説明

電波送受信モジュールおよび、この電波送受信モジュールを用いたイメージングセンサ

【課題】 帯域が広く、奥行き方向の小型化が可能で、単純で堅牢な構造をもち、周囲温度に依存しない、電波送受信モジュールを用いたミリ波イメージングセンサが求められている。
【解決手段】 内周に導体が存在し受信波の入射方向側が開口している導波管と、受信波を受信する心線と、心線により受信された受信波を受信信号として出力する受信素子と、受信素子により出力された受信信号を外部回路に伝達する配線とが誘電体基板に水平に備えられた電波受信モジュールを複数アレイ状に配置した電波受信モジュールアレイと、アレイの各開口側に位置するレンズと、アレイから出力された各受信信号を処理する外部回路とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波通信に用いる電波送受信モジュール、および、この電波送受信モジュールを用いて物体の形状を認識するイメージングセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波等の高周波を用いた通信システムやセンシングシステムのニーズが高まってきた。特にミリ波センシングシステムでは全天候で物標の形状を検知することができるミリ波イメージングセンサのニーズが高まってきた。ミリ波イメージングセンサには物標にミリ波を送信し、その反射波を用いて物標形状を検知するアクティブ型と、物標や周囲環境が放射するミリ波用いて物標形状を検知するパッシブ型とがある。パッシブミリ波イメージングはアクティブ型に対して微弱な電波を検出する必要があるものの、その撮像解像度はアクティブ型に対して高いことが知られている。
【0003】
以下、パッシブミリ波イメージングの原理について概要を説明する。
【0004】
プランクの放射法則によれば、任意の物体からその温度と、表面の材質や表面方位と放射方位が為す角度に依存する放射率とで決まる電磁波が放射されている。この放射電磁波のピーク電力は赤外光の領域にあるが、ミリ波帯、マイクロ波帯といった電波帯域にも微弱な放射がある。ミリ波帯での放射電力P[W]は、P=kΔf(εT)[W](以下、式1とする)として表すことができる(Rayleigh−Jeanの近似式)。ここでk[J/K]はボルツマン定数、Δf[Hz]は観測帯域幅、T[K]はターゲットの物理温度、εは放射率である。
【0005】
近年、このミリ波帯での放射電力を受信することにより、物体の形状を認識するパッシブミリ波イメージングセンサのニーズが高まりつつある。図20に示すように、ミリ波は可視光に対して霧中での透過率が高いことが知られている。例えば、このミリ波の透過性に関して、株式会社リアライズ社発行の「ミリ波技術の基礎と応用」(平成10年7月31日発行、初版、「ミリ波技術の基礎と応用」編集委員会)のp207に記載がなされている。このためにパッシブミリ波イメージングセンサは天候に左右されないイメージングセンサとして期待が高まっている。
【0006】
現在、ミリ波イメージングセンサの検知モジュールとしては特許第3263282号公報、特開平6−331725号公報に開示されている平面パッチアンテナと検知回路を用いる方法が知られている。また、この他にも、特開平10−332824号公報、特開平11−163626号公報、特開平11−330846号公報、に開示されているテーパードスロットアンテナと検知回路を用いる方法が知られている。テーパードスロットアンテナとは、中心部をテーパー状に切り抜かれた薄い金属板を平面ガラス上に貼ったものであり、これをアレイ状に配置することでイメージングセンサとして用いる。
【0007】
さらに、IEEE Transactions on Antennas and Propagation Vol.38,No.9,September,1990のpp1473−1482に開示されている導波管ホーンと平面アンテナとを組み合わせた構造が知られている。この構造は、ホーンアンテナの内部にミリ波の伝搬方向に対して垂直にシリコン酸化膜のメーンブレーン(薄膜)を設け、このメーンブレーンがアンテナに対し浮いている箇所に平面アンテナを配置するため、奥行き方向の小型化が可能である。
【特許文献1】特許第3263282号公報
【特許文献2】特開平6−331725号公報
【特許文献3】特開平10−332824号公報
【特許文献4】特開平11−163626号公報
【特許文献5】特開平11−330846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
平面パッチアンテナは指向性がブロードであるためレンズと複合して用いる場合は不要な範囲に指向性があり、帯域が狭く、受信電力強度が帯域に依存する(式1)ため、ミリ波イメージングには不向きであるという問題がある。
【0009】
また、テーパードスロットアンテナはアンテナの指向性がエンドファイアー型で、基板と水平な方向に指向性を出すことを特徴とする構造であるがゆえにモジュールの形状が奥行き方向に小さくできない構造上の問題がある。
【0010】
さらに、メーンブレーンをホーン内に浮かせる構造は、構造が複雑であり強度も弱いため、素子間の性能がばらつき、イメージングのように素子全体が均一な性能を求められる場合には実現が難しい。また、平面アンテナにボロメータを用いるため、周囲の温度変化に弱い。
【0011】
本発明はこの点に鑑み、帯域が広く、奥行き方向の小型化が可能で、単純で堅牢な構造をもち、周囲温度に依存しない、電波送受信モジュールを用いたミリ波イメージングセンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、内周に導体が存在し、送信波または、および受信波(16)の出射または、および入射方向側が開口している導波管(11、40)と、前記入射方向に対し垂直に、前記導波管(11、40)の前記開口とは反対側に位置する誘電体からなる基板(12)と、前記送信波または、および前記受信波(16)を送受信するとともに前記基板(12)に水平に備えられる心線(20)と、前記心線(20)により送信された前記送信波または、および前記心線(20)により受信された前記受信波(16)を前記送受信信号として出力するとともに前記基板(12)に水平に備えられる送受信素子と、前記送受信素子により出力された前記送受信信号を外部回路(165)に伝達する配線(25)からなる送受信手段(13、60、110)とを備えることを特徴とする。
【0013】
このように、導波管(11、40)を用いるため、広帯域の送信波、受信波(16)を出入力することができる。また、送受信手段(13、60、110)を、導波管奥(11、40)に存在する基板(12)に水平に備えることで、電波送受信モジュール(10)を小型化することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記心線(20)および前記送受信素子が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の同一面に位置し、前記配線(25)が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面に位置する前記送受信素子と、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面とは逆の面に位置する前記外部回路(165)とを電気的に接続することを特徴とする。
【0015】
これにより、誘電体層の裏面、即ち導波管(11、40)とは逆の面に、送受信信号を引き出す配線(25)を形成することが可能となり、この配線(25)の設置場所の自由度を高くすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記心線(20)と前記送受信素子と前記配線(25)とが、前記基板(12)の導波管(11、40)側の面とは逆の同一面に位置し、前記配線(25)が、前記送受信素子と前記外部回路(165)とを電気的に接続することを特徴とする。
【0017】
これにより、誘電体層の裏面、即ち導波管(11、40)とは逆の面に送受信素子から成る送受信手段(60)を形成することができ、請求項2の発明を用いた場合に対して、大きな送受信素子や多数の送受信素子を用いた送受信手段(60)を構成可能である。例えば、電波受信モジュール(10)として使用する場合には、受信手段(60)に低雑音増幅器を加えることで、さらに感度を高くすることができる。また、送受信素子と配線(25)とが同一面内で形成されていることにより、請求項2の発明において行う誘電体層へのビアホール(21)形成等の複雑な設計、製造工程を無くすことができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記心線(20)が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面に位置し、前記送受信素子が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面とは逆の面に位置し、第二の配線(22)が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面に位置する前記心線(20)と、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面とは逆の面に位置する前記送受信素子とを電気的に接続し、前記配線(25)が、前記送受信素子と前記外部回路(165)とを電気的に接続することを特徴とする。
【0019】
これにより、誘電体層の裏面、即ち導波管(11、40)とは逆の面に送受信素子から成る送受信手段(110)を形成することができ、請求項2の発明を用いた場合に対して、大きな送受信素子や多数の送受信素子を用いた送受信手段(110)を構成可能である。例えば、電波受信モジュール(10)として使用する場合には、受信手段(110)に低雑音増幅器を加えることで、さらに感度を高くすることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記導波管(11)は、前記送信波を送信および、または前記受信波(16)を受信する空洞を備え、該空洞は、部材(14、30、50)に垂直な貫通孔(15)を開けたものであることを特徴とする。
【0021】
これにより、テーパードスロットアンテナに比べて、容易に導波管(11、40)を製造することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、前記導波管は、前記送信波を送信および、または前記受信波(16)を受信する空洞を備え、該空洞の形状は、前記基板(12)に対し垂直な直線を軸に四角形を回転させ生成される2箇所の円状の開口を備える円錐台であることを特徴とする。
【0023】
これにより、請求項5の構成に比べて、導波管(11、40)の指向性を鋭くすることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、前記導波管(40)は、前記送信波を送信および、または前記受信波(16)を受信する空洞を備え、該空洞は六面体形状の空洞であることを特徴とする。
【0025】
これにより、請求項5の構成に比べて、導波管(11、40)の指向性を鋭くすることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、前記六面体形状の空洞は、前記六面体の前記送信波が出射または、および前記受信波(16)が入射する側の開口の面積が、前記基板(12)側の開口の面積より広いことを特徴とする。
【0027】
これにより、請求項5の構成に比べて、鋭い指向性と高い利得とを得ることができる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、前記導波管(11、40)は、導電性の部材(14)に設けられた開口により構成されることを特徴とする。
【0029】
このように導電性の導波管(11、40)を用いることで、導波管(11、40)における送信波または、および、受信波(16)の損失を少なくすることができる。
【0030】
請求項10に記載の発明は、前記導波管(11、40)は、半導体部材に設けられた開口により構成されることを特徴とする。
【0031】
このように、半導体プロセスで導波管(11、40)を形成することで、加工精度の高い導波管(11、40)を製造可能である。
【0032】
請求項11に記載の発明は、前記導波管(11、40)は、絶縁性または導電性を備える部材(30、50)に設けられた開口の表面に導電性物質(31)が重設されたことを特徴とする。
【0033】
これにより安価な部材を用いて形状を形成し、その部材表面にメッキ(31)等により金属を形成することにより、安価に導波管(11、40)を形成することが可能である。
【0034】
請求項12に記載の発明は、前記送受信素子は、前記基板(12)上にエピタキシャル成長された半導体層を加工し形成されることを特徴とする。
【0035】
これにより、MMIC(Millimeter−wave Monolithic IC)で送受信手段(13、60、110)を形成可能であるため、高精度に高周波回路を構成できるため反射損失等を少なくでき、歩留まり高く実装することができる。
【0036】
請求項13に記載の発明は、前記送受信素子は、前記基板(12)上にマウントまたは電気接続されることを特徴とする。
【0037】
これにより、ICを実装することで送受信手段(13、60、110)を形成することができるため、請求項12の場合に対して、送受信手段(13、60、110)に使用する素子の組み合わせの自由度を高くすることができる。
【0038】
請求項14に記載の発明は、前記送受信素子は、ショットキーバリアダイオードにより構成されることを特徴とする
これにより、本発明を電波受信モジュール(10)として使用する場合には、ビスマスなどのボロメータを用いる場合に対して感度が高く、かつ、周囲環境の温度が高い場合であっても送受信信号を正確に入出力することが出来る。
【0039】
請求項15に記載の発明は、前記送受信素子と前記外部回路(165)との間に設置され、該送受信素子より出力される前記受信信号と、該送受信信号に含まれるノイズ成分のみとを交互に該外部回路(165)に入力するスイッチを備えることを特徴とする。
【0040】
これにより、微弱な受信波(16)を受信した場合でも、Dicke法を用いて受信信号を出力することが可能となり、請求項14の発明に対してさらに感度を高めることができる。
【0041】
請求項16に記載の発明は、前記送受信信号の所定帯域成分のみを前記外部回路(165)に出力する帯域透過フィルタを、前記心線(20)と該外部回路(165)との間に備えることを特徴とする。
【0042】
これにより、微弱な受信波(16)を受信した場合でも、帯域が明確であれば、受信信号を出力することができる。
【0043】
請求項17に記載の発明は、前記送受信信号を前記外部回路(165)に対し、入力または、および出力するタイミングを遅延させる遅延回路を、前記心線(20)と該外部回路(165)との間に備えることを特徴とする。
【0044】
これにより、送受信波(16)の位相を変更することが可能となる。例えば、受信波(16)の場合、受信素子が受信した受信波(16)の位相を変更して外部へ出力することができる。
【0045】
請求項18に記載の発明は、前記送信波または、および前記受信波(16)の進行方向に、該送信波を屈折または、および該受信波(16)を屈折し結像するレンズ(161)を備えることを特徴とする。
【0046】
レンズ(161)の焦点面に、物標から到来する電波を結像、または送信する像を結像することで、導波管(11、40)、心線(20)を含む送受信手段(13、60、110)によって検知することにより撮像、または像の送信をすることが可能となる。
【0047】
請求項19に記載の発明は、前記レンズ(161)が、誘電体により構成されることを特徴とする。
【0048】
これにより、レンズ(161)の生成に、ポリエチレン等を使用すれば、加工が容易となる。
【0049】
請求項20に記載の発明は、前記レンズ(161)が、半導体により構成されることを特徴とする。
【0050】
これにより、請求項19の発明に対して、レンズ(161)の屈折率を高くすることができ、電波送信受信モジュール(10)の小型化が可能である。
【0051】
請求項21に記載の発明は、前記受信波(16)を屈折し前記心線(20)に該受信波(16)を結像するミラーまたは、および前記心線(20)より出力された前記送信波を屈折するミラーを備えることを特徴とする。
【0052】
これにより、簡易かつ損失の少ない反射型の電波送受信モジュール(10)を実現することができる。
【0053】
請求項22に記載の発明は、前記導波管(11、40)において、前記送信波または、および前記受信波(16)が通過する導体でない部分が真空である、または気体が充填されていることを特徴とする。
【0054】
これにより、電波送受信モジュール(10)を簡易な構成で製造することができる。
【0055】
請求項23に記載の発明は、前記導波管(11、40)において、前記送信波または、および前記受信波(16)が通過する導体でない部分は、誘電体が埋設されていることを特徴とする。
【0056】
これにより、誘電体中での波長短縮効果を用いることができ、請求項22の構成に比べ電波送受信モジュール(10)を小型化できる。
【0057】
請求項24に記載の発明は、前記導波管(11、40)において、前記送信波または、および前記受信波(16)が通過する導体でない部分は、半導体が埋設されていることを特徴とする。
【0058】
これにより、請求項23の発明に対して、導波管(11、40)内に屈折率の高い材質を埋め込むことができ、請求項23の構成に比べ電波送受信モジュール(10)を小型化できる。
【0059】
請求項25に記載の発明は、前記電波送受信モジュール(10)を複数アレイ状に配置した電波送受信モジュール(10)アレイと、前記電波送受信モジュール(10)アレイの各開口側に位置する前記レンズ(161)と、前記電波送受信モジュール(10)アレイから出力された各受信信号を処理する前記外部回路(165)とを備えることを特徴とする。
【0060】
これにより、検知対象物体が発したミリ波を、アレイ状に並べた奥行き方向に小型な各電波送受信モジュール(10)により受信し、その各受信信号を処理することで、物体の形状を判定するイメージングセンサ(160)を、奥行き方向に小型化することができる。
【0061】
請求項26に記載の発明は、前記電波送受信モジュール(10)と、
前記電波送受信モジュール(10)を一定面積の範囲の中で駆動する駆動手段(191)と、前記駆動手段(191)の位置情報を検出し出力する位置検出手段(192)と、前記一定面積の範囲内を駆動する前記電波送受信モジュール(10)の開口に前記受信波(16)を屈折、結像する前記レンズ(161)と、前記電波送受信モジュール(10)が出力した前記送受信信号と、前記位置情報とを処理する前記外部回路(165)とを備えることを特徴とする。
【0062】
これにより、単数の電波送受信モジュール(10)を使用するため、請求項25に比べ簡易な構成で二次元の画像を取得可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、実施例1から実施例11を用いて、本発明を実施するための最良の形態を述べる。
【0064】
〔実施例1〕
図1および図2を用いて実施例1について説明する。
【0065】
図1(a)および図1(b)は、電波受信モジュール10を構成する、筒状の導波管11および誘電体基板12と受信手段13との関係を表す。図1(a)は、電波受信モジュール10の鳥瞰図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面図である。
【0066】
これらの図1(a)、図1(b)に示すように、金属板14に貫通孔15を開口し、筒状の導波管11を形成する。さらに、この金属板14を後述する受信手段13が実装された誘電体基板12に接合する。なお、本実施例において、誘電体基板12の素材はアルミナである。また、受信波として入力されたミリ波16は、筒状の導波管11を通過し受信手段13によって受信される。
【0067】
図2は、受信手段13の詳細図である。この図2に示すように、筒状の導波管11に接する側の誘電体基板12の同一面上に、心線20とパッド22とを形成する。また、誘電体基板12を連通するビアホール21を形成する。心線20とパッド22との間に、受信素子としてカソード23、アノード24より構成されるショットキーバリアダイオード(以降ではSBDと称する)を誘電体基板12と同一面上にマウントする。さらに、アノード24を心線20と接続し、カソード23をパッド22と接続する。このパッド22を、ビアホール21を介して、誘電体基板12の筒状の導波管11と接しない側の面に設置した配線25に接続する。
【0068】
この構造により、外部から到来したミリ波16は、筒状の導波管11をアンテナとして心線20で受信された後、SBDで検波され電圧に変換される。このSBDと等しい電位を持つ配線25の電位をデジタルボルトメータで測定することで、受信されたミリ波16は受信信号として出力される。
【0069】
以上の構成により、電波受信モジュール10は、受信素子としてSBDを用いることにより周囲温度の影響を受けにくく、構成も簡素である。また、筒状の導波管11を用いるため、広い帯域のミリ波16を受信することができる。さらに、誘電体基板12と同一面上の水平方向にミリ波16を受信するための心線20と、受信素子を含む受信手段13を設置することで小型化と堅牢化とを両立している。
【0070】
〔実施例2〕
この実施例2における前述の実施例1との構成上の相違点は、本実施例では誘電体基板12に半導体である半絶縁性Si、半絶縁性GaAsを用いているが、実施例1ではアルミナを用いていた点である。なお、前述の実施例1と同等の構成については、実施例1と同様の符号を付し、本実施例2における説明を省略する。
【0071】
半絶縁性GaAs基板に分子線結晶成長装置を用い、Siをドナー不純物として1E19[cm−3]の不純物濃度でp型GaAs層を1um、その上に1E17[cm−3]の不純物濃度でn型GaAs層を1um成長する。なお、1E19[cm−3]の不純物濃度をもつp型GaAs層は実施例1におけるアノード24、1E17[cm−3]の不純物濃度をもつn型GaAs層は実施例1におけるカソード23に相当する。これらの成長層を2段階のエッチング除去により図2において示したアノード24およびカソード23のように階段状に形成し、p型GaAs層上でn型GaAs層により隠れていない部分にオーミックコンタクト金属を形成し、n型GaAs層の上にショットキーコンタクトを形成する。その上からパッシベーション膜としてSiN膜を形成し、オーミックコンタクトの上とショットキーコンタクトの上にコンタクトホールを開ける。その後、心線20と、パッド22を金メッキにより形成する。次に、基板12の裏面を100umの基板厚になるまで研磨し、ビアホール21を開けてメッキを埋設して、最後にこのビアホール21に繋がる配線25を形成した。
【0072】
このように、本実施例2の電波受信モジュール10は、半導体プロセスにより形成されるため、実施例1に比べ高精度にインピーダンス整合をとることができる。
【0073】
〔実施例3〕
この実施例3における前述の実施例1との構成上の相違点は、本実施例では筒状の導波管11の素材にドナー濃度の高いSi板を用いているが、実施例1では金属板14を用いていた点である。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例3における説明を省略する。
【0074】
ドナー濃度の高いSi板に対し、フォト工程を用いて図1(a)および図1(b)において示した筒状の導波管11の貫通孔15と同サイズの開口を持つ金属膜を設ける。その金属膜をマスクとしてドライエッチングを行い、筒状の導波管11の貫通孔15を設ける。その後、金属膜を除去し、筒状の導波管11を有するSi板を得る。この筒状の導波管11を有するSi板に設けた貫通孔15の片方の開口を覆うように、前述の実施例にて用いた受信手段13を備える誘電体基板12を重ねる。
【0075】
以上により、本実施例3の電波受信モジュール10は、実施例1で得られた作用効果に加え、半導体プロセスで筒状の導波管11を形成することができ、大量に加工精度の高い電波受信モジュール10を製造することができる。
【0076】
〔実施例4〕
図3を用いて実施例4について説明する。この実施例4における前述の実施例1との構成上の相違点は、本実施例では筒状の導波管11の素材に半絶縁性Si板30を用いているが、実施例1では金属板14を用いていた点である。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例4における説明を省略する。
【0077】
図3に示すように、半絶縁性Si板30に対し、フォト工程を用いて、図1(a)および図1(b)において示した筒状の導波管11の貫通孔15と同一サイズの開口を持つ金属膜を設ける。その金属膜をマスクとしてドライエッチングを行い、筒状の導波管11の貫通孔15を設ける。その後、金属膜を除去することで、筒状の導波管11を有する半絶縁性Si板30を得ることができる。さらにスパッタを用いて、この筒状の導波管11を有する半絶縁性Si板30の全面に金属膜を形成し、これに電極をつけて、電解メッキ工程にてメッキ31を全面に施す。図3に示すように、このメッキ処理された筒状の導波管11を有する半絶縁性Si板30に設けた貫通孔15の片方の開口を覆うように、前述の実施例にて用いた受信手段13を備える誘電体基板12を重ねる。
【0078】
以上により、本実施例4の電波受信モジュール10は、実施例1で得られた作用効果に加え、半導体プロセスにて筒状の導波管11の貫通孔15を開口できることにより、精度良く、バラツキを少なく保ったまま大量に筒状の導波管11を製造することが可能である。
【0079】
なお、半絶縁性Si板30の代わりとして、高抵抗Si板、もしくは、低ドナー濃度Si板を用いて、本実施例4の構成は実現可能である。
【0080】
〔実施例5〕
図4を用いて実施例5について説明する。この実施例5における前述の実施例1との構成上の相違点は、本実施例では導波管としてホーン状の導波管40を用いるが、実施例1では筒状の導波管11であった点である。なお、実施例1と同等の構成については、実施例1と同様の符号を付し、本実施例5における説明を省略する。
【0081】
図4(a)および図4(b)は、電波受信モジュール10を構成する、ホーン状の導波管40および誘電体基板12と受信手段13との関係を表す。図4(a)は、電波受信モジュール10の鳥瞰図であり、図4(b)は図4(a)のB−B線における断面図である。
【0082】
これらの図4(a)、図4(b)に示すように、ホーン状の導波管40は、貫通孔15を開口した金属板14である。このホーン状の導波管40の貫通孔15は、誘電体基板12から遠ざかるに従って断面形状が相似的に大きくなるピラミッド開口である。さらに、この金属板14に設けたホーン状の導波管40の開口面積が小さい側の面に対し、前述の実施例1にて用いた受信手段13を備える誘電体基板12を重ねる。これにより、入力されたミリ波16は、ホーン状の導波管40を通過し受信手段13によって受信される。
【0083】
この構造により、本実施例5の電波受信モジュール10は、実施例1と同様の作用効果を奏するとともに、導波管としてホーン状の導波管40を用いるため実施例1以上に高い指向性と利得とを得ることができる。
【0084】
〔実施例6〕
この実施例6における前述の実施例5との構成上の相違点は、本実施例ではホーン状の導波管40の素材にドナー濃度の高いGaAs板を用いているが、実施例5では金属板14を用いていた点である。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例7における説明を省略する。
【0085】
ドナー濃度の高いGaAs板に対し、フォト工程を用いて図4(a)および図4(b)において示したホーン状の導波管40の面積が小さい側の貫通孔15と相似であるがサイズが小さな開口を持つレジスト膜を設ける。そのレジスト膜を用いてH2SO4:H22:H2O=4:1:135でウエットエッチングを行い、ホーン状の導波管40の貫通孔15を設ける。その後、レジスト膜を除去し、ホーン状の導波管40を有するドナー濃度の高いGaAs板を得る。このドナー濃度の高いGaAs板に設けたホーン状の導波管40の開口面積が小さい側の面に対し、前述の実施例にて用いた受信手段13を備える誘電体基板12を重ねる。
【0086】
以上により、本実施例6の電波受信モジュール10は、実施例5で得られた作用効果に加え、半導体プロセスでアンテナを形成することができ、大量に加工精度の高い電波受信モジュール10を製造することができる。
【0087】
〔実施例7〕
図5を用いて実施例7について説明する。この実施例7における前述の実施例5との構成上の相違点は、本実施例ではホーン状の導波管40の素材に半絶縁性GaAs板50を用いているが、実施例5では金属板14を用いていた点である。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例7における説明を省略する。
【0088】
図5に示すように、半絶縁性GaAs板50に対し、フォト工程を用いて図4(a)および図4(b)において示したホーン状の導波管40の面積が小さい側の貫通孔15と相似であるがサイズが小さな開口を持つレジスト膜を設ける。そのレジスト膜を用いてH2SO4:H22:H2O=4:1:135でウエットエッチングを行い、ホーン状の導波管40の貫通孔15を設ける。その後、レジスト膜を除去することで、ホーン状の導波管40を有する半絶縁性GaAs板50を得ることができる。さらにスパッタを用いて、このホーン状の導波管40を有する半絶縁性GaAs板50の全面に金属膜を形成し、これに電極をつけて、電解メッキ工程にてメッキ31を全面に施す。
【0089】
図5に示すように、このメッキ31処理された半絶縁性GaAs板50に設けたホーン状の導波管40の開口面積が小さい側の面に対し、前述の実施例にて用いた受信手段13を備える誘電体基板12を重ねる。
【0090】
以上により、本実施例7の電波受信モジュール10は、実施例5で得られた作用効果に加え、半導体プロセスにてホーン状の導波管40の貫通孔15を開口できることにより、精度良く、バラツキを少なく保ったままホーン状の導波管40を大量に製造することが可能である。
【0091】
なお、半絶縁性GaAs板50の代わりとして、高抵抗GaAs板、もしくは低ドナー濃度GaAs板を用いて、本実施例7の構成は実現可能である。
【0092】
〔実施例8〕
図6および図7を用いて実施例8について説明する。この実施例8における前述の実施例1との構成上の相違点は、本実施例では受信手段60が誘電体基板12の裏面、すなわち筒状の導波管11と接しない側の面に設置されており、またその構成が異なる点である。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例8における説明を省略する。
【0093】
図6は、筒状の導波管11および誘電体基板12と受信手段60との関係を表す。この図6に示すように、前述の実施例1において用いた図1(b)との相違点は、受信手段60の構成と、受信手段60の設置場所が、誘電体基板12の筒状の導波管11と接続しない側の面である点である。
【0094】
図7は、受信手段60の詳細図であり、以下で受信手段60の構成について述べる。筒状の導波管11と接する側とは反対側の誘電体基板12の面に心線20と、パッド22と、カソード23、アノード24より構成されるSBDをマウントする。さらに、誘電体基板12の同一面上において、アノード24を心線20と接続し、カソード23をパッド22と接続し、パッド22を配線25と接続する。
【0095】
この構造により、外部から到来したミリ波16は、筒状の導波管11と誘電体基板12を通過し心線20で受信され、その後SBDで検波され電圧に変換される。このSBDと等しい電位を持つ配線25の電位をデジタルボルトメータで測定することで、受信されたミリ波16は受信信号として出力される。
【0096】
以上により、実施例1で得られた作用効果に加え、本実施例8の電波受信モジュール10は、受信手段60が誘電体基板12の裏面に設置されるため回路や素子を配置する領域が広く、受信手段60に加えフィルタ回路などを加えることも可能である。また、心線20と受信手段60が同一平面上に存在するため、誘電体基板12にビアホール21などを生成する必要がなく、製造が容易となる。
【0097】
なお、本実施例では、金属板14に貫通孔15を設けた筒状の導波管11を例に説明を行ったが、図8に示す半絶縁性Si板30を用いた筒状の導波管11や、図9に示す金属板14を用いたホーン状の導波管40や、図10に示す半絶縁性Si板30を用いたホーン状の導波管40を用いても良い。
【0098】
〔実施例9〕
図11および図12を用いて実施例9について説明する。この実施例9における前述の実施例8との構成上の相違点は、本実施例では、誘電体基板12にビアホール21が設けられ、受信手段110を構成する心線20がこのビアホール21を通って、誘電体基板12の導波管11と接する側の面に存在する点である。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例9における説明を省略する。
【0099】
図11は、筒状の導波管11および誘電体基板12と受信手段110との関係を表す。この図11に示すように、前述の実施例8において用いた図6との相違点は、心線20が、アノード24が設置されている側とは反対側の誘電体基板12、すなわち筒状の導波管11側の誘電体基板12上に設置されている点と、パッド22と心線20とを電気的に接続するためのビアホール21が誘電体基板12に存在する点である。
【0100】
図12は、受信手段110の詳細図であり、受信手段110の構成について以下に述べる。誘電体基板12上に水平に心線20を形成し、心線20を形成した誘電体基板12の面とは反対側の面にパッド22と配線25、カソード23およびアノード24により構成されるSBDをマウントする。アノード24はパッド22に接続し、パッド22はビアホール21を介して心線20と接続する。また、カソード23は配線25と接続する。
【0101】
この構造により、外部から到来したミリ波16は、筒状の導波管11をアンテナとして心線20で受信された後、ビアホール21を介してSBDで検波され電圧に変換される。このSBDと等しい電位を持つ配線25の電位をデジタルボルトメータで測定することで、受信されたミリ波16は受信信号として出力される。
【0102】
以上により、実施例1で得られた作用効果に加え、本実施例9の電波受信モジュール10は、受信手段110の心線20を除く部分が誘電体基板12の裏面に設置されるため回路や素子を配置する領域が広く、受信手段110に加えフィルタ回路などを加えることも可能である。
【0103】
なお、本実施例9では、導波管として金属板14に貫通孔15を設けた筒状の導波管11を例に説明を行ったが、図13に示す半絶縁性Si板30を用いた筒状の導波管11や、図14に示す金属板14を用いたホーン状の導波管40や、図15に示す半絶縁性Si板30を用いたホーン状の導波管40によっても、同様の作用効果を得ることができる。
【0104】
〔実施例10〕
図16から図18を用いて実施例10について説明する。実施例10では、前述の実施例5において説明した電波受信モジュールを複数用いたイメージングセンサ160について述べる。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例10における説明を省略する。
【0105】
図16は、イメージングセンサ160の外観図を表す。この図16に示すように、イメージングセンサ160は、レンズ部161、導波管部162、受信部163、測定部164、外部回路165の5構成からなる。
【0106】
このイメージングセンサ160は、例えば車両に搭載され、車両外部の歩行者や他車両等の移動物体、壁やガードレール等の静止物体が自身で発しているミリ波16を検出して、これらの像を識別できるようにしたものである。
【0107】
図17を用いて、各部の詳細について述べる。図17(a)は誘電体により形成されるレンズ部161の詳細図である。レンズ部161は、導波管部162のミリ波16入力側の面に重ねて設置されている。
【0108】
図17(b)は、導波管部162の詳細図である。導波管部162には多数のホーン状の導波管40がアレイ状に備えられており、ミリ波16入力側の面にレンズ部161、ミリ波16出力側の面に受信部163が重ねて設置されている。
【0109】
図17(c)は、受信部163の詳細図である。受信部163は、誘電体、例えばアルミナにより構成される誘電体基板12と受信手段13により構成され、誘電体基板12の導波管部162側の表面には、前述した各ホーン状の導波管40の貫通孔15にあわせて1つずつ受信手段13がアレイ状に設置されている。各ホーン状の導波管40および各受信手段13は、レンズ部161の焦点面に配置される。また、受信部163は、ミリ波16入力側の面にある導波管部162とミリ波16出力側の面にある測定部164との間に挟設されている。
【0110】
図17(d)は、測定部164および外部回路165の詳細図である。測定部164の誘電体部163側の表面には、前述の各受信手段163に1つずつ測定手段170が設置されている。全測定手段170の出力は、外部回路165の一部であるAD変換手段171に入力される。
【0111】
図17(e)は、図17(a)から図17(d)のC−C線における断面図の一部を表す。この図17(e)に示すように、ホーン状の導波管40の内部は、レンズ部161を構成する誘電体と同一の素材によって、埋められている。
【0112】
図18は、入力されたミリ波16とレンズ部11およびホーン状の導波管40との関係を示す。図18(a)に示すように、レンズ部161に入力された各ミリ波16は、レンズ部161により屈折される。さらに、図18(b)に示すように、屈折された各ミリ波16は、ホーン状の導波管40に入力され、各ホーン状の導波管40の奥に存在する各受信手段13により受信される。各受信手段13が受信した受信波16は、測定手段170により電気信号である受信信号に変換され、外部回路165に出力される。なお、各受信信号は、受信したミリ波16を発した検出対象物体の温度を表す。さらに、この受信信号を、AD変換手段171を始めとする外部回路165により処理することで、物体の形状を判定することができる。
【0113】
これらの構成により、本実施例で提案のイメージングセンサ160は、前述の電波受信モジュール10をアレイ状に配置することで、奥行き方向が小型なイメージングセンサ160を実現できた。また、電波受信モジュール10が出力した受信信号を処理することで、ミリ波16を出力した物体の形状を判定することができる。
【0114】
〔実施例11〕
図19を用いて実施例11について説明する。この実施例11における前述の実施例10との構成上の相違点は、本実施例においては、レンズ部161から出力されるミリ波16に対して垂直な平面上で1つの電波受信モジュール10を駆動させることで物体の形状を判定するイメージングセンサ190である点である。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例11における説明を省略する。
【0115】
図19は、イメージングセンサ190の外観図およびブロック図である。図19に示すように、イメージングセンサ190は、レンズ部161と、電波受信モジュール10と、駆動手段191、位置検出手段192、外部回路165からなる。
【0116】
駆動手段191は、レンズ部161のミリ波16入力方向に対して垂直な面で、かつ、レンズ部161によりミリ波16が屈折される範囲において、この電波受信モジュール10を縦横に駆動させる。また、位置検出手段192は、駆動手段191によって移動する電波受信モジュール10の位置を計測し、位置情報として外部回路165に出力する。外部回路165は、電波受信モジュール10の出力する受信信号と位置情報とを処理することで、電波受信モジュール10がレンズ部161に対してどの位置で、どの程度の強度を持つミリ波16を受信したかを得ることができ、これに基づいてミリ波16を発した物体の形状を判定することができる。
【0117】
以上により、本実施例11で提案のイメージングセンサ190は、実施例10で奏した作用効果を得ながらも、単数の電波受信モジュール10を使用した簡易な構成となっている。
【0118】
〔その他の実施例〕
前述の実施例において、受信素子と外部回路165、グランドと外部回路165を切り替えるスイッチを受信素子と外部回路165との間に設けた場合、ノイズを含む受信信号とノイズを交互に外部回路165に入力することができる。これにより、ノイズを含む受信信号からノイズを除算することで、ノイズを含まない受信信号を抽出することができ、ミリ波16が微弱であってもこれを測定することができる。
【0119】
前述の実施例において、受信素子と外部回路(165)との間に、所定帯域の周波数のみを透過する帯域透過フィルタを設置した場合、ノイズ成分を除去することができ、ミリ波16が微弱であってもこれを測定することができる。
【0120】
前述の実施例において、受信素子と外部回路(165)との間に、遅延回路を設置した場合、受信した受信信号の位相を変化させることができる。
【0121】
実施例12および実施例13では、レンズ部161を形成する素材を誘電体としたが、これを半導体としても実施可能である。レンズ部161を半導体で形成した場合、誘電体で形成した場合に比べ屈折率を高くすることができる。
【0122】
実施例12および実施例13では、ミリ波16を屈折する手段としてレンズ部161を用いたが、レンズ部161をミラーとしても良い。
【0123】
前述の実施例では、心線20の形状について特に限定をしなかったが、接続する送受信素子の形状に合わせて、例えばマイクロストリップ型やコプレーナ型の線路形状を選択することができる。
【0124】
前述の実施例では、受信手段13、60、110における受信素子としてSBDを例に説明を行ったが、受信素子はこれに限定されない。例えばPNダイオードなどでも実施可能である。
【0125】
前述の実施例では、導波管の形状として、筒状の導波管11およびホーン状の導波管40を例に説明を行ったが、導波管の形状はこれに限定されない。例えば、円錐台形状の導波管などであっても実施可能である。また、金属板14などに貫通孔15をあけた形状でなくとも良い、例えば、筒状の導体の管を用いて、この管の一方の端部の開口を塞ぐように誘電体基板12などを設置してもよい。
【0126】
前述の実施例では、導波管11、40は、導波管11、40全体または表面が導体31であるとして説明を行ったが、導波管11、40の内周が誘電体であり、その誘電体の外周に導体を備える形状としてもよい。すなわち、導波管11、40が、誘電体に貫通孔15をあけ、貫通孔15内側に導体の管を埋め込み、さらに導体の管の内側に誘電体を埋め込む形式であっても、本実施例は実現可能である。
【0127】
前述の実施例では、筒状の導波管11またはホーン状の導波管40の内部は、誘電体により充填されているとして説明を行ったが、これらの導波管11、40の内部は誘電体により充填されていなくとも良い。例えば、真空であっても良いし、気体や半導体が充填されていても良い。
【0128】
前述の実施例1から実施例11では、受信手段13、60、110を用いた電波受信モジュール10について述べたが、この受信手段13、60、110を送信手段に置き換えた場合、ミリ波16を送信する電波送信モジュール10とすることができる。これにより、各種CWや変調波を小さな体格で送信することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】実施例1において用いられる図であり、図1(a)は筒状の導波管11を持ち受信素子が誘電体基板12の筒状の導波管11と接する側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図、図1(b)は電波受信モジュール10の断面図である。
【図2】実施例1において用いられる受信手段13の拡大図である。
【図3】実施例4において用いられるメッキ31処理された筒状の導波管11を持ち受信素子が誘電体基板12の筒状の導波管11と接する側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図4】図4(a)は、実施例5において用いられるホーン状の導波管40を持ち受信素子が誘電体基板12の筒状の導波管11と接する側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。図4(b)は、実施例5において用いられる電波受信モジュールの断面図である。
【図5】実施例7において用いられるメッキ31処理されたホーン状の導波管40を持ち受信素子が誘電体基板12のホーン状の導波管40と接する側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図6】実施例8において用いられる筒状の導波管11を持ち受信手段60が誘電体基板12の筒状の導波管11と接しない側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図7】実施例8において用いられる受信手段60の拡大図である。
【図8】実施例8において用いられるメッキ31処理された筒状の導波管11を持ち受信手段60が誘電体基板12の筒状の導波管11と接しない側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図9】実施例8において用いられるホーン状の導波管40を持ち受信手段60が誘電体基板12のホーン状の導波管40と接しない側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図10】実施例8において用いられるメッキ31処理されたホーン状の導波管40を持ち受信手段60が誘電体基板12のホーン状の導波管40と接しない側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図11】実施例9において用いられる筒状の導波管11を持ち心線20を除く受信手段110が誘電体基板12の筒状の導波管11と接しない側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図12】実施例9において用いられる受信手段110の拡大図である。
【図13】実施例9において用いられるメッキ31処理された筒状の導波管11を持ち心線20を除く受信手段110が誘電体基板12の筒状の導波管11と接しない側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図14】実施例9において用いられるホーン状の導波管40を持ち心線20を除く受信手段110が誘電体基板12のホーン状の導波管40と接しない側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図15】実施例9において用いられるメッキ31処理されたホーン状の導波管40を持ち心線20を除く受信手段110が誘電体基板12のホーン状の導波管40と接しない側の面に設置される電波受信モジュール10の鳥瞰図である。
【図16】実施例10において用いられる電波受信モジュール10をアレイ状に配置したイメージングセンサ160の外観図およびブロック図である。
【図17】実施例10において用いられる図であり、図17(a)はレンズ部161の外観図、図17(b)は導波管部162の外観図、図17(c)は受信部163の外観図、図17(d)は測定部164の外観図、図17(e)はイメージングセンサ160の断面図である。
【図18】実施例10において用いられる入力されたミリ波16とレンズ部11およびホーン状の導波管40との関係を表す図である。
【図19】実施例11において用いられる単数の電波受信モジュール10を用いたイメージングセンサ190の外観図およびブロック図である。
【図20】縦軸を減衰定数、横軸を周波数とした場合の、霧中における電波の減衰を表すグラフである。
【符号の説明】
【0130】
10 電波受信モジュール
11 筒状の導波管
12 誘電体基板
13 受信手段
14 金属板
15 貫通孔
16 ミリ波
20 心線
21 ビアホール
22 パッド
23 アノード
24 カソード
25 配線
30 半絶縁性Si板
31 メッキ
40 ホーン状の導波管
50 半絶縁性GaAs板
60 受信手段
110 受信手段
160 イメージングセンサ
161 レンズ部
162 導波管部
163 受信部
164 測定部
165 外部回路
170 測定手段
171 AD変換手段
190 イメージングセンサ
191 駆動手段
192 位置検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に導体が存在し、送信波または、および受信波(16)の出射または、および入射方向側が開口している導波管(11、40)と、
前記入射方向に対し垂直に、前記導波管(11、40)の前記開口とは反対側に位置する誘電体からなる基板(12)と、
前記送信波または、および前記受信波(16)を送受信するとともに前記基板(12)に水平に備えられる心線(20)と、前記心線(20)により送信された前記送信波または、および前記心線(20)により受信された前記受信波(16)を前記送受信信号として出力するとともに前記基板(12)に水平に備えられる送受信素子と、前記送受信素子により出力された前記送受信信号を外部回路(165)に伝達する配線(25)からなる送受信手段(13、60、110)とを備えることを特徴とする電波送受信モジュール(10)。
【請求項2】
前記心線(20)および前記送受信素子が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の同一面に位置し、
前記配線(25)が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面に位置する前記送受信素子と、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面とは逆の面に位置する前記外部回路(165)とを電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項3】
前記心線(20)と前記送受信素子と前記配線(25)とが、前記基板(12)の導波管(11、40)側の面とは逆の同一面に位置し、前記配線(25)が、前記送受信素子と前記外部回路(165)とを電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項4】
前記心線(20)が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面に位置し、
前記送受信素子が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面とは逆の面に位置し、
第二の配線(22)が、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面に位置する前記心線(20)と、前記基板(12)の前記導波管(11、40)側の面とは逆の面に位置する前記送受信素子とを電気的に接続し、
前記配線(25)が、前記送受信素子と前記外部回路(165)とを電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項5】
前記導波管(11)は、前記送信波を送信および、または前記受信波(16)を受信する空洞を備え、該空洞は、部材(14、30、50)に垂直な貫通孔(15)を開けたものであることを特徴とする請求項1から請求項4に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項6】
前記導波管(11)は、前記送信波を送信および、または前記受信波(16)を受信する空洞を備え、該空洞の形状は、前記基板(12)に対し垂直な直線を軸に四角形を回転させ生成される2箇所の円状の開口を備える円錐台であることを特徴とする請求項1から請求項4に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項7】
前記導波管(40)は、前記送信波を送信および、または前記受信波(16)を受信する空洞を備え、該空洞は六面体形状の空洞であることを特徴とする請求項1から請求項4に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項8】
前記六面体形状の空洞は、前記六面体の前記送信波が出射または、および前記受信波(16)が入射する側の開口の面積が、前記基板(12)側の開口の面積より広いことを特徴とする請求項7に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項9】
前記導波管(11、40)は、導電性の部材(14)に設けられた開口により構成されることを特徴とする請求項1から請求項8に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項10】
前記導波管(11、40)は、半導体部材に設けられた開口により構成されることを特徴とする請求項1から請求項8に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項11】
前記導波管(11、40)は、絶縁性または導電性を備える部材(30、50)に設けられた開口の表面に導電性物質(31)が重設されたことを特徴とする請求項1から請求項8に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項12】
前記送受信素子は、前記基板(12)上にエピタキシャル成長された半導体層を加工し形成されることを特徴とする請求項1から請求項11に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項13】
前記送受信素子は、前記基板(12)上にマウントまたは電気接続されることを特徴とする請求項1から請求項11に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項14】
前記送受信素子は、ショットキーバリアダイオードにより構成されることを特徴とする請求項1から請求項13に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項15】
前記送受信素子と前記外部回路(165)との間に設置され、該送受信素子より出力される前記受信信号と、該送受信信号に含まれるノイズ成分のみとを交互に該外部回路(165)に入力するスイッチを備えることを特徴とする請求項1から請求項14に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項16】
前記送受信信号の所定帯域成分のみを前記外部回路(165)に出力する帯域透過フィルタを、前記心線(20)と該外部回路(165)との間に備えることを特徴とする請求項1から請求項15に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項17】
前記送受信信号を前記外部回路(165)に対し、入力または、および出力するタイミングを遅延させる遅延回路を、前記心線(20)と該外部回路(165)との間に備えることを特徴とする請求項1から請求項16に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項18】
前記送信波または、および前記受信波(16)の進行方向に、該送信波を屈折または、および該受信波(16)を屈折し結像するレンズ(161)を備えることを特徴とする請求項1から請求項17に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項19】
前記レンズ(161)が、誘電体により構成されることを特徴とする請求項18に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項20】
前記レンズ(161)が、半導体により構成されることを特徴とする請求項18に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項21】
前記受信波(16)を屈折し、前記心線(20)に該受信波(16)を結像するミラーまたは、および前記心線(20)より出力された前記送信波を屈折するミラーを備えることを特徴とする請求項1から請求項17に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項22】
前記導波管(11、40)において、前記送信波または、および前記受信波(16)が通過する導体でない部分が真空である、または気体が充填されていることを特徴とする請求項1から請求項21に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項23】
前記導波管(11、40)において、前記送信波または、および前記受信波(16)が通過する導体でない部分は、誘電体が埋設されていることを特徴とする請求項1から請求項21に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項24】
前記導波管(11、40)において、前記送信波または、および前記受信波(16)が通過する導体でない部分は、半導体が埋設されていることを特徴とする請求項1から請求項21に記載の電波送受信モジュール(10)。
【請求項25】
前記電波送受信モジュール(10)を複数アレイ状に配置した電波送受信モジュール(10)アレイと、
前記電波送受信モジュール(10)アレイの各開口側に位置する前記レンズ(161)と、
前記電波送受信モジュール(10)アレイから出力された各受信信号を処理する前記外部回路(165)とを備えることを特徴とする請求項18から請求項20に記載の前記電波送受信モジュール(10)を用いたイメージングセンサ(160)。
【請求項26】
前記電波送受信モジュール(10)と、
前記電波送受信モジュール(10)を一定面積の範囲の中で駆動する駆動手段(191)と、
前記駆動手段(191)の位置情報を検出し出力する位置検出手段(192)と、
前記一定面積の範囲内を駆動する前記電波送受信モジュール(10)の開口に前記受信波(16)を屈折、結像する前記レンズ(161)と、
前記電波送受信モジュール(10)が出力した前記送受信信号と、前記位置情報とを処理する前記外部回路(165)とを備えることを特徴とする請求項18から請求項20に記載の前記電波送受信モジュール(10)を用いたイメージングセンサ(190)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2006−279776(P2006−279776A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98678(P2005−98678)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】