号SG2と同時に、第二検出信号SG2の一部を打ち消すように妨害信号を送信する。特定の空間の形状や大きさは様々であることを考慮すると、一度の検出信号では特定の空間の中に存在する電波送受体20の存在を検出できない場合がある。即ち、電波送受体20が特定の空間の中に閉じ込まれたにもかかわらず、電波送受体20を検出できない場合がある。一方、逆に、様々な検出信号を送信すると特定の空間の外にある電波送受体20を誤って検出してしまうことがある。即ち、電波送受体20が特定の空間の外にあり閉じ込まれていないにもかかわらず、電波送受体20を検出してしまうことがある。
【0030】
上述のように、2段階に分けて検出信号を送信すると共に、一方の検出信号の一部、即ち、特定の空間2の外に送信される検出信号を打ち消すように妨害信号を送信することにより、特定の空間2の中に存在する電波送受体20の未検出を防止し、かつ、特定の空間2の外にある電波送受体20の誤検出を防止する検出システム1を提供できる。なお、2段階であることに限定されず、例えば、検出信号と妨害信号との信号強度を多段階に変更し、3段階や4段階など、2以上の多段階で電波送受体20の検出を行うものであってもよい。
【0031】
なお、本図においては、特定の空間2の中に電波送受体20のみが存在しているが、これに限定されず、検出装置10全体又は一部が特定の空間2の中にあってもよい。好ましくは、特定の空間2の中の電波送受体20の存在を検出するための検出信号を送信する第一アンテナ11は特定の空間2の中にあり、特定の空間2の外にある電波送受体20の存在を検出しないようにするための妨害信号を送信する第二アンテナ12は、特定の空間2の外にある。
【0032】
第一検出信号SG1と第二検出信号SG2の違いは、好ましくは、信号強度の違いであるが、これに限定されない。例えば、複数の第一アンテナ11を備え、一の第一アンテナ11から第一検出信号SG1を送信し、他の第一アンテナ11から第二検出信号SG2を送信し、さらに、第一アンテナ11と、特定の空間2や第二アンテナ12との相対的位置関係を考慮することにより、同様の効果を奏し得る。
【0033】
信号の強度において、第一検出信号SG1と第二検出信号SG2の間に違いを設ける場合、制御部14が第一検出信号SG1及び第二検出信号SG2の強度を調節することにより、第一アンテナ11が第一検出信号SG1を第一信号強度で、第二検出信号SG2を第一信号強度より強い強度の第二信号強度で送信することが好ましい。たとえ、強い強度の第二信号強度で第二検出信号SG2を送信し、特定の空間2の外に第二検出信号SG2が届いた場合であっても、妨害信号SGDが特定の空間2の外に届いた第二検出信号SG2を打ち消すことにより、特定の空間2の外にある電波送受体20の誤検出を防止することができる。
【0034】
このように、検出信号の強度を調節することにより、検出信号が到達して電波送受体が検知できる範囲を細やかに設定できる。
【0035】
ただし、上記では、第二検出信号SG2を第一信号強度より強い強度としたが、これに限定されず、第二信号強度は第一信号強度より弱い強度であってもよいし、同じ強度であってもよい。たとえば、第一アンテナが2つあり、電波送受体20が、第一検出信号SG1を送信する一の第一アンテナの設置位置から遠く、第二検出信号SG2を送信する他の第一アンテナの設置位置から近いことが多く想定される場合、第二信号強度は第一信号強度より弱い強度であってもよい。
【0036】
検出信号の強度の調節に関し、より具体的には、制御部14は、第一信号強度を、特定の空間2の外側であって、特定の空間2から所定距離以上の空間に存在する電波送受体20を検知せず、特定の空間2の内側であって、妨害信号SGDを検知する空間に存在する電波送受体20を検知するように制御する。かつ、第二信号強度を、特定の空間2の外側であって、妨害信号SGDを検知しない空間に存在する電波送受体20を検知せず、特定の空間2の内側であって、第一検出信号SG1を検知しない空間に存在する電波送受体20を検知するように制御することが好ましい。
【0037】
こうすることにより、特定の空間2の中にある電波送受体20を確実に検出し、かつ、特定の空間2の外にある電波送受体20の検出を行わないことが可能となる。ここで、上記所定距離とは、検出信号が特定の空間2の外側に漏れてもよい許容できる距離をいい、規則や規格などで定められる。例えば、イギリスの防盗性能評価団体(サッチャム)が定める性能基準などで定められている。
【0038】
さらに、制御部14は、妨害信号SGDの強度を調節することにより、妨害信号SGDを、特定の空間2の内側であって、第一検出信号SG1を検知しない空間に存在する電波送受体20が検知しないように制御することが好ましい。こうすることにより、検出信号が到達して電波送受体20が検知できる範囲を高い精度で設定できる。
【0039】
(第二実施例)
図2は、本発明に係る検出装置を車両のトランクに適用した実施例を示す。即ち、特定の空間は、車両30のトランク31の内部空間2Aであり、電波送受体は、トランク31のラッチ機構を開閉するための信号を送信する携帯機20A(20A’)である。そして、特定の空間2Aが閉空間となるとは、図2Dに示すように、車両のトランクが開いた状態から閉じた状態になること、即ち、トランク31のトランクリッド32が開いている状態から、トランクリッド32を閉じて、ラッチ機構が係合状態になることをいう。
【0040】
第二アンテナ12Aは、車両30の車外である後部バンパー33の左右ほぼ中央に取り付けられている。 第一アンテナ11Aは、後部バンパー33より前方であって、トランク31の上部、リアガラス34の下方の車内の左右ほぼ中央に取り付けられている。なお、第一アンテナ11Aと第三アンテナ13Aとは、コスト安くするため、送受信兼用の一体のアンテナである。
【0041】
車両30の車体は通常金属で形成されているので、第一アンテナ11Aから送信された電波が、車体を通して、車内から車外へ、車外から車内へと漏れることはない。しかし、車体とトランクリッド32との間の隙間36を通して漏れることがある。この隙間36は、トランクリッドを閉めた際に衝撃を緩和するためや、水の浸入を防ぐためのゴム等で形成される緩衝部分であって、金属が無い部分である。この場合、例えば、トランク31の内部空間2Aの外側にある携帯機20A’が、漏れだした検出信号に応答し、内部空間2Aの外側に存在するにもかかわらず、内部空間2Aの内側に存在すると誤った判定がなされる恐れがある。
【0042】
逆に、車体外部に設置された第二アンテナ12Aが送信した妨害信号SGDAが、トランク31の内部空間2Aへ、隙間36を通して漏れ入ることがある。この場合、例えば、トランク31の内部空間2Aの内側にある携帯機20Aは、漏れ入った妨害信号SGDAにより第二検出信号SG2Aを検知できず、応答信号SGRAを送信することができないので、内部空間2Aの内側に存在するにもかかわらず検出できない。
【0043】
図3〜図6を参照しながら、このような誤検出や未検出が起こらない、検出信号の強度の調整について詳述する。図3は、第一検出信号SG1Aによる検出信号検知空間3A及び検出信号非検知空間4Aを示す。
【0044】
制御部14A(図7に示す)が第一検出信号SG1Aの強度を調節することにより、特定の空間2A、即ちトランク31の内部空間2Aの内における、電波送受体20Aが第一検出信号SG1Aを検知しない空間の位置は、トランク31の左右両側隅であり、かつトランク31の底の近傍である(図3中、×印で示す)。
【0045】
即ち、第一検出信号SG1Aは、妨害信号を伴わず、隙間36から車外へ漏れ出ることがあるため、誤検出を避けるためにその信号強度(第一信号強度)をむやみに大きくすることはできない。そうすると、逆に、トランク31の内部空間2Aの内であっても、その全域に検出信号が十分に伝わらず、検出信号を検知できない空間4A(検出信号非検知空間)が形成されてしまい、携帯機20Aが内部空間2Aの内であっても検出できない空間ができてしまうこととなる。
【0046】
本実施例では、第一検出信号SG1Aを送信する第一アンテナ11Aは、トランク31の上部、トランク31の中心位置から少し前よりのリアガラス34の下方であって、車内の左右ほぼ中央に取り付けられているので、最も第一検出信号SG1Aが届かない可能性の高い空間は、検出信号非検知空間4Aで示される空間、即ち、トランク31の車両側面よりの隅であって、トランク31の底に近い空間である(図3中、×印で示す)。
【0047】
なお、図3において、(A)と(B)はいずれもトランク31部分の平面図を示す。図3(A)は、トランク31の底からの高さが隙間36と同じ辺りでの検出信号検知空間3Aや検出信号非検知空間4Aを示し、図3(B)は、トランク31の底からの高さが隙間36より高い位置での検出信号検知空間3Aや検出信号非検知空間4Aを示す。図2(A)に示すように、トランクリッド32と車体との隙間は、水平方向だけでなく垂直方向にも両側に存在するため、その垂直方向の隙間からも、第一検出信号SG1Aは漏れ出る。その結果、検出信号検知空間3Aは、図3(B)に示すような形となる場合もある。
【0048】
なお、図3(B)の右下の矢印は、検出信号がトランクの内部空間2Aの外側に漏れてもよい所定の距離(許容できる距離)を示している。つまり、図3(B)に示されている第一検出信号SG1Aを検知できる検出信号検知空間3Aは、その所定の距離の範囲内であることを示す。
【0049】
図4は、第二検出信号SG2Aによる検出信号検知空間3Aを示す。本実施例では、制御部14Aが第二検出信号SG2Aの強度を調節することにより、第一アンテナ11Aが、第二検出信号SG2Aを、第一検出信号SG1Aの第一信号強度より強い強度の第二信号強度で送信する。その信号強度は、トランク31の内部空間2A全体を検出信号検知空間3Aとし、内部空間2A内に検出信号非検知空間が存在しない信号強度である。その結果、トランク31の中にある携帯機20Aは必ず応答信号SGRAを送信することができるので、判定部15A(図7に示す)は、その携帯機20Aがトランク31の内部空間2Aの中に存在すると判定することができる。
【0050】
一方、第二信号強度は第一信号強度より強いので、第二検出信号SG2Aによる検出信号検知空間3Aは、トランク31の内部空間2Aの外へ、漏れてもよい所定の距離(許容できる距離)を超えて、漏れ出てしまう。そうすると、トランク31の内部空間2Aの外に存在する携帯機20Aも、応答信号SGRAを送信してしまう。その結果、判定部15Aは、その携帯機20Aがトランク31の内部空間2Aの中に存在すると誤って判定してしまう。これを防止するために、妨害信号SGDAが、第二検出信号SG2Aと同時に、第二アンテナ12Aから送信される。
【0051】
図5は、妨害信号SGDAが、第二検出信号SG2Aを打ち消す空間、即ち、妨害信号受信空間5Aを示す。逆に言えば、図5は妨害信号非受信空間6Aを示す。第二アンテナ12Aは、車外である後部バンパー33の、左右中央辺りに取り付けられているので、妨害信号受信空間5Aは、トランク31の内部空間2Aの外に大きく、左右対称に広がる。一方、妨害信号SGRAも、隙間36からトランク31の内部空間2Aの中へ、漏れ入る。具体的には、トランク31の内部空間である特定の空間2A内における携帯機20Aが妨害信号SGDAを検知する空間の位置は、垂直方向において車両30の車体とトランクリッド32との間の隙間36のトランク31の底からの高さとほぼ同じ高さであり、水平方向においてトランク31の左右両側隅ではない、隙間36の横巾分の拡がりを有する。
【0052】
図6は、図4で示した第二検出信号SG2Aによる検出信号検知空間3Aと、図5で示した妨害信号SGDAの妨害信号受信空間5Aを同時に示すが、第二検出信号SG2Aがトランク31の内部空間2Aから漏れ出た車外の検出信号検知空間3Aを、妨害信号SGDAが形成する妨害信号受信空間5Aが打ち消していることを示している。その結果、携帯機20Aは応答信号SGRAを送信することがなく、判定部15Aが、その携帯機20Aがトランク31の内部空間2Aの中に存在すると誤って判定することがなくなる。
【0053】
一方、トランク31の内部空間2Aの中に漏れ入った妨害信号SGDAは、トランク31の内部空間2Aの中の第二検出信号SG2Aをも打ち消す。しかし、この空間は、第一検出信号SG1Aによる検出信号検知空間3Aと重複しているので、この空間に携帯機20Aが存在する場合であっても、携帯機20Aは第一検出信号SG1Aに対して応答信号SGRAを送信するので、問題とならない。従って、トランク31の内部空間2Aの中に漏れ入った妨害信号SGDAによる妨害信号受信空間5Aと、第一検出信号SG1Aによる検出信号非検知空間4Aとが、重複しないように、第一検出信号SG1A又は妨害信号SGDAの信号強度を調節することが好ましい。
【0054】
本実施例では、例えば、妨害信号受信空間5Aを、隙間36付近であってトランク31の底には届くことがなく、トランク31の両側(車体の側面)から離れた空間に位置するように制御する。そうすれば、トランク31の車両側面よりの隅であって、トランク31の底に近い空間である第一検出信号SG1Aによる検出信号非検知空間4Aと、重複することがないので、トランク31の内部空間2Aにある携帯機20Aの未検出を確実に防止することができる。
【0055】
図7は、本実施例における、主な構成要素を示すシステムブロック図であり、これを参照しながらより詳細に述べる。車両30の使用者がトランクリッド(トランクの蓋)を閉めると、携帯機から施錠信号の送信などは必要とせずラッチ機構が係合状態となるので、トランク31は自動的に施錠状態となり、トランク内部は閉鎖空間となる。このような施錠状態にあるトランクを解錠するためには、本車両に対応した固有の識別コードを有した携帯機20Aが必要となる。使用者は携帯機20Aを操作し、解錠信号を送信し、携帯機20Aの認証が成立した場合には、トランクのロックを解錠、即ち、トランクを閉じた状態に保持しているラッチ機構を解除し、トランクを開いた状態にする。
【0056】
なお、トランクの解錠の時の「携帯機の認証」とは、携帯機20Aからトランク解錠の信号を受信、もしくは、トランクに設けられた押ボタンなどからトランクを解錠する旨の操作が検出された後、携帯機20Aからの送信信号を受信し、その信号に付与された識別コードが正規のものであると確認することを言う。
【0057】
使用者がトランクを閉めたことをトリガーとして、検出装置10AのECU35内に備えられた制御部14AのLF帯出力調整部352によって調整された信号強度で、LF帯の電波が、第一検出信号SG1Aとして第一アンテナ11Aから放射される。携帯機20Aの受信部21AはこのLF帯の電波の放射を受け、携帯機20Aの送信部22AはUHF帯の電波を応答信号SGRAとして送信する。検出装置10Aの第三アンテナ13Aは、応答信号SGRAを受信すると、ECU35内に備えられた判定部15Aに伝え、判定部15Aは、応答信号SGRAの受信を基に、携帯機20Aの位置を判定する。
【0058】
なお、LF帯は波長が長く,車両近辺の距離オーダーにおいては、UHF帯よりも急激に放射強度が低減(距離の3乗に反比例)するので、検出信号の検知空間はLF帯の電波によって形成される。また、携帯機20A側でLF強度(RSSI:Receive Signal Strength Indication)を計測し、LF強度情報をUHF返答に乗せ、検出装置10A側に知らせ、RSSI値判定部351が位置を判定する。
【0059】
また、同様に、LF帯の電波である妨害信号SGDAは、車外のバンパーに備えられた第二アンテナから放射される。その強度も、LF帯出力調整部352によって調整され、妨害信号SGDAでの通信阻害空間の広さを変化させる。車両〜携帯機通信の成否は、検出信号と妨害信号との両者の強度バランス(強度関係)によって決まり、検知空間形成の要素が、前述のLF強度(RSSI)とは異なる。妨害信号の放射時は、LF強度(RSSI)と、妨害信号での強度関係の両方が複合し、検知空間又は非検知空間が形成される。妨害信号のDuty調整は、LF帯出力強度調整の一手段であり、周波数特性を持つアンテナに対し、印加する周波数成分を変化させると、LF放射強度が増減する。
【0060】
(第三実施例)
図8は、本発明に係る、特定の空間内における電波送受体の存在を検出する検出方法における実施例に関するフローチャートを示す。なお、フローチャートにおいて、「S」は各処理のステップを示すものとする。
【0061】
まず、第一のステップとして、施錠することにより保護する空間である特定の空間2Bが閉空間となったこと検出する(S100)。第二実施例に合わせて言えば、トランクリッドが閉められたこと(ラッチ機構が係合状態になったこと)を検出することである。
【0062】
次に、第二のステップとして、第一検出信号SG1Bと第二検出信号SG2Bを異なるタイミングで、第二検出信号SG2Bの一部を打ち消す妨害信号SGDBを第二検出信号SG2Bと同時に送信する(S200)。なお、本図では、第一検出信号SG1Bを送信(S210)した後に、第二検出信号SG2Bを送信(S220)するが、逆に、第二検出信号SG2Bを送信(S220)した後に、第一検出信号SG1Bを送信(S210)してもよい。また、第一検出信号SG1Bと第二検出信号SG2Bを異なる信号強度で送信してもよい。
【0063】
次に、第三ステップとして、第一検出信号SG1B又は第二検出信号SG2Bのいずれかに対して、固有の識別コードを有する電波送受体20Bが応答する応答信号SGRを検知した場合に、電波送受体20Bが特定の空間2内に存在すると判定する(S300、S400)。逆に、第一検出信号SG1B又は第二検出信号SG2Bのいずれに対しても、応答信号SGRを検知しなかった場合に、電波送受体20Bが特定の空間2B内に存在しないと判定する(S300、S402)。これによって、特定の空間2Bの中に置き忘れられた電波送受体20Bの未検出を防止し、かつ、特定の空間2Bの外にある電波送受体20Bの誤検出を防止する検出方法を提供できる。
【0064】
通常、S400の後には、閉空間となった特定の空間2Bを再度開空間とする。例えば、本実施例では、閉じられたトランクリッド32を解錠する(ラッチ機構を解除する)。また、S402の後には、特定の空間2Bの中に電波送受体20Bは置き忘れられていないので、通常は何もしない。
【0065】
図9は、上記検出方法の本実施例の変形例のフローチャートを示す。上記記載と同じ部分は省略し、異なる部分のみ述べる。
【0066】
第一検出信号を送信するステップ(210)と第二検出信号を送信するステップ(S220)の間、即ち、S210の後に、電波送受体20Bが特定の空間2B内に存在するか否かを判定する中間判定ステップ(S215)をさらに有する。中間判定ステップ(S215)は、電波送受体20Bが応答する応答信号SGRを検知した場合に、電波送受体20Bが特定の空間2B内に存在すると判定すると共に、後続のステップを行わない。即ち、検出されなかった場合はS220を行うが、検出された場合はS220を行わず、そのまま電波送受体20Bが特定の空間2B内に存在すると判定する(S400)。こうすることにより、効率的で迅速な検出方法を提供できる。
【0067】
なお、本発明を車両のトランクに適用した実施例を述べたが、これに限定されないことは言うまでもない。例えば、車両自体、建物や部屋、ロッカーなどにも適用できる。車両自体である場合、特定の空間とは車両の内部空間(車内)であり、電波送受体は携帯機であり、特定の空間が閉空間となることは、すべてのドアが施錠(オートロック)されることを言う。
【0068】
また、建物である場合、例えば、シャッター付の車庫などに適用できる。その場合、特定の空間とは車庫の内部空間であり、電波送受体はシャッターの鍵として使用される携帯機であり、特定の空間が閉空間となることは、シャッターを下ろして施錠(オートロック)されることを言う。また、第一検出信号と第二検出信号を送信する第一アンテナを車庫の奥の方に、妨害信号を送信する第二アンテナをシャッターの外側に設置することが好ましい。また、シャッターが金属製で隙間がないような場合には、第一アンテナをシャッターの内側であって車庫の手前の方に設置してもよい。
【0069】
また、ロッカーに適用した場合、特定の空間とはロッカーの内部空間であり、電波送受体はロッカーの鍵として使用される携帯機であり、特定の空間が閉空間となることは、ロッカーのドアを閉めてオートロックされることを言う。即ち、本発明は、内部に解錠するための携帯機を置いたままでも自動的に施錠されるような場所、物に適用可能である。
【0070】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 検出システム
2 特定の空間
3 検出信号検知空間
4 検出信号非検知空間
5 妨害信号受信空間
6 妨害信号非受信空間
10 検出装置
11 第一アンテナ
12 第二アンテナ
13 第三アンテナ
14 制御部
15 判定部
20 電波送受体
21 受信部
22 送信部
30 車両
31 トランク
32 トランクリッド(トランクの蓋)
33 バンパー
34 リアガラス
35 ECU
351 RSSI判定部
352 LF帯出力調整部
36 車両の車体とトランクリッドとの間の隙間
SG1 第一検出信号
SG2 第二検出信号
SGD 妨害信号
SGR 応答信号
SGES 閉空間となったことを示す信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の空間内における電波送受体の存在を検出する検出装置であって、
第一アンテナと、
第二アンテナと、
前記第一アンテナが前記特定の空間内に向けて送信する第一検出信号と第二検出信号、及び前記第二アンテナが送信する妨害信号を制御する制御部と、
前記電波送受体が、前記第一検出信号及び前記第二検出信号を受信し、受信した前記第一検出信号及び前記第二検出信号に対して送信する応答信号を受信する第三アンテナと、
前記第三アンテナが受信した前記応答信号に基づいて前記電波送受体の存在位置を判定する判定部と、
を備え、
前記制御部は、前記特定の空間が閉空間となったことを検出した場合に、前記第一検出信号の送信のタイミングと異なるタイミングで、前記第二検出信号と前記第二検出信号を打ち消す前記妨害信号とを同時に送信するように制御し、
前記判定部は、前記第一検出信号又は前記第二検出信号のいずれかに対して前記応答信号を前記第三アンテナが受信した場合に、前記電波送受体が前記特定の空間内に存在すると判定する、
検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一検出信号及び前記第二検出信号の強度を調節することにより、
前記第一アンテナが、前記第一検出信号を第一信号強度で、前記第二検出信号を前記第一信号強度より強い強度の第二信号強度で、送信する、
ように制御することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第一信号強度を、
前記特定の空間の外側であって、前記特定の空間から所定距離以上の空間に存在する前記電波送受体が検知せず、
前記特定の空間の内側であって、前記妨害信号を検知する空間に存在する前記電波送受体が検知する、
ように制御し、前記第二信号強度を、
前記特定の空間の外側であって、前記妨害信号を検知しない空間に存在する前記電波送受体が検知せず、
前記特定の空間の内側であって、前記第一検出信号を検知しない空間に存在する前記電波送受体が検知する、
ように制御することを特徴とする請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、さらに前記妨害信号の強度を調節することにより、前記妨害信号を、前記特定の空間の内側であって、前記第一検出信号を検知しない空間に存在する前記電波送受体が検知しないように制御することを特徴とする請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記特定の空間は、車両のトランクの内部空間であり、
前記電波送受体は、前記トランクを開閉するための携帯機であり、
前記特定の空間が閉空間となることは、前記トランクを閉じることである、
ことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の検出装置。
【請求項6】
前記第二アンテナは、前記車両の車外である後部バンパーに取り付けられ、
前記第一アンテナは、前記後部バンパーより前方に取り付けられ、
前記特定の空間内における前記電波送受体が前記第一検出信号を検知しない空間の位置は、前記トランクの左右両側隅かつ底近傍であり、
前記特定の空間内における前記電波送受体が前記妨害信号を検知する空間の位置は、前記車両の車体と前記トランクの蓋との間の隙間の前記トランクの底からの高さと略同じ高さであり、前記トランクの左右両側隅ではない、
ことを特徴とする請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第一アンテナと前記第三アンテナは、一のアンテナからなることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の検出装置。
【請求項8】
特定の空間内における電波送受体の存在を検出する検出方法であって、
前記特定の空間が閉空間となったことを検出する第一ステップと、
第一検出信号と第二検出信号を異なるタイミングで、かつ、前記第二検出信号の一部を打ち消す妨害信号を前記第二検出信号と同時に送信する第二ステップと、
前記第一検出信号又は前記第二検出信号のいずれかに対して、固有の識別コードを有する前記電波送受体が応答する応答信号を受信した場合に、前記電波送受体が前記特定の空間内に存在すると判定する第三ステップと、
を有する検出方法。
【請求項9】
前記第二ステップにおいて、前記第一検出信号を送信した後に、前記第二検出信号を送信することを特徴とする請求項8に記載の検出方法。
【請求項10】
前記第二ステップにおいて、前記第二検出信号を送信した後に、前記第一検出信号を送信することを特徴とする請求項8に記載の検出方法。
【請求項11】
前記第一検出信号は、前記特定の空間内の一の空間にある前記電波送受体は検知するが、他の空間にある前記電波送受体は検知しない信号であり、
前記第二検出信号は、前記特定の空間内に存在する前記電波送受体が検知する信号であり、
前記特定の空間内において、前記電波送受体が前記第一検出信号を検知しない空間と前記妨害信号を検知する空間が重ならないように、かつ、前記妨害信号を検知する空間と前記第一検出信号を検知する空間が重なるように、送信する、
ことを特徴とする請求項8乃至10いずれかに記載の検出方法。
【請求項12】
前記第一検出信号を送信するステップと前記第二検出信号を送信するステップの間に、前記電波送受体が前記特定の空間内に存在するか否かを判定する中間判定ステップをさらに有し、
前記中間判定ステップは、前記電波送受体が応答する応答信号を受信した場合に、前記電波送受体が前記特定の空間内に存在すると判定すると共に、後続のステップを行わないことを特徴とする請求項9乃至11いずれかに記載の検出方法。
【請求項13】
固有の識別コードを有する電波送受体と、特定の空間内における前記電波送受体の存在を検出する検出装置とを備える検出システムであって、
前記検出装置は、
第一アンテナと、
第二アンテナと、
前記第一アンテナが送信する第一検出信号と第二検出信号、及び前記第二アンテナが送信する妨害信号を制御する制御部と、
前記電波送受体が送信する応答信号を受信する第三アンテナと、
前記第三アンテナが受信した前記応答信号に基づいて前記電波送受体の存在位置を判定する判定部と、
を備え、
前記電波送受体は、
前記第一検出信号及び前記第二検出信号を受信する受信部と、
受信した前記第一検出信号及び前記第二検出信号に対して応答信号を送信する送信部と、
を備え、
前記制御部は、前記特定の空間が閉空間となった場合に、前記第一検出信号の送信のタイミングと異なるタイミングで、前記第二検出信号と前記第二検出信号を打ち消す前記妨害信号とを同時に送信するように制御し、
前記判定部は、前記第一検出信号又は前記第二検出信号のいずれかに対して前記応答信号を前記第三アンテナが受信した場合に、前記電波送受体が前記特定の空間内に存在すると判定する、
検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−145506(P2012−145506A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5314(P2011−5314)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】