説明

電流制限回路、電源回路、及び電流制限方法

【課題】スイッチング電源回路の保護回路としてヒューズを用いたものは、保護動作が遅く、他の部品の故障、更には制御回路の基板パターンを損傷する可能性があった。またヒューズに代わり電子化された過電流保護回路もあるが、追加部品点数が多く大型化とコストアップは避けられない。本発明は過電流保護回路の動作を高速化すると同時に、回路部品点数の増加を抑えた電流制限回路とすることを目的とする。
【解決手段】交流電力を直流電力に変換して出力する電源回路において、前記電流検出回路の出力により高インピーダンスとされ、内部に備わる直流平滑用コンデンサに流入する突入電流を制限する突入電流制限回路と、主スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路で所定値以上の電流を検出したとき、前記電流検出回路の出力に前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする過電流保護手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電流制限回路、電源回路及び電流制限方法に係り、特に過電流保護回路の動作を向上させると共に、過電流検出保護回路を電流制限回路で兼用し、小型化と低価格化を図ることが可能な電流制限回路、これを用いた電源回路及び電流制限方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子装置などの制御電源回路として、スイッチング電源回路が使用されているが、このスイッチング電源回路を用いた制御電源回路には、負荷短絡などで過電流が生じたときの保護回路としてヒューズを用いたものが有る。ヒューズによる保護回路は回路が簡単で小型、安価であるという特徴をもっている。
【0003】
図3は、スイッチング電源回路を用いた制御電源回路の一例であり、過電流保護回路としてヒューズが用いられている例を示したものである。
【0004】
図3において、ACは受電用の交流電源を示している。また、25は過電流保護用のヒューズである。また、11は交流を直流に整流するダイオードブリッジである。交流電源ACはヒューズ25を介してダイオードブリッジ11の入力端子に接続されている。
【0005】
また、17はダイオードブリッジ11の出力端子に接続された直流平滑用コンデンサであり、ダイオードブリッジ11の一方の出力端子と直流平滑用コンデンサ17の正極端子が接続される。
【0006】
また、6はスイッチング電源回路の主スイッチング素子である。また、18はスイッチング電源回路のスイッチングトランスである。主スイッチング素子6とスイッチングトランスの一次巻線は直列接続されて直流平滑用コンデンサ17に並列接続されている。
【0007】
また、21、22はダイオードである。また、19は直流出力部の直流平滑用リアクトル、23は直流出力部の直流平滑用コンデンサである。主スイッチング素子6、スイッチングトランス18、ダイオード21、22、直流平滑用リアクトル19、直流平滑用コンデンサ23はスイッチングトランス18の二次側に接続され、直流平滑用コンデンサ17の直流電圧を入力とし直流平滑用コンデンサ23の直流電圧を出力とするスイッチング電源回路を構成している。スイッチング電源回路の動作は従来技術として既知なので、以下、ここでの詳細説明は省略する。
【0008】
10は突入電流制限回路であり、電流制限抵抗1、スイッチング素子2、入力抵抗5などから構成される。電流制限抵抗1はダイオードブリッジ11の他方の出力端子と直流平滑用コンデンサ17の負極端子の間に接続されている。スイッチング素子2(NチャンネルMOS・FET)は一方の端子(ソース)がダイオードブリッジ11の他方の出力端子と電流制限抵抗1の一方の端子の接続点に接続され、他方の端子(ドレイン)が直流平滑用コンデンサ17の負極端子と電流制限抵抗1の他方の端子の接続点に接続されている。
【0009】
また、入力抵抗5は突入電流制限回路10内のスイッチング素子2をオフ、オンさせる電流制限ON信号の入力部とスイッチング素子2のゲート端子との間に挿入されている。
【0010】
スイッチング素子2は、電流制限ON信号の電圧VonをHIGH,LOWと切換えることにより、電源投入初期にオフされ、定常状態になったときはオンされる。すなわち、突入電流制限回路10は、電源投入初期に電流制限ON信号の電圧VonがLOWとなってスイッチング素子2がオフとなり、電流制限抵抗1の高インピーダンス状態になってコンデンサ17に流れ込む電流による過電流の発生を抑制する。また、定常状態になったときは電流制限ON信号の電圧VonがHIGHとなってスイッチング素子2がオンとなり、電流制限抵抗1がスイッチング素子2で短絡され、低インピーダンス状態になって電流損失を抑制するように動作する。
【0011】
図3に示された制御電源回路の動作を簡単に説明する。
【0012】
交流電源ACから入力された交流電力は、ダイオードブリッジ11で整流され直流電力に変換される。このとき、電源投入初期に直流平滑用コンデンサ17に流れ込む電流が過大とならないように電流制限抵抗1により突入電流が抑制される。このために電源投入初期には電流制限ON信号の電圧VonがLOW電圧となり、スイッチング素子2はオフされている。
【0013】
直流平滑用コンデンサ17がほぼ満充電になると電流制限ON信号の電圧VonがHIGH電圧となり、電流制限抵抗1が短絡され、定常状態に移行する。
【0014】
定常状態に移行後、主スイッチング素子6がオン、オフ動作を開始する。これにより、スイッチングトランス18の二次側に電圧が発生し、ダイオード21、22の整流作用と、直流平滑用リアクトル19、直流平滑用コンデンサ23の平滑作用により、滑らかな直流電圧(DC出力)が得られる。突入電流制限回路10内のスイッチング素子2は、入力抵抗5を介して入力される電流制限ON信号によって、オン、オフが制御される。
【0015】
また、DC出力に接続された負荷、あるいは制御電源回路自身の主スイッチング素子6などに異常が生じて過電流が流れると、ヒューズ25が溶断して保護するようになっている。
【0016】
上記従来技術のヒューズに代わり、過電流検出回路と過電流を遮断するリレーを追加したものが特許文献1に挙げた号実開平5−62147号公報で提案されている。また、他の従来技術として、特許文献2に挙げた実開平4−39035公報で提案されたものがある。
【特許文献1】実開平5−62147号公報
【特許文献2】実開平4−39035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図3に示された上記従来技術のヒューズ25を用いた過電流保護回路は、小型、安価ではあるが、保護動作が遅く(ヒューズの溶断が遅い)、また、過電流レベルの設定に対して柔軟性に欠けるという問題がある。ヒューズの溶断が遅い場合には、他の部品の故障、更には制御回路の基板パターンを損傷する可能性があった。
【0018】
これに対し特許文献1に挙げた従来技術には、ヒューズに代わり、過電流検出回路と過電流を遮断するリレーを追加したものが提案されている。しかし、過電流レベルの設定に対する柔軟性は向上しているものの、高速動作リレーを必要としたり、過電流保護のために追加された部品点数が多く、またリレーも小型化が難しいという問題がある。したがって、大型化とコストアップは避けられない。
【0019】
また、他の従来技術の特許文献2に挙げたものは、この公報の第2図などから分かるように、過電流保護回路がかなりの部品点数で構成されており、大型化とコストアップは避けられない。
本願発明は、上記従来技術の問題に鑑み、過電流保護回路の動作を高速化すると同時に、回路部品点数の増加を抑え、小型で安価な過電流保護回路を兼用した電流制限回路、及びこれを備えた制御電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1に係る発明の要旨は、交流電源から交流電力を受電して直流電力に変換し、該直流電力を出力する電源回路の電流制限回路において、主スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路の出力により高インピーダンスとされ、内部に備わる直流平滑用コンデンサに流入する突入電流を制限する突入電流制限回路と、前記電流検出回路が所定値以上の電流を検出したとき、前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする過電流保護手段を備えたことを特徴とする電流制限回路に存する。
また、本発明の請求項2に係る発明の要旨は、前記突入電流制限回路は、前記主スイッチング素子に直列に接続された電流制限抵抗と該電流制限抵抗に並列接続されたスイッチング手段を備え、前記電流検出回路が所定値以上の電流を検出したとき、前記電流制限ON信号をオンして前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする過電流保護手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電流制限回路に存する。
また、本発明の請求項3に係る発明の要旨は、前記スイッチング手段はトランジスタであることを特徴とする請求項2に記載の電流制限回路に存する。
また、本発明の請求項4に係る発明の要旨は、前記電流検出回路は前記電流制限抵抗の両端の電圧を検出して該検出された検出値を所定の電圧の基準電圧と比較することにより、前記検出値が前記基準電圧を超えたとき前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする信号を出力し、前記電流制限ON信号をオンすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電流制限回路に存する。
また、本発明の請求項5に係る発明の要旨は、前記電流検出回路は前記電流制限抵抗の両端の電圧を差動アンプで検出して、該検出された検出値を所定の電圧の基準電圧と比較することにより、前記検出値が前記基準電圧を超えたとき前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする信号を出力し、前記電流制限ON信号をオンすることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の電流制限回路に存する。
また、本発明の請求項6に係る発明の要旨は、交流電源から交流電力を受電して直流電力に変換し、該直流電力を出力する電源回路において、主スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路の出力により高インピーダンスとされ、内部に備わる直流平滑用コンデンサに流入する突入電流を制限する突入電流制限回路と、前記電流検出回路で所定値以上の電流を検出したとき、前記電流検出回路の出力により前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする手段を備えたことを特徴とする電源回路に存する。
また、本発明の請求項7に係る発明の要旨は、前記突入電流制限回路は、前記主スイッチング素子に直列に接続された電流制限抵抗と該電流制限抵抗に並列接続されたスイッチング手段を備え、前記電流検出回路が所定値以上の電流を検出したとき、前記電流制限ON信号をオンして前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の電源回路に存する。
また、本発明の請求項8に係る発明の要旨は、前記スイッチング手段はトランジスタであることを特徴とする請求項7に記載の電源回路に存する。
また、本発明の請求項9に係る発明の要旨は、前記電流検出回路は前記電流制限抵抗の両端の電圧を検出して該検出された検出値を所定の電圧の基準電圧と比較することにより、前記検出値が前記基準電圧を超えたとき前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする信号を出力し、前記電流制限ON信号をオンすることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の電源回路に存する。
また、本発明の請求項10に係る発明の要旨は、前記電流検出回路は前記電流制限抵抗の両端の電圧を差動アンプで検出して、該検出された検出値を所定の電圧の基準電圧と比較することにより、前記検出値が前記基準電圧を超えたとき前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする信号を出力し、前記電流制限ON信号をオンすることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の電源回路に存する。
また、本発明の請求項11に係る発明の要旨は、スイッチング電源回路であることを特徴とする請求項6乃至請求項10に記載された電源回路に存する。
また、本発明の請求項12に係る発明の要旨は、交流電源から交流電力を受電して直流電力に変換し、該直流電力を出力する電源回路の故障時電流を制限する電流制限方法において、前記電源回路の主スイッチング素子に流れる電流を検出し、前記電流検出回路で所定値以上の電流を検出したとき、前記主スイッチング素子に直列に接続された突入電流制限回路が高インピーダンスになるよう回路切換えを行うことを特徴とする電流制限方法に存する。
また、本発明の請求項13に係る発明の要旨は、前記電流検出回路で所定値以上の電流を検出したとき、前記主スイッチング素子に直列に接続された突入電流制限回路のインピーダンスを電流制限抵抗の値となるように切換えることを特徴とする請求項12に記載の電流制限方法に存する。
また、本発明の請求項14に係る発明の要旨は、前記電流制限抵抗に並列接続されたスイッチング手段をオフさせ、前記突入電流制限回路のインピーダンスを電流制限抵抗の値となるように切換えることを特徴とする請求項13に記載の電流制限方法に存する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、制御電源回路のDC出力に接続された負荷、あるいは制御電源回路自身の主スイッチ素子6などに異常が生じて過電流が流れると、突入電流制限回路10のインピーダンスが高速に高インピーダンスになり、入力電流が制限される。これにより、他の部品や制御回路の基板パターンの損傷を防止することができる。
また、本発明によれば、過電流保護回路が突入電流制限回路10で兼用されるので、従来過電流保護回路に必要とされた過電流を遮断する回路部品は不要となる。したがって、小型で安価な過電流保護回路とこの電流制限回路を備えた制御電源回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態のスイッチング電源回路を用いた制御電源回路の一例である。
【0024】
図1において、ACは受電用の交流電源を示している。また、11は交流を直流に整流するダイオードブリッジである。交流電源ACはダイオードブリッジ11の入力端子に接続されている。
【0025】
また、17はダイオードブリッジ11の出力側に接続された直流平滑用コンデンサであり、ダイオードブリッジ11の一方の出力端子と直流平滑用コンデンサ17の正極端子が接続されている。直流平滑用コンデンサ17の負極端子は電流制限抵抗1を介してダイオードブリッジ11の他方の出力端子に接続されている。
【0026】
また、6はスイッチング電源回路の主スイッチング素子である。また、18はスイッチング電源回路のスイッチングトランスである。主スイッチング素子6、スイッチングトランスの一次巻線、及び後述の電流検出回路20に備わる電流検出抵抗7は直列接続されて、直流平滑用コンデンサ17に並列接続されている。
【0027】
また、21、22はダイオードである。また、19は直流出力部の直流平滑用リアクトル、23は直流出力部の直流平滑用コンデンサである。主スイッチング素子6、スイッチングトランス18、ダイオード21、22、直流平滑用リアクトル19、直流平滑用コンデンサ23はスイッチングトランス18の二次側に接続され、直流平滑用コンデンサ17の直流電圧を入力とし直流平滑用コンデンサ23の直流電圧を出力とするスイッチング電源回路を構成している。
【0028】
10は突入電流制限回路であり、電流制限抵抗1、スイッチング素子2、入力抵抗5などから構成される。電流制限抵抗1はダイオードブリッジ11の他方の出力端子と直流平滑用コンデンサ17の負極端子との間に接続されている。スイッチング素子2(NチャンネルMOS・FET)は一方の端子(ソース)がダイオードブリッジ11の他方の出力端子と電流制限抵抗1の一方の端子の接続点に接続され、他方の端子(ドレイン)が直流平滑用コンデンサ17の負極端子と電流制限抵抗1の他方の端子の接続点に接続されている。
【0029】
また、入力抵抗5は突入電流制限回路10内のスイッチング素子2をオン、オフさせる電流制限ON信号の入力部とスイッチング素子2のゲート端子との間に挿入されている。
【0030】
スイッチング素子2は、電流制限ON信号の電圧VonをHIGH,LOWと切換えることにより、電源投入初期にオフされ、定常状態になったときはオンされる。すなわち、突入電流制限回路10は、電源投入初期に電流制限ON信号の電圧VonがLOWとなってスイッチング素子2がオフとなり、電流制限抵抗1の高インピーダンス状態になってコンデンサ17に流れ込む電流による過電流の発生を抑制する。また、定常状態になったときは電流制限ON信号の電圧VonがHIGHとなってスイッチング素子2がオンとなり、電流制限抵抗1がスイッチング素子2で短絡され、低インピーダンス状態になって電流損失を抑制するように動作する。
【0031】
スイッチング素子2は、本実施の形態ではNMOS・FETの例を挙げているが、PMOS・FET、バイポーラトランジスタ、その他小電力の制御電力でメイン電流をオン、オフできるスイッチング手段であれば利用することができる。
【0032】
また、20は、電流検出回路であり、電流検出抵抗7、基準電源8、コンパレータ9などから構成される。
【0033】
電流検出抵抗7は主スイッチング素子6のソース端子と直流平滑用コンデンサ17の負極端子との間に接続されている。電流検出抵抗7が主スイッチング素子6のソース端子に接続された接続点がコンパレータ9の−入力端子(反転入力端子)に接続されている。
【0034】
また、電流検出抵抗7が直流平滑用コンデンサ17の負極端子に接続された接続点は基準電源8の負極端子に接続され、基準電源8の正極端子はコンパレータ9の+入力端子に接続されている。
【0035】
コンパレータ9の出力は、制御電源Vccにプルアップされたホトカプラ26一次側ホトダイオードのカソードに接続されている。また、ホトカプラ26の二次側(ホトトランジスタ側)は電流制限ON信号入力端子間に接続されている。したがって、コンパレータ9の出力がLOWになるとホトカプラ26の二次側ホトトランジスタはオンして、電流制限信号の電圧VonをLOWにする。このときスイッチング素子2はオフされる。これに対しコンパレータ9の出力がHIGHになるとホトカプラ26の二次側ホトトランジスタはオフして、電流制限信号の電圧VonをHIGHにする。このときスイッチング素子2はオンされる。
【0036】
次に、図1に示された制御電源回路の動作を説明する。
【0037】
交流電源ACから入力された交流電力は、ダイオードブリッジ11で整流され直流電力に変換される。このとき、電源投入初期にコンデンサ17に流れ込む電流が過大とならないように電流制限抵抗1により突入電流が抑制される。このためにスイッチング素子2は電源投入初期には電流制限ON信号の電圧VonがLOW電圧になることによりオフされている。但しこの場合、電流制限ON信号の電圧VonがLOW電圧になるのは、電流制限信号信号自身がLOW電圧になったためであり、ホトカプラ26がオンした為ではない。
【0038】
直流平滑用コンデンサ17がほぼ満充電になると電流制限ON信号の電圧VonがHIGH電圧となり、電流制限抵抗1が短絡され、定常状態に移行する。
【0039】
定常状態に移行後、主スイッチング素子6がオン、オフ動作を開始する。これにより、スイッチングトランス18の二次側に電圧が発生し、ダイオード21、22の整流作用と、直流平滑用リアクトル19、直流平滑用コンデンサ23の平滑作用により、滑らかな直流電圧(DC出力)が得られる。突入電流制限回路10内のスイッチング素子2は、入力抵抗5を介して入力される電流制限ON信号によって、オン、オフが制御される。
【0040】
また、DC出力に接続された負荷、あるいは制御電源回路自身の主スイッチング素子6などに異常が生じて過電流が流れ、あるいは流れようとして電流増加が起こると、電流検出抵抗7の両端に基準電源8の電圧を上回る電圧降下が生じる。このときの電圧降下は、コンパレータ9の−入力端子(反転入力端子)側がコンパレータ9の+入力端子に対し高電位となるように作用するので、コンパレータ9の出力は正電圧から負電圧(LOWレベル)に反転する。この場合、電流検出回路20は電源投入初期の突入電流では動作しないような基準電圧となっていることは言うまでもない。
【0041】
コンパレータ9の出力LOW電圧はホトカプラ26に入力され、ホトカプラ26の二次側ホトトランジスタをオンさせ、スイッチング素子2はオフさせられる。これにより、スイッチング素子2はオープン状態となり電流制限抵抗1のインピーダンスがダイオードブリッジ11の出力側に挿入された状態となる。したがって、過電流は電流制限抵抗1で減流され過電流が防止される。この場合、図の右側から入力されている電流制限ON信号の電圧VonがHIGH,LOWいずれであっても、ホトカプラ26の二次側によって短絡され、強制的にLOWレベルとされる。
【0042】
本実施の形態によれば、簡単な電流検出回路20を追加するのみで、突入電流制限回路10を代用して高速な過電流保護回路を実現することができる。この場合、電源投入初期の突入電流では電流検出回路20のコンパレータ9の出力は反転しないように基準電圧8の電圧が選定されているので、突入電流制限回路10の動作に支障は生じない。
【0043】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施の形態のスイッチング電源回路を用いた制御電源回路の一例である。
【0044】
本実施の形態は、上記第1の実施の形態に対し、電流検出を更に工夫している。即ち、本実施の形態は図2に示すように、電流検出をオペアンプ12で構成される差動増幅器で行っているので、回路上のどこでも自由に検出抵抗を挿入することができ、他のどの部品でも故障検出が行えるという利点がある。図2を参照して以下詳細に説明する。
【0045】
図2において、ACは受電用の交流電源を示している。また、11は交流を直流に整流するダイオードブリッジである。交流電源ACはダイオードブリッジ11の入力端子に接続されている。
【0046】
また、17はダイオードブリッジ11の出力端子に接続された直流平滑用コンデンサであり、ダイオードブリッジ11の一方の出力端子と直流平滑用コンデンサ17の正極端子が接続される。直流平滑用コンデンサ17の負極端子は電流制限抵抗1を介してダイオードブリッジ11の他方の出力端子に接続されている。
【0047】
また、6はスイッチング電源回路の主スイッチング素子である。また、18はスイッチング電源回路のスイッチングトランスである。主スイッチング素子6、スイッチングトランスの一次巻線、及び後述の電流検出回路24に備わる電流検出抵抗7は直列接続されて、直流平滑用コンデンサ17に並列接続されている。
【0048】
また、21、22はダイオードである。また、19は直流出力部の直流平滑用リアクトル、23は直流出力部の直流平滑用コンデンサである。主スイッチング素子6、スイッチングトランス18、ダイオード21、22、直流平滑用リアクトル19、直流平滑用コンデンサ23はスイッチングトランス18の二次側に接続され、直流平滑用コンデンサ17の直流電圧を入力とし直流平滑用コンデンサ23の直流電圧を出力とするスイッチング電源回路を構成している。
【0049】
10は突入電流制限回路であり、電流制限抵抗1、スイッチング素子2、入力抵抗5などから構成される。電流制限抵抗1はダイオードブリッジ11の他方の出力端子と直流平滑用コンデンサ17の負極端子との間に接続されている。スイッチング素子2(NチャンネルMOS・FET)は一方の端子(ソース)がダイオードブリッジ11の他方の端子と電流制限抵抗1の一方の端子の接続点に接続され、他方の端子(ドレイン)が直流平滑用コンデンサ17の負極端子と電流制限抵抗1の他方の端子の接続点に接続されている。
【0050】
また、入力抵抗5は、突入電流制限回路10内のスイッチング素子2をオン、オフさせる電流制限ON信号の入力部とスイッチング素子2のゲート端子との間に挿入されている。
【0051】
スイッチング素子2は、電流制限ON信号の電圧VonをHIGH,LOWと切換えることにより、電源投入初期にオフされ、定常状態になったときはオンされる。すなわち、突入電流制限回路10は、電源投入初期に電流制限ON信号の電圧VonがLOWとなってスイッチング素子2がオフ状態となり、電流制限抵抗1の高インピーダンスになってコンデンサ17に流れ込む電流による過電流の発生を抑制する。また、定常状態になったときは電流制限ON信号の電圧VonがHIGHとなってスイッチング素子2がオン状態となり、電流制限抵抗1がスイッチング素子2で短絡され、低インピーダンス状態になって電流損失を抑制するように動作する。
【0052】
スイッチング素子2はNMOS・FETの例であるが、PMOS・FET、バイポーラトランジスタ、その他小電力の制御電力でメイン電流をオン、オフできる半導体スイッチなどが利用できる。
【0053】
また、24は電流検出回路であり、電流検出抵抗7、基準電源8、コンパレータ9、オペアンプ12、抵抗13、14、15、16などから構成される。抵抗13、14、15、16は等しい値に選ばれ、オペアンプ12と抵抗13、14、15、16で構成された回路は、基準電圧8の負極側を基準電位として、電流検出抵抗7の電圧降下に等しい電圧を出力する差動アンプとなっている。
【0054】
電流検出抵抗7は主スイッチング素子6のソース端子と直流平滑用コンデンサ17の負極端子との間に接続されている。電流検出抵抗7が主スイッチング素子6のソース端子に接続された接続点は、抵抗13を介してオペアンプ12の+入力端子に接続されている。そしてオペアンプ12の+入力端子は、抵抗15を介して、電流検出抵抗7が直流平滑用コンデンサ17の負極端子に接続された接続点に接続されている。
【0055】
また、電流検出抵抗7が直流平滑用コンデンサ17の負極端子に接続された接続点は基準電源8の負極端子に接続され、基準電源8の正極端子はコンパレータ9の+入力端子に接続されている。
【0056】
コンパレータ9の出力は、制御電源Vccにプルアップされたホトカプラ26一次側ホトダイオードのカソードに接続されている。また、ホトカプラ26の二次側のホトトランジスタは電流制限ON信号入力端子間に接続されている。したがって、コンパレータ9の出力がLOWになるとホトカプラ26の二次側はオンして、電流制限信号の電圧VonをLOWにする。このときスイッチング素子2はオフされる。これに対しコンパレータ9の出力がHIGHになるとホトカプラ26の二次側はオフして、電流制限信号の電圧VonをHIGHにする。このときスイッチング素子2はオンされる。
【0057】
次に、図2に示された制御電源回路の動作を説明する。
【0058】
交流電源ACから入力された交流電力は、ダイオードブリッジ11で整流され直流電力に変換される。このとき、電源投入初期にコンデンサ17に流れ込む電流が過大とならないように電流制限抵抗1により突入電流が抑制される。このためにスイッチング素子2は電源投入初期には電流制限ON信号の電圧VonがLOW電圧になることによりオフされている。但しこの場合、電流制限ON信号の電圧VonがLOW電圧になるのは、電流制限信号信号自身がLOW電圧になったためであり、ホトカプラ26がオンした為ではない。
【0059】
直流平滑用コンデンサ17がほぼ満充電されると電流制限ON信号の電圧VonがHIGH電圧になりスイッチング素子2はオンされ定常状態に移行する。
【0060】
定常状態に移行後、主スイッチング素子6がオン、オフ動作を開始する。これにより、スイッチングトランス18の二次側に電圧が発生し、ダイオード21、22の整流作用と、直流平滑用リアクトル19、直流平滑用コンデンサ23の平滑作用により、滑らかな直流電圧(DC出力)が得られる。突入電流制限回路10内のスイッチング素子2は、入力抵抗5を介して入力される電流制限ON信号によって、オン、オフが制御される。
【0061】
また、DC出力に接続された負荷、あるいは制御電源回路自身の主スイッチング素子6などに異常が生じて過電流が流れ、あるいは流れようとして電流増加が起こると、電流検出抵抗7の両端に基準電源8の電圧を上回る電圧降下が生じる。このときの電圧降下はオペアンプ12と抵抗13、14、15、16で構成された差動アンプのとしてのオペアンプ12の出力として現れる。
【0062】
オペアンプ12の出力はコンパレータ9の−入力端子(反転入力端子)側に接続され、コンパレータ9の+入力端子には基準電源の正極側が接続されているので、オペアンプ12の出力が基準電源8の電圧を上回ると、コンパレータ9の+入力端子に対し−入力端子が高電位になり、コンパレータ9の出力はHIGH電圧からLOW電圧に反転する。この場合、電流検出回路24は電源投入初期の突入電流では動作しないよう基準電源8の電圧が選定されていることは言うまでもない。コンパレータ9の出力LOW電圧はホトカプラ26に入力され、ホトカプラ26の二次側ホトトランジスタをオンさせ、スイッチング素子2はオフさせられる。これにより、スイッチング素子2はオープン状態となり電流制限抵抗1のインピーダンスがダイオードブリッジ11の出力側に挿入された状態となる。したがって、過電流は電流制限抵抗1で減流され過電流が防止される。この場合、電流制限ON信号の電圧VonがHIGH,LOWいずれであっても、ホトカプラ26の二次側によって短絡され、強制的にLOWレベルとされる。
【0063】
本実施の形態によれば、簡単な電流検出回路24を追加するのみで、突入電流制限回路10を代用して高速な過電流保護回路を実現することができる。この場合、電源投入初期の突入電流では電流検出回路24のコンパレータ9の出力は反転しないので、突入電流制限回路10の動作に支障は生じない。また、本実施の形態によれば、電流検出をオペアンプ12で構成される差動増幅器で行っているので、回路上のどこでも自由に検出抵抗を挿入することができ、他のどの部品でも故障検出が行えるという利点がある。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を具体的な実施の形態で説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で変形して実施できることは言うまでもない。また、本発明は、電子装置の制御電源回路に限らず、主電源回路にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、電源回路に突入電流制限回路を備えた電源回路一般に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態による制御電源回路の回路構成図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態による制御電源回路の回路構成図である。
【図3】従来技術の制御電源回路の回路構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・電流制限抵抗
2・・・スイッチング素子
5・・・入力抵抗
6・・・主スイッチング素子
7・・・電流検出抵抗
8・・・基準電源
9・・・コンパレータ
10・・・突入電流制限回路
11・・・ダイオードブリッジ
12・・・オペアンプ
13〜16・・・抵抗
17、23・・・直流平滑用コンデンサ
18・・・スイッチングトランス
19・・・直流平滑用リアクトル
20、24・・・電流検出回路
21、22・・・ダイオード
25・・・ヒューズ
26・・・ホトカプラ
AC・・・交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から交流電力を受電して直流電力に変換し、該直流電力を出力する電源回路の電流制限回路において、
主スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路の出力により高インピーダンスとされ、内部に備わる直流平滑用コンデンサに流入する突入電流を制限する突入電流制限回路と、
前記電流検出回路が所定値以上の電流を検出したとき、前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする過電流保護手段を備えたことを特徴とする電流制限回路。
【請求項2】
前記突入電流制限回路は、前記主スイッチング素子に直列に接続された電流制限抵抗と該電流制限抵抗に並列接続されたスイッチング手段を備え、
前記電流検出回路が所定値以上の電流を検出したとき、前記電流制限ON信号をオンして前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする過電流保護手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電流制限回路。
【請求項3】
前記スイッチング手段はトランジスタであることを特徴とする請求項2に記載の電流制限回路。
【請求項4】
前記電流検出回路は前記電流制限抵抗の両端の電圧を検出して該検出された検出値を所定の電圧の基準電圧と比較することにより、前記検出値が前記基準電圧を超えたとき前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする信号を出力し、前記電流制限ON信号をオンすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電流制限回路。
【請求項5】
前記電流検出回路は前記電流制限抵抗の両端の電圧を差動アンプで検出して、該検出された検出値を所定の電圧の基準電圧と比較することにより、前記検出値が前記基準電圧を超えたとき前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする信号を出力し、前記電流制限ON信号をオンすることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の電流制限回路。
【請求項6】
交流電源から交流電力を受電して直流電力に変換し、該直流電力を出力する電源回路において、
主スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路の出力により高インピーダンスとされ、内部に備わる直流平滑用コンデンサに流入する突入電流を制限する突入電流制限回路と、
前記電流検出回路で所定値以上の電流を検出したとき、前記電流検出回路の出力により前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする手段を備えたことを特徴とする電源回路。
【請求項7】
前記突入電流制限回路は、前記主スイッチング素子に直列に接続された電流制限抵抗と該電流制限抵抗に並列接続されたスイッチング手段を備え、
前記電流検出回路が所定値以上の電流を検出したとき、前記電流制限ON信号をオンして前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の電源回路。
【請求項8】
前記スイッチング手段はトランジスタであることを特徴とする請求項7に記載の電源回路。
【請求項9】
前記電流検出回路は前記電流制限抵抗の両端の電圧を検出して該検出された検出値を所定の電圧の基準電圧と比較することにより、前記検出値が前記基準電圧を超えたとき前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする信号を出力し、前記電流制限ON信号をオンすることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の電源回路。
【請求項10】
前記電流検出回路は前記電流制限抵抗の両端の電圧を差動アンプで検出して、該検出された検出値を所定の電圧の基準電圧と比較することにより、前記検出値が前記基準電圧を超えたとき前記突入電流制限回路を高インピーダンスにする信号を出力し、前記電流制限ON信号をオンすることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項11】
スイッチング電源回路であることを特徴とする請求項6乃至請求項10に記載された電源回路。
【請求項12】
交流電源から交流電力を受電して直流電力に変換し、該直流電力を出力する電源回路の故障時電流を制限する電流制限方法において、
前記電源回路の主スイッチング素子に流れる電流を検出し、
前記電流検出回路で所定値以上の電流を検出したとき、前記主スイッチング素子に直列に接続された突入電流制限回路が高インピーダンスになるよう回路切換えを行うことを特徴とする電流制限方法。
【請求項13】
前記電流検出回路で所定値以上の電流を検出したとき、前記主スイッチング素子に直列に接続された突入電流制限回路のインピーダンスを電流制限抵抗の値となるように切換えることを特徴とする請求項12に記載の電流制限方法。
【請求項14】
前記電流制限抵抗に並列接続されたスイッチング手段をオフさせ、前記突入電流制限回路のインピーダンスを電流制限抵抗の値となるように切換えることを特徴とする請求項13に記載の電流制限方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−159344(P2007−159344A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354672(P2005−354672)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】