説明

電源装置、画像形成装置及びその制御方法並びに制御プログラム

【課題】 スプリアス周波数の影響を受けない安定した領域で圧電トランスを制御することが可能な圧電トランス式高圧電源装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】
電源投入時に、圧電トランスに送る駆動パルス信号の周波数を切り替え、切り替えるごとに駆動パルス信号の周波数及び圧電トランスが出力する電圧値(デジタル変換された値)をメモリに記憶する。記憶された周波数及びデジタル変換された電圧値を元に極小値を検出する。検出された極小値のうち、最も目標電圧に対応する周波数に近い周波数のものを制御開始位置とし、圧電トランスから目標となる電圧値を出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置に関し、特に画像形成装置に用いる圧電トランス式高圧電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている電子写真方式の画像形成装置において、感光体に記録紙を当接させて転写を行う直接転写方式を採る場合、金属の軸にローラ状の導電性ゴムを巻きつけた転写ローラを用い、感光体のプロセススピードに合わせ回転駆動させている。そして、転写ローラに印加する電圧として通常10μA程度の直流バイアス電圧を用いている。
【0003】
画像形成に必要とされる高電圧を生成するために、従来は銅線,ボビン,磁芯で構成された巻線式の電磁トランスを使用していた。しかし、出力電流値が10μA程度という微小な電流のために、電磁トランスの各部に於いて漏れ電流を最大限少なくしなければならなかった。そのため、トランスの巻線をモールド等により絶縁する必要が有り、しかも供給電力に比較して大きなトランスを必要としたため、高圧電源装置の小型化・軽量化の妨げとなっていた。
【0004】
そこで、これらの欠点を補うために、例えばセラミック等を素材とした薄型で軽量の高出力の圧電トランスを用いて高電圧を発生させることが検討されている(特許文献1)。これにより、電磁トランス以上の効率で高電圧を生成することが可能となる。しかも、一次側と二次側の電極間の距離を離す事が可能となるので特別に絶縁の為にモールド加工する必要がなく、高圧発生装置を小型・軽量にできる。
【0005】
圧電トランスの特性は一般的に図2に示すような共振周波数F0において出力電圧が最大となるような裾広がりな形状をしており、周波数による出力電圧の制御が可能である。図2におけるFLは電圧制御発振器(VCO)で動作可能な最低周波数、F1は電圧制御発振器(VCO)で動作可能な最高周波数である。共振周波数F0よりも高い駆動周波数で出力電圧の制御を行う場合、駆動周波数を高い方から低い方へ変化させることで圧電トランスの出力電圧を増加させる。逆に共振周波数F0よりも低い駆動周波数で出力電圧の制御を行う場合は、駆動周波数を低い方から高い方へ変化させて出力電圧を増加させる。
【0006】
特許文献1に示す圧電トランスを用いた回路では、電圧制御発振器(VCO)は共振周波数F0を含む範囲の動作周波数で制御される。具体的には、、圧電トランスの構造上の特性により発生する不要共振周波数(F0以外の共振周波数。以下スプリアス周波数と記す)の電圧より大きく共振周波数F0の電圧より小さい電圧範囲で電圧制御発振器の制御を行う。このスプリアス周波数の発生を抑えるためには、圧電トランスに正弦波などの高調波成分を含まない電圧を入力することが有効であることが知られている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−206113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来例では、最高周波数F1から共振周波数F0の間で圧電トランスの駆動周波数を変化させることによって出力電圧を制御している。
【0009】
しかしながら、従来例における圧電トランスの電圧波形は図2のように高調波成分を含むため、スプリアス周波数の影響を受けやすいという問題があった。さらに、所要電圧範囲を広く必要とする場合、スプリアス周波数の影響を受けやすい低い電圧で制御するのが困難であるといった問題があった。スプリアスの影響を避けて制御するために、制御可能な電圧範囲が狭く、低い目標電圧を出力しにくかった。また、制御開始位置が図2の駆動周波数F1からであったことに伴い、目標電圧値に達するまでの時間がかかってしまっていた。
【0010】
本発明は上記問題を解決するものであり、その目的は、優れた応答性で安定して圧電トランスを制御することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
駆動パルスを発生する駆動パルス発生手段と、
前記駆動パルスの周波数に応じた電圧を出力する圧電トランスと、
前記駆動パルス発生手段によって発生する駆動パルスの周波数を制御する周波数制御手段と、
前記圧電トランスの出力電圧を検出する電圧値検出手段と、
前記周波数制御手段が前記駆動パルスの周波数を切り替える毎に、前記駆動パルスの周波数と、前記電圧値検出手段の検出結果とを、対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶している電圧値から、極小値を検出する極小値検出手段と、
を有し、
前記極小値検出手段が検出した極小値の中で、その極小値に対応する周波数が、目標電圧に対応する周波数と最も近い極小値を特定し、該極小値に対応する周波数を制御開始周波数として、前記駆動パルスの周波数を徐々に変化させることにより、前記圧電トランスから出力される電圧を前記目標電圧になるように制御することを特徴とする。
請求項1乃至3の何れか1項に記載の電源装置と、
像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部材と、
静電潜像にトナー像を形成する現像部材と、
トナー像を記録材に転写する転写部材と、
トナー像を転写された記録材にトナーを加熱定着させる定着部材と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
駆動パルスを発生する駆動パルス発生手段と、
前記駆動パルスの周波数に応じた電圧を出力する圧電トランスと、
前記駆動パルス発生手段によって発生する駆動パルスの周波数を制御する周波数制御手段と、
前記圧電トランスの出力電圧を検出する電圧値検出手段と、
前記周波数制御手段が前記駆動パルスの周波数を切り替える毎に、前記駆動パルスの周波数と、前記電圧値検出手段の検出結果とを、対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶している電圧値の極小値を検出する極小値検出手段と、
を有する電源装置の制御方法であって、
前記極小値検出手段が検出した極小値の中で、その極小値に対応する周波数が、目標電圧に対応する周波数と最も近い極小値を特定し、該極小値に対応する周波数を制御開始周波数として、前記駆動パルスの周波数を徐々に変化させることにより、前記圧電トランスから出力される電圧を前記目標電圧になるように制御することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
駆動パルスを発生する駆動パルス発生手段と、
前記駆動パルスの周波数に応じた電圧を出力する圧電トランスと、
前記駆動パルス発生手段によって発生する駆動パルスの周波数を制御する周波数制御手段と、
前記圧電トランスの出力電圧を検出する電圧値検出手段と、
前記周波数制御手段が前記駆動パルスの周波数を切り替える毎に、前記駆動パルスの周波数と、前記電圧値検出手段の検出結果とを、対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶している電圧値の極小値を検出する極小値検出手段と、
を有する電源装置の制御プログラムであって、
電源装置が読み込んで実行することにより、
前記極小値検出手段が検出した極小値の中で、その極小値に対応する周波数が、目標電圧に対応する周波数と最も近い極小値を特定し、該極小値に対応する周波数を制御開始周波数として、前記駆動パルスの周波数を徐々に変化させることにより、前記圧電トランスから出力される電圧を前記目標電圧になるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた応答性で安定して圧電トランスを制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
(第1実施形態)
<概要>
本発明の第1実施形態としての画像形成装置は、スイープ動作を行い、圧電トランスを駆動させるためのパルス信号の駆動周波数及び圧電トランスが出力する電圧値を記憶部に格納する。スイープ動作とは、圧電トランスに送るパルス信号の駆動周波数を切り替え、その時の圧電トランスが出力していく電圧を取り込む動作である。格納された周波数及び出力電圧から、目標電圧に最も近い極小値を検出する。その後は検出された極小値に対応する周波数によって圧電トランスの制御を開始し、スプリアス周波数の影響を受けない安定した個所で目標電圧を出力させる。これによりスプリアス周波数の影響を受けない安定した領域で圧電トランスを制御することを可能としたものである。
【0017】
<全体構成>
本発明の第1実施形態としての画像形成装置の構成について図3を用いて説明する。図3は本実施の形態の高圧電源装置を搭載した画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ401の内部構成を示す図である。
【0018】
レーザプリンタ401は記録紙32を収納するデッキ402を備える。403はデッキ402内の記録材としての記録紙32の有無を検知するデッキ紙有無センサであり、404はデッキ402から記録紙32を繰り出すピックアップローラである。405はピックアップローラ404によって繰り出された記録紙32を搬送するデッキ給紙ローラであり、406はデッキ給紙ローラ405と対をなし記録紙32の重送を防止するためのリタードローラである。そして、デッキ給紙ローラ405の下流には、記録紙32を同期搬送するレジストローラ対407と、レジストローラ対407への記録紙32の搬送状態を検知するレジ前センサ408が配設されている。
【0019】
またレジストローラ対407の下流には転写部材としての静電吸着搬送転写ベルト(以下ETBと記す)409が配設されている。ETB409に対向する位置には、現像部材としてのプロセスカートリッジ410Y、410M、410C、410Bkと潜像形成部材としてのスキャンユニット420Y、420M、420C、420Bkが設けられている。画像形成部は、4色(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBk)分のプロセスカートリッジ410とスキャンユニット420を含む。画像形成部によって形成された画像は、転写ローラ430Y、430M、430C、430BkによってETB409上において順次重ね合わされて、フルカラー画像が形成される。形成されたカラー画像は、記録紙32上に転写され、記録紙32は下流に搬送される。下流には記録紙32上に転写されたトナー像を熱定着するために内部に加熱用のヒータ432を備えた定着ローラ433と加圧ローラ434対が設けられている。定着ローラ433と加圧ローラ434とは、トナー像を転写された記録材にトナーを加熱定着させる定着部材として機能する。また、定着ローラからの記録紙32を搬送するための、定着排紙ローラ対435、定着部からの搬送状態を検知する定着排紙センサ436が配設されている。
【0020】
スキャンユニット420は、ビデオコントローラ440から送出される画像信号に基づいて変調されたレーザ光を発光するレーザユニット421と、レーザ光を像担持体としての感光ドラム305上に走査するためのポリゴンミラー422とを含む。また、各スキャンユニット420はスキャナモータ423及び結像レンズ群424を含む。スキャンユニット420の動作により、感光ドラム305の表面に静電潜像が形成される。
【0021】
各プロセスカートリッジ410は、感光ドラム305、帯電ローラ303、現像ローラ302、トナー格納容器411を備えており、レーザプリンタ401本体に対して着脱可能に構成されている。現像部材としてのプロセスカートリッジ410により、感光ドラム305上の静電潜像は、トナー像として可視化される。
【0022】
ビデオコントローラ440は、外部装置としてのホストコンピュータ441から送出される画像データを受信し、ビットマップデータに展開し、画像形成用の画像信号を生成する。
【0023】
レーザプリンタ401の制御手段であるDCコントローラ201は、RAM2071を備えたCPU(中央演算装置)207、特定用途向け集積回路(以降ASICと記載)205、その他に各種入出力制御回路(不図示)等を含む。ASIC205とCPU207は高圧電源202の制御を行うデジタル素子である。ASIC205とCPU207は、バス通信を行う。
【0024】
高圧電源(圧電トランス式高圧電源装置)202は、各プロセスカートリッジ410に対応した帯電高圧電源と、現像高圧電源と、各転写ローラ430に対応した高圧を出力可能な圧電トランスを使用した転写高圧電源とを含む。
【0025】
次に、圧電トランスの制御開始位置である極小値を検出するまでの制御を図1と図4と図5と図6と図7を用いて説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態における圧電トランス式高圧電源の複数ある回路の一つの回路図を示している。なお、複数の圧電トランス式の高圧電源とは、本実施形態では、帯電ローラに高電圧を印加する回路、現像ローラに高電圧を印加する回路、転写ローラに高電圧を印加する回路である。
【0027】
図4は、スイープ制御を行う場合のタイミング信号と各種データを示している。図5は、記憶部2051のアドレスと記憶領域を示している。図6は第1実施形態における圧電トランスの駆動周波数と出力電圧の特性を示している。図7は第1実施形態の制御フローを示している。
【0028】
図1において、記憶部2051は圧電トランスの駆動周波数及び圧電トランスから出力されてくる検出結果としての電圧(デジタル変換された値)を、対応付けて格納する。また、CPU207からのデータを記憶し、記憶したデータを各ブロックへ送出する。計測開始信号生成ブロック2052はCPU207によって記憶部2051に設定されたデータから、スイープ動作を開始するための信号を生成する。タイミング生成ブロック2053は、計測開始信号生成ブロック2052から送られてくる信号501をトリガーにして、圧電トランス101に送るパルス信号の周波数を切り替えるタイミング信号502を生成する。
【0029】
また周波数制御ブロック2054は駆動パルス発生手段として機能し、タイミング生成ブロック2053から送られてくるタイミング信号502をもとに周波数を切り替えながら圧電トランスに送る駆動パルス信号503を生成する。更に、A/Dコンバータブロック2055は、電圧値検出手段として機能し、圧電トランスの出力電圧を分圧したアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/Dコンバータブロック2055でデジタル変換された値は、圧電トランスの出力電圧として記憶部2051に格納される。極小値検出ブロック2056は記憶部2051に格納されている出力電圧値と駆動パルス信号の周波数から、出力電圧値の極小値と、その極値をとる駆動パルス信号の周波数とを検出する。
【0030】
図4において、501は図1で示した計測開始信号生成ブロック2052の出力信号である。502は、図1で示したタイミング生成ブロック2053から出力されるタイミング信号である。503は図1で示した周波数制御ブロック2054から出力されるパルス信号である。504は圧電トランス101から出力される電圧値である。
【0031】
図5において、アドレス1000番台にはパルス信号の駆動周波数が格納され、アドレス2000番台にはA/D変換された出力電圧が格納される。検出された極値はアドレス3000番台に格納される。極値に対応する周波数はアドレス4000番台に格納される。
【0032】
図6において、F1〜F32は圧電トランスに送るパルス信号の周波数を示しており(F1が高周波数側でF32が低周波数側)、例えばV5は圧電トランスに送る駆動パルス信号の周波数をF5に設定した場合に圧電トランスが出力した電圧値を示す。V8も同様で圧電トランスを駆動させる駆動パルス信号の周波数をF8に設定した場合の電圧値を示す。V32は目標出力電圧であり、その時の圧電トランスを駆動させる駆動パルス信号の周波数はF32であることを示す。
【0033】
次に、図7を用いてスイープ制御について説明を行う。まずステップS301において、スイープ制御を開始する。具体的にはCPU207が記憶部2051にスイープ動作を開始させるための信号501を計測開始信号生成ブロック2052に出力する。出力されたスイープ動作を開始させるための信号501をもとに、計測開始信号生成ブロック2052はタイミング生成ブロック2053に示した信号502を与える。タイミング生成ブロック2053は、信号502の立ち上がりを検出すると、圧電トランスに送る駆動パルス信号の周波数を切り替えるタイミング信号を、周波数制御ブロック2054に送る。タイミング生成ブロック2053が生成する切り替えタイミング信号の発生間隔は、CPU207が記憶部2051に設定した値を用いる。
【0034】
周波数制御ブロック2054は、タイミング信号生成ブロックから送られてくる信号503に同期して、パルス信号の周波数を、F1[Hz]からF2、F3、F4と、圧電トランスが出力する電圧値が目標電圧(V33)を超えるまで変化をさせる。圧電トランスに送るパルス信号の周波数を切り替えていくと、圧電トランスが出力する電圧も徐々に変化する。
【0035】
次にステップS302において、記憶部2051に駆動周波数と出力電圧を格納する。具体的には駆動パルス周波数F1は、記憶部2051のアドレス1000の記憶領域F101に記憶される。駆動パルス周波数F2は、記憶部2051のアドレス1001の記憶領域F102に記憶される。駆動パルス周波数F3も同様でアドレス1002の記憶領域F103に記憶される。
【0036】
図6に示すように圧電トランスを駆動するための駆動パルス信号の周波数をF1、F2、F3・・・と変化させると圧電トランスからV1、V2、V3、・・・・の電圧値が出力される。図5に示す通り、圧電トランスから出力される電圧値V1、V2、V3、・・・・はデジタル変換され記憶領域V101、V102、V103・・・に格納される。ステップS302に示す動作は、目標電圧を超えるまで繰り返される。目標電圧を超えてV33を検出した時点で上記動作を終わらせる。
【0037】
次にスイープ動作終了後、目標電圧に最も近いタイミングで検出された極小値を検出し、検出された極小値から目標電圧V32を出力させる。そのためにステップS304において、極値を検出し、検出された極値を記憶部のアドレス3000番台の記憶領域に格納させる。具体的には、図6から分かるように駆動パルス信号の周波数を段階的に変えるとV5まで圧電トランスが出力する電圧値が大きくなり、V5から圧電トランスが出力する電圧値が小さくなる。よってV5に対応する駆動周波数F5は、V5が極大値をとる周波数であると判断する。F5は、アドレス3000の記憶領域F301に格納される。
【0038】
同様に駆動パルス信号の周波数を段階的に変えるとV8まで圧電トランスが出力する電圧値が小さくなり、V8から圧電トランスが出力する電圧値が大きくなる。V8に対応する駆動周波数F8は、V8が極小値をとる周波数であると極小値検出ブロック2056が判断する。F8は、アドレス3001の記憶領域F302に格納される。
【0039】
同様にV20まで圧電トランスが出力する電圧値が大きくなり、V20から圧電トランスが出力する電圧値が小さくなる。V20に対応する駆動周波数F20は、アドレス3002の記憶領域F303に格納される。同様にV30まで圧電トランスが出力する電圧値が小さくなり、V30から圧電トランスが出力する電圧値が大きくなる。よってV30に対応する駆動周波数F30は、V30が極小値をとる周波数であると極小値検出ブロック2056が判断する。F30は、アドレス3003の記憶領域F304に格納される。V30から目標電圧V32を超えるまで圧電トランスから出力されてくる電圧値は小さくならない。
【0040】
次にステップS305に進み、極小値をとる周波数のうち、目標電圧を達成する周波数に一番近いものを記憶部から検出する。具体的には、アドレス3000から3003の記憶領域に格納され、極小電圧値V8、V30を実現する周波数F8、F30のうち、目標電圧V32に対応する周波数F32に最も近いもの(F30)を、制御開始周波数に設定する。
【0041】
更にステップS306に進み、目標電圧に一番近い極小値から圧電トランスの制御を開始する。具体的には、制御開始位置を検出後に目標電圧V32を出力させる場合、周波数制御ブロック2054にF30を設定し、圧電トランスに送る駆動パルス信号の周波数をF30から徐々に低くしていく。すると、圧電トランスに送る周波数をF32にしたところで圧電トランスから目標電圧であるV32が出力される。本実施形態の構成の場合、出力させることのできる電圧値の範囲が広がり、安定して圧電トランスからの低電圧出力をさせることができる。また、目標電圧に到達する時間が短縮される。
【0042】
このように、本実施形態によれば目標値に一番近い極小値から制御を開始するため、スプリアスの影響を受けることなく制御可能な電圧範囲が広がり、低い目標電圧を出力させることができ、極小値検出以降は目標電圧までの到達時間を短縮することができる。
【0043】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る画像形成装置について図8を用いて説明する。本実施形態では、上記第1実施形態と比し、記憶部2051へのデータ格納方法が異なる。スイープ動作は、第1実施形態と同じであるため、同じ処理については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0044】
ステップS401〜S402において、目標電圧を越えるまでの間に駆動パルス信号の周波数及び圧電トランスから出力される電圧値をそれぞれ記憶部2051に格納する。具体的には、スイープ動作を行いながら、駆動パルス信号の周波数及び圧電トランスから出力される電圧値をそれぞれ現時点、現時点の一つ前、現時点の二つ前の3つを記憶部2051に格納する。周波数に関しては、図5のアドレス1000〜1002の記憶領域に格納する。電圧値に関しては、アドレス2000〜2002の記憶領域に格納する。極小値をとる周波数に関してはアドレス3000以降の記憶領域に格納する。極小値である電圧値に関してはアドレス4000以降の記憶領域に格納する。
【0045】
アドレス2000〜2002に格納された電圧値が目標値を超えるまで、極小値検出ブロック2056は、アドレス2000〜2002に格納されている値から極小値を検出し続ける。
【0046】
極小値検出ブロック2056における極小値の検出方法の説明をスイープ動作を行って圧電トランスからの出力電圧が図6のV8あたりである時を例にして行う。アドレス2000の記憶領域V101に出力電圧であるV7が格納されており、アドレス2001の記憶領域V102に出力電圧であるV8が格納されており、アドレス2002の記憶領域V103に出力電圧であるV9が格納されているとする。アドレス2001に格納されている電圧値V8がアドレス2000に格納されている電圧値V7及びアドレス2002に格納されている電圧値V9よりも小さい場合(V8<V7かつV8<V9)は、V8を極小値と判断する。また、電圧値V8が極小値をとる周波数F8(アドレス1001の記憶領域F102に格納されている)をアドレス3000の記憶領域F301に格納し、電圧値V8をアドレス4000の記憶領域V401に格納する。目標電圧を超えるまで、上記動作を行う。
【0047】
次に、ステップS403において、目標電圧に一番近い極小値をとる周波数を記憶部から検出する。具体的には、記憶部2051のアドレス3000番台と4000番台に格納されている周波数と極小値の中から、目標電圧に一番近い極小値と極小値をとる周波数を検出する。
【0048】
次にステップS306において、検出された目標電圧に一番近い極小値を制御開始位置とする制御を行う。具体的には、アドレス3001の記憶領域F302に格納されている周波数の駆動パルス信号を圧電トランスに送信する。
【0049】
図6に示す通り、圧電トランスに送る駆動パルス信号の周波数をF30から徐々に低くし、F32にしたところで圧電トランスから目標電圧であるV32が出力される。第2実施形態の構成の場合、少ない記憶容量で出力電圧の範囲が広げ、安定して圧電トランスからの低電圧出力を得ることができ、極小値の検知以降は圧電トランスの立ち上がり時間を短縮することができる。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態では、負荷変動があった場合にリスタートさせる構成について説明を行う。
【0051】
第1実施形態及び第2実施形態で説明したスイープ制御及び極小値検出制御については、第3実施形態でも同様であるためその説明は省略する。負荷変動があった場合の圧電トランスの駆動周波数と出力電圧の特性を図10に示す。図10の周波数特性カーブ1は、負荷変動前の特性を示し、周波数特性カーブ2は、負荷変動後の特性を示している。負荷変動があったと検知された場合、図10に示す通り、制御開始位置である周波数をF30からF30とF32の間にあるF34に切り替える。F34は、(F30+F32)/2で算出される値である。F34から周期数を徐々に低くし、圧電トランスに送る周波数をF35にしたところで圧電トランスから目標電圧であるV32が出力される。第3実施形態の構成では、負荷変動があった場合に、早く出力電圧を出力させることができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0052】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するプログラムを、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置が、供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0054】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクがある。また、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0055】
その他、クライアントPCのブラウザを用いてインターネットサイトに接続し、本発明に係るプログラムそのもの、若しくは更に自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードするという利用方法もある。また、本発明に係るプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範疇に含まれる。 また、本発明に係るプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布してもよい。所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0056】
また、プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部又は全部を行ない、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0057】
さらに、PCの機能拡張ユニットに備わるメモリに本発明に係るプログラムが書き込まれ、そのプログラムに基づき、その機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行なう場合も、本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態における、ASIC205の内部ブロック図である。
【図2】カラーレーザプリンタの構成図である。
【図3】スイープ制御のタイミング図である。
【図4】ASIC205内にある各ブロックが生成する信号及び記憶部2051のアドレス及び記憶領域を表す図である。
【図5】本件における圧電トランスの駆動周波数と出力電圧の特性を表す図である。
【図6】第1実施形態における制御を説明するフローチャートである。
【図7】第2実施形態における制御を説明するフローチャートである。
【図8】第3実施形態の制御を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
101 圧電トランス
102,103 ダイオード
104 高圧コンデンサ
111 トランジスタ
112 インダクタ
207 CPU
205 ASIC
201 DCコントローラ
202 高圧電源
401 カラーレーザプリンタ
410 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動パルスを発生する駆動パルス発生手段と、
前記駆動パルスの周波数に応じた電圧を出力する圧電トランスと、
前記駆動パルス発生手段によって発生する駆動パルスの周波数を制御する周波数制御手段と、
前記圧電トランスの出力電圧を検出する電圧値検出手段と、
前記周波数制御手段が前記駆動パルスの周波数を切り替える毎に、前記駆動パルスの周波数と、前記電圧値検出手段の検出結果とを、対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶している電圧値から、極小値を検出する極小値検出手段と、
を有し、
前記極小値検出手段が検出した極小値の中で、その極小値に対応する周波数が、目標電圧に対応する周波数と最も近い極小値を特定し、該極小値に対応する周波数を制御開始周波数として、前記駆動パルスの周波数を徐々に変化させることにより、前記圧電トランスから出力される電圧を前記目標電圧になるように制御することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記周波数制御手段は、段階的に周波数を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記周波数制御手段は、前記圧電トランスの出力電圧が目標電圧を超えるまで段階的に周波数を切り替えることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の電源装置と、
像担持体の表面に静電潜像を形成する潜像形成部材と、
静電潜像にトナー像を形成する現像部材と、
トナー像を記録材に転写する転写部材と、
トナー像を転写された記録材にトナーを加熱定着させる定着部材と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
駆動パルスを発生する駆動パルス発生手段と、
前記駆動パルスの周波数に応じた電圧を出力する圧電トランスと、
前記駆動パルス発生手段によって発生する駆動パルスの周波数を制御する周波数制御手段と、
前記圧電トランスの出力電圧を検出する電圧値検出手段と、
前記周波数制御手段が前記駆動パルスの周波数を切り替える毎に、前記駆動パルスの周波数と、前記電圧値検出手段の検出結果とを、対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶している電圧値の極小値を検出する極小値検出手段と、
を有する電源装置の制御方法であって、
前記極小値検出手段が検出した極小値の中で、その極小値に対応する周波数が、目標電圧に対応する周波数と最も近い極小値を特定し、該極小値に対応する周波数を制御開始周波数として、前記駆動パルスの周波数を徐々に変化させることにより、前記圧電トランスから出力される電圧を前記目標電圧になるように制御することを特徴とする電源装置の制御方法。
【請求項6】
駆動パルスを発生する駆動パルス発生手段と、
前記駆動パルスの周波数に応じた電圧を出力する圧電トランスと、
前記駆動パルス発生手段によって発生する駆動パルスの周波数を制御する周波数制御手段と、
前記圧電トランスの出力電圧を検出する電圧値検出手段と、
前記周波数制御手段が前記駆動パルスの周波数を切り替える毎に、前記駆動パルスの周波数と、前記電圧値検出手段の検出結果とを、対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶している電圧値の極小値を検出する極小値検出手段と、
を有する電源装置の制御プログラムであって、
電源装置が読み込んで実行することにより、
前記極小値検出手段が検出した極小値の中で、その極小値に対応する周波数が、目標電圧に対応する周波数と最も近い極小値を特定し、該極小値に対応する周波数を制御開始周波数として、前記駆動パルスの周波数を徐々に変化させることにより、前記圧電トランスから出力される電圧を前記目標電圧になるように制御することを特徴とする電源装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−57255(P2010−57255A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218819(P2008−218819)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】