説明

電源システム

【課題】系統電源に連系して用いられる燃料電池システムを、系統電源の停電時において、自立運転できるようにし、かつ、急峻な負荷にも対応できるようにする。
【解決手段】系統電源が停電となった状態で燃料電池システム12を始動させるために必要な電力を供給するとともに、負荷の急峻な変動に対応できるようにする自立運転支援装置16を設ける。自立運転支援装置16は、電圧制御型のインバータ32と、インバータ32に対して供給される直流電力を蓄える蓄電装置33と、燃料電池システム12が発生する交流電力のうちの余った電力を消費する負荷調整器34と、燃料電池システム12から取り込んだ交流電力を直流電力に変換して蓄電装置33に供給する充電用コンバータ35と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池などの分散型発電装置の運用技術に関し、特に、系統電源の停止時などにおける分散型発電装置の自立運転を支援する自立運転支援装置と、そのような自立運転支援装置を備える電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力消費家(需要家)の場所において、分散型発電装置(以下、分散型電源と呼ぶ)として燃料電池などを配備し、燃料電池からの電力と電気事業者の系統電源(商用電源)からの電力とを組み合わせてその電力消費家における電力消費を賄うようにした分散型の電源システムが注目を集めている。この場合、分散型電源が発生する直流電力は交流電力に変換され、系統電源の交流電力に重畳させて電力消費家の宅内の負荷に配電されることになる。このため、直流電力を交流電力に変換するためのインバータを用い、系統電源に対して燃料電池を連系させるようにしている。インバータからは、周波数や電圧が系統電源からの電力のそれらに適合した交流電力が出力する。なお、系統電源が停電となったときには、系統電源の配電網側での安全を確保するために、分散型電源の動作を停止させるとともに、分散型電源を系統電源から電気的に切り離す(解列する)ことが定められている。
【0003】
ところで、分散型電源として用いられる燃料電池は、その動作原理や構造上の特徴から、負荷の急激な変動に対応することができない。燃料電池は負荷の需要入力に対して出力調整が単独では難しい電源である。例えばある一定の出力電力で燃料電池が運転され、燃料電池から電力を供給される負荷も燃料電池の出力に見合う電力を消費しているとして、その負荷が急激に消費電力を増大させようとしても、燃料電池の出力電力をそのような急激な変化率で上昇させることはできない。もちろん、燃料電池がその定格出力で動作している場合には、それ以上の電力を燃料電池から得ることはできない。負荷における消費電力が急減したとしても、燃料電池の出力電力をそれほど急激には低下させることはできない。負荷の消費電力が急減した場合には、燃料電池の出力と消費電力との差に相当する電力を別途消費するようにしないと、過電圧や燃料電池における温度上昇などの問題が生じうる。燃料電池の安定した動作のためには、出力電力をある値以下にすることはできない。また、燃料電池などの分散型電源における発生電力量あたりの発電コストは、分散型電源をその定格出力で運転する場合が一番安い。
【0004】
そこで、燃料電池などの分散型電源を系統電源に連系させて使用する場合には、ある長さの時間にわたって負荷側の消費電力がその値を下回ることがないという値を定格出力とするように分散型電源を構成し、分散型電源の出力と消費電力との差の部分、すなわち大きな変動が見込まれるについては系統電源で賄うようにするのが一般的である。夜間や休日など、消費電力が極端に低下すると考えられる時間帯については、分散型電源の動作を停止させ、系統電源だけで消費電力を賄うようにする。
【0005】
分散型電源は、系統電源からは自立した電源として動作させることができるはずのものであるから、災害発生時などにおいて系統電源が途絶した場合の非常用電源として、あるいは系統電源が得られない場所での電源として使用でき、近年、分散型電源を用いた災害時などの停電に対応する自立運転型システムが、多くの分野で普及しつつある。通常時には系統電源に連系している分散型電源を非常用電源などとして利用する場合には、系統電源の停電を検知したときに前述のように分散型電源は系統電源から解列するとともに動作が停止するから、その後、非常時に電力を供給すべき負荷のみに電力が供給されるように配電線または配電盤における接続替えを行い、分散型電源を再起動させ、それらの負荷に対して電力を供給することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分散型電源、特に燃料電池を自立運転させる場合には、急峻な負荷の変動に対応できるようにすることが必要である。また、燃料電池の起動には、燃料電池を所定の温度まで昇温させ、また燃料電池に燃料を供給するポンプを動作させるためなどに、発電を開始する前の燃料電池に対して電力を供給する必要がある。また、系統電源に連系する分散型電源は、一般に、系統電源の交流電力の周波数や位相を基準として交流電力を発生するように構成されているので、系統電源からの交流電力が途絶すると、周波数や位相が適切な交流電力を発生することができない。したがって、燃料電池などからなり系統電源に連系する分散型電源が存在するということだけでは、系統電源の停電時などに系統電源から独立させてその分散型電源を自立させて運転させることは難しい。
【0007】
そこで、急峻な負荷の変動に対応できるとともに、燃料電池など起動時に電力を必要とする分散型電源に対応した、分散型電源の自立運転を支援できるシステムが望まれている。特に、系統電源に連系する既存の分散型電源に対し、その分散型電源の装置自体には手を入れることなく、系統電源の停電時にその分散型電源を自立運転させることができるシステムが望まれている。
【0008】
なお、系統に連系している場合には分散型電源からは単相三線式の交流電力が供給されればよいが、自立運転時には分散型電源から三相三線式の負荷に電力を供給したい、という場合もある。
【0009】
本発明の目的は、系統電源の停電時などにおいて、燃料電池などの分散型電源を自立運転させることができる自立運転支援装置を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、燃料電池などの分散型電源を備え、系統電源の停電時などにおいてその分散型電源を自立運転させることができる電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の自立運転支援装置は、通常時には系統電源の周波数に同期した交流電力を出力する電源装置を自立運転させるための自立運転支援装置であって、電源装置を起動させ及び/または前記電源装置の負荷変動を平準化させる予備電源と、余剰電力を消費して電源装置の運転を安定化させる負荷調整器と、を有する。
【0012】
本発明の電源システムは、通常時には系統電源の周波数に同期した交流電力を出力する電源装置と、系統電源の停電時に電源装置を起動させ及び/または電源装置の負荷変動を平準化させる予備電源と、系統電源の停電時に余剰電力を消費して前記電源装置の運転を安定化させる負荷調整器と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上説明したように構成したので、本発明によれば、分散型電源システムそのものを大掛かりに改造する必要なく、系統が停電した場合においても、負荷変動に対応できる自立電源システムを実現することができる。また、分散型電源に燃料電池を用いる場合において、起動時の電力を供給することが可能である。さらに系統連系を行う前の分散型電源の運転試験装置としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の一形態の自立運転支援装置を含む電源システム全体の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】自立運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】系統電源が停止から燃料電池の自立運転、系統電源の復帰までの処理を示すフローチャートである。
【図4】負荷の消費電力の変動と燃料電池システムの出力電力と蓄電装置の充放電との関係を示すグラフである。
【図5】自立運転支援装置を含む電源システムの一例の詳細な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の一形態の自立運転支援装置を含む電源システム全体の基本的な構成を示すブロック図である。この電源システムは、分散型電源として系統電源(商用電源)11に連系する燃料電池システム12を有し、通常時には、燃料電池システム12からの電力と系統電源11からの電力とを重畳して負荷13に供給するとともに、系統電源11の停電時には、燃料電池12を自立運転させて負荷13に電力を供給できるように構成されたものである。系統電源11からは一般に単相三線式あるいは三相三線式で交流電力が供給されている。
【0017】
燃料電池システム12は、燃料電池本体として直流電力を発生する燃料電池スタック21と、燃料電池スタック21からの直流電力を系統電源に連系した交流電力に変換するパワーコンディショナ22とを備えており、パワーコンディショナ22の出力がこの燃料電池システム12の出力となる。パワーコンディショナ22は、直流/交流変換のためなどのインバータ回路のほかに、系統電源11側の停電を検出して燃料電池システム12を解列するための回路などを備えている。分電盤14が設けられており、分電盤14は、切り離しスイッチ15を介して系統電源11に接続するとともに、燃料電池システム12と負荷13が接続しており、系統電源11及び燃料電池システム12からの交流電力を負荷13に供給する。分電盤14と燃料電池システム12とを接続する配電線に対して、燃料電池システム12の自立運転を支援するための、後述する自立運転支援装置16が接続している。分電盤14内には、系統電源11の停電時に燃料電池システム12を解列するための解列スイッチ17も設けられている。この電源システムでは、系統電源11の停電が検知された場合には、切り離しスイッチ15及び解列スイッチ17がいったん遮断状態となる。その後、燃料電池システム12を自立運転モードで再起動させた場合には、切り離しスイッチ15を遮断状態としたまま解列スイッチ17を導通状態とし、燃料電池システム12からの交流電力のみを負荷13に供給できるようにする。
【0018】
自立運転支援装置16は、系統電源が停電となった状態で燃料電池システム12を始動させるために必要な電力を燃料電池システム12に供給するとともに、燃料電池システム12が自立運転しているときに負荷の急峻な変動に対応できるようにするためのものである。
【0019】
自立運転支援装置16は、燃料電池システム12と分電盤14との間の配電線に対する接続点31と、この接続点31に対して出力が接続した電圧制御型のインバータ32と、インバータ32に対して供給される直流電力を蓄える蓄電装置33と、接続点31に接続し、燃料電池システム12が発生する交流電力のうちの余った電力を消費する負荷調整器34と、接続点31に接続し接続点31から取り込んだ交流電力を直流電力に変換して充電のために蓄電装置33に供給する充電用コンバータ35と、を備えている。蓄電装置33とインバータ32との接続点36に対し充電用コンバータ35の出力が接続している。また、蓄電装置33からの直流電力だけでは燃料電池システム12の起動に必要な電力を賄えない場合や負荷13での消費電力の急増に対応できない場合には、接続点36に対して太陽光発電装置やエンジン発電機などの補助電源装置37を接続するようにしてもよい。
【0020】
燃料電池システム12は、「背景技術」の欄でも述べたように、負荷の消費電力の急激な変化に対応できないものであるとともに、起動に電力を要するものである。そこで自立運転支援装置16では、燃料電池システム12の自立運転時に、負荷13の発生する消費電力に比べて燃料電池システム12の発生する電力が余るときにはその余った電力を蓄電装置33に蓄電し、燃料電池システム12の発生する電力が負荷の消費電力に比べて不足する場合に、蓄電装置33に蓄えられた直流電力でその不足分を補うようにしている。また、系統電源が正常に動作している場合において、接続点31から取り込んだ交流電力を充電用コンバータ35によって直流に変換することにより、蓄電装置33に直流電力を蓄えることができる。したがって、系統電源11の停電が発生した後に燃料電池システム12を再起動する際に必要な電力として、蓄電装置33に蓄積されている直流電力を用いることができ、なお不足する場合には、補助電源装置37からの電力を追加して用いればよい。
【0021】
本実施形態において、蓄電装置33は、外部から供給された電力を蓄積することができるとともに、その蓄積した電力を放出する機能を有するものであり、変動する負荷に応じて出力電流を変化させることができるものである。このような蓄電設備33は、燃料電池システム12では到底対応できないような急激な負荷変動にも対応できるようにするためのものである。蓄電装置33としては、例えば、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池などの各種の二次電池、あるいは、電気二重層コンデンサなどの大容量のコンデンサ(キャパシタ)が使用される。ある程度緩慢な負荷変動に対応するために比較的大容量の二次電池を設けるとともに、短時間における急激な負荷変動にも対応できるように、二次電池に対して並列に電気二重層コンデンサなどを接続して蓄電装置33を構成することが好ましい。
【0022】
燃料電池が所定の定格出力電力の近傍で負荷変動なく動作させることが好ましいものであるのに対し、補助電源装置37としては、その定格出力電力よりも低い出力電力(いわゆる部分負荷状態)で動作させることに支障がなく、また、急速な負荷変動に対応できるものが使用される。そのような補助電源装置37としては、前述した太陽光発電装置(太陽電池)やエンジン発電機のほか、風力発電設備や大型の二次電池などを用いることができる。なお、燃料電池システム12の起動のみに補助電源装置37を用いる場合には、接続点36に補助電源装置37を接続するのではなく、燃料電池システム12の燃料電池スタック21のポンプやヒータに補助電源装置37を接続するようにしてもよい。
【0023】
本実施形態では、燃料電池システム12はできるだけその定格出力で運転するものとしているが、負荷13の状況によっては、蓄電装置33への蓄電に要する電力を考慮しても、燃料電池システム12が発生する交流電力のうちのある部分が消費しきれないで余ることがある。負荷調整器34は、このような余剰の電力を消費することによって、燃料電池システム12における負荷変動に伴う問題の発生を防止する。負荷調整器34としては、例えば、(電気)抵抗器を備え、余剰電力を熱に変換するものを使用できる。本実施形態では、系統電源11の動作時であれば、負荷変動分は系統電源からの電力で賄われ、消費電力が小さすぎるときには燃料電池システム12を停止するものとしているので、系統電源11の動作時には、このような負荷調整器34を接続点31に接続する必要はない。
【0024】
なお、燃料電池システム12として出力(負荷)を可変にして運転することが可能なものを使用する場合にあっては、あるいは、自立運転させるべき電源装置として最大定格内での出力変動を許容するものを使用する場合にあっては、負荷調整器34は、燃料電池システム12の出力が少なくとも負荷需要入力を超過しないように、蓄電装置33への充電量や抵抗による電力消費量を制御するとともに、電力需要に応じて燃料電池システム12に対してその出力電力値の指令値を生成してその指令値をフィードバックするようにしてもよい。具体的には、負荷変動に対して燃料電池システム12が追従可能な範囲であって、かつ、蓄電装置33の充電量を起動または調整能力を保持する所要充電量範囲に維持するように、燃料電池システム12の出力電力の指令値を生成する。
【0025】
本実施形態において、インバータ32は、単に交流電力を発生して負荷13に供給するだけの機能を有するものではない。インバータ32が発生する交流電力の電圧波形は、接続点31を介して自立運転中の燃料電池システム12にも供給され、燃料電池システム12のパワーコンディショナ22は、インバータ32からの交流電力の電圧波形に基づいて、交流電力を出力する。すなわち、インバータ32は、燃料電池システム12が発生する交流電力における周波数や位相の基準となるものである。そのため、電圧制御型のインバータ32を用いて、正確な周波数及び位相を有する交流電力を発生できるようにしている。なお、燃料電池システム12の起動後においては、燃料電池システム12が発生した電力がインバータ32に供給されることになり、これによって、正確な周波数及び位相を有する交流電力が永続的に発生することになる。また、インバータ32からの交流電力は、パワーコンディショナ22を介して燃料電池システム12の起動のための電力としても使用される。
【0026】
図2は、燃料電池システム12が単相三線式の交流電力を出力する場合における自立運転支援装置16の具体的な結線構成を示している。単相三線式であることに対応して、中性点を共有する2台のインバータ32が設けられている。
【0027】
次に、この電源システムの動作について、図3を示して説明する。系統電源11が正常に動作しているとして(ステップ101)、系統電源がダウンすなわち停電となると(ステップ102)、切り離しスイッチ15及び解列スイッチ17が遮断状態となる。その後、解列スイッチ17を導通状態とし自立運転支援装置16を動作させて燃料電池システム12を再起動させる(ステップ103)。このとき、電力不足などにより燃料電池システム12が再起動できない場合があるから、そのときは、補助電源装置37を接続して補助電源装置37からの電力によって燃料電池システム12を起動させる(ステップ104)。
【0028】
燃料電池システム12が起動すると、系統電源の停電時にも電力を供給すべき負荷(非常用負荷)のみに電力が供給が接続される防災運転モードに切り替わり(ステップ105)、非常用負荷のみに電力が供給されるように分電盤内の接続を変更し(ステップ106)、燃料電池システム12の自立運転によってこれらの非常用負荷に電力を供給する(ステップ107)。
【0029】
その後、系統電源が復帰した場合には(ステップ108)、いったん、燃料電池システム12の運転を停止し(ステップ109)、非常用負荷以外の負荷にも電力が供給されるように分電盤内の接続を元に戻し(ステップ110)、切り離しスイッチ15を導通状態として系統電源11に連系するように燃料電池システム12の運転を開始する(ステップ111)。これにより、システム全体の動作は、系統電源11の停電前の状態に戻ったことになる。
【0030】
次に、燃料電池システム12の自立運転時における負荷の消費電力の急激な変化への対応について説明する。図4は、負荷13の消費電力の変動と燃料電池システム12の出力電力と蓄電装置33の充放電との関係を示している。燃料電池システム12は、図示されるように、ほぼその定格電力Aで連続して運転される。これに対し、負荷13の消費電力Pは図示太線で示すように大きく変化するが、P<Aであるときは、その差のA−Pに相当する部分の電力は、充電用コンバータ35を介して蓄電装置33の充電に用いられる。また、P>Aであるときは、その差のP−Aの電力は、蓄電装置33からインバータ32を介して供給される交流電力によって賄われる。これにより、本実施形態では、燃料電池システム12は負荷の急激な変動にも耐えられるようになる。なお、P>Aであって蓄電装置33がほぼ満充電であるような場合には、余剰電力P−Aは、負荷調整器34によって消費されることになる。
【0031】
このように図1に示す電源システムでは、自立運転支援装置16を用いることによって、分散型電源システムである燃料電池システム12そのものを改造する必要なく、系統電源11が停電した場合においても、負荷変動に対応できる自立電源システムを実現することができる。また、系統電源が停電であっても、燃料電池システム12の起動に必要な電力を燃料電池システム12に供給することができる。このような自立運転支援装置16は、系統連系を行う前の燃料電池システム12の運転試験装置としても使用できる。
【0032】
次に、本発明の具体的な一例として、自立運転支援装置を含む電源システムの詳細な構成について説明する。図5に示す電源システムは、図1に示す電源システムと同様の構成のものであり、系統電源11から単相三線式(1φ3W)と三相三線式(3φ3W)の2種類の交流電力が供給されている。ただし、補助電源装置37として、単相三線式の交流電力を発生し、分電盤に直接接続するものが用いられている点で、図1のものと異なっている。
【0033】
負荷として、系統電源の停電時にも単相三線式の交流電力が供給されるべき負荷(重要負荷)13Aと、系統電源の停電時には電力が供給されない三相三線式の負荷13Bとが設けられている。分電盤としては、系統電源11及び各負荷13A,13Bが収容される系統分電盤14Aと系統分電盤14Aと燃料電池システム12との間に設けられる燃料電池用分電盤14Bの2つが設けられ、解列スイッチ17は燃料電池用分電盤14B内に設けられている。燃料電池システム12の燃料ポンプなどは単相の交流電力で動作するように構成されている。燃料電池システム12は、燃料電池スタック21を備えるとともに、パワーコンディショナとして、燃料電池スタック21の出力直流電力を昇圧する昇圧コンバータ22Aと、昇圧コンバータ22Aが出力する直流電力を単相三線式の電力に変換し系統電源に連系させる系統連系インバータ22Bを備えている。
【0034】
系統分電盤14Aには、充放電リレーコントロール盤40が接続している。充放電リレーコントロール盤40は、各機器の電圧、電流を監視してアナログ−デジタル変換し、数値制御、プロセス制御によって、各スイッチやリレーによって、各機器間の接続や切り離し、充放電の制御を行い、燃料電池システム12の自立運転時の起動停止シーケンス(例えば図3に示すようなシーケンス)を実行するものである。
【0035】
さらに充放電リレーコントロール盤40は、燃料電池システム12などの出力調整能力に劣る電源から電力が供給されている場合に、余剰電力が負荷調整器などで無駄に消費されていることを警告灯などの手段で利用者に報知できるものであってもよく、また、負荷である消費電力が過大になるなどの不安定事象の発生を事前に利用者に警告できるものであってもよい。さらに、電源側からの電力供給量が需要量(負荷電力)に追いつかない緊急時には、系統分電盤14Aを制御して、負荷を一部を切り離すことができるものであってもよい。
【0036】
蓄電装置33として、電気二重層コンデンサが設けられており、蓄電装置33の充電のために、燃料電池用分電盤14Bから供給される単相電力を直流に変換する整流器41と整流器41からの280〜340Vの直流電力を蓄電装置33に適した電圧の直流電力に変換するDC−DCコンバータ42を備えている。整流器41及びDC−DCコンバータ42は、図1に示すシステムにおける充電用コンバータに該当する。なお、DC−DCコンバータ42は、蓄電装置33の充電時には蓄電装置33に供給される電力を制御し、蓄電装置33の放電時には蓄電装置33からインバータ32によって交流に変換される電力を制御する充放電電流制限機能を備えている。この充放電電流制御機能は、燃料電池システム12に発生する定常的な電力と負荷の消費電力との過不足に相当する分だけが蓄電装置33に充電されあるいは蓄電装置33から取り出されるようにする機能である。
【0037】
インバータ32は、図1におけるインバータと同様に、蓄電装置33に蓄えられた直流電力を交流電力に変換するものであって、その出力は、燃料電池システム12の出力とともに、燃料電池用分電盤14Bに共通接続している。負荷調整器としては、抵抗とリアクタンスからなるLR負荷34Aと、燃料電池システム12の出力に接続し、余剰電力をLR負荷34Aに供給するAC負荷装置34Bを備えている。
【0038】
単相三線式の交流電力を発生する補助電源装置37としては、発電機からなるもの、あるいはバッテリーとインバータからなるものが用いられる。補助電源装置37がバッテリーを有する場合、このバッテリーは、前述したDC−DCコンバータ42によって充電されるようになっている。補助電源装置からの交流電力は、燃料電池用分電盤14Bに供給され、これにより、燃料電池システム12の起動時に必要な電力として、さらには、負荷13Aでの電力が増大した場合に用いられることになる。
【符号の説明】
【0039】
11 系統電源
12 燃料電池システム
13,13A,13B 負荷
14 分電盤
14A 系統分電盤
14B 燃料電池分電盤
15 切り離しスイッチ
16 自立運転支援装置
17 解列スイッチ
21 燃料電池スタック
22 パワーコンディショナ
22A 昇圧コンバータ
22B 系統連系インバータ
31,36 接続点
32 インバータ
33 蓄電装置
34 負荷調整器
34A LR負荷
34B AC負荷装置
35 充電用コンバータ
40 充放電リレーコントロール盤
41 整流器
42 DC−DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常時には系統電源の周波数に同期した交流電力を出力する電源装置を自立運転させるための自立運転支援装置であって、
前記電源装置を起動させ及び/または前記電源装置の負荷変動を平準化させる予備電源と、
余剰電力を消費して前記電源装置の運転を安定化させる負荷調整器と、
を有する自立運転支援装置。
【請求項2】
前記予備電源からの電力を所定の周波数の交流電力に変換する電圧制御型のインバータを備え、前記系統電源の停電時において前記電源装置は前記インバータの出力する交流電力に同期した交流電力を出力する、請求項1に記載の自立運転支援装置。
【請求項3】
前記予備電源は直流電力を出力する、請求項2に記載の自立運転支援装置。
【請求項4】
前記予備電源は、前記電源装置に比較して、負荷の需要入力に対する出力調整を容易に行えるものである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自立運転支援装置。
【請求項5】
前記予備電源は蓄電機能を有し、
さらに、前記負荷における消費電力と前記電源装置が発生する電力との過不足分を前記予備電源に蓄積させあるいは前記予備電源から放出させる制御を行う制御手段を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自立運転支援装置。
【請求項6】
前記予備電源は、蓄電機能を有して電源装置の負荷変動を平準化させる蓄電装置と、前記電源装置を起動するために必要な電力を発生する補助電源装置と、を含み、
前記自立運転支援装置は、さらに、前記負荷における消費電力と前記電源装置が発生する電力との過不足分を前記蓄電装置に蓄積させあるいは前記蓄電装置から放出させる制御を行う制御手段を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自立運転支援装置。
【請求項7】
前記制御手段は、負荷変動に前記電源装置が追従可能な範囲であって、かつ、前記蓄電装置の蓄電量が前記電源装置の起動または負荷調整を実施するために必要な所要充電量範囲に維持されるように、前記電源装置に対してその出力値の指令値を生成してフィードバックする、請求項6に記載の自立運転支援装置。
【請求項8】
前記予備電源は蓄電機能を有して電源装置の負荷変動を平準化させる蓄電装置を備えており、
さらに、前記予備電源と前記電圧制御型のインバータとの間の点に対して接続して前記系統電源からの電力を前記蓄電装置に供給可能なコンバータを有する、請求項3に自立運転支援装置。
【請求項9】
通常時には系統電源の周波数に同期した交流電力を出力する電源装置と、
前記系統電源の停電時に前記電源装置を起動させ及び/または前記電源装置の負荷変動を平準化させる予備電源と、
前記系統電源の停電時に余剰電力を消費して前記電源装置の運転を安定化させる負荷調整器と、
を有する電源システム。
【請求項10】
前記予備電源からの電力を所定の周波数の交流電力に変換する電圧制御型のインバータを備え、前記系統電源の停電時において前記電源装置は前記インバータの出力する交流電力に同期した交流電力を出力する、請求項8に記載の電源システム。
【請求項11】
前記電源装置は、直流電力を発生する分散型電源と、前記分散型電源からの直流電力を交流電力に変換する変換手段と、を備え、
前記変換手段は、前記系統電源の停電時には所定の周波数の交流電力を自立して出力する機能を有する、請求項9に記載の電源システム。
【請求項12】
前記予備電源は蓄電機能を有して前記分散型電源の出力に接続し、
負荷における消費電力と前記電源装置が発生する電力との過不足分を前記予備電源に蓄積させあるいは前記予備電源から放出させる制御を行う制御手段を有する、請求項11に記載の電源システム。
【請求項13】
前記制御手段は、負荷変動に前記電源装置が追従可能な範囲であって、かつ、前記予備電源の蓄電量が前記電源装置の起動または負荷調整を実施するために必要な所要充電量範囲に維持されるように、前記電源装置に対してその出力値の指令値を生成してフィードバックする、請求項12に記載の電源システム。
【請求項14】
前記電源装置が発生する余剰電力が無駄に消費されていることを警告し、及び/または、負荷消費電力が前記電源装置の定格値を超える不安定事象の発生を事前に警告する、警告手段をさらに備える、請求項9乃至13のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項15】
少なくとも前記電源装置が発生した電力を負荷に供給する経路の設けられた分電盤と、
負荷需要が過大である場合を含む緊急時に前記分電盤を制御して前記分電盤から前記負荷の一部を切り離させる負荷切り離し手段を備える、請求項9乃至14のいずれか1項に記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51879(P2013−51879A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−259894(P2012−259894)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2006−193249(P2006−193249)の分割
【原出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】