説明

電源制御システムおよび方法

【課題】少ない作業負担で各負荷装置の正常運用を維持する。
【解決手段】各供給制御装置10で、自装置に対応する負荷装置1の動作状況を示す物理量を計測し、得られた計測値を指示装置20へ送信し、指示装置20からの指示に応じて、自装置に対応する負荷装置1への電源の供給開始/供給停止を制御し、指示装置20で、各供給制御装置10から受信した計測値としきい値とをそれぞれ比較することにより負荷装置1での異常発生を監視し、異常発生が確認された場合、当該負荷装置1に対する電源供給停止の指示を当該供給制御装置10へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御技術に関し、特に遠隔地にある負荷装置へ電源供給を遠隔制御する電源遠隔制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の負荷装置に対して共通の電源装置から電源供給を行う場合、いずれかの負荷装置で発生した障害により、他の負荷装置への電源供給に影響が及ばないよう、障害発生した負荷装置への電源供給を停止する必要がある。電源制御システムは、このような負荷装置での障害発生を指示装置で監視して、各負荷装置への電源供給を個別に制御するシステムである。
このような電源制御システムでは、各負荷装置がそれぞれ離れた遠隔地に設置されている場合に適用するため、指示装置と負荷装置との間で通信を行う必要がある。
【0003】
遠隔地に設置されている負荷装置に対する電源供給を遠隔制御する技術として、電源供給配線に搬送波周波数で変調した制御信号を重畳する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。この技術では、制御器でのスイッチ操作に応じて、当該スイッチと対応する搬送波周波数を用いた制御信号を、制御器から供給電源に重畳して負荷装置へ送信し、各負荷装置で自装置の搬送周波数に応じた制御信号を判別させ、その制御信号に基づき負荷装置が電源供給の開始/停止を制御するものとなっている。
【0004】
しかしながら、このような遠隔制御技術は、負荷装置の電源を開閉することのみが制御目的であることから、制御器から負荷装置を一方的に制御する構成となっている。このため、指示装置で各負荷装置の正常性を把握することはできず、適切な電源制御を行うことができなかった。
【0005】
これに対して、従来、負荷装置で検出した動作状態を示す信号を、搬送波周波数で変調して電力供給経路に重畳することにより供給装置へ通知する技術が提案されている(例えば、特許文献2など参照)。この技術では、負荷装置で自装置の負荷が軽負荷か高負荷か判定し、この判定結果を搬送波周波数で変調して供給装置へ通知し、負荷装置から通知された判定結果が軽負荷の場合には、供給装置側で余剰電力を発生させて負荷装置へ供給される電力を小さくし、判定結果が高負荷の場合には、供給装置側で余剰電力の発生を停止して負荷装置へ供給される電力を大きくするものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−209031号公報
【特許文献2】特開昭62−196028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来技術では、負荷装置に動作状況を判定する構成を設け、負荷装置で判定した軽負荷/高負荷の判定結果を供給装置に通知して、負荷装置に対する電源供給を制御しているため、正常運用するためには多くの作業負担が必要となるという問題点があった。
【0008】
すなわち、各負荷装置に自装置の動作状況を判定する構成を設けた場合、動作状況を判定するための判定情報を、各負荷装置に予め設定しておく必要がある。このため、電源制御システムを導入する際、あるいは導入後に正常運用を目的として判定基準を変更する際、各負荷装置が設置されている現場へ出向いて判定情報を設定変更する必要があり、メンテナンスにかかる作業負担が大きい。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、少ない作業負担で各負荷装置の正常運用を維持できる電源制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかる電源供給制御システムは、電源が供給されている電源供給配線と各負荷装置との間にそれぞれ設けられて、当該負荷装置に対する電源の供給を制御する複数の供給制御装置と、これら供給制御装置に対して電源の供給開始/供給停止を個別に指示する指示装置とを備え、供給制御装置に、自装置に固有の搬送波周波数を用いて変調した制御信号を、電源供給配線を介して送受信することにより、指示装置との間でデータ通信を行うデータ通信部と、自装置に対応する負荷装置の動作状況を示す物理量を計測し、得られた計測値をデータ通信部から指示装置へ送信する動作状況通知部と、データ通信部で受信した指示装置からの指示に応じて、自装置に対応する負荷装置への電源の供給開始/供給停止を制御する供給制御部とを含み、指示装置に、供給制御装置ごとに固有の搬送波周波数を用いて変調した制御信号を、電源供給配線を介して送受信することにより、それぞれの供給制御装置との間で個別にデータ通信を行うデータ通信部と、計測値に基づき電源の供給開始/供給停止の要否を判定するためのしきい値を記憶する判定情報記憶部と、データ通信部で受信した各供給制御装置からの計測値と、判定情報記憶部のしきい値とをそれぞれ比較することにより、負荷装置での異常発生を監視する監視部と、監視部で異常発生を確認した場合、当該負荷装置に対する電源供給停止の指示を、データ通信部から当該供給制御装置へ送信する指示部とを含む。
【0011】
また、本発明にかかる電源供給制御方法は、電源が供給されている電源供給配線と各負荷装置との間にそれぞれ設けられて、当該負荷装置に対する電源の供給を制御する複数の供給制御装置と、これら供給制御装置に対して電源の供給開始/供給停止を個別に指示する指示装置とを備え、各供給制御装置と指示装置とが、当該供給制御装置に固有の搬送波周波数を用いて変調した制御信号を、電源供給配線を介して互いに送受信することにより、各供給制御装置と指示装置との間で個別にデータ通信を行う電源供給制御システムで用いられる電源供給制御方法であって、供給制御装置が、自装置に対応する負荷装置の動作状況を示す物理量を計測し、得られた計測値をデータ通信で指示装置へ送信する動作状況通知ステップと、指示装置が、データ通信で受信した各供給制御装置からの計測値と、判定情報記憶部で記憶しているしきい値とをそれぞれ比較することにより、負荷装置での異常発生を監視する監視ステップと、指示装置が、監視ステップで異常発生を確認した場合、当該負荷装置に対する電源供給停止の指示を、データ通信で当該供給制御装置へ送信する指示ステップと、供給制御装置が、データ通信で受信した指示装置からの指示に応じて、自装置に対応する負荷装置への電源の供給開始/供給停止を制御する供給制御ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、負荷装置の動作状況を各負荷装置ではなく指示装置で行っているため、動作状況を判定するためのしきい値などの判定情報を、指示装置で一元的に管理することができる。
これにより、電源制御システムを導入する際、あるいは導入後に正常運用を目的として判定基準を変更する際、指示装置の設定部で判定情報記憶部のしきい値を設定変更するだけで対応できる。このため、各負荷装置が設置されている現場へ出向いて判定情報を設定変更する必要がなくなり、メンテナンスにかかる作業負担を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態にかかる電源供給制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】判定情報の構成例である。
【図3】本実施形態にかかる電源供給制御システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
[電源供給制御システム]
まず、図1を参照して、本発明の本実施形態にかかる電源供給制御システムについて説明する。図1は、本実施形態にかかる電源供給制御システムの構成を示すブロック図である。
【0015】
この電源供給制御システム100は、複数の負荷装置1(1A〜1N)に対して共通の電源装置2から電源供給配線3を介して電源供給を行う場合、いずれかの負荷装置1で発生した障害により、他の負荷装置1への電源供給に影響が及ばないよう、障害発生した負荷装置を電源供給配線3から切り離して、電源供給を停止するシステムである。電源供給制御システム100が適用される具体的なアプリケーションとしては、例えば負荷装置1に対応する無線基地局装置に対する電源供給を制御するシステムなどがある。
【0016】
電源供給制御システム100には、主な装置として、電源が供給されている電源供給配線3と各負荷装置1(1A〜1N)との間にそれぞれ設けられて、当該負荷装置1に対する電源の供給を制御する複数の供給制御装置10(10A〜10N)と、これら供給制御装置10に対して電源の供給開始/供給停止を個別に指示する指示装置20とが設けられている。
【0017】
本実施形態は、各供給制御装置10と指示装置20との間で、それぞれの供給制御装置10に固有の搬送波周波数を用いて変調した制御信号を、電源供給配線3を介して送受信することによりデータ通信を行う。また、各供給制御装置10で、自装置に対応する負荷装置1の動作状況を示す物理量を計測し、得られた計測値を指示装置20へ送信し、指示装置20からの指示に応じて、自装置に対応する負荷装置1への電源の供給開始/供給停止を制御し、指示装置20で、各供給制御装置10から受信した計測値としきい値とをそれぞれ比較することにより負荷装置1での異常発生を監視し、異常発生が確認された場合、当該負荷装置1に対する電源供給停止の指示を当該供給制御装置10へ送信するようにしたものである。
【0018】
[供給制御装置]
次に、図1を参照して、本実施形態にかかる供給制御装置10の構成について詳細に説明する。
供給制御装置10(10A〜10N)は、それぞれ同じ構成を有しており、主な機能部として、データ通信部11、動作状況通知部12、および供給制御部13が設けられている。
【0019】
データ通信部11は、専用のデータ通信回路からなり、自装置に固有の搬送波周波数を用いて変調した制御信号を、電源供給配線3を介して送受信することにより、指示装置20との間でデータ通信を行う機能を有している。
【0020】
動作状況通知部12は、自装置に対応する負荷装置1の動作状況を示す物理量を、定期的あるいは常時、センサで計測する機能と、定期的にあるいは計測値の変化に応じて、得られた計測値をデータ通信部11から指示装置20へ送信する機能とを有している。動作状況を示す物理量としては、負荷装置1の内部温度、消費電流、消費電力、動作電圧、動作クロック周波数など、負荷装置1の動作状況に応じて変化する物理量を用いればよい。
【0021】
供給制御部13は、データ通信部11で受信した指示装置20からの指示に応じて、自装置に対応する負荷装置1への電源の供給開始/供給停止を制御する機能を有している。実際の供給開始/供給停止については、電源供給配線3に直列接続されたリレーなどのスイッチング素子を、指示内容に基づいて短絡動作/開放動作させればよい。
供給制御装置10における、動作状況通知部12や供給制御部13については、専用の論理回路で構成してもよく、CPUを用いて構成してもよい。
【0022】
[指示装置]
次に、図1を参照して、本実施形態にかかる指示装置20の構成について詳細に説明する。
指示装置20には、主な機能部として、データ通信部21、判定情報記憶部22、設定部23、監視部24、および指示部25が設けられている。
【0023】
データ通信部21は、専用のデータ通信回路からなり、各供給制御装置10に固有の搬送波周波数を用いて変調した制御信号を、電源供給配線3を介して送受信することにより、それぞれの供給制御装置10との間で個別にデータ通信を行う機能を有している。
【0024】
判定情報記憶部22は、半導体メモリなどの記憶装置からなり、各供給制御装置10から通知された計測値に基づき、当該供給制御装置10の負荷装置1に対する電源の供給開始/供給停止を判定するためのしきい値を記憶する機能を有している。ここでは、各負荷装置1で共通する共通しきい値を記憶してもよく、各負荷装置1ごとに固有の個別しきい値を記憶してもよい。
【0025】
図2は、判定情報の構成例である。ここでは、計測値として各負荷装置1の内部温度が用いられており、負荷装置1ごとに、それぞれ個別の上限内部温度がしきい値として設定されている。
設定部23は、キーボードやテンキーなどの操作入力装置からなり、操作入力されたしきい値を判定情報記憶部22へ設定する機能を有している。
【0026】
監視部24は、データ通信部21で受信した各供給制御装置10からの計測値を、判定情報記憶部22から読み出した、共通しきい値、あるいは当該供給制御装置10の負荷装置1に対応する個別しきい値と、それぞれ比較する機能と、この比較結果に応じて負荷装置1での異常発生の有無を監視する機能を有している。負荷装置1に対応する個別しきい値を選択する際、計測値の送信元となる供給制御装置10については、データ通信部21で受信した搬送波周波数で識別でき、供給制御装置10と負荷装置1とが1対1の場合には負荷装置1を特定できる。なお、供給制御装置10から計測値を送信する際、負荷装置1の識別情報を付加して送信するようにしてもよく、供給制御装置10と負荷装置1とが1対多の場合にも対応できる。
【0027】
指示部25は、監視部24で異常発生が確認された場合、当該負荷装置1に対する電源供給停止の指示を、データ通信部21から当該供給制御装置10へ送信する機能を有している。
指示装置20における、監視部24や指示部25については、専用の論理回路で構成してもよく、CPUを用いて構成してもよい。
【0028】
[本実施形態の動作]
次に、図3を参照して、本実施形態にかかる電源供給制御システム100の動作について詳細に説明する。図3は、本実施形態にかかる電源供給制御システムの動作を示すシーケンス図である。
【0029】
ここでは、供給制御装置10Aと指示装置20との間の電源制御動作を例として説明するが、この他の供給制御装置10B〜10Nと指示装置20との間の電源制御動作についても、供給制御装置10Aと同様である。また、電源制御動作を開始する前に、指示装置20の設定部23において、操作入力されたしきい値が判定情報記憶部22に予め設定されているものとする。
【0030】
まず、負荷装置1Aでの異常発生に応じた電源供給停止動作について説明する。
供給制御装置10Aは、動作状況通知部12により、自装置に対応する負荷装置1Aの動作状況を示す物理量を、定期的あるいは常時、センサで計測し(ステップ100)、定期的にあるいは計測値の変化に応じて、得られた計測値を含む状況通知をデータ通信部11から指示装置20へ送信する(ステップ101)。
【0031】
指示装置20は、監視部24により、データ通信部21で供給制御装置10Aから状況通知を受信した場合、共通しきい値あるいは供給制御装置10Aの負荷装置1Aに対応する個別しきい値を、判定情報記憶部22から読み出し(ステップ102)、受信した状況通知に含まれている計測値と、読み出したしきい値とを比較し、この比較結果に応じて負荷装置1Aでの異常発生の有無を監視する(ステップ103)。
【0032】
ここで、計測値が異常状態を示すしきい値に達しており、監視部24により、負荷装置1Aでの異常発生が確認された場合(ステップ104:YES)、指示装置20は、指示部25により、負荷装置1Aに対する電源供給停止の指示を、データ通信部21から供給制御装置10Aへ送信する(ステップ105)。
供給制御装置10Aは、データ通信部11で受信した指示装置20からの電源供給停止指示に応じて、供給制御部13により、自装置に対応する負荷装置1Aへの電源供給を停止する(ステップ106)。
【0033】
次に、負荷装置1Aでの正常復旧に応じた電源供給再開動作について説明する。
負荷装置1Aへの電源供給を停止した後、供給制御装置10Aは、継続して、動作状況通知部12により、自装置に対応する負荷装置1Aの動作状況を示す物理量を、定期的あるいは常時、センサで計測し(ステップ110)、定期的にあるいは計測値の変化に応じて、得られた計測値を含む状況通知をデータ通信部11から指示装置20へ送信する(ステップ111)。
【0034】
指示装置20は、監視部24により、データ通信部21で供給制御装置10Aから状況通知を受信した場合、共通しきい値あるいは供給制御装置10Aの負荷装置1Aに対応する個別しきい値を、判定情報記憶部22から読み出し(ステップ112)、受信した状況通知に含まれている計測値と、読み出したしきい値とを比較し、この比較結果に応じて負荷装置1Aでの異常発生の有無を監視する(ステップ113)。
【0035】
ここで、計測値が異常状態を示すしきい値に達しておらず、監視部24により、負荷装置1Aでの正常復旧が確認された場合(ステップ114:YES)、指示装置20は、指示部25により、負荷装置1Aに対する電源供給開始の指示を、データ通信部21から供給制御装置10Aへ送信する(ステップ115)。
供給制御装置10Aは、データ通信部11で受信した指示装置20からの電源供給開始指示に応じて、供給制御部13により、自装置に対応する負荷装置1Aへの電源供給を開始する(ステップ116)。
【0036】
したがって、負荷装置1Aで異常が発生して内部温度が上昇した場合、その内部温度の計測値が供給制御装置10Aから指示装置20へ通知され、指示装置20で予め設定されているしきい値と比較される。ここで、負荷装置1Aの異常発生が確認された場合、指示装置20から供給制御装置10Aへ電源供給停止が指示され、供給制御装置10Aで負荷装置1Aに対する電源供給が停止される。
【0037】
この後、負荷装置1Aが正常状態に復旧して内部温度が低下した場合、その内部温度の計測値が供給制御装置10Aから指示装置20へ通知され、指示装置20で予め設定されているしきい値と比較される。ここで、負荷装置1Aの正常復旧が確認された場合、指示装置20から供給制御装置10Aへ電源供給開始が指示され、供給制御装置10Aで負荷装置1Aに対する電源供給が再開される。
【0038】
[本実施形態の効果]
このように、本実施形態は、各供給制御装置10で、自装置に対応する負荷装置1の動作状況を示す物理量を計測し、得られた計測値を指示装置20へ送信し、指示装置20からの指示に応じて、自装置に対応する負荷装置1への電源の供給開始/供給停止を制御し、指示装置20で、各供給制御装置10から受信した計測値としきい値とをそれぞれ比較することにより負荷装置1での異常発生を監視し、異常発生が確認された場合、当該負荷装置1に対する電源供給停止の指示を当該供給制御装置10へ送信する。
【0039】
したがって、負荷装置1の動作状況を各負荷装置1ではなく指示装置20で行っているため、動作状況を判定するためのしきい値などの判定情報を、指示装置20で一元的に管理することができる。これにより、電源制御システムを導入する際、あるいは導入後に正常運用を目的として判定基準を変更する際、指示装置20の設定部23で判定情報記憶部22のしきい値を設定変更するだけで対応できる。このため、各負荷装置1が設置されている現場へ出向いて判定情報を設定変更する必要がなくなり、メンテナンスにかかる作業負担を大幅に削減できる。
【0040】
また、指示装置20でしきい値を設定できることから、例えば、負荷装置1の運用品質が劣化すると判断されるしきい値や、負荷装置1自体の火災が疑われると判断されるしきい値など、電源制御システムが適用されるアプリケーションで必要とされる最適な判定情報を容易に設定することが可能となる。
【0041】
[実施形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0042】
また、前述した実施形態では、判定情報記憶部22において、供給制御装置10から通知された計測値に基づいて、負荷装置1に対する電源の供給開始/供給停止の要否を判定するためのしきい値を記憶する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、判定情報記憶部22において、しきい値だけでなく、指示装置20の監視部24で電源の供給開始/供給停止の要否判定に用いる判定式を記憶しておき、設定部23で設定変更可能とするようにしてもよい。またこの判定式は、各負荷装置1に共通のものであってもよく、各負荷装置1に個別の判定式をそれぞれ記憶してもよい。
【0043】
また、前述した実施形態において、負荷装置1での異常発生と正常復旧の判定について、それぞれ別個のしきい値を用いるように判定式を変更してもよい。
具体的には、異常発生を判定するしきい値となる内部温度に比べて、正常復旧を判定するしきい値となる内部温度を、十分低い温度に設定することもできる。これにより、電源供給を再開する際、より高い安全性を得ることができる。
あるいは、異常発生を判定するしきい値となる内部温度に比べて、より高い温度を故障発生を判定するしきい値として設定してもよい。これにより、負荷装置1の内部温度が、異常発生判定用のしきい値を越えて、故障発生判定用のしきい値に達した場合には、負荷装置1での故障発生により復旧不可能と判断して、その後に内部温度が低下したことが確認できた場合でも、電源供給を再開しないなどの判定を行うことができる。
【0044】
また、前述した実施形態において、各負荷装置1の電源起動タイミングを制御するようにしてもよい。
一般に、複数の負荷装置1に対して共通の電源装置2から電源供給を行う場合、各負荷装置1へ同時に供給を開始した場合、電源装置2に対して急激な負荷変動が発生して電源装置2の電源供給負担が大きいことから、各負荷装置1の電源起動タイミングをずらす制御を行う場合がある。
【0045】
この際、電源装置2から各負荷装置1までの区間距離は、負荷装置1ごとに異なるものであり、また供給制御装置10が指示装置2からの電源供給開始指示を受信してから、実際に負荷装置1へ電源供給が開始される遅延時間にもバラツキがある。このため、指示装置2で意図した電源起動タイミングと異なる相対時間で各負荷装置1が電源起動される懸念がある。
【0046】
したがって、本実施の形態にかかる電源供給制御システム100において、指示装置2の判定情報記憶部22に、各負荷装置1の電源起動タイミングをずらす目的で、負荷装置1ごとに標準的な電源起動遅延時間を設定しておき、指示部25が、この電源起動遅延時間に基づいて、各負荷装置1に対する電源供給開始指示を、データ通信部21から当該負荷装置1に対応する供給制御装置10へ順次送信する。
【0047】
一方、供給制御装置10の供給制御部13は、データ通信部11を介して指示装置2から電源供給開始指示を受信した際、自装置に対応する負荷装置1へ電源供給を開始するとともに、この電源供給開始を示す電源起動実施通知を、データ通信部11から指示装置2へ折り返し送信する。
【0048】
指示装置20の指示部25は、データ通信部21を介して供給制御装置10から電源起動実施通知を受信することにより、電源供給開始指示の送信から電源起動実施通知の受信までの期間、すなわち当該負荷装置1の実際の電源起動の相対時間を計測し、この計測結果に基づいて、判定情報記憶部22に設定されている各負荷装置1の電源起動制御情報を再調整する。
【0049】
これにより、各負荷装置1の電源起動タイミングを正確に調整することができ、システム設計値に近づけることが可能となる。このため、前述した本実施の形態にかかる電源供給制御システム100において、各負荷装置1の起動時における電源装置2に対する電源供給負担を大幅に軽減できる。
【0050】
また、各負荷装置1の起動時においても、任意の負荷装置1の動作状況を示す計測値が各供給制御装置10から指示装置20へ通知されることから、監視部24において前述のようにして任意の負荷装置1で異常発生が確認された場合には、指示部25において当該負荷装置1の電源起動を中止することができる。したがって、各負荷装置1を順次電源起動する場合でも、高い安全性を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
100…電源供給制御システム、1,1A,1B〜1N…負荷装置、2…電源装置、3…電源供給配線、10…供給制御装置、11…データ通信部、12…動作状況通知部、13…供給制御部、20…指示装置、21…データ通信部、22…判定情報記憶部、23…設定部、24…監視部、25…指示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源が供給されている電源供給配線と各負荷装置との間にそれぞれ設けられて、当該負荷装置に対する前記電源の供給を制御する複数の供給制御装置と、これら供給制御装置に対して前記電源の供給開始/供給停止を個別に指示する指示装置とを備え、
前記供給制御装置は、
自装置に固有の搬送波周波数を用いて変調した制御信号を、前記電源供給配線を介して送受信することにより、前記指示装置との間でデータ通信を行うデータ通信部と、
自装置に対応する前記負荷装置の動作状況を示す物理量を計測し、得られた計測値を前記データ通信部から前記指示装置へ送信する動作状況通知部と、
前記データ通信部で受信した前記指示装置からの指示に応じて、自装置に対応する前記負荷装置への前記電源の供給開始/供給停止を制御する供給制御部と
を含み、
前記指示装置は、
前記供給制御装置ごとに固有の搬送波周波数を用いて変調した制御信号を、前記電源供給配線を介して送受信することにより、それぞれの供給制御装置との間で個別にデータ通信を行うデータ通信部と、
前記計測値に基づき前記電源の供給開始/供給停止の要否を判定するためのしきい値を記憶する判定情報記憶部と、
前記データ通信部で受信した前記各供給制御装置からの前記計測値と、前記判定情報記憶部のしきい値とをそれぞれ比較することにより、前記負荷装置での異常発生を監視する監視部と、
前記監視部で異常発生を確認した場合、当該負荷装置に対する電源供給停止の指示を、前記データ通信部から当該供給制御装置へ送信する指示部と
を含む
ことを特徴とする電源供給制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電源供給制御システムにおいて、
前記判定情報記憶部は、前記しきい値を前記負荷装置ごとに個別に記憶し、
前記監視部は、前記計測値と前記しきい値とを比較する際、当該計測値を得た負荷装置に対応するしきい値を前記判定情報記憶部から取得して、当該計測値と比較する
ことを特徴とする電源供給制御システム。
【請求項3】
電源が供給されている電源供給配線と各負荷装置との間にそれぞれ設けられて、当該負荷装置に対する前記電源の供給を制御する複数の供給制御装置と、これら供給制御装置に対して前記電源の供給開始/供給停止を個別に指示する指示装置とを備え、前記各供給制御装置と前記指示装置とが、当該供給制御装置に固有の搬送波周波数を用いて変調した制御信号を、前記電源供給配線を介して互いに送受信することにより、前記各供給制御装置と前記指示装置との間で個別にデータ通信を行う電源供給制御システムで用いられる電源供給制御方法であって、
前記供給制御装置が、自装置に対応する前記負荷装置の動作状況を示す物理量を計測し、得られた計測値を前記データ通信で前記指示装置へ送信する動作状況通知ステップと、
前記指示装置が、前記データ通信で受信した前記各供給制御装置からの前記計測値と、判定情報記憶部で記憶しているしきい値とをそれぞれ比較することにより、前記負荷装置での異常発生を監視する監視ステップと、
前記指示装置が、前記監視ステップで異常発生を確認した場合、当該負荷装置に対する電源供給停止の指示を、前記データ通信で当該供給制御装置へ送信する指示ステップと、
前記供給制御装置が、前記データ通信で受信した前記指示装置からの指示に応じて、自装置に対応する前記負荷装置への前記電源の供給開始/供給停止を制御する供給制御ステップと
を備えることを特徴とする電源供給制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電源供給制御方法において、
前記指示装置が、予め前記判定情報記憶部で、前記しきい値を前記負荷装置ごとに個別に記憶するステップをさらに備え、
前記監視ステップは、前記計測値と前記しきい値とを比較する際、当該計測値を得た負荷装置に対応するしきい値を前記判定情報記憶部から取得して、当該計測値と比較する
ことを特徴とする電源供給制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−101487(P2011−101487A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253998(P2009−253998)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】