説明

電源回路

【課題】重い負荷に接続しても、過電流保護回路を起動することなく、スムーズに起動することが可能な電源回路の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係る電源回路は、電池1の電力を電源として供給する電源回路であって、電池1の後段に設けられた過電流保護回路2と、過電流保護回路2の後段に設けられ、第1、第2の電池電源線11a、11b間に接続された時定数回路3と、第2の電池電源線11bに介挿され、時定数回路3に制御電極が接続されたトランジスタ4と、時定数回路3の前段において電源回路をオン/オフするスイッチング手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源回路に関し、特に過電流保護回路を備える電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電源回路として、例えばリチウムイオン電池の電力を電源として外部の負荷に供給するものが知られている。リチウムイオン電池は、過電流や過充電による損傷から適切に保護する必要がある。このため、従来の電源回路では、入力容量の大きい負荷や、突入電流の引き込みが大きい負荷などに接続した場合に、電池の損傷を回避するために、一定以上の電流が流れると電池との接続を遮断する過電流保護回路を備えるものや、突入電流をまかなうために、電源回路の出力部にコンデンサを備えるものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来の電源回路は、一時的に過剰な電流が流れた場合に、過電流保護回路が働くことにより電池の接続を遮断するので、負荷に対して電力の供給を継続できないという問題があった。また、突入電流をまかなうために電源回路の出力部に設けられるコンデンサは、搭載できる容量に実際上の制限があるので、電池を保護する効果に限度があった。特に、電源回路をオフにした状態で負荷に接続を行い、電源回路をオンにした場合の過渡状態に、上述の過電流保護回路が働きやすい。
【0004】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、上述したような負荷に接続して電源回路をオンにしても、過電流保護回路をオンさせることなく、電源回路をスムーズに起動させることができる、電源回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電源回路は、電池の電力を電源として供給する電源回路であって、電池の後段に設けられた過電流保護回路と、過電流保護回路の後段に設けられ、第1、第2の電池電源線間に接続された時定数回路と、第2の電池電源線に介挿され、時定数回路に制御電極が接続されたトランジスタと、時定数回路の前段において電源回路をオン/オフするスイッチング手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、時定数回路及びトランジスタによって、電源の供給が徐々に開始される。従って、大きな電流の引き込みを抑えることができるため、過電流保護回路をオンさせることなく電源回路をスムーズに起動させることができるので、電力の供給が中断されない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態1に係る電源回路の第1の回路例を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る電源回路の第2の回路例を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る電源回路の第3の回路例を示す図である。
【図4】図3に示す負荷部の他の例を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る電源回路の第4の回路例を示す図である。
【図6】図5に示す電源回路の変形例を示す図である。
【図7】実施の形態2に係る電源回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施の形態1>
<構成>
図1に本実施の形態に係る電源回路の第1の回路例の図を示す。本実施の形態の電源回路は、電池1の電力を、電源として、離接自在な電源出力端子部10を介して、負荷部20に供給する。負荷部20は、比較的大きな容量性負荷(以後これを大容量コンデンサ20aとして示す。)と、その他の負荷20bから構成される。電池1の後段には、設計された以上の過大な電流が流れると、電池との接続を遮断する過電流保護回路2が設けられる。過電流保護回路2の後段において、第1、第2の電池電源線11a、11b間に時定数回路3が接続される。ここで、時定数回路3は、抵抗3aとコンデンサ3bの直列回路である。また、トランジスタ4が第2の電池電源線に介挿され、抵抗3aとコンデンサ3bの接続点に、トランジスタ4の制御電極が接続される。過電流保護回路2と時定数回路3の間には、電源回路をオン/オフするスイッチング手段が設けられる。このスイッチング手段は、例えば、第1の電池電源線11a上に設けられたオン/オフスイッチ5により構成されてもよい。そして、例えば、外部操作ボタンを手動でオン/オフ操作することにより、ON/OFF信号を発生させてオン/オフスイッチ5を動作させる。
【0009】
なお、電池1としては、例えばリチウムイオン電池が用いられる。また、過電流保護回路2としては、周知の回路の適切なものが用いられる。負荷部20として、特に、入力容量が大きい負荷や、接続の際に突入電流を引き込む負荷の場合に本実施例は有効である。
【0010】
なお、図2は、本実施の形態の電源回路の第2の回路例を示す図である。図2に示すように、電源出力端子部10の前段に、出力コンデンサ6が挿入されていてもよい。
【0011】
また、図3は、本実施の形態の電源回路の第3の回路例を示す図である。図3に示すように、図2で示した構成に加えて、負荷が、DC/DC変換回路21と、その背後にある負荷部20によって構成されてもよい。
【0012】
なお、図4は、図3の負荷部20の他の例である。本他の例では、DC/DC変換回路21の前段に大容量コンデンサ20aが挿入されている。
【0013】
さらに、図5は、本実施の形態の電源回路の第4の回路例を示す図である。図5に示すように、過電流保護回路2の後段に、電池1の電圧を所望の電圧に変換する機能に加えて、電源回路のオン/オフを行う機能を備えた、電圧変換回路7が設けられてもよい。この場合、オン/オフスイッチ5は不要である。
【0014】
一方、図6は、図5の電源回路の変形例である。本変形例では、時定数回路3に代えて、時定数回路3と同等に、トランジスタ4の制御電極を駆動するマイクロコンピュータ8を備える。マイクロコンピュータ8と電圧変換回路7のオン/オフは連動しており、例えば、マイクロコンピュータ8が外部操作ボタンのオンを検知することにより、電圧変換回路7をオン、即ち、電源回路をオンするとともに、トランジスタ4の制御電極の駆動を開始することができる。なお、図1〜3の時定数回路3を変形して図6のマイクロコンピュータ8を備える回路としてもよい。
【0015】
<動作>
本実施の形態においては、電源回路をオフ、即ち、オン/オフスイッチ5をオフにした状態で負荷20に接続を行い、その後、電源回路をオンにした場合の動作について説明する。
【0016】
まず、図1に示した電源回路の動作について説明する。オン/オフスイッチ5をオンにした直後は、コンデンサ3bには電荷が蓄積されていないので、トランジスタ4の制御電極には電圧が印加されていない状態である。従って、負荷部20に電流は流れない。
【0017】
コンデンサ3bが充電されていくと、それに伴って、トランジスタ4の制御電極部に印加される電圧も増大していくので、負荷部20に含まれる大容量コンデンサ20aが徐々に充電されていく。
【0018】
一定の時間が経過すると、コンデンサ3bは完全に充電された状態になるので、負荷部20に供給される電流の量も一定となる。ここで、上記一定の時間は、時定数回路3の時定数、即ちコンデンサ3bの容量と抵抗3aの抵抗値によって決定されるため、負荷の特性等に応じて適宜選択すればよい。
【0019】
次に、図2に示した電源回路の動作について説明する。図2の電源回路の動作は基本的に図1で示した電源回路と同じである。図2の回路では、負荷部20において負荷変動が起こった場合には、出力コンデンサ6が充放電を行うことにより、負荷変動を緩衝する。
【0020】
次に、図3で示した電源回路の動作を説明する。負荷側に設けられた、DC/DC変換回路21は、起動するのに一定の電圧を要する。例えば、8〜9Vで起動可能とする。
【0021】
オン/オフスイッチ5がオン、即ち電源回路がオンされると、コンデンサ3bが徐々に充電され、それに伴ってDC/DC変換回路21に印加される電圧が徐々に増大していく。印加電圧が8〜9Vに達すると、DC/DC変換回路21が起動され、その瞬間に、負荷部20に含まれる大容量コンデンサ20aによって、大電流が引き込まれる。すると、トランジスタ4のオン抵抗による電圧降下が増大するので、DC/DC変換回路21に印加される電圧が低下し、DC/DC変換回路21はオフとなる。その後しばらくしてDC/DC変換回路21に印加される電圧が上昇すると、DC/DC変換回路21はまたオンする。
【0022】
この様に、DC/DC変換回路21がオン/オフ動作を繰り返すことで、負荷部20に含まれる大容量コンデンサ20aが徐々に充電され、最終的には安定して電源回路と接続される。
【0023】
次に、図4の電源回路の動作を説明する。電源回路がオンされると、負荷側に設けられた大容量コンデンサ20aが徐々に充電され、それに伴って、DC/DC変換回路21に印加される電圧が徐々に増大していき、印加電圧が8〜9Vに達するとDC/DC変換回路21が起動され、その他の負荷20bに電力が供給される。もしその他の負荷20bによる電流の引き込みが大きければ、図3の場合と同様の動作が行われる。
【0024】
次に、図5の電源回路の動作を説明する。図5の電源回路の動作は基本的に図3で説明した、オン/オフを繰り返して徐々に安定する動作と同じであるが、電圧変換回路7により、電池1の電圧を所望の電圧に変換し負荷に与えることができる。また、電圧変換回路7のオン/オフは、例えば外部操作ボタンを手動で操作することにより、ON/OFF信号を送ることで制御できる。従って、別途オン/オフスイッチ5を設けることなく、電圧変換回路7のオン/オフによって、電源回路のオン/オフを制御することができる。
【0025】
次に、図6の電源回路の動作を説明する。図6は時定数回路3の代わりに、マイクロコンピュータ8によって、トランジスタ4の制御電極を駆動する。つまり、マイクロコンピュータ8に予めプログラムした内容によって、マイクロコンピュータ8のD/A出力ポートを介して、トランジスタ4の制御電極に印加する電圧を徐々に増大させる制御を行うことで、時定数回路3と同等の機能を実行し、時定数回路3を備える図5の電源回路と同じ動作を行うことができる。
【0026】
<効果>
本実施の形態の電源回路は、電池1の電力を電源として供給する電源回路であって、電池1の後段に設けられた過電流保護回路2と、過電流保護回路2の後段に設けられ、第1、第2の電池電源線11a、11b間に接続された時定数回路3と、第2の電池電源線11bに介挿され、時定数回路3に制御電極が接続されたトランジスタ4と、時定数回路3の前段において電源回路をオン/オフするスイッチング手段としてのオン/オフスイッチ5を備える。
【0027】
従って、負荷部20に対して、徐々に電力の供給が行われるので、大きな電流の引き込みを伴う負荷部20であっても、過電流保護回路2に大電流が流れることを抑制できるため、過電流保護回路2をオンにすることなく、電源回路をスムーズに起動することが可能である。
【0028】
また、本実施の形態の電源回路に備わる時定数回路3は、第1、第2の電池電源線11a、11b間に直列に接続された抵抗3aおよびコンデンサ3bを備え、トランジスタ4の前記制御電極は、抵抗3aとコンデンサ3bの接続点に接続される。
【0029】
従って、時定数回路3を実現する構成として、抵抗3aおよびコンデンサ3bで実現する構成は簡便であるので、高い汎用性が期待できる。
【0030】
また、本実施の形態の図2の電源回路は、図1の電源回路に対して、時定数回路3およびトランジスタ4の後段に設けられ、第1、第2の電池電源線11a、11b間に接続された出力コンデンサ6をさらに備える。
【0031】
従って、負荷の変動が起こった場合に、出力コンデンサ6が充放電することによって、負荷の変動を緩衝することができるので、動作の安定性がより向上する。
【0032】
また、本実施の形態における図5の電源回路は、図1〜3の電源回路に対して、時定数回路3およびトランジスタ4の前段に設けられた電圧変換回路7をさらに備え、電圧変換回路7のオン/オフにより電源回路をオン/オフするスイッチング手段が構成される。
【0033】
従って、電池1の電圧を所望の電圧に変換して、負荷に印加することが可能となるので、電源回路の適用範囲が広がるとともに、別途にオン/オフスイッチを設けなくてもよい。
【0034】
また、本実施の形態における図6の電源回路は、図1〜4の電源回路に備わる時定数回路3に代えて、電源回路のオンに合わせて時定数回路3と同等にトランジスタ4の制御電極を駆動するマイクロコンピュータ8を備える。
【0035】
従って、マイクロコンピュータ8の制御プログラムを書き換えることで、制御電極を駆動する、D/Aコンバータ出力の電圧パターンを変更することができるので、電源回路の適用範囲が広がる。
【0036】
<実施の形態2>
図7に本実施の形態に係る電源回路の回路図を示す。図5の電源回路において、アノードを第1の電池電源線11aに、カソードを抵抗3aとコンデンサ3bの接続点すなわちトランジスタ4の制御電極にそれぞれ接続したダイオード9を追加したのが、本実施の形態の電源回路である。また、負荷部20は、容量性負荷としての大容量コンデンサ20aとその他の負荷20bから構成される。なお、図1〜3の電源回路にダイオード9を同様に追加してもよい。
【0037】
本実施の形態の電源回路の動作として、特に、電源回路がオン、即ち電圧変換回路7がオンの状態で、負荷に接続する場合を考える。電源回路がオンの状態では、コンデンサ3bは充電されているため、トランジスタ4の制御電極部には電圧が印加されている。従って、負荷が接続された瞬間に、時として過大な状態に、大容量コンデンサ20aから電流の引き込みが起こる。このとき、ダイオード9を通して、コンデンサ3bの放電による電流が流れる。すると、それに伴ってトランジスタ4の制御電極に印加される電圧が低下するので、電池1から負荷部20へ流れる電流が遮断される。これにより、負荷部20が接続された瞬間に過電流保護回路2が動作することを避けることができる。
【0038】
本実施の形態の電源回路は、図5の電源回路に対して、アノードがトランジスタ4の制御電極、カソードが第1の電池電源線11aに接続されたダイオード9をさらに備える。
【0039】
従って、電流の引き込みが起こった際に、ダイオード9を通してコンデンサ3bの放電が行われるため、トランジスタ4の制御電極へ印加される電圧が低下し、電流の流れが遮断される。よって、電源回路がオンの状態で負荷に接続された場合でも、接続の瞬間に過電流保護回路2が起動することを回避することができ、動作の安定性が向上する。
【0040】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 電池、2 過電流保護回路、3 時定数回路、3a 抵抗、3b コンデンサ、4 トランジスタ、5 オン/オフスイッチ、6 出力コンデンサ、7 電圧変換回路、8 マイクロコンピュータ、9 ダイオード、10 電源出力端子部、11a 第1電池電源線、11b 第2電池電源線、20 負荷部、20a 大容量コンデンサ、20b その他の負荷、21 DC/DC変換回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電力を電源として供給する電源回路であって、
前記電池の後段に設けられた過電流保護回路と、
前記過電流保護回路の後段に設けられ、第1、第2の電池電源線間に接続された時定数回路と、
前記第2の電池電源線に介挿され、前記時定数回路に制御電極が接続されたトランジスタと、
前記時定数回路の前段において前記電源回路をオン/オフするスイッチング手段と、
を備える電源回路。
【請求項2】
前記時定数回路は、前記第1、第2の電池電源線間に直列に接続された抵抗およびコンデンサを備え、前記トランジスタの前記制御電極は、前記抵抗と前記コンデンサの接続点に接続される、請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記時定数回路および前記トランジスタの後段に設けられ、前記第1、第2の電池電源線間に接続された出力コンデンサをさらに備える、
請求項1または2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記時定数回路および前記トランジスタの前段に設けられた電圧変換回路をさらに備え、
前記電圧変換回路のオン/オフにより前記電源回路をオン/オフするスイッチング手段が構成される、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電源回路。
【請求項5】
前記時定数回路に代えて、前記電源回路のオンに合わせて前記時定数回路と同等に前記トランジスタの前記制御電極を駆動するマイクロコンピュータを備える、
請求項1、3、4のいずれかに記載の電源回路。
【請求項6】
アノードが前記トランジスタの前記制御電極、カソードが前記第1の電池電源線に接続されたダイオードをさらに備える、
請求項1乃至4のいずれかに記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−116001(P2013−116001A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262488(P2011−262488)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】