説明

電源供給装置および電源供給方法

【課題】部品点数を削減し低コストで実現可能な過電流保護回路を備えた電源供給装置および電源供給方法を提供する。
【解決手段】タイマ回路6は、比較回路5から出力される過電流信号Scを所定時間連続して受信した時、遮断信号Sを出力する。制御回路7は、タイマ回路6から出力される遮断信号Sを入力すると、チャージポンプ回路8への制御信号の出力を停止する。これにより、スイッチング素子1のゲート端子への電圧印加がなくなり、スイッチング素子1が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源供給装置および電源供給方法に関し、特にワイヤーハーネスや車両に搭載されている電装品を過電流から保護する機能を備える電源供給装置および電源供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されている電装品にワイヤーハーネスを介して電力を供給する電源供給装置には、ワイヤーハーネスや電装品を過電流による焼損等から保護するために、ヒューズが設けられている。ヒューズを用いた過電流保護回路では、過電流が発生した場合、ヒューズ溶断によって回路保護をするため、溶断したヒューズの交換等の整備(メンテナンス)を行う必要がある。このため、ヒューズを用いた過電流保護回路の設置場所が限定され、ヒューズを交換しやすい場所に設置する必要がある。しいてはワイヤーハーネスレイアウトの設計自由度が低くなる(たとえば、最適なハーネス設計ができない。また、ハーネス引き回しが増大する)。また、従来の電源供給装置には、スイッチング素子としてリレーが多く用いられているが、サイズや部品発熱が大きく装置の大型化に繋がるといった課題があった。また、電線線径は、過電流保護回路の保護特性を考慮した、適正な線径が選択されるが、ヒューズの経年劣化やばらつき等が大きいため、電線の線径が増大するといった課題があった。
【0003】
そこで、近年、ヒューズやリレーの代わりにトランジスタ素子を用いた過電流保護回路が提案されている(特許文献1参照)。この過電流保護回路は、電源と電装品との間に接続されたトランジスタ素子を備え、トランジスタ素子のソース電極とドレイン電極との間の電圧変化に基づいて過電流が発生したか否かを判定する。そして、過電流保護回路は、過電流が発生したと判定した場合、トランジスタ素子をオフすることによって電源と電装品との間の接続を遮断することにより、電装品を過電流から非破壊で保護する。このような過電流保護回路によれば、過電流が発生した場合であってもトランジスタ素子の整備を行う必要がない。従って、トランジスタ素子を用いた過電流保護回路を備えた電源供給装置は、設置場所が限定されることなく、ワイヤーハーネスレイアウトの自由度が高くなる。また、ヒューズの削減、トランジスタ素子の小型・低損失化によって装置の小型化が可能になる。さらに、ヒューズに比べて経年劣化やばらつき等を抑制することで、より小さな線径の電線を選択すること(電線細径化)が可能となる。
【0004】
ところで、電線の発煙特性示す曲線(過電流限界特性ともいう。)は、たとえば図5に示されるようなグラフで表される。図5において、横軸は電線に電流を流す時間を示し、縦軸は電線に流す電流を示している。実線は、電線の被覆材が発煙するときの時間と電流との関係を示す。電流を流してから被覆材に熱が伝わるまでに時間が掛かるため、電流を流した当初は電流が大きくても発煙に到らない。ここで、図5に示す平衡時限界電流I1は、電流が流れることによる発熱と、放熱とのバランスがとれた熱平衡状態で電流を流すことができる値である。この平衡時限界電流I1は、電線の材料および線径(電線サイズ)、等によって決まるものである。過電流限界特性曲線において、平衡時限界電流I1に対応する時刻t1より時間が小さい側かつ特性曲線より電流が小さい側の領域を過渡領域と言う。また、時刻t1より時間が大きい側かつ特性曲線より電流が小さい側の領域を熱飽和領域と呼ぶ。この熱飽和領域においては、発煙に到らずに電流を流し続けられるような電流I2が存在する。この電流I2は、その電流値を示す破線が、時間が経過しても特性曲線と交差しないような電流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、過電流保護回路を備える電源供給装置は、保護対象が焼損等しないように過電流を判定し、電流を遮断する必要がある。この過電流の判定はより高精度のものが要求される。また、過電流発生の判定精度が高いことが要求される。判定精度が低いと、保護対象の設計において、過電流発生の判定誤差を含めた設計マージンを設定しなければならない。その結果、たとえば電線の場合はその径を余分に太くしなければならないなどの設計上の制約が生じ、たとえば小型化が困難になるなどの問題が生じるからである。
【0007】
特許文献1には、CR時定数回路を用いて、過電流限界特性(特に過渡領域)を模擬することで、判定精度を向上させている。しかしながら、過電流保護回路により保護すべき電線は数が多く、CR時定数回路の部品数が多くなってしまい、実装スペースの増大を招いていた。また、特に細径電線に関しては、熱容量が少ないため、CR時定数回路による過電流限界特性(特に過渡領域)を模擬した過電流保護回路までは必要なかった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、部品点数を削減し低コストで実現可能な過電流保護回路を備えた電源供給装置および電源供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源供給装置の第1の態様は、電源から負荷に供給される電流を遮断可能なスイッチング素子と、前記負荷に供給される電流を検出してセンス電流を出力する電流検出回路と、前記センス電流が所定の過電流判定閾値以上のときに過電流信号を出力する比較回路と、前記過電流信号を入力してこれが所定時間連続して入力されたときに遮断信号を出力するタイマ回路と、外部から負荷制御信号を入力すると所定の電源供給信号を出力する一方、前記タイマ回路から前記遮断信号を入力すると前記電源供給信号を遮断する制御回路と、を具備する過電流保護回路を1以上備え、前記スイッチング素子は、前記電源供給信号が入力されると前記負荷に供給される電流を導通させる一方、前記タイマ回路で前記過電流信号を前記所定時間以上連続して入力したときには前記負荷に供給される電流を遮断することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電源供給装置の他の態様は、前記所定時間は、前記スイッチング素子から前記負荷に接続される電線の過電流限界特性に基づいて決定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る電源供給装置の他の態様は、前記スイッチング素子と前記電流検出回路とが一つのIPS(インテリジェント・パワー・スイッチ)素子で構成されており、前記電源の電圧を監視してこれが所定の遮断閾値以下に低下すると前記1以上の過電流保護回路のそれぞれの前記制御回路に前記遮断信号を出力する電圧監視部をさらに備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る電源供給装置の他の態様は、前記1以上の過電流保護回路のそれぞれに具備された前記IPS素子は、前記電源の電圧を監視してこれがそれぞれに個別に設定された遮断閾値以下に低下すると該IPS素子内の前記スイッチング素子を停止させる電圧監視手段を有しており、前記監視装置で用いられる前記遮断閾値には、前記IPS素子に個別に設定された遮断閾値の最大値が設定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る電源供給方法の第1の態様は、電源から負荷に供給される電流を遮断可能なスイッチング素子と、前記負荷に供給される電流を検出してセンス電流を出力する電流検出回路と、前記センス電流が所定の過電流判定閾値以上のときに過電流信号を出力する比較回路と、前記過電流信号を入力してこれが所定時間連続して入力されたときに遮断信号を出力するタイマ回路と、外部から負荷制御信号を入力すると所定の電源供給信号を出力する一方、前記タイマ回路から前記遮断信号を入力すると前記電源供給信号を遮断する制御回路と、を具備する過電流保護回路を1以上備えた電源供給装置による電源供給方法であって、前記タイマ回路は、前記過電流信号を前記所定時間以上連続して入力すると、前記制御回路に遮断信号を出力することで前記制御回路から出力する前記電源供給信号を遮断させて前記スイッチング素子を導通する電流を遮断させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電源供給方法の他の態様は、前記スイッチング素子と前記電流検出回路とが一つのIPS(インテリジェント・パワー・スイッチ)素子で構成されており、前記電源の電圧を監視してこれが所定の遮断閾値以下に低下すると前記1以上の過電流保護回路のそれぞれの前記制御回路に前記遮断信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部品点数を削減して簡単な構成で低コストな過電流保護回路を備えた電源供給装置および電源供給方法を実現することが可能となる。特に、熱容量が少ない細径電線に関して、過電流限界特性における過渡領域が小さいため、有効性が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電源供給装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1実施形態のタイマ回路を用いて実現される遮断特性を示す図である。
【図3】図3は、IPS素子を搭載した過電流保護回路の動作特性を示した模式図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態に係る電源供給装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、電線の過電流限界特性の一例を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明に係る電源供給装置および電源供給方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電源供給装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、電源供給装置100は、スイッチング素子1と、電流検出回路2と、I/V変換回路3と、分圧抵抗回路4(4a、4b)と、比較回路5と、タイマ回路6と、制御回路7と、チャージポンプ回路8と、を具備する過電流保護回路101(101−1〜101−N)を1以上備えている。
【0019】
スイッチング素子1は、nチャネル型のMOSFETである。スイッチング素子1は、ドレイン端子側が電圧+Bの電源(バッテリ)に接続され、ソース端子側がモータなどのDC負荷10に、電線Wを介して接続されている。また、スイッチング素子1のゲート端子はチャージポンプ回路8に接続されている。
【0020】
電流検出回路2は、スイッチング素子1のドレイン端子とソース端子との間の電圧を測定することで、スイッチング素子1を介して、DC負荷10に流れ込む負荷電流ILを検出する。さらに、電流検出回路2は、検出した負荷電流ILに対し、一定比率(例えば1/1000)のセンス電流Isを出力する。そして、出力されたセンス電流IsはI/V変換回路3により、センス電圧Vsに変換される。
【0021】
比較回路5は、オペアンプからなる比較器であり、2つの入力端子を備えており、一方の入力端子にI/V変換回路3により変換されたセンス電圧Vsが入力され、他方の入力端子に遮断閾値に相当する過電流判定電圧(過電流判定閾値)Vrefが入力される。過電流判定電圧Vrefは、分圧抵抗回路4の抵抗4a、4bにて分圧することで、所定の電圧に設定されている。そして、センス電圧Vsと過電流判定電圧Vrefを比較し、センス電圧Vsが過電流判定電圧Vrefより大きくなると、過電流信号Scを出力する。
【0022】
タイマ回路6は、比較回路5から出力される過電流信号Scを所定時間連続して受信した時、遮断信号Sを出力する。また、上記の所定時間は、電線Wの電線径に依存し、電線径が太くなるに従って、所定時間は長く設定されることになる。
【0023】
制御回路7は、タイマ回路6から出力される遮断信号Sを入力する。また、外部からDC負荷10を駆動させるための、負荷制御信号(電源供給信号)Cも入力する。
そして、DC負荷10を駆動する場合には、チャージポンプ回路8に制御信号を出力する。チャージポンプ回路8は、制御回路7からの制御信号(5V程度)を昇圧し、スイッチング素子1のゲート端子に昇圧された電圧(10〜12V程度)を出力することで、スイッチング素子1を導通させる。
【0024】
また、遮断信号Sが制御回路7に入力された場合、負荷制御信号Cが受信されていても、遮断信号Sが優先されることとなり、チャージポンプ回路8への制御信号の出力を停止することとなる。制御信号が停止されると、スイッチング素子1のゲート端子への電圧印加がなくなり、スイッチング素子1は遮断されることとなる。
なお、比較回路5、タイマ回路6、制御回路7はデジタル回路により構成することが好ましい。このようにデジタル回路で構成することで、様々な電源供給装置に柔軟に対応することが可能となる
【0025】
本実施形態のタイマ回路6を用いて実現される遮断特性を、各種電線の過電流限界特性と比較して図2に示す。図2の横軸は電線Wに電流を流す時間を示し、縦軸は電線に流す電流を示している。また、点線が各種電線の発煙特性(W1〜W3)を示しており、実線が本実施の形態の遮断特性Sdを示している。なお、W1〜W3の発煙特性は、線種として電線径3sq、0.5sq、0.2sq相当をそれぞれ模擬している。
【0026】
図2に示すように、タイマ回路6を用いることで、CR時定数回路を用いない簡単な構成で、過電流保護回路101を実現することが可能となる。特に、熱容量が少ない細径電線に関しては、W3に示すように過電流限界特性における過渡領域が小さいため、タイマ回路6を用いて実現される遮断特性Sdで代替させることができ、部品点数が多く高コストとなるCR時定数回路は必要がなくなる。また、さらに、タイマ回路はその設定次第で、所定時間の変更が容易に可能なため、様々な電源供給装置に対応させることが可能となる。
【0027】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る電源供給装置及び電源供給方法を以下に説明する。
近年、スイッチング素子1、電流検出回路2、チャージポンプ回路8の機能をまとめてIC化したIPS(インテリジェント・パワー・スイッチ)素子が開発されている。IPS素子は、通常、素子が高温になり過ぎないように、自己保護機能を備えている。この自己保護機能の一部にIPS素子に供給されている供給電圧を監視する電圧監視機能があり、IPS素子への供給電圧が低下すると、スイッチング素子1をシャットダウン(遮断)させることで、IPS素子を保護している。電圧監視機能の遮断閾値(Vth)は、過電流保護回路の用途や仕様によって変わることとなる。
【0028】
本実施形態では、スイッチング素子1等をまとめてIC化したIPS素子を用いるものとする。車両に搭載される過電流保護回路は、様々な用途、仕様のものが複数配置され、複数の過電流保護回路が、一つのバッテリから電源が供給されている。ここで、複数の過電流保護回路のそれぞれに設けられているIPS素子の遮断閾値(Vth)が異なる場合、図3のような動作となり、問題が発生してしまうことがあった。
【0029】
図3は、IPS素子を搭載した過電流保護回路の動作特性を示したものである。図3の横軸は経過時間を示し、縦軸はバッテリの供給電圧+Bを示している。
バッテリの劣化等によりバッテリからの供給電圧+Bが低下すると、IPS素子の遮断閾値(Vth)が高めに設定(例えば、5V)されている過電流保護回路は、IPS素子の電圧監視機能によりシャットダウンする(図3の点aでの動作)。一方、遮断閾値が低めに設定(例えば、3.5V)されているIPS素子を搭載したその他の過電流保護回路は、シャットダウンすることなく動作を維持することとなる。一部の過電流保護回路がシャットダウンすることでバッテリの負荷が大きく減少するため、一時的に、バッテリの供給電圧が戻る(上昇する)ことになる(図3の点bでの動作)。そして、バッテリの供給電圧がヒステリシスを加味した遮断閾値まで戻る(上昇)と、シャットダウンしていた過電流保護回路は、通常状態に戻ることが可能になるため、そのシャットダウン動作を解除する(図3の点cでの動作)。シャットダウンしていた過電流保護回路が通常状態に戻ることで、バッテリから電圧の供給を受ける負荷が再度増加するため、バッテリの供給電圧が再度下がってしまう。以下、点aから点cまでの動作を繰りかえしてしまう恐れがある。
【0030】
この点aから点cまでを繰りかえす動作が一般的にハンチング動作と呼ばれ、電線が繰り返し加熱され、繰り返し加熱された熱が蓄積され、電線の断線にいたるため、過電流保護回路をIPS素子で構成した場合は、大きな問題になる。
【0031】
本実施形態の電源供給装置及び電源供給方法は、これを解決するためになされたものであり、図4に示すような構成を有している。図4は、第2実施形態に係る電源供給装置200の構成を示すブロック図である。図1では複数の過電流保護回路101を重ねて表示していたが、図4では複数の過電流保護回路201(201−1〜201−N)を縦列させて表示している。図4は、複数の過電流保護回路201−1〜201−Nが一つのバッテリから電圧+Bを供給されている状態を示したものである。なお、過電流保護回路201のそれぞれの動作は、図1に示したとおりである。
【0032】
本実施形態の電源供給装置200では、過電流保護回路201のそれぞれにIPS素子20が搭載されており、IPS素子20にスイッチング素子1、電流検出回路2、及びチャージポンプ回路8が集積化されている。IPS素子20は、さらに電圧監視手段21を有しており、ここでバッテリからの供給電圧+Bの低下を監視している。すなわち、電圧監視手段21は、バッテリからの供給電圧+Bを監視してこれが遮断閾値Vth以下に低下すると当該のIPS素子20をシャットダウンさせる。遮断閾値Vthの値は、過電流保護回路201のそれぞれのIPS素子20で異なっていてよく、一例として図4では、過電流保護回路201−1のIPS素子20の遮断閾値Vthを3.5V、過電流保護回路201−2のIPS素子20の遮断閾値Vthを5V、過電流保護回路201−NのIPS素子20の遮断閾値Vthを4V、等としている。
【0033】
本実施形態の電源供給装置200は、N個の過電流保護回路201−1〜201−Nに対し1つの電圧監視部202を設けている。電圧監視部202は、各IPS素子20に供給される電源の電圧+Bを入力して監視しており、電圧+Bが所定の遮断閾値Vth0以下に低下したことを検出すると、N個の過電流保護回路201−1〜201−Nのそれぞれの制御回路7にIPS素子20を遮断させるための遮断信号S’を出力する。遮断信号S’が制御回路7に入力されると、制御回路7はチャージポンプ回路8への制御信号の出力を停止させる。これにより、スイッチング素子1のゲート端子への電圧印加がなくなり、スイッチング素子1は遮断されることになる。
【0034】
電圧監視部202で用いられる遮断閾値Vth0は、過電流保護回路201−1〜201−NのそれぞれのIPS素子20で用いられている遮断閾値Vthのうち最も高い電圧のものに合わせるのがよい。これにより、最も高い遮断閾値Vthを有するIPS素子20がシャットダウンされる条件に達したときに、当該IPS素子20だけでなくその他の過電流保護回路201に搭載されたIPS素子20も同時にシャットダウンされる。なお、N個の過電流保護回路201−1〜201−Nのそれぞれに設けられる分圧抵抗回路4、比較回路5、タイマ回路6、及び制御回路は1つのASICで構成することができ、さらに電圧監視部202も同じASICで形成することができる。
【0035】
本実施形態の電源供給装置200によれば、最初にシャットダウンされる条件に達したIPS素子20と同時に他のIPS素子20もすべてシャットダウンされることから、図3で例示したようなハンチングを起こすおそれはなくなる。その結果、電線が加熱されることなく安全に保護することが可能となる。本実施形態では、1つの監視部202で電圧+Bの電源に接続されているすべての過電流保護回路201のIPS素子20をシャットダウンさせるように構成することが可能である。あるいは、用途別等に分類されたブロック単位毎に監視部202を設け、各監視部202が当該のブロック内の過電流保護回路201のIPS素子20をシャットダウンさせるように構成することも可能である。
【0036】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る電源供給装置及び電源供給方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における電源供給装置及び電源供給方法の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 スイッチング素子
2 電流検出回路
3 I/V変換回路
4 分圧抵抗回路
5 比較回路
6 タイマ回路
7 制御回路
8 チャージポンプ回路
10 DC負荷
20 IPS素子
21 電圧監視手段
100、200 電源供給装置
101、201 過電流保護回路
202 電圧監視部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から負荷に供給される電流を遮断可能なスイッチング素子と、
前記負荷に供給される電流を検出してセンス電流を出力する電流検出回路と、
前記センス電流が所定の過電流判定閾値以上のときに過電流信号を出力する比較回路と、
前記過電流信号を入力してこれが所定時間連続して入力されたときに遮断信号を出力するタイマ回路と、
外部から負荷制御信号を入力すると所定の電源供給信号を出力する一方、前記タイマ回路から前記遮断信号を入力すると前記電源供給信号を遮断する制御回路と、を具備する過電流保護回路を1以上備え、
前記スイッチング素子は、前記電源供給信号が入力されると前記負荷に供給される電流を供給させる一方、前記タイマ回路で前記過電流信号を前記所定時間以上連続して入力したときには前記負荷に供給される電流を遮断する
ことを特徴とする電源供給装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記スイッチング素子から前記負荷に接続される電線の過電流限界特性に基づいて決定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電源供給装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子と前記電流検出回路とが一つのIPS(インテリジェント・パワー・スイッチ)素子で構成されており、前記電源の電圧を監視してこれが所定の遮断閾値以下に低下すると前記1以上の過電流保護回路のそれぞれの前記制御回路に前記遮断信号を出力する電圧監視部をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電源供給装置。
【請求項4】
前記1以上の過電流保護回路のそれぞれに具備された前記IPS素子は、前記電源の電圧を監視してこれがそれぞれに個別に設定された遮断閾値以下に低下すると該IPS素子内の前記スイッチング素子を停止させる電圧監視手段を有しており、
前記監視装置で用いられる前記遮断閾値には、前記IPS素子に個別に設定された遮断閾値の最大値が設定されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電源供給装置。
【請求項5】
電源から負荷に供給される電流を遮断可能なスイッチング素子と、前記負荷に供給される電流を検出してセンス電流を出力する電流検出回路と、前記センス電流が所定の過電流判定閾値以上のときに過電流信号を出力する比較回路と、前記過電流信号を入力してこれが所定時間連続して入力されたときに遮断信号を出力するタイマ回路と、外部から負荷制御信号を入力すると所定の電源供給信号を出力する一方、前記タイマ回路から前記遮断信号を入力すると前記電源供給信号を遮断する制御回路と、を具備する過電流保護回路を1以上備えた電源供給装置による電源供給方法であって、
前記タイマ回路は、前記過電流信号を前記所定時間以上連続して入力すると、前記制御回路に遮断信号を出力することで前記制御回路から出力する前記電源供給信号を遮断させて前記スイッチング素子を導通する電流を遮断させる
ことを特徴とする電源供給方法。
【請求項6】
前記スイッチング素子と前記電流検出回路とが一つのIPS(インテリジェント・パワー・スイッチ)素子で構成されており、
前記電源の電圧を監視してこれが所定の遮断閾値以下に低下すると前記1以上の過電流保護回路のそれぞれの前記制御回路に前記遮断信号を出力する
ことを特徴とする請求項5に記載の電源供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−217271(P2012−217271A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80849(P2011−80849)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】