説明

電源ループ制御装置及び電源ループ制御方法

【課題】電源装置が電源供給線を介して並列に接続された複数の負荷装置に対して電源を供給する電源供給システムにおいて、負荷装置毎に異なる電源投入のタイミングが設定された設定タイミングで、各負荷装置に対する電源投入が可能な電源ループ制御装置を提供する。
【解決手段】設定タイミングに基づく電源投入タイミング情報を含む電源制御信号を、当該負荷装置毎に生成し電源供給線に重畳する信号重畳装置と、負荷装置毎に対応して配置され、電源供給線から電源制御信号を取り出して、電源投入タイミング情報に基づいて、当該負荷装置に対する電源供給を開始するとともに電源投入実施信号を出力する負荷制御装置とを有し、信号重畳装置が、各電源投入実施信号を監視し、当該監視結果に基づいて各電源投入タイミング情報を調整する電源ループ制御装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の並列負荷装置に対する電源供給を制御する電源制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源装置から複数の並列負荷装置に電源を供給する際に、負荷装置毎に周波数の異なる複数の電源制御信号を電源供給線に重畳し、各負荷装置側で、当該重畳された電源制御信号から、予め自身に割り当てられた周波数の電源制御信号を識別して電源の開閉を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。当該技術によれば、電源供給線のみで、電源供給と負荷装置の開閉制御とを行うことができ、配線を簡素化できる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によると、同時にすべての並列負荷装置への電源供給をする場合(電源を閉制御する場合)において、各負荷装置に電流を供給するタイミングが重なると、図5に示すように電源電圧が垂下し、電源装置および各負荷装置の運用動作の安定性に影響を及ぼす可能性があった。
【0004】
これに対する技術が特許文献2に記載されている。特許文献2の図1に示されているように、当該技術では、電源装置側に信号重畳装置が設けられるとともに、負荷装置側には負荷装置毎にタイマ機能を有する負荷制御装置が設けられている。信号重畳装置は、各負荷装置に対応した周波数の搬送波を、各負荷装置に対する遅延時間情報を含む電源制御信号で変調して電源供給線に重畳する。一方、各負荷制御装置は、電源供給線から、制御対象の負荷装置に対応した周波数成分を分離し、これを復調することで、負荷装置に対する電源制御信号を受信し、遅延時間情報に基づいて電源供給の開始/停止を行う。このとき、負荷制御装置は、電源供給を開始する際にタイマ機能を用いて遅延時間情報が示す時間だけ、電源供給開始タイミングを遅らせる。当該技術によれば、負荷装置毎に異なる遅延時間を設定することで、電源制御信号が同時に各負荷制御装置に到達する場合において、図6に示すように、各負荷装置への電源供給開始タイミングをずらすこと、すなわち、電源投入時の突入電流のピークタイミングをずらすことができ、電源装置が生成する電源電圧の急激な低下を防ぐとともに、電源装置及び負荷装置の安定運用が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−209031号公報
【特許文献2】特開2008−252961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された技術によれば、電源装置(具体的には信号重畳装置)側から各負荷装置(具体的には負荷制御装置)側までの電源供給線の遅延バラツキ(例えば、信号重畳装置との区間距離が各負荷制御装置間で大きく異なる等)がある場合、すなわち、電源制御信号が同時に各負荷制御装置に到達しない場合には、各負荷制御装置が、電源投入のタイミングをずらすために負荷装置毎に予め設定された設定タイミングに基づき求められた遅延時間に従って電源投入をしたにもかかわらず、複数の負荷装置の電源投入時刻が重なり、電源電圧が垂下してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、電源制御信号が同時に各負荷制御装置に到達しない可能性がある場合であっても、電源投入のタイミングをずらすために予め設定された設定タイミングに基づいて各負荷装置への電源供給を開始することができる電源ループ制御装置及び電源ループ制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の電源ループ制御装置は、電源装置が電源供給線を介して並列に接続された複数の負荷装置に対して電源を供給する電源供給システムにおける電源ループ制御装置において、前記負荷装置毎に異なる電源投入のタイミングが設定された設定タイミングに基づく電源投入タイミング情報を含む電源制御信号を、当該負荷装置毎に生成し、各負荷装置に対応する周波数の搬送波を当該生成した電源制御信号によって変調して、前記電源供給線に重畳する信号重畳装置と、前記複数の負荷装置のそれぞれに対応して配置され、当該対応して配置された負荷装置に対応する周波数に基づいて前記電源供給線に重畳された搬送波を復調して前記電源制御信号を取得し、当該電源制御信号に含まれる前記電源投入タイミング情報に基づいて、当該負荷装置に対する電源供給を開始する負荷制御装置とを備え、各前記負荷制御装置は、前記負荷装置に対する電源供給を開始したことに基づいて、電源投入実施信号を前記信号重畳装置に対して出力し、前記信号重畳装置は、前記出力された前記電源投入実施信号を監視し、当該監視結果に基づいて負荷装置毎の前記電源投入タイミング情報を調整することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の電源ループ制御装置は、請求項1に記載の電源ループ制御装置において、前記信号重畳装置は、前記電源投入実施信号を監視して、前記負荷装置毎に、実際に電源供給が開始された電源投入実施タイミングを導出し、当該電源投入実施タイミングと前記設定タイミングとの差分に基づいて、前記電源投入タイミング情報を調整することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の電源ループ制御装置は、請求項1又は2に記載の電源ループ制御装置において、前記電源投入タイミング情報は、前記負荷制御装置が当該電源投入タイミング情報を入力されてから前記負荷装置に対して電源供給を開始するまでの遅延時間を示す遅延時間情報であって、前記負荷制御装置は、それぞれ前記遅延時間情報の示す前記遅延時間に基づいて前記負荷装置に対する電源供給を開始することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の信号重畳装置は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の電源ループ制御装置に備えられる信号重畳装置である。
【0012】
請求項5に記載の電源ループ制御方法は、電源装置が電源供給線を介して並列に接続された複数の負荷装置に対して電源を供給する電源供給システムにおける電源ループ制御方法において、前記負荷装置毎に異なる電源投入のタイミングが設定された設定タイミングに基づく電源投入タイミング情報を含む電源制御信号を、当該負荷装置毎に生成し、各負荷装置に対応する周波数の搬送波を当該生成した電源制御信号によって変調して、前記電源供給線に重畳し、各前記負荷装置に対応する周波数に基づいて前記電源供給線に重畳された搬送波を復調して前記電源制御信号を取得し、当該電源制御信号に含まれる前記電源投入タイミング情報に基づいて、各負荷装置に対する電源供給を開始し、各前記負荷装置に対する電源供給を開始したことに基づいて、それぞれ電源投入実施信号を出力し、前記出力された各前記電源投入実施信号を監視し、当該監視結果に基づいて負荷装置毎の前記電源投入タイミング情報を調整することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の電源ループ制御方法は、請求項5に記載の電源ループ制御方法において、各前記電源投入実施信号を監視して、前記負荷装置毎に、実際に電源供給が開始された電源投入実施タイミングを導出し、当該電源投入実施タイミングと前記設定タイミングとの差分に基づいて、前記電源投入タイミング情報を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電源制御信号が同時に各負荷制御装置に到達しない可能性がある場合であっても、信号重畳装置が、負荷制御装置から出力された、実際に電源供給が開始されたタイミングを示す電源投入実施信号を監視して、当該監視結果に基づいて電源投入タイミング情報を負荷装置毎に調整することから、電源投入のタイミングをずらすために設定された設定タイミングに基づいて各負荷装置への電源供給を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における電源ループ制御装置を含む電源供給システム全体の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における信号重畳装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態における負荷制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態における電源供給線を伝わる電源制御信号CWaの周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図5】特許文献1に記載の技術における電源投入時の電圧・電流の変化を示す図である。
【図6】特許文献2に記載の技術における電源投入時の電圧・電流の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1から図4を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図1は、本発明の一実施形態における電源ループ制御装置を含む電源供給システム全体の構成を示すブロック図である。図2は、本発明の一実施形態における信号重畳装置12の構成を示すブロック図である。図3は、本発明の一実施形態における負荷制御装置13−1〜13−n(nは負荷番号であり、1〜nの間で同等の動作を行う)の構成を示すブロック図である。図4は、本発明の一実施形態における電源供給線15を伝わる電源制御信号CWaの周波数スペクトルの一例を示す図である。
【0017】
[電源ループ制御装置の構成]
図1に示すように、電源供給システムは、電源装置11と、信号重畳装置12と、負荷制御装置13と、負荷装置14とを備え、電源ループ制御装置は、信号重畳装置12と、負荷制御装置13とを有する。電源装置11は、電源供給線15を介して、n個の負荷装置14−1〜14−nに対して、各負荷装置14の運用に必要な所定の電源電圧で電源供給を行う。信号重畳装置12は、複数の異なる周波数の搬送波を、それぞれ、各負荷装置14の電源制御を行うための電源制御信号CWaで変調し、搬送波の周波数成分の信号に変調された電源制御信号CWaを、電源供給線15に重畳する。搬送波の周波数は、負荷装置14の数又はそれ以上の数だけ用意されており、どの周波数がどの負荷装置14に対応するかは、あらかじめ対応付けられている。各負荷制御装置13は、電源供給線15に重畳された特定周波数成分の電源制御信号CWaを取り出して、対応する負荷装置14に対する電源供給を制御する。具体的には、負荷制御装置13は、負荷装置14への電源供給の開始、又は、電源供給の停止を行う。なお、負荷装置14は、例えば、移動体通信システムにおける無線基地局装置である。
【0018】
図2に示すように、信号重畳装置12は、信号送信器22、信号合成器21、折り返し信号受信器23を有する。
【0019】
信号送信器22は、電源制御対象となる負荷装置14毎に、制御内容を含む電源制御信号CWaを生成し、これをデータ伝送用に符号化する。そして、信号送信器22は、各負荷装置14に対応する複数の特定周波数の搬送波を、それぞれ、当該生成・符号化した電源制御信号CWaで変調する。例えば、負荷装置14−1に対する電源制御信号CWaで、負荷装置14−1に対応する特定周波数の搬送波を変調する。また、信号送信器22は、タイマ機能を有し、電源制御信号CWaを送信してから、各負荷制御装置13から送信される後述の電源投入実施信号CWbを受信するまでの時間をそれぞれ計測する。
【0020】
信号合成器21は、一方の入力側を電源装置11に接続し、他方の入力側を信号送信器22に接続し、電源装置11より出力する電源電圧に信号送信器22より出力された電源制御信号CWaを重畳して出力する。
【0021】
折り返し信号受信器23は、入力側を電源供給線15に接続し、出力側を信号送信器22に接続し、各負荷制御装置13から出力された電源投入実施信号CWbを入力し、信号送信器22に出力する。
【0022】
図3に示すように、負荷制御装置13は、信号分配器31、信号受信器32、タイマ付き制御器33、切替器34を有する。
【0023】
信号分配器31は、信号重畳装置12より重畳出力された電源電圧および電源制御信号CWaを入力して電源電圧と電源制御信号CWaとに分離し、一方の出力側を信号受信器32に接続して電源制御信号CWaを出力し、他方の出力側を切替器34に接続して電源電圧を出力する。このとき、信号分配器31は、電源供給線15から、制御対象の負荷装置14に対応する周波数成分の信号を分離する。例えば、負荷装置14−1に対応する負荷制御装置13−1の信号分配器31は、電源供給線15から、負荷装置14−1に対応する周波数成分のみを分離する。
【0024】
信号受信器32は、信号分配器31により分離された電源制御信号CWaを受け取り、信号重畳装置12にて変調された電源制御信号CWaを復調する。電源供給線15には、複数の負荷装置14に対応して、複数の周波数成分の電源制御信号CWaが重畳されるが、信号分配器31にて、複数の周波数成分のうちで、対応する周波数成分のみを分離することで、信号受信器32は、制御対象の負荷装置14に対する電源制御信号CWaのみを受信することになる。復調した電源制御信号CWaはデータ伝送用に符号化されているので、信号受信器32は、これを復号化した上でその電源制御信号CWaの内容を、タイマ付き制御器33が解釈可能なインタフェース信号に変換して出力する。
【0025】
タイマ付き制御器33は、出力側を切替器34に接続し、電源制御信号CWa(インタフェース信号に変換されている)に基づいて切替器34の開閉制御を行う。タイマ付き制御器33は、内部に有するタイマをによって、切替器34を制御するタイミングを、タイマでのタイムアウト発生タイミングまで遅らせる機能を有する。また、タイマ付き制御器33は、電源投入を実施する(すなわち、切替器34を閉じる)のと同時に、信号受信器32に電源投入実施信号CWbを折り返し出力する。
【0026】
[電源ループ制御装置の動作]
以下、複数の負荷装置14−1〜14−nのうち、3つの負荷装置14(14−1、14−2、14−3)に対して電源供給を開始する際の動作について説明する。まず、電源装置11と、複数の負荷装置14−1〜14−nとの間の電源供給線15上に、信号重畳装置12及び負荷制御装置13−1〜13−nの設置準備が整い、電源装置11からの電源投入(運用開始)待ちの状態において、信号重畳装置12に対して、複数の負荷装置のうち3つの負荷装置14−1、14−2、14−3の電源投入を行う旨の信号(設定)が入力される。この設定は、例えばタイマ起動による電源投入開始の設定でもよく、或いは、人手による電源投入の設定であってもよい。
【0027】
信号重畳装置12は、信号送信器22より、異なる複数の特定周波数成分をもった搬送波を用いて電源制御信号CWaを送信する。この搬送波の周波数としては、接続する負荷制御装置13(負荷装置14)の数量以上の周波数が用意されており、各搬送波の周波数は、各負荷制御装置13−1、13−2、13−3に割り当てられた特定の受信周波数に対応している。本実施形態では、一例として、搬送波1の周波数=1MHz、搬送波2の周波数=2MHz、搬送波3の周波数=3MHzとして、信号重畳装置12より電源供給線15に電源制御信号CWaを重畳することとする。
【0028】
ここで、電源装置11が生成する電源電圧が直流であるとすれば、周波数0の成分は、電源電圧に相当する。電源供給線15を伝わる信号は、この成分の他に、電源制御信号CWaの変調に用いられる各搬送波の周波数成分を有する。図4に示すように、各負荷制御装置13内の信号分配器31は、特定周波数成分のみを通過し、それ以外の周波数成分を遮断するフィルタなどを用いて、電源供給線15に重畳された複数の周波数成分の電源制御信号CWaの中から、所望の周波数成分の電源制御信号CWaのみを取り出す。例えば、負荷制御装置13−1の信号分配器31は、1MHzの周波数成分のみを通過させ、負荷制御装置13−2の信号分配器31は、2MHzの周波数成分のみを通過させる、また、負荷制御装置13−3の信号分配器31は、3MHzの周波数成分のみを通過させる。
【0029】
信号重畳装置12の信号送信器22は、切替器34の開閉に関する情報と、タイマによる遅延時間に関する情報とを、電源制御信号CWaに含める。タイマによる遅延時間は、各負荷装置14に対する電源投入のタイミングをずらすために、負荷装置毎に予め設定された設定タイミングに基づいて求められる。例えば、基準となる負荷装置14−1に電源を投入してから、0.1秒後に負荷装置14−2に電源を投入し、更に0.1秒後に負荷装置14−3に電源を投入する場合には、負荷装置14−1の設定タイミングは0秒、負荷装置14−2の設定タイミングは0.1秒後、負荷装置14−3の設定タイミングは0.2秒後となる。この場合、当初のタイマによる遅延時間は、負荷装置14−1について0秒後、負荷装置14−2について0.1秒後、負荷装置14−3について0.2秒後と、設定タイミングと同じ値となる。また、2回目以降のタイマによる遅延時間は、後述するように、設定タイミング通りに各負荷装置14に電源が投入されなかった場合に、設定タイミング通りに電源が投入されるように調整される。なお、設定タイミングは、各負荷装置14の電源投入タイミングが、電源装置11及び負荷装置14を安定運用するために充分な時間差を持つように、システム管理者等によって設定される。
【0030】
ここで、表1を用いて具体例を挙げて説明する。
【表1】

【0031】
表1の例は、設定タイミングが負荷装置14−1について0秒(基準時)、負荷装置14−2について基準時から0.1秒後、負荷装置14−3について基準時から0.2秒後と、それぞれ設定された場合を示している。これは、システム管理者等が、負荷装置14−1の電源投入時から0.1秒後に負荷装置14−2の電源投入が行われ、負荷装置14−1の電源投入時から0.2秒後に負荷装置14−3の電源投入が行われることを意図したものである。
【0032】
表1に示すように、当初のタイマによる遅延時間は、電源制御信号CWaが同時に各負荷制御装置13に到達する仮定の下、設定タイミングに基づいて、負荷装置14−1について0秒(即時)、負荷装置14−2について0.1秒、負荷装置14−3について0.2秒と求められる。そして、信号送信器22は、負荷装置14−1に対して、「切替器:閉(電源投入)」、「遅延時間:0(即時)」を含む電源制御信号CWaを生成し、負荷装置14−2に対して、「切替器:閉」、「遅延時間:0.1秒」を含む電源制御信号CWaを生成し、負荷装置14-3に対して、「切替器:閉」、「遅延時間:0.2秒」を含む電源制御信号CWaを生成する。信号送信器22は、生成したこれらの電源制御信号CWaで、それぞれ、1MHz、2MHz、3MHzの搬送波を変調する。
【0033】
これに対して、負荷制御装置13−1は、信号分配器31にて1MHzの周波数成分を分離して負荷装置14−1に対する電源制御信号CWaを受信し、タイマ付き制御器33により、切替器34を、遅延なしで「閉」に制御する。また、負荷制御装置13−2は、信号分配器31にて2MHzの周波数成分を分離して負荷装置14−2に対する電源制御信号CWaを受信し、タイマ付き制御器33により、電源制御信号CWaの受信タイミングから0.1秒遅いタイミングで、切替器34を「閉」に制御する。負荷制御装置13−3は、信号分配器31にて3MHzの周波数成分を分離して負荷装置14−3に対する電源制御信号CWaを受信し、タイマ付き制御器33により、電源制御信号CWaの受信タイミングから0.2秒遅いタイミングで、切替器34を「閉」に制御する。このとき、各負荷制御装置13において、信号送信器22から送信された電源制御信号CWaが同時に到達した場合には、負荷装置14−1の電源投入時間を基準(0秒)として、負荷装置14−2の電源投入時間は0.1秒後、負荷装置14−3の電源投入時間は0.2秒後となり、設定タイミング通りに電源投入が行われる。
【0034】
また、各負荷制御装置13のタイマ付き制御器33は、電源投入を実施する(すなわち、切替器34を閉じる)のと同時に、信号受信器32、信号分配器31を介して、信号重畳装置12に電源投入実施信号CWbを折り返し出力する。各電源投入実施信号CWbは、何れの負荷制御装置13から出力されたか識別可能なように、例えば、信号重畳装置12から送信された搬送波周波数と同じ周波数を使用し(ピンポン送信方式)、信号重畳装置12側で、当該搬送波周波数に基づいて、受信した電源投入実施信号CWbが何れの負荷制御装置13から出力された電源投入実施信号CWbであるかを識別する。なお、本実施形態においては、各電源制御信号CWa及び各電源投入実施信号CWbが電源供給線15間を伝わる速度は同一であるものとする。
【0035】
信号重畳装置12は、各負荷制御装置13から出力された電源投入実施信号CWbを監視(モニタ)し、設定タイミングと比較する。すなわち、信号重畳装置12は、各負荷装置14の電源投入のタイミングを意図した通りにずらすことができたかをチェックする。信号重畳装置12は、仮に、各負荷装置14間の設定タイミングと電源投入実施時間が異なる場合(すなわち、各負荷装置14の電源投入のタイミングを意図した通りにずらすことができなかった場合)には、その差分「設定タイミング−電源投入実施時間」を、直近に送信した電源制御信号CWaに含まれるタイマによる遅延時間に対してオフセット加算して、次回送信する電源制御信号CWaに含まれるタイマによる遅延時間を調整(ループ制御)する。
【0036】
表1の例では、上述したように、負荷装置14−1の電源投入時から0.1秒後に負荷装置14−2の電源投入が行われ、負荷装置14−1の電源投入時から0.2秒後に負荷装置14−3の電源投入が行われることが意図されていたにもかかわらず、実際には、負荷装置14−1の電源投入時から0.05秒後に負荷装置14−2の電源投入が行われ、負荷装置14−1の電源投入時から0.3秒後に負荷装置14−3の電源投入が行われた場合の例を示している。
【0037】
この場合、差分「設定タイミング−電源投入実施時間」を算出すると、それぞれ、負荷装置14−1の差分は0秒、負荷装置14−2の差分は「(0.1−0.05)秒=0.05秒」、負荷装置14−3の差分は「(0.2−0.3)秒=−0.1秒」となる。
【0038】
そして、算出した差分を用いて、次回、信号重畳装置12の信号送信器22が電源制御信号CWaを送信する際におけるタイマによる遅延時間を調整(ループ制御)する。具体的には、算出した差分を、直近に送信した電源制御信号CWaに含まれるタイマによる遅延時間に対して加算することにより、再調整後のタイマによる遅延時間を求める。表1の例によれば、調整後のタイマによる遅延時間は、それぞれ、負荷装置14−1については「0秒+0秒=0秒」、負荷装置14−2については「0.1秒+0.05秒=0.15秒」、負荷装置14−3については「0.2秒−0.1秒=0.1秒」となる。こうして求めた調整後のタイマによる遅延時間を含む電源制御信号CWaを信号送信器22が送信することによって、各負荷装置14の電源投入のタイミングを、設定タイミングに基づいてずらすことができる。
【0039】
次に、信号重畳装置12が、各負荷制御装置13から出力される電源投入実施信号CWbを監視(モニタ)することにより、電源投入実施時間を導出する方法について説明する。ここで、信号重畳装置12が電源制御信号CWaを送信してから、各負荷制御装置13−1、13−2、13−3から電源投入実施信号CWbを受信するまでの時間(タイマ機能を有する信号送信器22が計測する)をそれぞれt、t、tとする(tは、電源制御信号CWaを送信してから負荷制御装置13−1が出力した電源投入実施信号CWbを受信するまでの時間を示し、tは、電源制御信号CWaを送信してから負荷制御装置13−2が出力した電源投入実施信号CWbを受信するまでの時間を示し、tは、電源制御信号CWaを送信してから負荷制御装置13−3が出力した電源投入実施信号CWbを受信するまでの時間を示す)。また、負荷制御装置13−1、13−2、13−3毎に予め設定された設定タイミングをそれぞれd(0秒)、d、dとする(dは、負荷装置14−2の設定タイミングを示し、dは、負荷装置14−3の設定タイミングを示す)。そうすると、各電源制御信号CWa及び各電源投入実施信号CWbが電源供給線15間を伝わる速度は同一であるから、下記(1−1)式、(1−2)式、(1−3)式より、電源制御信号CWaが送信されてから、当該電源制御信号CWaが各負荷制御装置13−1、13−2、13−3に到達するまでの時間a、a、a(aは、電源制御信号CWaが送信されてから負荷制御装置13−1に到達するまでの時間を示し、aは、電源制御信号CWaが送信されてから負荷制御装置13−2に到達するまでの時間を示し、aは、電源制御信号CWaが送信されてから負荷制御装置13−3に到達するまでの時間を示す)をそれぞれ算出することができる。
【数1】

【数2】

【数3】

【0040】
このとき、信号重畳装置12が電源制御信号CWaを送信した時を基準とすると、負荷装置14−1の電源投入時は「a+d(0秒)=a」秒後、負荷装置14−2の電源投入時は「a+d」秒後、負荷装置14−3の電源投入時は「a+d」秒後となる。更に、負荷装置14−1の電源投入時を電源投入実施時間の基準時(0秒)とするために、それぞれからaを減算すると、負荷装置14−1の電源投入実施時間は「a−a=0」秒後、負荷装置14−2の電源投入実施時間は「a+d−a」秒後、負荷装置14−3の電源投入実施時間は「a+d−a」秒後となる。このように、信号重畳装置12は各負荷制御装置13から出力される電源投入実施信号CWbを監視(モニタ)することにより、各電源投入実施時間を導出することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態において、信号重畳装置12が、負荷装置14毎に異なる電源投入のタイミングが設定された設定タイミングに基づくタイマによる遅延時間(電源投入タイミング情報、遅延時間情報の一例)を含む電源制御信号CWaを、当該負荷装置14毎に生成し、各負荷装置14に対応する周波数の搬送波を当該生成した電源制御信号CWaによって変調して、電源供給線15に重畳し、負荷制御装置13が、複数の負荷装置14のそれぞれに対応して配置され、当該対応して配置された負荷装置14に対応する周波数に基づいて電源供給線15に重畳された搬送波を復調して電源制御信号CWaを取得し、当該電源制御信号CWaに含まれるタイマによる遅延時間に基づいて、当該負荷装置14に対する電源供給を開始する。また、各負荷制御装置13は、負荷装置14に対する電源供給を開始したことに基づいて、電源投入実施信号CWbを信号重畳装置12に対して出力し、信号重畳装置12は、出力された電源投入実施信号CWbを監視し、当該監視結果に基づいて負荷装置14毎のタイマによる遅延時間を調整する。
【0042】
また、本実施形態において、信号重畳装置12は、電源投入実施信号CWbを監視して、負荷装置14毎に、実際に電源供給が開始された電源投入実施時間(電源投入実施タイミングの一例)を導出し、電源投入実施時間と設定タイミングとの差分に基づいて、タイマによる遅延時間を調整する。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、電源制御信号CWaが同時に各負荷制御装置13に到達しない可能性がある場合であっても、信号重畳装置12が、負荷制御装置13から出力された、実際に電源供給が開始されたタイミングを示す電源投入実施信号CWbを監視して、当該監視結果に基づいてタイマによる遅延時間を負荷装置14毎に調整することから、電源投入のタイミングをずらすために設定された設定タイミングに基づいて各負荷装置14への電源供給を開始することができる。すなわち、各負荷装置14の運用起動時の突入電流発生時間を分散させることをより高精度で実現し、電源装置11及び負荷装置14の安定運用に寄与することが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明は移動体通信システムにおいて、電源装置が複数の無線基地局装置(負荷装置)の電源制御を行う分野に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
11 : 電源装置
12 : 信号重畳装置
13 : 負荷制御装置
14 : 負荷装置
15 : 電源供給線
21 : 信号合成器
22 : 信号送信器
23 : 折り返し信号受信器
31 : 信号分配器
32 : 信号受信器
33 : タイマ付き制御器
34 : 切替器
CWa : 電源制御信号
CWb : 電源投入実施信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置が電源供給線を介して並列に接続された複数の負荷装置に対して電源を供給する電源供給システムにおける電源ループ制御装置において、
前記負荷装置毎に異なる電源投入のタイミングが設定された設定タイミングに基づく電源投入タイミング情報を含む電源制御信号を、当該負荷装置毎に生成し、各負荷装置に対応する周波数の搬送波を当該生成した電源制御信号によって変調して、前記電源供給線に重畳する信号重畳装置と、
前記複数の負荷装置のそれぞれに対応して配置され、当該対応して配置された負荷装置に対応する周波数に基づいて前記電源供給線に重畳された搬送波を復調して前記電源制御信号を取得し、当該電源制御信号に含まれる前記電源投入タイミング情報に基づいて、当該負荷装置に対する電源供給を開始する負荷制御装置とを備え、
各前記負荷制御装置は、前記負荷装置に対する電源供給を開始したことに基づいて、電源投入実施信号を前記信号重畳装置に対して出力し、
前記信号重畳装置は、前記出力された前記電源投入実施信号を監視し、当該監視結果に基づいて負荷装置毎の前記電源投入タイミング情報を調整することを特徴とする電源ループ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源ループ制御装置において、
前記信号重畳装置は、前記電源投入実施信号を監視して、前記負荷装置毎に、実際に電源供給が開始された電源投入実施タイミングを導出し、当該電源投入実施タイミングと前記設定タイミングとの差分に基づいて、前記電源投入タイミング情報を調整することを特徴とする電源ループ制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源ループ制御装置において、
前記電源投入タイミング情報は、前記負荷制御装置が当該電源投入タイミング情報を入力されてから前記負荷装置に対して電源供給を開始するまでの遅延時間を示す遅延時間情報であって、
前記負荷制御装置は、それぞれ前記遅延時間情報の示す前記遅延時間に基づいて前記負荷装置に対する電源供給を開始することを特徴とする電源ループ制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電源ループ制御装置に備えられる前記信号重畳装置。
【請求項5】
電源装置が電源供給線を介して並列に接続された複数の負荷装置に対して電源を供給する電源供給システムにおける電源ループ制御方法において、
前記負荷装置毎に異なる電源投入のタイミングが設定された設定タイミングに基づく電源投入タイミング情報を含む電源制御信号を、当該負荷装置毎に生成し、各負荷装置に対応する周波数の搬送波を当該生成した電源制御信号によって変調して、前記電源供給線に重畳し、
各前記負荷装置に対応する周波数に基づいて前記電源供給線に重畳された搬送波を復調して前記電源制御信号を取得し、当該電源制御信号に含まれる前記電源投入タイミング情報に基づいて、各負荷装置に対する電源供給を開始し、
各前記負荷装置に対する電源供給を開始したことに基づいて、それぞれ電源投入実施信号を出力し、
前記出力された各前記電源投入実施信号を監視し、当該監視結果に基づいて負荷装置毎の前記電源投入タイミング情報を調整することを特徴とする電源ループ制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電源ループ制御方法において、
各前記電源投入実施信号を監視して、前記負荷装置毎に、実際に電源供給が開始された電源投入実施タイミングを導出し、当該電源投入実施タイミングと前記設定タイミングとの差分に基づいて、前記電源投入タイミング情報を調整することを特徴とする電源ループ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279088(P2010−279088A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126175(P2009−126175)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】