説明

電源装置、定着装置、画像形成装置

【課題】低コストで適切な温度制御を行うことが可能な電源装置、定着装置、画像形成装置を提供する。
【解決手段】入力された直流電圧を所定の電圧として負荷側へ出力する出力コイルL1と、共振コンデンサC1とから構成される電圧共振回路と、出力コイルへの通電制御を行うスイッチング素子11とを有する電源装置において、出力コイルL1に並列に補助共振回路45を接続することにより、スイッチング制御を行う電源制御回路を用いずにスイッチング損失を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された直流電圧を所定の電圧へ昇圧して負荷側へ出力する出力コイルと、前記出力コイルに接続されたコンデンサとから構成される電圧共振回路を有する電源装置、定着装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電圧共振回路を有する電源装置では、電圧共振回路を構成する出力コイルを加熱コイルとして用いることで、電磁誘導により負荷に渦電流を発生させ、負荷自身を発熱させて加熱する電磁誘導加熱電源装置がある。
【0003】
図1は、従来の電磁誘導加熱電源装置の回路図である。
【0004】
電磁誘導加熱電源装置10は、整流回路20、インバータ回路30、電源制御回路40、ドライブ回路50を有する。
【0005】
整流回路20は、商用電源(AC100V)より供給される交流電圧の電源ノイズを除去して整流し、さらに平滑化した直流電圧をインバータ回路30へ提供する。
【0006】
インバータ回路30は、加熱コイルL1、共振コンデンサC1、スイッチング素子11を有し、スイッチング素子11のスイッチングにより整流回路20から提供される電圧を擬似高周波電圧へ変換する。インバータ回路30では、スイッチング素子11がオンのとき加熱コイルL1に電流がチャージされ、スイッチング素子11がオフのとき共振コンデンサC1に電圧がチャージされる。電磁誘導加熱電源装置10は、加熱コイルL1に電流を流すことで加熱コイルL1の近傍に配置された負荷60に渦電流を発生させ、負荷60自身を発熱させて加熱する。尚負荷60は金属であり、渦電流により発熱する発熱体である。具体的には例えば、金属製の鍋などであっても良い。
【0007】
電源制御回路40は、インバータ回路30により変換される擬似高周波電圧のゼロ地点を検出し、検出されたゼロ地点でスイッチング素子11がスイッチングされるように制御する。また電源制御回路40は、電磁誘導加熱電源装置10が搭載された本体装置を制御する本体制御回路70と接続されている。本体制御回路70は、負荷60の近傍に設けられた温度センサ80により負荷60の温度を検出する。本体制御回路70は、検出された温度に基づき負荷60を所望の温度にすべく、スイッチング素子11の制御信号を電源制御回路40へ出力する。
【0008】
したがって電源制御回路40は、擬似高周波電圧のゼロ地点でスイッチングしてスイッチング損失を低減しつつ、本体制御回路70からの制御信号に基づき負荷60の温度制御を行っている。ドライブ回路50は、電源制御回路40からの制御信号に基づきスイッチング素子11を動作させる。
【0009】
このような電磁誘導加熱電源装置に関する技術として、例えば特許文献1には、加熱対象の直近に配置した電気コイルおよびそれに接続した共振用コンデンサを含む共振回路に、スイッチング素子のオン/オフの繰返しにより、交流を整流した直流をチョッピング通電する誘導加熱方法、装置、定着装置及び画像形成装置が記載されている。
【特許文献1】特開2002−237377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記従来の電磁誘導加熱を行う電源装置では、電源装置内にスイッチング素子のスイッチング制御を行う電源制御回路が必要となる。電源制御回路は通常マイクロコンピュータなどにより実現されるものであり、高コストである。
【0011】
また温度制御の対象となる負荷の温度が急激に変化する場合、マイクロコンピュータを用いた制御では、温度変化に間に合うようにスイッチング制御を行うために複雑な制御が必要となる。このため負荷の適切な温度制御を行う際にさらなる高コスト化が予想される。
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みてこれを解決すべくなされたものであり、低コストで適切な温度制御を行うことが可能な電源装置、定着装置、画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如き構成を採用した。
【0014】
本発明の電源装置は、入力された直流電圧を所定の電圧へ昇圧して負荷側へ出力する出力コイルと、前記出力コイルに接続されたコンデンサとから構成される電圧共振回路と、前記出力コイルへの通電のオン/オフを制御するスイッチング手段と、前記出力コイルと並列に接続された補助共振回路とを有する構成とした。
【0015】
また前記補助共振手段は、補助共振用コイルと補助共振用コンデンサとが直列接続されて構成されても良い。
【0016】
また前記負荷は、前記出力コイルの近傍に配置されており、前記出力コイルは、前記負荷に前記昇圧された電圧に基づく電磁誘導により渦電流を発生させて前記負荷を加熱する構成としても良い。
【0017】
また前記スイッチング手段は、前記負荷の温度に基づきオン/オフが制御される構成としても良い。
【0018】
また前記スイッチング手段は、IGBTにより構成されても良い。
【0019】
本発明は、トナー像が付着した記録媒体を加熱して、前記トナー像を定着ローラにより前記記録媒体へ定着させる定着装置において、入力された直流電圧を所定の電圧へ昇圧して前記定着ローラに誘導磁界を発生させて前記定着ローラを加熱するための加熱コイルと、前記加熱コイルに接続されたコンデンサとから構成される電圧共振回路と、前記加熱コイルへの通電のオン/オフを制御するスイッチング手段と、前記加熱コイルと並列に接続された補助共振回路とを有する構成とした。
【0020】
本発明は、トナー像が付着した記録媒体を加熱して、前記トナー像を定着ローラにより前記記録媒体に定着させて画像を形成する画像形成装置において、入力された直流電圧を所定の電圧へ昇圧して前記定着ローラに誘導磁界を発生させて前記定着ローラを加熱するための加熱コイルと、前記加熱コイルに接続されたコンデンサとから構成される電圧共振回路と、前記加熱コイルへの通電のオン/オフを制御するスイッチング手段と、前記加熱コイルと並列に接続された補助共振回路とを有する構成とした。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低コストで適切な温度制御を行うことが可能な電源装置、定着装置、画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の電源装置では、入力された直流電圧を所定の電圧として負荷側へ出力する出力コイルと、共振コンデンサとから構成された電圧共振回路の出力コイルに、並列に接続された補助共振回路を有する。
【0023】
以下の説明では、出力コイルを加熱コイルとし、負荷を電磁誘導により加熱する電磁誘導加熱方式に本発明の電源装置を適用した場合について説明する。尚電磁誘導加熱方式に適用された本発明の電源装置を以下の説明では電磁誘導加熱電源装置と呼ぶ。本発明の電磁誘導加熱電源装置は、コイルとコンデンサとが直列接続された補助共振回路を有する構成により、スイッチング制御を行う電源制御回路を用いずに適切な温度制御を行いつつスイッチング損失を低減する。
【0024】
以下に、本発明の実施形態の説明に先立ち、図1で説明した電磁誘導加熱電源装置10で行われるスイッチング制御についてさらに説明する。
【0025】
電磁誘導加熱電源装置10は、例えば電磁誘導加熱方式のクッキングシステム等に用いられる電源装置である。電磁誘導加熱電源装置10は、負荷60(例えば金属製の鍋等の調理器具)を加熱するための加熱コイルL1を備え、加熱コイルL1に電流を流すことで負荷60に渦電流を発生させ、この渦電流により負荷60自身を発熱させて加熱する。よって負荷60の温度は、加熱コイルL1を流れる電流に依存する。そこで電磁誘導加熱電源装置10は、負荷60の温度検出を行う本体制御回路70からの制御信号に基づき出力電力を制御して、加熱コイルL1に流す電流を制御する。
【0026】
電磁誘導加熱電源装置10の出力電力は、加熱コイルL1と共振コンデンサC1とから構成される電圧共振回路の駆動周波数を共振周波数近傍から離すことにより、昇圧比を変化させて制御することができる。しかしながら駆動周波数を変化させて電力制御を行う場合、電圧共振回路のQ(Quality factor)が下がりスイッチング損失が大きくなる。
【0027】
そこで電磁誘導加熱電源装置10では、電力制御を行う際に、電源制御回路40を用いてスイッチング損失を低減させるスイッチング制御を行っている。以下に、電源制御回路40によるスイッチング制御について説明する。
【0028】
電磁誘導加熱電源装置10では、比較的大きな電力を取り扱うため、スイッチング素子11には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が使用される。図2は、スイッチング素子11の構成を示す図である。IGBTは、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタである。IGBTは、ゲート・エミッタ間の電圧で駆動され、入力信号によりオン/オフできる自己消弧形であり、大電力のスイッチングが可能な半導体素子である。IGBTは、FET(Field effect transistor)と比較して大きな電力をスイッチングすることができる。
【0029】
図3は、スイッチング素子11のスイッチングを説明する図である。
【0030】
電磁誘導加熱電源装置10において電源制御回路40は、スイッチング素子11のコレクタ・エミッタ電圧Vce及びコレクタ電流Icを監視し、コレクタ・エミッタ電圧Vce及びコレクタ電流Icが0となるタイミングを検出する。電源制御回路40は、コレクタ・エミッタ電圧Vce及びコレクタ電流Icが0のときスイッチング素子11のオン/オフを切り替える。この状態でスイッチングを行えば、電流と電圧の過渡交差は発生せず、スイッチング損失のない動作を行うことができる。
【0031】
図3(A)は、コレクタ・エミッタ電圧Vceが0になる前にスイッチング素子11がオフからオンへ切り替えられた場合の波形図の一例である。図3(A)に示す例では、コレクタ・エミッタ電圧Vce及びコレクタ電流Icが重なる部分が生じるため、スイッチングの際に損失が生じる。スイッチングの際に損失が生じると、スイッチング素子11が発熱し、破損する虞がある。
【0032】
図3(B)は、コレクタ・エミッタ電圧Vce及びコレクタ電流Icが0になった状態でスイッチングされた場合の波形図の一例である。図3(B)に示す例では、スイッチングの際に損失が発生しない。図3(C)は、コレクタ・エミッタ電圧Vceが0になってもスイッチングされない場合の波形図の一例である。この場合、スイッチング素子11の寄生ダイオードD1に逆方向の電流が流れ、損失となる。
【0033】
電源制御回路40は、コレクタ・エミッタ電圧Vce及びコレクタ電流Icが0になるタイミングを検出し、検出したタイミングでスイッチングすることにより、スイッチング損失をなくす制御を行っている。すなわち電磁誘導加熱電源装置10のスイッチング素子11は、図3(B)に示される波形となるようにオン/オフが制御される。
【0034】
本発明では、以上に説明したような電源制御回路40によるスイッチング制御を行わなくてもスイッチング損失が発生しない電源装置を提供することができる。
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第一の実施形態について説明する。図4は、第一の実施形態の電磁誘導加熱電源装置の回路図である。図4において、図1で説明した電磁誘導加熱電源装置と同様の構成を有するものには図1の説明で用いた符号と同様の符号を付与する。
【0035】
電磁誘導加熱電源装置100は、整流回路20、インバータ回路35、ドライブ回路50を有する。本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100は、電源制御回路40の代わりに、インバータ回路35内に補助共振回路45を有する。
【0036】
整流回路20は、商用電源(AC100V)より供給される交流電圧の電源ノイズを除去して整流し、さらに平滑化した直流電圧をインバータ回路35へ提供する。
【0037】
インバータ回路35は、加熱コイルL1、共振コンデンサC1、スイッチング素子11、補助共振回路45を有する。加熱コイルL1と共振コンデンサC1とは並列に接続されており、電圧共振回路を構成する。スイッチング素子11は、加熱コイルL1への通電を制御する。補助共振回路45は、加熱コイルL1と並列に接続されており、コイルL2及びコンデンサC2が直列に接続されて構成されている。加熱コイルL1の近傍には、加熱コイルL1により加熱対象される負荷60が設けられている。
【0038】
スイッチング素子11はIGBTであり、ドライブ回路50によりドライブされる。D1はスイッチング素子11の寄生ダイオードである。ドライブ回路50は、後述する本体制御回路70と接続されており、本体制御回路70からの制御信号に基づきスイッチング素子11を動作させる。
【0039】
本体制御回路70は、電磁誘導加熱電源装置100が搭載された本体装置(図示せず)を制御する。また本体制御回路70は、負荷60の近傍に設けられた温度センサ80により負荷60の温度検出を行う。本体制御回路70は、検出された負荷60の温度に基づきドライブ回路50へスイッチング素子11の制御信号を出力し、負荷60を所望の温度にする制御を行う。
【0040】
本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100では、補助共振回路45を有する構成により、コレクタ・エミッタ電圧Vce及びコレクタ電流Icが0になるタイミングでスイッチング素子11のオン/オフを行うことができる。
【0041】
以下に、図5を参照して本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100のスイッチングについて説明する。図5は、第一の実施形態の電磁誘導加熱電源装置100のスイッチングを説明する図である。
【0042】
本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100では、補助共振回路45のコイルL1のインダクタンスにより、スイッチング素子11のコレクタ・エミッタ電圧Vceの波形のピーク値を高くすることができる。したがって本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100では、スイッチング時の電圧波形と電流波形の重なる部分を低減させてスイッチング損失を低減することができる。
【0043】
図5に示すコレクタ・エミッタ電圧Vceの波形H1は、補助共振回路45がない場合の電圧波形である。補助共振回路45がない場合、スイッチング素子11は、コレクタ・エミッタ電圧Vceが0になる前にオンになるため、波形H1とコレクタ電流Icの電流波形とが重なり、スイッチング損失が発生している。
【0044】
これに対しコレクタ・エミッタ電圧Vceの波形H2は、補助共振回路45を設けた本実施形態の電圧波形である。本実施形態では、補助共振回路45を設けることにより、波形H2のピーク値P2を波形H1のピーク値P1よりも高くする。よって波形H2は、波形H1よりもせん鋭度の高い波形となり、波形H1と比べてコレクタ・エミッタ電圧Vceがゼロのなるタイミングが早くなる。このため本実施形態では、波形H2と電流波形の重なる部分を低減、或いはなくすことができる。
【0045】
本実施形態の補助共振回路45は、電磁誘導加熱電源装置100の加熱コイルL1、共振コンデンサC1、スイッチング素子11の特性に合わせて設計される。例えば本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100において、補助共振回路45が設けられる前の電圧波形が波形H1であれば、補助共振回路45を設けたときに電圧波形が波形H2となるように、補助共振回路45を設計すれば良い。
【0046】
補助共振回路45の設計は、例えば設計シミュレーションプログラムなどを用いて行っても良い。図6は、電磁誘導加熱電源装置100をシミュレーションプログラムにより設計した場合のシミュレーション回路の波形を示す図である。
【0047】
図6に示す波形では、電圧波形と電流波形との重なりがなく、スイッチング損失が発生していないことがわかる。尚本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100では、コレクタ・エミッタ電圧Vceが0となってからゲート電圧Vgがハイレベル(スイッチング素子11がオン)になるまでに、期間T1を設けるように補助共振回路45を設計している。
【0048】
本実施形態の補助共振回路45では、この期間T1が加熱コイルL1、共振コンデンサC1、スイッチング素子11の特性に対して適切な期間となるように設計されることが好ましい。
【0049】
以下に、適切な期間T1について説明する。
【0050】
本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100では、負荷60の温度を所望の温度に加熱する温度制御を行う。負荷の温度制御は、電磁誘導加熱電源装置100が搭載された本体装置を制御する本体制御回路70により行われる。尚本体装置とは、例えば電磁誘導加熱電源装置100を搭載したクッキングシステム装置や、電磁誘導加熱方式による画像の定着を行う画像形成装置などである。
【0051】
本体制御回路70は、負荷60の温度に基づき電磁誘導加熱電源装置100の電力制御を行うことで、負荷60の温度制御を行う。本体制御回路70による電力制御は、スイッチング素子11のオン/オフのデューティを変化させることにより行う。ここで本実施形態において、電磁誘導加熱電源装置100のスイッチング制御が電圧波形が0になった時点でスイッチングする制御となっていた場合、デューティを変化させて電力制御を行うと電圧波形と電流波形が重なることが予測できる。
【0052】
例えば電磁誘導加熱電源装置100のスイッチング素子11が、図3(B)に示す波形となるように制御されていた場合、スイッチング素子11のオン時間を長くするようにデューティを変化させると、電圧波形と電流波形が重なりスイッチング損失が発生する。
【0053】
そこで本実施形態の補助共振回路45は、コレクタ・エミッタ電圧Vceが0となってからゲート電圧Vgがハイレベルになるまでの期間T1を設けるように設計した。本実施形態では、この期間T1を有することにより、デューティの変化による電力制御を行った場合にも電圧波形と電流波形との重なりを低減させる、或いはなくすことができる。尚本実施形態の期間T1は、スイッチング素子11の寄生ダイオードD1に流れる逆電流による損失が無視できる範囲となるように設計されるものとした。
【0054】
このように、本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100によれば、補助共振回路45を設けることにより、電源制御回路を使用せずにスイッチング損失を低減させることができる。また本実施形態の電磁誘導加熱電源装置100では、補助共振回路45により電圧共振回路のリアクタンス成分を調整することでスイッチング損失を低減させている。このため、スイッチング時にコレクタ・エミッタ電圧Vce及びコレクタ電流Icが0となる点を検出する必要がない。よって本実施形態では、負荷60の温度が急激に変化する場合でも、特別な制御を必要とせずにスイッチング損失を低減させる、或いはなくすことができる。このように本実施形態によれば、低コストで適切な温度制御を行うことが可能な電源装置を提供することができる。
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態では、第一の実施形態の電磁誘導加熱電源装置100が搭載された定着装置を有する画像形成装置について説明する。
【0055】
図7は、電磁誘導加熱電源装置が適用された画像形成装置GKの断面図である。尚電磁誘導加熱電源装置100が適用される画像形成装置は、図7に示すタイプの装置には限定されない。例えば電磁誘導加熱電源装置100は、単一色画像を作成するものだけに適用されても良く、カラー画像を形成するものだけに適用されても良い。また電磁誘導加熱電源装置100は、更には、画像形成装置以外の各種装置にも適用可能である。
【0056】
図7に示す画像形成装置GKは、像担持体の一例であってドラム形状を有する回転体である電子写真感光体(以下、単に感光体という)171を備え、この感光体171の周りに、図中に矢印で示す回転方向に順次、帯電ローラからなる帯電装置172、露光手段の一部を構成するミラー173、現像ローラ174aを備えた現像手段174、転写紙、記録紙等のシート状の記録材Pに現像された画像(トナー像)を転写する転写部材178、感光体171の周面に摺接するブレード176aを具備したクリーニング手段176等が配置してある。そして、帯電装置172と現像ローラ174aとの間において、感光体171にはミラー173を介して露光光Lbを露光照射して走査するようになっている。この露光光Lbの照射位置を露光部181と称する。
【0057】
転写部材178が感光体171の下面と対向する部位は、記録材Pにトナー像が転写される公知の転写部177となっており、この転写部177より給紙方向上流側には一対のレジストローラ179が設けてある。これらレジストローラ179には、何れかの給紙トレイ182に収納した転写紙等のシート状の記録材Pが、給紙コロ群183のコロによって送り出され、搬送ガイドおよび搬送ローラ群(符号を付していない)に案内されながら搬送されてくる。また、転写部177より給紙方向下流の位置には、定着装置200が配置されており、定着装置200より給紙方向下流側には両面記録実行時に転写紙の表裏を反転させ記録済みの紙面を下向きにして転写部177に再給紙する自動両面装置184が配置されている。
【0058】
次に画像形成装置GKによる画像形成について説明する。まず装置上部側では、感光体171が回転を始める。この回転中に感光体171が暗中において帯電装置172により均一に帯電され、作成すべき画像に対応する露光光Lbが露光部181により照射および走査されて、作成すべき画像に対応した潜像が感光体171上に形成される。この潜像は感光体171の回転により現像装置174に近接したとき、ここでトナーにより可視像(顕像)化されて、感光体171に担持されたトナー像となる。
【0059】
一方、装置下部側では、何れかの給紙トレイ182の給紙コロ群183により、複数の給紙トレイ182のうちいずれか一つから記録材Pを呼び出し、例えば図中に破線で示すような所定の搬送経路を経て一対のレジストローラ179の位置まで搬送する。そして記録材Pの搬送を一旦停止させ、感光体171上のトナー像が転写部177で記録材Pの所定位置に対向するようなタイミングで送り出す。すなわち、好適なタイミングが到来すると、レジストローラ179の位置で停止していた記録材Pをレジストローラ179で送り出し、転写部177に向けて搬送する。
【0060】
感光体171上のトナー像とこのトナー像が転写されるべき記録材Pの所定位置とは、その位置が転写部177で合致し、転写部材178による電界により、トナー像は記録材P上に吸引され転写される。こうして感光体171周りの画像形成部でトナー像を転写され担持した記録材Pは、定着装置200に向けて送り出される。そして、記録材P上のトナー像が、定着装置200を通過する間に加熱、加圧されて記録材Pに定着された後、記録材Pは排紙部に排紙される。
【0061】
また、記録材Pの両面に画像形成をする場合、図示しない分岐爪により自動両面装置184に排紙された記録材Pが、自動両面装置184でスイッチバック反転され、レジストローラ179の手前の搬送経路に搬送される。なお、転写部177で転写されずに感光体171上に残った残留トナーは、感光体171の回転と共にクリーニング装置176に至り、このクリーニング装置176を通過する間に感光体171上から清掃・除去され、次の画像形成に移行可能となる。
【0062】
次に、定着装置200について説明する。定着装置200は、一対のローラを採用した定着方式を採用した構成である。このため定着装置200には、定着ローラを加熱するための熱源を備え、この定着ローラに加圧ローラが当接、押圧している。本実施形態の定着装置200には、定着ローラを加熱するための熱源として第一の実施形態で説明した電磁誘導加熱電源装置100が搭載されている。
【0063】
図8は、画像形成装置GKに用いるローラ方式の定着装置200の概念的構成の断面図である。
【0064】
定着装置200は、磁束発生部210、定着ローラ220、加圧ローラ230を有する。定着ローラ220は熱源により加熱される発熱回転体であり、加圧ローラ230は加圧回転体である。また図8に示すPは記録材、Tは記録材P上に載ったトナーである。
【0065】
磁束発生部210では、コイル211が加熱コイルとして、電磁誘導加熱電源装置100の有するインバータ回路(図示せず)により高周波駆動される。定着装置200では、この高周波磁界により主に金属性の定着ローラ220に渦電流を発生させてローラ温度を上昇させている。図中、212は足コア、213はセンターコア、214はアーチコアであり、コイル211はアーチコア214と定着ローラ220の間に位置している。
【0066】
図9は、定着ローラ220の一部を拡大した断面図である。定着ローラ220は、直径が例えば40mmで、最も内側に消磁層(芯金)220Aを備え、その外側に、矢印で示すように記録材Pの画像面側に向かって、空気による断熱層220B、整磁層220C、酸化防止層220D1、発熱層220E、酸化防止層220D2、弾性層220F、そして表層である離型層220Gから構成される。
【0067】
消磁層220Aは、例えばアルミニウムまたはその合金、空気による断熱層220Bは例えば5mm程度の間隙とする。整磁層220Cには公知かつ適宜の整磁合金(例えば厚さ50μm)、酸化防止層220D1、220D2にはニッケルストライクメッキ(例えば厚さ1μm以下)、発熱層220EにはCuメッキ(例えば厚さ15μm)、弾性層220Fにはシリコーンゴム(例えば厚さ150μm)、そして、離型層220GにはPFA(厚さ30μm)が用いられる。すなわち、整磁層220Cから離型層220Gの表面までの厚さは例えば200〜250μである。尚これらはすべて一例である。
【0068】
消整磁層220Cは、キュリー点が例えば100〜300℃になるように形成された磁性体(例えば鉄、ニッケルを含む整磁合金材料)からなり、加圧ローラ230の押圧により変形しニップを形成するように構成してある。この整磁層220Cの存在により、発熱層220E等の過熱が防止される。また、定着ローラ220側が凹形状となるニップを形成しやすいため、記録材Pの分離性を優れたものとし得る。なお、もちろん、加圧ローラ230の押圧により変形するのは、図示の例では芯金220A以外の、整磁層220C〜離型層220Gである。
【0069】
図10は、加熱された定着ローラ220の断面図である。図10(A)は、太目の実線の矢印はコイル211からの誘導磁束、細目の実線の矢印は渦電流を示す(図10(C)参照)。図10(A)では、整磁層220Cを構成する整磁合金層の温度Tがキュリー温度Tc未満のため、整磁層220Cを構成する整磁合金が磁性体のままの状態となっている。よって、電磁誘導加熱電源装置100によりコイル211を駆動して定着ローラ220に発生させた誘導磁束が整磁層220Cを非透過あるいは断熱層220Bを非透過となっている。すなわち、キュリー点未満で整磁層220Cが磁束を透過させず、誘導磁束が芯金3Aに届いていない状態となっている。
【0070】
一方、図10(B)は、誘導磁束が整磁層220C、断熱層220Bを透過して消磁層(芯金)220Aに届いている状態を示している。図中点線の矢印は、アルミニウムまたはその合金製の消磁層220Aからの誘導磁束である(図10(C)参照)。図10(B)では、整磁層220Cを構成する整磁合金層の温度Tがキュリー温度Tcより高いため、整磁層220Cを構成する整磁合金の磁性が失われて非磁性体となり、断熱層220Bの存在にもかかわらず、誘導磁束が消磁層(芯金)220Aに届いている状態となっている。
【0071】
すなわち磁性体(上述した発熱層の機能をも含む)である整磁層220Cは、キュリー点に達するまではほぼ瞬時に昇温し、キュリー点に達すると磁性を失い昇温しなくなり、一定の温度を保持する。よって整磁層220Cをなす素材のキュリー点が、この種の定着装置において現れる温度である100〜300℃になるように形成した磁性体で構成しておけば、定着ローラ220の発熱層220Eや消磁層(芯金)220Aが過熱することが無くなり、定着温度に保持できるようになる。
【0072】
そこで定着装置200に搭載された電磁誘導加熱電源装置100は、整磁層220Cが定着温度を保持するように温度制御を行う。すなわち電磁誘導加熱電源装置100は、画像形成装置GK本体を制御する本体制御回路(図示せず)により、定着ローラ220の近傍に配置された温度センサ(図示せず)から定着ローラ220の温度を検出し、検出した温度に基づきスイッチング素子11のオン/オフのデューティを制御する。
【0073】
尚本実施形態の定着装置200では、定着ローラ220の温度が例えば160℃〜180℃となるように、定着ローラ220の温度制御を行っている。このとき電磁誘導加熱電源装置100は、画像形成装置GK本体を制御する本体制御回路からの信号に基づきスイッチング素子11のオン/オフのデューティを変化させる制御のみを行えば良い。
【0074】
このように本実施形態の画像形成装置GKでは、定着装置200の有する定着ローラ220の加熱源として電磁誘導加熱電源装置100を用いることにより、画像形成装置GKの有する本体制御回路によるスイッチング素子11のオン/オフのデューティ制御のみで定着ローラ220の温度制御を適切に行うことができる。したがって画像形成装置GKは、電磁誘導加熱電源装置100を制御するための電源制御回路を必要としない。また本実施形態の画像形成装置GKでは、定着装置200のコイル211等の仕様を変更せずにスイッチング素子11のスイッチング損失を低減させることができる。
【0075】
このように本実施形態によれば、低コストで適切な温度制御を行うことができる。
【0076】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】従来の電磁誘導加熱電源装置の回路図である。
【図2】スイッチング素子11の構成を示す図である。
【図3】スイッチング素子11のスイッチングを説明する図である。
【図4】第一の実施形態の電磁誘導加熱電源装置の回路図である。
【図5】第一の実施形態の電磁誘導加熱電源装置100のスイッチングを説明する図である。
【図6】電磁誘導加熱電源装置100をシミュレーションプログラムにより設計した場合のシミュレーション回路の波形を示す図である。
【図7】電磁誘導加熱電源装置が適用される画像形成装置GKを示す断面図である。
【図8】画像形成装置GKに用いるローラ方式の定着装置200の概念的構成の断面図である。
【図9】定着ローラ220の一部を拡大した断面図である。
【図10】加熱された定着ローラ220の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10、100 電磁誘導加熱電源装置
11 スイッチング素子
20 整流回路
30、35 インバータ回路
40 電源制御回路
45 補助共振回路
50 ドライブ回路
60 負荷
70 本体制御回路
80 温度センサ
200 定着装置
210 磁束発生部
220 定着ローラ
230 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された直流電圧を所定の電圧へ昇圧して負荷側へ出力する出力コイルと、前記出力コイルに接続されたコンデンサとから構成される電圧共振回路と、
前記出力コイルへの通電のオン/オフを制御するスイッチング手段と、
前記出力コイルと並列に接続された補助共振回路とを有することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記補助共振手段は、補助共振用コイルと補助共振用コンデンサとが直列接続されて構成されることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記負荷は、前記出力コイルの近傍に配置されており、
前記出力コイルは、前記負荷に前記昇圧された電圧に基づく電磁誘導により渦電流を発生させて前記負荷を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記スイッチング手段は、前記負荷の温度に基づきオン/オフが制御されることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記スイッチング手段は、IGBTにより構成されることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
トナー像が付着した記録媒体を加熱して、前記トナー像を定着ローラにより前記記録媒体へ定着させる定着装置において、
入力された直流電圧を所定の電圧へ昇圧して前記定着ローラに誘導磁界を発生させて前記定着ローラを加熱するための加熱コイルと、前記加熱コイルに接続されたコンデンサとから構成される電圧共振回路と、
前記加熱コイルへの通電のオン/オフを制御するスイッチング手段と、
前記加熱コイルと並列に接続された補助共振回路とを有することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
前記補助共振手段は、補助共振用コイルと補助共振用コンデンサとが直列接続されて構成されることを特徴とする請求項6記載の定着装置。
【請求項8】
前記定着ローラの温度を検出して当該定着装置の動作を制御する制御手段を有し、
前記スイッチング手段は、前記制御手段により検出された前記定着ローラの温度に基づきオン/オフが制御されることを特徴とする請求項6又は7記載の定着装置。
【請求項9】
前記スイッチング手段は、IGBTにより構成されることを特徴とする請求項6ないし8の何れか一項に記載の電源装置。
【請求項10】
トナー像が付着した記録媒体を加熱して、前記トナー像を定着ローラにより前記記録媒体に定着させて画像を形成する画像形成装置において、
入力された直流電圧を所定の電圧へ昇圧して前記定着ローラに誘導磁界を発生させて前記定着ローラを加熱するための加熱コイルと、前記加熱コイルに接続されたコンデンサとから構成される電圧共振回路と、
前記加熱コイルへの通電のオン/オフを制御するスイッチング手段と、
前記加熱コイルと並列に接続された補助共振回路とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記補助共振手段は、補助共振用コイルと補助共振用コンデンサとが直列接続されて構成されることを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記定着ローラの温度を検出して当該画像形成装置の動作を制御する制御手段を有し、
前記スイッチング手段は、前記制御手段により検出された前記定着ローラの温度に基づきオン/オフが制御されることを特徴とする請求項10又は11記載の画像形成装置装置。
【請求項13】
前記スイッチング手段は、IGBTにより構成されることを特徴とする請求項10ないし12の何れか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−63830(P2009−63830A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231637(P2007−231637)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】