説明

電源システム

【課題】使用者のニーズに応えながら、長寿命化を図り、且つ、高効率な運転を実現することができる電源システムを提供する。
【解決手段】電源システムは、燃料と酸化剤との電気化学反応により発電する燃料電池30と、充放電可能な二次電池(リチウムイオン電池20)とを備え、燃料電池により二次電池を充電し、この二次電池から電力を取り出すものであって、燃料電池にて発電された電力を用いて二次電池を充電する充電制御手段(充放電回路176)を備え、この充電制御手段は、二次電池から電力が取り出される頻度に応じて、燃料電池により二次電池を充電するモードを切り換える機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と酸化剤との電気化学反応により発電する燃料電池を用いた電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素(燃料)と酸素(酸化剤)とから電気エネルギを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴としては、従来の発電方式のように熱エネルギや運動エネルギの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できる、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギを有効に利用でき、環境にやさしい特性をもっているので、21世紀を担うエネルギ供給システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
【0003】
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、固体高分子形燃料電池の一形態として、ダイレクトメタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)が注目を集めている。DMFCは、燃料であるメタノール水溶液を改質することなく直接アノードへ供給し、メタノール水溶液と酸素との電気化学反応により電力を得るものであり、この電気化学反応によりアノードからは二酸化炭素が、カソードからは生成水が、反応生成物として排出される。
【0004】
メタノール水溶液は水素に比べ、単位体積当たりのエネルギが高く、また、貯蔵に適しており、爆発などの危険性も低いため、自動車や携帯機器(携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、MP3プレーヤ、デジタルカメラ、ゲーム機、或いは、電子辞書(書籍))などの電源への利用が期待されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−040787号公報
【特許文献2】特開2006−054075号公報
【非特許文献1】「電池応用ハンドブック」トランジスタ技術編集部編CQ出版社(ISBN4−7898−3446−8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、このような燃料電池を用いて構成する発電システムでは、接続される機器に対して安定した電力を供給できるように、燃料電池で発電された電力を充放電可能な二次電池に一旦充電して貯え、当該二次電池から電力を取り出して機器に供給する方式が採られる。
【0006】
この場合、機器の使用者としては二次電池が迅速に充電されること、或いは、常に満充電状態とされていることが望ましい。一方で、二次電池は100%(充電率)の残量近辺で充放電が繰り返されると、電池の劣化を引き起こす問題があると共に、満充電に近ければ近い程、保存状態が悪くなることが一般的に云われており(例えば、非特許文献1参照)、これを回避するための考慮が望まれる。また、燃料電池としても低電流で動作させた方が発電の効率が良くなるが、低電流では二次電池を充電するのに時間を要するようになる。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、使用者のニーズに応えながら、長寿命化を図り、且つ、高効率な運転を実現することができる電源システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源システムは、燃料と酸化剤との電気化学反応により発電する燃料電池と、充放電可能な二次電池とを備え、燃料電池により二次電池を充電し、この二次電池から電力を取り出すものであって、燃料電池にて発電された電力を用いて二次電池を充電する充電制御手段を備え、この充電制御手段は、二次電池から電力が取り出される頻度に応じて、燃料電池により二次電池を充電するモードを切り換える機能を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の電源システムは、上記において充電制御手段が切り換えるモードは、二次電池を急速に充電可能なモードと、当該モードよりも燃料電池を高効率で発電させて二次電池を充電可能なモードであることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の電源システムは、上記各発明において充電制御手段は、モード切換において二次電池を充電する際の電流を切り換えることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の電源システムは、上記各発明において充電制御手段は、モード切換において二次電池の充電率を切り換えて維持することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の電源システムは、上記各発明において充電制御手段は、二次電池から電力が取り出される頻度に応じてモードを切り換えるための操作手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の電源システムは、上記各発明において充電制御手段は周囲の明るさを検出する照度検出手段を備え、二次電池から電力が取り出される頻度と周囲の明るさとの対応関係に基づいてモードを切り換えることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明の電源システムは、上記各発明において充電制御手段は時限手段を備え、二次電池から電力が取り出される頻度と時間帯との対応関係に基づいてモードを切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電源システムは、燃料と酸化剤との電気化学反応により発電する燃料電池と、充放電可能な二次電池とを備え、燃料電池により二次電池を充電し、この二次電池から電力を取り出すと共に、燃料電池にて発電された電力を用いて二次電池を充電する充電制御手段を備え、この充電制御手段は、二次電池から電力が取り出される頻度に応じて、燃料電池により二次電池を充電するモードを切り換える機能を有しているので、例えば二次電池から電力が取り出される頻度が高い場合は、二次電池に迅速に充電可能なモードとすることにより、及び/又は、二次電池の充電率を高く維持するモードとすることにより、二次電池を常に或いは迅速に満充電状態として使用者のニーズに応えることができるようになる。
【0016】
一方、二次電池から電力が取り出される頻度が低い状況では、高効率で燃料電池を発電させて二次電池を充電可能なモードに切り換えて、例えば二次電池を充電する際の電流を低く抑えることにより、燃料電池の発電効率を向上させて燃料消費を抑制することができるようになる。及び/又は、例えば二次電池の充電率を低く維持するモードとすれば、二次電池の劣化も抑制することができるようになるものである。
【0017】
この場合、モードを切り換えるための操作手段を設ければ、二次電池から電力が取り出される頻度に応じて使用者が各モードを自由に切り換えることができるようになり、利便性が向上する。
【0018】
また、周囲の明るさを検出する照度検出手段を設け、例えば周囲が明るい昼間は二次電池から電力が取り出される頻度が高く、周囲が暗い夜間には頻度が低いものと想定してモードを切り換えるようにすれば、前述した各モードを自動的に切り換えることができるようになる。
【0019】
更に、時限手段によって二次電池から電力が取り出される頻度が高い時間帯と頻度が低い時間帯とを区別し、この時間帯に応じてモードを切り換えるようにしても、前述した各モードを自動的に切り換えることができるようになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。
図1は本発明の電源システム10の内部構成を示す上面図であり、図2は図1におけるA−A線断面図である。以下に本発明の電源システム10について、図2を用いて詳細に説明する。電源システム10は、上部筐体12aと下部筐体12bとからなる筐体12の内部に、大きく分けて制御部14、蓄電部16、発電部18が配置される。
【0021】
電源システム10の制御部14は、発電部18によって発電された電力を、蓄電部16に蓄電するか、図示しない外部の負荷へ直接供給するかを選択するといった電源システム10全体の運転制御を行う。
【0022】
電源システム10の蓄電部16は、充電と放電とが可能な二次電池から構成されており、本実施の形態ではリチウムイオン電池(以下、「LIB」(Litium Ion Battery)と記載する)20を用いる。
【0023】
電源システム10の発電部18は、燃料電池22から構成されており、図示しないアノードにメタノール水溶液、或いは、純メタノール(以下、「メタノール燃料」と記載する)が供給される直接メタノール供給形燃料電池(以下、「DMFC」(Direct Methanol Fuel Cell)と記載する)である。
【0024】
(1)内部の構成
制御部14の制御基板24、LIB20、及び、燃料電池22は、これらを保持するホルダ26によって位置を固定されており、ホルダ26が上部筐体12aに固定されることにより、制御基板24、LIB20、及び、燃料電池22の各部品は筐体12内部に固定される。各部品は、電源システム10が安定的に配置されるときに、制御基板24、及び、LIB20がホルダ26の上側、燃料電池22がホルダ26の下側となるように配置される。ここで、安定的に配置(安定配置)とは、図2のように脚が有れば、水平、或いは、略水平(±10°)な台の上に電源システム10を置くときに、この脚が台に接地するように電源システム10を置く状態をいい、脚がない場合であれば、振動を受けたときに転びにくい比較的面積の広い面であって、ボタンや表示装置のようなユーザーインターフェイスが無い面を底面として台に接地するように置く状態とする。
【0025】
制御基板24を電源システム10の上側に配置するのは、ユーザーインターフェイスが上部に有る方が電源システム10の使用者にとって使いやすく、制御基板24はユーザーインターフェイスに近いところに配置した方が配線スペースを小さくすることができるためである。また、燃料電池22は、できるだけ電極面積が大きい方が発電能力を高くすることができるので望ましい。燃料電池22は基本的には一定の電力を発電するように運転されるが、負荷から大きな電力を要求されたときにも対応可能な上、負荷から要求される電力量が燃料電池22の発電能力と比べて小さいときも安定して発電するので、過負荷による燃料電池22の劣化を防止することができる。したがって、筐体12内部でできるだけ電極面積が大きく取れる位置に、燃料電池22を配置することが好ましい。そこで、本電源システム10では、筐体12の上側に制御基板24を配置したので、下側に燃料電池22を配置している。
【0026】
図3は、燃料電池22の具体的な構成を示す(a)上面図、(b)右側面図、(c)左側面図、及び、(d)B−B線断面図である。本電源システム10に用いられる燃料電池22は、平面型モジュールと呼ばれる、一枚の電解質膜28に複数組の電極が配されて直列に接続される燃料電池モジュール30が用いられている。燃料電池22のアノード32は、液体のメタノール燃料が供給され、生成物として二酸化炭素(気体)が発生するので、安定配置されたときに燃料の供給と生成物の排出とが重力を利用して円滑に行われるように、電解質膜28の上面に配置される。一方、カソード34は、酸化剤として空気が供給され、生成物として水が発生する。このとき、メタノール1分子に対して、1.5倍の酸素分子が必要となるので、カソード34側はアノード32側よりも筐体12b、或いは、ホルダ26との隙間を大きく、具体的には、10da≧dc>daの範囲に設定すると良い。
【0027】
燃料電池22を運転する(発電させる)か否か、具体的には燃料電池22を負荷に接続するか否かの直接的な運転指令は、燃料電池制御部36によって行われる。燃料電池制御部36も配線スペースを考慮して、電源システム10の制御部14の近傍、実施例の燃料電池22の場合には制御部14の真下であって、燃料電池モジュール30の上部に配置している。また、燃料電池モジュール30の上部であって燃料電池制御部36のない空間には、燃料タンク38を配置し、空間の有効活用を行うと共に、燃料電池制御部36、及び、燃料タンク38によって燃料電池モジュール30から制御基板24やLIB20への熱の伝導を遮蔽している。更に、燃料電池22とホルダ26とはdaの隙間を設け、ホルダ26と制御基板24との間にも空間を配し、LIB20は熱が伝わりにくい燃料タンク38の上に配置され、ホルダ26は配線のためのスペースを除いての略全周に渡って上部筐体12aに固定されているので、ホルダ26の上側と下側とは熱的に分離された構成をされている。
【0028】
図1、及び、図3からも明らかなように、本電源システム10、及び、燃料電池22は、X軸に対して略対称となる配置となるのに対し、Y軸に対しては非対称な内部構成としている。これは長手方向について非対称な配置として方が、筐体12内部で温度差がつき易く、その温度勾配によって対流を起こして下部筐体12bに設けられた通風孔166から空気が出入りし易いようにするためである。
【0029】
(2)外部の構成
次に、以上のような内部構成を有する電源システム10の外部構成について説明する。
図4は、電源システム10の外観を示す(a)上面図、(b)右側面図、及び、(c)左側面図である。電源システム10は、一側面に携帯電話のような外部負荷へ電力を供給する給電コネクタ150と、他側面に商用電源から電力の供給を受ける受電コネクタ152とを備えている。154はチェックボタンであり、チェックボタン154を押したときに、表示装置(LED)156が点灯すれば、電源システム10が外部負荷に対し給電可能であることを示しており、LED156が点滅したとき、或いは、点灯しないときには、LIB120の残量が少なく、充電した方がよい、更には外部負荷に対し給電不可能であることを示し、チェックボタン154を押すことにより、電源システム10の状態を確認することができる。
【0030】
右側面のスライド式スイッチは燃料電池モジュール30と燃料電池制御部36との間に介挿される主電源スイッチ158であり、燃料電池モジュール30を負荷に電気的に接続するスイッチである。また、プッシュ式スイッチは燃料電池22を起動させる起動スイッチ160であり、起動スイッチ160を押すことにより、燃料電池22は発電を開始し、LED162が点灯する。即ち、起動スイッチ160を押したときに、LED162が点灯すれば、燃料電池22は発電可能な状態で、LIB20が所定の電圧を下回っているときは充電を行う状態を示しており、LED162が点灯しないときには、燃料電池22が燃料欠状態であり、燃料タンク38へメタノール燃料を補充する必要があることを示している。
【0031】
上記のように、LED162が点灯しないときは、メタノール燃料を補充する必要があり、メタノール燃料を補充するために、左側面には燃料補給孔164が設けられている。この燃料補給孔164は内部の燃料タンク38に連通しており、注射器のような燃料補給手段により燃料補給孔164を介して燃料タンク38へメタノール燃料を供給することができる。また、上側面、及び、下側面は図示しないが、下部筐体12bの四面には通風孔166が設けられており、通風孔166を通って電源システム10の外部から空気が流入すると共に、内部から二酸化炭素や水が流出する。168は下部筐体12bの底面に設けられた脚であり、机のような台の上に電源システム10を安定配置すると、下部筐体12bの底面と机との間に空間ができる。その空間を空気が流通することにより、燃料電池22からの熱を奪うことができる構成とされている。
【0032】
(3)制御回路
次に、上記動作を実現する回路構成を説明する。図5は本実施の形態の回路構成を示す回路構成図である。SW1は主電源スイッチ158と連動し、燃料電池モジュール30とDC/DCコンバータ170とを接続するスイッチ機構であり、DC/DCコンバータ170は起動スイッチ160が押されることにより動作を開始する。スイッチ機構SW1が閉じ、DC/DCコンバータ170を含む燃料電池制御部36と燃料電池モジュール30とが電気的に接続されると、燃料電池制御部36は、燃料電池モジュール30の総電圧VFCを検出し、VFCの値からメタノール燃料が充填されているか、燃料欠状態かを判断する。即ち、燃料欠状態となるとVFCは低下するので、下限閾値を予め設定しておき、検出したVFCが下限閾値を上回っている場合、起動スイッチ160が押されたときにLED162は点灯し、検出したVFCが下限閾値を下回っている場合には、起動スイッチ160が押されたときにLED162は点灯しない。
【0033】
燃料電池モジュール30は、スイッチ機構SW1、DC/DCコンバータ170、及び、整流素子(ダイオード)172を通り、本発明における充電制御手段としての充放電回路174を介してLIB20に接続されると共に、DC/DCコンバータ176を介して外部負荷に接続される。充放電回路174は、燃料電池22により発電された電力を、LIB20の電圧VBが設定電圧V1より低く、且つ、外部負荷が接続されるときは外部負荷へ供給し、LIB20の電圧VBが設定電圧V1より低く、且つ、外部負荷が接続されていないときはLIB20を充電するためにLIB20へ供給する。また、充放電回路174は、LIB20を充電して電圧VBが上限電圧V2より高くなったときと、外部負荷が接続された場合にLIB20の電圧VBが設定電圧V1以上であったときとは、燃料電池22を給電可能な状態ではあるが、燃料電池22からLIB20、又は、外部負荷へ電力は供給しない待機状態とする。
【0034】
電圧VBは、チェックボタン154、及び、LED156とも連携しており、チェックボタン154が押されたときに、電圧VBがV1以上であればLED156は点灯し、電圧VBがV1より低く、下限電圧V3以上であればLED156は点滅し、電圧VBがV3より低いとLED156は点灯しない。また、本実施の形態は、商用電源からLIB20への充電も可能なように受電コネクタ152を備えており、携帯電話充電用のACアダプタ(AC/DCコンバータ)付ケーブルを接続することもできる。電圧VBの値によって燃料電池22からの給電を適宜行うように、主電源スイッチ158(スイッチ機構SW1)は常に入っている方が使用者の利便性は高いが、給電可能な状態(負荷に接続された状態)で発電のための反応をすすめない状態が長期間にわたって続くのは電解質膜の劣化の要因となるので、LIB20が十分に充電されているときには主電源スイッチ158を切る(SW1:開)ことが望ましい。更に、通風孔166(空気開口部)も閉じることが望ましい。
【0035】
次に、図6は前記充放電回路174の回路構成のブロック図を示している。充放電回路174は汎用マイクロコンピュータ200から構成されており、このマイクロコンピュータ200の入力には電源システム10の置かれた周囲の明るさを検出する照度検出手段としての照度センサ201と、操作手段としてのタッチパネル202と、前記電圧VBを検出する電圧センサ203が接続されている。マイクロコンピュータ200の出力には後述する各モードの表示や操作ボタンの表示等を行うためのLCDから成るディスプレイ204(表示手段)とLIB20への充電及びLIB20からの放電を制御するスイッチング素子206が接続されている。
【0036】
前記ディスプレイ204は例えば上部筐体12aの上面に露出して配置されており、タッチパネル202はこのディスプレイ204上面に設けられている。照度センサ201はこのディスプレイ204の側方に設けられて電源システム10周囲の明るさ(照度)を検出する。マイクロコンピュータ200はその機能として有するタイマ(時限手段)を備えており、マイクロコンピュータ200への各種設定はディスプレイ204への表示とタッチセンサ202からの入力操作で行われる。
【0037】
(4)照度と時間帯による充電制御
次に、上記充放電回路174のマイクロコンピュータ200による燃料電池22によりLIB20の充電する場合の制御について説明する。先ず、電源システム10周囲の照度と時間帯に基づいた充電制御について図7、図8を参照して説明する。照度センサ201は電源システム10周囲の明るさが昼間の明るさである一定の照度以上である場合に出力がONし、夜間に相当する当該照度未満である場合にはOFFする。また、マイクロコンピュータ200のタイマには予め使用者により昼間(活動時間帯)を意味するAM6:00〜PM8:00の時間帯と、夜間(非活動時間帯)を意味するPM8:00〜AM6:00の時間帯が設定されている。
【0038】
この時間帯は使用者によりディスプレイ204の表示とタッチパネル202による入力操作によってマイクロコンピュータ200に自由に設定可能とされている。尚、上記照度センサ201の出力に基づく制御もタッチパネル202による入力操作によって実行するかしないかを自由に設定可能とされているものとする。
【0039】
ここで、昼間(活動時間帯)は使用者が例えば携帯電話を使用する機会が多く、夜間(非活動時間帯)は逆に少なくなる。従って、昼間(活動時間帯)の時間帯は電源システム10の給電コネクタ150に携帯電話が接続され、LIB20から頻繁に電力が取り出されて携帯電話のバッテリーに充電が行われる可能性が高いが、夜間の時間帯はその頻度は低くなると考えられる。しかしながら、昼間の時間帯であっても周囲の明るさが暗い場合には、電源システム10を例えばカバンなどの中に入れていて使用していない可能性が高く、従ってその場合はLIB20から電力が取り出される頻度が低く、逆に夜間の時間帯であっても室内照明などによって周囲の明るさが明るい場合には、使用者が夜間仕事をしている可能性が高く、従ってLIB20から電力が取り出される頻度も高くなると考えられる。
【0040】
マイクロコンピュータ200には、このようなLIB20から電力が取り出される頻度と電源システム10の周囲の明るさとの対応関係、並びに、LIB20から電力が取り出される頻度と時間帯との対応関係から作成された判断マトリックスが格納されている。図7はこのマトリックスを示しており、モード1〜モード4の四つのモードがマイクロコンピュータ200に設定されている。
【0041】
(4−1)モード1
電源システム10の周囲が明るく(照度センサ201がON)、且つ、昼間の時間帯(AM6:00〜PM8:00)である場合、マイクロコンピュータ200は図7の左上のモード(方法、方式、形態)1を実行する。このモード1では燃料電池22によりLIB20の充電を開始する当該LIB20の充電率(閾値)を例えば96%とし、充電レートは充電率が例えば80%未満では1CA、80%以上では定電圧(実施例では4.2V)による充電とする。CAとは電池充放電の指標であり、充電電流(mA)/電池容量(mAh)で算出される。実施例の1CAは実施例のLIB20を例えば1時間で満充電とすることができる電流に相当する。
【0042】
このように、電源システム10のスイッチ機構SW1が閉じ、起動スイッチ160が押されている場合、マイクロコンピュータ200はこのモード1でLIB20の充電率が96%まで低下したとき燃料電池22から充電を開始し、100%(満充電)まで充電して終了する。これにより、LIB20は常時96%〜100%の高い充電率で維持される。また、その際の充電率が80%以上では定電圧で充電を行い、80%未満まで下がってしまった領域では充電レートを1CA(即ち、充電のための電流を高)としてLIB20の急速充電を行う。
【0043】
即ち、電源システム10の周囲が明るく、且つ、昼間の時間帯はLIB20から最も頻繁に電力が取り出される(携帯電話が使用されて充電が必要となる)可能性が高いので、マイクロコンピュータ200は燃料電池22の発電によりLIB20の充電率を常に高く維持し、且つ、携帯電話が接続されて充電率が低下した場合には燃料電池22により急速にLIB20を充電して、携帯電話への電力供給(使用者の要求)に支障を来さないようにしている。図8中に横線で示したのが照度センサ201がONした状態であり、同図の「昼間で明るい場合」で示された状態がモード1である。尚、図8においてNで示す範囲は夜間の時間帯を示し、それ以外は昼間の時間帯である。また、Lで示す範囲は携帯電話が接続された状態を示している。
【0044】
(4−2)モード2
次に、昼間の時間帯(AM6:00〜PM8:00)ではあるが、電源システム10がカバンの中などに入れられていて周囲が暗い場合(照度センサ201がOFF)、マイクロコンピュータ200は図7の右上のモード2を実行する。このモード2では燃料電池22によりLIB20の充電を開始する当該LIB20の充電率(閾値)を例えば96%とし、充電レートは充電率が例えば80%未満では0.2CA、80%以上では定電圧(実施例では4.2V)による充電とする。実施例の0.2CAは実施例のLIB20を例えば5時間で満充電とすることができる電流に相当する。
【0045】
このように、マイクロコンピュータ200はこのモード2でLIB20の充電率が96%まで低下したとき燃料電池22から充電を開始し、100%(満充電)まで充電して終了する。これにより、LIB20は常時96%〜100%の高い充電率で維持される。また、その際の充電率が80%以上では定電圧で充電を行い、80%未満まで下がってしまった領域では充電レートを0.2CA(即ち、充電のための電流を低)としてLIB20を比較的ゆっくり(低い充電電流で前述した急速充電よりも緩やかに充電を行うこと)と充電する。
【0046】
即ち、昼間の時間帯でも電源システム10がカバンの中などに仕舞われていて周囲が暗い場合には、頻繁に電力が取り出される可能性は低いので、マイクロコンピュータ200は燃料電池22の発電によりLIB20の充電率を常に高く維持しながらも、比較的低い電流にてLIB20を充電する。このように昼間(活動時間帯)であってもLIB20から電力が取り出される頻度が低い状況(携帯電話が使用されず、充電を必要としない状況)では、LIB20の充電率を高く維持するものの、燃料電池22からLIB20に充電する際の充電レートを低く、即ち、充電する際の電流を低くすることで、燃料電池22の発電効率を高くし(高効率発電)、燃料の消費を抑制する。これが図8中に「昼間で暗い場合」で示された状態である。
【0047】
(4−3)モード3
次に、夜間の時間帯(PM8:00〜AM6:00)ではあるが、使用者が仕事をしていて電源システム10の周囲が室内照明などによって明るい場合(照度センサ201がON)、マイクロコンピュータ200は図7の左下のモード3を実行する。このモード3では燃料電池22によりLIB20の充電を開始する当該LIB20の充電率(閾値)を例えば46%まで下げ、充電レートは充電率が例えば80%未満では1CA、80%以上では定電圧(実施例では4.2V)による充電とする。
【0048】
このように、マイクロコンピュータ200はこのモード3でLIB20の充電率が46%に低下するまで充電を開始せず、46%まで低下したら燃料電池22から充電を開始し、100%(満充電)まで充電して終了する。これにより、LIB20は殆ど低い充電率で維持されるようになる。また、その際の充電率が80%以上では定電圧で充電を行い、80%未満まで下がってしまった領域では充電レートを1CA(即ち、充電のための電流を高)としてLIB20を比較的を急速に充電する。
【0049】
即ち、夜間の時間帯ではLIB20の充電率を低く維持して、LIB20が高い充電率の状態で充放電される状況を回避し、LIB20の劣化を抑制する。しかしながら、夜間の時間帯であっても周囲が明るく、使用者が活動している場合には、比較的頻繁に電力が取り出される(携帯電話が使用されて充電が必要となる)可能性が高いので、マイクロコンピュータ200はLIB20の充電率が80%未満まで低下している状態では燃料電池22によりLIB20を急速に充電し、携帯電話が接続された場合にも使用者の要求に支障を来さないようにする。
【0050】
(4−4)モード4
次に、夜間の時間帯(PM8:00〜AM6:00)であって、且つ、周囲が暗い場合(照度センサ201がOFF)、マイクロコンピュータ200は図7の右下のモード4を実行する。このモード4では燃料電池22によりLIB20の充電を開始する当該LIB20の充電率(閾値)を例えば46%に下げ、充電レートは充電率が例えば80%未満では0.2CA、80%以上では定電圧(実施例では4.2V)による充電とする。
【0051】
このように、マイクロコンピュータ200はこのモード4でLIB20の充電率が46%に低下するまで充電を開始せず、46%まで低下したら燃料電池22から充電を開始し、100%(満充電)まで充電して終了する。これにより、LIB20は殆ど低い充電率で維持されるようになる。また、その際の充電率が80%以上では定電圧で充電を行い、80%未満まで下がった領域でも充電レートを0.2CA(即ち、充電のための電流値を低)としてLIB20を比較的をゆっくりと充電する。
【0052】
即ち、夜間の時間帯では同様にLIB20の充電率を低く維持して、LIB20が高い充電率の状態で充放電される状況を回避し、LIB20の劣化を抑制する。また、燃料電池22からは比較的低い電流にてLIB20を充電する。このように夜間であって、且つ、活動していない状況では、LIB20から電力が取り出される頻度が低い(携帯電話が使用されず、充電の必要性が低い)ので、LIB20の充電率を低く維持し、且つ、燃料電池22からLIB20に充電する際の充電レートも低く、即ち、充電する際の電流を低くして、燃料電池22の発電効率を高くし、燃料の消費を抑制する。これが図8中に「夜間に充電開始する充電率46%」で示された状態である。
【0053】
(5)照度のみによる充電制御
尚、(4)で説明した充電制御では、電源システム10の周囲の明るさと時間帯の組み合わせから四つのモードを選択して実行するようにしたが、タッチパネル202による入力操作により、時間帯による制御をOFFにし、照度センサ201のON−OFFによる明るさのみでモードを変更する制御をマイクロコンピュータ200に行わせることもできる。その場合は、例えば周囲が明るい場合にはマイクロコンピュータ200は前述したモード1を実行し、周囲が暗い場合にはモード4を実行する。
【0054】
(6)時間帯のみによる充電制御
また、同様にタッチパネル202による入力操作により、照度センサ201による制御をOFFにし、時間帯のみでモードを変更する制御をマイクロコンピュータ200に行わせることもできる。その場合は、例えば昼間の時間帯ではマイクロコンピュータ200は前述したモード1を実行し、夜間の時間帯ではモード4を実行する。
【0055】
(7)マニュアルによる充電制御
更に、同様にタッチパネル202(操作手段)による入力操作により、照度センサ201による制御と時間帯による制御の双方をOFF、即ち、マイクロコンピュータ200により自動的にモードが切り換えられる状態をOFFにし、マニュアルでマイクロコンピュータ200のモードを設定する状態とすることもできる。その場合は、使用者自身の判断で、LIB20から電力が取り出される頻度が高くなる、即ち、携帯電話に充電する機会が多くなると予想される場合には、前述したモード1を実行するようにマイクロコンピュータ200に設定し、逆に携帯電話を殆ど使用しておらず、LIB20から電力が取り出される頻度が低い状況では前述したモード4を実行するように設定する。これにより、使用者が自由にモード変更ができるようになり、利便性が向上する。
【0056】
尚、上記実施例ではディスプレイ204とタッチパネル202を電源システム10に設けて情報表示と設定の切り換えを行えるようにしたが、外部負荷が携帯電話のような表示装置と入力スイッチを有するものであれば、外部負荷への電力供給ラインを利用して負荷側の表示装置に充放電回路174のマイクロコンピュータ200からの情報表示や電源システム10の動作状況の表示とマイクロコンピュータ200や電源システム10への設定入力等を負荷側において行えるようにしてもよい。
【0057】
更に、実施例では燃料電池22は一定の電力を発電するように運転され、LIB20に充電する際の電流の大きさと充電開始の閾値を充放電回路174が制御するようにしたが、それに限らず、充放電回路174のマイクロコンピュータ200と燃料電池22の燃料電池制御部36とが連携をして燃料電池22にて発電される電力を制御するようにしてもよい。その場合は、例えば前述した各モードにおける充電レートの変更の代わりに、燃料電池22における発電量を変更する(例えば、モード1とモード3では高い発電量とし、モード2とモード4では低い発電量とする)ことになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の電源システムの内部構成を示す上面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1の電源システムの燃料電池の構成を示す(a)上面図、(b)右側面図、(c)左側面図、及び、(d)B−B線断面図である。
【図4】図1の電源システムの外観を示す(a)上面図、(b)右側面図、及び、(c)左側面図である。
【図5】図1の電源システムの回路構成を示す図である。
【図6】図5の回路構成における充放電回路の機能ブロック図である。
【図7】図6の充放電回路のマイクロコンピュータが行う制御のマトリックスを示す図である。
【図8】図7による制御におけるLIBの充電率の推移を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10 電源システム
20 リチウムイオン電池(LIB)
22 燃料電池
30 燃料電池モジュール
176 充放電回路
200 マイクロコンピュータ
201 照度センサ
202 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤との電気化学反応により発電する燃料電池と、充放電可能な二次電池とを備え、前記燃料電池により前記二次電池を充電し、該二次電池から電力を取り出す電源システムであって、
前記燃料電池にて発電された電力を用いて前記二次電池を充電する充電制御手段を備え、該充電制御手段は、前記二次電池から電力が取り出される頻度に応じて、前記燃料電池により前記二次電池を充電するモードを切り換える機能を有することを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記充電制御手段が切り換えるモードは、前記二次電池を急速に充電可能なモードと、当該モードよりも前記燃料電池を高効率で発電させて前記二次電池を充電可能なモードであることを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記充電制御手段は、前記モード切換において前記二次電池を充電する際の電流を切り換えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記充電制御手段は、前記モード切換において前記二次電池の充電率を切り換えて維持することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電源システム。
【請求項5】
前記充電制御手段は、前記二次電池から電力が取り出される頻度に応じてモードを切り換えるための操作手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電源システム。
【請求項6】
前記充電制御手段は周囲の明るさを検出する照度検出手段を備え、前記二次電池から電力が取り出される頻度と周囲の明るさとの対応関係に基づいて前記モードを切り換えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電源システム。
【請求項7】
前記充電制御手段は時限手段を備え、前記二次電池から電力が取り出される頻度と時間帯との対応関係に基づいて前記モードを切り換えることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−10344(P2008−10344A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181207(P2006−181207)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】