説明

電源回路の故障検出装置

【課題】電源電圧を平滑化するためのコンデンサの故障を精度良く報知すること。
【解決手段】電源回路の故障検出装置は、スイッチングレギュレータ13の出力側である電力供給経路に接続されたコンデンサCの故障を検出する。スイッチングレギュレータ13の出力電力を、マイコン15からの停止信号SPによりマイコン消費電力に基づいて設定された所定の停止時間tspだけ停止させる。この停止期間中に、電力供給経路の電圧レベルがマイコン15への動作電圧Vcc未満となった場合、故障報知部17によりコンデンサCが故障と報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ電圧をスイッチングレギュレータで所定レベル低下させ、この低下電圧を平滑化するためのコンデンサの故障を検出する電源回路の故障検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、特許文献1に記載のように、各種アクチュエータを駆動させる制御ユニットとして、圧力や車速検出等を行うセンサや、制御演算を行うマイコン(マイクロコンピュータ)並びにトランジスタ・IC等を有する駆動回路等が設けられている。これら駆動回路、マイコン及びセンサ等の電力供給対象は各々使用電圧が異なるので、バッテリ電源の電圧を複数のレギュレータで所定電圧に降下させて電力供給対象に供給するようになっている。
【0003】
そのレギュレータは、スイッチング素子と、このスイッチング素子によるオン/オフ電圧を平滑化し、電圧変動による誤検知等を無くすためのダイオード、コイル及びコンデンサを組み合わせた平滑化回路を備えて構成されている。しかし、コンデンサが劣化や破損等で故障すると、コンデンサ以降に接続された電力供給対象の作動が不安定となる。
【0004】
このため、例えば図10に示すように、スイッチングレギュレータ13の出力電圧V2を平滑化した電圧V3を、マイコン15でモニタリングしてコンデンサCの故障を検出する電源回路の故障検出装置がある。
【0005】
この故障検出装置は、直流電源であるバッテリ11と、イグニッションスイッチ12と、ECU(電子制御ユニット)20とを備えて構成されている。ECU20は、バッテリ11にイグニッションスイッチ12を介して一端が接続されたスイッチング素子T1を有するスイッチングレギュレータ13と、スイッチング素子T1の他端から出力されるオン/オフ電圧V2を平滑化して電圧V3とするように組み合わされたダイオードD、コイルL及びコンデンサCを備える。更に、コンデンサCの接地端との対向端に抵抗器R1を介して一端が接続されたスイッチング素子T2を有するリニアレギュレータ14と、スイッチング素子T2の他端から電圧V3が所定レベル降下された動作電圧Vccが供給されるマイコン15とを備える。
【0006】
マイコン15には、コンデンサCから出力される平滑化後の電圧V3が、分圧用の抵抗器R2,R3を介して電圧V3aとして供給されると共に、イグニッションスイッチ12からの電源電圧V1が分圧用の抵抗器R4,R5を介して電圧V1aとして供給されるようになっている。マイコン15は電圧V3aが電源電圧V1aに対して所定値以上離れた場合にコンデンサCの故障と判定する。即ち、コンデンサCが故障すると、電圧V3にはスイッチングレギュレータ13による高周波のノイズが重畳され、電圧V3がコンデンサCの正常時に比べてノイズ分だけ高圧又は低圧となる。よって電圧V3aが電源電圧V1aに対して所定値以上離れた場合に、電圧V3にスイッチングレギュレータ13によるノイズが重畳されていること、ひいてはコンデンサCが故障していることを判定することができる。
【0007】
なお、ECU20には、マイコン15に分圧用の抵抗器R6,R7を介して圧力センサや車速センサ等のセンサ16が接続されている。そのセンサ16には動作電圧として抵抗器R1を介してコンデンサCで平滑化された電圧V3が供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3988924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、レギュレータ13による重畳されるノイズは、高周波であるため、電圧V3がノイズレベルの高圧又は低圧になっていることをマイコン15により精度よく検出することはできない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電源電圧を平滑化するためのコンデンサの故障を精度良く報知することができる電源回路の故障検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、電力を出力する電力出力手段と、この電力出力手段の出力電力を伝送する電力供給経路に接続されたコンデンサとを有して構成される電源回路に適用され、前記コンデンサの故障を検出する電源回路の故障検出装置において、前記電力供給経路を経由して供給される電力を消費する電力消費手段と、前記電力出力手段の出力電力を、前記電力消費手段による消費電力に基づいて設定された所定の停止時間だけ停止させる出力停止手段と、前記出力停止手段により前記電力出力手段の出力電力が停止されている停止期間中に、前記電力供給経路の電圧レベルが所定の閾値未満となった場合、前記コンデンサが故障していることを報知する故障報知手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記電力消費手段及び前記故障報知手段は、同一の演算装置を含んで構成され、前記故障報知手段は、前記演算装置の動作が不能になった場合に前記コンデンサが故障したことを報知する報知回路を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記停止期間以前の前記電力供給経路の電圧が低いほど、前記停止時間を短く設定する対電圧停止時間設定手段を更に備えることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記コンデンサの経年劣化による静電容量の減少に応じて、前記停止時間を短く設定する対容量停止時間設定手段を更に備えることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記電力出力手段から前記電力供給経路を介して電力の供給を受ける前記電力消費手段以外の受電装置と前記コンデンサとの接続を遮断又は接続するスイッチと、前記電力出力手段の出力電力が停止されている停止期間中に、前記スイッチにより前記受電装置と前記コンデンサとの接続を遮断する遮断手段とを更に備えることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記停止期間中に、前記電力消費手段を一定の電力消費量に制御する電力消費制御手段を更に備え、前記停止時間は、前記コンデンサの静電容量からの放電のみで前記一定の電力消費量が賄える時間に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、出力停止手段が、電力出力手段の出力電力を、電力消費手段がコンデンサの蓄積電荷による電力を消費可能な時間だけ停止させる。ここでコンデンサに、電力消費手段が電力消費可能な時間の電力供給を賄えるだけの静電容量があれば、電力出力手段の出力電力の停止期間中に電力供給経路の電圧レベルが大きく低下することはない。この場合、コンデンサは正常である。一方、コンデンサの静電容量が、劣化や破損などの原因で、電力消費手段が電力消費可能な時間の電力供給を賄えない容量に減少していれば、電力出力手段の出力電力の停止期間中に、電力供給経路の電圧レベルが大きく低下する。よって、電力出力手段の出力電力の停止期間中に電力供給経路の電圧レベルが所定の閾値未満である場合にコンデンサが故障したことを報知することにより、当該報知の精度を高めることができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、電力消費手段及び故障報知手段が同一の演算装置を含んで構成されており、当該演算装置が動作不能である場合に、報知回路によりコンデンサが故障していることが報知されるため、電源回路の故障検出装置の小型化を図ることが可能である。この場合、演算装置の最低動作電圧が上記所定の閾値に相当する。
【0019】
コンデンサの蓄積電荷、ひいては電力出力手段の停止期間中に電力消費手段による電力消費を賄うことができる時間は、電力供給経路の電圧が低いほど小さくなる。よって、請求項3に係る発明のように、出力停止手段の停止期間以前の電力供給経路の電圧に応じた出力停止手段の停止期間を設定することにより、出力停止手段の停止期間以前の電力供給経路の電圧の高低による誤差を排して、コンデンサが故障していることを一層精度良く報知することができる。
【0020】
コンデンサの蓄積電荷、ひいては電力出力手段の停止期間中に電力消費手段による電力消費を賄うことができる時間は、当該コンデンサの静電容量が小さいほど小さくなる。また、コンデンサが経年劣化して静電容量が減少しても、まだ正常に電圧の平滑化処理が行える容量があれば、コンデンサが故障したことを報知せず、このコンデンサを無駄なく使用することが好ましい。よって、請求項4に係る発明のように、コンデンサの経年劣化による静電容量の減少に応じて、出力停止手段の停止時間を短く設定することにより、コンデンサの経年劣化による静電容量の減少による誤差を排して、コンデンサが故障していることを一層精度良く報知することができる。
【0021】
電力出力手段の出力電力の停止期間中に電力消費手段以外の受電装置への給電が行われているとコンデンサが故障していない場合であっても、電力供給経路の電圧が所定の閾値以下に低下し、コンデンサが故障していることが報知されてしまうことが考えられる。よって、請求項5に係る発明のように、電力出力手段の停止期間中に、電力消費手段以外の受電装置とコンデンサとの接続を遮断することにより、当該受電装置における電力消費による誤差を排してコンデンサが故障していることをより一層精度良く報知することができる。
【0022】
電力消費手段における電力消費態様によっては、電力出力手段の停止期間中に当該電力消費手段による電力消費をコンデンサの蓄積電荷で賄うことができる時間は変化し得る。よって、請求項6に係る発明のように、電力出力手段の出力電力の停止期間中に電力消費手段の消費電力を一定に制御し、その一定の電力消費量を賄えるように停止時間を設定することにより、電力消費手段における電力消費態様による誤差を排して、コンデンサが故障していることをより一層精度良く報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の電源回路の故障検出装置の構成を示す回路図である。
【図2】故障報知部の構成を示す回路図である。
【図3】第1実施形態の電源回路の故障検出装置の故障検出動作を説明するための各信号電圧のタイミングチャートである。
【図4】マイコンの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】第1実施形態の変形例による電源回路の故障検出装置の構成を示す回路図である。
【図6】第2実施形態の電源回路の故障検出装置の構成を示す回路図である。
【図7】第3実施形態の電源回路の故障検出装置の構成を示す回路図である。
【図8】他の実施形態1の電源回路の故障検出装置の構成を示す回路図である。
【図9】他の実施形態2の電源回路の故障検出装置の構成を示す回路図である。
【図10】従来の電源回路の故障検出装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
(第1実施形態)
第1実施形態の電源回路の故障検出装置は、図1に示すように、直流電源であるバッテリ11と、イグニッションスイッチ12と、ECU30とを備えて構成されている。ECU30は、バッテリ11にイグニッションスイッチ12を介して一端が接続されたスイッチング素子T1を有するスイッチングレギュレータ13と、スイッチング素子T1の他端から出力されるオン/オフ電圧V2を平滑化して電圧V3とするように組み合わされたダイオードD、コイルL及びコンデンサCを備える。更に、コンデンサCの接地端との対向端に抵抗器R1を介して一端が接続されたスイッチング素子T2を有するリニアレギュレータ14と、スイッチング素子T2の他端から電圧V3が所定レベル降下された動作電圧Vccが入力されるマイコン15と、このマイコン15に接続された故障報知部17及びランプ18を備えて構成されている。
【0026】
但し、故障報知部17は、例えば図2に示すように、2つのトランジスタ17a,17bを組み合わせて構成されている。即ち、トランジスタ17aのコレクタ端がバッテリ11の正極に接続され、エミッタ端がランプ18を介してバッテリ11の負極に接続され、ベース端がトランジスタ17bのコレクタ端に接続されると共に、抵抗器R21を介した動作電圧によりプルアップされている。更にトランジスタ17bのエミッタ端は接地され、ベース端はマイコン15の故障報知信号EFが供給されるように接続されている。
【0027】
マイコン15は、スイッチングレギュレータ13を所定時間オフとする停止信号SPをスイッチング素子T1の制御端子へ出力するように当該制御端子に接続されている。但し、マイコン15とスイッチング素子T1の制御端子との接続線と、イグニッションスイッチ12とスイッチング素子T1との接続線との間に抵抗器R11を接続し、マイコン15から出力される停止信号SPのハイインピーダンス又は「L」レベルがスイッチング素子T1の制御端子へ供給されるようにしてある。また、停止信号SPはマイコン15にインストールされたソフトウエアによって出力される。
【0028】
図3(a)に示すように、時刻t0〜t1間に停止信号SPがハイインピーダンスの場合は、スイッチング素子T1の制御端子に抵抗器R11を経由して電源電圧レベル(「H」レベル)が供給されるので、スイッチング素子T1がオンとなって電源電圧V1が所定レベル降下し、この降下電圧V2がコンデンサCを含む平滑化回路(平滑化手段)で平滑化されて(b)に示す電圧V3となる。この電圧V3は、リニアレギュレータ14で動作電圧Vccに降下されてマイコン15へ供給される。
【0029】
一方、停止信号SPが時刻t1で「L」になると、スイッチング素子T1がオフとなる。これによって、スイッチングレギュレータ13の出力電圧V2が0Vとなるので、コンデンサCにチャージされた電荷が電圧V3として出力され、これがリニアレギュレータ14で動作電圧Vccに降下されてマイコン15へ供給される。
【0030】
この供給時には、コンデンサCの電荷の減少に伴い図3(b)に線L1で示すように電圧V3が低下して行くが、この電圧低下がマイコン15の最低動作電圧Vminを下回らないように停止信号SPの「L」の時間が予め設定されている。つまり、停止信号SPの「L」によるスイッチングレギュレータ13の停止時間tspは、コンデンサCにチャージされた電荷でマイコン15がダウン直前までの動作可能な時間に設定してある。
【0031】
この設定によりコンデンサC以降の電圧V3が最低動作電圧Vmin未満とならない直前の時刻t4で、(a)に示す停止信号SPがハイインピーダンスとなり、これによってスイッチング素子T1がオンとなって電源電圧V1の供給が再開され、所定時間後の(b)に示す時刻t6で電圧V3が所定値に戻る。
【0032】
一方、コンデンサCが劣化や破損等の原因で電荷を蓄積可能な静電容量が減少している場合、(a)の時刻t1で停止信号SPが「L」になると、コンデンサCによる電圧V3が(b)に線L2で示すように、線L1時よりも早く低下して行く。この低下により停止信号SPがまだ「L」であるにも係わらず、電圧V3が時刻t2で最低動作電圧Vminを下回ると、マイコン15にリセットが掛かる。このリセットによりマイコン15が動作しなくなるとマイコン15から故障報知部17への故障報知信号EFが、図3(c)に示すように「H」から「L」となり、これによってバッテリ11からの電源電圧V1がランプ18に供給されて所定時間の時刻t3まで点灯する。
【0033】
つまり、図2に示すように、故障報知信号EFが「H」の場合はトランジスタ17bがオンとなってトランジスタ17aがオフとなるのでランプ18に電源電圧V1に応じた電流は流れないが、故障報知信号EFが「L」になるとトランジスタ17bがオフとなってトランジスタ17aがオンとなるので電流がランプ18に流れて点灯する。
【0034】
そして、時刻t2においてマイコン15にリセットが掛かってダウンすると、図3(d)に示すように、停止信号SPはハイインピーダンスとなるので、スイッチングレギュレータ13が起動する。これによって(b)に線L2で示すように、電圧V3が動作電圧Vcc以上に回復し、マイコン15に動作電圧Vccが供給されるのでマイコン15が再起動する。
【0035】
このような構成の電源回路の故障検出装置によるコンデンサCの故障検出動作を説明する。但し、バッテリ11の電源電圧V1は24V、スイッチングレギュレータ13で降下後に平滑化される電圧V2,V3は12V、リニアレギュレータ14で降下される動作電圧Vccは5Vであるとする。
【0036】
まず、イグニッションスイッチ12がオンにされると、バッテリ11の24Vの電源電圧V1がイグニッションスイッチ12で12Vに降下され、この降下電圧V2がダイオードDを含む平滑化回路で図3(b)の時刻t0〜t1間に示す12Vの電圧V3として平滑化される。この平滑化電圧V3は、リニアレギュレータ14で5Vまで降下され、この5Vの動作電圧Vccでマイコン15が作動する。
【0037】
この際、マイコン15から出力される故障報知信号EFは図3(c)に示す「H」となっており、これによって図4のステップS1に示すように、故障報知用のランプ18が消灯状態となっている。
【0038】
また、ステップS2に示すように、マイコン15にはスイッチングレギュレータ13の停止時間tsp{図3(a)参照}が設定されている。この設定は、スイッチングレギュレータ13が停止した際に、コンデンサCにチャージされた電荷でマイコン15がダウンせずに動作可能な時間(例えば5ms)に設定してある。
【0039】
従って、マイコン15が作動状態となると、ステップS3において、停止信号SPがオンとされる。即ち、図3(a)の時刻t1において、停止信号SPが「H」とされる。これによって、スイッチング素子T1がオフ、即ちスイッチングレギュレータ13がオフとなる。この際、スイッチングレギュレータ13の出力電圧V2が0Vとなり、これによってコンデンサCのチャージ電荷が電圧V3として出力され、これがリニアレギュレータ14で動作電圧Vccに降下されてマイコン15へ供給される。コンデンサCが正常時には、この供給時に、コンデンサCが電荷の減少に伴い図3(b)の線L1のように電圧V3が低下して行く。
【0040】
この際、マイコン15では、図4のステップS4において、上記ステップS2で設定された停止時間tspの5msが経過したか否かが判定される。この結果、5msが経過すると、ステップS5において、停止信号SPがオフとされる。即ち、図3(a)の時刻t4において、停止信号SPがハイインピーダンスとされる。これによってスイッチング素子T1がオンとなってスイッチングレギュレータ13が作動し、図3(b)の時刻t4以降に示すように電圧V3が上昇する。この電圧V3は所定時間後の時刻t6で所定値に戻る。
【0041】
ここで、コンデンサCが劣化や故障等の原因で静電容量が減少している場合を想定する。つまり、コンデンサCの静電容量が、スイッチングレギュレータ13の停止時間tspの5ms以上、マイコン15を動作可能な電荷をチャージできなくなっている場合である。
【0042】
この場合、上記ステップS4で停止時間tspが経過したことを判定する前に、コンデンサCの電荷による電圧V3は、図3(b)の線L2のように、線L1時よりも早く低下するので、停止信号SPがまだ「L」であるにも係わらず、電圧V3が時刻t2で動作電圧Vccを下回る。これによってマイコン15にリセットが掛かるので、マイコン15は時刻t2よりも微少時間Δ1経過後に一旦ダウンする。これによって故障報知信号EFが、図3(c)に示すように「H」から「L」となり、ランプ18が点灯する。この点灯によってコンデンサCが故障であることが認識可能となる。
【0043】
また、時刻t2+Δ1でのマイコン15のダウン時に、図3(d)に示すように、停止信号SPはハイインピーダンスに解除、即ちオフとなるので、スイッチングレギュレータ13が起動し、図3(b)の時刻t3を過ぎると線L2のように電圧V3が動作電圧Vcc以上に回復し、時刻t3より微少時間Δ2経過後にマイコン15が再起動する。ここでランプ18が消灯し、その後、電圧V3は時刻t5において所定値となる。以降、時刻t1〜t5までの動作が繰り返されるようにしてもよい。この繰り返しの場合、ランプ18が点滅状態となる。
【0044】
なお、ランプ18が一度点灯した際に、故障報知部17においてランプ18に電流が流れるようにリレー等を利用した保持回路を備えてランプ18を点灯状態に保持するようにしてもよい。
【0045】
このように第1実施形態においては、図1に示すように、電力を出力する電力出力手段が、バッテリ11、イグニッションスイッチ12及びスイッチングレギュレータ13で構成され、そのスイッチングレギュレータ13の出力側である電力供給経路に接続されたコンデンサCを有して電源回路が構成されている。
【0046】
その電源回路の故障検出装置は、コンデンサCの故障を検出するものであり、電力供給経路を経由して供給される電力を消費する電力消費手段としてのマイコン15を備える。更に、スイッチングレギュレータ13の出力電力をマイコン15による消費電力に基づいて設定された所定の停止時間tspだけ停止させる出力停止手段を備えるが、この出力停止手段は、マイコン15からの停止信号SPが、スイッチングレギュレータ13を構成するスイッチング素子T1の制御端子に供給される構成となっている。更に、停止信号SPによりスイッチングレギュレータ13の出力電力が停止されている停止期間中に、電力供給経路の電圧レベルが所定の閾値未満となった場合、コンデンサCが故障と報知する故障報知手段として、故障報知部17及びランプ18を備えて構成されている。なお、故障報知手段におけるランプ18に代え、ブザー等の鳴動手段を用いて故障を知らせる構成としてもよい。
【0047】
この構成によれば次のような効果が得られる。マイコン15からの停止信号SPによりスイッチングレギュレータ13の出力電力を、所定の停止時間tspだけ停止させる。ここでコンデンサCに、マイコン15が所定の停止時間tspだけ電力消費可能な電力供給を賄えるだけの静電容量があれば、スイッチングレギュレータ13の出力電力の停止期間中にコンデンサCからマイコン15へ蓄積電荷による電力が供給されるので、マイコン15の電力消費の動作がダウンすることはない。この場合、コンデンサCは正常である。
【0048】
一方、コンデンサCの静電容量が、劣化などの原因で、マイコン15が電力消費可能な時間の電力供給を賄えない容量に減少していれば、スイッチングレギュレータ13の出力電力の停止期間中に、電力供給経路の電圧レベルが所定の閾値未満となる。この場合、故障報知部17がランプ18を点灯することによってコンデンサCが故障と報知される。この報知によってコンデンサCの故障を認識することが出来る。この故障の検出は、例えば車両の電源オン時や、車両走行距離に応じて定期的に行うようにする。
【0049】
上記の所定の閾値は、マイコン15の電力消費の動作が行える電圧レベル(動作電圧Vcc)としてもよい。この場合、スイッチングレギュレータ13の出力電力の停止中に、電力供給経路の電圧がマイコン15の電力消費の動作が行える動作電圧Vcc未満となった場合に、コンデンサCが故障と報知される。つまり、スイッチングレギュレータ13の出力電力の停止中に、コンデンサCの蓄積電荷による電圧で、マイコン15の電力消費の動作が行えなくなった場合(マイコン15がダウンした場合)にコンデンサCの故障と検出される。
【0050】
この他、第1実施形態の変形例として、図5のECU31に示すように、コンデンサCから出力される電圧V3を、分圧用の抵抗器R2,R3を介してモニタ電圧V3aとしてマイコン15に入力し、マイコン15が停止信号SPによるスイッチングレギュレータ13の停止期間以前にて、そのモニタ電圧V3aが低いほど停止時間tspを短く設定するように構成してもよい。なお、その設定はマイコン15の図示せぬ対電圧停止時間設定手段が行う。
【0051】
ここで、コンデンサCの蓄積電荷、ひいてはスイッチングレギュレータ13の停止期間中にマイコン15による電力消費を賄うことができる時間は、スイッチングレギュレータ13の出力側である電力供給経路の電圧V3が低いほど小さくなる。
【0052】
そのため、上記のように対電圧停止時間設定手段によって、停止信号SPによる停止期間以前の電力供給経路の電圧V3に応じたモニタ電圧V3aに応じて停止時間tspを設定することにより、その停止信号SPによる停止期間以前の電力供給経路の電圧V3の高低による誤差を排して、コンデンサCが故障していることを一層精度良く報知することができる。
【0053】
更にこの他、マイコン15に図示せぬ対容量停止時間設定手段を備え、この対容量停止時間設定手段が、コンデンサCの経年劣化による静電容量の減少に応じて、停止時間tspを短く設定するようにしてもよい。対容量停止時間設定手段としては、例えば、現在の年月日から電源回路(又はコンデンサC)の製造年月日を減算し、この減算結果に応じて停止時間tspを設定するものや、イグニッションスイッチ12のオン中の累積稼働時間を計時し、当該累積稼働時間に応じて停止時間tspを短く設定するものが考えられる。つまり、上記減算結果の時間や累積稼動時間が大きい程にコンデンサCが劣化して静電容量が減少しているので、その減少した静電容量に応じて停止時間tspを短く設定する。
【0054】
この構成によって、コンデンサCが経年劣化して静電容量が減少しても、まだ正常に電圧の平滑化処理が行える容量があれば、このコンデンサCを無駄なく使用することが出来る。つまり、対容量停止時間設定手段で、コンデンサCの減少した静電容量からの放電のみでマイコン15の動作が可能な時間に、停止時間tspを設定すれば、停止信号SPによるスイッチングレギュレータ13の停止期間中に、コンデンサCの電荷による電力供給でマイコン15の動作を賄うことができる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態の電源回路の故障検出装置が、第1実施形態の故障検出装置と異なる点は、図6に示すように、コンデンサCと抵抗器R1との間にスイッチ43を介して受電装置45が接続されると共に、リニアレギュレータ14の動作電圧Vccを出力する端子にスイッチ44を介して受電装置46が接続されており、各スイッチ43,44がマイコン15から出力される遮断信号COに応じてオン/オフ制御されるようになっている。
【0056】
なお、マイコン15から各スイッチ43,44へ遮断信号COを出力する構成によって遮断手段が構成されている。また、各スイッチ43,44は図6ではECU41に設けられているものとするが、ECU41の外部に設けられていても良い。
【0057】
マイコン15はスイッチングレギュレータ13を停止しない通常動作時に遮断信号COをオフの「L」としており、この際に各スイッチ43,44がオンとなって受電装置45,46に通電が行われ、遮断信号COがオンの「H」の場合に各スイッチ43,44がオフとなって受電装置45,46への通電が遮断される。この遮断は、停止信号SPでスイッチングレギュレータ13を停止させる停止時間tspの間に行う。
【0058】
このように停止時間tsp中に受電装置45,46を遮断する理由を説明する。通常動作時には、スイッチングレギュレータ13又はコンデンサCからの出力電圧V3がスイッチ43を介して受電装置45へ供給されると共に、リニアレギュレータ14からの動作電圧Vccがスイッチ44を介して受電装置46に供給されている。この場合、各受電装置45,46の消費電力は異なるので、仮に各スイッチ43,44がオンの状態で停止信号SPによりスイッチングレギュレータ13を停止させると、コンデンサCから出力される電荷量の消費時間が、各受電装置45,46の異なる消費電力に応じて異なってしまう。
【0059】
この場合、停止時間tspを前述したように一定時間に定めておくが、受電装置45,46による消費電力が大きい場合、停止時間tsp内にコンデンサCの電荷による電圧V3が動作電圧Vccよりも低くなりマイコン15がダウンしてしまう。
【0060】
そこで、停止時間tsp中に遮断信号COで各スイッチ43,44をオフとして各受電装置45,46への通電を遮断すれば、コンデンサCの電荷のみによる給電がマイコン15のみへ行われるので、消費電力が一定となる。従って、その一定消費電力時に停止時間tspを設定し、停止信号SPによりスイッチングレギュレータ13を停止中に、遮断信号COで各スイッチ43,44をオフとすれば、停止時間tsp内にコンデンサCの電荷によるマイコン15への給電が動作電圧Vccよりも下回ることが無くなるので、コンデンサCの劣化等による静電容量の減少を適正に検出することができる。
【0061】
(第3実施形態)
第3実施形態の電源回路の故障検出装置が、第1実施形態の故障検出装置と異なる点は、図7に示すように、コンデンサCと抵抗器R1との間にマイコン15以外の電力消費装置(電力消費手段)47が接続されると共に、リニアレギュレータ14の動作電圧Vccを出力する端子にマイコン15以外の電力消費装置(電力消費手段)48が接続されており、各電力消費装置47,48が、マイコン15から出力される電力消費制御信号PLに応じて一定の消費電力量に制御されるようになっている。
【0062】
なお、ECU51において、マイコン15から各電力消費装置47,48へ電力消費制御信号PLを出力する構成によって電力消費制御手段が構成されている。
【0063】
スイッチングレギュレータ13の停止期間中に、各電力消費装置47,48へ通電が行われている場合、各電力消費装置47,48の消費電力は異なるので、仮にスイッチングレギュレータ13を停止させると、コンデンサCから出力される電荷量の消費時間が、各電力消費装置47,48の異なる消費電力に応じて異なってしまう。この場合、スイッチングレギュレータ13の停止時間tsp内にコンデンサCの電荷による電圧V3が動作電圧Vccよりも低くなりマイコン15がダウンすることが生じる。
【0064】
そこで、停止時間tsp中に電力消費制御信号PLで各電力消費装置47,48の消費電力を一定に制御し、この場合に、各電力消費装置47,48及びマイコン15による電力消費手段で消費される電力を賄える様に停止時間tspを設定する。この設定によって、停止時間tsp内に電力消費手段への給電電圧が、電力消費手段を正常に動作させるための所定値よりも下回ることが無くなるので、コンデンサCの劣化等による静電容量の減少を適正に検出することができる。
【0065】
(他の実施形態1)
上記の他の実施形態1の電源回路の故障検出装置の構成図を図8に示す。この図8に示すECU30−1は車両のブレーキ系統の制御を司り、ECU30−2はエンジン系統の制御を司る。各ECU30−1,30−2は、第1実施形態の故障検出装置のECU30と基本的に同構成であるが、マイコン15−2が、マイコン15−1によるコンデンサC1の故障検出信号FDによってコンデンサC1の故障のログを記憶する。この逆に、マイコン15−1が、マイコン15−2によるコンデンサC2の故障検出信号FDによってコンデンサC2の故障のログを記憶するようになっている。但し、各マイコン15−1,15−2の互いの故障検出期間は異なる。
【0066】
また、各マイコン15−1,15−2は、相手側のコンデンサ故障の検出時に音声や表示などの故障報知手段で、その故障を知らせる。つまり、相手側のコンデンサ故障の故障報知手段は、マイコン15−1又は15−2を含んで構成されている。
【0067】
(他の実施形態2)
上記の他の実施形態2の電源回路の故障検出装置の構成図を図9に示す。この図9に示す構成は、第1実施形態の故障検出装置と基本的に同構成であるが、ECU30−3のコンデンサC1の故障を、ECU30−3とは別回路の故障検出装置61が検出する構成となっている。即ち、故障検出装置61は、ECU30−3のスイッチングレギュレータ13の出力側のコンデンサC1の電圧V3を、分圧用の抵抗器R2,R3を介してモニタ電圧V3aとしてマイコン15−2に入力し、このマイコン15−2が停止信号SPによるECU30−3のスイッチングレギュレータ13−1の停止期間中に、コンデンサC1の故障を検出する。この検出された故障のログが、マイコン15−2に記憶される。
【0068】
なお、故障検出装置61のマイコン15−2は、ECU30−3とは別経路で電源が供給されるようになっている。これは、電源電圧V1が分岐されてスイッチングレギュレータ13−2に供給され、更にダイオードD、コイルL及びコンデンサC2による平滑化回路、リニアレギュレータ14を介して動作電圧Vccに落とされてマイコン15−2に供給されるようになっている。これによってマイコン15−1がダウンしてもマイコン15−2は作動可能となっている。また、マイコン15−2は、コンデンサC1の故障検出時に音声や表示などの故障報知手段で、その故障を知らせる。つまり、コンデンサ故障の故障報知手段は、マイコン15−2を含んで構成されている。
【符号の説明】
【0069】
11…バッテリ、12…イグニッションスイッチ、13,13−1,13−2…スイッチングレギュレータ、14…リニアレギュレータ、15,15−1,15−2…マイコン、16,16−1,16−2…センサ、17…故障報知部、18…ランプ、30,30−1,30−2,31,41,51…ECU、43,44…スイッチ、45,46…受電装置、47,48…電力消費装置、R1,R2,R3,R6,R7,R11…抵抗器、D…ダイオード、L…コイル、C,C1,C2…コンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を出力する電力出力手段と、この電力出力手段の出力電力を伝送する電力供給経路に接続されたコンデンサとを有して構成される電源回路に適用され、前記コンデンサの故障を検出する電源回路の故障検出装置において、
前記電力供給経路を経由して供給される電力を消費する電力消費手段と、
前記電力出力手段の出力電力を、前記電力消費手段による消費電力に基づいて設定された所定の停止時間だけ停止させる出力停止手段と、
前記出力停止手段により前記電力出力手段の出力電力が停止されている停止期間中に、前記電力供給経路の電圧レベルが所定の閾値未満となった場合、前記コンデンサが故障していることを報知する故障報知手段と
を備えることを特徴とする電源回路の故障検出装置。
【請求項2】
前記電力消費手段及び前記故障報知手段は、同一の演算装置を含んで構成され、前記故障報知手段は、前記演算装置の動作が不能になった場合に前記コンデンサが故障したことを報知する報知回路を有していることを特徴とする請求項1に記載の電源回路の故障検出装置。
【請求項3】
前記停止期間以前の前記電力供給経路の電圧が低いほど、前記停止時間を短く設定する対電圧停止時間設定手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源回路の故障検出装置。
【請求項4】
前記コンデンサの経年劣化による静電容量の減少に応じて、前記停止時間を短く設定する対容量停止時間設定手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源回路の故障検出装置。
【請求項5】
前記電力出力手段から前記電力供給経路を介して電力の供給を受ける前記電力消費手段以外の受電装置と前記コンデンサとの接続を遮断又は接続するスイッチと、
前記電力出力手段の出力電力が停止されている停止期間中に、前記スイッチにより前記受電装置と前記コンデンサとの接続を遮断する遮断手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源回路の故障検出装置。
【請求項6】
前記停止期間中に、前記電力消費手段を一定の電力消費量に制御する電力消費制御手段を更に備え、
前記停止時間は、前記コンデンサの静電容量からの放電のみで前記一定の電力消費量が賄える時間に設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電源回路の故障検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−150053(P2012−150053A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10009(P2011−10009)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】