説明

電流センサ

【課題】小型で、エネルギー消費と応答時間を低減させた電流センサを提供する。
【解決手段】メタライズ層の平面に平行に位置している1つ以上の電流線10を備え、これら1つ以上の電流線は、測定されるべき1つ以上の電流が給電されるようになっており、測定コイル16、18、26、28または励振コイル36、38、40、42の巻線は、導電トラックによって形成され、これらの導電トラックは、それぞれのメタライズ層の中に作られ、これらのメタライズ層は、絶縁層の中の少なくとも1つを貫通するパッドによって互いに電気的に接続され、これにより、垂直軸に沿って伸びるコイルを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサ、およびこの電流センサを作るためのプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板(PCB)は、電気素子のセットの電気接続として使用されるキャリアである。このプリント回路基板は、一般的に、層状、または積層の板の形をしている。このプリント回路基板は、単一の層、または多層のプリント回路基板として作ることができる。単一層のプリント回路基板は、ただ1つのメタライズ層を有し、このメタライズ層の中に、種々の異なる電気素子を互いに電気的に接続しているプリント導電トラックが存在する。一方、多層プリント回路基板は、複数のメタライズ層を有し、少なくとも2層、4層または6層よりも多いことが望ましい。本明細書における以下の記述は、主として、これらの多層プリント回路基板に関している。
【0003】
1つのメタライズ層は、プリント回路基板を形成している複数の層状の板の中の1つの層であり、この中に1つ以上の導電トラックが作られ、この導電トラックは、種々の異なる電気素子を互いに電気的に接続している。この層は、平坦であり、層状の板の面と平行に広がっている。一般に、メタライズ層は、導電材料(典型的に、銅等の金属)の均一層を堆積させ、その後、この均一層をエッチングして、導電トラックだけを残すことにより得ることができる。
【0004】
プリント回路基板の異なるメタライズ層は、電気絶縁材料からなっている絶縁層によって、機械的に互いに隔てられている。この絶縁材料は、高い絶縁耐力(すなわち、典型的に、3MV/mより大きく、また、10MV/mより大きいことが望ましい)を有する。例えば、電気絶縁材料は、エポキシ樹脂、および/またはグラスファイバーでできている。この絶縁層は、一般に、他の層と結合された際に粘稠にならない材料からできた強固な板の形をしている。例えば、この絶縁層は、非可逆的な熱硬化を経た熱硬化性樹脂でできている。
【0005】
多層プリント回路基板の異なる層は、「予備含浸させた」層として公知(更に一般的には、「プリプレグ」層として公知)の接着層によって、互いに自由度なく結合されている。
【0006】
予備含浸させた層は、一般的に、布等の強化要素に予備含浸させた、熱硬化性樹脂によって構成されている。典型的には、樹脂は、エポキシ樹脂である。プリント回路基板の製造工程において、熱硬化性樹脂の変性は、非可逆重合を行う。この非可逆重合は、予備含浸させた材料を、硬くかつ強固な材料に変換することにより、プリント回路基板の異なる層を非可逆的に結合させる。典型的に、各変性は、予備含浸させた層が高温に加熱され、高圧で圧縮されたときに行われる。ここで、高温とは、温度100℃よりも高く、また150℃よりも高いことが望ましい。高圧とは、0.3MPaよりも高い圧力であり、典型的には、1MPaよりも高い圧力である。
【0007】
異なるメタライズ層の導電トラックは、絶縁層を貫通する導電パッドによって、電気的に接続することができる。この導電パッドは、一般的に「ヴィアホール」として知られている。ヴィアホールは、一般に、層の平面に対して垂直方向に伸びている。これらのヴィアホールを作るには、いくつかの異なる方法がある。最も一般的な1つの方法は、1つまたは複数の絶縁層を貫通したホール(孔)を作り、その後に、これらのホールの内部壁を、金属でコーティングすることである。このようにして作られたホールは、メタライズホールと呼ばれる。
【0008】
ヴィアホールは、プリント回路基板の全ての層を貫通している必要はない。従って、プリント回路基板の1つの外部の面だけに開口しているブラインドホールがある。現在では、例えば、HDI(高密度集積)技術等の公知の技術によって、「埋め込み」ヴィアホールを作ることも可能である。埋め込みヴィアホールは、プリント回路基板のいずれの外部の面に対しても、開口はしていない。例えば、埋め込みヴィアホールは、プリント回路基板の中に埋め込まれたメタライズ層の中に作られた導電トラックを、電気的に接続している。
[従来技術]
【0009】
従来の電流センサは、プリント回路と1つ以上の電流線とを備えている。
−このプリント回路は、
・垂直方向に、電気絶縁層によって互いに機械的に隔てられた、複数のメタライズ層のスタックと、
・垂直の巻き線軸の周りに巻かれた、少なくとも1つの測定コイル、または励振コイルであって、各コイルは、メタライズ層の内の少なくとも1つの中に作られている導電トラックによって形成されているコイルとを備えており、
−この1つ以上の電流線は、メタライズ層の平面と平行に配置され、測定されるべき1つ以上の電流によって、給電されるようになっている。
【0010】
この種類の電流は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0011】
従来のセンサにおいては、測定コイルおよび励振コイルは、それぞれ、単一のメタライズ層の上に作られている。そのため、このコイルは、「平面」コイルと呼ばれている。これらのコイルの巻線を形成するために、各コイルは、メタライズ層の中で、スパイラルを描く。
【0012】
従来技術は、特許文献1および2からも知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第2008/316655A1号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許第10310503A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願第7372261号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】T.O’Donnel,A.Tipek,A.Connel,P.McCloseky,S.C.O’Mathuna,“Planar fluxgate current sensor integrated in printed circuit board”,Sensors and Actuators A 129(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のセンサは、正確に動作する。しかしながら、それらの精度、または小型化を向上させること、またはそれらのエネルギー消費と応答時間とを、低減させることが望ましい。
【0016】
従って、本発明の目的は、電流センサであって、各コイルの巻き線は、導電トラックによって形成され、導電トラックは、それぞれのメタライズ層の中に作られ、絶縁層の中の少なくとも1つを貫通しているパッドによって、互いに電気的に接続され、これにより、垂直な軸に沿って伸びているコイルが形成されている電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電流センサは、「垂直」コイル(垂直の巻き線軸に沿って伸び、巻かれているコイル)を使用している。同じ巻線数に対して、垂直コイルは、平面コイルの磁界と比較して、より均一な磁界を検出または生成する。従って、本発明によるセンサの、精度は改善されている。
【0018】
このセンサの実施形態は、次に示す特徴の中の1つ以上を備えることができる。
・プリント回路は、各垂直な巻き線軸に沿って作られたホールを備え、センサは、このホールに収容された磁気コアを有し、この磁気コアは、横方向の寸法(すなわち、層の平面に平行な方向の寸法)を有する。その寸法は、ホールの、対応した横方向の寸法より少なくとも5μmは小さい。これにより、ホールの垂直壁と、それに面した磁気コアの垂直面との間に間隙が作り出される。
・前記少なくとも1つのコイルは、第1のペアの測定コイルを有する。第1のペアの測定コイルは、第1の測定コイルおよび第2の測定コイルによって形成され、これら第1の測定コイルおよび第2の測定コイルは、電流線のそれぞれの側に位置している。この構成によって、これらのコイルのそれぞれによって測定された磁界の差、または和が、1つまたは複数の電流線によって生成される磁界Biを保存し、プリント回路の表面の全面にわたって存在する、いずれの均一磁界の寄与をも低減させることができる。
・1つのスルーホールが、各コイルの中心のところに設けられ、センサは、第1のペアの測定コイルの中心のところにあるホールを通る、1つの同様の磁気リングを有する。
・前記少なくとも1つのコイルは、1つ以上の電流線に沿って交互に位置する第1および第2のペアのコイルを有する。各コイルのペアは、これら1つ以上の電流線のそれぞれの側に位置する第1の測定コイルと第2の測定コイルとを備え、各コイルの中心のところにスルーホールが作られている。また、センサは、第1の磁気リングと第2の磁気リングとを備え、第1の磁気リングは、第1のペアの測定コイルの中心のところにあるホールを通り、第2の磁気リングは、第2のペアの測定コイルの中心のところにあるホールを通っている。
・前記少なくとも1つのコイルは、1つ以上の電流線に沿って交互に位置する第1および第2のペアのコイルを備え、各コイルのペアは、これら1つ以上の電流線のそれぞれの側に位置する第1の測定コイルと第2の測定コイルとを備え、各コイルの中心のところにスルーホールが設けられている。また、センサは、第1の磁気リングと第2の磁気リングとを備え、第1の磁気リングは、各ペアの第1のコイルの中心のところにあるホールを通り、第2の磁気リングは、各ペアの第2のコイルの中心のところにあるホールを通っている。これにより、各磁気リングが、これら1つ以上の電流線が通る垂直面の各側に位置するようになっている。
【0019】
これらの実施形態は、次の利点を有する。
−ホールの中に磁気コアを収容することにより、ホールの垂直壁によって、このコアに働く可能性がある、機械応力(特に温度変形によって生ずる)が、除去または大幅に抑制される。これにより、センサの精度が改善される。
−第1の測定コイルと第2の測定コイルとを、電流線のそれぞれの側に位置させることにより、プリント回路の表面の全面にわたって存在する均一な外部磁界(地磁気による磁界等)を補償することができる。
−測定コイルの中心を通り、導電線の周囲を取り巻く磁気リングを使用することにより、センサの感度が増加する。
−それぞれが電流線の各側に位置する2つの磁気リングを使用することにより、プリント回路を設計する際に、測定コイルと電流線との間の距離を調整して、各測定コイルによって生成される電圧を調整することができる。
【0020】
本発明の目的はまた、上記で述べた電流センサのためのプリント回路であり、このプリント回路は、
−垂直方向に沿って、電気絶縁層によって互いに機械的に隔てられた複数のメタライズ層のスタックと、
−垂直の巻き線軸の周りに巻かれた、少なくとも1つの測定コイルまたは励振コイルと、
−測定するべき1つ以上の電流によって給電される1つ以上の電流線とを備え、
−少なくとも1つの測定コイルまたは励振コイルの各コイルの巻き線は、それぞれのメタライズ層の中に作られている導電トラックによって形成され、導電トラックは、絶縁層の中の少なくとも1つを貫通したパッドによって互いに電気的に接続され、これにより、垂直軸に沿って伸びているコイルが形成されている。また、1つ以上の電流線の中の各電流線は、スタックの少なくとも1つのメタライズ層の中に作られている導電トラックによって形成されている。
【0021】
このプリント回路の実施形態は、さらに次に示す特徴の中の1つ以上を備えることができる。
・前記少なくとも1つのコイルは、
−電流線のそれぞれの側に位置する第1のコイルと第2のコイルとによって形成されている第1のペアのコイルであって、第1のコイルは、第1の垂直平面に関して、第2のコイルと対称である、第1のペアのコイルと、
−第1の垂直平面に垂直な第2の垂直平面に関して、第1のペアのコイルと対称である、第2のペアのコイルとを備えている。
・前記少なくとも1つのコイルは、測定コイルと励振コイルとを備え、これらのコイルは、同心円状である。すなわち、これらのコイルの各コイルの巻線は、同一のメタライズ層の中に作られ、同一の巻き線軸の周りに巻かれている。
・前記少なくとも1つのコイルは、第1の測定コイルと第2の測定コイルとを備え、各電流線は、
−第1の測定コイルと第2の測定コイルとの間を通り、互いに上下に位置するそれぞれのメタライズ層の中に作られている、少なくとも1つの第1および1つの第2の導電トラックと、
−測定コイルの間を通らずに、これら2つの導電トラックの直列接続を構成し、この2つの導電トラックによって、測定コイルの中の少なくとも1つを完全に取り巻くループを形成している電気接続とを備え、この電気接続によって、この電気接続が給電される際に、電流は、測定コイルの間を同じ方向に複数回流れるようになっている。
【0022】
このプリント回路の実施形態は、更に、次の利点を有する。
−2つのコイルの間の軸対称性によって、これらのコイルによって測定または生成される磁界の均一性を増大させることができ、これにより、これらのコイルを組み込んでいるセンサの精度を改善することができる。
−測定コイルおよび励振コイルが同心円状であるため、センサのエネルギー消費が抑制され、このセンサの応答時間を減少させることができる。
−電流が、測定コイルの間を同一の方向に、複数回数流れるように電流線を作ることにより、このプリント回路を使用して作るセンサの感度を増大させることができる。
【0023】
以下の記述から、本発明をより明確に理解しうると思う。これらの説明は、添付図面を参考にして、単に、非網羅的実施例として示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電流センサの回路構成を示す図である。
【図2】図1のセンサを作るために使用するプリント回路のメタライズ層の平面図である。
【図3】偶数番目のメタライズ層の中に作られた、図1に示すセンサのコイルの導電トラックを示す図である。
【図4】奇数番目のメタライズ層の中に作られた、図1に示すセンサのコイルの導電トラックを示す図である。
【図5】図1のセンサのプリント回路を示す図であり、プリント回路の異なる層が分離されて示されている。
【図6】図5に示すプリント回路の電流線の平面図である。
【図7】垂直コイルの別の実施形態の斜視図である。
【図8】図1に示すセンサの別の実施形態の単純化した平面図である。
【図9】電流センサの別の実施形態に対するプリント回路のメタライズ層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
これらの図において、同一の符号は、同一の要素を示す。
【0026】
本明細書の以下の記述では、当業者に公知の特徴および機能については、詳細に説明しない。
【0027】
図1は、電流センサ2を示す。この図1は、単に、センサの動作を説明するためのものである。このセンサの実施形態の詳細な例を、次に説明する。
【0028】
センサ2は、プリント回路4と電子処理ユニット6とを有する。
【0029】
プリント回路4は、多層プリント回路であり、この多層プリント回路のメタライズ層は水平になっている。
【0030】
この実施形態においては、プリント回路4は、線10を有し、この線10の中を、測定されるべき電流が流れる。図1においては、この線10の2つの断面12、14だけが示されている。これらの2つの断面は、線10の連続した2つの断面である。
【0031】
線10は、磁界Biを生成する。磁界Biの磁力線は、電流線の周りに円を形成する。従って、線10のそれぞれの側、およびこの線10から同じ距離に位置する2つの点における磁界Biは、振幅は等しく、方向は互いに逆方向である。磁界Biの振幅は、線10の中を流れる電流iの強度に依存する。
【0032】
プリント回路4はまた、2つのペアのコイルを有する。第1のペアは、2つの測定コイル16、18によって形成されている。測定コイル16、18は、それぞれ、垂直軸20および22の周りに巻かれており、垂直面20および22は、プリント回路4のメタライズ層の面と直交している。これらの測定コイル16および18は、線10の各側に位置していることを除いて、同一である。測定コイル16および18は、線10を通る垂直面24に関して、互いに対称であることが望ましい。測定コイル16および18の巻線は、可飽和磁気コアの周りに巻かれている。この磁気コアは、図1には示されていない。典型的には、磁気コアは、強磁性体材料からなる磁気コアであり、この磁気コアに対する静的比透磁率(すなわち、直流における透磁率)は、非常に大きい。「非常に大きい静的比透磁率」という表現は、静的比透磁率が、1000より大きい、また望ましくは、10000または100000より大きいということを意味している。例えば、磁気コアは、mu−material、または市販品として公知の磁気材料(Vitrovac(登録商標)6025)等の材料から作られている。
【0033】
各測定コイル16、18は、垂直方向に互にスタックされ、2より大きな、また望ましくは、3または6より大きな数の巻線数を備えている。
【0034】
本明細書における以下の説明では、測定コイル16および18によって測定した磁界を、それぞれ、M1およびM2とする。
【0035】
測定コイルの第2のペアは、垂直面24と直交する垂直面25に関して、第1のペアと対称である。第2の面は、線10に沿って、第1のペアに関して下流または上流に位置している。この第2のペアの測定コイルは、それぞれ、測定コイル26および28を搭載している。測定コイル26および28が巻かれている垂直軸は、それぞれ、基準軸30および32を形成している。
【0036】
プリント回路4はまた、4つの励振コイル36、38、40、および42を有する。これらのコイル36、38、40、42は、それぞれ、垂直軸20、22、30、および32の周りに巻かれた、複数巻線数の巻線からなっている。典型的に、垂直方向に1つずつ積み上げられてスタックされている、各励振コイルの巻線数は、2以上であり、また、3または6以上であることが望ましい。ここで、各励振コイルは、それぞれの対応した測定コイルと同心円になっている。ここで、「同心円」という用語は、これらのコイルのそれぞれの巻線が、同一のメタライズ層の中に作られており、同一の巻き線軸の周りに巻かれているということを示している。同心円コイルの全ての巻線は、そのコイルと同心円状にある他のコイルの巻線と、同じメタライズ層の中に作られていることが望ましい。ここで、測定コイルは、励振コイルの周りに巻かれている。図1を明確にするために、コイル36〜42は、それらが関連する測定コイルの横に示されている。
【0037】
励振コイルは、測定コイルの場合と同様に、垂直面24および25に関して、互いに対称になっている。この実施形態においては、これらの励振コイルは、電気的に直列接続されている。従って、各励振コイルは、磁界Bexを生成し、磁界Bexは、各励振コイルが関連している測定コイルの磁気コアの中の振幅と同じ振幅を有する。更に具体的には、コイル38および40は、双方が同じ方向の磁界Bexを生成するように電気的に接続され、また、励振コイル36および42は、コイル38および40の磁界と反対の方向に磁界Bexを生成するように接続されている。ここでは、「接続される」という用語は、電気接続を行うと言うことを意味している。
【0038】
各励振コイルは、上側および下側の端部巻線を有する。これら上側および下側の端部巻線は、励振コイルと同じ番号で示し、上側および下側に関しては、それぞれの番号の後に、文字「A」および「G」を付してある。この実施形態においては、励振コイルは、次に示すように直列接続されている。
−下端部巻線40Gは、直接に励振電流源に接続されている。
−上端部巻線40Aは、直接に下端部巻線38Gに接続されている。
−上端部巻線38Aは、直接に上端部巻線36Aに接続されている。
−下端部巻線36Gは、直接に上端部巻線42Aに接続されている。
−下端部巻線42Gは、直接に電流源に接続されている。
【0039】
上記のパラグラフにおいて、「直接に」という語は、巻線は、コイル36〜42の中の別のコイルを通らずに、互いに接続されているということを示している。
【0040】
従って、それぞれコイル16、18、26、および28によって測定された磁界M1、M2、M3、およびM4は、次の関係式で与えられる。
− M1=T−Bi−Bex
− M2=T+Bi+Bex
− M3=T−Bi+Bex
− M4=T+Bi−Bex
ここで、Tは、プリント回路4の表面の全面にわたる均一な磁界である。
【0041】
「均一な磁界」という語は、この磁界Tは、プリント回路4の全ての点において、同一方向かつ同一振幅であるということを示している。典型的には、この磁界Tは、地磁気による磁界である。
【0042】
処理ユニット6は、コイル16、18、26、および28によって得られた測定値M1、M2、M3、およびM4を捕捉し、これらから、線10を通して流れる電流iの強度を導出する。この目的のために、ユニット6は、測定値M1、M2、M3、およびM4の中で補償を行い、磁界BexおよびTの寄与を除去し、磁界Biの寄与だけを取り出す。例えば、この目的のために、ユニット6は、簡単な数学的演算によって、測定磁界M1、M2、M3、およびM4を合成する。ここで述べている実施形態では、補償した磁界は、次の関係式によって得られる。
2+M4−M1−M3=4Bi
ここで、測定コイル16、18、26、および28は、上で述べた合計値が得られるように、互いに電気的に接続されていることが望ましい。そして、この合計の結果だけが、ユニット6に送信される。
【0043】
従って、ユニット6は、磁界BexおよびTの寄与を、自動的に補償することができる
【0044】
この特定の場合では、ユニット6はまた、励振電流も生成する。
【0045】
典型的に、ユニット6は、集積電子回路を使用して作られる。
【0046】
図2は、プリント回路4のメタライズ層を示す。プリント回路4は、垂直方向(Z)への、7つのメタライズ層のスタックによって作られている。各メタライズ層は、2つの直交軸(XおよびY)が作る平面に平行な水平面に沿って伸びている。ここで示されているメタライズ層は、中間メタライズ層(すなわち、それぞれがプリント回路4の上面および下面を形成している上部メタライズ層および下部メタライズ層の間に含まれる層)である。これら上面および下面は、図には示されていない。
【0047】
線10は、複数の導電トラックによって形成され、これらの導電トラックは、垂直ヴィアホールによって直列接続された異なるメタライズ層の中に作られている。図2では、導電トラック44だけを見ることができる。各導電トラックは、
−同じペアの2つの測定コイルの間を通る、直線セグメント46と、
−線10の異なるセグメントを直列接続している2つのループ部48、49とを備えている。
【0048】
ここで、直線セグメント46は、垂直面50および52を貫通している。垂直面50は、軸30および32を含む面であり、また、平面52は、垂直軸20および22を含む面である。直線セグメント46は、垂直面50および52と直交している。
【0049】
線10が垂直面50および52と交差している方向は、線10が直流電流によって給電された際に、電流がそれらの面と交差する方向に対応している。
【0050】
ループ部48および49は、線10の各セグメントを流れる電流が、常に垂直面50および52と同じ方向に交差するように配置されている。これにより、線10の上側セグメントの中を流れる電流を、その下に位置するセグメントに向かって移すようにすることができる。これらのループ部48および49は、垂直軸20および22の間、または基準軸30および32の間を通らない。このようにするために、ループ部48および49は、測定コイルの外側を迂回する。ここで、「外側」とは、プリント回路4の上で、垂直面24に最も近く位置する測定コイルが設置されている側の反対の側に位置している領域を意味している。
【0051】
線10に関し、図6を参照して、より詳細に説明する。
【0052】
図6に示すように、2つのペアの測定コイルが、Y方向に交互に設けられ、このY方向に沿って、直線セグメント46が伸びている。
【0053】
回路4はまた、4つのホール54、56、58、および60を有し、これらのホールは、回路4の片側から他方の側へ垂直に交わっている。これらのホールは、磁気コアを受け入れるようになっている。この磁気コアの例を、図5に示す。これらのホールは、それぞれ、垂直軸20、22および基準軸30、32に沿った中空の形状をしている。これらのホールは、長円形である。ホール54および56の最大幅は、垂直面52に含まれ、ホール58および60の最長幅は、垂直面50に含まれている。
【0054】
図3および図4は、それぞれ、測定コイル26および40の導電トラックの詳細を示す。これらは、それぞれ、偶数番目および奇数番目の中間メタライズ層の中に作られている。ここでは、これらのコイルは、偶数番目および奇数番目のメタライズ層を、Z方向に、1つずつ交互に積み上げることにより形成されている。これらの図において、導電トラックは、コイルと同一の符号を付してあるが、その後に、偶数番目のメタライズ層に対しては「P」を、また奇数番目のメタライズ層に対しては、「I」を記してある。これらの図においては、導電トラックの終端部は、ドットまたは円で示してある。ドットおよび円は、それぞれ、ヴィアホールの、下端部および上端部を表している。
【0055】
トラック40Pは、ヴィアホール62から出発して、ヴィアホール63まで、ホール58の周りに内部から外部へ反時計方向に巻かれている。
【0056】
同様に、トラック26Pは、ヴィアホール64から出発して、ヴィアホール65まで、トラック40Pの周りに内部から外部へと反時計方向に巻かれている。
【0057】
その直下にある奇数番目のメタライズ層では、トラック40Iは、ヴィアホール63からヴィアホール66まで、ヴィアホール58の周りに外部から内部へと反時計方向に巻かれている。
【0058】
トラック26Iは、ヴィアホール65から出発して、ヴィアホール67まで、トラック40Iの周りに外部から内部へと反時計方向に通っている。
【0059】
各偶数番目および奇数番目のメタライズ層においては、コイル26および40のトラックは、ホール58の周りに、いくつかの巻線を有している。
【0060】
図3および図4においては、補償コイルのトラック68Pおよび68Iもまた示されている。これらのトラックは、測定コイルのトラックの周りに巻かれている。補償コイルによって磁界が生成され、この磁界によって、ホール58の中に挿入されている磁気コアの中の磁界を打ち消すことが可能になる。従って、線10の中を流れる電流の強度は、コイル68に給電している電流の強度から導き出すことができる。これによって、特に、磁気コアの中が磁界ゼロの場合でも動作することが可能になる。
【0061】
この実施形態においては、トラック26I、40I、および60Iは、垂直面50に関する軸対称性によって、トラック26P、40P、および68Pから導き出される。従って、偶数番目および奇数番目のメタライズ層の導電トラックを、同じ面上に重ね合わせることによって、垂直面50に含まれる軸に沿った軸対称性を有するパタンが形成される。
【0062】
ヴィアホール62〜67は、全て垂直面50の中に含まれている。
【0063】
以下の説明では、補償コイルは、測定コイルと同様のものであり、従って、詳細な説明は行わないことにする。
【0064】
他のコイル16、18、28、36、38、および42のトラックは、垂直面24および25に関する対称性によって、コイル26および40のトラックから導き出される。
【0065】
図5は、プリント回路4の異なるいくつかの層のスタックを、より詳細を示している。図5では、それらの層を示すために、層を分離して示している。ここでは、プリント回路4は、それぞれ、絶縁層80〜85によって機械的に隔てられた、7つの中間メタライズ層70〜76を備えている。
【0066】
導電トラックは、メタライズ層70〜76のそれぞれの中に作られ、線10と、測定コイル26および28と、励振コイル40および42とを形成している。図5においては、プリント回路は、垂直面50に沿う断面が示されている。
【0067】
図5においては、コイルの巻線は、このコイルに対する符号を記した後に、上端部巻線から出発して下端部巻線に終わるコイルに対して、文字A、B、C、D、E、F、およびGを記している。従って、符号がA、B、C、D、E、F、およびGで終わる巻線は、それぞれ、メタライズ層70、71、72、73、74、75、および76の中に作られている。各コイルのトラックは、垂直ヴィアホール(図示せず)によって、直列接続されている。この図を単純化するために、トラックがホール58および60の周りに複数の巻線を作っている場合であっても、同じコイルの導電トラックは、単純な矩形で表されている。
【0068】
線10もまた、メタライズ層70〜76の中に作られた7つの導電トラックを有する。メタライズ層70〜76の中で、線10は、
−それぞれ、符号46および101〜106を有し、測定コイルの各ペアの間を、垂直面25、50、および52に垂直な方向に通る直線セグメントと、
−それぞれ、符号48および111〜116を有するループ部とを備えている。
【0069】
セグメント46および101〜106と、ループ部48および110〜116とは、それぞれ、層70〜76の中に作られている。セグメント46および101〜106は、Z方向に1つずつ上にスタックされている。それらもまた、垂直面24に関して対称である。
【0070】
この実施形態においては、線10の導電トラックが、垂直な方向に隣り合って連続した2つのメタライズ層の中に作られている場合には、同じ面に重ね合わされる際には、これらのトラックは、垂直面24に関して、互いに対称に形成される。従って、ループ部48、112、114、および116は、コイル16および26の外側を囲み、ループ部111、113、および115は、コイル18および28の外側を囲んでいる。
【0071】
上記のようにして得られた線10の構造を、図6を参照して詳細に説明する。
【0072】
図5はまた、ホール58および60の中に収容されている磁気コア120を示している。この磁気コアは、磁界BiおよびBexを導くチャネルになっている。ここで、磁気コアは、リングの形状を有し、このリングは、2つの垂直アーム122および124を備え、これらの垂直アームは、それぞれ、ホール58および60を通して、片方の側から他方の側へとプリント回路と交差している。アーム122および124の下端部は、プリント回路の下面から張り出しており、水平アーム126によって、機械的また磁気的に互いに接続されている。水平アーム126は、導電トラック40G、26G、106、28G、および42Gの上方を通過している。垂直アーム122および124の上端部は、導電トラック40A、26A、46、28A、および42Aの上方を通過している水平部128によって、機械的また磁気的に互いに接続されている。従って、磁気コア120は、線10のセグメント46および101〜106を完全に囲んでいる。
【0073】
コア120は、磁気材料から作られている下部U形状部分および上部U形状部分からできている。各部分は、それぞれ、水平アーム126および128を形成している底部を有する。下部は、2つの垂直アーム130および132を有し、上部は、2つの垂直アーム140および142を有する。垂直アーム130および132は、それぞれ、ホール58および60の中に、プリント回路の下面から挿入されている。反対に、アーム140および142は、それぞれ、ホール58および60の中に、プリント回路の上面から挿入されている。アーム130および140は、プリント回路の厚さの中で、Y方向に積み重ねられ、2つのU形状部分の間の磁気回路の連続性が確立されている。ここで、アーム130および140は、それらの高さの1/3より大きな部分が重なっている。アーム132および142の場合も同様である。
【0074】
ホール58および60の中の磁気コア120の横方向の最大寸法は、対応したホール58および60の横方向の寸法と比較して、厳密に少なくとも5μmは小さく、また、少なくとも100μmは小さいことが望ましい。ここで、「横方向の寸法」という用語は、水平面に位置した寸法のことを言っている。ここで、コア120の横方向の最大寸法は、垂直アーム130と140、および132と142とが重なっている部分に対応している。ホールと磁気コア120との寸法のこれらの差は、ホールの磁気壁とそれに面している磁気コアの面との間に間隙を作り出している。この間隙は、プリント回路4によって磁気コアに加えられる機械的圧力を軽減するものである。これにより、センサ2の精度が改善される。
【0075】
ホール54および56の中に挿入された磁気コアは、コア120に対して説明したように設置される。
【0076】
図6は、線10のトラック44およびトラック91の平面図である。直下に位置するメタライズ層の中に作られているトラック91は、破線で示してある。図を明確にするために、セグメント46および101は、X方向に、互いにオフセットさせてあり、これらのセグメントの垂直な方向への重ね合わせを見やすくしてある。この図に示すように、直接に連続しているメタライズ層の線10の導電トラックのZ方向へのスタックは、上から見て、「8」の字を描いている。
【0077】
図7は、垂直コイル150の別の実施形態を示す。この実施形態においては、各メタライズ層の中には、単一巻線150A〜150Gが形成されている。巻線150A〜150Gは、ヴィアホール161〜166によって互いに電気的に接続されている。更に具体的には、ヴィアホール161〜166は、それぞれ、
−巻線150Aと150B、
−巻線150Bと150C、
−巻線150Cと150D、
−巻線150Dと150E、
−巻線150Eと150F、
−巻線150Fと150Gを接続している。
【0078】
この実施形態においては、ヴィアホール161〜166は、上から見て、コイル150の外周縁部の長さ方向に沿って、均一に分布している。この条件では、これらのヴィアホールは、スルーホール、ブラインドホール、または埋め込みホールである。
【0079】
プリント回路4の種々の異なるコイルは、コイル150で説明したように作ることができる。
【0080】
図8は、電流センサ170を示す。この電流センサ170は、プリント回路172と処理ユニットとを含んでいる。処理ユニットは、処理ユニット6と同様のものであり、図示されてはいない。プリント回路172は、例えば、プリント回路4と同じであるが、プリント回路172が2つの「フラックスゲート」センサで示されている点が異なっている。これらの2つの「フラックスゲート」センサは、それぞれ、垂直面24のそれぞれの側に置かれる。このようにするために、ホール54、56、58、および60は、それぞれ、長円形の、ホール174〜177で置き換えられており、それらの最大幅は垂直面24と平行である。
【0081】
この実施形態においては、センサ170は、2つの磁気コア178および179を有する。これらのコアは、それぞれリング状をしている。しかしながら、この実施形態においては、コア178は、ホール174と176とを通り、コア179は、ホール175と177とを通っている。これらのコア178および179は、例えば、図5で説明したように作られる。従って、これらのコア178および179は、電流線10の周囲を取り囲んではない。
【0082】
ホール174〜177と線10との間の距離を調整することにより、測定コイルが生成する電圧を調整することができる。従って、このセンサ170は、高い強度の電流(すなわち、1Aを超える電流強度、また、望ましくは100A、または1000Aの電流強度)を測定するように、容易に適合させることができる。
【0083】
図9は、プリント回路の200のメタライズ層を示す。プリント回路200は、3つの長円形ホール202〜204を有する。これらのホール202〜204の最大幅は、垂直平面206に含まれている。平面206はまた、ホール202〜204の対称平面を形成している。ホール202〜204はまた、平面206に垂直な垂直平面208に関して対称である。ホール203は、平面206および平面208の交線として規定される軸Oに沿って伸びている。
【0084】
垂直励振コイル210は、ホール203の周りに巻かれ、他の2つの垂直励振コイル212および214は、それぞれ、ホール202および204の周りに巻かれている。
【0085】
垂直測定コイル216および218は、それぞれ、ホール202および204の周りに巻かれている。この図においては、垂直補償コイル220および222は、それぞれ、コイル216および218の周りに巻かれていることが示されている。
【0086】
プリント回路200はまた、2つの導電線224および226を有し、これらの導電線の中を、測定されるべき2つの電流が流れる。上記で述べたように、これらの導電線は、異なるメタライズ層の中に作られた導電トラックによって形成される。図9においては、それぞれ、導電トラック228および30と、線224および226とだけが示されている。これらのトラック228および230は、直線で構成されており、平面206に垂直な方向に伸びている。トラック228は、ホール202とホール203との間に配置され、トラック230は、ホール203およびホール204との間に配置されている。
【0087】
ホール202〜204の中に挿入された磁気コアの3つのアームは、プリント回路200の上と下で、磁気水平メンバによって、実質的に互いに水平に磁気的に接続されている。
【0088】
典型的には、プリント回路200は、差動電流センサを作るようになっている。このようにするために、測定されるべき電流は、これらの線の中を反対方向に流れ、線224および226は、これらの電流に接続されている。従って、コイル216は、次に示す測定を実行する。
a=B1−B2+Bex
コイル218によって得られる測定値は、次に示す関係式によって与えられる。
b=−B1+B2+Bex
磁界B1およびB2は、それぞれ、線224および226の中を流れる電流によって生成された磁界である。磁界Bexは、励振コイル210、212、および214によって生成された磁界である。
【0089】
従って、測定値M1およびM2の間の異は、磁界B1およびB2の間の差の測定値の補償された値である。この差から、電子プロセッサは、線224および226の中を流れる電流強度の間の差を導き出す。この種の差動電流センサは、差動回路ブレーカを作るために有用である。
【0090】
多くの他の実施形態も可能である。例えば、補償コイルを使用することもできる。これらの補償コイルによって、ゼロ磁界の中で動作させることができる。補償コイルは、センサの他のコイルで説明したように作ることができる。
【0091】
別の実施形態においては、1つかつ同一のセンサが、いくつかの機能を実行することができる。例えば、1つかつ同一のコイルが、測定コイルの機能と励振コイルの機能とを実行することができる。この場合には、励振コイルを省略することができる。1つかつ同一のコイルが、測定コイルの機能と補償コイルの機能とを実行することもできる。
【0092】
同じペアのコイルが、垂直面24に関して対称に配置されることは、必ずしも必要ではない。この場合には、測定コイルがこの面24に関して対称でない際には、磁気コアは、導電線の周りに巻かれなければならない。別の実施形態においては、この対称性が守られない場合には、プリント回路を電磁遮蔽手段で周囲を囲むことによって、地磁気による磁界等の外部均一磁界を減衰させることもまた可能である。
【0093】
同一の軸の周りに巻かれた測定コイル、励振コイル、および補償コイルの配置は、変形することができる。例えば、励振コイルを測定コイルの周りに巻くこともできる。
【0094】
同一の軸に巻かれた異なるコイルの巻線は、特許文献3の図6に記載されているように、インタレースすることもできる。
【0095】
1つの変形として、各コイルは、巻線数をメタライズ層ごとに1とすることもできる。
【0096】
同じペアの測定コイルは、必ずしも同じコイルである必要はない。この場合には、これらの間に差があった際には、処理ユニットによって補償することができる。
【0097】
簡単化した実施形態においては、コイル26、28、40、および42は省略される。この場合には、コイル16および18によって測定する方向は、反対の方向である。励振コイル36および38は、コイル16および18の両方の中で、励振磁界が同一の方向にあるように配置される。従って、コイル16および18の測定値の和を取ることにより、生成された電圧による励振磁界の影響が、低減または除去される。
【0098】
電流線10の同じ導電トラックが、面50および52を同一の方向に複数の回数横切るようにすることができる。例えば、このようにするために、このトラックは、複数の回数、測定コイルの周囲を取り巻く。逆に、線10が、測定コイルの間を1回だけ通過するようにすることもできる。
【0099】
1つの変形として、ループ部48、111〜116は、同じ測定コイルを外部から取り巻くようにすることができる。また、平面24の右と左とに位置している(この図に示されているように)測定コイルの巻き線を互いに反対方向にする必要もない。例えば、図5では、ループ部110〜112は、測定コイル26の左に位置し、ループ部113〜115は測定コイル28の右に位置している。
【0100】
別の変形においては、セグメント46および101〜105は、直列接続ではなく、並列接続されている。
【0101】
セグメント46および101〜105の半分は、1つの方向に電流を流すために使用され、他の半分は、反対の方向に電流を流すために使用される。そして、これら2つの電流強度の間の差が測定される。
【0102】
ループ部48および49は、線10の導電トラックのセグメントと比較して、少なくとも2倍または3倍、測定コイルから離すことができる。
【0103】
線10はまた、例えば2つの電流が流れる、2つの電流線によって置換することもできる。この条件では、電流センサは、各電流線の中を流れる電流i1およびi2によってそれぞれ生成される磁界、Bi1およびBi2の合成された磁界を測定する。これらの電流線i1とi2とが反対の方向に流れている場合には、電流センサは、差動電流センサである。
【0104】
線10はまた、プリント回路とは機械的に無関係な導体によって置換することができる。この場合には、プリント回路は、この導体を受け入れることができるように、測定コイル16および18、また測定コイル26および28の間を通る、グルーブまたはスルーホールを有することが有利である。この場合には、導体は、例えば、プリント回路の平面に平行に位置した導電バーである。
【0105】
磁気リング120の他の実施形態も可能である。例えば、磁気リング120は、ホール30、32の中に、ワイヤまたは磁気テープを巻くことにより作ることができる。この場合には、テープまたはワイヤは、それぞれが、ホール30、32を通る、1つ以上の巻線を形成することが望ましい。
【0106】
プリント回路のホールに挿入される磁気コアは、必ずしもリングの形状である必要はない。1つの変形として、各リングは、磁気的に互いに絶縁された2つのバーで置換することができる。これらのバーは、リングの場合と同じホールに挿入される。
【0107】
別の実施形態においては、磁気コアは省略される。これにより、ロゴスキー構造が得られる。
【0108】
また、複数の多層プリント回路を重ね合わせて、磁気リングの長さ/幅比とともに、センサの巻線数を増加させることも可能である。
【0109】
また、上記で説明した電流センサを、電流が測定されるべき、1つかつ同一の電気導体に沿って複数個使用することも可能である。
【符号の説明】
【0110】
2 電流センサ
4 プリント回路
6 電子処理ユニット
10 線
12、14 線10の断面
16、18 測定 コイル
20、22 垂直軸
24、25 垂直面
26、28 測定コイル
26A、26B、26C、26D、26E、26F、26G 測定コイル26の各部巻線
26I 奇数番目メタライズ層の測定コイルの導電トラック
26P 偶数番目メタライズ層の測定コイルの導電トラック
28A、28B、28C、28D、28E、28F、28G 測定コイル28の各部巻線
30、32 基準軸
36、38、40、42 励振コイル
36A、38A、40A、42A 励振コイルの上端部巻線
36G、38G、40G、42G 励振コイルの下端部巻線
40B、40C、40D、40E、40F 励振コイル40の各部巻線
40I 奇数番目メタライズ層の励振コイルの導電トラック
40P 偶数番目メタライズ層の励振コイルの導電トラック
42B、42C、42D、42E、42F 励振コイル42の各部巻線
44 導電トラック
46 直線セグメント
48、49 ループ部
50、52 垂直面
54、56、58、60 長円形ホール
62、63、64、65、66、67 ヴィアホール
68 補償コイル
68I 奇数番目メタライズ層の補償コイルの導電トラック
68P 偶数番目メタライズ層の補償コイルの導電トラック
70、71、72、73、74、75、76 中間メタライズ層
80、81、82、83、84、85 絶縁層
91 導電トラック
101、102、103、104、105、106 直線セグメント
111、112、113、114、115、116 ループ部
120 磁気コア
122、124 垂直アーム
126、128 水平アーム
130、132 下部垂直アーム
140、142 上部垂直アーム
150 垂直コイル
150A、150B、150C、150D、150E、150F、150G コイル150の各部
161、162、163、164、165、166 ヴィアホール
170 電流センサ
172 プリント回路
174、175、176、177 長円形ホール
178、179 磁気コア
200 プリント回路
202、203、204 長円形ホール
206、208 垂直平面
210、212、214 垂直励振コイル
216、218 垂直測定コイル
220、222 垂直補償コイル
224、226 導電線
228、230 導電トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路(4、170)であって、
電気絶縁層によって互いに機械的に隔てられたいくつかのメタライズ層の、垂直方向に沿ったスタックと、
垂直巻き線軸の周りに巻かれた、少なくとも1つの測定または励振コイル(16、18、26、28、150、216、218)であって、それぞれが、前記メタライズ層の内の、少なくとも1つの中に作られた導電トラックによって形成されている、測定または励振コイルとを備えているプリント回路(4、170)と、
前記メタライズ層の平面と平行に位置し、測定されるべき1つ以上の電流が給電されるようになっている、1つ以上の電流線(10、224、226)とを備え、
前記各コイル(16、18、26、28、150、216、218)の巻き線は、導電トラックによって形成され、前記導電トラックは、前記絶縁層の中の少なくとも1つを貫通するパッドによって、互いに電気的に接続されている、それぞれのメタライズ層の中に形成され、これにより、前記垂直軸に沿って伸びている前記コイルを形成していることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
−前記プリント回路は、各垂直巻き線軸に沿って作られたホール(54、56、58、60、174〜177、202〜204)を備え、
−前記センサは、前記ホールの中に収容された磁気コア(120)を有し、前記磁気コアは、横方向への寸法、すなわち、前記層の前記平面に平行な方向への寸法を有し、前記寸法は、前記ホールの、対応した横方向寸法より少なくとも5μm小さく、これにより、前記ホールの垂直壁とそれに面した前記磁気コアの垂直面との間に間隙を作り出していることを特徴とする、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのコイルは、第1のペアの測定コイルを有し、前記第1のペアの測定コイルは、前記電流線(10)のそれぞれの側に位置する第1の測定コイルと第2の測定コイル(16、18)とによって形成され、これらのコイルのそれぞれによって測定された磁界の和または差が、前記1つ以上の電流線によって生成された磁界Biの寄与を保存し、前記プリント回路の全表面にわたるいずれの均一磁界の寄与も低減するように配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項4】
各コイルの中心のところにスルーホール(54、56)が作られ、前記センサは、前記第1のペアの前記測定コイルの前記中心のところの前記ホールを通る、同じ磁気リングを有することを特徴とする、請求項3に記載の電流センサ。
【請求項5】
−前記少なくとも1つのコイルは、前記1つ以上の電流線に沿って交互に位置する第1および第2のペアのコイル(16、18、26、28)を有し、各ペアのコイルは、前記1つ以上の電流線(10)のそれぞれの側に位置した第1の測定コイルと第2の測定コイルとを備え、スルーホール(54、56、58、60)は、各コイルの前記中心のところに作られ、
−前記センサは、第1および第2の磁気リング(10)を備え、前記第1の磁気リングは、前記第1のペアの前記測定コイルの前記中心のところの前記ホールを通り、前記第2の磁気リングは、前記第2のペアの前記測定コイルの前記中心のところの前記ホールを通っていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項6】
−前記少なくとも1つのコイルは、前記1つ以上の電流線に沿って交互に位置する第1および第2のペアのコイル(16、18、26、28)を備え、各ペアのコイルは、前記1つ以上の電流線のそれぞれの側に位置する第1の測定コイルと第2の測定コイルとを備え、スルーホール(174〜177)は、各コイルの前記中心のところに作られ、
−前記センサは、第1および第2の磁気リング(178、179)を備え、前記第1の磁気リングは、各ペアの前記第1のコイルの前記中心のところの前記ホールを通り、前記第2のリングは、各ペアの前記第2のコイルの前記中心のところの前記ホールを通り、これにより、各磁気リングは、前記1つ以上の電流線を通る垂直平面のそれぞれの側に位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電流センサのためのプリント回路であって、
−電気絶縁層によって機械的に隔てられた複数のメタライズ層の、垂直な方向に沿うスタックと、
−垂直巻き線軸の周りに巻かれた、少なくとも1つの測定コイルまたは励振コイルと、
−測定されるべき1つ以上の電流によって給電されるべき、1つ以上の電流線とを備え、
前記少なくとも1つの測定コイルまたは励振コイルの各コイルの巻き線は、前記メタライズ層の内の少なくとも1つの中に作られた導電トラックによって形成され、前記1つ以上の電流線の各々は、前記スタックの少なくとも1つのメタライズ層の中に作られている導電トラックによって形成され、
前記各コイルの巻き線は、前記絶縁層の中の少なくとも1つを貫通するパッドによって互いに電気的に接続された、それぞれのメタライズ層の中に作られた導電トラックによって形成され、これにより、前記垂直軸に沿って伸びる前記コイルを形成していることを特徴とするプリント回路。
【請求項8】
前記少なくとも1つのコイルは、
−前記電流線(10)のそれぞれの側に形成された第1のコイルと第2のコイル(16、18)とによって形成され、第1の垂直面(24)に関して、前記第2のコイルに対称な第1のペアのコイルと、
−前記第1の垂直平面に垂直な第2の垂直面(25)に関して、前記第1のペアのコイルと対称な第2のペアのコイル(26、28)とを備えていることを特徴とする、請求項7に記載のプリント回路。
【請求項9】
前記少なくとも1つのコイルは、同心円の測定コイル(16、18、26、28、216、218)と励振コイル(36、38、40、42、212、214)とを備え、すなわち、これらのコイルのそれぞれの前記巻線は、同じメタライズ層の中に作られ、同じ巻き線軸の周りに巻かれていることを特徴とする、請求項7または8に記載のプリント回路。
【請求項10】
−前記少なくとも1つのコイルは、第1の測定コイルと第2の測定コイル(16、18、26、28)とを備え、
−各電流線は、
−前記第1の測定コイルと第2の測定コイルとの間を通る、少なくとも1つの第1および1つの第2の導電トラック(46、101〜106)と、
−前記測定コイルの間を通らずに、これらの2つの導電トラックの直列接続を確立する電気接続(48、49、111〜116)とを備え、
前記第1および第2のトラックは、互いに上下に位置する、それぞれのメタライズ層の中に作られ、前記接続は、前記2つの導電トラックによって、前記測定コイルの中の少なくとも1つの周囲を完全に取り囲むループを形成し、これにより、前記接続が給電されると、前記電流は、前記測定コイルの間を複数の回数にわたって同じ方向に流れるようになっていることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載のプリント回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−64734(P2013−64734A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−196442(P2012−196442)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】