説明

電源システム、電源オフシーケンス逆転防止方法および電源オフシーケンス逆転防止制御プログラム

【課題】複数個の電力供給系統の出力間の電源オフシーケンスの逆転を確実に防止することが可能な電源システムを提供する。
【解決手段】入力端子1からの1つの給電電圧に基づいて複数個の例えば第1DDコン12,第2DDコン13(DDコン:DC−DCコンバータの略)それぞれにより出力電圧を生成して第1,第2出力端子2,3から負荷側に供給する電源システムとして、複数個の第1DDコン12,第2DDコン13それぞれに対して、前記給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した際に負荷側に供給する出力電圧を停止させるオフ実施順をあらかじめ割り当て、先にオフすべき第1DDコン12の出力を、昇圧DDコン14を介して次にオフさせるべき第2DDコン13の入力側に前記給電電圧の入力の他にさらに入力させ、かつ、前記給電電圧が前記給電電圧閾値以下に低下した際に、先にオフすべき第1DDコン12のオフ動作を実施させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム、電源オフシーケンス逆転防止方法および電源オフシーケンス逆転防止制御プログラムに関し、特に、1つの給電電圧から複数の出力電圧を生成して負荷側に供給する情報処理装置の電源システムにおいて、外部からの電源オンオフ制御指示がない場合に、特定の電源オフシーケンスを守る必要がある電源システムとして好適に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の特開2008−059029号公報「情報処理システムの緊急時電源断方式と方法」等に記載されている従来の電源システムにおいて、1つの給電電圧から複数の出力電圧を生成して負荷側に供給する電源システムとして、外部からの電源オンオフ制御がなく、電源システムに給電される給電電圧のオンオフに依存して出力を特定のシーケンスでオンオフするという内部回路を備えた電源システムの場合、出力先の負荷側におけるコンデンサ容量と消費量とにより、出力電圧の低下速度が変化してしまうため、電源オフシーケンスを確定することができない場合があったため、評価などによって実測して確認を行った結果に基づいて、調整をしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−059029号公報(第5−8頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電源システムにおいては、前述したように、外部からの電源オンオフ制御がなく、電源システムに給電される給電電圧のオンオフに依存して、出力電圧を生成するDDコン(DC−DCコンバータ:以下、DDコンと略称する)を特定のシーケンスでオンオフする電源システムの場合、給電される給電電圧を観測し、該給電電圧が低下していくタイミングに応じて、DDコンに対してオフ指示を出力していた。
【0005】
一般的に、出力先の負荷側には、コンデンサが実装されており、DDコンからの出力が停止しても、負荷側のコンデンサに溜まった電荷が放電をすべて完了するまでの間、電源システムの出力には電圧が発生している。
【0006】
ここで、電源システムの出力の電圧低下の速度は、負荷側のコンデンサ容量と実際に使用する消費量とにより異なり、コンデンサ容量が大きく消費量が少なくなるほど、出力の電圧低下の速度は遅くなってくる。
【0007】
このため、電源システムから負荷側に電力供給する出力が複数個存在しているような場合、先にオフした出力のコンデンサ容量が大きくて消費量が少なく、後にオフする出力のコンデンサの容量が小さく消費量が多い場合には、先にオフした出力の電圧が低下する前に、後でオフした出力の電圧が低下し、電源オフシーケンスが逆転してしまう可能性がある。
【0008】
したがって、1つの給電経路から給電される電源システムにおいて負荷側に電力供給する電力供給系統の出力が複数個存在していて、出力電圧を停止させる順番すなわちオフ状態に設定するオフ実施順があらかじめ定められているような場合には、電源システムの複数個の電力供給系統それぞれの電源オフシーケンス間にかくのごとき逆転が生じないように、複数個の電力供給系統の出力をオフしていく際のオフ間隔として充分な時間間隔を取ることが必要になっている。
【0009】
しかしながら、従来の電源システムの電源オフシーケンスの制御方法においては、たとえ、複数個の電力供給系統が存在しているような場合であっても、電源システムに給電される給電電圧に依存して、オフ指示をすべての電力供給系統に対して連続的に出してしまうため、各電力供給系統の出力間のオフ指示の間隔が短くなっている可能性があり、前述のような、電源システムの複数個の電力供給系統の出力それぞれに関する電源オフシーケンスにおいて逆転が発生して、負荷側における出力電圧が望ましくない順番にオフ状態('0'レベル)に低下するようになってしまう可能性があった。
【0010】
(本発明の目的)
本発明は、かくのごとき事情に鑑みてなされたものであり、1つの給電電圧により出力電圧を生成して負荷側に供給する電源システムに複数個の電力供給系統が存在している場合、先にオフすべき電力供給系統のDDコンの出力を、次にオフすべき電力供給系統のDDコンの入力に給電電圧の他にさらに供給することによって、複数個の電力供給系統の出力間の電源オフシーケンスの逆転を確実に防止することを可能にする電源システム、電源オフシーケンス逆転防止方法および電源オフシーケンス逆転防止制御プログラムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため、本発明による電源システム、電源オフシーケンス逆転防止方法および電源オフシーケンス逆転防止制御プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0012】
(1)本発明による電源システムは、1つの給電電圧に基づいて、複数個のDC−DCコンバータそれぞれによって複数種類の出力電圧を生成して負荷側に供給する複数個の電力供給系統を備えた電源システムであって、複数個の前記電力供給系統それぞれの前記DC−DCコンバータに対して、前記給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した給電停止の状態が発生した際に負荷側に供給する出力電圧を順番に停止させるオフ実施順をあらかじめ割り当てて、該オフ実施順の順番に、出力電圧を停止させるオフの順番が高い方の前記DC−DCコンバータの出力を、あらかじめ定めた昇圧比によって昇圧する昇圧コンバータを備えた昇圧回路を介して、次の順番の前記DC−DCコンバータの入力側に、順次、前記給電電圧の入力の他に入力するように構成し、前記給電電圧が前記給電電圧閾値以下に低下した際に、複数個の前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータのうち、最も先にオフすべき前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータのオフ動作を実施させることを特徴とする。
【0013】
(2)本発明による電源オフシーケンス逆転防止方法は、1つの給電電圧に基づいて、複数個のDC−DCコンバータそれぞれによって複数種類の出力電圧を生成して負荷側に供給する複数個の電力供給系統を備えた電源システムにおいて、複数個の前記電力供給系統それぞれの前記DC−DCコンバータに対して、前記給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した給電停止の状態が発生した際に負荷側に供給する出力電圧を順番に停止させるオフ実施順としてあらかじめ割り当てた順番に、電源オフシーケンスを実行する電源オフシーケンス逆転防止方法であって、前記オフ実施順の順番に、出力電圧を停止させるオフの順番が高い方の前記DC−DCコンバータの出力を、昇圧DC−DCコンバータによってあらかじめ定めた昇圧比によって昇圧した昇圧電圧を、次の順番の前記DC−DCコンバータの入力側に、順次、前記給電電圧の入力の他に入力するとともに、前記給電電圧が前記給電電圧閾値以下に低下した際に、複数個の前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータのうち、最も先にオフすべき前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータのオフ動作を実施させることを特徴とする。
【0014】
(3)本発明による電源オフシーケンス逆転防止制御プログラムは、少なくとも前記(2)に記載の電源オフシーケンス逆転防止方法に関する制御を、コンピュータによって実行可能なプログラムによって実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電源システム、電源オフシーケンス逆転防止方法および電源オフシーケンス逆転防止制御プログラムによれば、外部からの電源オンオフ制御がなく、かつ、負荷側への電力供給系統として第1DC−DCコンバータ(第1DDコン)、第2DC−DCコンバータ(第2DDコン)、…のように複数の電力供給系統を備えている電源システムに関し、給電されてくる給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下して、負荷側に供給する出力電圧を停止するオフ状態に移行する場合、先にオフすべき第1DDコンに対して、オフ(動作停止)指示をするとともに、該第1DDコンが出力する第1出力電圧を昇圧DC−DCコンバータ(昇圧DDコン)によってあらかじめ定めた昇圧比により昇圧した昇圧電圧を、前記給電電圧の他にさらに次にオフすべき第2DDコンに対して供給するように構成しているので、以下のような効果を奏することができる。
【0016】
つまり、第1DC−DCコンバータ(第1DDコン)の第1出力電圧が、オフ状態に達したことを示す電圧値としてあらかじめ定めた出力電圧閾値以下に十分に低下するまで、第1DDコンの次にオフすべき第2DC−DCコンバータ(第2DDコン)の第2出力電圧が継続して出力されることになり、それぞれに接続されている負荷側のコンデンサ容量値の如何によらず、必ず、オフ実施順としてあらかじめ定めた第1DDコン、第2DDコン、…の順番にオフ状態に移行することが保証され、電源オフシーケンスが逆転することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による電源システムの回路構成の一例を示す回路構成図である。
【図2】従来の電源システムの電源オフシーケンス逆転の様子を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による電源システム、電源オフシーケンス逆転防止方法および電源オフシーケンス逆転防止制御プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による電源システムおよび電源オフシーケンス逆転防止方法について説明するが、かかる電源オフシーケンス逆転防止方法に関する制御をコンピュータにより実行可能な電源オフシーケンス逆転防止制御プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、電源オフシーケンス逆転防止制御プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
【0019】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、情報処理装置等に用いられる電源システムであって、1つの給電経路から給電されて、2種類以上の複数個の電圧を生成して複数個の電力供給系統として負荷側に出力する電源システムに関し、特に、外部からの電源オンオフ制御機能がなく、電源システムに給電される給電電圧のオンオフに依存して、複数個の電力供給系統の出力それぞれを特定のシーケンスによってオンオフする電源システムであって、先にオフすべき電力供給系統のDDコン(DC−DCコンバータの略)の出力を、その次にオフすべき電力供給系統のDDコンの入力に前記給電電圧の他にさらに給電する回路を追加することによって、複数個の電力供給系統を備えた電源システムにおいて、複数個の電力供給系統の出力間の電源オフシーケンスの逆転を確実に防止することを可能とすることを特徴としている。
【0020】
より具体的には、本発明による電源システムにおいては、1つの給電経路から給電されて複数種類例えば2種類の出力電圧を生成してそれぞれの電力供給系統から負荷側に対して出力する場合、先にオフしたい電力供給系統のDDコン(以下、第1DDコンと称する)の出力を、次にオフしたい電力供給系統のDDコン(以下、第2DDコンと称する)の入力側に、スイッチ、昇圧DDコンおよびダイオードを介して接続するとともに、前記給電経路からの給電電圧も次にオフしたい電力供給系統のDDコンすなわち第2DDコンに対してダイオードを介して接続する回路構成を採用する。
【0021】
ここで、給電経路から電源システムに給電される給電電圧は、第1DDコンの入力側、ダイオードを介して第2DDコンの入力側、および、該給電電圧を監視する電圧監視回路に出力されている。該電圧監視回路は、電源システムに給電される該給電電圧を監視して、給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した場合、先にオフすべき第1DDコンのオフ(動作停止)の指示と、昇圧回路(すなわち、先にオフすべき第1DDコンの出力電圧を昇圧して次にオフすべき第2DDコンにダイオードを介して入力する昇圧DDコン)の前段に配置しているスイッチをオン(接続)する指示とを出力する。
【0022】
これにより、第1DDコンの出力電圧がオフ状態を示す電圧値としてあらかじめ定めた出力電圧閾値以下に低下するまで、第2DDコンがオフ(動作停止)することがなくなり、第1DDコンが前記出力電圧閾値以下まで低下したオフ状態に移行した後に、はじめて、第2DDコンがオフ状態に移行するようになり、而して、複数個例えば2個の電力供給系統が存在しているような場合において、電力供給系統の出力間の電源オフシーケンスが逆転することを確実に防止することができる。
【0023】
(実施形態の構成例)
次に、本発明による電源システムの回路構成の一例を、図1を用いて説明する。図1は、本発明による電源システムの回路構成の一例を示す回路構成図であり、外部からの電源オンオフ制御機能がない電源システムであって、かつ、1つの給電経路からの給電電圧を負荷側への電力供給系統として2種類の出力電圧に変換してそれぞれの電力供給系統として負荷側に供給する電源システムの構成例を示している。なお、本発明は、出力電圧が2種類の場合のみに限るものではなく、2種類以上の複数種類の出力電圧を出力する場合であっても、複数個の電力供給系統それぞれについて、給電電圧が低下した場合のオフ実施順の順番に応じて、図1の場合と同様の回路構成を適用すれば良い。
【0024】
図1に示す電源システムにおいては、1つの給電経路の入力端子1から給電された給電電圧を、2個の電力供給系統として、第1入力部4、第2入力部5に分岐して、2個の第1DDコン12および第2DDコン13それぞれに供給することによって、第1DDコン12および第2DDコン13それぞれにおいて、第1出力電圧および第2出力電圧を生成して、それぞれの第1出力端子2および第2出力端子3から負荷側に出力する回路構成となっている。また、給電経路の入力端子1から給電される給電電圧を監視する電圧監視回路11を備えており、該給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下して給電停止の状態が発生した場合に、出力電圧を停止させる電源オフシーケンスのオフ実施順としてあらかじめ割り当てた順番を、第1電力供給系統を形成する第1DDコン12の出力、第2電力供給系統を形成する第2DDコン13の出力の順番に、出力電圧(第1出力電圧、第2出力電圧)をオフにするように制御することにしている。
【0025】
このオフ実施順を実現するために、図1に示す電源システムにおいては、先にオフすべき第1電力供給系統の第1DDコン12の出力を、スイッチ16、昇圧DDコン14および第1ダイオード15を介して、次にオフすべき第2電力供給系統の第2DDコン13の入力側にも接続しており、電圧監視回路11が、前記給電電圧が前記給電電圧閾値以下に低下したことを検出した場合に、電圧監視回路11は、先にオフすべき第1DDコン12とスイッチ16とに対してオフ信号7を出力して、第1DDコン12のオフ(動作停止)とスイッチ16のオン(接続)とを指示する構成としている。なお、第1ダイオード15の接続方向は、前記給電電圧の電圧値が正の値の場合、昇圧DDコン14の昇圧電圧出力部6側にアノード、第2DDコン13の第2入力部5側にカソードを接続する。
【0026】
なお、第1DDコン12の次にオフすべき第2DDコン13は、第1DDコン12から出力された第1出力電圧が昇圧DDコン14によって昇圧されて昇圧電圧出力部6から第1ダイオード15を介して入力されてくる昇圧電圧と、給電経路の入力端子1から第2入力部5を介して給電されてくる給電電圧とのうち、いずれか電圧値が高い方の電圧を選択して動作するように、給電経路の入力端子1からの第2DDコン13への接続は第2ダイオード17を介して行うように構成している。第2ダイオード17の接続方向は、前記給電電圧の電圧値が正の値の場合、給電電圧が給電されてくる入力端子1側にアノード、第2DDコン13の第2入力部5側にカソードを接続する。
【0027】
この結果、入力端子1から給電される給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した場合には、電圧監視回路11からのオフ信号7によって、先にオフすべき第1電力供給系統の第1DDコン12の出力をオフする動作が起動されると同時に、オン(接続)状態に切り替わったスイッチ16を介して、第1DDコン12が出力する第1出力電圧が昇圧DDコン14によってあらかじめ定めた昇圧比に応じて昇圧されて、第1ダイオード15を介して、第2電力供給系統の第2DDコン13に供給されることになるので、第2電力供給系統の第2DDコン13は、入力端子1から第2入力部5を経由して給電される給電電圧の電圧値の低下によらず、第1電力供給系統の第1DDコン13が出力する第1出力電圧が、オフ状態を示す電圧値としてあらかじめ定めた出力電圧閾値以下に低下しない限り、第2出力電圧としての出力を継続することになる。
【0028】
したがって、給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した場合であっても、第1電力供給系統の第1DDコン13が出力する第1出力電圧が前記出力電圧閾値以下に低下してオフ状態に移行した後に、はじめて、次にオフすべき第2電力供給系統の第2DDコン13のオフ動作が開始されることになり、2個の電力供給系統の出力間の電源オフシーケンスの逆転が発生することを確実に防止することができる。
【0029】
(実施形態の動作の説明)
次に、図1に示した電源システムの動作について、特に、入力端子1からの給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した場合に電源システムの2個の電力供給系統の出力間において電源オフシーケンスの逆転が発生することを防止している仕組みを中心にして説明する。
【0030】
図1の電源システムにおいては、前述したように、電源システムに給電される入力端子1からの給電電圧に基づいて、第1電力供給系統の第1DDコン12により生成した第1出力電圧を第1出力端子2から出力し、第2電力供給系統の第2DDコン13により生成した第2出力電圧を第2出力端子3から出力する構成としており、かつ、入力端子1からの給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した場合の電源オフシーケンスのオフ実施順として、最初に第1DDコン12、次が第2DDコン13の順番としている。
【0031】
入力端子1に正常な給電電圧が給電されている場合には、電圧監視回路11は、給電電圧が正常であることを検知して、オフ信号7により、第1電力供給系統の第1DDコン12に対してオン状態(動作状態)を指示し、スイッチ16に対しては、オフ状態(開放)を指示している。この結果、第1DDコン12は、オン状態になって、入力端子1から給電されてくる正常な給電電圧に基づいて、第1出力電圧を生成して、第1出力端子2から負荷側に対して出力する。
【0032】
また、スイッチ16がオフ状態(開放)となっているので、昇圧DDコン14に対して、第1DDコン12からの第1出力電圧が給電されてくることがないので、昇圧DDコン14の昇圧電圧出力部6からは昇圧された電圧が出力されることはない。ただし、入力端子1からは第2ダイオード17を介して正常な給電電圧が第2入力部5に給電されているので、第2電力供給系統の第2DDコン13は、正常な給電電圧に基づいて、第2出力電圧を生成して、第2出力端子3から負荷側に対して出力している。
【0033】
一方、入力端子1に給電される給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下すると、電圧監視回路11は給電電圧が前記給電電圧閾値以下に低下したことを検出して、オフ信号7により、先にオフすべき第1DDコン12に対してオフ状態(動作停止状態)を指示し、かつ、スイッチ16に対してオン状態(接続)を指示する。この結果、先にオフすべき第1DDコン12は、オフ状態への移行を開始する。
【0034】
しかし、第1DDコン12から出力される第1出力電圧は、第1出力端子2に接続されている負荷側のコンデンサ容量と消費量とに応じて電圧値が徐々に低下していくので、第1DDコン12の第1出力電圧は、オフ状態への移行と同時に直ちに'0'(オフ状態)に低下することはなく、或る程度の電圧値が継続して存在している。
【0035】
ここで、電圧監視回路11からのオフ信号7により、スイッチ16がオン状態(接続)に切り替わっているので、第1DDコン12の第1出力電圧は昇圧DDコン14にも入力されることになり、昇圧DDコン14が動作して、或る程度の電圧値になっている第1出力電圧をあらかじめ定めた昇圧値で昇圧して、昇圧DDコン14の昇圧電圧出力部6から、昇圧電圧として、第1ダイオード15を介して、次にオフすべき第2電力供給系統の第2DDコン13に対して出力する。
【0036】
また、入力端子1における給電電圧は前記給電電圧閾値以下に低下しているので、第2電力供給系統として第2ダイオード17を介して第2入力部5に入力されてくる給電電圧の電圧値も低下し始めている。しかし、昇圧DDコン14の昇圧電圧出力部6から第1ダイオード15を介して第2入力部5へ入力されてくる昇圧電圧が、第2電力供給系統の第2DDコン13に対して印加されるので、第2DDコン13からの第2出力電圧は継続して生成されて、第2出力端子3から負荷側に出力され続ける。
【0037】
つまり、第1DDコン12の第1出力電圧がオフ状態になったことを示す出力電圧閾値以下に低下して、昇圧DDコン14が動作することができない状態になるまで、昇圧DDコン14が動作可能な状態にある限り、第2DDコン13はオフ状態に移行することはなく、第2出力電圧を生成し続け、第2出力端子3から第2出力電圧として出力される電圧値がオフ状態('0'状態)になって出力が停止することはない。
【0038】
したがって、第1電力供給系統の第1出力端子2や第2電力供給系統の第2出力端子3に接続される負荷側のコンデンサ容量が如何なる状態にあったとしても、先にオフすべき第1電力供給系統の第1DDコン12の第1出力電圧が、オフ状態に達したことを示す電圧値としてあらかじめ定めた出力電圧閾値以下に低下するまでの間、第1電力供給系統の次にオフすべき第2電力供給系統の第2DDコン13からの第2出力電圧がオフ状態になることはなく、電源オフシーケンスが逆転することを確実に防止することができる。
【0039】
なお、図1に示す電源システムにおいて、昇圧DDコン14に入力されてくる第1DDコン12の第1出力電圧の電圧値が如何なる電圧値であったとしても、昇圧DDコン14の昇圧電圧出力部6から出力される昇圧電圧の電圧値を、正常な給電電圧の状態において入力端子1に給電されてくる給電電圧の電圧値よりも低い値に常に設定する構成とすることが望ましい。
【0040】
かくのごとき構成とすることにより、第1ダイオード15と第2ダイオード17とのダイオードオアの状態において、正常な給電電圧が入力端子1に給電されている状態にある限り、電圧値が高い入力端子1からの給電電圧による電流しか第2DDコン13の第2入力部5に流れ込んでこないので、スイッチ16を削除することが可能になる。したがって、電圧監視回路11からのオフ信号7として、スイッチ16に対するオンオフ制御(開閉)が不要になり、第1DDコン12に対するオンオフ動作の指示のみを行うだけで十分になり、電源オフシーケンスの制御を簡素化することができる。
【0041】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態によれば、外部からの電源オンオフ制御がなく、かつ、負荷側への電力供給系統として第1DDコン12、第2DDコン13、…のように複数の電力供給系統を備えている電源システムに関し、給電されてくる給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下して、負荷側に供給する出力電圧を停止するオフ状態に移行する場合、先にオフすべき第1DDコン12に対して、オフ(動作停止)指示をするとともに、該第1DDコン12が出力する第1出力電圧を、昇圧DDコン14によってあらかじめ定めた昇圧比により昇圧した昇圧電圧を、前記給電電圧とのダイオードオアの形式で次にオフすべき第2DDコン13に対して供給するように構成しているので、以下に記載するような効果が得られる。
【0042】
つまり、図1に示す電源システムにおいては、第1DDコン12の第1出力電圧が、オフ状態に達したことを示す電圧値としてあらかじめ定めた出力電圧閾値以下に十分に低下するまで、第1DDコン12の次にオフすべき第2DDコン13の第2出力電圧が継続して出力されることになり、第1出力端子2、第2出力端子3それぞれに接続されている負荷側のコンデンサ容量値の如何によらず、必ず、オフ実施順としてあらかじめ定めた第1DDコン12、第2DDコン13の順番にオフ状態に移行することが保証され、電源オフシーケンスが逆転することを確実に防止することができる。
【0043】
これに対して、背景技術において説明したように、外部からの電源オンオフ制御がなく、かつ、負荷側への電力供給系統として第1DDコン12、第2DDコン13、…のように複数の電力供給系統を備えている従来の電源システムにおいては、給電電圧が低下した場合に、先にオフすべき第1DDコン12と次にオフすべき第2DDコン13とは、それぞれ、時間をおかず、給電電圧が低下していくタイミングに応じて、オフ動作を実施してしまうため、第1DDコン12からの第1出力電圧を出力する第1出力端子2、第2DDコン13からの第1出力電圧を出力する第2出力端子3それぞれに接続されている負荷側のコンデンサ容量値と消費量とに応じて、オフ状態(出力電圧'0'状態)に達する順番が左右され、電源オフシーケンスが逆転する可能性がある。
【0044】
かくのごとき従来の電源システムの電源オフシーケンス逆転の様子を、図2を用いてさらに説明する。図2は、従来の電源システムの電源オフシーケンス逆転の様子を説明するための説明図であり、図2(A)は、入力端子1における給電電圧が低下した際に、第1出力端子2の第1出力電圧、第2出力端子3の第2出力電圧それぞれが低下していく様子を示し、図2(B)は、第1出力端子2の第1出力電圧、第2出力端子3の第2出力電圧が、それぞれの負荷側のコンデンサ容量値に応じて左右される低下速度の差によって、電源オフシーケンスが逆転する様子を示している。
【0045】
従来の電源システムにおいては、入力端子1から給電される給電電圧のオンオフに依存して、第1出力端子2、第2出力端子3それぞれから出力する第1出力電圧、第2出力電圧を特定のシーケンスでオンオフするので、図2(A)に示すように、入力端子1の給電電圧が低下していくタイミングに応じて、例えば、オフ1のタイミングで第1出力端子2から第1出力電圧を出力する第1DDコン12のオフ動作を開始し、オフ2のタイミングで第2出力端子3から第2出力電圧を出力する第2DDコン13のオフ動作を開始していた。
【0046】
ここで、第1出力端子2、第2出力端子3それぞれの出力先の負荷側には、コンデンサが実装されていて、第1DDコン12、第2DDコンのオフ動作を実施して出力を停止するようにしても、負荷側のコンデンサに溜まっている電荷が完全に放電終了するまでは、第1出力端子2、第2出力端子3には電圧が発生している。第1出力端子2、第2出力端子3にそれぞれ発生している電圧の低下速度は、負荷側のコンデンサ容量と実際に使用する消費量とによって異なり、消費量が少なくコンデンサ容量値が大きいほど電圧低下速度は遅くなる。
【0047】
例えば、先にオフすべき第1出力端子2に接続されている負荷が、次にオフすべき第2出力端子3に接続されている負荷に比して、軽負荷で消費量が少なくかつコンデンサ容量値が大きい場合、図2(B)に示すように、先にオフすべき第1出力端子2の電圧低下速度が、次にオフすべき第2出力端子3の電圧低下速度に比して遅くなり、先にオフすべき第1出力端子2の第1出力電圧の電圧値がオフ状態('0'状態)まで低下する前に、次にオフすべき第2出力端子3の第2出力電圧がオフ状態('0'状態)に低下してしまうという、電源オフシーケンスの逆転が発生してしまう。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0049】
1 入力端子
2 第1出力端子
3 第2出力端子
4 第1入力部
5 第2入力部
6 昇圧電圧出力部
7 オフ信号
11 電圧監視回路
12 第1DDコン(第1DC−DCコンバータ)
13 第2DDコン(第2DC−DCコンバータ)
14 昇圧DDコン(昇圧DC−DCコンバータ)
15 第1ダイオード
16 スイッチ
17 第2ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの給電電圧に基づいて、複数個のDC−DCコンバータそれぞれによって複数種類の出力電圧を生成して負荷側に供給する複数個の電力供給系統を備えた電源システムであって、複数個の前記電力供給系統それぞれの前記DC−DCコンバータに対して、前記給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した給電停止の状態が発生した際に負荷側に供給する出力電圧を順番に停止させるオフ実施順をあらかじめ割り当てて、該オフ実施順の順番に、出力電圧を停止させるオフの順番が高い方の前記DC−DCコンバータの出力を、あらかじめ定めた昇圧比によって昇圧する昇圧コンバータを備えた昇圧回路を介して、次の順番の前記DC−DCコンバータの入力側に、順次、前記給電電圧の入力の他に入力するように構成し、前記給電電圧が前記給電電圧閾値以下に低下した際に、複数個の前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータのうち、最も先にオフすべき前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータのオフ動作を実施させることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記昇圧回路が、前記昇圧DC−DCコンバータの後段に第1ダイオードを接続して構成され、かつ、最も先にオフすべき前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータを除くその他の前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータそれぞれに関して前記給電電圧を入力する入力側に第2ダイオードを備えて構成され、前記給電電圧と前記昇圧DC−DCコンバータによって昇圧した昇圧電圧とのうち、いずれか電圧値が高い電圧を前記オフ実施順が次の順番の前記DC−DCコンバータに入力させる構成とすることを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記昇圧DC−DCコンバータが出力する前記昇圧電圧の電圧値は、正常な状態における前記給電電圧よりも常時低い電圧値であることを特徴とする請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記昇圧回路が、前記昇圧DC−DCコンバータの前段にオンオフ動作を行うスイッチを接続して構成され、前記給電電圧が前記給電電圧閾値以下に低下した際に、前記スイッチをオンに切り替えて、出力電圧を停止させるオフの順番が高い方の前記DC−DCコンバータの出力を前記昇圧DC−DCコンバータに入力させ、前記昇圧DC−DCコンバータによって前記昇圧電圧を生成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電源システム。
【請求項5】
1つの給電電圧に基づいて、複数個のDC−DCコンバータそれぞれによって複数種類の出力電圧を生成して負荷側に供給する複数個の電力供給系統を備えた電源システムにおいて、複数個の前記電力供給系統それぞれの前記DC−DCコンバータに対して、前記給電電圧があらかじめ定めた給電電圧閾値以下に低下した給電停止の状態が発生した際に負荷側に供給する出力電圧を順番に停止させるオフ実施順としてあらかじめ割り当てた順番に、電源オフシーケンスを実行する電源オフシーケンス逆転防止方法であって、前記オフ実施順の順番に、出力電圧を停止させるオフの順番が高い方の前記DC−DCコンバータの出力を、昇圧DC−DCコンバータによってあらかじめ定めた昇圧比によって昇圧した昇圧電圧を、次の順番の前記DC−DCコンバータの入力側に、順次、前記給電電圧の入力の他に入力するとともに、前記給電電圧が前記給電電圧閾値以下に低下した際に、複数個の前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータのうち、最も先にオフすべき前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータのオフ動作を実施させることを特徴とする電源オフシーケンス逆転防止方法。
【請求項6】
最も先にオフすべき前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータを除くその他の前記電力供給系統の前記DC−DCコンバータそれぞれは、前記給電電圧と前記昇圧DC−DCコンバータによって昇圧した昇圧電圧とのうち、いずれか電圧値が高い電圧を入力して、出力電圧を生成することを特徴とする請求項5に記載の電源オフシーケンス逆転防止方法。
【請求項7】
前記昇圧DC−DCコンバータが出力する前記昇圧電圧の電圧値は、正常な状態における前記給電電圧よりも常時低い電圧値であることを特徴とする請求項6に記載の電源オフシーケンス逆転防止方法。
【請求項8】
前記昇圧DC−DCコンバータの前段にオンオフ動作を行うスイッチを接続し、前記給電電圧が前記給電電圧閾値以下に低下した際に、前記スイッチをオンに切り替えて、出力電圧を停止させるオフの順番が高い方の前記DC−DCコンバータの出力を前記昇圧DC−DCコンバータに入力させ、前記昇圧DC−DCコンバータによって前記昇圧電圧を生成することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の電源オフシーケンス逆転防止方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかに記載の電源オフシーケンス逆転防止方法に関する制御を、コンピュータによって実行可能なプログラムによって実施することを特徴とする電源オフシーケンス逆転防止制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−66344(P2013−66344A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204742(P2011−204742)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】