説明

電源システム

商用電源の停電時にバックアップ電源を提供するシステムであって、圧縮機(10)により供給される多量の圧縮気体を収容するように適合された容器(11)と、容器(11)から圧力調整器(12)を経て、回転部材を含むスクロール膨張器(15)に気体を放出するソレノイド弁(14)と、を有し、前記回転部材は気体の通過により発電機(16)を駆動して電力供給を生成する、システム。商用電力停電の際自動的に起きるシステムの動作を、パワーコンディショニングユニット(17)及び電子制御(13)が決定し、このようにして真に無停電な電源をコンピュータや通信システムのような設備に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ電力を発電してコンピュータや通信システムのような設備に無停電電源を提供するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックアップ電力は、化石燃料を使用して運転され、よくバッテリーにより始動される予備発電機により供給されていた。予備発電機を始動させまたは無停電電源にエネルギーを蓄積するために使用されるバッテリーは、限られた寿命があり、著しいメンテナンスの負担がある。高温の気候では、バッテリー寿命のさらなる減少や、電子制御システムを動作させておく為だけでなく空調でそれらを冷やしておくためのエネルギーの必要によって、問題が複雑になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、バックアップ電力を発電しながら、冷涼な動作温度にシステムを維持する為に冷涼な環境を作り出すシステムを提供することである。そのような発電システムは、化石燃料を使用することなく且つバッテリーに頼ることなく動作する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、バックアップ電力を発電するシステムであって、多量の圧縮気体を収容するように適合された容器と、所定の圧力で前記容器から気体を放出するための弁と、前記放出された気体を受けて通すように適合されたスクロール膨張器であって当該膨張器により通される前記放出された気体の流れにより回転される回転部材を有する膨張器と、前記膨張器の前記回転部材に駆動結合されて電力供給を生成する発電機と、を有するシステムが提供される。
【0005】
エネルギーは約300barの圧力で容器に貯蔵された気体に内包されている。貯蔵された圧縮気体は室温で劣化しないので、長い動作寿命を有する信頼できるエネルギー貯蔵を提供する可能性を秘めている。このようにして、圧縮気体を膨張させると、機械的エネルギーを回収することが可能であり、発電機を使用して機械的エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能である。このシステムは、電力が必要な時に圧縮気体を容器から調整器を通して放出し、約10barの減圧された圧力の気流を与えるように動作する。気体はその後、スクロール膨張器に供給され、そこを気体が通過することでスクロール膨張器が機械的に回転し、その時スクロール膨張器が、スクロール膨張器の軸に接続されている発電機を機械的に回転させ、必要な電力を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施の態様を、添付図面を参照してほんの一例として説明する。
【0007】
図1のシステムは、例えば、エネルギーにして約11kWhに匹敵する乾燥圧縮空気300リットルを収容する圧力容器11に充填するように適合された多段階空気圧縮機と乾燥機10である。乾燥空気は露点(due point)−30℃で貯蔵される。容器11が鉄鋼製の場合に腐食を防ぐ為に、また空気が膨張した時に着氷を防ぐ為に、乾燥空気は重要である。斯かる約300barの高圧の空気を用意することで、比較的小さな体積で相当な密度のエネルギー保存が可能になる。圧縮機10は商用電源により駆動される。
【0008】
空気を斯かる高圧に圧縮することにより相当量の低位熱が生成されるが、これは圧縮機に消費され又は何か他の用途に利用されてもよい。容器11は、工業プロセスの気体を貯蔵する為に使用されるような容器と同様に鉄鋼構成であってよい。あるいは容器は、自動車産業において圧縮天然ガスを収容するのに使用されるような炭素繊維で出来ていてもよい。
【0009】
貯蔵された空気の圧力を約10barの動作レベルまで減圧するように設定することが可能な圧力調整器12が、容器11から圧縮空気を受けるように適合されて圧縮空気の下流にある。システムの出力電力を決定する為に、電子操作される制御システム13によりその出力圧について制御される。
【0010】
圧力調整器12の出口に、通常開いていて通電により閉状態になるタイプのソレノイド弁14がある。商用電気の供給がある間は弁は電気的に閉ざされていて、しかるに電気供給が無くなれば弁は開いて調整器から空気を供給する。調整器12から通過する貯蔵されていた空気は、開いている時ソレノイド弁14を経てスクロール膨張器15に供給される。この装置は、事実上、膨張器として動作するように構成し直された、オイル無しのスクロール圧縮機である。動作において、圧力10barの圧縮空気は膨張器を通過するとそこで大気圧まで膨張し、その膨張作用によりスクロール膨張器15の軸15aが回転する。
【0011】
スクロール膨張器15を離脱した膨張された空気は乾燥していてオイル及び汚染物を含まず、温度0℃未満である。この冷却された空気は、システムの電子機器を冷やし電子機器を含む部屋を空調するのに理想的である。
【0012】
スクロール膨張器はより伝統的なレシプロ型、羽根型及びタービン型膨張器と比べて高効率な機械である。
【0013】
例えば15V直流の電源を生み出す電磁発電機16が膨張器15の軸15aに機械的に接続されている。これは、バックアップ電力が供給されるべき機器による要求に応じて増減してよい。
【0014】
パワーコンディショニングユニット17は出力を制御し、また制御ユニット13へ電源を提供する。ユニット17は少量の電気エネルギーを蓄えるキャパシタを含む。このキャパシタは、商用主電源から完全に充電された状態を保ち、電源が落ちた時に、スクロール膨張器15及び発電機16が必要電力を生成できるまでの、達成に1秒以上かかる間、キャパシタがバックアップ電源を提供する。それゆえ、システムはただのバックアップ電力ではなく、真の無停電電源を提供できる。
【0015】
使用において、通常の商用電源が利用可能なときは、スクロール膨張器システムは動作せず、予備エネルギーは容器11に蓄えられる。
【0016】
無停電電源は、商用電源が落ちた際ただちに必要となる。
【0017】
停電直後、スクロール膨張器15及び発電機16が動作速度に到達し必要な電力を送り出す間の初期において、電気供給は、パワーコンディショニングユニット17内のキャパシタエネルギー貯蔵(capacitor energy store)から維持される。
【0018】
さらに、ユニット17は膨張器15及び発電機16からの遅い応答を、要求される負荷における迅速な変化に対応させるという第2の役割を果たす。例えば、電力出力要求が、ほぼ瞬時に300Wから600Wに変化すると仮定した場合、システムは、負荷における変化に反応する為に有限の時間がかかり、その間、キャパシタエネルギー貯蔵が不足分を補填する。反対に、出力要求が瞬時に600Wから300Wに減少する場合は、またしても膨張器/発電機が減少したスピード及び出力に到達する為に有限の時間がかかり、その間、キャパシタエネルギー貯蔵が膨張器/発電機により送り出される過剰のエネルギーを吸収する。
【0019】
本発明にかかるシステムは、真に無停電な電源を提供すると同時に、このように膨張器15から流れ出し電子設備の空調及び冷却に使用可能な、オイルを含まない清浄で乾燥した空気を貯蔵及び放出し、化石燃料やバッテリーの使用に依存しない、ということが評価されるであろう。圧縮機10と膨張器15は大気の汚染を避けるべく、実質的にオイル無しで動作する。
【0020】
ここで図2を参照して、システムを介した電力の流れが更に強化された第2の実施例を示す。商用電源は201に図示され、整流器202で整流されてDCリンクを通過し電力変換器204で要求される負荷に適した形に変換されるAC電源からなる。
【0021】
DCリンクはキャパシタエネルギー貯蔵212と、電圧測定装置VMDと、電流測定装置CMDとを有する。
【0022】
電力変換器204により提供される直流電力は、例えば、通信設備用の48V直流であってもよいし、或いは、電力変換器204は、電源周波数及び電圧負荷に対して合成された交流電力を与える電源インバーターの形で提供され得る。
【0023】
商用電源が中断した時に、システムは図1の空気溜め11に相当する加圧空気供給206からの動作に切り換わる。エネルギーは、空気ソレノイド207と電子式空気調整器208に流される加圧空気の中に内包されている。調整器208は空気が膨張するスクロール膨張器209に空気流を調整するための絞りとして働く。
【0024】
スクロール膨張器209は、機械的に交流発電機210を駆動して交流電力を発電する。これは、出力がDCリンク203に接続された第2整流器211により直流電力に変換される。このように、電力はDCリンクを介して出力電力変換器204へ流れ負荷205に供給される。
【0025】
臨界動作速度に到達するための充分な時間を膨張器209に与えるために、及び負荷要求における素早い変化に対応する為に、キャパシタエネルギー貯蔵212がDCリンクに設けられている。
【0026】
空気動作中、即ち、商用供給が中断しているときの電力流の管理は、電子制御部213により行われる。制御アルゴリズムは図3において図説されており、ここで、301ではDCリンク電圧及び電流が連続的に監視され、302では要求される電圧が信号乗算により計算される。制御部はこのように任意の負荷要求に対して必要な空気圧を出力することの可能な膨張器の動作の為の数理モデル303を含む。
【0027】
同時に、304では実際のDCリンク電圧が設定DCリンク電圧と比較され、305ではエラー信号が生成される。この信号は、比例−積分−微分(PID)制御部306及びリミッター307を通過し、圧力調整信号を与える。
【0028】
最後に、308では、モデル303からの負荷要求由来の圧力信号と、制御部213から出る前の圧力調整信号とが、電子空気圧調整器208及び空気ソレノイド207を設定する設定圧信号309として足し合わされる。
【0029】
常に、制御部213は201で電源存在リレー(mains-present relay)を介して商用電源を監視している。310では電源存在信号(mains-present signal)が信号インバータ311を通過して、空気ソレノイド207を制御し309において設定圧信号をゲートでコントロールする為に使用される。このようにして、電源電気供給が利用可能な時は、空気ソレノイドが「オフ」であり設定圧信号は遮断される。
【0030】
現在入手可能な空気膨張器は、圧縮空気を不足膨張する(under-expand)傾向があり、このようにして大気圧より大きい圧力であって相当のエネルギーをなお内包している排気を放出している。以下はこの不足膨張された空気に含まれるエネルギーを回収して、システムの効率を最適化するシステムの説明である。
【0031】
空気膨張器は、大気圧に対する駆動気圧の比よりも低い圧縮比を有する。例として、空気膨張器15、209は3:1の膨張比を有しうる。斯かる膨張器は、要求される電力出力を送り出す為に9barの圧力で空気を供給する必要がある。この場合、空気は未だ相当のエネルギーを内包している3barで膨張器から出て行く。図4は加圧排気からエネルギーを回収するシステムを図示する。
【0032】
上述したような低い膨張比の膨張器の場合、膨張器からの出口の圧力が背圧弁の使用により大気圧より大きい圧力に保持されているならば、逸失する電力出力は最小になる。斯かる弁を図4において41に示す。空気は通常、膨張器により要求されるよりもずっと高圧で得られるので、所定量の電力を生産する為に必要な空気の量を低減するためにその高圧空気を使用して、膨張器からの空気のうち幾分かの圧力を増加することは可能である。
【0033】
高圧空気はまず、調整器43により、膨張器ベンチュリ42を駆動するのに適した一定の圧力に低減しなければならない。それから空気は駆動空気としてベンチュリ内に入り、これは、大気圧であるか又は圧力開放弁41を含む場合はより高い圧力であり得る膨張器の出口からの低圧空気を取り込む。このようにして、低圧の出口側空気は、逆止弁45を通過してベンチュリ42内へ入る。混合した空気は駆動空気と取り込まれた空気の間の圧力レベルで消費される。
【0034】
もし負荷の電力要求が可変であるならば、膨張器に入る圧力を制御信号に対応して変えるために、さらなる圧力調整器46を含んでもよい。この調整器は、図2の208で図示された、電子制御システム213により作動される調整器に相当する。
【0035】
追加の弁47を、高需要時に充分な空気供給を確保する為の調整器、又は、高圧空気源からの圧力がベンチュリ42を駆動するのに充分なレベルを下回ったときに開くソレノイド弁、のいずれかとして導入してよい。
【0036】
典型的な動作圧力をそれぞれの弁/調整器に対し図4に示す。斯かる圧力では、膨張器44を通る気流の約25%は、ベンチュリを経て除去され、膨張器を再び通過する。
【0037】
ここで説明したような、そして本発明による、バックアップ電力を発電するシステムは、遠隔充填機能(remote filling capability)とともに活用しても良い。即ち、従来バックアップ電力を提供する為バッテリーを有している遠隔通信端末のような、遠隔地に設置され与圧される貯蔵庫内に高圧縮空気を設けても良い。このようにして、遠隔端末キャビネット内にここで説明したような発電システムを内蔵して、必要な時、即ち商用電源が落ちたときに動作するようにしてもよい。ゆえに、圧縮空気駆動のバックアップ電力システムは、必要な時に作動し、バックアップバッテリー一式に比べて占有するスペースはかなり小さい。圧縮空気を収容するタンク又は貯蔵庫は、大きくてもよく、地上又は地下のいずれか若しくは必要な時に迅速にそれを交換可能な別個の筐体内にあってもよいので、通常の遠隔端末キャビネット内のスペースを占有する必要は無い。
【0038】
本発明を上記実施例のみに限定する意図は無い。例えば、容器11は工業プロセスから生じるような、空気以外の気体を収容しても良い。さらに、短期間に頻繁に商用電源の停電が発生する場合に、斯かる容器をいくつか縦列に接続してシステムの稼動時間を増加させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施の態様に従い、バックアップ電力を発電するシステムの主要構成要素のブロック図である。
【図2】第2の実施の態様の構成要素の同様の図である。
【図3】制御アルゴリズムを説明する図である。
【図4】図1及び2のシステムからエネルギーを回収するシステムの構成要素を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップ電力を発電するシステムであって、多量の圧縮気体を収容するように適合された容器と、所定の圧力で前記容器から気体を放出するための弁と、前記放出された気体を受けて通すように適合されたスクロール膨張器であって当該膨張器により通される前記放出された気体の流れにより回転される回転部材を有する膨張器と、前記膨張器の前記回転部材に駆動結合されて電力供給を生成する発電機と、を有するシステム。
【請求項2】
前記容器から放出された前記気体の前記圧力を、前記気体が前記スクロール膨張器の中に導入される動作圧力に低減させるための圧力調整器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記容器に結合され、そこへ圧縮乾燥された気体を供給するための多段階空気圧縮機と乾燥機と、を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記容器は、圧力300bar又はその附近、及び露点−30℃又はその附近で気体を保持する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記多段階空気圧縮機を商用電源から駆動するように適合する、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記圧力調整器及び前記気体放出弁が電動制御システムに接続されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記気体放出弁は、通常開いていて通電すると閉状態になるタイプであり、商用電源が存在している間、使用中の当該弁は電気的に閉に維持されていて、商用電源が停電すると開いて前記調整器から気体が供給される、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記スクロール膨張器は、膨張器として動作するように再構成されたオイル無しのスクロール圧縮機である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記スクロール膨張器は、周囲空気より低い温度で大気圧まで膨張するように気体を放出する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
電気エネルギーを保存して、必要な電力の供給を前記スクロール膨張器及び発電機が生成できるまでの短時間の間バックアップ電源を提供するための、少なくとも1のキャパシタを有するパワーコンディショニングユニットを含み、また前記キャパシタは電力要求が変化した場合に電力を放出又は吸収する為に働く、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記パワーコンディショニングユニットは、キャパシタエネルギー貯蔵と電圧測定装置と電流測定装置とを有するDCリンクを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記膨張器の出力から放出された気体の一部を再利用し、容器から膨張器に供給される気体に取り込むための手段を含む、請求項1〜11に記載のシステム。
【請求項13】
多量の圧縮気体を収容するようにそれぞれ適合された複数の容器を含み、前記容器は互いに縦列につながっている、請求項1〜12に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−509158(P2006−509158A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502330(P2005−502330)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005230
【国際公開番号】WO2004/053295
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505213909)エナージェティックス グループ リミテッド (1)