説明

電源切替装置

【課題】複数の交流電源を実用上無瞬断で切り替えることができると共に、切替時に波形のずれが殆ど無く、電源周波数の変化を所定の範囲内に抑制することができる電源切替装置を提供する。
【解決手段】各交流電源と負荷との間に半導体スイッチ1a,1bを接続してあると共に、前記交流電源の周波数を検出する周波数検出手段12と、開放側電源と投入側電源の位相差を検出する位相差検出手段13と、前記投入側電源の周波数が前記開放側電源の周波数に対して所定の範囲内にあり、且つ、前記開放側電源と前記投入側電源の位相が略一致したときに前記半導体スイッチ1a,1bを開閉制御して前記開放側電源から前記投入側電源に切り替える切替制御手段14を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の交流電源を切り替えて使用する電源切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホテル、レジャーランド、病院、工場等の電力需要家においては、電力供給の信頼性の向上並びに電力の有効利用の観点から、商用電源と自家発電電源を需用電力量に応じて択一的に適宜切り替えて使用している。従来、商用電源と自家発電電源を切り替える電源切替装置としては、第1電源及び第2電源と負荷との間に、夫々投入用ソレノイドと引外し用ソレノイドとを備えた瞬時励磁式電磁接触器によって開閉操作される真空バルブを直列接続した瞬時励磁式電源切替器が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−254323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の瞬時励磁式電源切替器は、商用電源と自家発電電源との切り替えを真空バルブによって機械的に行っているために、切替時に10mS程度の瞬断が発生する。また、この瞬時励磁式電源切替器は、切替時間をタイマーにより制御しているために、切替時に電源周波数が変動したり、商用電源と自家発電電源の位相差により波形が乱れたりするという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、複数の交流電源を実用上無瞬断で切り替えることができると共に、切替時に波形のずれが殆ど無く、電源周波数の変化を所定の範囲内に抑制することができる電源切替装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、複数の交流電源を切り替える電源切替装置であって、各交流電源と負荷との間に半導体スイッチを接続してあると共に、前記交流電源の周波数を検出する周波数検出手段と、開放側電源と投入側電源の位相差を検出する位相差検出手段と、前記投入側電源の周波数が前記開放側電源の周波数に対して所定の範囲内にあり、且つ、前記開放側電源と前記投入側電源の位相が略一致したときに前記半導体スイッチを開閉制御して前記開放側電源から前記投入側電源に切り替える切替制御手段を設けた電源切替装置を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、前記半導体スイッチがサイリスタスイッチである請求項1に記載の電源切替装置を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、電源切替時の前記投入側電源の周波数の範囲を設定する切替周波数設定手段を備えた請求項1又は2に記載の電源切替装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電源切替装置によれば、複数の交流電源を切り替える電源切替装置であって、各交流電源と負荷との間に半導体スイッチを接続してあると共に、前記交流電源の周波数を検出する周波数検出手段と、開放側電源と投入側電源の位相差を検出する位相差検出手段と、前記投入側電源の周波数が前記開放側電源の周波数に対して所定の範囲内にあり、且つ、前記開放側電源と前記投入側電源の位相が略一致したときに前記半導体スイッチを開閉制御して前記開放側電源から前記投入側電源に切り替える切替制御手段を設けた構成を有することにより、投入側電源の周波数を同期に近付けて所定の範囲に入ると自動的に開放側電源から投入側電源に切り替えることができる。また、半導体スイッチによって開放側電源から投入側電源に実用上無瞬断で切り替えることができると共に、切替時に波形のずれが殆ど無く、電源周波数の変化を所定の範囲内に抑制することができる効果がある。
【0010】
また、本発明は、前記半導体スイッチがサイリスタスイッチである請求項1に記載の構成を有することにより、更に高速に電源を切り替えることができると共に、高圧電源に使用することができる効果がある。
【0011】
また、本発明は、電源切替時の前記投入側電源の周波数の範囲を設定する切替周波数設定手段を備えた請求項1又は2に記載の構成を有することにより、電源に接続された負荷の特性に応じて適切な投入側電源の周波数の範囲を設定することができるから、電灯のように電源周波数の影響を受け難い負荷の場合には切替周波数の範囲を広く設定して迅速に電源の切り替えを行うことができると共に、電動機のように電源周波数の影響を受け易い負荷の場合には切替周波数の範囲を狭く設定して電源周波数の変化による影響を抑制することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図示する実施例に基づいて説明する。
本発明に係る電源切替装置10は、各交流電源と負荷との間に半導体スイッチ1a,1bを接続してあると共に、前記交流電源の周波数を検出する周波数検出手段12と、開放側電源と投入側電源の位相差を検出する位相差検出手段13と、前記投入側電源の周波数が前記開放側電源の周波数に対して所定の範囲内にあり、且つ、前記開放側電源と前記投入側電源の位相が略一致したときに前記半導体スイッチ1a,1bを開閉制御して前記開放側電源から前記投入側電源に切り替える切替制御手段14を設けてある。
【実施例1】
【0013】
図1に示す実施例において、電源切替装置10は、二つの入力端3a,3bと、共通の出力端4を設けてある。一方の入力端3aには給電線を介して交流電源Aを接続し、他方の入力端3bには給電線を介して交流電源Bを接続してあると共に、共通の出力端4には負荷を接続してある。電源切替装置10は、交流電源Aと交流電源Bを必要に応じて択一的に適宜切り替えて使用することができるように構成してある。図示の実施例の場合、交流電源Aは商用電源であり、交流電源Bは自家発電電源である。
【0014】
図1に示す実施例において、電源切替装置10は、一方の入力端3aと共通の出力端4との間に半導体スイッチ1aを接続してあり、他方の入力端3bと共通の出力端4との間に半導体スイッチ1bを接続してある。半導体スイッチ1a,1bは、一対のサイリスタ2,2を互いに逆並列接続したサイリスタスイッチからなり、切替制御手段13のスイッチング信号により開閉制御される。半導体スイッチ1a,1bは、二つの入力端3a,3bの一方を接続し他方を開放することにより、接続中の開放側電源から未接続の投入側電源に切り替えることができるように構成してある。この電源切替装置10は、サイリスタ2のトリガに要する時間(4μS以下)で交流電源を切り替えることができる。
【0015】
図1中の5は制御ユニットであり、切替指示手段11と周波数検出手段12と位相差検出手段13と切替制御手段14と切替周波数設定手段15を備えている。制御ユニット5は、計器用変成器6,6を介して交流電源A及び交流電源Bの電源系統に接続してあり、電圧、電流、周波数等を測定することができるようにしてある。図2に示すように、切替指示手段11は、「交流電源Aから交流電源B」又は「交流電源Bから交流電源A」の切替指示を入力することにより、交流電源Aから交流電源Bへの切替信号(A)、又は、交流電源Bから交流電源Aへの切替信号(A)を出力するようにしてある。
【0016】
図2に示すように、切替周波数設定手段15は、電源切替時の投入側電源の周波数の範囲を設定することができるように構成してある。図示の実施例の場合、商用電源である交流電源Aの周波数は安定しているから、切替周波数設定手段15は、交流電源Aから自家発電電源である交流電源Bに切り替える場合に、投入側電源である交流電源Bの周波数の上限と下限を設定することができるようにしてある。周波数検出手段12は、交流電源Bの周波数を検出し、切替周波数設定手段15で設定した周波数の上限又は下限に一致したときに周波数信号(B)を出力するようにしてある。なお、切替周波数設定手段15は、電源切替時の投入側電源の周波数の範囲を開放側電源の周波数を基準にして設定することもでき、周波数検出手段12が、投入側電源と開放側電源の周波数を検出し、投入側電源の周波数が開放側電源の周波数に対して設定の範囲に入ったときに周波数信号(B)を出力するようにすることも可能である。
【0017】
位相差検出手段13は、交流電源Aと交流電源Bの位相を比較して、図4に示すように、交流電源Aと交流電源Bの位相差を位相差パルスとして検出することができるように構成してある。位相差検出手段13は、図3の(ハ)のように、検出した位相差パルス幅が設定したパルス幅以下になったときに位相信号(C)を出力することができるようにしてある。
【0018】
切替制御手段14は、上記の切替信号(A)と周波数信号(B)と位相差信号(C)を受信することができるようにしてある。図3に示すように、切替制御手段14は、切替信号(A)と周波数信号(B)と位相差信号(C)の全ての信号を受信したときに、a接信号又はb接信号のスイッチング信号を出力し、半導体スイッチ1a,1bを開閉制御して交流電源を切り替えることができるように構成してある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電源切替装置の一実施例を示す回路図。
【図2】その一実施例を示す制御ブロック図。
【図3】その一実施例を示す制御ブロック図。
【図4】その一実施例の動作状態を示す図。
【符号の説明】
【0020】
1a,1b 半導体スイッチ
2 サイリスタ
3a,3b 入力端
4 出力端
5 制御ユニット
10 電源切替装置
11 切替指示手段
12 周波数検出手段
13 位相差検出手段
14 切替制御手段
15 切替周波数設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の交流電源を切り替える電源切替装置であって、各交流電源と負荷との間に半導体スイッチを接続してあると共に、前記交流電源の周波数を検出する周波数検出手段と、開放側電源と投入側電源の位相差を検出する位相差検出手段と、前記投入側電源の周波数が前記開放側電源の周波数に対して所定の範囲内にあり、且つ、前記開放側電源と前記投入側電源の位相が略一致したときに前記半導体スイッチを開閉制御して前記開放側電源から前記投入側電源に切り替える切替制御手段を設けた電源切替装置。
【請求項2】
前記半導体スイッチがサイリスタスイッチである請求項1に記載の電源切替装置。
【請求項3】
電源切替時の前記投入側電源の周波数の範囲を設定する切替周波数設定手段を備えた請求項1又は2に記載の電源切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−166844(P2007−166844A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362760(P2005−362760)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(505466217)エコン株式会社 (1)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】