電源システム
【課題】速やかに且つ省エネルギで蓄電デバイスを暖機し、蓄電デバイスの性能低下を抑制することができる電源システムを提供することを目的とする。
【解決手段】第1の電源10と、第2の電源12と、電源を暖機する暖機装置14と、制御中心充電率を設定する制御装置15を備え、第1の電源10は第2の電源12より出力密度が高く、第2の電源12は第1の電源10よりエネルギ密度が高く、暖機装置14は、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間において、第1の電源10の暖機を開始し、制御装置15は、少なくとも暖機が開始された第1の電源10の温度に基づいて、第1の電源10の制御中心充電率を設定する車両用の電源システム16を用いる。
【解決手段】第1の電源10と、第2の電源12と、電源を暖機する暖機装置14と、制御中心充電率を設定する制御装置15を備え、第1の電源10は第2の電源12より出力密度が高く、第2の電源12は第1の電源10よりエネルギ密度が高く、暖機装置14は、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間において、第1の電源10の暖機を開始し、制御装置15は、少なくとも暖機が開始された第1の電源10の温度に基づいて、第1の電源10の制御中心充電率を設定する車両用の電源システム16を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源を暖機できる電源システム、特に車両に搭載される電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車およびハイブリッド自動車等の車両(EV)に搭載されるモータ駆動用電源として、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの開発が盛んである。
【0003】
電源システムには、高容量かつ高出力の要求から、高容量型の蓄電デバイスと高出力型の蓄電デバイスとが、電力変換回路等を介して並列に接続された電源システムがある。一般に二次電池やキャパシタ等の蓄電デバイスは、その温度が低いと容量や出力が低下する。その結果、車両の走行に必要な充放電電力が蓄電デバイスからモータに供給されず、例えば、車両の円滑な発進や加速等が妨げられることとなる。したがって、蓄電デバイスの温度が低下している等の場合には、速やかに蓄電デバイスを暖機する必要がある。
【0004】
二次電池やキャパシタ等の蓄電デバイスを暖機する方法としては、(1)二次電池に暖機用のヒータを設置する方法(例えば、特許文献1参照)、(2)二次電池に熱交換媒体を供給する方法(例えば、特許文献2参照)、(3)電池の内部発熱を利用する方法(例えば、特許文献3,4参照)、(4)吸着剤を備える吸着器を用いて、吸着剤が吸着媒体を吸着する際の吸着熱を利用する方法(例えば、特許文献5参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−230508号公報
【特許文献2】特開2008−290636号公報
【特許文献3】特開2006−121874号公報
【特許文献4】特開2008−29171号公報
【特許文献5】特開2008−305575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両に搭載される電源システムに限られるものではないが、大きな容量及び出力が要求される電源システムでは、蓄電デバイス全体の熱容量は大きく、暖機に多量の熱エネルギを必要とする。したがって、上記(1)〜(4)のいずれかの暖機方法を用いたとしても、蓄電デバイス全体を加熱するためには、多くの時間とエネルギを必要とする。
【0007】
そこで、本発明の目的は、速やかに且つ省エネルギで蓄電デバイスを暖機し、蓄電デバイスの性能低下を抑制することができる電源システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の電源と、第2の電源と、電源を暖機する暖機手段と、電源の入出力を制御する際の目標値となる制御中心充電率を設定する制御中心充電率設定手段と、を備える車両用の電源システムであって、前記第1の電源は前記第2の電源より出力密度が高く、前記第2の電源は前記第1の電源よりエネルギ密度が高く、前記暖機手段は、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間において、前記第1の電源の暖機を開始し、前記制御中心充電率設定手段は、少なくとも暖機が開始された前記第1の電源の温度に基づいて、前記第1の電源の制御中心充電率を設定する。
【0009】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記制御中心充電率設定手段は、前記第1の電源の温度が予め設定した第1設定温度未満である場合には、前記第1の電源の制御中心充電率を、前記第1の電源の入力と出力の値が等しい時の充電率である基準充電率より高い第1制御中心充電率に設定することが好ましい。
【0010】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記制御中心充電率設定手段は、前記第1の電源の温度が前記第1設定温度以上であり、前記第2の電源の温度が予め設定した第2設定温度未満である場合には、前記第1の電源の制御中心充電率を、前記第1制御中心充電率より低く、前記基準充電率より高い第2制御中心充電率に設定することが好ましい。
【0011】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記第1の電源及び前記第2の電源の電力の入出力を制御する入出力制御手段を備え、前記入出力制御手段は、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満の場合、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源の電力の入力を制御することが好ましい。
【0012】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記入出力制御手段は、前記第1の電源に入力される電力を前記第2の電源から出力させることが好ましい。
【0013】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記入出力制御手段は、前記車両からの回生電力を前記第1の電源に入力させると共に、前記車両の走行負荷より前記第2の電源から出力可能な電力が大きい場合には、前記第2の電源から出力される電力のうち前記走行負荷に対する余剰電力を前記第1の電源に入力させることが好ましい。
【0014】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記入出力制御手段は前記第1の電源の温度及び充電率に基づいて決定される入力可能電力及び前記第2の電源の温度及び充電率に基づいて決定される出力可能電力のうちの小さい方の電力を前記第2の電源から出力される電力として、前記第1の電源に入力させることが好ましい。
【0015】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記入出力制御手段は、暖機前の前記第1の電源の温度が予め規定した閾値未満であり、且つ前記車両の走行終了時において前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満の場合、前記車両の走行終了時に、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源に入力される電力を前記第2の電源から出力させることが好ましい。
【0016】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記暖機手段は、アンモニアが離脱するときに蓄熱しアンモニアが固定化されるときに放熱する化学蓄熱材を有する化学蓄熱装置であり、前記化学蓄熱装置は、電力供給により発熱する前記化学蓄熱材再生用の加熱器を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記化学蓄熱材を再生する際には、前記第1の電源から出力される電力、前記第2の電源から出力される電力、及び車両からの回生電力のうち少なくともいずれか1つが前記加熱器へ供給されることが好ましい。
【0018】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満である場合には、前記車両からの回生電力が、前記第1の電源、前記加熱器、前記第2の電源の順位で優先的に供給され、前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率以上である場合には、前記車両からの回生電力が、前記加熱器、前記第2の電源、前記第1の電源の順位で優先的に供給されることが好ましい。
【0019】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記車両からの回生電力が、前記第1の電源及び前記第2の電源の温度及び充電率に基づいて決定される入力可能電力の和より大きい場合、前記車両からの回生電力のうち前記入力可能電力の和に対する余剰電力が前記加熱器に供給されることが好ましい。
【0020】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率より高い場合には、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源の電力が前記加熱器に供給されることが好ましい。
【0021】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記車両の走行終了時に前記化学蓄熱材を再生する場合、前記第1の電源及び前記第2の電源のうち少なくともいずれか一方の電力が前記加熱器に供給されることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、第1の電源と、第2の電源と、電源を暖機する暖機手段と、電源の入出力を制御する際の目標値となる制御中心充電率を設定する制御中心充電率設定手段と、を備える電源システムであって、 前記第1の電源は前記第2の電源より出力密度が高く、前記第2の電源は前記第1の電源よりエネルギ密度が高く、前記暖機手段は、電源システムが搭載される装置の稼働前の所定期間又は稼働後の所定期間において、前記第1の電源の暖機を開始し、前記制御中心充電率設定手段は、少なくとも暖機が開始された前記第1の電源の温度に基づいて、前記第1の電源の制御中心充電率を設定する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、速やかに且つ省エネルギで蓄電デバイスを暖機し、蓄電デバイスの性能低下を抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る電源システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】化学蓄熱装置の構成の一例を示す模式図である。
【図3】化学蓄熱装置による第1の電源の暖機方法を説明するためのフロー図である。
【図4】(A)は、電源に設置される熱交換器の構成の一例を示す模式図であり、(B)は、熱交換器を電源に設置した状態を示す模式図である。
【図5】暖機前後の容量型蓄電デバイスと出力型蓄電デバイスの出力密度比を示す図である。
【図6】暖機前後の従来型電源システムと複合電源システムの電源の出力比を示す図である。
【図7】従来型電源システムと複合電源システムの電源を暖機するのに必要な熱容量比である。
【図8】本実施形態の電源システムの電源を暖機する方法の他の一例を説明するためのフロー図である。
【図9】電源の充電率(SOC)と電源の入出力との関係を示す図である。
【図10】(A)は、第1の電源の温度と制御中心充電率との関係を規定した制御マップであり、(B)は、第2の電源の温度と制御中心充電率との関係を規定した制御マップである。
【図11】第1の電源のSOCと第1の電源の充放電電力(入出力)との関係を規定したマップである。
【図12】(A)は、電源の温度推移を示す図であり、(B)は、第1の電源の制御中心充電率及び第1の電源の充電率の推移を示す図である。
【図13】化学蓄熱装置の再生処理の方法を説明するためのフロー図である。
【図14】(A)は、第1の電源が制御中心充電率未満の時の車両からの回生電力の分配例について説明するための図であり、(B)は、第1の電源が制御中心充電率以上の時に車両からの回生電力の分配例について説明するための図である。
【図15】回生電力の分配の他の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係る電源システムの構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、電源回路1は、第1の電源10、第2の電源12、暖機装置14、制御装置15を有する電源システム16と、第1のコンバータ18と、第2のコンバータ20と、インバータ22と、を備える。
【0027】
第2のコンバータ20は、入力側が第2の電源12に接続され、出力側がインバータ22に接続されている。また、第1のコンバータ18は、入力側が第1の電源10に接続され、出力側が第2のコンバータ20とインバータ22との接続ノードに接続される。
【0028】
第1及び第2のコンバータ18,20は、主に(第1及び第2の電源10,12)電源から供給された電圧を外部負荷24が駆動する電圧に昇降圧するものである。インバータ22は、主に第1及び第2のコンバータ18,20から与えられる直流電圧を交流に変換して、外部負荷24に出力するものである。なお、外部負荷24が電動車両(EV)に搭載されるモータジェネレータ24等である場合には、インバータ22はモータジェネレータ24の発電によって与えられる交流電圧を直流に変換して、第2のコンバータ20に出力し、第2のコンバータ20及び第1のコンバータ18は、インバータ22から供給された電圧を、第1の電源10及び第2の電源12を充電させるための電圧に昇降圧することも可能である。すなわち、第1の電源10と外部負荷24とは第1のコンバータ18及びインバータ22を介して双方向に電力授受が可能である。また、第2の電源12と外部負荷24とは第2のコンバータ20及びインバータ22を介して双方向に電力授受が可能である。
【0029】
第1の電源10は、第2の電源12より出力密度が高い(単位質量当たりの入出力抵抗が低い)出力型の蓄電デバイスであり、第2の電源12は、第1の電源10よりエネルギ密度が高い容量型の蓄電デバイスである。第1の電源10は、例えば、出力型のリチウムイオン二次電池又はリチウムイオンキャパシタであることが好ましい。リチウムイオン二次電池の場合、電池の内部抵抗のうち反応抵抗が占める割合が高く、反応抵抗の活性化エネルギが大きい。そのため、電池性能は電池温度の影響を受けやすい。したがって、後述するように、走行開始前後の所定期間に出力型のリチウムイオン二次電池の暖機を開始することにより、効率よく出力型のリチウムイオン二次電池の性能を発揮させることが可能となる。また、リチウムイオンキャパシタは、例えば正極にナノゲートカーボン(登録商標)を用い、負極に黒鉛系カーボンを採用した非対称型キャパシタであり、暖機後の入出力密度が現状の蓄電デバイスの中で最も高いものである。そのため、後述する走行開始前後の所定期間にリチウムイオンキャパシタの暖機を開始することにより、高性能の電源システムを提供することが可能となる。一方、第2の電源12は、例えば、容量型のリチウムイオン二次電池を用いることが好ましい。これは、エネルギ密度が非常に高いものであるため、高性能の電源システムを提供することが可能となるからである。但し、第1の電源10及び第2の電源12は上記に制限されるものではなく、鉛二次電池、ニッケル水素二次電池、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスの採用を制限するものではない。
【0030】
本実施形態の制御装置は、電源に設置される温度センサ(不図示)、電流センサ(不図示)、電圧センサ(不図示)、暖機装置14、第1のコンバータ及び第2のコンバータに電気的に接続され、主に電源の制御中心充電率を設定する機能、及び第1の電源及び第2の電源の入出力を制御する機能を有する。具体的な制御装置の動作については後述する。
【0031】
次に、本実施形態の電源システム16(複合電源システム)の暖機装置14について説明する。
【0032】
本実施形態の暖機装置14は、蓄電デバイスの中で出力密度が高くエネルギ密度の低い蓄電デバイスを選択的に暖機するものである。すなわち、暖機装置14は、第2の電源12より優先して第1の電源10の暖機を行う。なお、本実施形態の電源システム16は二つの電源に制限されるものではなく、第3の電源、第4の電源等をさらに備えるものであってもよい。この場合、本実施形態では、蓄電デバイスの中で出力密度が高くエネルギ密度の低い蓄電デバイスを選択し(例えば、第1及び第3の蓄電デバイス等)、その選択した蓄電デバイスを暖機装置14によって暖機することを制限するものではない。
【0033】
暖機装置14による具体的な暖機方法等については後述するが、本実施形態の電源システム16(実質的には電源回路1)が電動車両(EV)に搭載される場合、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間に、暖機装置14により第1の電源10の暖機を開始する。ここで、車両の走行開始前の所定期間とは、少なくともイグニッションキーがON状態になって、車両が走行開始できる状態にされた時から車両が走行するまでの間の期間である。また、車両の走行開始後の所定期間は、車両の走行が開始してから第1の電源10に対して走行に必要な出力が要求されるまでの間で適宜設定されるものである。したがって、車両が走行開始できる状態となってから車両が走行を開始するまでの間、或いは車両走行後所定期間の間に、暖機装置14を稼働させ、第1の電源10の暖機を開始する。
【0034】
また、本実施形態の電源システム16を備える電源回路1は車両に搭載される場合に限定されるものではなく、蓄電デバイスから電力を供給して稼働する全ての装置に搭載可能である。したがって、本実施形態の電源システム16を備える電源回路1が車両以外の装置に搭載される場合、暖機装置14は、電源システムが搭載される装置の稼働前の所定期間又は稼働後の所定期間に第1の電源10の暖機を開始することになる。ここで、装置の稼働前の所定期間とは、少なくとも装置の電源がON状態になって、装置が可動できる状態にされた時から装置が稼働するまでの間の期間である。また、装置の稼働後の所定期間は、装置が可動してから第1の電源10に対して装置の稼働に必要な出力が要求されるまでの間で適宜設定されるものである。以下では、電源システム16を備える電源回路1が車両に搭載された場合を例に具体的に説明する。
【0035】
暖機装置14の構成は、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間の間に、第1の電源10の暖機を開始することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、電気式ヒータや車両内の排熱を利用した熱交換器や後述する化学蓄熱装置等が挙げられる。暖機装置14としては、電源を速やかに暖機することができる点、省エネルギで電源を暖機することができる点、又は熱エネルギを長期に保存可能である点等から、化学蓄熱装置を採用することが好ましい。以下に、化学蓄熱装置(以下、化学蓄熱装置14と称する)の構成例を説明する。
【0036】
図2は、化学蓄熱装置の構成の一例を示す模式図である。図2に示すように、化学蓄熱装置14は、第1の反応器26と、第2の反応器28と、第1の反応器26と第2の反応器28とを接続するアンモニア配管30と、を備える。
【0037】
第1の反応器26は、筐体32と、筐体32に設けられた複数の熱媒体流路34と、筐体32に設けられた複数の反応室36と、各反応室36内に収納された化学蓄熱材(不図示)と、を有する。筐体32内では、反応室36と熱媒体流路34とが交互に配置されている。反応室36と熱媒体流路34とは隔壁を隔てて互いに分離されており、外部から熱媒体流路34に供給される熱媒体Aと反応室36内の化学蓄熱材との間で熱交換を行えるようになっている。なお、不図示であるが、第1の反応器26の反応室36とアンモニア配管30とは気密状態で連通されている。
【0038】
第1の反応器26の反応室36に収納される化学蓄熱材は、吸熱反応によりアンモニアが離脱するときに蓄熱し、発熱反応である配位反応(化学反応)によってアンモニアが固定化されるときに放熱する金属塩化物を含む。金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、又は遷移金属の塩化物等が挙げられる。
【0039】
アンモニア配管30にはバルブ30aが設けられており、バルブ30aの開閉によりアンモニア圧の差を調節できるようになっている。
【0040】
第2の反応器28も第1の反応器26と同様に、筐体38と、筐体38に設けられた複数の熱媒体流路40と、筐体38に設けられた複数の反応室42と、各反応室42内に収納された化学蓄熱材(不図示)と、を有する。反応室42と熱媒体流路40とは隔壁を隔てて互いに分離されており、外部から熱媒体流路40に供給される熱媒体Bと反応室42内の化学蓄熱材との間で熱交換を行えるようになっている。なお、不図示であるが、第2の反応器28の反応室42とアンモニア配管30とは気密状態で連通されている。
【0041】
第2の反応器28の反応室42に収納される化学蓄熱材は、前述した金属塩化物、又は物理吸着材(例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等)を含む。
【0042】
また、化学蓄熱装置14には、装置内にアンモニアを供給するためのアンモニア供給装置(不図示)や、装置内のガスを排気する排気装置(不図示)や、装置内のアンモニア圧を促成するための圧力測定装置(不図示)等が設置されていてもよい。
【0043】
図3は、化学蓄熱装置による第1の電源の暖機方法を説明するためのフロー図である。図2及び3を用いて、化学蓄熱装置14による第1の電源10の暖機方法について説明する。
【0044】
第1の電源10を暖機するに当たり、初期状態として、図2に示す第2の反応器28の反応室42に収納された化学蓄熱材にアンモニアを固定した状態にし、アンモニア配管30のバルブ30aを閉じておく。そして、イグニッションキーがON状態とされて、前述した走行開始前後の所定期間の間に、化学蓄熱装置14により以下の動作が開始され、第1の電源10の暖機が行われる。まず、前述した初期状態の第2の反応器28の熱媒体流路40に、エタノール等のアルコール、水、油類等の熱媒体Bが不図示の配管等から流通され(なお、図2に示す熱媒体B’は熱媒体流路40から排出された熱媒体)、また、第1の反応器26の熱媒体流路34に、エタノール等のアルコール、水又は油類等の熱媒体Aが不図示の配管等から流通される。第2の反応器28に供給される熱媒体Bは所定の温度(例えば−30℃〜10℃)に維持されている。このとき、第2の反応器28では、吸熱反応によって第2の反応器28の化学蓄熱材からアンモニアCが離脱される。そして、アンモニア配管30のバルブ30aを開くことにより、アンモニア圧の高い第2の反応器28から、相対的にアンモニア圧の低い第1の反応器26に向けてアンモニアの輸送が行われる(図3参照)。なお、アンモニアの離脱は、第2の反応器28への所定温度の熱媒体の流通を維持することにより継続的に行われる。
【0045】
第2の反応器28からアンモニア配管30を通って第1の反応器26に到達したアンモニアは、図2に示す第1の反応器26の反応室36に収納された金属塩化物を含む化学蓄熱材に、発熱反応により固定される。この発熱反応により、第1の反応器26に供給される熱媒体Aが加熱され、加熱された熱媒体A’が第1の電源10に向けて、不図示の配管等から供給(放熱)される。加熱された熱媒体A’は第1の電源10と熱交換され、第1の電源10が暖機される。但し、加熱された熱媒体A’が液体である場合には、図3に示すように、化学蓄熱装置14に蒸発器を設置して、蒸発器により熱媒体A’を蒸気にして、第1の電源10に供給することが望ましい。蒸気(凝縮潜熱)は電源を効率よく暖機する熱媒体として好適である。このようにして暖機された第1の電源10は、図3に示すようにインバータ22との間で前述したように電力の授受が行われる。
【0046】
化学蓄熱装置14から供給される熱媒体A’と電源との熱交換の一例を説明する。
【0047】
図4(A)は、電源に設置される熱交換器の構成の一例を示す模式図であり、図4(B)は、熱交換器を電源に設置した状態を示す模式図である。図4(A)に示すように、熱交換器44は、流路プレート46と、入口及び出口マニホールド48,50とを有する。流路プレート46内には熱媒体A’が通過する流路52が形成されている。入口マニホールド48は流路プレート46内の流路52の入口側と連通し、出口マニホールド50は流路プレート46内の流路52の出口側と連通している。図4(B)に示すように、流路プレート46は、第1の電源10を構成するために積層されたセル10a間に配置される。また、各流路プレート46の入口マニホールド48同士、出口マニホールド50同士は連結されている。
【0048】
前述したように、化学蓄熱装置14から加熱された熱媒体A’(蒸気の状態であってもよい)が第1の電源10に供給される。供給された熱媒体A’は、入口マニホールド48内を通り、各流路プレート46に分配される。そして、流路プレート46内の流路52を通過する。この際、流路プレート46を介して第1の電源10と加熱された熱媒体A’とが熱交換され、第1の電源10が暖機される。また、流路プレート46を通過した熱媒体A’は、出口マニホールド50を通り、系外へ排出される。
【0049】
このようにして暖機された出力型の蓄電デバイスである第1の電源10と容量型の蓄電デバイスである第2の電源12を備える電源システム16(複合電源システム)の暖機前後における出力特性について説明する。比較のため、1つの蓄電デバイスからなる電源システム(従来型電源システム)の暖機前後における出力特性についても説明する。
【0050】
図5は、暖機前後の容量型蓄電デバイスと出力型蓄電デバイスの出力密度比を示す図である。図5では、蓄電デバイスとして二次電池を例としている。暖機前の温度の低い二次電池(例えば、電池温度が−20℃〜−30℃)では、二次電池内の電解液の粘性や反応抵抗が高くなる等の理由のために、電池の内部抵抗が高くなり、二次電池本来の性能を発揮することができない。しかし、暖機後の温度の高い二次電池(例えば、電池温度が25℃)では、電解液の粘性や反応抵抗も低減するため、電池の内部抵抗も低下し、二次電池本来の性能を発揮することができる。これは、図5に示すように、容量型の二次電池及び出力型の二次電池でも同様な結果になる。また、図5では、二次電池を例にしたが、キャパシタであっても、電解液の粘性は温度に依存するため、二次電池と同様な結果になる。
【0051】
図6は、暖機前後の従来型電源システムと複合電源システムの電源の出力比を示す図である。図7は、従来型電源システムと複合電源システムの電源を暖機するのに必要な熱容量比である。図6に示すように、従来型電源システムの電源及び複合電源システムの電源(出力型蓄電システムである第1の電源10)を暖機して、電池温度を上げることにより、どちらのシステムでも車両走行に必要な出力(車両要求出力)を発揮できることがわかる。そして、この時の電源の暖機に必要な熱容量は、図7に示すように、従来型電源システムの電源に掛かる熱容量に比べて複合電源システムの電源に掛かる熱容量の方が小さくて済むことがわかる。この理由の1つは以下の通りである。
【0052】
まず、1つの蓄電デバイスからなる従来型電源システムでは、EVの走行で要求される入出力を満たすために、EVの走行に必要な電池容量よりも過剰な電池容量を有する蓄電デバイスが必要となる。一方、複合電源システムでは、入出力は第1の電源10(出力型の蓄電デバイス)で補いながら、走行に必要なエネルギを第2の電源12(容量型の蓄電デバイス)で賄うことができるため、第1及び第2の電源10,12を必要最低限の容量となるよう設計することができる。したがって、従来型電源システムでは、過剰な電池容量を満たすために容積及び重量共に大きな蓄電デバイスが必要である。しかし、複合電源システムでは、第2の電源12は必要最低限の容量を有するように設計できるため、第2の電源12の重量及び容積は、従来型電源システムの蓄電デバイスより小さくなる。更に、第1の電源10は第2の電源12の入出力を補うように設計できるため、第1の電源10の重量及び容積は、第2の電源12よりも小さくなる。したがって、従来型電源システムでは、容積の大きな蓄電デバイスを暖機する必要があるために熱容量は高くなり、また、暖機時間も長くなる。これに対し、複合電源システムの場合、図6に示すように、出力型の蓄電デバイス(第1の電源10)を暖機するだけで車両走行に必要な出力パワーを満たすことができるため、蓄電デバイスを暖機するために必要な熱容量は少なく、暖機時間も短くて済む。
【0053】
以上のように、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間の間に、暖機装置14により速やかに第1の電源10を暖機することにより、車両の走行に必要な出力を電源から安定に供給させることが可能となる。また、第1の電源10を暖機するだけでよいため、暖機に必要な熱容量は小さくて済む。したがって、暖機装置14の小型化、省エネルギ化を図ることも可能である。
【0054】
図8は、本実施形態の電源システムの電源を暖機する方法の他の一例を説明するためのフロー図である。ここでは、第1の電源10の暖機だけでなく、第2の電源12の暖機も行う。第2の電源12の暖機を行うことで、第2の電源12からの入出力が増加するため、第1の電源から出力される電力が抑えられ、第1の電源の劣化の抑制、車両の走行性能の向上が可能となる。
【0055】
まず、前述したように、イグニッションキーがON状態とされて、走行開始前後の所定期間の間に、第1の反応器26、第2の反応器28、及び蒸発器を有する化学蓄熱装置14によって、第1の電源10の暖機が開始される。第1の電源の暖機後(暖機途中又は暖機終了後)、第2の電源12の暖機が開始される。ここで、第1の電源10の暖機後に、化学蓄熱装置14によって第2の電源12の暖機を開始してもよいが、第1の電源10を暖機する化学蓄熱装置14とは別に、第2の電源12を暖機する暖機装置を設けることが好ましい。
【0056】
第1の電源10及び第2の電源12を暖機する場合には、図8に示すように、主に第1の電源10を暖機する第1の暖機装置と、主に第2の電源12を暖機する第2の暖機装置と、を備える暖機装置システムとすることが望ましい。そして、第1の暖機装置は、前述した化学蓄熱装置であり、第2の暖機装置は、車両内で発生する排熱を利用する暖機装置であることが好ましい。これにより、車両内で発生する排熱を有効に利用することができるため、効率的又は省エネルギで電源の暖機が可能になる。
【0057】
第2の暖機装置は、車両内で発生する排熱を利用して蒸気を発生する蒸気発生器、車両内で発生する排熱により加熱された熱媒体を第2の電源12に供給するファン、熱交換器等が挙げられる。車両内で発生する排熱は、例えば、エンジンやモータジェネレータ24からの排熱、インバータ22の損失熱、トランスアクスルからの排熱等が挙げられる。
【0058】
暖機装置による電源の昇温速度において、第1の電源10の昇温速度は第2の電源12の昇温速度より早く設定することが好ましい。これは、第1の電源10を速やかに昇温することにより、電源システム全体の出力を効率的に発揮させることが可能となるからである。
【0059】
次に、第1の電源及び第2の電源の電力の入出力の制御について説明する。
【0060】
図9は、電源の充電率(SOC)と電源の入出力との関係を示す図である。図9に示すように、通常、電源は充電率(SOC)が低くなるほど電源の出力(電源が供給できる電力、所謂放電電力)が低下し、充電率が高くなるほど電源の出力が向上する。逆に、電源は充電率が低くなるほど電源の入力(電源へ供給できる電力、所謂充電電力)が向上し、充電率が高くなるほど電源の入力が低下する。なお、図9に示す下限充電率及び上限充電率は、電源の性能に悪影響を与えない範囲で適宜設定されるものであり、下限充電率及び上限充電率の範囲内で電源の入出力(充電及び放電)が行われる。また、本実施形態では、第1の電源10は、電源の入出力制御(充放電制御)を行う際の中心値(目標値)となる制御中心充電率に近づくように入出力が行われる。なお、一般的に、制御中心充電率は、入力及び出力の値が等しい時の充電率(基準充電率と呼ぶ)に設定される。
【0061】
本実施形態では、第1の電源10の入出力の性能を早期に確保するため、前述した所定期間の間に暖機が開始され、第1の電源10の温度は上昇する。しかし、電源の充電率が変わらなくても、電源の温度が高くなるほど、電源の入出力の性能は向上し、電源の温度が低くなるほど、電源の入出力の性能は低下する。したがって、電源の温度に関わらず一定の制御中心充電率に基づいて、電源の入出力を制御するより、電源の温度に基づいて制御中心充電率を設定し、その設定した制御中心充電率に基づいて電源の入出力を制御した方が、電源の性能を有効に活用することができる。そこで、本実施形態では、少なくとも暖機され、温度上昇している第1の電源10の温度に基づいて、第1の電源10の制御中心充電率を設定する。ここで、前述したように、第2の電源12の暖機も開始されている場合には、第1の電源10及び第2の電源12の両方の温度に基づいて、第1の電源10の制御中心充電率を設定することが好ましい。
【0062】
図10(A)は、第1の電源の温度と制御中心充電率との関係を規定した制御マップであり、(B)は、第2の電源の温度と制御中心充電率との関係を規定した制御マップである。図10(A)に示すように、例えば、第1の電源10の温度上昇につれて制御中心充電率が減少するように規定した制御マップを制御装置15に予め記憶させておき、制御装置15は、第1の電源10に設置した温度センサの温度データを該制御マップに当てはめて、第1の電源10の制御中心充電率を決定する。また、例えば、制御装置15は、第2の電源12に設置した温度センサの温度データを図10(B)に示す制御マップに当てはめ、第1の電源10の制御中心充電率を求め、その制御中心充電率と、前述した第1の電源10の温度に基づいて決定した制御中心充電率との平均値を算出し、それを第1の電源10の制御中心充電率として設定する等でもよい。そして、この設定した制御中心充電率に基づいて、電源の入出力が行われる。また、例えば、第1の電源10及び第2の電源12と、制御中心充電率との関係を規定した制御マップを制御装置15に予め記憶させておき、制御装置15は、第1の電源10及び第2の電源12に設置した温度センサの温度データを該制御マップに当てはめて、第1の電源10の制御中心充電率を決定してもよい。
【0063】
具体的には、第1の電源10の暖機開始初期等では、まだ第1の電源10の温度が低いため、制御中心充電率は高く設定される。そして、第1の電源10は、高く設定された制御中心充電率を目標に、充電される(電力が入力される)。その結果、第1の電源10の充電率が上昇し、より高い出力を発揮することが可能となり、ひいては、第2の電源12では不足する分の出力を第1の電源10により効率的に補うことが可能となる。このように効率的に電源の出力性能を発揮させることができれば、各電源の小型化、車両の動力性能の向上等が可能となる。
【0064】
以下に、制御中心充電率の設定の他の例について説明する。
【0065】
前記所定期間に第1の電源10の暖機が開始されると(また、その後に第2の電源12の暖機が開始される場合も含む)、制御装置15は、温度センサにより、第1の電源10の温度データを逐次取得し、第1の電源10の温度が予め設定した第1設定温度未満であるか否かを判定する。第1設定温度は、第1の電源の暖機を終了させる温度等、適宜設定される温度である。
【0066】
そして、制御装置15は、第1の電源10の制御中心充電率を、第1の温度が第1設定温度未満である場合には、図9に示すように、基準充電率より高い第1制御中心充電率に設定する。或いは、第1の電源10の温度が予め設定した第1設定温度未満であり、且つ第2の電源12の温度が予め設定した設定温度(第1設定温度でもよい)未満である場合には、第1の電源10の制御中心充電率を前述した第1制御中心充電率に設定する。そして、このように設定した制御中心充電率に近づくように、第1の電源10の入出力の制御を行う。その結果、第1の電源10の温度が低くても、第1の電源10の出力を大きくすることができるため、車両の動力性能を高くすることができる。この第1制御中心充電率は、予め設定される値であるが、電池の劣化を防ぐ等の点で、基準充電率から上限充電率の間で設定されることが好ましく、出力性能を高くすること、エネルギ密度の小さい小型の電源を用いることができること等の点で、上限充電率またはその近傍に設定されることが好ましい。
【0067】
また、制御装置15は、温度センサにより、第1の電源10の温度データ及び第2の電源12の温度データを逐次取得した結果、第1の電源10の温度が第1設定温度以上となり、第2の電源12の温度が予め設定した第2設定温度未満となっている場合には、図9に示すように、第1の電源10の制御中心充電率を、基準充電率より高く、第1制御中心充電率より低い第2制御中心充電率に設定する。ここでは、第1の電源10の温度がある一定以上となって、例えば、第1の電源10の入出力の性能が十分に発揮できる状態になっている。そのため、第2制御中心充電率に基づいて、電源の入出力の制御を行うと、第1の電源10の入力も大きくなり、例えば、車両からの回生電力を効率的に、電源において回収することが可能となる。また、第2設定温度は、適宜設定される温度であり、例えば、45℃〜55℃の間で設定される。
【0068】
さらに、制御装置15は、温度センサにより、第1の電源10の温度データ及び第2の電源12の温度データを逐次取得した結果、第1の電源10の温度が第1設定温度以上となり、第2の電源12の温度が第2設定温度以上となっている場合には、図9に示すように、第1の電源10の制御中心充電率を、基準充電率以上であって、第2制御中心充電率より低い第3制御中心充電率に設定することが望ましい。ここでは、第1の電源10及び第2の電源12の温度がある一定以上となって、例えば、第1の電源10及び第2の電源12の入出力の性能が十分に発揮できる状態になっている。そのため、第3制御中心充電率に基づいて、電源の入出力の制御を行うと、より第1の電源10の入力を大きくすることができる。その結果、例えば、車両からの回生電力を効率的に、電源において回収することが可能となる。
【0069】
次に、第1の電源10及び第2の電源12の電力分配について説明する。
【0070】
本実施形態では、制御装置15により、第1のコンバータ18に指令を与えてインバータ22の電圧が制御され、第2のコンバータ20に指令を与えて第2の電源12の電流が制御される。このようにすることで、第2の電源12は後述する電力指令値にしたがって充放電電力(入出力)が制御され、また、第1の電源10は後述する外部負荷電力指令値に対して第2の電源12から供給される充放電電力(入出力)では不足する分が供給されるように制御される。以下、具体的に説明する。
【0071】
ここで、第2の電源12の電力指令値は、以下の式(1)により求められる。なお、以下全ての式において、電力、電流において正が出力側(放電側)、負が入力側(充電側)と定義する。
Pb2com = Ploadcom×kb2 (1)
Pb2comは第2の電源12の電力指令値、Ploadcomは外部負荷電力指令値、kb2は外部負荷電力に対する第2の電源12の分担率であり、第1の電源10及び第2の電源12の充電率等に基づいて0〜1の間の値が設定される。
【0072】
外部負荷電力指令値(Ploadcom)は、以下の式(2)により求められる。
Ploadcom = Tmcom×Nm+Pmiloss (2)
Tmcomはモータ(外部負荷)のトルク指令値であり、例えば、アクセル開度、車速から求められる車両駆動力から出力すべき指令値として与えられる。Nmはモータ(外部負荷)の回転数であり、例えばモータに取り付けた回転数センサから得られる。Pmilossはモータトルク(Tm),モータ回転数(Nm)に依存したインバータロスであり、例えばTm,Nmとインバータロスとの関係を予め計測したマップを用いることにより求められる。
【0073】
第2のコンバータ20は、制御装置15によって、Pb2comを第2の電源12の電圧Vb2で割ることより求められる指令電流値Ib2に、第2のコンバータ20(リアクトル)に流れる電流IL2が追従するように電流の制御が行われる。電圧Vb2は第2の電源12に設置される電圧センサにより計測される。
【0074】
第1のコンバータ18は、制御装置15によって、外部負荷であるモータの回転状態(Tm,Nm)に応じて必要となるインバータ要求電圧(Vmtag)に追従するように電圧の制御が行われる。
【0075】
第2のコンバータ20は電流制御されるため、第2の電源12の電力Pb2は上式で求められるPb2comに追従するように制御される。また、第1のコンバータ18は電圧制御されるため、第1の電源10には負荷の電力と第2の電源12の電力に応じた成り行きの電流が流れることになる。すなわち、外部負荷電力指令値(Ploadcom)から第2の電源12の電力(Pb2)を差し引いた電力を第1の電源10が供給することになる。そして、第1の電源10の電力(Pb1)は、第2の電源12の電力がPb2comに追従している場合(Pb2=Pb2com)、以下の式(3)により求められる。
Pb1 = Ploadcom−Pb2 (3)
= Ploadcom×(1−kb2)
【0076】
このように、第1の電源10及び第2の電源12の電力を分配し、充放電電力を制御する。
【0077】
また、本実施形態では、制御装置15は、第1の電源10の充電率と前述した制御中心充電率(又は第1,第2,第3制御中心充電率)とを比較し、第1の電源10の充電率が制御中心充電率より低い場合に、第1の電源10の充電率を制御中心充電率に近づけるように制御する。
【0078】
具体的には、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率より低い場合には、第2の電源12の電力を第1の電源10に供給することにより、第1の電源10の充電率を制御中心充電率に近づける。この場合、第2の電源12の電力指令値は上式(1)ではなく、次式(4)を用いて求められる。
Pb2com = Ploadcom×kb2+Pchg2to1 (4)
Pchg2to1は第1の電源10に対して供給する第2の電源12の充放電電力(入出力)である。すなわち、第2の電源12から第1の電源10に入出力される電力である。そして、第1の電源10に対して供給する第2の電源12の充放電電力(Pchg2to1)は、設定した制御中心充電率に第1の電源10の充電率が近づくように、第1の電源10の充電率に基づいて設定される。
【0079】
図11は、第1の電源のSOCと第1の電源の充放電電力(入出力)との関係を規定したマップである。例えば、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率より低い場合には、第1の電源10の充電率を図11に示すマップに当てはめて、第1の電源10の充放電電力を求める。この算出した第1の電源10の充放電電力が第1の電源10に対して供給する第2の電源12の充放電電力(Pchg2to1)である。そして、求めたPchg2to1を式(4)に当てはめれば、第2の電源12の電力指令値Pb2comを求めることができる。
【0080】
また、第2の電源12の電力指令値が求められることにより、第2の電源12の電力は、式(4)で求めたPb2comに追従するように制御される。そうすると、式(3),(4)により、第1の電源10の電力は式(5)により求められる。
Pb1 = Ploadcom−Pb2
= Pload×(1−kb2)−Pchg2to1 (5)
【0081】
以上のように、第1の電源10は、外部負荷電力Ploadに対して(1−kb2)×100(%)分を分担しつつ、第2の電源12との間でPchg2to1分の電力をやり取りし、充電率が制御される。なお、外部負荷電力は、車両の走行に必要な電力であり、以下で、車両の走行負荷と呼ぶ場合がある。
【0082】
図12(A)は、電源の温度推移を示す図であり、(B)は、第1の電源の制御中心充電率及び第1の電源の充電率の推移を示す図である。暖機開始前等、第2の電源12の温度が低い場合、第2の電源12は十分な出力を発揮することが困難であるため、車両の走行中における外部負荷電力を十分に賄えない。特に、車両の加速時には大きな外部負荷電力が必要となるため、車両の動力性能が低下する可能性がある。本実施形態では、出力密度の高い第1の電源10を早期に暖機して、第2の電源12では賄えない外部負荷電力の不足分を第1の電源10から安定して供給することが可能となる。しかし、第1の電源10は第2の電源12と比較してエネルギ密度が低いため、外部負荷電力の不足分を第1の電源10から供給し続けると、第1の電源10の充電率が低下し、安定した出力を発揮することができない虞がある。
【0083】
そこで、本実施形態のように第1の電源10の制御中心充電率を前述したように温度に基づいて適正に設定して、設定した制御中心充電率に近づくように第1の電源10を充電させることにより、安定した出力を発揮させることができる。図12に示すように、例えば、第1の電源10の暖機前や暖機初期では、第1の電源10の制御中心電圧を(上限充電率等の)高い値に設定する。そして、高い値に設定した制御中心充電率に近づくように式(4),(5)のPchg2to1を設定し、第1の電源10の充電を行う。そうすることで、第2の電源12の温度が低く、出力性能が低い状態であっても、第1の電源10からの電力補充により、走行負荷が維持されると共に、第1の電源10の充電率の低下による出力性能の低下を抑制することができる。また、第2の電源12が暖機等によって温度が上昇し出力性能が回復するまでの間、第1の電源10から出力される電力を多くすることができるため、例えば、第2の電源12の暖機時間を長く確保でき、暖機に必要な熱出力の低減が可能となる。また、図12に示すように、第1の電源10の暖機が継続され、第1の電源10の温度上昇と共に、前述したように制御中心充電率を低下させる(例えば、第1→第2→第3制御中心充電率)ことにより、第1の電源10の入力性能を拡大することができるため、例えば、回生電力を第1の電源10に供給して、電力を有効に消費させることができる。
【0084】
次に、回生電力を第1の電源10に供給する電力として、回生電力と共に、第2の電源12から出力される電力を用いる場合の実施形態について説明する。
【0085】
通常、電源は商品保護上守るべき上下限電圧、上下限電流、上下限充電率があり、それらを超えないように制御される。本実施形態では、上下限電圧、上下限電流、上下限充電率を超えないようにフィードバック制御して、第2の電源12の電力(Pb2)が、以下の式を満たすように制御される。
Win2≦Pb2≦Wout2 (6)
ここで、Win2は第2の電源12の上限電圧、下限電流、上限充電率を超えないように設定される入力可能電力である。また、Wout2は第2の電源12の下限電圧、上限電流、下限充電率を超えないように設定される出力可能電力である。Win2又はWout2は、例えば、第2の電源12を所定期間(例えば10秒)充電又は放電させ、上限電圧まで上昇または下限電圧まで低下させる時の電力として表されるが、例えば電源の充電率及び温度等に影響される。したがって、例えば、第2の電源12の充電率及び温度とその電源の入力又は出力可能電力との関係を規定したマップ等を予め制御装置15に記憶させておき、該マップに第2の電源12の温度及び充電率を当てはめることにより、第2の電源12の入力又は出力可能電力が求められる。
【0086】
一方、第1の電源10の電力(Pb1)は、外部負荷電力(Pload)が以下の式を満たす条件下で制御される。
Win1+Win2≦Pload≦Wout1+Wout2 (7)
ここで、Win1は第1の電源10の上限電圧、下限電流、上限充電率を超えないように設定される入力可能電力である。また、Wout1は第1の電源10の下限電圧、上限電流、下限充電率を超えないように設定される出力可能電力である。算出方法は第2の電源12の場合と同様である。
【0087】
そして、PloadはPb1とPb2との和であるため、式(7)は下式(8)となる。
Win1+Win2≦Pb1+Pb2≦Wout1+Wout2 (8)
【0088】
また、式(6)及び(8)から、下式(9)が成立する。
Win1≦Pb1≦Wout1 (9)
【0089】
本実施形態では、外部負荷電力(Pload、車両の走行負荷)が第2の電源12の出力可能電力(Wout2)以上の場合には、それ以上の電力を第2の電源12から供給することはできないので、不足する電力は、制御装置15が第1のコンバータ18を制御して、第1の電源10から出力されるようにする。一方、外部負荷電力(Pload)が第2の電源12の出力可能電力(Wout2)より小さい場合、第2の電源12の出力可能電力(Wout2)から外部負荷電力(Pload)を差し引いた余剰電力が存在するため、第1の電源10の充電率が制御中心充電率よりも低い場合は、制御装置15が第2のコンバータ20を制御して、その余剰電力が第1の電源10に入力されるようにすることが好ましい。また、第1の電源10に入力される電力としては、この余剰電力に加えて、車両からの回生電力を入力させることが好ましい。この回生電力を第1の電源10に優先的に入力させるためには、式(1)のkb2を零としてコンバータの制御を行う。なお、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率よりも大きい場合には、kb2を1より小さい値に設定し、第1の電源10の充電率が上限充電率を超えないように充電制御することが望ましい。このように、車両からの回生電力と共に、車両の走行負荷より第2の電源12から出力できる出力可能電力が大きい場合には、前述の余剰電力を第2の電源から第1の電源へ入力させることにより、第1の電源10は第2の電源12の出力不足分を補いながら、効率的に充電されるため、第1の電源10の充電率の低下を抑制し、ひいては車両の動力性能の低下を抑制することが可能となる。これは、特に、第2の電源12の温度が例えば所定温度に達していない低温であり、第2の電源12の出力性能が十分に発揮できない場合等において好適である。
【0090】
また、他の実施形態として、第1の電源10が設定した制御中心充電率より低い場合に、制御装置15は、第1の電源10の入力可能電力と第2の電源12の出力可能電力とを比較して(比較は絶対値での比較)、いずれか小さい方の電力を第2の電源12から出力される電力として第1の電源10に入力してもよい。これにより、第1の電源10の充電率をより早く設定した制御中心充電率に近づけることが可能となる。特に、第2の電源12の温度が低温で、出力性能が十分に発揮されない場合においては、第1の電源10を早く制御中心充電率に近づけることにより、車両の動力性能の低下をより早く抑制することが可能となる。
【0091】
また、以下のような他の実施形態も好適である。まず、温度センサにより、暖機前の第1の電源10の温度を測定する。そして、制御装置15は予め設定した閾値と第1の電源10の温度とを比較する。そして、第1の電源10の温度が閾値未満であった場合には、制御装置15は、車両の走行終了時(走行終了前又は後の所定期間)に、第1の電源10の充電率と設定した制御中心充電率とを比較する。そして、制御装置15は、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率より低い場合には、車両の走行終了時に第2の電源12から第1の電源10へ電力供給し、制御中心充電率に近づけることが好ましい。第1の電源10の温度は温度履歴であってもよい。これにより、次回の車両の走行開始時において、第1の電源10の出力性能を確実に確保できる。なお、第1の電源10の充電率制御の実施の判断としては、他に季節や天気情報等を用いてもよい。
【0092】
次に、第1の電源10の暖機に使用する化学蓄熱装置の再生処理について説明する。再生処理とは、第1の電源10を暖機するために、第1の反応器26からの放熱が継続され、第2の反応器28内のアンモニアが減少した場合や第1の電源の暖機が終了した場合等において、アンモニアを再び第2の反応器28側に集め、第2の反応器28の化学蓄熱材にアンモニアを固定させる処理である。以下、具体的に説明する。
【0093】
(再生処理)
図13は、化学蓄熱装置の再生処理の方法を説明するためのフロー図である。再生処理の例としては、第1の電源の暖機終了時、例えば、暖機により第1の電源の温度が、予め設定した第1設定温度以上の時に、実施される。
【0094】
図2に示すアンモニア配管30のバルブ30aを開いた状態で、図13に示すように、第1の反応器26に設置されたヒータにより第1の反応器26を加熱する。本実施形態では、電力供給により発熱する加熱器であれば、ヒータに制限されるものではない。ヒータへの電力は、図13に示すように、第1の電源10や第2の電源12から出力される電力、又はインバータ22(及びコンバータ)を介して供給される車両からの回生電力である。このように、第1の反応器26を加熱することによって、第1の反応器26内に固定されているアンモニアC’が吸熱反応により離脱し、アンモニア配管30を通って、第2の反応器28に輸送される。輸送されたアンモニアC’は、図2に示すように、第2の反応器28の反応室42内の化学蓄熱材に発熱反応により固定化され、初期の状態に再生される。なお、この発熱反応は、例えば、第2の反応器28の熱媒体流路40へ所定温度(例えば、−30℃〜10℃)の熱媒体Bを供給することにより維持される。このような再生処理を行うことにより、第1の電源10等の暖機を繰り返し行うことができる。
【0095】
このように、第1の電源10、第2の電源12から出力される電力、回生電力のうち少なくともいずれか1つが、ヒータに供給され、化学蓄熱材を再生することにより、例えば、車両の走行終了時点で、化学蓄熱材の再生が完了され、次の走行開始時に第1の電源の暖機を速やかに化学蓄熱装置により行うことが可能となる。
【0096】
次に、車両からの回生電力が、第1の電源10、第2の電源12、ヒータ等の加熱器等に供給される場合の実施形態について説明する。
【0097】
図14(A)は、第1の電源が制御中心充電率未満の時の車両からの回生電力の分配例について説明するための図であり、(B)は、第1の電源が制御中心充電率以上の時に車両からの回生電力の分配例について説明するための図である。
【0098】
車両の走行中等で化学蓄熱材を再生する際に、制御装置15は、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率未満の場合であるか否かを判定し、第1の電源10の充電率が制御中心充電率未満である場合には、車両からの回生電力を、図14(A)に示すように、第1の電源10に優先的に供給する。これにより、第1の電源10の充電率を速やかに制御中心充電率まで回復させることができ、車両の駆動性能等を効率的に発揮させることができる。そして、残りの回生電力のうち、例えば、第1の電源10の入力可能電力を超える分においては、制御装置15は、その回生電力を化学蓄熱装置のヒータ(加熱器)に分配する。これにより、化学蓄熱材を速やかに再生させることができる。さらに、残りの回生電力のうち、例えば、回生電力が加熱器の最大定格電力以上の電力があれば、制御装置15は、その回生電力を第2の電源12に分配する。これにより、第2の電源12の容量及び出力を高く維持することができるため、車両の燃費向上が可能となる。
【0099】
また、車両の走行中等で化学蓄熱材を再生する際に、制御装置15は、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率以上の場合には、車両からの回生電力を、図14(B)に示すように、ヒータ(再生用の加熱器)に優先的に供給する。これは、第1の電源10の充電率は制御中心充電率以上であり、第1の電源10の出力性能は確保されているため、電力分配の優先順位が低くなるためである。そして、回生電力をヒータに優先的に供給することにより、化学蓄熱材を速やかに再生させることができる。そして、残りの回生電力のうち、例えば、加熱器の最大定格電力以上の電力があれば、制御装置15は、その回生電力を第2の電源12に分配する。これにより、車両の燃費向上が可能となる。さらに、残りの回生電力のうち、例えば、第2の電源12の入力可能電力を超える場合には、その回生電力を第1の電源10に分配する。これにより、回生電力を効率的に回収し、また車両の燃費向上が可能となる。このように、第1の電源10よりも第2の電源12の方へ優先的に回生電力を分配する方が好ましい。これは、制御中心充電率が高い状態の第1の電源10は第1の電源10の入力性能が低下しているため、第2の電源12より優先して回生電力が入力されると、電源全体として瞬時に大きな入力電力を受けられなくなる虞があるからである。一方、第2の電源12は、第1の電源10よりエネルギ密度が高いため、第1の電源10より優先して回生電力が入力されても、第2の電源12の入力性能の低下を抑えることができる。
【0100】
図15は、回生電力の分配の他の例について説明するための図である。図15に示すように、第1の電源10及び第2の電源12の入力可能電力の和を超える回生電力が発生する場合がある。このような大きな回生電力は、例えば、車両が低車速で路面摩擦が低い所を走行している場合等で、タイヤがスリップしてモータ回転数が急上昇した後に再びタイヤのグリップが回復しモータが低回転に戻るような現象が短時間内で起きるようなケースや、低温時に高い減速度で回生を行う場合等において発生する。そこで、このような大きな回生電力が発生し、第1の電源10及び第2の電源12の入力可能電力の和を超える場合には、第1の電源10の入力可能電力分の回生電力を第1の電源10に入力させ、第2の電源12の入力可能電力分の回生電力を第2の電源12に入力させると共に、回生電力から第1の電源10及び第2の電源12の入力可能電力の和を差し引いた余剰電力を、化学蓄熱装置のヒータに分配することが望ましい。なお、回生電力の一部をヒータに供給する方法は特に制限されるものではないが、例えば、ヒータに接続された回生電力供給ラインにIGBT等のスイッチング素子等の制御スイッチを設けて、制御装置15による制御スイッチのON、OFFにより、ヒータに電力の供給・停止を制御する方法等が挙げられる。
【0101】
他の実施形態としては、化学蓄熱材を再生する際に、制御装置15は、第1の電源10の充電率が制御中心充電率以上であるか否かを判断し、制御中心充電率以上である場合には、例えば、前述の制御スイッチ等をONにして、第1の電源10からヒータに電力を供給する。この場合、制御装置15は、第1の電源10の充電率が制御中心充電率に近づくように第1の電源10の出力を制御する。これにより、第1の電源10の入力性能を向上させると共に、化学蓄熱材の再生も可能となる。
【0102】
また、他の実施形態としては、車両の走行時間や走行距離が短い場合には、車両の走行中に化学蓄熱材の再生が終了しない場合がある。そこで、車両の走行終了時に化学蓄熱材を再生することが好ましく、このような場合には、例えば、制御装置15により、前述の制御スイッチをON、及びコンバータを制御して、第1の電源10及び第2の電源12のうち少なくともいずれか一方から電力を供給してもよい。これにより、次の走行開始時に第1の電源10の暖機を確実に行うことができる。
【0103】
なお、再生処理の際に行う第1の反応器26の加熱は必ずしもヒータに制限されるわけではない。例えば、車両内で発生する排熱を利用する加熱装置により、第1の反応器26を加熱してもよい。なお、車両内で発生する排熱を利用する場合には、第1の反応器26にヒータを設置する必要はない。加熱装置は、車両内で発生する排熱を利用して蒸気を発生する蒸気発生器、車両内で発生する排熱により加熱された熱媒体を第1の反応器26に供給するファン、熱交換器等が挙げられる。車両内で発生する排熱は、例えば、エンジンやモータジェネレータ24からの排熱、インバータ22の損失熱、トランスアクスルからの排熱等が挙げられる。
【符号の説明】
【0104】
1 電源回路、10 第1の電源、10a セル、12 第2の電源、14 暖機装置又は化学蓄熱装置、15 制御装置、16 電源システム、18 第1のコンバータ、20 第2のコンバータ、22 インバータ、24 外部負荷又はモータジェネレータ、26 第1の反応器、28 第2の反応器、30 アンモニア配管、30a バルブ、32,38 筐体、34,40 熱媒体流路、36,42 反応室、44 熱交換器、46 流路プレート、48 入口マニホールド、50 出口マニホールド、52 流路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源を暖機できる電源システム、特に車両に搭載される電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車およびハイブリッド自動車等の車両(EV)に搭載されるモータ駆動用電源として、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの開発が盛んである。
【0003】
電源システムには、高容量かつ高出力の要求から、高容量型の蓄電デバイスと高出力型の蓄電デバイスとが、電力変換回路等を介して並列に接続された電源システムがある。一般に二次電池やキャパシタ等の蓄電デバイスは、その温度が低いと容量や出力が低下する。その結果、車両の走行に必要な充放電電力が蓄電デバイスからモータに供給されず、例えば、車両の円滑な発進や加速等が妨げられることとなる。したがって、蓄電デバイスの温度が低下している等の場合には、速やかに蓄電デバイスを暖機する必要がある。
【0004】
二次電池やキャパシタ等の蓄電デバイスを暖機する方法としては、(1)二次電池に暖機用のヒータを設置する方法(例えば、特許文献1参照)、(2)二次電池に熱交換媒体を供給する方法(例えば、特許文献2参照)、(3)電池の内部発熱を利用する方法(例えば、特許文献3,4参照)、(4)吸着剤を備える吸着器を用いて、吸着剤が吸着媒体を吸着する際の吸着熱を利用する方法(例えば、特許文献5参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−230508号公報
【特許文献2】特開2008−290636号公報
【特許文献3】特開2006−121874号公報
【特許文献4】特開2008−29171号公報
【特許文献5】特開2008−305575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両に搭載される電源システムに限られるものではないが、大きな容量及び出力が要求される電源システムでは、蓄電デバイス全体の熱容量は大きく、暖機に多量の熱エネルギを必要とする。したがって、上記(1)〜(4)のいずれかの暖機方法を用いたとしても、蓄電デバイス全体を加熱するためには、多くの時間とエネルギを必要とする。
【0007】
そこで、本発明の目的は、速やかに且つ省エネルギで蓄電デバイスを暖機し、蓄電デバイスの性能低下を抑制することができる電源システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の電源と、第2の電源と、電源を暖機する暖機手段と、電源の入出力を制御する際の目標値となる制御中心充電率を設定する制御中心充電率設定手段と、を備える車両用の電源システムであって、前記第1の電源は前記第2の電源より出力密度が高く、前記第2の電源は前記第1の電源よりエネルギ密度が高く、前記暖機手段は、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間において、前記第1の電源の暖機を開始し、前記制御中心充電率設定手段は、少なくとも暖機が開始された前記第1の電源の温度に基づいて、前記第1の電源の制御中心充電率を設定する。
【0009】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記制御中心充電率設定手段は、前記第1の電源の温度が予め設定した第1設定温度未満である場合には、前記第1の電源の制御中心充電率を、前記第1の電源の入力と出力の値が等しい時の充電率である基準充電率より高い第1制御中心充電率に設定することが好ましい。
【0010】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記制御中心充電率設定手段は、前記第1の電源の温度が前記第1設定温度以上であり、前記第2の電源の温度が予め設定した第2設定温度未満である場合には、前記第1の電源の制御中心充電率を、前記第1制御中心充電率より低く、前記基準充電率より高い第2制御中心充電率に設定することが好ましい。
【0011】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記第1の電源及び前記第2の電源の電力の入出力を制御する入出力制御手段を備え、前記入出力制御手段は、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満の場合、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源の電力の入力を制御することが好ましい。
【0012】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記入出力制御手段は、前記第1の電源に入力される電力を前記第2の電源から出力させることが好ましい。
【0013】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記入出力制御手段は、前記車両からの回生電力を前記第1の電源に入力させると共に、前記車両の走行負荷より前記第2の電源から出力可能な電力が大きい場合には、前記第2の電源から出力される電力のうち前記走行負荷に対する余剰電力を前記第1の電源に入力させることが好ましい。
【0014】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記入出力制御手段は前記第1の電源の温度及び充電率に基づいて決定される入力可能電力及び前記第2の電源の温度及び充電率に基づいて決定される出力可能電力のうちの小さい方の電力を前記第2の電源から出力される電力として、前記第1の電源に入力させることが好ましい。
【0015】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記入出力制御手段は、暖機前の前記第1の電源の温度が予め規定した閾値未満であり、且つ前記車両の走行終了時において前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満の場合、前記車両の走行終了時に、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源に入力される電力を前記第2の電源から出力させることが好ましい。
【0016】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記暖機手段は、アンモニアが離脱するときに蓄熱しアンモニアが固定化されるときに放熱する化学蓄熱材を有する化学蓄熱装置であり、前記化学蓄熱装置は、電力供給により発熱する前記化学蓄熱材再生用の加熱器を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記化学蓄熱材を再生する際には、前記第1の電源から出力される電力、前記第2の電源から出力される電力、及び車両からの回生電力のうち少なくともいずれか1つが前記加熱器へ供給されることが好ましい。
【0018】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満である場合には、前記車両からの回生電力が、前記第1の電源、前記加熱器、前記第2の電源の順位で優先的に供給され、前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率以上である場合には、前記車両からの回生電力が、前記加熱器、前記第2の電源、前記第1の電源の順位で優先的に供給されることが好ましい。
【0019】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記車両からの回生電力が、前記第1の電源及び前記第2の電源の温度及び充電率に基づいて決定される入力可能電力の和より大きい場合、前記車両からの回生電力のうち前記入力可能電力の和に対する余剰電力が前記加熱器に供給されることが好ましい。
【0020】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率より高い場合には、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源の電力が前記加熱器に供給されることが好ましい。
【0021】
また、前記車両用の電源システムにおいて、前記車両の走行終了時に前記化学蓄熱材を再生する場合、前記第1の電源及び前記第2の電源のうち少なくともいずれか一方の電力が前記加熱器に供給されることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、第1の電源と、第2の電源と、電源を暖機する暖機手段と、電源の入出力を制御する際の目標値となる制御中心充電率を設定する制御中心充電率設定手段と、を備える電源システムであって、 前記第1の電源は前記第2の電源より出力密度が高く、前記第2の電源は前記第1の電源よりエネルギ密度が高く、前記暖機手段は、電源システムが搭載される装置の稼働前の所定期間又は稼働後の所定期間において、前記第1の電源の暖機を開始し、前記制御中心充電率設定手段は、少なくとも暖機が開始された前記第1の電源の温度に基づいて、前記第1の電源の制御中心充電率を設定する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、速やかに且つ省エネルギで蓄電デバイスを暖機し、蓄電デバイスの性能低下を抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る電源システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】化学蓄熱装置の構成の一例を示す模式図である。
【図3】化学蓄熱装置による第1の電源の暖機方法を説明するためのフロー図である。
【図4】(A)は、電源に設置される熱交換器の構成の一例を示す模式図であり、(B)は、熱交換器を電源に設置した状態を示す模式図である。
【図5】暖機前後の容量型蓄電デバイスと出力型蓄電デバイスの出力密度比を示す図である。
【図6】暖機前後の従来型電源システムと複合電源システムの電源の出力比を示す図である。
【図7】従来型電源システムと複合電源システムの電源を暖機するのに必要な熱容量比である。
【図8】本実施形態の電源システムの電源を暖機する方法の他の一例を説明するためのフロー図である。
【図9】電源の充電率(SOC)と電源の入出力との関係を示す図である。
【図10】(A)は、第1の電源の温度と制御中心充電率との関係を規定した制御マップであり、(B)は、第2の電源の温度と制御中心充電率との関係を規定した制御マップである。
【図11】第1の電源のSOCと第1の電源の充放電電力(入出力)との関係を規定したマップである。
【図12】(A)は、電源の温度推移を示す図であり、(B)は、第1の電源の制御中心充電率及び第1の電源の充電率の推移を示す図である。
【図13】化学蓄熱装置の再生処理の方法を説明するためのフロー図である。
【図14】(A)は、第1の電源が制御中心充電率未満の時の車両からの回生電力の分配例について説明するための図であり、(B)は、第1の電源が制御中心充電率以上の時に車両からの回生電力の分配例について説明するための図である。
【図15】回生電力の分配の他の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本実施形態に係る電源システムの構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、電源回路1は、第1の電源10、第2の電源12、暖機装置14、制御装置15を有する電源システム16と、第1のコンバータ18と、第2のコンバータ20と、インバータ22と、を備える。
【0027】
第2のコンバータ20は、入力側が第2の電源12に接続され、出力側がインバータ22に接続されている。また、第1のコンバータ18は、入力側が第1の電源10に接続され、出力側が第2のコンバータ20とインバータ22との接続ノードに接続される。
【0028】
第1及び第2のコンバータ18,20は、主に(第1及び第2の電源10,12)電源から供給された電圧を外部負荷24が駆動する電圧に昇降圧するものである。インバータ22は、主に第1及び第2のコンバータ18,20から与えられる直流電圧を交流に変換して、外部負荷24に出力するものである。なお、外部負荷24が電動車両(EV)に搭載されるモータジェネレータ24等である場合には、インバータ22はモータジェネレータ24の発電によって与えられる交流電圧を直流に変換して、第2のコンバータ20に出力し、第2のコンバータ20及び第1のコンバータ18は、インバータ22から供給された電圧を、第1の電源10及び第2の電源12を充電させるための電圧に昇降圧することも可能である。すなわち、第1の電源10と外部負荷24とは第1のコンバータ18及びインバータ22を介して双方向に電力授受が可能である。また、第2の電源12と外部負荷24とは第2のコンバータ20及びインバータ22を介して双方向に電力授受が可能である。
【0029】
第1の電源10は、第2の電源12より出力密度が高い(単位質量当たりの入出力抵抗が低い)出力型の蓄電デバイスであり、第2の電源12は、第1の電源10よりエネルギ密度が高い容量型の蓄電デバイスである。第1の電源10は、例えば、出力型のリチウムイオン二次電池又はリチウムイオンキャパシタであることが好ましい。リチウムイオン二次電池の場合、電池の内部抵抗のうち反応抵抗が占める割合が高く、反応抵抗の活性化エネルギが大きい。そのため、電池性能は電池温度の影響を受けやすい。したがって、後述するように、走行開始前後の所定期間に出力型のリチウムイオン二次電池の暖機を開始することにより、効率よく出力型のリチウムイオン二次電池の性能を発揮させることが可能となる。また、リチウムイオンキャパシタは、例えば正極にナノゲートカーボン(登録商標)を用い、負極に黒鉛系カーボンを採用した非対称型キャパシタであり、暖機後の入出力密度が現状の蓄電デバイスの中で最も高いものである。そのため、後述する走行開始前後の所定期間にリチウムイオンキャパシタの暖機を開始することにより、高性能の電源システムを提供することが可能となる。一方、第2の電源12は、例えば、容量型のリチウムイオン二次電池を用いることが好ましい。これは、エネルギ密度が非常に高いものであるため、高性能の電源システムを提供することが可能となるからである。但し、第1の電源10及び第2の電源12は上記に制限されるものではなく、鉛二次電池、ニッケル水素二次電池、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスの採用を制限するものではない。
【0030】
本実施形態の制御装置は、電源に設置される温度センサ(不図示)、電流センサ(不図示)、電圧センサ(不図示)、暖機装置14、第1のコンバータ及び第2のコンバータに電気的に接続され、主に電源の制御中心充電率を設定する機能、及び第1の電源及び第2の電源の入出力を制御する機能を有する。具体的な制御装置の動作については後述する。
【0031】
次に、本実施形態の電源システム16(複合電源システム)の暖機装置14について説明する。
【0032】
本実施形態の暖機装置14は、蓄電デバイスの中で出力密度が高くエネルギ密度の低い蓄電デバイスを選択的に暖機するものである。すなわち、暖機装置14は、第2の電源12より優先して第1の電源10の暖機を行う。なお、本実施形態の電源システム16は二つの電源に制限されるものではなく、第3の電源、第4の電源等をさらに備えるものであってもよい。この場合、本実施形態では、蓄電デバイスの中で出力密度が高くエネルギ密度の低い蓄電デバイスを選択し(例えば、第1及び第3の蓄電デバイス等)、その選択した蓄電デバイスを暖機装置14によって暖機することを制限するものではない。
【0033】
暖機装置14による具体的な暖機方法等については後述するが、本実施形態の電源システム16(実質的には電源回路1)が電動車両(EV)に搭載される場合、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間に、暖機装置14により第1の電源10の暖機を開始する。ここで、車両の走行開始前の所定期間とは、少なくともイグニッションキーがON状態になって、車両が走行開始できる状態にされた時から車両が走行するまでの間の期間である。また、車両の走行開始後の所定期間は、車両の走行が開始してから第1の電源10に対して走行に必要な出力が要求されるまでの間で適宜設定されるものである。したがって、車両が走行開始できる状態となってから車両が走行を開始するまでの間、或いは車両走行後所定期間の間に、暖機装置14を稼働させ、第1の電源10の暖機を開始する。
【0034】
また、本実施形態の電源システム16を備える電源回路1は車両に搭載される場合に限定されるものではなく、蓄電デバイスから電力を供給して稼働する全ての装置に搭載可能である。したがって、本実施形態の電源システム16を備える電源回路1が車両以外の装置に搭載される場合、暖機装置14は、電源システムが搭載される装置の稼働前の所定期間又は稼働後の所定期間に第1の電源10の暖機を開始することになる。ここで、装置の稼働前の所定期間とは、少なくとも装置の電源がON状態になって、装置が可動できる状態にされた時から装置が稼働するまでの間の期間である。また、装置の稼働後の所定期間は、装置が可動してから第1の電源10に対して装置の稼働に必要な出力が要求されるまでの間で適宜設定されるものである。以下では、電源システム16を備える電源回路1が車両に搭載された場合を例に具体的に説明する。
【0035】
暖機装置14の構成は、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間の間に、第1の電源10の暖機を開始することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、電気式ヒータや車両内の排熱を利用した熱交換器や後述する化学蓄熱装置等が挙げられる。暖機装置14としては、電源を速やかに暖機することができる点、省エネルギで電源を暖機することができる点、又は熱エネルギを長期に保存可能である点等から、化学蓄熱装置を採用することが好ましい。以下に、化学蓄熱装置(以下、化学蓄熱装置14と称する)の構成例を説明する。
【0036】
図2は、化学蓄熱装置の構成の一例を示す模式図である。図2に示すように、化学蓄熱装置14は、第1の反応器26と、第2の反応器28と、第1の反応器26と第2の反応器28とを接続するアンモニア配管30と、を備える。
【0037】
第1の反応器26は、筐体32と、筐体32に設けられた複数の熱媒体流路34と、筐体32に設けられた複数の反応室36と、各反応室36内に収納された化学蓄熱材(不図示)と、を有する。筐体32内では、反応室36と熱媒体流路34とが交互に配置されている。反応室36と熱媒体流路34とは隔壁を隔てて互いに分離されており、外部から熱媒体流路34に供給される熱媒体Aと反応室36内の化学蓄熱材との間で熱交換を行えるようになっている。なお、不図示であるが、第1の反応器26の反応室36とアンモニア配管30とは気密状態で連通されている。
【0038】
第1の反応器26の反応室36に収納される化学蓄熱材は、吸熱反応によりアンモニアが離脱するときに蓄熱し、発熱反応である配位反応(化学反応)によってアンモニアが固定化されるときに放熱する金属塩化物を含む。金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、又は遷移金属の塩化物等が挙げられる。
【0039】
アンモニア配管30にはバルブ30aが設けられており、バルブ30aの開閉によりアンモニア圧の差を調節できるようになっている。
【0040】
第2の反応器28も第1の反応器26と同様に、筐体38と、筐体38に設けられた複数の熱媒体流路40と、筐体38に設けられた複数の反応室42と、各反応室42内に収納された化学蓄熱材(不図示)と、を有する。反応室42と熱媒体流路40とは隔壁を隔てて互いに分離されており、外部から熱媒体流路40に供給される熱媒体Bと反応室42内の化学蓄熱材との間で熱交換を行えるようになっている。なお、不図示であるが、第2の反応器28の反応室42とアンモニア配管30とは気密状態で連通されている。
【0041】
第2の反応器28の反応室42に収納される化学蓄熱材は、前述した金属塩化物、又は物理吸着材(例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等)を含む。
【0042】
また、化学蓄熱装置14には、装置内にアンモニアを供給するためのアンモニア供給装置(不図示)や、装置内のガスを排気する排気装置(不図示)や、装置内のアンモニア圧を促成するための圧力測定装置(不図示)等が設置されていてもよい。
【0043】
図3は、化学蓄熱装置による第1の電源の暖機方法を説明するためのフロー図である。図2及び3を用いて、化学蓄熱装置14による第1の電源10の暖機方法について説明する。
【0044】
第1の電源10を暖機するに当たり、初期状態として、図2に示す第2の反応器28の反応室42に収納された化学蓄熱材にアンモニアを固定した状態にし、アンモニア配管30のバルブ30aを閉じておく。そして、イグニッションキーがON状態とされて、前述した走行開始前後の所定期間の間に、化学蓄熱装置14により以下の動作が開始され、第1の電源10の暖機が行われる。まず、前述した初期状態の第2の反応器28の熱媒体流路40に、エタノール等のアルコール、水、油類等の熱媒体Bが不図示の配管等から流通され(なお、図2に示す熱媒体B’は熱媒体流路40から排出された熱媒体)、また、第1の反応器26の熱媒体流路34に、エタノール等のアルコール、水又は油類等の熱媒体Aが不図示の配管等から流通される。第2の反応器28に供給される熱媒体Bは所定の温度(例えば−30℃〜10℃)に維持されている。このとき、第2の反応器28では、吸熱反応によって第2の反応器28の化学蓄熱材からアンモニアCが離脱される。そして、アンモニア配管30のバルブ30aを開くことにより、アンモニア圧の高い第2の反応器28から、相対的にアンモニア圧の低い第1の反応器26に向けてアンモニアの輸送が行われる(図3参照)。なお、アンモニアの離脱は、第2の反応器28への所定温度の熱媒体の流通を維持することにより継続的に行われる。
【0045】
第2の反応器28からアンモニア配管30を通って第1の反応器26に到達したアンモニアは、図2に示す第1の反応器26の反応室36に収納された金属塩化物を含む化学蓄熱材に、発熱反応により固定される。この発熱反応により、第1の反応器26に供給される熱媒体Aが加熱され、加熱された熱媒体A’が第1の電源10に向けて、不図示の配管等から供給(放熱)される。加熱された熱媒体A’は第1の電源10と熱交換され、第1の電源10が暖機される。但し、加熱された熱媒体A’が液体である場合には、図3に示すように、化学蓄熱装置14に蒸発器を設置して、蒸発器により熱媒体A’を蒸気にして、第1の電源10に供給することが望ましい。蒸気(凝縮潜熱)は電源を効率よく暖機する熱媒体として好適である。このようにして暖機された第1の電源10は、図3に示すようにインバータ22との間で前述したように電力の授受が行われる。
【0046】
化学蓄熱装置14から供給される熱媒体A’と電源との熱交換の一例を説明する。
【0047】
図4(A)は、電源に設置される熱交換器の構成の一例を示す模式図であり、図4(B)は、熱交換器を電源に設置した状態を示す模式図である。図4(A)に示すように、熱交換器44は、流路プレート46と、入口及び出口マニホールド48,50とを有する。流路プレート46内には熱媒体A’が通過する流路52が形成されている。入口マニホールド48は流路プレート46内の流路52の入口側と連通し、出口マニホールド50は流路プレート46内の流路52の出口側と連通している。図4(B)に示すように、流路プレート46は、第1の電源10を構成するために積層されたセル10a間に配置される。また、各流路プレート46の入口マニホールド48同士、出口マニホールド50同士は連結されている。
【0048】
前述したように、化学蓄熱装置14から加熱された熱媒体A’(蒸気の状態であってもよい)が第1の電源10に供給される。供給された熱媒体A’は、入口マニホールド48内を通り、各流路プレート46に分配される。そして、流路プレート46内の流路52を通過する。この際、流路プレート46を介して第1の電源10と加熱された熱媒体A’とが熱交換され、第1の電源10が暖機される。また、流路プレート46を通過した熱媒体A’は、出口マニホールド50を通り、系外へ排出される。
【0049】
このようにして暖機された出力型の蓄電デバイスである第1の電源10と容量型の蓄電デバイスである第2の電源12を備える電源システム16(複合電源システム)の暖機前後における出力特性について説明する。比較のため、1つの蓄電デバイスからなる電源システム(従来型電源システム)の暖機前後における出力特性についても説明する。
【0050】
図5は、暖機前後の容量型蓄電デバイスと出力型蓄電デバイスの出力密度比を示す図である。図5では、蓄電デバイスとして二次電池を例としている。暖機前の温度の低い二次電池(例えば、電池温度が−20℃〜−30℃)では、二次電池内の電解液の粘性や反応抵抗が高くなる等の理由のために、電池の内部抵抗が高くなり、二次電池本来の性能を発揮することができない。しかし、暖機後の温度の高い二次電池(例えば、電池温度が25℃)では、電解液の粘性や反応抵抗も低減するため、電池の内部抵抗も低下し、二次電池本来の性能を発揮することができる。これは、図5に示すように、容量型の二次電池及び出力型の二次電池でも同様な結果になる。また、図5では、二次電池を例にしたが、キャパシタであっても、電解液の粘性は温度に依存するため、二次電池と同様な結果になる。
【0051】
図6は、暖機前後の従来型電源システムと複合電源システムの電源の出力比を示す図である。図7は、従来型電源システムと複合電源システムの電源を暖機するのに必要な熱容量比である。図6に示すように、従来型電源システムの電源及び複合電源システムの電源(出力型蓄電システムである第1の電源10)を暖機して、電池温度を上げることにより、どちらのシステムでも車両走行に必要な出力(車両要求出力)を発揮できることがわかる。そして、この時の電源の暖機に必要な熱容量は、図7に示すように、従来型電源システムの電源に掛かる熱容量に比べて複合電源システムの電源に掛かる熱容量の方が小さくて済むことがわかる。この理由の1つは以下の通りである。
【0052】
まず、1つの蓄電デバイスからなる従来型電源システムでは、EVの走行で要求される入出力を満たすために、EVの走行に必要な電池容量よりも過剰な電池容量を有する蓄電デバイスが必要となる。一方、複合電源システムでは、入出力は第1の電源10(出力型の蓄電デバイス)で補いながら、走行に必要なエネルギを第2の電源12(容量型の蓄電デバイス)で賄うことができるため、第1及び第2の電源10,12を必要最低限の容量となるよう設計することができる。したがって、従来型電源システムでは、過剰な電池容量を満たすために容積及び重量共に大きな蓄電デバイスが必要である。しかし、複合電源システムでは、第2の電源12は必要最低限の容量を有するように設計できるため、第2の電源12の重量及び容積は、従来型電源システムの蓄電デバイスより小さくなる。更に、第1の電源10は第2の電源12の入出力を補うように設計できるため、第1の電源10の重量及び容積は、第2の電源12よりも小さくなる。したがって、従来型電源システムでは、容積の大きな蓄電デバイスを暖機する必要があるために熱容量は高くなり、また、暖機時間も長くなる。これに対し、複合電源システムの場合、図6に示すように、出力型の蓄電デバイス(第1の電源10)を暖機するだけで車両走行に必要な出力パワーを満たすことができるため、蓄電デバイスを暖機するために必要な熱容量は少なく、暖機時間も短くて済む。
【0053】
以上のように、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間の間に、暖機装置14により速やかに第1の電源10を暖機することにより、車両の走行に必要な出力を電源から安定に供給させることが可能となる。また、第1の電源10を暖機するだけでよいため、暖機に必要な熱容量は小さくて済む。したがって、暖機装置14の小型化、省エネルギ化を図ることも可能である。
【0054】
図8は、本実施形態の電源システムの電源を暖機する方法の他の一例を説明するためのフロー図である。ここでは、第1の電源10の暖機だけでなく、第2の電源12の暖機も行う。第2の電源12の暖機を行うことで、第2の電源12からの入出力が増加するため、第1の電源から出力される電力が抑えられ、第1の電源の劣化の抑制、車両の走行性能の向上が可能となる。
【0055】
まず、前述したように、イグニッションキーがON状態とされて、走行開始前後の所定期間の間に、第1の反応器26、第2の反応器28、及び蒸発器を有する化学蓄熱装置14によって、第1の電源10の暖機が開始される。第1の電源の暖機後(暖機途中又は暖機終了後)、第2の電源12の暖機が開始される。ここで、第1の電源10の暖機後に、化学蓄熱装置14によって第2の電源12の暖機を開始してもよいが、第1の電源10を暖機する化学蓄熱装置14とは別に、第2の電源12を暖機する暖機装置を設けることが好ましい。
【0056】
第1の電源10及び第2の電源12を暖機する場合には、図8に示すように、主に第1の電源10を暖機する第1の暖機装置と、主に第2の電源12を暖機する第2の暖機装置と、を備える暖機装置システムとすることが望ましい。そして、第1の暖機装置は、前述した化学蓄熱装置であり、第2の暖機装置は、車両内で発生する排熱を利用する暖機装置であることが好ましい。これにより、車両内で発生する排熱を有効に利用することができるため、効率的又は省エネルギで電源の暖機が可能になる。
【0057】
第2の暖機装置は、車両内で発生する排熱を利用して蒸気を発生する蒸気発生器、車両内で発生する排熱により加熱された熱媒体を第2の電源12に供給するファン、熱交換器等が挙げられる。車両内で発生する排熱は、例えば、エンジンやモータジェネレータ24からの排熱、インバータ22の損失熱、トランスアクスルからの排熱等が挙げられる。
【0058】
暖機装置による電源の昇温速度において、第1の電源10の昇温速度は第2の電源12の昇温速度より早く設定することが好ましい。これは、第1の電源10を速やかに昇温することにより、電源システム全体の出力を効率的に発揮させることが可能となるからである。
【0059】
次に、第1の電源及び第2の電源の電力の入出力の制御について説明する。
【0060】
図9は、電源の充電率(SOC)と電源の入出力との関係を示す図である。図9に示すように、通常、電源は充電率(SOC)が低くなるほど電源の出力(電源が供給できる電力、所謂放電電力)が低下し、充電率が高くなるほど電源の出力が向上する。逆に、電源は充電率が低くなるほど電源の入力(電源へ供給できる電力、所謂充電電力)が向上し、充電率が高くなるほど電源の入力が低下する。なお、図9に示す下限充電率及び上限充電率は、電源の性能に悪影響を与えない範囲で適宜設定されるものであり、下限充電率及び上限充電率の範囲内で電源の入出力(充電及び放電)が行われる。また、本実施形態では、第1の電源10は、電源の入出力制御(充放電制御)を行う際の中心値(目標値)となる制御中心充電率に近づくように入出力が行われる。なお、一般的に、制御中心充電率は、入力及び出力の値が等しい時の充電率(基準充電率と呼ぶ)に設定される。
【0061】
本実施形態では、第1の電源10の入出力の性能を早期に確保するため、前述した所定期間の間に暖機が開始され、第1の電源10の温度は上昇する。しかし、電源の充電率が変わらなくても、電源の温度が高くなるほど、電源の入出力の性能は向上し、電源の温度が低くなるほど、電源の入出力の性能は低下する。したがって、電源の温度に関わらず一定の制御中心充電率に基づいて、電源の入出力を制御するより、電源の温度に基づいて制御中心充電率を設定し、その設定した制御中心充電率に基づいて電源の入出力を制御した方が、電源の性能を有効に活用することができる。そこで、本実施形態では、少なくとも暖機され、温度上昇している第1の電源10の温度に基づいて、第1の電源10の制御中心充電率を設定する。ここで、前述したように、第2の電源12の暖機も開始されている場合には、第1の電源10及び第2の電源12の両方の温度に基づいて、第1の電源10の制御中心充電率を設定することが好ましい。
【0062】
図10(A)は、第1の電源の温度と制御中心充電率との関係を規定した制御マップであり、(B)は、第2の電源の温度と制御中心充電率との関係を規定した制御マップである。図10(A)に示すように、例えば、第1の電源10の温度上昇につれて制御中心充電率が減少するように規定した制御マップを制御装置15に予め記憶させておき、制御装置15は、第1の電源10に設置した温度センサの温度データを該制御マップに当てはめて、第1の電源10の制御中心充電率を決定する。また、例えば、制御装置15は、第2の電源12に設置した温度センサの温度データを図10(B)に示す制御マップに当てはめ、第1の電源10の制御中心充電率を求め、その制御中心充電率と、前述した第1の電源10の温度に基づいて決定した制御中心充電率との平均値を算出し、それを第1の電源10の制御中心充電率として設定する等でもよい。そして、この設定した制御中心充電率に基づいて、電源の入出力が行われる。また、例えば、第1の電源10及び第2の電源12と、制御中心充電率との関係を規定した制御マップを制御装置15に予め記憶させておき、制御装置15は、第1の電源10及び第2の電源12に設置した温度センサの温度データを該制御マップに当てはめて、第1の電源10の制御中心充電率を決定してもよい。
【0063】
具体的には、第1の電源10の暖機開始初期等では、まだ第1の電源10の温度が低いため、制御中心充電率は高く設定される。そして、第1の電源10は、高く設定された制御中心充電率を目標に、充電される(電力が入力される)。その結果、第1の電源10の充電率が上昇し、より高い出力を発揮することが可能となり、ひいては、第2の電源12では不足する分の出力を第1の電源10により効率的に補うことが可能となる。このように効率的に電源の出力性能を発揮させることができれば、各電源の小型化、車両の動力性能の向上等が可能となる。
【0064】
以下に、制御中心充電率の設定の他の例について説明する。
【0065】
前記所定期間に第1の電源10の暖機が開始されると(また、その後に第2の電源12の暖機が開始される場合も含む)、制御装置15は、温度センサにより、第1の電源10の温度データを逐次取得し、第1の電源10の温度が予め設定した第1設定温度未満であるか否かを判定する。第1設定温度は、第1の電源の暖機を終了させる温度等、適宜設定される温度である。
【0066】
そして、制御装置15は、第1の電源10の制御中心充電率を、第1の温度が第1設定温度未満である場合には、図9に示すように、基準充電率より高い第1制御中心充電率に設定する。或いは、第1の電源10の温度が予め設定した第1設定温度未満であり、且つ第2の電源12の温度が予め設定した設定温度(第1設定温度でもよい)未満である場合には、第1の電源10の制御中心充電率を前述した第1制御中心充電率に設定する。そして、このように設定した制御中心充電率に近づくように、第1の電源10の入出力の制御を行う。その結果、第1の電源10の温度が低くても、第1の電源10の出力を大きくすることができるため、車両の動力性能を高くすることができる。この第1制御中心充電率は、予め設定される値であるが、電池の劣化を防ぐ等の点で、基準充電率から上限充電率の間で設定されることが好ましく、出力性能を高くすること、エネルギ密度の小さい小型の電源を用いることができること等の点で、上限充電率またはその近傍に設定されることが好ましい。
【0067】
また、制御装置15は、温度センサにより、第1の電源10の温度データ及び第2の電源12の温度データを逐次取得した結果、第1の電源10の温度が第1設定温度以上となり、第2の電源12の温度が予め設定した第2設定温度未満となっている場合には、図9に示すように、第1の電源10の制御中心充電率を、基準充電率より高く、第1制御中心充電率より低い第2制御中心充電率に設定する。ここでは、第1の電源10の温度がある一定以上となって、例えば、第1の電源10の入出力の性能が十分に発揮できる状態になっている。そのため、第2制御中心充電率に基づいて、電源の入出力の制御を行うと、第1の電源10の入力も大きくなり、例えば、車両からの回生電力を効率的に、電源において回収することが可能となる。また、第2設定温度は、適宜設定される温度であり、例えば、45℃〜55℃の間で設定される。
【0068】
さらに、制御装置15は、温度センサにより、第1の電源10の温度データ及び第2の電源12の温度データを逐次取得した結果、第1の電源10の温度が第1設定温度以上となり、第2の電源12の温度が第2設定温度以上となっている場合には、図9に示すように、第1の電源10の制御中心充電率を、基準充電率以上であって、第2制御中心充電率より低い第3制御中心充電率に設定することが望ましい。ここでは、第1の電源10及び第2の電源12の温度がある一定以上となって、例えば、第1の電源10及び第2の電源12の入出力の性能が十分に発揮できる状態になっている。そのため、第3制御中心充電率に基づいて、電源の入出力の制御を行うと、より第1の電源10の入力を大きくすることができる。その結果、例えば、車両からの回生電力を効率的に、電源において回収することが可能となる。
【0069】
次に、第1の電源10及び第2の電源12の電力分配について説明する。
【0070】
本実施形態では、制御装置15により、第1のコンバータ18に指令を与えてインバータ22の電圧が制御され、第2のコンバータ20に指令を与えて第2の電源12の電流が制御される。このようにすることで、第2の電源12は後述する電力指令値にしたがって充放電電力(入出力)が制御され、また、第1の電源10は後述する外部負荷電力指令値に対して第2の電源12から供給される充放電電力(入出力)では不足する分が供給されるように制御される。以下、具体的に説明する。
【0071】
ここで、第2の電源12の電力指令値は、以下の式(1)により求められる。なお、以下全ての式において、電力、電流において正が出力側(放電側)、負が入力側(充電側)と定義する。
Pb2com = Ploadcom×kb2 (1)
Pb2comは第2の電源12の電力指令値、Ploadcomは外部負荷電力指令値、kb2は外部負荷電力に対する第2の電源12の分担率であり、第1の電源10及び第2の電源12の充電率等に基づいて0〜1の間の値が設定される。
【0072】
外部負荷電力指令値(Ploadcom)は、以下の式(2)により求められる。
Ploadcom = Tmcom×Nm+Pmiloss (2)
Tmcomはモータ(外部負荷)のトルク指令値であり、例えば、アクセル開度、車速から求められる車両駆動力から出力すべき指令値として与えられる。Nmはモータ(外部負荷)の回転数であり、例えばモータに取り付けた回転数センサから得られる。Pmilossはモータトルク(Tm),モータ回転数(Nm)に依存したインバータロスであり、例えばTm,Nmとインバータロスとの関係を予め計測したマップを用いることにより求められる。
【0073】
第2のコンバータ20は、制御装置15によって、Pb2comを第2の電源12の電圧Vb2で割ることより求められる指令電流値Ib2に、第2のコンバータ20(リアクトル)に流れる電流IL2が追従するように電流の制御が行われる。電圧Vb2は第2の電源12に設置される電圧センサにより計測される。
【0074】
第1のコンバータ18は、制御装置15によって、外部負荷であるモータの回転状態(Tm,Nm)に応じて必要となるインバータ要求電圧(Vmtag)に追従するように電圧の制御が行われる。
【0075】
第2のコンバータ20は電流制御されるため、第2の電源12の電力Pb2は上式で求められるPb2comに追従するように制御される。また、第1のコンバータ18は電圧制御されるため、第1の電源10には負荷の電力と第2の電源12の電力に応じた成り行きの電流が流れることになる。すなわち、外部負荷電力指令値(Ploadcom)から第2の電源12の電力(Pb2)を差し引いた電力を第1の電源10が供給することになる。そして、第1の電源10の電力(Pb1)は、第2の電源12の電力がPb2comに追従している場合(Pb2=Pb2com)、以下の式(3)により求められる。
Pb1 = Ploadcom−Pb2 (3)
= Ploadcom×(1−kb2)
【0076】
このように、第1の電源10及び第2の電源12の電力を分配し、充放電電力を制御する。
【0077】
また、本実施形態では、制御装置15は、第1の電源10の充電率と前述した制御中心充電率(又は第1,第2,第3制御中心充電率)とを比較し、第1の電源10の充電率が制御中心充電率より低い場合に、第1の電源10の充電率を制御中心充電率に近づけるように制御する。
【0078】
具体的には、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率より低い場合には、第2の電源12の電力を第1の電源10に供給することにより、第1の電源10の充電率を制御中心充電率に近づける。この場合、第2の電源12の電力指令値は上式(1)ではなく、次式(4)を用いて求められる。
Pb2com = Ploadcom×kb2+Pchg2to1 (4)
Pchg2to1は第1の電源10に対して供給する第2の電源12の充放電電力(入出力)である。すなわち、第2の電源12から第1の電源10に入出力される電力である。そして、第1の電源10に対して供給する第2の電源12の充放電電力(Pchg2to1)は、設定した制御中心充電率に第1の電源10の充電率が近づくように、第1の電源10の充電率に基づいて設定される。
【0079】
図11は、第1の電源のSOCと第1の電源の充放電電力(入出力)との関係を規定したマップである。例えば、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率より低い場合には、第1の電源10の充電率を図11に示すマップに当てはめて、第1の電源10の充放電電力を求める。この算出した第1の電源10の充放電電力が第1の電源10に対して供給する第2の電源12の充放電電力(Pchg2to1)である。そして、求めたPchg2to1を式(4)に当てはめれば、第2の電源12の電力指令値Pb2comを求めることができる。
【0080】
また、第2の電源12の電力指令値が求められることにより、第2の電源12の電力は、式(4)で求めたPb2comに追従するように制御される。そうすると、式(3),(4)により、第1の電源10の電力は式(5)により求められる。
Pb1 = Ploadcom−Pb2
= Pload×(1−kb2)−Pchg2to1 (5)
【0081】
以上のように、第1の電源10は、外部負荷電力Ploadに対して(1−kb2)×100(%)分を分担しつつ、第2の電源12との間でPchg2to1分の電力をやり取りし、充電率が制御される。なお、外部負荷電力は、車両の走行に必要な電力であり、以下で、車両の走行負荷と呼ぶ場合がある。
【0082】
図12(A)は、電源の温度推移を示す図であり、(B)は、第1の電源の制御中心充電率及び第1の電源の充電率の推移を示す図である。暖機開始前等、第2の電源12の温度が低い場合、第2の電源12は十分な出力を発揮することが困難であるため、車両の走行中における外部負荷電力を十分に賄えない。特に、車両の加速時には大きな外部負荷電力が必要となるため、車両の動力性能が低下する可能性がある。本実施形態では、出力密度の高い第1の電源10を早期に暖機して、第2の電源12では賄えない外部負荷電力の不足分を第1の電源10から安定して供給することが可能となる。しかし、第1の電源10は第2の電源12と比較してエネルギ密度が低いため、外部負荷電力の不足分を第1の電源10から供給し続けると、第1の電源10の充電率が低下し、安定した出力を発揮することができない虞がある。
【0083】
そこで、本実施形態のように第1の電源10の制御中心充電率を前述したように温度に基づいて適正に設定して、設定した制御中心充電率に近づくように第1の電源10を充電させることにより、安定した出力を発揮させることができる。図12に示すように、例えば、第1の電源10の暖機前や暖機初期では、第1の電源10の制御中心電圧を(上限充電率等の)高い値に設定する。そして、高い値に設定した制御中心充電率に近づくように式(4),(5)のPchg2to1を設定し、第1の電源10の充電を行う。そうすることで、第2の電源12の温度が低く、出力性能が低い状態であっても、第1の電源10からの電力補充により、走行負荷が維持されると共に、第1の電源10の充電率の低下による出力性能の低下を抑制することができる。また、第2の電源12が暖機等によって温度が上昇し出力性能が回復するまでの間、第1の電源10から出力される電力を多くすることができるため、例えば、第2の電源12の暖機時間を長く確保でき、暖機に必要な熱出力の低減が可能となる。また、図12に示すように、第1の電源10の暖機が継続され、第1の電源10の温度上昇と共に、前述したように制御中心充電率を低下させる(例えば、第1→第2→第3制御中心充電率)ことにより、第1の電源10の入力性能を拡大することができるため、例えば、回生電力を第1の電源10に供給して、電力を有効に消費させることができる。
【0084】
次に、回生電力を第1の電源10に供給する電力として、回生電力と共に、第2の電源12から出力される電力を用いる場合の実施形態について説明する。
【0085】
通常、電源は商品保護上守るべき上下限電圧、上下限電流、上下限充電率があり、それらを超えないように制御される。本実施形態では、上下限電圧、上下限電流、上下限充電率を超えないようにフィードバック制御して、第2の電源12の電力(Pb2)が、以下の式を満たすように制御される。
Win2≦Pb2≦Wout2 (6)
ここで、Win2は第2の電源12の上限電圧、下限電流、上限充電率を超えないように設定される入力可能電力である。また、Wout2は第2の電源12の下限電圧、上限電流、下限充電率を超えないように設定される出力可能電力である。Win2又はWout2は、例えば、第2の電源12を所定期間(例えば10秒)充電又は放電させ、上限電圧まで上昇または下限電圧まで低下させる時の電力として表されるが、例えば電源の充電率及び温度等に影響される。したがって、例えば、第2の電源12の充電率及び温度とその電源の入力又は出力可能電力との関係を規定したマップ等を予め制御装置15に記憶させておき、該マップに第2の電源12の温度及び充電率を当てはめることにより、第2の電源12の入力又は出力可能電力が求められる。
【0086】
一方、第1の電源10の電力(Pb1)は、外部負荷電力(Pload)が以下の式を満たす条件下で制御される。
Win1+Win2≦Pload≦Wout1+Wout2 (7)
ここで、Win1は第1の電源10の上限電圧、下限電流、上限充電率を超えないように設定される入力可能電力である。また、Wout1は第1の電源10の下限電圧、上限電流、下限充電率を超えないように設定される出力可能電力である。算出方法は第2の電源12の場合と同様である。
【0087】
そして、PloadはPb1とPb2との和であるため、式(7)は下式(8)となる。
Win1+Win2≦Pb1+Pb2≦Wout1+Wout2 (8)
【0088】
また、式(6)及び(8)から、下式(9)が成立する。
Win1≦Pb1≦Wout1 (9)
【0089】
本実施形態では、外部負荷電力(Pload、車両の走行負荷)が第2の電源12の出力可能電力(Wout2)以上の場合には、それ以上の電力を第2の電源12から供給することはできないので、不足する電力は、制御装置15が第1のコンバータ18を制御して、第1の電源10から出力されるようにする。一方、外部負荷電力(Pload)が第2の電源12の出力可能電力(Wout2)より小さい場合、第2の電源12の出力可能電力(Wout2)から外部負荷電力(Pload)を差し引いた余剰電力が存在するため、第1の電源10の充電率が制御中心充電率よりも低い場合は、制御装置15が第2のコンバータ20を制御して、その余剰電力が第1の電源10に入力されるようにすることが好ましい。また、第1の電源10に入力される電力としては、この余剰電力に加えて、車両からの回生電力を入力させることが好ましい。この回生電力を第1の電源10に優先的に入力させるためには、式(1)のkb2を零としてコンバータの制御を行う。なお、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率よりも大きい場合には、kb2を1より小さい値に設定し、第1の電源10の充電率が上限充電率を超えないように充電制御することが望ましい。このように、車両からの回生電力と共に、車両の走行負荷より第2の電源12から出力できる出力可能電力が大きい場合には、前述の余剰電力を第2の電源から第1の電源へ入力させることにより、第1の電源10は第2の電源12の出力不足分を補いながら、効率的に充電されるため、第1の電源10の充電率の低下を抑制し、ひいては車両の動力性能の低下を抑制することが可能となる。これは、特に、第2の電源12の温度が例えば所定温度に達していない低温であり、第2の電源12の出力性能が十分に発揮できない場合等において好適である。
【0090】
また、他の実施形態として、第1の電源10が設定した制御中心充電率より低い場合に、制御装置15は、第1の電源10の入力可能電力と第2の電源12の出力可能電力とを比較して(比較は絶対値での比較)、いずれか小さい方の電力を第2の電源12から出力される電力として第1の電源10に入力してもよい。これにより、第1の電源10の充電率をより早く設定した制御中心充電率に近づけることが可能となる。特に、第2の電源12の温度が低温で、出力性能が十分に発揮されない場合においては、第1の電源10を早く制御中心充電率に近づけることにより、車両の動力性能の低下をより早く抑制することが可能となる。
【0091】
また、以下のような他の実施形態も好適である。まず、温度センサにより、暖機前の第1の電源10の温度を測定する。そして、制御装置15は予め設定した閾値と第1の電源10の温度とを比較する。そして、第1の電源10の温度が閾値未満であった場合には、制御装置15は、車両の走行終了時(走行終了前又は後の所定期間)に、第1の電源10の充電率と設定した制御中心充電率とを比較する。そして、制御装置15は、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率より低い場合には、車両の走行終了時に第2の電源12から第1の電源10へ電力供給し、制御中心充電率に近づけることが好ましい。第1の電源10の温度は温度履歴であってもよい。これにより、次回の車両の走行開始時において、第1の電源10の出力性能を確実に確保できる。なお、第1の電源10の充電率制御の実施の判断としては、他に季節や天気情報等を用いてもよい。
【0092】
次に、第1の電源10の暖機に使用する化学蓄熱装置の再生処理について説明する。再生処理とは、第1の電源10を暖機するために、第1の反応器26からの放熱が継続され、第2の反応器28内のアンモニアが減少した場合や第1の電源の暖機が終了した場合等において、アンモニアを再び第2の反応器28側に集め、第2の反応器28の化学蓄熱材にアンモニアを固定させる処理である。以下、具体的に説明する。
【0093】
(再生処理)
図13は、化学蓄熱装置の再生処理の方法を説明するためのフロー図である。再生処理の例としては、第1の電源の暖機終了時、例えば、暖機により第1の電源の温度が、予め設定した第1設定温度以上の時に、実施される。
【0094】
図2に示すアンモニア配管30のバルブ30aを開いた状態で、図13に示すように、第1の反応器26に設置されたヒータにより第1の反応器26を加熱する。本実施形態では、電力供給により発熱する加熱器であれば、ヒータに制限されるものではない。ヒータへの電力は、図13に示すように、第1の電源10や第2の電源12から出力される電力、又はインバータ22(及びコンバータ)を介して供給される車両からの回生電力である。このように、第1の反応器26を加熱することによって、第1の反応器26内に固定されているアンモニアC’が吸熱反応により離脱し、アンモニア配管30を通って、第2の反応器28に輸送される。輸送されたアンモニアC’は、図2に示すように、第2の反応器28の反応室42内の化学蓄熱材に発熱反応により固定化され、初期の状態に再生される。なお、この発熱反応は、例えば、第2の反応器28の熱媒体流路40へ所定温度(例えば、−30℃〜10℃)の熱媒体Bを供給することにより維持される。このような再生処理を行うことにより、第1の電源10等の暖機を繰り返し行うことができる。
【0095】
このように、第1の電源10、第2の電源12から出力される電力、回生電力のうち少なくともいずれか1つが、ヒータに供給され、化学蓄熱材を再生することにより、例えば、車両の走行終了時点で、化学蓄熱材の再生が完了され、次の走行開始時に第1の電源の暖機を速やかに化学蓄熱装置により行うことが可能となる。
【0096】
次に、車両からの回生電力が、第1の電源10、第2の電源12、ヒータ等の加熱器等に供給される場合の実施形態について説明する。
【0097】
図14(A)は、第1の電源が制御中心充電率未満の時の車両からの回生電力の分配例について説明するための図であり、(B)は、第1の電源が制御中心充電率以上の時に車両からの回生電力の分配例について説明するための図である。
【0098】
車両の走行中等で化学蓄熱材を再生する際に、制御装置15は、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率未満の場合であるか否かを判定し、第1の電源10の充電率が制御中心充電率未満である場合には、車両からの回生電力を、図14(A)に示すように、第1の電源10に優先的に供給する。これにより、第1の電源10の充電率を速やかに制御中心充電率まで回復させることができ、車両の駆動性能等を効率的に発揮させることができる。そして、残りの回生電力のうち、例えば、第1の電源10の入力可能電力を超える分においては、制御装置15は、その回生電力を化学蓄熱装置のヒータ(加熱器)に分配する。これにより、化学蓄熱材を速やかに再生させることができる。さらに、残りの回生電力のうち、例えば、回生電力が加熱器の最大定格電力以上の電力があれば、制御装置15は、その回生電力を第2の電源12に分配する。これにより、第2の電源12の容量及び出力を高く維持することができるため、車両の燃費向上が可能となる。
【0099】
また、車両の走行中等で化学蓄熱材を再生する際に、制御装置15は、第1の電源10の充電率が設定した制御中心充電率以上の場合には、車両からの回生電力を、図14(B)に示すように、ヒータ(再生用の加熱器)に優先的に供給する。これは、第1の電源10の充電率は制御中心充電率以上であり、第1の電源10の出力性能は確保されているため、電力分配の優先順位が低くなるためである。そして、回生電力をヒータに優先的に供給することにより、化学蓄熱材を速やかに再生させることができる。そして、残りの回生電力のうち、例えば、加熱器の最大定格電力以上の電力があれば、制御装置15は、その回生電力を第2の電源12に分配する。これにより、車両の燃費向上が可能となる。さらに、残りの回生電力のうち、例えば、第2の電源12の入力可能電力を超える場合には、その回生電力を第1の電源10に分配する。これにより、回生電力を効率的に回収し、また車両の燃費向上が可能となる。このように、第1の電源10よりも第2の電源12の方へ優先的に回生電力を分配する方が好ましい。これは、制御中心充電率が高い状態の第1の電源10は第1の電源10の入力性能が低下しているため、第2の電源12より優先して回生電力が入力されると、電源全体として瞬時に大きな入力電力を受けられなくなる虞があるからである。一方、第2の電源12は、第1の電源10よりエネルギ密度が高いため、第1の電源10より優先して回生電力が入力されても、第2の電源12の入力性能の低下を抑えることができる。
【0100】
図15は、回生電力の分配の他の例について説明するための図である。図15に示すように、第1の電源10及び第2の電源12の入力可能電力の和を超える回生電力が発生する場合がある。このような大きな回生電力は、例えば、車両が低車速で路面摩擦が低い所を走行している場合等で、タイヤがスリップしてモータ回転数が急上昇した後に再びタイヤのグリップが回復しモータが低回転に戻るような現象が短時間内で起きるようなケースや、低温時に高い減速度で回生を行う場合等において発生する。そこで、このような大きな回生電力が発生し、第1の電源10及び第2の電源12の入力可能電力の和を超える場合には、第1の電源10の入力可能電力分の回生電力を第1の電源10に入力させ、第2の電源12の入力可能電力分の回生電力を第2の電源12に入力させると共に、回生電力から第1の電源10及び第2の電源12の入力可能電力の和を差し引いた余剰電力を、化学蓄熱装置のヒータに分配することが望ましい。なお、回生電力の一部をヒータに供給する方法は特に制限されるものではないが、例えば、ヒータに接続された回生電力供給ラインにIGBT等のスイッチング素子等の制御スイッチを設けて、制御装置15による制御スイッチのON、OFFにより、ヒータに電力の供給・停止を制御する方法等が挙げられる。
【0101】
他の実施形態としては、化学蓄熱材を再生する際に、制御装置15は、第1の電源10の充電率が制御中心充電率以上であるか否かを判断し、制御中心充電率以上である場合には、例えば、前述の制御スイッチ等をONにして、第1の電源10からヒータに電力を供給する。この場合、制御装置15は、第1の電源10の充電率が制御中心充電率に近づくように第1の電源10の出力を制御する。これにより、第1の電源10の入力性能を向上させると共に、化学蓄熱材の再生も可能となる。
【0102】
また、他の実施形態としては、車両の走行時間や走行距離が短い場合には、車両の走行中に化学蓄熱材の再生が終了しない場合がある。そこで、車両の走行終了時に化学蓄熱材を再生することが好ましく、このような場合には、例えば、制御装置15により、前述の制御スイッチをON、及びコンバータを制御して、第1の電源10及び第2の電源12のうち少なくともいずれか一方から電力を供給してもよい。これにより、次の走行開始時に第1の電源10の暖機を確実に行うことができる。
【0103】
なお、再生処理の際に行う第1の反応器26の加熱は必ずしもヒータに制限されるわけではない。例えば、車両内で発生する排熱を利用する加熱装置により、第1の反応器26を加熱してもよい。なお、車両内で発生する排熱を利用する場合には、第1の反応器26にヒータを設置する必要はない。加熱装置は、車両内で発生する排熱を利用して蒸気を発生する蒸気発生器、車両内で発生する排熱により加熱された熱媒体を第1の反応器26に供給するファン、熱交換器等が挙げられる。車両内で発生する排熱は、例えば、エンジンやモータジェネレータ24からの排熱、インバータ22の損失熱、トランスアクスルからの排熱等が挙げられる。
【符号の説明】
【0104】
1 電源回路、10 第1の電源、10a セル、12 第2の電源、14 暖機装置又は化学蓄熱装置、15 制御装置、16 電源システム、18 第1のコンバータ、20 第2のコンバータ、22 インバータ、24 外部負荷又はモータジェネレータ、26 第1の反応器、28 第2の反応器、30 アンモニア配管、30a バルブ、32,38 筐体、34,40 熱媒体流路、36,42 反応室、44 熱交換器、46 流路プレート、48 入口マニホールド、50 出口マニホールド、52 流路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源と、第2の電源と、電源を暖機する暖機手段と、電源の入出力を制御する際の目標値となる制御中心充電率を設定する制御中心充電率設定手段と、を備える車両用の電源システムであって、
前記第1の電源は前記第2の電源より出力密度が高く、前記第2の電源は前記第1の電源よりエネルギ密度が高く、
前記暖機手段は、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間において、前記第1の電源の暖機を開始し、
前記制御中心充電率設定手段は、少なくとも暖機が開始された前記第1の電源の温度に基づいて、前記第1の電源の制御中心充電率を設定することを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用の電源システムであって、
前記制御中心充電率設定手段は、前記第1の電源の温度が予め設定した第1設定温度未満である場合には、前記第1の電源の制御中心充電率を、前記第1の電源の入力と出力の値が等しい時の充電率である基準充電率より高い第1制御中心充電率に設定することを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項3】
請求項2記載の車両用の電源システムであって、
前記制御中心充電率設定手段は、前記第1の電源の温度が前記第1設定温度以上であり、前記第2の電源の温度が予め設定した第2設定温度未満である場合には、前記第1の電源の制御中心充電率を、前記第1制御中心充電率より低く、前記基準充電率より高い第2制御中心充電率に設定することを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用の電源システムであって、
前記第1の電源及び前記第2の電源の入出力を制御する入出力制御手段を備え、
前記入出力制御手段は、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満の場合、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源の電力の入力を制御することを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項5】
請求項4記載の車両用の電源システムであって、
前記入出力制御手段は、前記第1の電源に入力される電力を前記第2の電源から出力させることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項6】
請求項4記載の車両用の電源システムであって、
前記入出力制御手段は、前記車両からの回生電力を前記第1の電源に入力させると共に、前記車両の走行負荷より前記第2の電源から出力可能な電力が大きい場合には、前記第2の電源から出力される電力のうち前記走行負荷に対する余剰電力を前記第1の電源に入力させることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項7】
請求項5記載の車両用の電源システムであって、
前記入出力制御手段は、前記第1の電源の温度及び充電率に基づいて決定される入力可能電力及び前記第2の電源の温度及び充電率に基づいて決定される出力可能電力のうちの小さい方の電力を前記第2の電源から出力される電力として、前記第1の電源に入力させることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項8】
請求項4記載の車両用の電源システムであって、
前記入出力制御手段は、暖機前の前記第1の電源の温度が予め規定した閾値未満であり、且つ前記車両の走行終了時において前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満の場合、前記車両の走行終了時に、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源に入力される電力を前記第2の電源から出力させることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用の電源システムであって、
前記暖機手段は、アンモニアが離脱するときに蓄熱しアンモニアが固定化されるときに放熱する化学蓄熱材を有する化学蓄熱装置であり、
前記化学蓄熱装置は、電力供給により発熱する前記化学蓄熱材再生用の加熱器を備えることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項10】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記化学蓄熱材を再生する際には、前記第1の電源から出力される電力、前記第2の電源から出力される電力、及び車両からの回生電力のうち少なくともいずれか1つが前記加熱器へ供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項11】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満である場合には、前記車両からの回生電力が、前記第1の電源、前記加熱器、前記第2の電源の順位で供給され、
前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率以上である場合には、前記車両からの回生電力が、前記加熱器、前記第2の電源、前記第1の電源の順位で供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項12】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記車両からの回生電力が、前記第1の電源及び前記第2の電源の温度及び充電率に基づいて決定される入力可能電力の和より大きい場合、前記車両からの回生電力のうち前記入力可能電力の和に対する余剰電力が前記加熱器に供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項13】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率より高い場合には、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源の電力が前記加熱器に供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項14】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記車両の走行終了時に前記化学蓄熱材を再生する場合、前記第1の電源及び前記第2の電源のうち少なくともいずれか一方の電力が前記加熱器に供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項15】
第1の電源と、第2の電源と、電源を暖機する暖機手段と、電源の入出力を制御する際の目標値となる制御中心充電率を設定する制御中心充電率設定手段と、を備える電源システムであって、
前記第1の電源は前記第2の電源より出力密度が高く、前記第2の電源は前記第1の電源よりエネルギ密度が高く、
前記暖機手段は、電源システムが搭載される装置の稼働前の所定期間又は稼働後の所定期間において、前記第1の電源の暖機を開始し、
前記制御中心充電率設定手段は、少なくとも暖機が開始された前記第1の電源の温度に基づいて、前記第1の電源の制御中心充電率を設定することを特徴とする電源システム。
【請求項1】
第1の電源と、第2の電源と、電源を暖機する暖機手段と、電源の入出力を制御する際の目標値となる制御中心充電率を設定する制御中心充電率設定手段と、を備える車両用の電源システムであって、
前記第1の電源は前記第2の電源より出力密度が高く、前記第2の電源は前記第1の電源よりエネルギ密度が高く、
前記暖機手段は、車両の走行開始前の所定期間又は走行開始後の所定期間において、前記第1の電源の暖機を開始し、
前記制御中心充電率設定手段は、少なくとも暖機が開始された前記第1の電源の温度に基づいて、前記第1の電源の制御中心充電率を設定することを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用の電源システムであって、
前記制御中心充電率設定手段は、前記第1の電源の温度が予め設定した第1設定温度未満である場合には、前記第1の電源の制御中心充電率を、前記第1の電源の入力と出力の値が等しい時の充電率である基準充電率より高い第1制御中心充電率に設定することを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項3】
請求項2記載の車両用の電源システムであって、
前記制御中心充電率設定手段は、前記第1の電源の温度が前記第1設定温度以上であり、前記第2の電源の温度が予め設定した第2設定温度未満である場合には、前記第1の電源の制御中心充電率を、前記第1制御中心充電率より低く、前記基準充電率より高い第2制御中心充電率に設定することを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用の電源システムであって、
前記第1の電源及び前記第2の電源の入出力を制御する入出力制御手段を備え、
前記入出力制御手段は、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満の場合、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源の電力の入力を制御することを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項5】
請求項4記載の車両用の電源システムであって、
前記入出力制御手段は、前記第1の電源に入力される電力を前記第2の電源から出力させることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項6】
請求項4記載の車両用の電源システムであって、
前記入出力制御手段は、前記車両からの回生電力を前記第1の電源に入力させると共に、前記車両の走行負荷より前記第2の電源から出力可能な電力が大きい場合には、前記第2の電源から出力される電力のうち前記走行負荷に対する余剰電力を前記第1の電源に入力させることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項7】
請求項5記載の車両用の電源システムであって、
前記入出力制御手段は、前記第1の電源の温度及び充電率に基づいて決定される入力可能電力及び前記第2の電源の温度及び充電率に基づいて決定される出力可能電力のうちの小さい方の電力を前記第2の電源から出力される電力として、前記第1の電源に入力させることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項8】
請求項4記載の車両用の電源システムであって、
前記入出力制御手段は、暖機前の前記第1の電源の温度が予め規定した閾値未満であり、且つ前記車両の走行終了時において前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満の場合、前記車両の走行終了時に、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源に入力される電力を前記第2の電源から出力させることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用の電源システムであって、
前記暖機手段は、アンモニアが離脱するときに蓄熱しアンモニアが固定化されるときに放熱する化学蓄熱材を有する化学蓄熱装置であり、
前記化学蓄熱装置は、電力供給により発熱する前記化学蓄熱材再生用の加熱器を備えることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項10】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記化学蓄熱材を再生する際には、前記第1の電源から出力される電力、前記第2の電源から出力される電力、及び車両からの回生電力のうち少なくともいずれか1つが前記加熱器へ供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項11】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率未満である場合には、前記車両からの回生電力が、前記第1の電源、前記加熱器、前記第2の電源の順位で供給され、
前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率以上である場合には、前記車両からの回生電力が、前記加熱器、前記第2の電源、前記第1の電源の順位で供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項12】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記車両からの回生電力が、前記第1の電源及び前記第2の電源の温度及び充電率に基づいて決定される入力可能電力の和より大きい場合、前記車両からの回生電力のうち前記入力可能電力の和に対する余剰電力が前記加熱器に供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項13】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記化学蓄熱材を再生する際に、前記第1の電源の充電率が前記第1の電源の制御中心充電率より高い場合には、前記第1の電源の充電率を前記第1の電源の制御中心充電率に近づけるように、前記第1の電源の電力が前記加熱器に供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項14】
請求項9記載の車両用の電源システムであって、
前記車両の走行終了時に前記化学蓄熱材を再生する場合、前記第1の電源及び前記第2の電源のうち少なくともいずれか一方の電力が前記加熱器に供給されることを特徴とする車両用の電源システム。
【請求項15】
第1の電源と、第2の電源と、電源を暖機する暖機手段と、電源の入出力を制御する際の目標値となる制御中心充電率を設定する制御中心充電率設定手段と、を備える電源システムであって、
前記第1の電源は前記第2の電源より出力密度が高く、前記第2の電源は前記第1の電源よりエネルギ密度が高く、
前記暖機手段は、電源システムが搭載される装置の稼働前の所定期間又は稼働後の所定期間において、前記第1の電源の暖機を開始し、
前記制御中心充電率設定手段は、少なくとも暖機が開始された前記第1の電源の温度に基づいて、前記第1の電源の制御中心充電率を設定することを特徴とする電源システム。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図4】
【図14】
【図15】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図4】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−85390(P2013−85390A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224049(P2011−224049)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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