説明

電流駆動回路

【課題】チップサイズを小さくするとともに、出力電流の低下を抑制することができる電流駆動回路を提供する。
【解決手段】電流駆動回路10の出力端子には、抵抗R3が接続される。この抵抗R3には、抵抗R2及びトランジスタM6のドレイン端子が接続されている。トランジスタM6のゲート端子には、トランジスタM2のゲート端子、接地された電流源CS2、トランジスタM4のソース端子が接続される。電源線には、電流源CS1、トランジスタM4が接続される。電流源CS1は、トランジスタM4のゲート端子、トランジスタM3のドレイン端子、トランジスタM1のドレイン端子、抵抗R1に接続される。電圧Vdが下がってきた場合には、トランジスタM3のオン抵抗が上昇し、トランジスタM1がトランジスタM2に直列となり、トランジスタM6のゲート電圧を引き上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路で使用する電流源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED等には、オープンドレインタイプの電流駆動回路が用いられている。このような電流駆動回路において、飽和領域を拡大することによって出力電圧を拡大するための検討が行なわれている(例えば特許文献1を参照。)。この文献に記載された技術では、極性が同じ第1の電界効果トランジスタと第2の電界効果トランジスタを直列接続し、二つの電界効果トランジスタのゲートを共通に接続する。そして、第2の電界効果トランジスタのソースは電源に接続され、第1の電界効果トランジスタのソースと第2の電界効果トランジスタのドレインが接続され、この第1の電界効果トランジスタのドレインを出力とする。この場合、第1の電界効果トランジスタが飽和領域で動作し、第2の電界効果トランジスタが線形領域の飽和領域に近い動作点で動作するように各電界トランジスタの特性を定める。そして、共通に接続された二つの電界効果トランジスタのゲートに電流制御信号を印加する。
【0003】
また、オペアンプを用いることにより、広い出力電圧範囲において安定した電流を供給するための技術も検討されている(例えば特許文献2を参照。)。この文献に記載された技術では、第1の電圧源と第2の電圧源との間に直列に接続されている定電流源と第1のトランジスタを設ける。そして、電流出力端子と第2の電圧源との間に直列に接続されている第2、第3のトランジスタを設ける。入力端子が定電流源と第1のトランジスタとの接続点に接続される。そして、非反転入力端子は電流源に接続されるとともに、反転入力端子が第2と第3のトランジスタとの接続点に接続され、出力端子が第3のトランジスタの制御端子に接続されている差動増幅回路を設ける。第1と第2のトランジスタの制御端子が接続され、制御端子同士の接続点が定電流源と第1のトランジスタとの接続点に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−115136号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2000−114891号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなオープンドレインタイプ回路には共通の課題がある。具体的には、駆動回路が非飽和領域に落ち込んだ場合、出力される電圧範囲が狭くなることである。しかし、チップサイズをできるだけ小さくする必要がある場合、静電気放電(ESD:Electro Static Discharge)から保護するための抵抗を用いる。この場合には、このESD抵抗による電圧降下により、非飽和領域に簡単に入ってしまうことがある。
【0006】
また、出力電圧は、飽和ドレイン電圧まで拡大することができるが、チップサイズの制限によりドライバサイズが小さい場合、大電流の出力のためにはゲート電圧として高い電圧が必要になる。
【0007】
一方、特許文献1のようにトランジスタを直列に接続した場合、ドレイン端子電圧を低くすることができない。特に、閾値電圧により電圧余裕が奪われてしまう。
また、特許文献2に記載された技術では、オペアンプを使用しているため、消費電力が
大きくなってしまうという問題がある。更に、この文献に記載された回路においても、トランジスタが2段に直列接続されているため、ドレイン端子電圧を低くすることができない。
【0008】
上述の文献においては、ESD抵抗を想定されておらず、出力トランジスタにはサイズに大きなものを想定しており、ゲート電圧もかなり小さいと考えられる。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、ESD抵抗のように、大きな抵抗を用いる場合にも低い出力電圧において電流を確保することができる電流駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、本発明は、電源電圧に接続された負荷を接続する出力端子と、前記出力端子にドレイン端子が接続され、ソース端子は共通電位ラインに接続された出力トランジスタと、前記出力トランジスタのゲート端子にゲート端子が接続され、ドレイン端子に参照電流を供給する第1電流源が接続された第1トランジスタと、前記出力トランジスタのゲート端子にゲート端子が接続され、ドレイン端子に前記第1トランジスタのソース端子が接続され、ソース端子は共通電位ラインに接続された第2トランジスタと、前記第1トランジスタのソース端子及びドレイン端子に並列に接続された第3トランジスタと、前記第1電流源にゲート端子が接続され、ソース端子が前記出力トランジスタのゲート端子に接続された第4トランジスタと、前記出力トランジスタのゲート端子と前記共通電位ラインとの間に設けられた第2電流源とを備え、前記第3トランジスタのゲート端子に前記出力端子の電圧を供給するように接続したことを要旨とする。これにより、出力電圧が下がってきた場合、非飽和領域に入るが、出力電圧により第3トランジスタのオン抵抗を上昇させ、第1トランジスタ及び第2トランジスタの直列接続により、出力トランジスタのゲート電圧を上げることができる。これにより、出力トランジスタのオン抵抗を下げて、より多くの電流を供給することができる。
【0010】
また、本発明は、前記出力端子と前記出力トランジスタとの間に抵抗を更に設けたことを要旨とする。これにより、静電気放電から出力トランジスタを保護することができる。
また、本発明は、前記第1トランジスタのソース端子及びドレイン端子に並列に接続された抵抗を更に設けたことを要旨とする。これにより、第1トランジスタの動作による電流値の変化を調整することができる。
【0011】
また、本発明は、前記第3トランジスタと前記出力端子の間に整流素子を設け、前記整流素子に、前記電源電圧が異常値になった場合にオンして接地されるトランジスタを更に設けたことを要旨とする。これにより、電源電圧が異常値になった場合においても、第3トランジスタのゲート破壊を防止することができる。
【0012】
また、本発明は、前記整流素子に、前記電源電圧が停止状態でオンして接地されるトランジスタを更に設けたことを要旨とする。これにより、電源電圧が停止中の異常においても、第3トランジスタのゲート破壊を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チップサイズを小さくするとともに、出力電流の低下を抑制することができる電流駆動回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の電流駆動回路の構成の説明図。
【図2】本実施形態の電流駆動回路の等価回路であって、(a)はドレイン電圧が高い場合の等価回路、(b)はドレイン電圧が低い場合の等価回路の説明図。
【図3】ドレイン電圧とドレイン電流の関係についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した電流駆動回路の実施形態を図1〜図3に従って説明する。本願発明では、電圧V0の電力線に接続された素子L0(ここでは、LED)に電流を供給する電流駆動回路10を用いて説明する。この電流駆動回路10は、オープンドレイン型の電流源であり、電流駆動回路10の出力端子に素子L0が接続される。この出力端子には、電圧Vdが印加され、電流I0が供給される。
【0016】
(回路構成)
まず、電流駆動回路10の回路構成を説明する。
電流駆動回路10の出力端子には、抵抗R3が接続されている。この抵抗R3はESD抵抗として機能する。
【0017】
この抵抗R3には、抵抗R2及びトランジスタM6のドレイン端子が接続されている。本実施形態では、このトランジスタM6は出力トランジスタとして機能し、N型MOSトランジスタを用いて構成する。このトランジスタM6のソース端子は接地される。本実施形態では、この接地線が共通電位ラインとして機能する。
【0018】
更に、トランジスタM6のゲート端子には、トランジスタM2のゲート端子、接地された電流源CS2(第2電流源)、トランジスタM4のソース端子が接続される。本実施形態では、このトランジスタM2は第2トランジスタとして機能し、トランジスタM4は第4トランジスタとして機能し、それぞれN型MOSトランジスタを用いて構成する。
【0019】
このトランジスタM4のドレイン端子は電源線に接続され、電圧Vddが供給される。
電源線には、参照電流としての電流I1を供給する電流源CS1(第1電流源)が接続されている。この電流源CS1は、トランジスタM4のゲート端子、トランジスタM3のドレイン端子、トランジスタM1のドレイン端子、抵抗R1に接続される。本実施形態では、このトランジスタM1は第1トランジスタとして機能し、トランジスタM3は第3トランジスタとして機能し、それぞれN型MOSトランジスタを用いて構成する。
【0020】
トランジスタM1のゲート端子は、トランジスタM2のゲート端子に接続される。トランジスタM1のソース端子及びトランジスタM3のソース端子は、トランジスタM2のドレイン端子に接続される。このトランジスタM2のソース端子は接地ラインに接続される。
【0021】
抵抗R1は、トランジスタM1のドレイン・ソース間に並列に接続される。
抵抗R3とトランジスタM6のドレイン端子の接続ノードには、抵抗R2を介してトランジスタM3のゲート端子に接続される。
【0022】
抵抗R2とトランジスタM3のゲート端子との接続ノードには、ツェナー型のダイオードD1(整流素子)のカソード端子が接続される。このダイオードD1のアノード端子には、トランジスタM5のドレイン端子及びトランジスタM7のソース端子に接続される。本実施形態では、トランジスタM5はN型MOSトランジスタを用いて構成し、トランジスタM7はP型MOSトランジスタを用いて構成する。トランジスタM5のソース端子及びトランジスタM7のドレイン端子は接地される。
【0023】
そして、トランジスタM5のゲート端子には外部から電圧V5が供給され、トランジスタM7のゲート端子には電圧V7が供給される。
この電圧V5は、素子L0を駆動する電圧V0を監視するシステム(図示せず)から供
給される。そして、電圧V0が徐々に上昇した場合には、トランジスタM5をオンさせる電圧V5を供給する。
一方、電圧V7はICの内部レギュレータ出力電圧で、チップが動作していないときには0Vとなる。
【0024】
(動作)
次に、電流駆動回路10の動作を説明する。
【0025】
通常動作において電圧Vdが高い場合には、抵抗R3、R2を介して供給される電圧が高いため、トランジスタM3がオンする。この場合、トランジスタM1、抵抗R1はバイパスされるため、回路構成から見えなくなる。このため、電流駆動回路10は、図2(a)に示す回路と等価となる。この場合、電流I1は、トランジスタM2を流れる。この電流を流すために、トランジスタM4のゲート電圧が引き上げられ、電流源CS2の電流がトランジスタM4を介して供給される。そして、このトランジスタM4のソース端子に接続されたトランジスタM6のゲート電圧が引き上げる。
【0026】
一方、電圧Vdが下がってきた場合には、トランジスタM3のオン抵抗が上昇するため、トランジスタM1、抵抗R1が見えてくる。そして、トランジスタM3がオフした場合、電流駆動回路10は、図2(b)に示す回路と等価となる。
【0027】
この場合、電流源CS1は、電流I1をトランジスタM1、M2に供給するため、電流源CS1とトランジスタM1のドレイン端子との接続ノードの電圧を引き上げる。これに応じて、トランジスタM4のゲート電圧もより高くなる。この結果、このトランジスタM4のソース端子に接続されたトランジスタM6のゲート電圧を引き上げることになる。
これにより、トランジスタM6は、よりオン抵抗が下がり、素子L0に多くの電流I0を供給することができる。
【0028】
次に、抵抗R1の役割について説明する。抵抗R1は、トランジスタM1が急激にオンすることを抑制する。ここで、トランジスタM1の閾値にバラツキがある場合、トランジスタM1の閾値電圧によって、図3に示すように、出力電圧がVd1から電圧Vd2に変化したときに状態(α)から状態(γ)へ遷移することがある。この場合、返ってドレイン電流が上昇してしまう。特に、環境温度によって閾値電圧が変化し、状態(γ)に遷移する場合がある。そこで、トランジスタM3の閾値電圧に応じて、出力電流値が一定になるように抵抗R1の抵抗値を設定することにより、図3に示す状態(α)から状態(β)への遷移を確保する。
【0029】
次に、ドレイン電圧が高くなった場合、保護回路について説明する。ここでは、電圧Vdが高くなる2つのケースを想定する。具体的には、通常動作時にゆっくり高くなる場合であり、この場合にはトランジスタM5を動作させる。一方、サージ電圧のように急激な変化の場合には、トランジスタM7を動作させる。
【0030】
本願発明の電流駆動回路10では、出力端子における電圧Vdが、抵抗を介してトランジスタM3のゲート端子に供給される。このため、このトランジスタM3のゲート破壊を防止するための保護回路が設けられている。この保護回路は、抵抗R2、ダイオードD1、トランジスタM5、M7によって構成される。
【0031】
抵抗R2により、ダイオードD1に流れる電流を制限することができる。また、この抵抗R2は、トランジスタM3のゲート容量との間でCR時定数を形成し、急激な電圧上昇を抑制することができる。
【0032】
電源電圧監視システムがV0の異常な上昇を検知した場合、電圧V5を供給し、トランジスタM5をオンする。ここで、高電圧によりダイオードD1がオンした場合、トランジスタM5を介して接地される。
【0033】
一方、電圧V0が維持されている場合には、電圧V7も高く維持する。このような電圧V7は、電圧V0により動作するシリーズレギュレータ等の出力電圧を利用することができる。シリーズレギュレータが動作していない場合には、電圧V7は0Vとなり、トランジスタM7は導通状態となる。ここで、サージ電圧等によりダイオードD1がオンした場合、トランジスタM7を介して接地される。
【0034】
上記実施形態の電流駆動回路によれば、以下のような効果を得ることができる。
・ 上記実施形態では、通常動作において電圧Vdが高い場合には、抵抗R3、R2を介して供給される電圧が高いため、トランジスタM3がオンする。電圧Vdが下がってきた場合には、トランジスタM3のオン抵抗が上昇し、トランジスタM1とトランジスタM2とが直列に接続される形態に遷移する。これにより、トランジスタM6のゲート電圧が高くなり、出力電流を維持することができる。
【0035】
・ 上記実施形態では、抵抗R1が、トランジスタM1のドレイン・ソース間に並列に接続される。トランジスタM3の閾値電圧によって抵抗R1の抵抗値を設定することにより、ドレイン電流の上昇を抑制し、円滑な遷移を実現することができる。
【0036】
・ 上記実施形態では、トランジスタM3のゲート破壊を防止するための保護回路が設けられている。電圧V5が供給されて、ダイオードD1がオンした場合、トランジスタM5を介して接地される。また、電圧V7は0Vの場合、サージ電圧等によりダイオードD1がオンした場合、トランジスタM7を介して接地される。これにより、トランジスタM3のゲート破壊を防止することができる。
【0037】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記実施形態では、素子L0としてLEDに電流を供給する電流駆動回路10として説明したが、適用対象はこれに限定されるものではない。
【0038】
○ 上記実施形態では、抵抗R1が、トランジスタM1のドレイン・ソース間に並列に接続される。トランジスタM3の閾値電圧が制御され、状態(α)から状態(β)に遷移する場合には、抵抗R1を省略することができる。
【0039】
○ 上記実施形態では、トランジスタM1,M3,M4,M6をN型MOSトランジスタにより実現した。オープンドレインタイプの電流駆動回路において、トランジスタM6のゲート電圧を変更するために、出力端子電圧がゲート端子に供給されるトランジスタM3を用いた回路であれば、他の種類のトランジスタを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…電流駆動回路、M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7…トランジスタ、R1,R2,R3…抵抗、CS1,CS2…電流源、D1…ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧に接続された負荷を接続する出力端子と、
前記出力端子にドレイン端子が接続され、ソース端子は共通電位ラインに接続された出力トランジスタと、
前記出力トランジスタのゲート端子にゲート端子が接続され、ドレイン端子に参照電流を供給する第1電流源が接続された第1トランジスタと、
前記出力トランジスタのゲート端子にゲート端子が接続され、ドレイン端子に前記第1トランジスタのソース端子が接続され、ソース端子は共通電位ラインに接続された第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのソース端子及びドレイン端子に並列に接続された第3トランジスタと、
前記第1電流源にゲート端子が接続され、ソース端子が前記出力トランジスタのゲート端子に接続された第4トランジスタと、
前記出力トランジスタのゲート端子と前記共通電位ラインとの間に設けられた第2電流源とを備え、
前記第3トランジスタのゲート端子に前記出力端子の電圧を供給するように接続したことを特徴とする電流駆動回路。
【請求項2】
前記出力端子と前記出力トランジスタとの間に抵抗を更に設けたことを特徴とする請求項1に記載の電流駆動回路。
【請求項3】
前記第1トランジスタのソース端子及びドレイン端子に並列に接続された抵抗を更に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流駆動回路。
【請求項4】
前記第3トランジスタと前記出力端子の間に整流素子を設け、
前記整流素子に、前記電源電圧が異常値になった場合にオンして接地されるトランジスタを更に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の電流駆動回路。
【請求項5】
前記整流素子に、前記電源電圧が停止状態でオンして接地されるトランジスタを更に設けたことを特徴とする請求項4に記載の電流駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−224951(P2010−224951A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72564(P2009−72564)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】