説明

電源回路

【課題】 微弱な交流信号からより多くの電力を効率的に蓄積可能な電源回路を提供する。
【解決手段】 アンテナ10によって特定の周波数を有する電波を受信し、この電波を昇圧回路によって昇圧した後、接続回路30を介してポンプ回路40供給し、ポンプ回路40で整流して蓄電回路50に蓄電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源回路に関し、特に電波をエネルギー源とする電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器を屋外に設置して利用する際には、どこから電源を取得するかが問題となる。商用電源を利用できない場合、電池を用いることが多い。また、機器の消費電力が小さい場合には太陽電池を利用することもある。
【0003】
しかしながら、電池は容量が低下すると交換する必要があり、例えば山奥のような不便な場所に機器を設置した場合には、交換を行うことが容易でないこともある。また、太陽電池単独では天気が悪い場合の電力がまかなえないことがあるので、結局他の電池との併用が必要となることが多い。また、太陽電池自体の経年劣化や電池表面の汚れ等によって起電力が低下したりすることがあるので、やはりある程度の時期毎に点検を行うことが必要となる。
【0004】
一方で、様々な用途で空気中に存在する電波のエネルギーを電源として利用することも従来から行われている。例えば、所謂パッシブタイプのICタグにおいては、ICチップの動作電力を、リーダライタあるいはスキャナから送信される電波により誘導される電流や電波を整流して得ている。
【0005】
さらに、特許文献1には、空気中を伝播する様々な電波(ラジオ放送波、TV放送波、携帯電話の通信波など)を受信し、直流化して蓄電することにより、電源として利用する構成が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−257697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の電源装置においては、回路内に存在する抵抗R1(41a),R2(42a)により、受信した電波の電力が無駄に消費される。従って、効率よい蓄電を実現するという観点からは改善の余地があった。
【0008】
本願発明はこのような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、微弱な交流信号からより多くの電力を効率的に蓄積可能な電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の電源回路は、特定の周波数を有する電波を受信するアンテナと、アンテナが受信した電波の振幅を増幅する昇圧回路と、昇圧回路が増幅した電波を整流して出力するポンプ回路と、ポンプ回路の出力により充電される蓄電回路と、昇圧回路とポンプ回路とを接続する接続回路とを有し、接続回路が、特定の周波数と昇圧回路の出力の大きさに応じて定まる容量を有するコンデンサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような構成により、本発明によれば、空気中を伝播する電波から効率的に電力を蓄積することが可能となるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電源回路の機能構成例を示すブロック図である。
電源回路100は、予め定められた周波数の電波を受信するように設計されたアンテナ10と、アンテナ10が受信した電波の振幅を増幅する昇圧回路20と、昇圧回路20とポンプ回路40とを接続する接続回路30と、接続回路30を通じて入力された信号の電圧に応じたエネルギーを取り出し、蓄電回路50へ供給するポンプ回路40と、ポンプ回路40から与えられるエネルギーを蓄積し、電源として機能する蓄電回路50とから構成される。
【0012】
図2は、本実施形態に係る電源回路の具体的な回路構成例を示す図である。
図2に示す例においては、アンテナ10及び昇圧回路20の両方の機能を1つの共振回路15によって実現している。また、図2において、各回路要素に記載された具体的な値は、振幅10mv、周波数13.56MHzの正弦波を受信することを想定して決定した値であり、受信する周波数に応じて変動する。
【0013】
図2において、アンテナ10及び昇圧回路20としての共振回路15は、コンデンサC1及びC2と、コンデンサC1の両端を接続するコイルL3と、コンデンサC1とコンデンサC2の上側電極c,aを接続するコイルL2と、コンデンサC1とコンデンサC2の下側電極d,bを接続するコイルL1とから構成される。
【0014】
図3は、共振回路15の入出力特性のシミュレート結果を示す図である。
図3において、V(a),V(c)及びV(d)はそれぞれ図2におけるa,c,d点において観測される電圧波形を示している。ここでは、上述したように、振幅10mv、周波数13.56MHzの正弦波が受信されたものとしている。従って、a点において観測される電圧波形V(a)は、入力正弦波に相当する。そして、接続回路30としてのコンデンサC3に接続される点dで観測される電圧波形V(d)が、昇圧回路20としての共振回路15の出力に相当する。
【0015】
このように、本実施形態における共振回路15によれば、振幅10mVの正弦波が、振幅1.0Vに昇圧されており、単純な構成により微弱な電波を大幅に昇圧できることが理解される。
【0016】
図2にしめすような共振回路15は、例えば、図5に示すような共振タグにより実現することができる。
図において、共振タグは、第1のコイルパターン110と、第2のコイルパターン120と、第1及び第2のコイルパターン110,120の間に介在する誘電体フィルム130とを有する。
【0017】
第1及び第2のコイルパターン110及び120は全長に渡って略均一な幅の線状の導電体薄膜である。第1及び第2のコイルパターン110及び120は、誘電体フィルム130を挟んで対向する区間を有し、この区間(対向区間)が、第1及び第2のコイルパターン110及び120を電極、第1及び第2のコイルパターン110及び120に挟まれた誘電体フィルム130を誘電体とするコンデンサを形成する。このコンデンサ(C)と、第1及び第2のコイルパターン110及び120が形成するコイル(L)とにより、所望の共振周波数(例えば13.65MHz)を有するLC共振回路が構成されるよう、第1及び第2のコイルパターン110及び120の幅wや対向区間の長さ、コイルの巻数が調整されている。
【0018】
誘電体フィルム130は、実際には第1及び第2のコイルパターン110及び120を貼り合わせるための粘着剤層や、樹脂層により構成することができる。すなわち、図6に示すように、コイルパターン110及び/又は120の裏面に樹脂や粘着剤を塗布し、コイルパターン同士を貼り合わせて共振タグ(共振回路)を形成することができる。
【0019】
裏面に熱接着性樹脂等の塗膜121を設けた第1及び第2のコイルパターン110及び120を、巻き方向が互いに異なる方向となるように重ね合わせ、熱溶着する。そして、コイルパターン端部115a、115bでコイルを電気的に接続して共振回路を形成する。
【0020】
このタグは、上述したように第1及び第2のコイルパターン110及び120で誘電体フィルム130を挟むように構成し、コンデンサを形成している。さらに、コイルパターン110及び120の幅wを大きくして電気抵抗を低下させている。
【0021】
共振回路の性能を表すQ値は
Q=2πfL/R
(Lはインダクタンス、Rは電気抵抗、fは共振周波数である)
で表されるため、Rが低下すれば、コイルの巻数が減少してLが低下してもQに与える影響は小さい。特に、RとLの比が変わらなければ全くQには影響しない。一方で、幅wが大きくなれば、金属箔の打ち抜き加工によってコイルパターン110及び120を形成できるため、製造が容易になる。
【0022】
このような構成の共振タグを共振回路15として用いることで、回路構成がより簡単になり、電源回路の製造が一層容易になる。
【0023】
この場合、一端が接続されるコイルパターン110及び120は、図2に示した回路図におけるコイルL1〜L3を形成し、コイルパターン110及び120に挟まれた誘電体フィルム130はコンデンサC1,C2を形成する。
【0024】
結合回路30としてのコンデンサC3は、共振回路15の出力を効率よく後段のポンプ回路へ伝達するために設けられ、蓄電効率を左右する重要な役割を果たしている。
コンデンサC3は、その容量が大きいほど蓄積できる電荷が多くなる反面、容量が大きすぎると、Q=CVの関係から電極間の電圧が上がらず、ポンプ回路40へ伝達される電力が小さくなる。
また、コンデンサC3の容量が小さすぎると、共振回路15の出力を十分蓄積することができず、蓄電効率が低下する。
また、充電期間は受信する電波の周波数に依存し、充電期間中に充電される電荷量は受信電波の電力(共振回路15の出力の大きさ)に依存する。従って、コンデンサC3の容量は、受信される電波の周波数と共振回路15の出力の大きさに応じて適切な値を設定する。
【0025】
ポンプ回路40は、接続回路30のコンデンサC3の下側電極と接地電位との間に順方向に接続されたダイオードD1と、接続回路30のコンデンサC3の下側電極と蓄電回路50との間に逆方向に接続されたダイオードD2とから構成される。
【0026】
蓄電回路50としてのコンデンサC4は、ダイオードD2と接地電位との間に接続される。
【0027】
ポンプ回路40を構成するダイオードD1とダイオードD2はコンデンサC3の下側電極と互いに逆方向に接続されている。そのため、コンデンサC3を通じて共振回路15から入力される電圧波形のうち、負の電圧区間において、蓄電回路50を構成するコンデンサC4が充電される。これにより、コンデンサC4の上下電極から図示しない負荷回路の電源を供給することができる。
【0028】
図4は、図3に示したV(d)がポンプ回路40に入力された場合の、コンデンサC4の上下端子間の電圧V(e)の時間変化を示す図である。
図4に示すように、わずか30ms後に2.8Vもの電位差が得られていることが分かる。なお、コンデンサC4の容量を増やすことにより、より多くの電荷を蓄えることが可能となり、電源としての容量も増加するため、負荷回路の消費電力に応じて適宜調整することが可能である。
【0029】
このように、本実施形態によれば、簡単な回路構成により、微弱な交流信号から電力を蓄積することが可能となるので、間欠的に動作する回路、例えば間欠的に発信する通信モジュールなどの電源として非常に有用である。
【0030】
(他の実施形態)
上述の実施形態においては、説明及び理解を簡単にするため、1つの周波数の電波のエネルギーを蓄積する構成について説明した。
【0031】
しかし、異なる周波数の電波を受信するアンテナ10及び昇圧回路20、並びに受信周波数と昇圧回路20の出力の大きさに応じて定まる容量を有するコンデンサからなる結合回路30を1つのブロックとし、複数のブロックをポンプ回路40の入力(すなわち、ダイオードD1)に接続する構成としても良い。
【0032】
このような構成を採ることにより、複数の異なる周波数を有する電波からエネルギーを取り出して蓄積することが可能になり、より効率の良い電力の蓄積が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る電源回路の機能構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電源回路の具体的な回路構成例を示す図である。
【図3】図2における共振回路15の入出力特性のシミュレート結果を示す図である。
【図4】図3に示したV(d)がポンプ回路40に入力された場合の、コンデンサC4の上下端子間の電圧V(e)の時間変化を示す図である。
【図5】図2における共振回路15として利用可能な共振タグの構成例を示す図である。
【図6】図5に示す構成を有する共振タグの製造方法について説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の周波数を有する電波を受信するアンテナと、
前記アンテナが受信した電波の振幅を増幅する昇圧回路と、
前記昇圧回路が増幅した電波を整流して出力するポンプ回路と、
前記ポンプ回路の出力により充電される蓄電回路と、
前記昇圧回路と前記ポンプ回路とを接続する接続回路とを有し、
前記接続回路が、前記特定の周波数と前記昇圧回路の出力の大きさに応じて定まる容量を有するコンデンサであることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記アンテナと前記昇圧回路とが、前記特定の周波数を共振周波数とする共振回路によって構成されることを特徴とする請求項1記載の電源回路。
【請求項3】
前記共振回路が、誘電体フィルムを挟んで一部が対向するように配置された、略均一の幅を有する導電体薄膜からなる一対のコイルパターンから構成されることを特徴とする請求項2記載の電源回路。
【請求項4】
前記アンテナ、前記昇圧回路及び前記接続回路がそれぞれ複数存在し、
前記アンテナが受信する電波の周波数並びに前記接続回路を構成するコンデンサの容量が異なることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−199753(P2008−199753A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31210(P2007−31210)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(500343599)
【出願人】(000144452)株式会社三宅 (14)
【Fターム(参考)】