説明

電流検出型核酸濃度定量分析装置

【課題】スペーサに帯電する静電気を抑制する。
【解決手段】DNAチップ15に電流を流して核酸濃度を定量分析する電流検出型核酸濃度定量分析装置に、スプリングプローブボックス20と固定基板13と測定モジュール11とを備える。スプリングプローブボックス20は、固定基板13の下面にDNAチップ15のチップ端子と対向するように固定されたスプリングプローブを有している。固定基板13は、絶縁性の板とその板の両面に設けられた配線とその配線を接続するスルーホールとを有する。測定モジュール11は、固定基板13の上面に対向し、上下に移動可能で、固定基板13の配線と電気的に接続されていて、スプリングプローブを介して流れる電流を検出する。固定基板13と測定モジュール11との間には、ポリアセタール製のスペーサ12が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出型核酸濃度定量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流検出型核酸濃度定量分析装置は、電流検出型の核酸濃度定量分析用DNAチップを使用して核酸濃度の定量測定を行う装置である。電流検出型核酸濃度定量分析方法では、複数の面積のセンサを備えたDNAチップを使用する。このDNAチップには、標的核酸と相補的な核酸を有する同一の核酸プローブ固定した複数の面積のセンサと、相補的な核酸を固定していない複数の面積のセンサと、が形成されている。このDNAチップに、種々の濃度の核酸を使用して、種々の薬液(配管洗浄液・核酸挿入剤・ハイブリ洗浄液)・エアを送液し、電流データを取得することにより校正データを取得し、それをもとに核酸濃度を定量測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−309462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流検出型核酸濃度定量分析装置でDNAチップを測定するときには、測定モジュールでDNAチップの測定を行う。この測定モジュールとスプリングプローブ基板とを絶縁している絶縁樹脂スペーサの表面に帯電した静電気がノイズとなり測定値異常になる場合がある。また、絶縁樹脂スペーサの形状が円筒型でスプリングプローブ基板のスルーホールに円筒型の外周が接触すると、絶縁樹脂スペーサに帯電した静電気がスプリングプローブ基板のスルーホールを通じて電極に影響し、測定値異常になる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、電流検出型核酸濃度定量分析装置において絶縁樹脂スペーサに帯電する静電気を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、複数のチップ端子を有するDNAチップに電流を流して核酸濃度を定量分析する電流検出型核酸濃度定量分析装置において、絶縁性の板とその板の両面に設けられた配線と前記板を貫通して前記配線を接続するスルーホールとを有する固定基板と、前記チップ端子と対向するように前記固定基板に固定されて前記配線に接続された複数のスプリングプローブと、前記固定基板の前記スプリングプローブに対して反対側の面に対向する対向面を持ち前記スプリングプローブを介して流れる電流を検出する上下に移動可能な測定モジュールと、前記固定基板と前記対向面との間に配置されたポリアセタール製のスペーサと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電流検出型核酸濃度定量分析装置において絶縁樹脂スペーサに帯電する静電気を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る電流検出型核酸濃度定量分析装置の一実施の形態の斜視図である。
【図2】本発明に係る電流検出型核酸濃度定量分析装置の一実施の形態の上面図である。
【図3】本発明に係る電流検出型核酸濃度定量分析装置の一実施の形態の側断面図である。
【図4】本発明に係る電流検出型核酸濃度定量分析装置の一実施の形態のスペーサ近傍の上面図である。
【図5】ポリカーボネート製のスペーサを用いた電流検出型核酸濃度定量分析装置の比較例のスペーサ近傍の上面図である。
【図6】図5に示す電流検出型核酸濃度定量分析装置の比較例による同一の測定値を示すべき4つのチップ端子を流れる電流測定値の結果の例を示すグラフである。
【図7】図5に示す電流検出型核酸濃度定量分析装置の比較例による電流測定値の相関係数の例を示すグラフである。
【図8】本発明に係る電流検出型核酸濃度定量分析装置の一実施の形態による同一の測定値を示すべき4つのチップ端子を流れる電流測定値の結果の例を示すグラフである。
【図9】本発明に係る電流検出型核酸濃度定量分析装置の一実施の形態による電流測定値の相関係数の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る電流検出型核酸濃度定量分析装置の一実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0010】
図1は、本発明に係る電流検出型核酸濃度定量分析装置の一実施の形態の斜視図である。図2は、本実施の形態における電流検出型核酸濃度定量分析装置の上面図である。図3は、本実施の形態における電流検出型核酸濃度定量分析装置の側断面図である。図4は、本実施の形態における電流検出型核酸濃度定量分析装置のスペーサ近傍の上面図である。
【0011】
本実施の形態の電流検出型核酸濃度定量分析装置は、固定基板13とスプリングプローブボックス20と測定モジュール11とスペーサ12とカセット保持モジュール16とを有している。カセット保持モジュール16は、DNAチップ15を水平に保持する。
【0012】
この電流検出型核酸濃度定量分析装置は、電流検出型の核酸濃度定量分析用DNAチップ15を使用して核酸濃度の定量測定を行う。DNAチップ15には、標的核酸と相補的な核酸を有する同一の核酸プローブ固定した複数種類の面積のセンサと、相補的な核酸を固定していない複数種類の面積のセンサと、が形成されている。DNAチップの複数のセンサは、それぞれチップ端子と接続されている。DNAチップ15に、種々の濃度の核酸を使用して、種々の薬液(配管洗浄液・核酸挿入剤・ハイブリ洗浄液)・エアを送液し、端子を介して電流データを取得する。これにより校正データを取得し、それをもとに核酸濃度を定量測定する。
【0013】
スプリングプローブボックス20は、DNAチップ15の複数のチップ端子とそれぞれ対向するように設けられている。スプリングプローブボックス20は、複数のスプリングプローブを1つの箱体の内部にまとめたものであって、固定基板13の下面に固定されている。
【0014】
固定基板13は、カセット保持モジュール16のDNAチップ15を保持する面と対向するように水平に配置されている。固定基板13は、絶縁性の板と、その板の両面に設けられた配線34とを有している。板の両面に設けられた配線34は、スルーホール33を介して接続されている。スプリングプローブボックス20内のスプリングプローブは、配線34に接続されている。
【0015】
測定モジュール11は、固定基板13の上面に対向する対向面を持つたとえば板状に形成されて水平に配置される。測定モジュール11は、固定基板13の上面に設けられた配線34と電気的に接続されている。測定モジュール11は、図示しない移動機構によって上下に移動可能に設けられている。
【0016】
スペーサ12は、固定基板13の上面と測定モジュール11の対向面との間に配置されている。スペーサ12は、ポリアセタール製である。スペーサ12は、コーナー部に丸みを帯びた略長方形を鉛直方向に延ばした形状(略直方体形状)に形成されている。スペーサ12の数は、たとえば2つであり、スプリングプローブボックス20を挟む位置に設けられている。
【0017】
また、スペーサ12には、アース線14が取り付けられている。このアース線14は、電流検出型核酸濃度定量分析装置の一部に設けられた接地電位となる部分に接続されている。
【0018】
DNAチップ15に所定の処理を施した後、DNAチップ15をカセット保持モジュール16に設置する。この状態で、測定モジュール11を降下させる。これに伴って、固定基板13も降下する。その結果、スプリングプローブボックス20が降下して、スプリングプローブがDNAチップ15のチップ端子に接触する。
【0019】
スプリングプローブがDNAチップのチップ端子に接触した状態で、測定モジュール11は、スプリングプローブボックス20のスプリングプローブに電圧を印加し、スプリングプローブボックス20のスプリングプローブを介して流れる電流を検出する。この電流値に基づいて、測定モジュール11あるいは電流検出型核酸濃度定量分析装置の他の部分がDNAチップ15に滴下された液体中の核酸濃度を定量する。
【0020】
測定モジュール11とスプリングプローブボックス20を固定する固定基板13とを絶縁するスペーサとして、絶縁樹脂の一つであるポリカーボネートを使用している場合、この絶縁樹脂スペーサの表面に静電気が帯電し、測定値異常の原因になる場合がある。また、絶縁樹脂スペーサが測定モジュール11の表面がスルーホールに接触する場合、絶縁樹脂スペーサに帯電した静電気が固定基板13のスルーホールを介して特定の端子に影響し、測定値異常になる場合がある。
【0021】
図5は、ポリカーボネート製のスペーサを用いた電流検出型核酸濃度定量分析装置の比較例のスペーサ近傍の上面図である。図6は、図5に示す電流検出型核酸濃度定量分析装置の比較例による同一の測定値を示すべき4つのチップ端子を流れる電流測定値の結果の例を示すグラフである。図7は、図5に示す電流検出型核酸濃度定量分析装置の比較例による電流測定値の相関係数の例を示すグラフである。図6において、横軸は印加電圧、縦軸は電流値を示している。図7において、横軸はDNAチップのチップ端子を示し、縦軸は同一の測定値を示すべき4つのチップ端子を流れる電流値の相関係数を示している。
【0022】
この電流検出型核酸濃度定量分析装置では、スペーサ51はポリカーボネート製の円筒である。このスペーサ51の側面には、一部のスルーホール33が接触している。このようなポリカーボネート製のスペーサを用いた電流検出型核酸濃度定量分析装置では、図5に示すように、同一の測定値を示すべき4つのチップ端子を流れる電流値に、他の3つのチップ端子を流れる電流値と大きく異なる電流値がチップ端子に流れる場合がある。このような場合、図6に示すように、1から大きくかい離した相関係数が現れる。
【0023】
しかし、本実施の形態では、測定モジュール11とスプリングプローブボックス20を固定する固定基板13とを絶縁するために、ポリアセタール製のスペーサ12を用いている。その結果、スペーサ12に帯電する静電気が抑制される。
【0024】
また、本実施の形態では、スペーサ12は、その側面がスルーホール33に接触しないように配置されている。つまり、スルーホール33は、スペーサ12の下面で覆われる位置には存在してもよいが、スペーサ12の側面から離れるように配置されている。
【0025】
さらに、本実施の形態において、スペーサ12にはアース線14が取り付けられている。このため、スペーサ12に静電気が帯電しても、その静電気はアース線14を介してアース部に逃げることとなる。
【0026】
図8は、本実施の形態の電流検出型核酸濃度定量分析装置による同一の測定値を示すべき4つのチップ端子を流れる電流測定値の結果の例を示すグラフである。図9は、本実施の形態の電流検出型核酸濃度定量分析装置による電流測定値の相関係数の例を示すグラフである。図8において、横軸は印加電圧、縦軸は電流値を示している。図9において、横軸はDNAチップのチップ端子番号を示し、縦軸は同一の測定値を示すべき4つのチップ端子を流れる電流値の相関係数を示している。
【0027】
本実施の形態の電流検出型核酸濃度定量分析装置では、図7に示すように、同一の測定値を示すべき4つのチップ端子を流れる電流値は、ほぼ同じ値を示している。したがって、図8に示すように、相関係数は、いずれのチップ端子を流れる電流値に対しても、ほとんど1となっている。すなわち、測定値異常がほとんど生じないことがわかる。
【0028】
このように本実施の形態によれば、電流検出型核酸濃度定量分析装置において絶縁樹脂スペーサに帯電する静電気を抑制することができる。その結果、測定値異常の発生頻度を抑制することができる。
【符号の説明】
【0029】
11…測定モジュール、12…スペーサ、13…固定基板、14…アース線、15…DNAチップ、16…カセット保持モジュール、20…スプリングプローブ、31…第1端子、32…第2端子、33…スルーホール、34…配線、51…スペーサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチップ端子を有するDNAチップに電流を流して核酸濃度を定量分析する電流検出型核酸濃度定量分析装置において、
絶縁性の板とその板の両面に設けられた配線と前記板を貫通して前記配線を接続するスルーホールとを有する固定基板と、
前記チップ端子と対向するように前記固定基板に固定されて前記配線に接続された複数のスプリングプローブと、
前記固定基板の前記スプリングプローブに対して反対側の面に対向する対向面を持ち、前記チップ端子に電圧を印加して前記スプリングプローブを介して流れる電流を検出する上下に移動可能な測定モジュールと、
前記固定基板と前記対向面との間に配置されたポリアセタール製のスペーサと、
を具備することを特徴とする電流検出型核酸濃度定量分析装置。
【請求項2】
前記スペーサはその側面が前記スルーホールから離れて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電流検出型核酸濃度定量分析装置。
【請求項3】
前記スペーサに取り付けられたアース線をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電流検出型核酸濃度定量分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−81415(P2013−81415A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223072(P2011−223072)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000113322)東芝ホクト電子株式会社 (172)
【Fターム(参考)】