説明

電流検出装置

【課題】電流検出装置において、電流の検出感度のばらつきを抑えつつ磁性体コアのギャップ部に磁電変換素子を位置決めでき、さらに、磁電変換素子を含む電子部品を電子基板に容易に実装できること。
【解決手段】電流検出装置1の絶縁筐体40は、磁性体コア10とホール素子20が実装された電子基板50とを支持しつつ収容する。絶縁筐体40には、電子基板50を絶縁筐体40に固定するための第一のネジ61及び第二のネジ62が絞め込まれる第一のネジ座461及び第二のネジ座462が設けられている。第一のネジ座461は、第一のネジ61が絞め込まれるネジ孔が形成された部分であり、絶縁筐体40に支持された磁性体コア10のギャップ部12を通り磁性体コア10の両端部13が対向する方向に直交する平面に沿う位置に設けられている。第一のネジ61は、遊びを有さず電子基板50を貫通し、第二のネジ62は、遊びを有して電子基板50を貫通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーなどの送電路に流れる電流を検出する電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車又は電気自動車などの車両には、バッテリに接続されたバスバーに流れる電流を検出する電流検出装置が搭載されることが多い。また、そのような電流検出装置としては、磁気比例方式の電流検出装置又は磁気平衡方式の電流検出装置が採用される場合がある。
【0003】
磁気比例方式又は磁気平衡方式の電流検出装置は、例えば、特許文献1に示されるように、磁性体コアと磁電変換素子(磁気感応素子)とを備える。磁性体コアは、両端がギャップ部を介して対向し、バスバーが貫通する中空部の周囲を囲んで一連に形成された概ねリング状の磁性体である。磁性体の中空部は、被検出電流が通過する空間(電流検出空間)である。
【0004】
また、磁電変換素子は、磁性体コアのギャップ部に配置され、中空部を貫通して配置されたバスバーなどの送電路を流れる電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する素子である。磁電変換素子としては、通常、ホール素子が採用される。
【0005】
特許文献1に示されるように、電流検出装置においては、磁性体コア及び磁電変換素子は、絶縁性の筐体によって一定の位置関係に保持されることが多い。この筐体は、電流検出装置を構成する複数の部品を一定の位置関係に位置決めする。なお、筐体は、一般に、絶縁性の樹脂部材により構成されている。
【0006】
従来の電流検出装置においては、筐体に、磁性体コア及び磁電変換素子を位置決めする支持部が形成されている。例えば、特許文献1に示される電流検出装置において、磁性体コアの支持部は、筐体における、磁性体コアの外周面及び内周面各々に沿う形状の窪みの部分である。
【0007】
また、特許文献1に示される電流検出装置において、磁性体コアのギャップ部の部分において磁電変換素子における磁気検出部の周囲を囲む素子搭載部が、磁電変換素子の支持部である。通常、磁電変換素子は、信号増幅回路などとともに電子基板に実装される。また、その電子基板は、筐体の一部に設けられたネジ座にネジ止めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−128116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に示される電流検出装置においては、磁電変換素子の磁気検出部が筐体の素子搭載部に固定された後に、磁電変換素子の磁気検出部から延び出たリード端子が、電子基板に接続される必要がある。この場合、電子基板に電子部品を実装する工程は、磁電変換素子を筐体に固定する作業の前後に分割される。
【0010】
即ち、磁電変換素子の磁気検出部が筐体の素子搭載部に固定される場合、電子基板に電子部品を実装する工程は、磁電変換素子以外の電子部品を電子基板に実装する工程と、筐体に固定された磁電変換素子を電子基板に実装する工程とに分割される。このように電子部品の実装工程が、他の工程を挟んで分割されると、製造工程が煩雑となる。
【0011】
一方、磁電変換素子が実装された電子基板を位置決めすることにより、磁電変換素子の磁気検出部を磁性体コアのギャップ部に位置決めすることも考えられる。この場合、電子基板に形成された複数の貫通孔、それら貫通孔に通される複数のネジ及び電子基板の貫通孔を貫通するネジが絞め込まれる筐体における複数のネジ座が、電子基板の固定部を構成する。
【0012】
しかしながら、電子基板の固定位置は、電子基板の固定部を構成する電子基板の貫通孔及び筐体のネジ座の寸法公差によってばらつきやすい。そのため、電子基板の位置決めにより磁電変換素子が位置決めされる場合、磁性体コアのギャップ部における磁電変換素子の磁気検出部の位置のばらつきが生じやすい。その結果、電流の検出感度の大きなばらつきが生じやすく、そのばらつきが、電流検出装置における検出感度の調整に悪影響を及ぼす。
【0013】
本発明は、電流検出装置において、電流の検出感度のばらつきを抑えつつ磁性体コアのギャップ部内に磁電変換素子を位置決めすることができ、さらに、磁電変換素子を含む電子部品を電子基板に容易に実装できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電流検出装置は、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、磁性材料からなり、両端がギャップ部を介して対向し、中空部の周囲を囲んで一連に形成された磁性体コアである。
(2)第2の構成要素は、前記ギャップ部において磁束を検出する磁電変換素子が起立する状態で実装された電子基板である。
(3)第3の構成要素は、絶縁材料からなり、前記磁電変換素子の磁気検出部が前記磁性体コアの前記ギャップ部に位置する基準状態で前記磁性体コア及び前記電子基板を支持しつつ収容する絶縁筐体である。
(4)第4の構成要素は、前記電子基板を前記絶縁筐体に固定するための第一のネジ及び第二のネジである。
(5)第5の構成要素は、前記絶縁筐体における、前記第一のネジが絞め込まれるネジ孔が形成された部分であり、前記絶縁筐体に支持された前記磁性体コアの前記ギャップ部を通り前記磁性体コアの両端が対向する方向に直交する平面に沿う位置に設けられた第一のネジ座である。
(6)第6の構成要素は、前記絶縁筐体における、前記第二のネジが絞め込まれるネジ孔が形成された部分である第二のネジ座である。
(7)第7の構成要素は、前記基準状態の前記電子基板における、前記第一のネジ座に対向する位置において前記第一のネジが遊びを有さず貫通する形状の第一の貫通孔が形成された部分である第一のネジ貫通部である。
(8)第8の構成要素は、前記基準状態の前記電子基板における、前記第二のネジ座に対向する位置において前記第二のネジが前記第一の貫通孔の中心を通る直線に沿う方向の遊びを有して貫通する形状の第二の貫通孔が形成された部分である第二のネジ貫通部である。
【0015】
また、本発明に係る電流検出装置において、前記第二のネジ座は、前記第一のネジ座から前記基準状態の前記電子基板における前記磁電変換素子の実装位置までの距離よりも前記第一のネジ座から離れた位置に設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、磁電変換素子は、それが実装された電子基板が2箇所においてネジで固定されることによって磁性体コアのギャップ部内に位置決めされる。そのため、全ての電子部品が電子基板に実装された後、その電子基板を絶縁筐体に取り付けることができる。
【0017】
即ち、従来のように、電子基板に電子部品を実装する工程が、電子基板を絶縁筐体に固定する工程を挟んで分割される必要はない。その結果、磁電変換素子を含む電子部品を電子基板に容易に実装することが可能となり、電流検出装置の製造工程が簡素化される。
【0018】
また、本発明に係る電流検出装置において、電子基板における第一の貫通孔は、第一のネジが遊びを有さず貫通する形状の孔、即ち、第一のネジの外周面の輪郭に沿う形状の孔である。一方、第二の貫通孔は、第二のネジが第一の貫通孔の中心を通る直線に沿う方向の遊びを有して貫通する形状の孔である。即ち、電子基板の固定構造の寸法公差は、電子基板における第二の貫通孔の遊びによって相殺される。従って、電子基板の固定構造の寸法公差に起因して電子基板をネジ止めすることができなくなる事態は回避される。
【0019】
また、電子基板の固定構造の寸法公差により生じる磁電変換素子の位置のばらつきは、第一のネジ座を中心とし第一のネジ座と磁電変換素子の実装位置との距離を半径とする円弧に沿って生じ、その円弧は、概ね、磁性体コアの両端が対向する方向、即ち、検出磁束の方向に沿う円弧である。
【0020】
電流検出装置において、電流の検出感度は、磁性体コアのギャップ部における検出磁束の方向に対する磁電変換素子の向きのばらつき、及び、検出磁束の方向に直交する方向における磁電変換素子の位置のばらつきによって大きな影響を受ける。一方、磁性体コアのギャップ部における検出磁束の方向(磁性体コアの両端が対向する方向)における磁電変換素子の位置のばらつきは、電流の検出感度への影響が小さい。
【0021】
本発明に係る電流検出装置においては、第一のネジ座が、磁性体コアのギャップ部を通り磁性体コアの両端が対向する方向に直交する平面に沿う位置に設けられている。そのため、電子基板の固定構造の寸法公差により生じる磁電変換素子の位置のばらつきは、主に検出磁束の方向において生じる。即ち、検出磁束の方向に対する磁電変換素子の向きのばらつき、及び、検出磁束の方向に直交する方向における磁電変換素子の位置のばらつきは生じにくい。
【0022】
従って、本発明に係る電流検出装置が採用されることにより、電流の検出感度のばらつきを抑えつつ磁性体コアのギャップ部内に磁電変換素子を位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る電流検出装置1の分解側面図である。
【図2】絶縁筐体の蓋部材が取り外された状態の電流検出装置1の正面図及び側面図である。
【図3】電流検出装置1が備える磁電変換素子の平面図、正面図、底面図及び側面図である。
【図4】電流検出装置1が備える電子基板の一部の正面図である。
【図5】電流検出装置1が備える絶縁筐体の本体ケース及びそれに収容された磁性体コアの一部の正面図である。
【図6】電流検出装置1が備える絶縁筐体の本体ケース、それに収容された磁性体コア及び電子基板の一部の正面図である。
【図7】磁性体コアのギャップ部におけるホール素子の位置のばらつきが模式的に示された図である。
【図8】応用例に係る電流検出装置1Aが備える絶縁筐体の本体ケース、それに収容された磁性体コア及び電子基板の一部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0025】
以下、図1〜図6を参照しつつ、本発明の実施形態に係る電流検出装置1の構成について説明する。電流検出装置1は、電気自動車又はハイブリッド自動車などの車両において、バッテリとモータなどの機器とを電気的に接続するバスバーに流れる電流を検出する装置である。図1に示されるように、電流検出装置1は、磁性体コア10、ホール素子20、絶縁筐体40、電子基板50、第一のネジ61及び第二のネジ62を備える。
【0026】
また、ホール素子20は、電子基板50に実装されている。また、絶縁筐体40は、本体ケース41と蓋部材42とにより構成されている。
【0027】
なお、図2(a)及び図2(b)は、それぞれ絶縁筐体40の蓋部材42が取り外された状態の電流検出装置1の正面図及び側面図である。また、図3(a)は、ホール素子20の平面図、図3(b)は、ホール素子20の正面図、図3(c)はホール素子20の底面図、図3(d)はホール素子20の側面図である。
【0028】
<磁性体コア>
磁性体コア10は、フェライト又はケイ素鋼などの磁性材料からなる部材である。磁性体コア10は、両端部13が数ミリメートル程度のギャップ部12を介して対向し、中空部11の周囲を囲んで一連に形成された形状を有している。即ち、磁性体コア10は、狭いギャップ部12と併せて環状に形成されている。
【0029】
本実施形態においては、磁性体コア10は、ギャップ部12と併せて、角部が丸められた矩形状の中空部11を囲む概ね矩形の環状に形成されている。なお、磁性体コア10が、ギャップ部12と併せて、円形状の中空部11を囲む円環状に形成されている場合もある。
【0030】
検出対象電流が流れるバスバーなどの送電路30は、磁性体コア10の中空部11を貫通して配置される。なお、図1において、送電路30が、仮想線(二点鎖線)により描かれている。
【0031】
<ホール素子(磁電変換素子)>
ホール素子20は、磁性体コア10のギャップ部12において磁束を検出するセンサである。本実施形態において、ホール素子20は、素子の本体部分である磁気検出部21と磁気検出部21の底面から張り出した複数のリード端子22とを備えたリード線タイプのICである。複数のリード端子22には、電力の入力用の端子及び検出信号の出力用の端子が含まれる。複数のリード端子22は、半田により電子基板50の配線パターンに固着されている。
【0032】
ホール素子20の磁気検出部21は、磁性体コア10のギャップ部12に配置される。その状態において、ホール素子20は、磁性体コア10の中空部11を通過する電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する。なお、ホール素子20は、磁電変換素子の一例である。
【0033】
ホール素子20は、磁気検出部21における予め定められた部位である検出中心部20Pを予め定められた方向に沿って通過する磁束を最も高い感度で検出する。以下、ホール素子20によって最も高い感度で検出される磁束が通過する直線のことを基準直線L21と称する。一般に、基準直線L21は、磁気検出部21の概ね中心を通り、かつ、磁気検出部21の表裏の面に直交する直線である。
【0034】
電流検出装置1において、磁気検出部21の検出中心部20Pが磁性体コア10のギャップ部12の中心点12Cに位置し、かつ、磁気検出部21の基準直線L21が、磁性体コア10における対向する両端部13の投影面の中心を結ぶ直線であるギャップ部中心線L11と重なる状態が、磁気検出部21の理想の配置状態である。
【0035】
<電子基板>
電子基板50は、ホール素子20がそのリード端子22の部分において実装されたプリント回路基板である。また、電子基板50には、ホール素子20の他、ホール素子20から出力される磁束の検出信号に対して増幅などの処理を施す回路とコネクタ51とが実装されている。ホール素子20は、リード端子22の部分が電子基板50に固定されることにより、起立する状態で電子基板50に実装されている。
【0036】
コネクタ51は、不図示の電線に設けられた相手側コネクタが接続される部品である。さらに、電子基板50には、ホール素子20のリード端子22とコネクタ51の端子とを電気的に接続する回路が設けられている。例えば、電子基板50には、外部から電線及びコネクタ51を介して入力される電力をホール素子20のリード端子22へ供給する回路、及び、ホール素子20の検出信号を増幅し、増幅後の信号をコネクタ51の端子に出力する回路などが設けられている。これにより、電流検出装置1は、コネクタ51に接続されたコネクタ付き電線を通じて、電流検出信号を電子制御ユニットなどの外部の回路へ出力することができる。
【0037】
また、電子基板50には、第一のネジ61が貫通する第一のネジ貫通部521と、第二のネジ62が貫通する第二のネジ貫通部522とが含まれる。電流検出装置1において、第一のネジ61及び第二のネジ62は、電子基板50を絶縁筐体40に固定するためのネジである。
【0038】
図4は、電子基板50におけるホール素子20が実装された部分、第一のネジ貫通部521及び第二のネジ貫通部522を含む領域の正面図である。
【0039】
第一のネジ貫通部521は、第一のネジ61が遊びを有さず貫通する形状の第一の貫通孔が形成された部分である。即ち、第一のネジ貫通部521の貫通孔(第一の貫通孔)は、第一のネジ61の軸部の外周面の輪郭に沿う形状の孔である。
【0040】
なお、「遊び」は、意図的に設定されたネジと貫通孔の縁部との間の隙間のことを意味し、各構成要素の製造上の精度の制約によってやむを得ず生じてしまう僅かな隙間は、ここで言う「遊び」には含まれない。
【0041】
図4に示されるように、第一のネジ貫通部521の貫通孔は、電子基板50におけるホール素子20の実装位置P50を通り、かつ、ホール素子20の基準直線L21に直交する直線L51上に中心点P51が位置する孔である。
【0042】
一方、第二のネジ貫通部522は、第二のネジ62が第一のネジ貫通部521の貫通孔の中心点P51を通る一の直線L52に沿う方向の遊びを有して貫通する形状の第二の貫通孔が形成された部分である。従って、第二のネジ貫通部522の貫通孔(第二の貫通孔)は、第一のネジ貫通部521の貫通孔(第一の貫通孔)の中心点P51を通る直線L52に沿う方向を長手方向とする長孔である。
【0043】
第二のネジ貫通部522の貫通孔の中心点P52は、第一のネジ貫通部521の貫通孔の中心点P51を通る直線L52上に位置する。なお、本実施形態においては、第二のネジ貫通部522の貫通孔(第二の貫通孔)は、第二のネジ62の軸部に対し、直線L52に直交する方向においては遊びを有さない。即ち、第二のネジ貫通部522の貫通孔は、第二のネジ62が直線L52に沿う方向においてのみ遊びを有して貫通する形状の長孔である。
【0044】
<絶縁筐体>
絶縁筐体40は、絶縁材料からなり、磁性体コア10とホール素子20が実装された電子基板50とを一定の位置関係で支持するとともにそれらを収容する部材である。より具体的には、絶縁筐体40は、ホール素子20の磁気検出部21が磁性体コア10のギャップ部12に位置する状態で磁性体コア10及び電子基板50を支持しつつ収容する。以下の説明において、ホール素子20の磁気検出部21が磁性体コア10のギャップ部12に位置する状態のことを基準状態と称する。
【0045】
絶縁筐体40は、本体ケース41及び本体ケース41に取り付けられる蓋部材42の2つの部材を含む。本体ケース41及び蓋部材42の各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂からなる一体成形部材である。
【0046】
本体ケース41は、開口部を有する箱状に形成され、蓋部材42は、本体ケース41に取り付けられることによって本体ケース41の開口部を塞ぐ。また、本体ケース41及び蓋部材42には、送電路30が通される貫通孔である電流通過孔45が形成されている。
【0047】
また、蓋部材42は、磁性体コア10及び電子基板50を支持する本体ケース41に対し、磁性体コア10と電子基板50とを挟み込みつつ、本体ケース41の開口部を塞ぐ状態で本体ケース41に取り付けられる。
【0048】
本体ケース41及び蓋部材42には、それらを組み合わせ状態で保持するロック機構47,48が設けられている。図1に示されるロック機構47,48は、本体ケース41の側面に突出して形成された爪部47と、蓋部材42の側方に形成された環状の枠部48とを備える。本体ケース41の爪部47が、蓋部材42の枠部48が形成する孔に嵌り込むことにより、本体ケース41及び蓋部材42は、それらが組み合わされた状態で保持される。
【0049】
図2に示されるように、本体ケース41及び蓋部材42(絶縁筐体40)は、コネクタ51が外部に露出する状態で、磁性体コア10及び電子基板50を一定の位置関係で支持しつつ、磁性体コア10、ホール素子20及び電子基板50を収容する。また、電子基板50が本体ケース41と蓋部材42との間に収容された状態において、電子基板50に実装されたコネクタ51は、本体ケース41に形成された欠け部46に嵌り込んだ状態で保持される。
【0050】
図5に示されるように、本体ケース41の内側面には、磁性体コア10を支持するコア支持部43が突起して形成されている。このコア支持部43は、複数の突起部により構成され、これら複数の突起部は、磁性体コア10の一部を挟み込むことによって磁性体コア10を支持する。
【0051】
さらに、本体ケース41の内側面には、コア支持部43により支持された磁性体コア10の移動を制限する移動規制部44が起立して形成されている。移動規制部44は、コア支持部43に支持された磁性体コア10のギャップ部12に嵌り込むことにより、磁性体コア10の移動を制限する。
【0052】
図5に示される磁性体コア10は、絶縁筐体40のコア支持部43及び移動規制部44によって位置決めされた状態である。
【0053】
また、絶縁筐体40における本体ケース41の内側面には、第一のネジ61が絞め込まれる第一のネジ座461と、第二のネジ62がねじ込まれる第二のネジ座462とが形成されている。
【0054】
第一のネジ座461は、本体ケース41の一部であり、第一のネジ61が絞め込まれるネジ孔460が形成された部分である。この第一のネジ座461は、本体ケース41に支持された磁性体コア10におけるギャップ部12を通り、かつ、磁性体コア10の両端部13が対向する方向に直交する平面F1に沿う位置に設けられている。即ち、第一のネジ座461のネジ孔460の中心P41は、平面F1上に位置する。
【0055】
なお、磁性体コア10の両端部13が対向する方向は、磁性体コア10における対向する両端部13の投影面の中心を結ぶギャップ部中心線L11に平行な方向であるともいえる。
【0056】
第一のネジ座461の位置の基準となる平面F1は、本体ケース41に支持された磁性体コア10におけるギャップ部12の中心12Cを通り、かつ、磁性体コア10の両端部13が対向する方向に直交する平面であることが望ましい。しかしながら、平面F1は、磁性体コア10におけるギャップ部12の中心12Cから多少ずれていても、磁性体コア10のギャップ部12を通る範囲R1内に位置していればよい。
【0057】
また、第二のネジ座462は、本体ケース41の一部であり、第二のネジ62が絞め込まれるネジ孔460が形成された部分である。この第二のネジ座462は、第一のネジ座461に対して間隔を隔てて設けられている。
【0058】
図5に示される例では、第二のネジ座462のネジ孔460の中心P42の位置は、第一のネジ座461のネジ孔460の中心P41を通り、かつ、平面F1に直交する直線上に位置している。しかしながら、第二のネジ座462のネジ孔460の中心P42の位置は、特にそのような位置である必要はない。
【0059】
以下の説明において、ホール素子20の磁気検出部21が絶縁筐体40に支持された磁性体コア10のギャップ部12に位置する状態のことを基準状態と称する。絶縁筐体40は、磁性体コア10及び電子基板50を基準状態で支持しつつ収容する。
【0060】
図2(a)及び図6に示されるように、電子基板50が基準状態で配置されることにより、電子基板50に形成された第一のネジ貫通部521及び第二のネジ貫通部522の貫通孔各々と第一のネジ座461及び第二のネジ座462のネジ孔460各々とが重なる。
【0061】
即ち、電子基板50における第一のネジ貫通部521の貫通孔(第一の貫通孔)は、基準状態の電子基板50における、第一のネジ座461に対向する位置に形成されている。同様に、電子基板50における第二のネジ貫通部522の貫通孔(第二の貫通孔)は、基準状態の電子基板50における、第二のネジ座462に対向する位置に形成されている。
【0062】
第一のネジ61及び第二のネジ62は、基準状態の電子基板50における第一のネジ貫通部521及び第二のネジ貫通部522の貫通孔各々に通されるとともに、本体ケース41における第一のネジ座461及び第二のネジ座462のネジ孔460各々に絞め込まれる。これにより、電子基板50に実装されたホール素子20の磁気検出部21は、磁性体コア10のギャップ部12内において、予め定められた位置及び向きで保持される。
【0063】
<効果>
以下、図7を参照しつつ、電流検出装置1が採用されることによる効果について説明する。なお、図7は、磁性体コア10のギャップ部12におけるホール素子20の位置のばらつきが模式的に示された図である。
【0064】
電流検出装置1において、ホール素子20は、それが実装された電子基板50が2箇所においてネジ61,62で固定されることによって磁性体コア10のギャップ部12内に位置決めされる。そのため、全ての電子部品が電子基板50に実装された後、その電子基板50を絶縁筐体40に取り付けることができる。
【0065】
即ち、従来のように、電子基板50に電子部品を実装する工程が、電子基板50を絶縁筐体40に固定する工程を挟んで分割される必要はない。その結果、ホール素子20を含む電子部品を電子基板50に容易に実装することが可能となり、電流検出装置1の製造工程は簡素化される。
【0066】
また、電流検出装置1において、電子基板50における第一のネジ貫通部521の貫通孔は、第一のネジ61が遊びを有さず貫通する形状の孔である。一方、第二のネジ貫通部522の貫通孔は、第二のネジ62が第一のネジ貫通部521の貫通孔の中心点P51を通る直線L52に沿う方向の遊びを有して貫通する形状の孔である。即ち、電子基板50の固定構造の寸法公差は、電子基板50における第二のネジ貫通部522の貫通孔の遊びによって相殺される。従って、電子基板50の固定構造の寸法公差に起因して電子基板50をネジ止めすることができなくなる事態は回避される。
【0067】
また、電子基板50の固定構造の寸法公差により生じるホール素子20の位置のばらつきは、図7に示されるように、第一のネジ座461を中心とし第一のネジ座461とホール素子20の実装位置P50との距離を半径とする円弧L1に沿って生じる。その円弧L1は、概ね、磁性体コア10の両端部13が対向する方向、即ち、検出磁束の方向に沿う円弧である。
【0068】
電流検出装置1において、電流の検出感度は、磁性体コア10のギャップ部12における検出磁束の方向に対するホール素子20の向きのばらつき、及び、検出磁束の方向に直交する方向におけるホール素子20の位置のばらつきによって大きな影響を受ける。一方、磁性体コア10のギャップ部12における検出磁束の方向(磁性体コア10の両端部13が対向する方向)におけるホール素子20の位置のばらつきは、電流の検出感度への影響が小さい。
【0069】
電流検出装置1においては、第一のネジ座461が、磁性体コア10のギャップ部12を通り磁性体コア10の両端部13が対向する方向に直交する平面F1に沿う位置に設けられている。そのため、電子基板50の固定構造の寸法公差により生じるホール素子20の位置のばらつきは、主に検出磁束の方向において生じる。
【0070】
即ち、電流検出装置1においては、検出磁束の方向に対するホール素子20の向きのばらつき、及び、検出磁束の方向に直交する方向におけるホール素子20の位置のばらつきは生じにくい。また、第一のネジ座461から第二のネジ座462までの距離D2が大きいほど、第二のネジ座462の部分で生じる寸法公差ΔDに対するホール素子20の位置のばらつき量の比が小さくなる。
【0071】
従って、電流検出装置1が採用されることにより、電流の検出感度のばらつきを抑えつつ磁性体コア10のギャップ部12内にホール素子20を位置決めすることができる。
【0072】
<応用例>
図8は、応用例に係る電流検出装置1Aが備える絶縁筐体40の本体ケース41、それに収容された磁性体コア10及び電子基板50の一部の正面図である。図8において、図1から図7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。
【0073】
電流検出装置1Aは、図1から図7に示される電流検出装置1と同じ構造を有する。しかしながら、電流検出装置1Aにおいて、第二のネジ座462は、第一のネジ座461から基準状態の電子基板50におけるホール素子20の実装位置P50までの距離D1よりも第一のネジ座461から離れた位置に設けられている。
【0074】
即ち、電流検出装置1Aにおいて、第一のネジ座461から第二のネジ座462までの距離D2は、第一のネジ座461から基準状態の電子基板50におけるホール素子20の実装位置P50までの距離D1よりも大きい。
【0075】
図8に示されるような電流検出装置1Aが採用されることにより、第二のネジ座462の部分で生じる寸法公差ΔDに対するホール素子20の位置のばらつき量の比がより小さくなる。その結果、電流の検出感度のばらつきがより小さく抑えられる。
【0076】
<その他>
以上に示された実施形態においては、第一のネジ貫通部521の貫通孔は、第一のネジ61における軸部の直径に相当する直径の円形状である。しかしながら、第一のネジ貫通部521の貫通孔が、第一のネジ61が遊びを有さず貫通する他の形状で形成されていてもよい。
【0077】
例えば、第一のネジ貫通部521の貫通孔が、第一のネジ61における軸部に外接する多角形であることも考えられなくはない。同様に、第二のネジ貫通部522の貫通孔が、第一のネジ貫通部521の貫通孔の中心点P51を通る直線L52に沿う方向を長手方向とする矩形状の長孔であることも考えられなくはない。
【符号の説明】
【0078】
1,1A 電流検出装置
10 磁性体コア
11 磁性体コアの中空部
12 磁性体コアのギャップ部
12C ギャップ部の中心点
13 磁性体コアの端部
20 ホール素子
20P ホール素子の検出中心部
21 ホール素子の磁気検出部
22 ホール素子のリード端子
30 送電路
31 貫通部
32 端子部
32z 貫通孔
40 絶縁筐体
41 本体ケース
42 蓋部材
43 コア支持部
44 移動規制部
45 電流通過孔
46 欠け部
47 爪部(ロック機構)
48 枠部(ロック機構)
50 電子基板
51 コネクタ
61 第一のネジ
62 第二のネジ
460 ネジ孔
461 第一のネジ座
462 第二のネジ座
521 第一のネジ貫通部
522 第二のネジ貫通部
F1 平面
L1 円弧
L11 ギャップ部中心線
L21 基準直線
P50 ホール素子の実装位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料からなり、両端がギャップ部を介して対向し、中空部の周囲を囲んで一連に形成された磁性体コアと、
前記ギャップ部において磁束を検出する磁電変換素子が起立する状態で実装された電子基板と、
絶縁材料からなり、前記磁電変換素子の磁気検出部が前記磁性体コアの前記ギャップ部に位置する基準状態で前記磁性体コア及び前記電子基板を支持しつつ収容する絶縁筐体と、を備える電流検出装置であって、
前記電子基板を前記絶縁筐体に固定するための第一のネジ及び第二のネジと、
前記絶縁筐体における、前記第一のネジが絞め込まれるネジ孔が形成された部分であり、前記絶縁筐体に支持された前記磁性体コアの前記ギャップ部を通り前記磁性体コアの両端が対向する方向に直交する平面に沿う位置に設けられた第一のネジ座と、
前記絶縁筐体における、前記第二のネジが絞め込まれるネジ孔が形成された部分である第二のネジ座と、
前記基準状態の前記電子基板における、前記第一のネジ座に対向する位置において前記第一のネジが遊びを有さず貫通する形状の第一の貫通孔が形成された部分である第一のネジ貫通部と、
前記基準状態の前記電子基板における、前記第二のネジ座に対向する位置において前記第二のネジが前記第一の貫通孔の中心を通る直線に沿う方向の遊びを有して貫通する形状の第二の貫通孔が形成された部分である第二のネジ貫通部と、を備えることを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記第二のネジ座は、前記第一のネジ座から前記基準状態の前記電子基板における前記磁電変換素子の実装位置までの距離よりも前記第一のネジ座から離れた位置に設けられている、請求項1に記載の電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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