説明

電流検出装置のバスバー接続構造

【課題】電流検出装置が磁性体コア及びそれを貫通する中継バスバーなどがユニット化された構造を有する場合に、中継バスバー30とその前段及び後段の電流伝送経路をなす電線9とを簡易に、かつ、強固に、かつ省スペースで接続すること。
【解決手段】電流検出装置1のバスバー接続構造2において、中継バスバー30の端部に形成された平板状の部品側端子部33は、電線9の端部の端子金具8に形成された平板状の電線側端子部83と重ねられる。部品側端子部33及び電線側端子部83のうちの一方に形成された嵌合孔34と、他方に形成され嵌合孔34に嵌り込む嵌合凸部85とは、嵌め合い部を構成する。端子保持部材60は、相互に重なる部品側端子部33及び電線側端子部83を、それらが重なる方向において弾性的に挟み込んで重なった状態に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置の本体部から両端が張り出した一連の中継バスバーと電線の端部に取り付けられた端子金具とを接続する電流検出装置のバスバー接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車又は電気自動車などの車両には、バッテリに接続されたバスバーに流れる電流を検出する電流検出装置が搭載されることが多い。また、そのような電流検出装置としては、磁気比例方式の電流検出装置又は磁気平衡方式の電流検出装置が採用される場合がある。
【0003】
磁気比例方式又は磁気平衡方式の電流検出装置は、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示されるように、磁性体コアと磁電変換素子とを備える。磁性体コアは、両端がギャップ部を介して対向し、バスバーが貫通する中空部の周囲を囲んで一連に形成された概ねリング状の磁性体である。磁性体の中空部は、被検出電流が通過する空間である。
【0004】
また、磁電変換素子は、磁性体コアのギャップ部に配置され、中空部を貫通して配置されたバスバーを流れる電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する素子である。磁電変換素子としては、通常、ホール素子が採用される。
【0005】
昨今、電流検出装置は、特許文献1に示されるように、磁性体コア及び磁電変換素子が絶縁性の筐体によって一定の位置関係に支持されることにより、一体にユニット化されることが多い。この場合、筐体は、電流検出装置を構成する複数の部品を一定の位置関係に位置決めする。なお、筐体は、一般に、絶縁性の樹脂部材により構成されている。
【0006】
また、特許文献2には、電流検出装置の磁性体コアを貫通するバスバーと、バッテリに接続された端子付電線とを接続する構造が示されている。特許文献2に示されるバスバー接続構造は、バスバーの端部に形成された平板状の端子部と、電線の端部に取り付けられた圧着端子を内部に保持するコネクタとにより構成されている。そして、バスバーの端子部が、電線のコネクタに差し込まれることにより、バスバーと電線の圧着端子とが接触し、それらが電気的に接続される。
【0007】
また、特許文献3に示されるように、車両に搭載される電気接続箱などにおいて、電気部品とバスバーとが、導体からなる中継端子を介して電気的に接続されることが知られている。
【0008】
電気部品と接続される一対の中継端子各々は、電気接続箱内において前段のバスバー及び後段のバスバーの各々と電気的に接続されており、電気部品の端子部が挿入される接続口を形成している。そして、電気部品から同一方向へ突出する板状の一対の端子部は、一対の中継端子各々の接続口に挿入されるだけで、一対の中継端子各々に挟み込まれて保持される。これにより、電気部品の一対の端子部は、一対の中継端子各々を介して前段及び後段のバスバー各々と電気的に接続される。
【0009】
電気部品は、同一方向へ突出する板状の一対の端子部を備えれば、その一対の端子部を予め敷設された一対の中継端子の接続口に挿入するという簡易な操作により、バスバーと電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−128116号公報
【特許文献2】特開平10−104279号公報
【特許文献3】実公昭57−39902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、車両に搭載される電流検出装置において、磁性体コアを貫通する一連の中継バスバーが磁電変換素子及び磁性体コアとともにユニット化され、中継バスバーの両端に電流伝送経路の前段及び後段の接続端と接続可能な端子部が形成されていることが好ましい。この場合、敷設が完了した上流側及び下流側の電流伝送経路に対し、電流検出装置を後付けすることが可能となる。
【0012】
車両において、電流検出装置の中継バスバーとの接続対象となる前段及び後段の電流伝送経路は、通常、バスバー又は電線である。電流検出装置の中継バスバーが電線と接続される場合、特許文献2に示されるようなバスバーの端子部及びコネクタの差し込み構造の採用が考えられる。
【0013】
しかしながら、特許文献2に示されるような差し込み構造は、振動を受けて変位する電線から受ける力によってバスバーの端子部がコネクタから外れる恐れがある、という問題点を有している。
【0014】
一方、バスバーの端子部及び端子付電線の端子部が、ネジを通すための貫通孔が形成された平板状に形成されていれば、バスバーの端子部及び端子付電線の端子部をネジで強固に接続することができる。通常、2つの端子部をネジで接続するためには、ネジ孔が形成された端子台が必要となる。
【0015】
しかしながら、電流検出装置の接続作業において、煩雑なネジ止め作業は極力排除されることが望ましい。また、電流検出装置のバスバーの接続のために端子台を設けることは、電流検出装置の配置に必要なスペースが増大するという問題点を有している。
【0016】
本発明は、電流検出装置が磁性体コア及びそれを貫通する中継バスバーなどがユニット化された構造を有する場合に、中継バスバーとその前段及び後段の電流伝送経路をなす電線とを簡易に、かつ、強固に、かつ省スペースで接続できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、電流検出装置の本体部から両端が張り出した一連の中継バスバーと電線の端部に取り付けられた端子金具とを接続する電流検出装置のバスバー接続構造に関する。本発明に係る電流検出装置のバスバー接続構造は、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、前記中継バスバーの端部に形成された平板状の部品側端子部である。
(2)第2の構成要素は、前記端子金具の端部に形成され、前記部品側端子部と重ねられる平板状の電線側端子部である。
(3)第3の構成要素は、前記部品側端子部における前記電線側端子部と重なる部分及び前記電線側端子部における前記部品側端子部と重なる部分のうちの一方の一部に形成された孔及び他方の一部に形成され前記孔に嵌り込む凸部からなる嵌め合い部である。
(4)第4の構成要素は、相互に重なる前記部品側端子部及び前記電線側端子部を、それらが重なる方向において弾性的に挟み込んで重なった状態に保持する端子保持部材である。
【0018】
本発明に係る電流検出装置のバスバー接続構造において、前記中継バスバーの両端における2箇所の前記嵌め合い部各々の前記孔は異なる形状で形成されていることが望ましい。
【0019】
また、本発明に係る電流検出装置のバスバー接続構造において、前記端子保持部材は、筒状に形成され、相互に重なる状態で中空部を貫通した前記部品側端子部及び前記電線側端子部を、それらが重なる方向において対向する筒の内側面によって弾性的に挟み込む部材であることが考えられる。この場合、前記部品側端子部における前記電線側端子部と重なる部分よりも前記電流検出装置の前記本体部側の部分及び前記電線側端子部における前記部品側端子部と重なる部分よりも前記電線側の部分のうちの一方に、筒状の前記端子保持部材の中空部を貫通可能な余長部が形成されている。
【0020】
また、本発明に係る電流検出装置のバスバー接続構造において、前記中継バスバーは、全体が折り返した形状で形成され、前記電流検出装置の前記本体部から平行な2直線各々に沿って同一方向へ張り出した一対の前記部品側端子部を有することが考えられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電流検出装置のバスバー接続構造において、孔及び凸部からなる嵌め合い部は、中継バスバーに設けられた部品側端子部及び電線に設けられた電線側端子部が、それらが重なる境界面に沿う方向の力を受けて位置ずれすることを防ぐ。以下の説明において、部品側端子部及び電線側端子部が重なる境界面のことを端子接触面と称する。
【0022】
さらに、本発明に係る電流検出装置のバスバー接続構造において、端子保持部材は、嵌め合い部が端子接触面に交差する方向の力を受けることによって嵌め合い部の凸部が孔から外れることを防ぐ。
【0023】
また、本発明に係る電流検出装置のバスバー接続構造は、部品側端子部と電線側端子部とを重ね合わせるとともに、端子部の重ね合わせ部分を端子保持部材に挟み込ませる、というごく簡易な作業により完成する。即ち、部品側端子部及び電線側端子部の接続のために煩雑なネジ止め作業は不要である。さらに、端子台などの大きなスペースを要する構成要素も不要である。
【0024】
従って、本発明によれば、電流検出装置が磁性体コア及びそれを貫通する中継バスバーなどがユニット化された構造を有する場合に、中継バスバーとその前段及び後段の電流伝送経路をなす電線とを簡易に、強固に、かつ省スペースで接続することが可能となる。
【0025】
また、本発明において、中継バスバーの両端における2箇所の嵌め合い部各々の孔が、異なる形状で形成されていれば、部品側端子部及び電線側端子部が、極性を誤って接続されることを防止できる。
【0026】
また、本発明において、端子保持部材が筒状であれば、端子保持部材が端子部の重ね合わせ部分から外れにくくなるという効果が得られる。
【0027】
また、本発明において、中継バスバーが、折り返した形状で形成され、平行な2直線各々に沿って同一方向へ張り出した一対の部品側端子部を有することが考えられる。この場合、中継バスバーにおける一対の部品側端子部は、電気接続箱などにおいてバスバーと接続された一対の中継端子に差し込まれるだけで、バスバーと電気的に接続される。そのような中継バスバーを備える電流検出装置は、端子金具が設けられた電線との接続、及び中継端子が設けられたバスバーとの接続のいずれにも適用でき、汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電流検出装置1のバスバー接続構造2の分解斜視図である。
【図2】電流検出装置1のバスバー接続構造2の側面図である。
【図3】電流検出装置1の分解斜視図である。
【図4】電流検出装置1の3面図である。
【図5】電流検出装置1の接続相手である第一端子付電線7aの平面図及び側面図である。
【図6】電流検出装置1の接続相手である第二端子付電線7bの平面図及び側面図である。
【図7】バスバー接続構造2を構成する端子保持部材60の3面図である。
【図8】端子保持部材60の断面図である。
【図9】バスバー接続構造2の断面図である。
【図10】第1応用例に係るバスバー接続構造2Aを構成する端子保持部材60Aの正面図及び平面図である。
【図11】一部に断面図を含むバスバー接続構造2Aの平面図である。
【図12】電気接続箱及びこれに取り付けられる電流検出装置1の斜視図である。
【図13】電流検出装置1に採用可能な中継バスバー30Aの底面図である。
【図14】第2応用例に係るバスバー接続構造2Bに適用される電流検出装置1Aの斜視図である。
【図15】電流検出装置1Aのバスバー接続構造2Bの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0030】
<電流検出装置>
まず、本発明の実施形態に係る電流検出装置1のバスバー接続構造2についての説明の前に、図3及び図4を参照しつつ、電流検出装置1の構成について説明する。
【0031】
なお、図4に示される電流検出装置1の3面図のうち、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図、図4(c)は平面図である。
【0032】
電流検出装置1は、電気自動車又はハイブリッド自動車などにおいて、バッテリとモータなどの機器とを電気的に接続するバスバーに流れる電流を検出する装置である。図1に示されるように、電流検出装置1は、磁性体コア10、ホール素子20、中継バスバー30、絶縁筐体40及び電子基板50を備える。
【0033】
<電流検出装置:磁性体コア>
磁性体コア10は、パーマロイ、フェライト又はケイ素鋼などの磁性材料からなる部材(磁性体)である。磁性体コア10は、例えば、磁性材料からなる粉体の焼結により成形された部材である。そのような磁性体コア10は、磁性材料からなる固体粉末の集合体が、型枠内で圧縮され、さらに、その磁性体材料の融点よりも低い温度で加熱されることによって固化及び成形された部材である。或いは、磁性体コア10は、積層タイプの磁性体コアであってもよい。
【0034】
また、磁性体コア10は、両端が数ミリメートル程度のギャップ部12を介して対向し、中空部11の周囲を囲んで一連に形成された形状を有している。即ち、磁性体コア10は、狭いギャップ部12を有するものの概ね環状に形成されている。本実施形態における磁性体コア10は、円形状の中空部11を囲む円環状に形成されている。
【0035】
<電流検出装置:ホール素子(磁電変換素子)>
ホール素子20は、磁性体コア10のギャップ部12に配置され、磁性体コア10の中空部11を通過する電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する磁電変換素子の一例である。このホール素子20には、電力の入力用及び検出信号の出力用の接続端子21が延び出て形成されている。
【0036】
ホール素子20は、予め定められた検出中心点が、磁性体コア10における対向する両端部の投影面の中心を結ぶ線上に位置し、かつ、表裏の面がギャップ部12に形成される磁束の方向に対して直交するように配置される。ホール素子20の検出中心点は、通常、ホール素子20のほぼ中心に位置する。
【0037】
<電流検出装置:電子基板>
電子基板50は、ホール素子20の接続端子21と電気的に接続される回路と、その回路と外部の他の回路とを接続するためのコネクタ51とが実装された基板である。従って、コネクタ51は、ホール素子20に対して電気的に接続されている。電子基板50に実装された回路は、例えば、ホール素子20に供給される電流を調整する回路、及びホール素子20から出力される磁束の検出信号を増幅する回路などを含む。ホール素子20は、コネクタ51を含む電子基板50を介して、制御部などの外部の回路と接続される。
【0038】
また、電子基板50の両側の縁には、欠け部501が形成されている。後述するように、電子基板50の欠け部501は、絶縁筐体40によって支持される部分である。
【0039】
<電流検出装置:中継バスバー>
中継バスバー30は、軟銅又はアルミニウムなどの金属からなる導電体であり、バッテリ又はインバータ回路などの一次側の機器とモータなどの二次側の機器とを電気的に接続するバスバーの一部である。即ち、中継バスバー30は、検出対象の電流が流れる電流検出用のバスバーである。また、中継バスバー30は、一次側の機器に対して予め接続された前段バスバーと、二次側の機器に対して予め接続された後段バスバーとは独立した部材である。
【0040】
前段及び後段のバスバーの端部には中継端子が接続されており、前段及び後段の他のバスバーは、中継端子とともに電気接続箱などに予め敷設されている。そして、中継バスバー30は、その両端部分において、予め敷設された前段及び後段の他のバスバーの中継端子に対して接続される。中継バスバー30と、これに連結された前段及び後段の他のバスバーとは、バッテリから電装機器へ至る電流伝送経路を形成する。
【0041】
図3に示されるように、中継バスバー30は、全体が折り返した形状で形成された部材であり、磁性体コア10の中空部11を貫通する状態で配置される。なお、図3において、磁性体コア10の中空部11を貫通する状態の中継バスバー30が、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0042】
中継バスバー30は、棒状の貫通部31と、棒状の一対の延長部32と、平板状に形成された一対の部品側端子部33とにより構成されている。より具体的には、中継バスバー30は、中央部分において一定の範囲を占める棒状の貫通部31と、その貫通部31に対し中空部11を貫通する方向の両側各々に連なって形成された棒状の一対の延長部32と、一対の延長部32各々に連なって形成された一対の部品側端子部33とを有する導体からなる部材である。
【0043】
貫通部31は、磁性体コア10の中空部11を電流通過方向に沿って貫通する棒状の部分であり、その断面形状は扁平な形状ではない。電流通過方向は、磁性体コア10の厚み方向であり、環状の磁性体コア10を筒とみなした場合におけるその筒の軸心方向であり、さらに、環状の磁性体コア10が形成する面に直交する方向でもある。図3及び図4において、電流通過方向は、X軸方向として記されている。以下の説明において、電流通過方向(X軸方向)を第1方向と称する。
【0044】
一対の延長部32は、貫通部31に対し第1方向の前後両側各々に連なり、第1方向に直交する方向へ平行に延びる棒状の部分である。即ち、中継バスバー30は、貫通部31と一対の延長部32各々との境界部分において角度90°で曲がって形成されている。各図において、一対の延長部32の長手方向に沿う方向がZ軸方向として記されている。また、図3及び図4において、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向がY軸方向として記されている。以下の説明において、一対の延長部32が貫通部31から延び出た方向(Z軸の負方向)を第2方向と称する。また、第1方向及び第2方向に直交する方向を第3方向(Y軸方向)と称する。
【0045】
一対の部品側端子部33は、一対の延長部32各々に対し第2方向側に連なり、貫通部31及び延長部32よりも幅が大きい平板状に形成された部分である。一対の部品側端子部33は、中継バスバー30の両端各々に形成されている。
【0046】
中継バスバー30における貫通部31及び延長部32は、例えば、円柱状、楕円柱状又は角柱状などの棒状に形成されている。本実施形態では、中継バスバー30の貫通部31及び延長部32はそれぞれ円柱状である。
【0047】
一方、一対の部品側端子部33は、いずれも貫通部31及び延長部32よりも大きい幅の平板状に形成されている。また、貫通部31及び延長部32は、一対の部品側端子部33各々よりも大きな厚みで形成されている。
【0048】
中継バスバー30は、例えば、磁性体コア10の中空部11を貫通可能な棒状の導体の両端部分にプレス加工が施されることにより得られる部材である。この場合、プレス加工された両端部分が、電流伝送経路の前段及び後段各々の端子付電線又はバスバーなどの送電路の接続端と接続される一対の部品側端子部33である。
【0049】
中継バスバー30は、磁性体コア10の中空部11を貫通可能な棒状の金属部材の両端部分がプレス加工により他の部分よりも大きい幅の平板状に押しつぶされて成形された構造を有する部材である。プレス加工により押しつぶされた両端部分が、中継バスバー30の一対の部品側端子部33を構成する。
【0050】
中継バスバー30の元となる棒状の金属部材は、例えば、折り返した形状に予め成形されている。そのような金属部材の両端部が、プレス加工によって他の部分よりも幅の大きい板状に成形されることにより、中継バスバー30が作製される。
【0051】
或いは、中継バスバー30の元となる金属部材が、真っ直ぐな棒状であることも考えられる。この場合、真っ直ぐな棒状の金属部材は、両端部においてプレス加工によって他の部分よりも幅の大きい板状に成形され、その後、中央部分の両側の2箇所において折り曲げられる。このような手順により中継バスバー30が作製されてもよい。
【0052】
中継バスバー30において、一対の部品側端子部33各々の幅は、磁性体コア10の中空部11の直径(幅)よりも大きく形成されている。また、貫通部31及び延長部32の厚み(直径)は、扁平な部品側端子部33の厚みよりも大きく形成されている。即ち、貫通部31及び延長部32の断面の輪郭の縦寸法と横寸法の比は、扁平な部品側端子部33の断面の縦寸法と横寸法の比よりも1に近い。なお、貫通部31が円柱状である場合、貫通部31の厚みと幅とは同じである。そのことは、延長部32についても同様である。ここで、比が1に近いということは、比が1であることを含む。
【0053】
また、本実施形態においては、貫通部31及び延長部32の厚みは、磁性体コア10における両端の間隔よりも小さい。なお、磁性体コア10における両端の間隔は、磁性体コア10のギャップ部12の高さである。
【0054】
また、部品側端子部33の一部には、後述するバスバー接続構造2の構成要素である嵌合孔34が形成されている。嵌合孔34は、例えば、部品側端子部33に対する打ち抜き加工により形成される。
【0055】
図4に示されるように、中継バスバー30における一対の部品側端子部33は、電流検出装置1の本体部をなす絶縁筐体40から平行な2直線各々に沿って同一方向へ張り出して形成されている。
【0056】
また、本実施形態においては、中継バスバー30の両端における2箇所の部品側端子部33各々の嵌合孔34は異なる形状で形成されている。嵌合孔34を含むバスバー接続構造2の詳細については後述する。
【0057】
<電流検出装置:絶縁筐体>
絶縁筐体40は、絶縁材料からなり、磁性体コア10とホール素子20と中継バスバー30と電子基板50とを一定の位置関係で支持する部材である。絶縁筐体40は、箱部材41及び箱部材41と組み合わされる蓋部材42からなる。箱部材41及び蓋部材42の各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂からなる一体成形部材である。
【0058】
箱部材41は、第1方向(X軸の正方向)に開口が形成された箱状の部材である。即ち、箱部材41は、上下、左右及び前後の6方向のうち、第1方向を除く残りの5方向において壁が形成された部材である。一方、蓋部材42は、箱部材41と組み合わされることによって箱部材41の開口を塞ぐ部材である。
【0059】
箱部材41の底壁411は、第2方向(Z軸の負方向)の端の壁を形成している。図3、図3に示されるように、底壁411には、中継バスバー30における貫通部31から一対の延長部32各々の一部に亘る部分を挿入可能な貫通孔であるバスバー孔45が形成されている。
【0060】
また、箱部材41の底壁411におけるバスバー孔45の縁には、第3方向(Y軸の正方向)へ凹み、中継バスバー30における一対の延長部32各々が嵌り込む一対の切れ込み部451が形成されている。切れ込み部451は、延長部32の外縁形状に沿う形状で形成されている。本実施形態では、延長部32は円柱状であり、切れ込み部451は、延長部32の外周面に沿う円弧状に形成されている。
【0061】
また、箱部材41には、その内側の面において突出する第1支持部43及び第2支持部44が形成されている。箱部材41は、第1支持部43及び第2支持部44により、磁性体コア10と、中空部11を貫通する中継バスバー30と、ギャップ部12に配置されたホール素子20とを、それらが相互に接触しない一定の位置関係で支持する。その詳細については後述する。
【0062】
より具体的には、第1支持部43は、図3に示されるように、第1方向を軸心方向とする半筒状に形成されている。また、半筒状の第1支持部43において、側面の開放部は、第2方向に対して交差する方向に向いて形成されている。例えば、半筒状の第1支持部43の側面の開放部は、第2方向(Z軸の負方向)と第3方向(Y軸の正方向又は負方向)との間の方向に向いて形成されている。
【0063】
第1支持部43の内側面は、中継バスバー30の貫通部31の外周面に沿う形状に形成されている。また、第1支持部43の外側面は、磁性体コア10の内縁の周面に沿う形状に形成されている。本実施形態においては、中継バスバー30の貫通部31は円柱状であり、磁性体コア10の内縁は円弧状であり、第1支持部43は半円筒状である。
【0064】
一方、第2支持部44は、磁性体コア10のギャップ部12の位置においてホール素子20を取り囲む壁を形成している。ホール素子20が第2支持部44の中空部に嵌め入れられることにより、第2支持部44は、磁性体コア10のギャップ部12の位置においてホール素子20を位置決めしつつ支持する。これにより、磁性体コア10及びホール素子20は、相互に接触しない状態で保持される。
【0065】
また、第2支持部44の外側面は、磁性体コア10の両端面に接する。これにより、第2支持部44は、第1支持部43に支持された磁性体コア10の回転を制限する回転止め部としても機能する。
【0066】
蓋部材42は、磁性体コア10、ホール素子20及び中継バスバー30を支持する箱部材41に対し、電子基板50を挟み込みつつ、箱部材41の開口を塞ぐように取り付けられる。
【0067】
蓋部材42の内側面には、回転止め突起部421と遮蔽板422とが、箱部材41に向かう方向へ突出して形成されている。図6に示されるように、回転止め突起部421は、第1方向(X軸方向)に沿って突出して形成され、半筒状の第1支持部43に支持された中継バスバー30の延長部32に接して中継バスバー30の回動を制限する部分である。
【0068】
また、遮蔽板422は、第1方向に沿って突出して形成された板状の部分である。蓋部材42が箱部材41に組み合わされることにより、遮蔽板422は、箱部材41の底壁411におけるバスバー孔45のうち切れ込み部451に嵌り込んだ一対の延長部32が占める領域以外の領域を塞ぐ。
【0069】
また、箱部材41における底壁411に対向する壁には、電子基板50に実装されたコネクタ51が嵌り込む欠け部412が形成されている。さらに、箱部材41の両側壁の内側面には第1方向に沿う突起部である基板支持部46が形成されている。
【0070】
箱部材41の基板支持部46は、電子基板50の欠け部501に嵌り込むことにより、電子基板50を位置決めしつつ支持する。また、電子基板50は、基板支持部46により支持された状態で箱部材41と蓋部材42との間に挟み込まれ、電子基板50に実装されたコネクタ51は、箱部材41に形成された欠け部412に嵌り込んだ状態で固定される。
【0071】
さらに、箱部材41及び蓋部材42には、それらを組み合わせ状態で保持するロック機構47,48が設けられている。図3に示されるロック機構47,48は、箱部材41の側面に突出して形成された爪部47と、蓋部材42の側方に形成された環状の枠部48とを備える。箱部材41の爪部47が、蓋部材42の枠部48が形成する孔に嵌り込むことにより、箱部材41及び蓋部材42は、それらが組み合わされた状態で保持される。
【0072】
箱部材41及び蓋部材42(絶縁筐体40)は、磁性体コア10の両側から第1方向に沿って組み合わされる。そして、箱部材41及び蓋部材42は、相互に組み合わされることにより、中継バスバー30における一対の延長部32各々の一部及び一対の部品側端子部33と、電子基板50のコネクタ51の一部とが外部に露出する状態で、磁性体コア10と、中継バスバー30における貫通部31から一対の延長部32各々の一部に亘る部分と、ホール素子20とを覆いつつ一定の位置関係で支持する。
【0073】
また、絶縁筐体40には、支持体5にネジ6で固定される筐体被支持部49が形成されている。筐体被支持部49には、ネジ6が通される貫通孔491が形成されている。支持体5は、例えば、電気接続箱の側壁、又は車両のボディパネルなどの板状の部材である。
【0074】
<端子付電線>
次に、図5及び図6を参照しつつ、電流検出装置1の中継バスバー30に対する接続相手となる端子付電線7について説明する。
【0075】
以下の説明において、一対の部品側端子部33の各々のことを第一部品側端子部33a及び第二部品側端子部33bと称する。また、第一部品側端子部33aと接続される端子付電線7及びその端部に設けられた端子金具8のことを、それぞれ第一端子付電線7a及び第一端子金具8aと称する。同様に、第二部品側端子部33bと接続される端子付電線7及びその端部に設けられた端子金具8のことを、それぞれ第二端子付電線7b及び第二端子金具8bと称する。
【0076】
なお、図5は、第一端子付電線7aの平面図及び側面図であり、図6は、第二端子付電線7bの平面図及び側面図である。
【0077】
端子付電線7は、電線9とその電線9の端部に取り付けられた端子金具8とにより構成されている。電線9は、導体からなる芯線91と芯線91の周囲を覆う絶縁被覆92とからなる絶縁電線である。
【0078】
端子金具8は、芯線圧着部81と、鍔部82と、電線側端子部83とを有する。芯線圧着部81は、電線9の芯線91に対し、かしめ加工により圧着された部分である。鍔部82は、芯線圧着部81に連なって形成され、芯線圧着部81の幅よりも広い幅で形成された部分である。電線側端子部83は、鍔部82に連なって形成され、端子金具8における先端から一部の領域を占める平板状の部分である。
【0079】
電線側端子部83は、その先端側の一部において電流検出装置1の部品側端子部33と重ねられる部分である。また、電線側端子部83における部品側端子部33と重ねられる部分の一方の面には、嵌合凸部85が形成されている。
【0080】
本実施形態においては、嵌合凸部85は、電線側端子部83の一部をプレス加工することにより形成された凸部である。そのため、電線側端子部83における嵌合凸部85に対して反対側の面には、凹部86が形成されている。
【0081】
以下の説明において、第一端子金具8aに形成された嵌合凸部85のことを第一嵌合凸部85aと称する。同様に、第二端子金具8bに形成された嵌合凸部85のことを第二嵌合凸部85bと称する。
【0082】
図5及び図6に示されるように、本実施形態においては、第一嵌合凸部85aと第二嵌合凸部85bとは形状が異なる。嵌合凸部85は、後述するバスバー接続構造2の構成要素である。嵌合凸部85を含むバスバー接続構造2の詳細については後述する。
【0083】
<バスバー接続構造>
続いて、図1、図2、図7〜図9を参照しつつ、本発明の実施形態に係るバスバー接続構造2の概略構成について説明する。バスバー接続構造2は、電気自動車又はハイブリッド自動車などの車両に搭載される電流検出装置1の本体部から両端が張り出した一連の中継バスバー30と電線9の端部に取り付けられた端子金具8とを電気的に接続する構造である。電線9及び端子金具8は、端子付電線7を構成している。
【0084】
なお、図7(a)、図7(b)及び図7(c)は、それぞれバスバー接続構造2を構成する端子保持部材60の正面図、平面図及び側面図である。また、図8(a)は、図7(a)に示されるA−A断面の図、図8(b)は、図7(a)に示されるB−B断面の図である。また、図9(a)〜図9(d)は、バスバー接続構造2の断面図である。
【0085】
図1に示されるように、バスバー接続構造2は、部品側端子部33と、電線側端子部83と、部品側端子部33の一部に形成された嵌合孔34と、電線側端子部83の一部に形成された嵌合凸部85と、端子保持部材60とにより構成されている。
【0086】
部品側端子部33は、中継バスバー30の端部に形成された平板状の部分である。また、電線側端子部83は、端子金具8の端部に形成され、部品側端子部33と重ねられる平板状の部分である。
【0087】
部品側端子部33は、中継バスバー30の両端各々に形成されており、一対の部品側端子部33の各々は、2本の端子付電線7各々の端子金具8と接続される。
【0088】
嵌合孔34は、部品側端子部33における電線側端子部83と重なる部分に形成された貫通孔である。また、嵌合凸部85は、電線側端子部83における部品側端子部33と重なる部分に形成され、部品側端子部33及び電線側端子部83が重ねられたときに嵌合孔34に嵌り込む凸部である。従って、嵌合凸部85は、その輪郭を形成する側面が嵌合孔34の縁に沿う形状で形成されている。なお、嵌合孔34及び嵌合凸部85は、嵌め合い部の一例である。
【0089】
本実施形態においては、中継バスバー30の両端における2箇所の嵌合孔34、即ち、2箇所の嵌め合い部は、それぞれ異なる形状で形成されている。即ち、第一部品側端子部33aの第一嵌合孔34aの形状は、第二部品側端子部33bの第二嵌合孔34bの形状と異なる。同様に、第一電線側端子部83aにおける第一嵌合凸部85aの側面の輪郭形状も、第二電線側端子部83bにおける第一嵌合凸部85aの側面の輪郭形状と異なる。
【0090】
従って、第一嵌合凸部85aを第一嵌合孔34aに挿入することは可能であるが、第一嵌合凸部85aを第二嵌合孔34bに挿入することはできない。同様に、第二嵌合凸部85bを第二嵌合孔34bに挿入することは可能であるが、第二嵌合凸部85bを第一嵌合孔34aに挿入することはできない。
【0091】
また、電線側端子部83における部品側端子部33と重なる部分よりも電線9側の部分には、後述する筒状の端子保持部材60の中空部を貫通可能な余長部84が形成されている。一方、端子金具8の鍔部82は、端子保持部材60の中空部の幅よりも広い幅で形成されている。
【0092】
端子保持部材60は、相互に重なる部品側端子部33及び電線側端子部83を、それらが重なる方向において弾性的に挟み込んで重なった状態に保持する部材である。以下の説明において、部品側端子部33及び電線側端子部83における相互に重ねられた部分のことを端子重ね部30xと称する。
【0093】
端子保持部材60は、合成樹脂などの絶縁材料からなる一体成形部材であることが考えられる。端子保持部材60に採用される合成樹脂は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂である。
【0094】
また、端子保持部材60が金属部材であることも考えられる。端子保持部材60が金属部材である場合、絶縁材料の被覆が、少なくとも端子保持部材60の外装面に形成されていることが望ましい。
【0095】
本実施形態においては、端子保持部材60は、筒状に形成された部材である。さらに、筒状の端子保持部材60における中空部を隔てて対向する一対の側壁には、内側(中空部側)へ隆起する一対の隆起部61が形成されている。
【0096】
隆起部61は、外側から内側へのプレス加工により形成されている。そのため、端子保持部材60の側壁における隆起部61の反対側の面(外側面)には、凹部62が形成されている。また、本実施の形態において、隆起部61の表面は、外縁部から中央部にかけて徐々に背が高くなる湾曲面である。図7に示される例では、隆起部61の表面は、部分球面状である。
【0097】
図9の断面図は、部品側端子部33及び電線側端子部83を接続する手順を示している。部品側端子部33及び電線側端子部83が接続される場合、まず、図9(a)に示されるように、端子金具8が、その先端から端子保持部材60の中空部に通され、端子金具8の余長部84が、端子保持部材60の中空部に配置される。これにより、図9(b)に示される状態となる。
【0098】
前述したように、端子金具8の鍔部82は、端子保持部材60の中空部の幅よりも大きな幅で形成されている。そのため、端子金具8に通された端子保持部材60は、端子金具8の鍔部82に引っ掛かり、電線9にまでは到達しない。
【0099】
次に、図9(b)に示されるように、部品側端子部33及び電線側端子部83が重ねられ、電線側端子部83の嵌合凸部85が、部品側端子部33の嵌合孔34に嵌め入れられる。これにより、図9(c)に示される状態、即ち、端子重ね部30xが形成された状態となる。
【0100】
なお、嵌合凸部85の高さは、嵌合孔34の深さ以下、即ち、部品側端子部33の厚み以下で形成されている。そのため、嵌合凸部85が、部品側端子部33を貫通して反対側に突出することはない。
【0101】
最後に、端子金具8の余長部84の位置に配置されていた端子保持部材60の位置が、端子重ね部30xを内包する位置へ移される。これにより、図9(d)に示される状態となる。
【0102】
図9(d)に示されるように、端子重ね部30xが端子保持部材60の中空部に挿入されると、端子保持部材60の隆起部61は、端子保持部材60の内側から外側へ向かう方向へ弾性変形しつつ、端子重ね部30xを、部品側端子部33及び電線側端子部83が重なる方向において弾性的に挟み込む。これにより、端子保持部材60の中空部に配置された端子重ね部30xは、重なった状態で保持される。
【0103】
また、軽量な端子保持部材60は、端子重ね部30xとの摩擦抵抗により、端子重ね部30xから外れず、端子重ね部30xを挟み込む状態を維持する。本実施形態においては、端子保持部材60における隆起部61の頭頂部が、電線側端子部83の凹部86に入り込むため、端子保持部材60は、端子重ね部30xからより外れにくい。
【0104】
<第1応用例>
次に、図10及び図11を参照しつつ、第1応用例に係るバスバー接続構造2Aについて説明する。図10(a)及び図10(b)は、それぞれバスバー接続構造2Aを構成する端子保持部材60Aの正面図及び平面図である。また、図11は、バスバー接続構造2Aの平面図である。また、図11(a)は、端子重ね部30x及びこれに取り付けられる前の端子保持部材60Aの図である。また、図11(b)は、端子重ね部30x及びこれに取り付けられた端子保持部材60Aの図である。但し、図11において、端子重ね部30xは断面図で描かれている。
【0105】
なお、図11において、図1から図9に示される構成要素と同じ構成要素は同じ符号が付されている。
【0106】
図10に示されるように、端子保持部材60Aは、端子重ね部30xが挿入される中空部67を隔てて対向する一対の板状部63と、一対の板状部63各々の一つの縁を連結する連結部64とにより構成されている。一対の板状部63における連結部64と連なる縁に対して反対側の縁65は、端子重ね部30xの挿入口66を形成している。即ち、端子保持部材60Aは、図7及び図8に示された端子保持部材60と異なり、筒状の部材ではない。
【0107】
図11(a)に示されるように、端子重ね部30xは、端子保持部材60Aの挿入口66から端子保持部材60Aの中空部67へ押し込められる。その際、端子保持部材60Aの連結部64が弾性変形し、端子保持部材60Aの挿入口66が広がる。
【0108】
また、端子保持部材60Aにおける一対の板状部63は、端子保持部材60Aの中空部67へ押し込められた端子重ね部30xを、部品側端子部33及び電線側端子部83が重なる方向において弾性的に挟み込む。これにより、端子保持部材60の中空部67に配置された端子重ね部30xは、重なった状態で保持される。
【0109】
また、軽量な端子保持部材60Aは、端子重ね部30xとの摩擦抵抗により、端子重ね部30xから外れず、端子重ね部30xを挟み込む状態を維持する。端子保持部材60Aが採用されることにより、端子金具8の電線側端子部83において、余長部84は不要となる。
【0110】
<中継バスバーと他のバスバーとの接続>
図12は、電気接続箱70及びこれに取り付けられる電流検出装置1の斜視図である。図12に示されるように、電流検出装置1における一対の部品側端子部33は、電源ボックスなどの電気接続箱70内に予め敷設された前段及び後段の他のバスバー90と接続されてもよい。この場合、一対の部品側端子部33は、電気接続箱70内に予め敷設された前段及び後段の他のバスバー90の中継端子80の接続口に差し込まれる。
【0111】
一対の部品側端子部33は、バスバー90の中継端子80の接続口に差し込まれることにより、前段及び後段の他のバスバー90と電気的に接続されるとともに、電気接続箱70内に固定される。電流検出装置1は、図12に示されるような用途にも適用可能である。
【0112】
<中継バスバーの他の例>
ところで、図1、図3及び図4に示される例では、中継バスバー30における一対の部品側端子部33各々は、平行な2平面各々に沿う平板状に形成されている。しかしながら、一対の部品側端子部33各々は、平行ではない2平面各々に沿う平板状に形成されていてもよい。
【0113】
図13は、電流検出装置1に採用可能な中継バスバー30Aの底面図である。図13において、前段及び後段の他のバスバー90の中継端子80が仮想線(二点鎖線)で描かれている。なお、図13において、図1から図9に示される構成要素と同じ構成要素は同じ符号が付されている。
【0114】
図13に示される例では、中継バスバー30Aにおける一対の部品側端子部33各々は、直交する2平面各々に沿う平板状に形成されている。より具体的には、一方の部品側端子部33は、X−Z平面に平行な平板状であり、他方の部品側端子部33は、Y−Z平面に平行な平板状である。
【0115】
中継バスバー30Aの一対の部品側端子部33が、他のバスバー90の中継端子80の接続口に挿入されると、X−Z平面に平行な一方の部品側端子部33は、一方の中継端子80によってY軸方向における位置が固定され、Y−Z平面に平行な他方の部品側端子部33は、他方の中継端子80によってX軸方向における位置が固定される。
【0116】
従って、中継バスバー30Aにおいて、一対の部品側端子部33のX軸方向における相対位置の誤差は、X軸方向に平行な接続口を有する中継端子80のあそびによって吸収される。また、一対の部品側端子部33のY軸方向における相対位置の誤差は、Y軸方向に平行な接続口を有する中継端子80のあそびによって吸収される。
【0117】
<第2応用例>
次に、図14及び図15を参照しつつ、第2応用例に係るバスバー接続構造2Bについて説明する。図14は、バスバー接続構造2Bに適用される電流検出装置1Aの斜視図である。また、図15は、電流検出装置1Aのバスバー接続構造2Bの側面図である。
【0118】
なお、図14及び図15において、図1から図9に示される構成要素と同じ構成要素は同じ符号が付されている。
【0119】
図14及び図15に示されるように、電流検出装置1Aは、折り返し形状の中継バスバー30の代わりに、一の直線に沿った一連の中継バスバー30Bを備える。この中継バスバー30Bは、棒状の貫通部31と、平板状に形成された一対の部品側端子部33とにより構成されている。
【0120】
中継バスバー30Bにおいて、一対の部品側端子部33は、電流検出装置1Aの本体部をなす絶縁筐体40から相互に反対側へ張り出して形成されている。
【0121】
従って、図15に示されるように、バスバー接続構造2Bは、電流検出装置1Aの絶縁筐体40に対して一方の側とその反対側との2箇所に配置される。バスバー接続構造2Bは、電流検出装置1Aに対して配置される位置及び向きが異なる以外は、バスバー接続構造2と同じ構造である。図15に示されるバスバー接続構造2Bも、本発明の実施形態の一つである。
【0122】
<効果>
【0123】
電流検出装置1,1Aのバスバー接続構造2,2A,2Bにおいて、嵌合孔34及び嵌合凸部85からなる嵌め合い部は、中継バスバー30,30A,30Bに設けられた部品側端子部33及び端子付電線7に設けられた電線側端子部83が、それらが重なる境界面(端子接触面)に沿う方向の力を受けて位置ずれすることを防ぐ。
【0124】
端子接触面に沿う方向の力は、例えば、端子付電線7を電流検出装置1から遠ざける方向へ作用する引っ張り力、及び端子付電線7を電流検出装置1に向かって近づける方向へ作用する押し付け力などである。
【0125】
さらに、電流検出装置1,1Aのバスバー接続構造2,2A,2Bにおいて、端子保持部材60,60Aは、嵌め合い部が端子接触面に交差する方向の力を受けることによって嵌め合い部の嵌合凸部85が嵌合孔34から外れることを防ぐ。端子接触面に交差する方向の力は、例えば、端子付電線7又は電流検出装置1,1Aの横揺れにより嵌め合い部に作用する力である。
【0126】
また、バスバー接続構造2,2A,2Bは、部品側端子部33と電線側端子部83とを重ね合わせるとともに、端子重ね部30xを端子保持部材60,60Aに挟み込ませる、というごく簡易な作業により完成する。即ち、部品側端子部33及び電線側端子部83の接続のために煩雑なネジ止め作業は不要である。さらに、端子台などの大きなスペースを要する構成要素も不要である。
【0127】
従って、バスバー接続構造2,2A,2Bが採用されることにより、電流検出装置1,1Aが磁性体コア10及びそれを貫通する中継バスバー30,30Aなどがユニット化された構造を有する場合に、中継バスバー30,30Aとその前段及び後段の電流伝送経路をなす電線9とを簡易に、強固に、かつ省スペースで接続することが可能となる。
【0128】
また、中継バスバー30,30A,30Bの両端の2箇所における嵌め合い部各々の嵌合孔34a,34bが、異なる形状で形成されているため、部品側端子部33及び電線側端子部83が、極性を誤って接続されることを防止できる。
【0129】
また、筒状の端子保持部材60が採用された場合、端子保持部材60が端子重ね部30xから外れにくくなるという効果が得られる。
【0130】
また、全体が折り返した形状の中継バスバー30,30Aが採用された場合、一対の部品側端子部33は、平行な2直線各々に沿って同一方向へ張り出して形成されている。この場合、図12に示されるように、中継バスバー30,30Aにおける一対の部品側端子部33は、電気接続箱70などにおいて他のバスバー90と接続された一対の中継端子80に差し込まれるだけで、他のバスバー90と電気的に接続される。そのような中継バスバー30,30Aを備える電流検出装置1は、端子金具8が設けられた電線9との接続、及び中継端子80が設けられた他のバスバー90との接続のいずれにも適用でき、汎用性が高い。
【0131】
<その他>
以上に示された実施形態では、嵌合孔34が、中継バスバー30,30A,30Bの部品側端子部33に形成されており、嵌合凸部85が、端子金具8の電線側端子部83に形成されている。
【0132】
しかしながら、嵌合孔34が、端子金具8の電線側端子部83における部品側端子部33と重なる部分に形成され、嵌合凸部85が、中継バスバー30,30A,30Bの部品側端子部33における電線側端子部83と重なる部分に形成されることも考えられる。しかしながら、嵌合凸部85が形成された中継バスバーは、他のバスバー90と接続された中継端子80との接続には適さない。
【0133】
同様に、余長部84が、部品側端子部33における電線側端子部83と重なる部分よりも電流検出装置1の本体部(絶縁筐体40)側の部分に形成されることも考えられる。
【0134】
また、電流検出装置1,1Aにおいて、中継バスバー30,30A,30Bの貫通部31が、四角柱状、六角柱状又は八角柱状などの多角柱状であってもよい。
【0135】
また、電流検出装置1において、磁性体コア10は、円環状以外の形状、例えば、矩形の環状などの多角形の環状に形成されてもよい。
【0136】
また、電流検出装置1において、一対の部品側端子部33は、平行な2平面又は直交する2平面の各々に沿う平板状に形成される場合の他、90°以外の角度で交差する2平面各々に沿う平板状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1,1A 電流検出装置
2,2A,2B バスバー接続構造
5 支持体
6 ネジ
7 端子付電線
7a 第一端子付電線
7b 第二端子付電線
8 端子金具
8a 第一端子金具
8b 第二端子金具
9 電線
10 磁性体コア
11 磁性体コアの中空部
12 磁性体コアのギャップ部
20 ホール素子
21 ホール素子の接続端子
30,30A、30B 中継バスバー
30x 端子重ね部
31 中継バスバーの貫通部
32 中継バスバーの延長部
33 部品側端子部
33a 第一部品側端子部
33b 第二部品側端子部
34 嵌合孔
34a 第一嵌合孔
34b 第二嵌合孔
40 絶縁筐体
41 箱部材
42 蓋部材
43 第1支持部
44 第2支持部
45 バスバー孔
46 基板支持部
47 爪部(ロック機構)
48 枠部(ロック機構)
49 筐体被支持部
50 電子基板
51 コネクタ
60,60A 端子保持部材
61 端子保持部材の隆起部
62 端子保持部材の凹部
63 端子保持部材の板状部
64 端子保持部材の連結部
65 端子保持部材の縁
66 端子保持部材の挿入口
67 端子保持部材の中空部
70 電気接続箱
80 中継端子
81 芯線圧着部
82 鍔部
83 電線側端子部
83a 第一電線側端子部
83b 第二電線側端子部
84 余長部
85 嵌合凸部
85a 第一嵌合凸部
85b 第二嵌合凸部
86 凹部
90 他のバスバー
91 電線の芯線
92 電線の絶縁被覆
411 底壁
412 欠け部
421 回転止め突起部
422 遮蔽板
451 切れ込み部
501 欠け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出装置の本体部から両端が張り出した一連の中継バスバーと電線の端部に取り付けられた端子金具とを接続する電流検出装置のバスバー接続構造であって、
前記中継バスバーの端部に形成された平板状の部品側端子部と、
前記端子金具の端部に形成され、前記部品側端子部と重ねられる平板状の電線側端子部と、
前記部品側端子部における前記電線側端子部と重なる部分及び前記電線側端子部における前記部品側端子部と重なる部分のうちの一方の一部に形成された孔及び他方の一部に形成され前記孔に嵌り込む凸部からなる嵌め合い部と、
相互に重なる前記部品側端子部及び前記電線側端子部を、それらが重なる方向において弾性的に挟み込んで重なった状態に保持する端子保持部材と、を備えることを特徴とする電流検出装置のバスバー接続構造。
【請求項2】
前記中継バスバーの両端における2箇所の前記嵌め合い部各々の前記孔は異なる形状で形成されている、請求項1に記載の電流検出装置のバスバー接続構造。
【請求項3】
前記端子保持部材は、筒状に形成され、相互に重なる状態で中空部を貫通した前記部品側端子部及び前記電線側端子部を、それらが重なる方向において対向する筒の内側面によって弾性的に挟み込む部材であり、
前記部品側端子部における前記電線側端子部と重なる部分よりも前記電流検出装置の前記本体部側の部分及び前記電線側端子部における前記部品側端子部と重なる部分よりも前記電線側の部分のうちの一方に、筒状の前記端子保持部材の中空部を貫通可能な余長部が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の電流検出装置のバスバー接続構造。
【請求項4】
前記中継バスバーは、全体が折り返した形状で形成され、前記電流検出装置の前記本体部から平行な2直線各々に沿って同一方向へ張り出した一対の前記部品側端子部を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の電流検出装置のバスバー接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−101795(P2013−101795A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244115(P2011−244115)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】