説明

電源装置およびこれを用いた2重化電源装置

【課題】従来の2重化電源装置では、出力電圧あるいは突き合わせダイオードの順方向電圧のばらつきから、1台の電源装置に出力電流が集中し、この電源装置の発熱が増大して、信頼性が低下するという課題があった。本発明では出力電流を分散化できるようにすることにより、信頼性を高くできる電源装置を提供することを目的にする。
【解決手段】電流検出部を用いて出力電流に比例し、共通電位点を基準とする電圧を発生させ、共通電位点を基準とする基準電圧と出力電圧を分圧した電圧の差電圧に基づいて、出力電圧を制御するようにした。出力電流が増加すると出力電圧が低下するので、並列運転したときに出力電流を分散化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列接続したときに出力電流が分散化される電源装置に関し、2重化された電源装置に用いて好適な電源装置、およびこの電源装置を用いた2重化電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロセス制御では、事故時の社会的影響が大きいので、安全と高信頼性の両方が求められる。このため、システムを2重化して信頼性を高めることが行われている。
【0003】
図11に、プロセス制御などで用いられる2重化電源装置の構成を示す。図11(A)は2重化電源装置1の構成図である。図11(A)において、11、12は安定化電源であり、外部電源10から電力が供給され、出力電圧を安定化して出力する。安定化電源11、12は、経路11a、12aを用いて出力電圧を帰還することにより、出力電圧を安定化する。安定化電源11、12の出力は、負荷であるシステム13に供給される。
【0004】
安定化電源11と12の出力を直接接続すると、両方の出力が影響して出力電圧が安定しないという誤動作が発生する。このため、安定化電源11、12の出力側にダイオード14、15を接続し、このダイオード14、15を介してシステム13に電力を供給する。ダイオード14、15は、安定化電源11、12を並列接続する際の突き合わせダイオードである。
【0005】
次に、図12を用いて、図11(A)の2重化電源装置1の動作を説明する。図12(A)は安定化電源11、12の出力電圧の変化を表した特性図、同図(B)は出力電流の変化を表した特性図であり、横軸は時間、(A)の縦軸は電圧、(B)の縦軸は電流である。
【0006】
図12において、実線20、22は安定化電源11の出力電圧、出力電流の変化を、一点鎖線21、23は安定化電源12の出力電圧、出力電流の変化を表す。安定化電源11、12の出力電圧は、電圧制御の精度やダイオード14、15の順方向電圧のばらつきの影響で、必ずしも同じ電圧にならない。ここでは、安定化電源11の出力電圧は、安定化電源12の出力電圧より若干高いものとする。
【0007】
安定化電源11の出力電圧が安定化電源12の出力電圧より高いので、ダイオード14はオン、ダイオード15はオフになる。このため、(B)に示すように、システム13に供給される電流のほとんどは安定化電源11から供給され、安定化電源12の出力電流は小さな値になる。
【0008】
ダイオード14、15の順方向電圧は負の温度特性を有しているので、安定化電源11の出力電流が増加すると発熱が増大し、ダイオード14の温度が高くなってその順方向電圧は小さくなり、安定化電源11の出力電流は更に増加する。この正帰還作用によって、システム13に供給される電流のほとんどは、安定化電源11から供給される。
【0009】
時刻t1で安定化電源11にトラブルが発生して、その出力電圧が低下したとする。安定化電源11の出力電圧が安定化電源12の出力電圧より小さくなると、ダイオード14がオフ、ダイオード15がオンになる。このため、安定化電源12の出力電流は増加する。システム13には、安定化電源12から電力が供給される。このようにして、一方の安定化電源にトラブルが発生しても、自動的に他方の安定化電源に切り替わるので、システム13への電力供給が途絶えることはない。
【0010】
図11(B)に、2重化電源装置2の構成を示す。なお、図11(A)と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図11(B)において、16、17は抵抗であり、それぞれ安定化電源11とダイオード14の間、および安定化電源12とダイオード15の間に挿入される。
【0011】
この構成では、出力電流が増加すると抵抗16、あるいは抵抗17の電圧降下が増えるので、その安定化電源の出力電圧が低下したのと同じ効果が得られ、他方の安定化電源の出力電流が増加する。このため、一定のばらつき範囲内で、安定化電源11、12の出力電流がバランスするという特性がある。
【0012】
例えば、安定化電源11の出力電圧が安定化電源12の出力電圧より大きいと、安定化電源11の出力電流が増加し、抵抗16の電圧降下が大きくなって、等価的に安定化電源11の出力電圧が低下する。このため、安定化電源12の出力電流が増加する。すなわち、安定化電源11、12の出力電圧の差が抵抗16、17の電圧降下で相殺されるように、安定化電源11、12の出力電流が配分される。
【0013】
図11(C)に、2重化電源装置3の構成を示す。なお、図11(A)と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0014】
この構成では、ダイオード14、15の代わりにカレントシェア制御部18、19を配置する。カレントシェア制御部18、19は相互にデータを交換し、安定化電源11、12の出力電流が予め定められた比率になるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実公平6−50029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、このような2重化電源装置には、次のような課題があった。
図11(A)の2重化電源は出力電圧が高い側の安定化電源から大半の電流がシステム13に供給される。他方の安定化電源は動作しているので待機電力を消費するが、電力供給にはほとんど寄与しない。このため、2重化電源装置の総合消費電力が大きくなってしまうという課題があった。
【0017】
また、出力電圧が高い側の安定化電源は大半の電力をシステム13に供給しているので大きな電流が流れ、内部温度が高くなる。アレニウスの法則によれば、経年変化の主因が温度であるときに、部品の寿命τは下記(1)式によって近似でき、温度が10℃下がれば寿命は2倍に延びる。これは「10℃2倍則」として知られている。
τ=A*exp(Ea/kT) ・・・・・・ (1)
A、Ea:故障モード毎の固有の定数
T:絶対温度
k:ボルツマン定数
【0018】
内部温度は出力電力に比例すると考えられるので、安定化電源の定格負荷と50%負荷の内部温度上昇の差が20℃であるとすると、一方の安定化電源が大半の電力を供給する図11(A)の構成では、前記(1)式から、半分ずつ供給する場合に比べて総合寿命は半分になってしまうという課題があった。
【0019】
また、大半の電力を供給する側の安定化電源は電気的に大きな負荷を強いられているので、寿命とは異なるモードの故障発生率が増加し、メンテナンス頻度が増大してしまうという課題もあった。
【0020】
図11(B)、(C)の構成では出力電流が2つの安定化電源に分配されるので、電気的に大きな負荷がかかることはなくなる。しかし、(B)の構成では抵抗16、17に大きな電流が流れるので、大きな電力損失に耐える抵抗を用いなければならず、また抵抗16、17が発熱するために内部温度が上昇し、かつ抵抗16、17の損失のために、2重化電源装置全体の効率が低下するという課題があった。
【0021】
(C)の構成ではカレントシェア制御部18、19の構成が複雑になるので、部品点数が増加して信頼性が低下するという課題があった。また、カレントシェア制御部18、19は相互に通信してデータを交換しなければならないので、外乱による通信妨害に弱くなり、かつ2つの安定化電源が互いに独立でなくなるので、相互に干渉して全体の信頼性が低下してしまうという課題もあった。
【0022】
本発明の目的は、出力電流が増加すると出力電圧が低下するようにして、並列接続したときに出力電流が分散化される電源装置、およびこの電源装置を用いた2重化電源装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
入力された電圧を安定化して負荷に供給する電源装置において、
入力された電圧を変換し、出力端子に出力する電圧変換部と、
前記出力端子から出力された電流を検出し、共通電位点を基準とする信号を出力する電流検出部と、
前記共通電位点を基準とする第1の基準電圧を出力する第1の基準電源と、
一方の入力端子に前記第1の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力されて、これらの入力信号の差に関連する信号を出力する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力信号が入力され、この入力された信号に基づいて前記電圧変換部を制御する制御部と、
前記電圧変換部と前記出力端子との間に接続される第1のダイオードと、
を具備したものである。出力電流の増加に伴って出力電圧が減少するので、2つ以上の電源装置を並列接続する電源装置に用いて最適である。
【0024】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記電流検出部の出力電圧を基準とする第2の基準電圧を出力する第2の基準電源と、
一方の入力端子に前記第2の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力される第2の増幅器と、
前記第2の増幅器の出力端子と、前記第1の増幅器の一方の入力端子との間に接続される第2のダイオードと、
を具備したものである。出力電流が大きい領域で出力電圧が一定になるので、出力電圧の精度が低下することがない。
【0025】
請求項3記載の発明は、
入力された電圧を安定化して負荷に供給する電源装置において、
入力された電圧を変換し、出力端子に出力する電圧変換部と、
前記出力端子から出力された電流を検出し、共通電位点を基準とする信号を出力する電流検出部と、
前記共通電位点を基準とする第3の基準電圧を出力する第3の基準電源と、
一方の入力端子に前記第3の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力される第3の増幅器と、
前記電流検出部の出力電圧を基準とする第4の基準電圧を出力する第4の基準電源と、
一方の入力端子に前記第4の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力されて、これらの入力信号の差に関連する信号を出力する第4の増幅器と、
前記第3の増幅器の出力端子と、前記第4の増幅器の一方の入力端子との間に接続される第3のダイオードと、
前記第4の増幅器の出力信号が入力され、この入力された信号に基づいて前記電圧変換部を制御する制御部と、
前記電圧変換部と前記出力端子との間に接続される第1のダイオードと、
を具備したものである。低出力電流領域で出力電圧が一定になるので、2つ以上の電源装置を並列接続したときに、低出力電流領域で効率を高くすることができる。
【0026】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記電流検出部の出力電圧を基準とする第5の基準電圧を出力する第5の基準電源と、
一方の入力端子に前記第5の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力される第5の増幅器と、
前記第5の増幅器の出力端子と前記第3の増幅器の一方の入力端子との間に接続される第4のダイオードと、
を具備したものである。高出力電流領域で出力電圧の精度が低下することがなく、また2重化電源装置に用いたときに、低出力電流領域で効率を高めることができる。
【0027】
請求項5記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記共通電位点を基準とする第6の基準電圧を出力する第6の基準電源と、
一方の入力端子に前記第6の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力される第6の増幅器と、
前記第6の増幅器の出力端子と前記第1の増幅器の一方の入力端子との間に接続される第5のダイオードと、
を具備したものである。過電流保護を行うことができる。
【0028】
請求項6記載の発明は、
請求項1乃至請求項5いずれかに記載の電源装置を並列接続して、2重化電源装置を構成するようにしたものである。2重化電源装置を構成する電源装置の出力電流を分散化することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1、2、3、4、5、および6の発明によれば、出力電流の増加に伴って、出力電圧を低下させるようにした。また、この電源装置を用いて2重化電源装置を構成するようにした。
【0030】
2台以上の電源装置を並列接続したときに、一方の電源装置の出力電流が大きくなるとその電源装置の出力電圧が低下して、他方の電源装置の出力電流が増加するので、各電源装置の出力電流を分散化することができる。このため、1台の電源装置のみ出力電流が大きくなり、発熱によって信頼性が低下し、また故障が頻発することがなくなるという効果がある。また、故障頻度が小さくなるので、メンテナンス性が向上するという効果もある。さらに、電流検出信号は増幅器で増幅されるので、電流を検出する抵抗の値を小さくすることができる。このため、消費電力を小さくすることができるという効果もある。
【0031】
また、出力電流が高い領域で出力電圧を一定にすることにより、出力電圧の精度低下を防止することができるという効果もある。
【0032】
また、スイッチング電源では低出力電流領域で効率が低下するので、出力電流が低い領域で出力電圧を一定にして1台の電源装置のみから電流を出力することにより、全体の効率を高めることができるという効果もある。
【0033】
さらに、この電源装置を用いて2重化電源装置を構成することにより、出力電流を2台の電源装置に分散化することができるので、2重化電源装置の信頼性が向上し、メンテナンス性を向上させることができるという効果もある。
【0034】
なお、この電源装置は2重化電源装置だけでなく、並列運転して出力電力を増加させるような電源システムに用いても好適である。このようなシステムでも、各電源装置の出力電流を分散化することができるので、信頼性が向上し、メンテナンス性がよくなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1の構成図である。
【図2】2重化電源装置の構成図である。
【図3】実施例1、および図2の2重化電源装置の特性図である。
【図4】実施例2の構成図である。
【図5】実施例3の構成および特性を示した図である。
【図6】実施例4の構成図である。
【図7】実施例5の構成および特性を示した図である。
【図8】実施例6の構成および特性を示した図である。
【図9】実施例7の構成図である。
【図10】実施例8の構成図である。
【図11】従来の2重化電源装置の構成図である。
【図12】従来の2重化電源装置の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(実施例1)
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。なお、請求項1〜5は、それぞれ実施例1〜実施例3、実施例5、実施例6に対応する。
【0037】
(実施例1)
図1は本発明に係る電源装置の実施例1を示した構成図である。図1において、30は外部電源であり、電圧Vinを出力する。外部電源30は、図11従来例の外部電源10に相当する。
【0038】
31は電圧変換部であり、外部電源30の出力電圧Vinが入力され、この入力された電圧を変換して出力する。電圧変換部31は、スイッチング素子Q1、ダイオードD1、インダクタL1、コンデンサC1で構成される。スイッチング素子Q1のドレインには外部電源30の出力電圧Vinが入力され、そのソースはダイオードD1のカソードおよびインダクタL1の一端に接続される。インダクタL1の他端およびコンデンサC1の一端は接続される。ダイオードD1のアノードおよびコンデンサC1の他端は、共通電位点(▽で表す)に接続される。
【0039】
外部電源30の出力電圧Vinはスイッチング素子Q1で交流に変換される。この交流はダイオードD1で整流され、インダクタL1、コンデンサC1で平滑されて出力される。電圧変換部31は、一般的な非絶縁の降圧型スイッチング電源を構成している。
【0040】
32はダイオードであり、そのアノードはインダクタL1とコンデンサC1の接続点に接続され、カソードは出力端子33aに接続される。電圧変換部31の出力電圧は、ダイオード32を経由して出力端子33aから出力される。ダイオード32は、図11のダイオード14、15と同様に、2つの電源装置を並列接続して2重化電源装置を構成する際の突き合わせダイオードである。
【0041】
34、35は直列接続された抵抗であり、この直列回路の両端は出力端子33a、33bに接続される。抵抗34、35は出力端子33a、33b両端の電圧を分圧する。36は抵抗であり、その一端は出力端子33bに接続され、他端は共通電位点に接続される。抵抗36には、第1の出力端子33aから出力される電流が流れる。
【0042】
抵抗36は電流検出部を構成しており、その両端電圧は出力端子33aから出力される出力電流Ioutに比例する。抵抗36の一端は共通電位点に接続されているので、抵抗36は共通電位点を基準とした信号を出力する。出力端子33bの電位は、電流検出部である抵抗36の出力電圧の電位に等しい。
【0043】
37は増幅器であり、その反転入力端子には抵抗34、35で分圧された電圧が入力される。38は基準電源である。基準電源38の負電源端子は共通電位点に接続されている。このため、基準電源38は共通電位点を基準とする基準電圧Vref1を出力する。この基準電圧Vref1は、増幅器37の非反転入力端子に入力される。増幅器37は、抵抗34と35で分圧された電圧と基準電圧Vref1の差電圧(誤差電圧)に関連する電圧を出力する。
【0044】
39は制御部であり、増幅器37の出力電圧が入力され、その出力はスイッチング素子Q1のゲートに出力される。制御部39は、増幅器37の出力電圧(誤差電圧)が0になるように、スイッチング素子Q1の開閉を制御する。
【0045】
なお、増幅器37、基準電源38、基準電圧Vref1、ダイオード32は、それぞれ第1の増幅器、第1の基準電源、第1の基準電圧、第1のダイオードに相当する。
【0046】
図2に、実施例1の電源装置を用いて2重化電源装置を構成した例を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0047】
図2において、40、41は電源装置であり、図1から外部電源30を除いた構成を有している。電源装置40、41は並列接続され、外部電源30から電圧Vinが入力されて、負荷であるシステム42に電力を供給する。電源装置40、41の両方が正常であるときは、システム42には一方あるいは両方の電源装置40、41から電力が供給され、一方の電源装置に異常が発生したときは、自動的に他方の電源装置から全電力が供給される。
【0048】
次に、この実施例1の動作を説明する。抵抗36および基準電源38はいずれも共通電位点を基準とする電圧信号を出力し、かつ共通電位点を基準とした出力端子33bの電位は、抵抗36の両端電圧だけ高くなる。制御部39は増幅器37の2つの入力端子に印加される電圧を一致させるように動作するので、出力電圧Voutは下記(2)式で表される。なお、抵抗34〜36の抵抗値をそれぞれR34〜R36、出力電流をIout、基準電圧Vref1の電圧を同じ記号のVref1で表す。出力電流Ioutが0のときは、出力電圧Voutは、Vref1×(1+R34/R35)になる。
Vout=(Vref1−R36×Iout)×(1+R34/R35)
・・・・・・ (2)
【0049】
図3(A)は、図1の電源装置の出力電流Ioutと出力電圧Voutおよび抵抗36の両端電圧の関係を表した特性図であり、縦軸は電圧、横軸は出力電流Ioutである。また、43は出力電圧Vout、44は抵抗36の両端電圧の変化を表した直線である。
【0050】
出力電流Ioutは抵抗36を流れるので、44に示すように出力電流Ioutが増加すると抵抗36の両端電圧も増加する。また、前記(2)式および直線43から明らかなように、出力電圧Voutは出力電流Ioutが増加すると減少する。すなわち、図1の電源装置は、出力電流Ioutが増加すると出力電圧Voutが減少する特性を有している。
【0051】
図3(B)は、図2の2重化電源装置の特性を表した特性図であり、横軸はシステム42に供給される総合電流、縦軸は電圧または電流である。なお、出力電流が小さいときにおける電源装置40の出力電圧は、電源装置41の出力電圧よりも高いものとする。
【0052】
図3(B)において、実線45、一点鎖線46はそれぞれ電源装置40、41の出力電圧の推移を、実線47、一点鎖線48はそれぞれ電源装置40、41の出力電流の推移を表す。
【0053】
総合電流がI1より小さい区間Aでは、電源装置40の出力電圧は同41の出力電圧より高い。このため、システム42に供給される電流は全て電源装置40から出力され、電源装置41の出力電流は0になる。総合電流が大きくなるに従って、電源装置40の出力電圧は、前記(2)式に沿って低下していく。電源装置41の出力電流は0なので、出力電圧は変化しない。
【0054】
総合電流がI1になると、電源装置40と41の出力電圧Voutは一致し、これ以降の総合電流(区間B)では、48に示すように電源装置41からも電流が出力される。どちらかの電源装置の出力電圧が高くなるとその出力電流が大きくなるので、出力電圧は低下する。この作用により、電源装置40と41の出力電圧Voutは、一致しながら低下していく。区間Aにおける出力電圧Voutは、R36×(1+R34/R35)の勾配で低下し、区間Bにおける出力電圧Voutの低下率は、区間Aのそれの約1/2になる。
【0055】
このように、電源装置40、41の出力電圧が一致するように、両方の電源装置から電流が出力される。このため、区間Bでは、図11(A)従来例のように一方の電源装置のみ電流を出力するということがない。出力電流が両方の電源装置に分担されるので、信頼性が低下することがなくなる。
【0056】
また、前記(2)式から明らかなように、抵抗36の両端電圧は(1+R34/R35)倍に増幅される。このため、抵抗36として抵抗値が小さな抵抗を選択できるので、その電力損失は小さくなる。従って、抵抗36の損失に起因する効率低下を最小限に抑えることができ、かつ抵抗36の消費電力を削減できる。
【0057】
さらに、電圧変換部31、増幅器37、制御部39、基準電源38は降圧型スイッチングレギュレータで必須の要素なので、従来の降圧型スイッチングレギュレータに抵抗36を追加するだけでよい。このため、簡単な構成で実現できる。
【0058】
なお、図3(B)に示すように、2つの電源装置の出力電圧が一致するまでは、出力電圧が高い方の電源装置からのみ電流が供給される。しかし、出力電流が小さいときは内部損失が小さいので、片側の電源装置のみで電力を供給しても、寿命や故障率に影響することはない。また、スイッチング電源は低電力出力時で効率が低くなるので、出力電流が小さい間は片側の電源装置のみで電力を供給した方が、全体の効率を高くすることができる。
【0059】
(実施例2)
図4に、本発明に係る電源装置の実施例2を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図4(A)は構成図、同(B)は出力電流Ioutと出力電圧Voutとの関係を表した特性図である。
【0060】
2重化電源装置では2つの電源装置の出力電流をバランスさせることが目的なので、電圧低下量は各電源装置の出力電圧設定精度と、ダイオード32の順方向電圧のばらつきの合計値を確保すれば十分であるが、実施例1では必要以上に出力電圧Voutが低下する場合がある。実施例2は出力電圧の低下を制限するようにしたものである。
【0061】
図4(A)において、51は基準電圧Vref2を出力する基準電源である。50は増幅器であり、その非反転入力端子には基準電圧Vref2が入力され、反転入力端子には抵抗34、35で分圧された出力端子33a、33b間の電圧が入力される。52はダイオードであり、そのアノードは増幅器50の出力端子に接続され、カソードは増幅器37の非反転入力端子に接続される。53は抵抗であり、増幅器37の非反転入力端子と基準電源38の出力端子の間に挿入される。増幅器50、基準電源51、基準電圧Vref2、ダイオード52は、それぞれ第2の増幅器、第2の基準電源、第2の基準電圧、第2のダイオードに相当する。
【0062】
増幅器50と基準電源51の負電源端子は、出力端子33bに接続される。電流検出部を構成する抵抗36の一端は出力端子33bに接続されているので、基準電源51が出力する基準電圧Vref2は、電流検出部の出力電圧を基準とする電圧になる。なお、下記(3)式を満たすように、基準電圧Vref1、Vref2を選定する。
Vref1>Vref2 ・・・・・・ (3)
【0063】
次に、この実施例2の動作を説明する。抵抗34〜36の抵抗値をそれぞれR34〜R36、出力電流をIoutとすると、下記(4)式を満たすIdを電圧勾配完了点とする。
Vref2×G=(Vref1−R36×Id)×G ・・・・・ (4)
なお、G=(1+R34/R35)
【0064】
出力電流Ioutがこの電圧勾配完了点Idより小さい領域では、前記(4)式の右辺が左辺より大きくなり、ダイオード52がオフになるので、増幅器50の出力は増幅器37から切り離される。増幅器37の非反転入力端子には基準電源38の出力電圧Vref1が入力されるので、実施例1と同じになる。出力電圧VoutはR36×(1+R34/R35)の勾配で低下する。
【0065】
出力電流Ioutが電圧勾配完了点Idより大きくなると前記(4)式の右辺が左辺より小さくなるので、ダイオード52がオンになり、増幅器37の非反転入力端子の電圧は増幅器50の出力電圧で規制される。基準電圧Vref2は電流検出部である抵抗36の出力電圧を基準とした電圧なので、増幅器50の出力電圧は抵抗36の電圧降下によって変化しない。このため、出力電流Ioutの値に拘わらず、出力電圧Voutは一定値になる。
【0066】
図4(B)に出力電流Ioutと出力電圧Voutの関係を示す。電圧勾配完了点Id以下では出力電圧Voutは出力電流Ioutが増加すると減少するが、Id以上では一定値を維持する。電圧勾配完了点Id以前で2つの電源装置の出力電流は分配されているので、電圧勾配完了点Id以上で出力電圧Voutを一定にしても、電流の分配は維持される。
【0067】
(実施例3)
図5に、本発明に係る電源装置の実施例3を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図5(A)は構成図、同(B)は出力電流Ioutと出力電圧Voutとの関係を表した特性図である。
【0068】
出力電流が低いところでは寿命や故障率が大きくなることはなく、かつスイッチング電源は低電力出力時で効率が低くなる。このため、2重化電源装置では、出力電流が小さいときは片側の電源装置のみを用いて電力を供給するようにした方が、全体の効率が高くなる。本実施例3は、出力電流が小さい一定範囲では出力電圧が一定値になるようにして、片側の電源装置のみから電力を供給する出力電流の範囲を広げるようにしたものである。
【0069】
図5(A)において、61は基準電源であり、基準電圧Vref3を出力する。基準電源61の負電源端子は共通電位点に接続されている。このため、基準電圧Vref3は共通電位点を基準とする電圧である。60は増幅器であり、その非反転入力端子には基準電圧Vref3が入力され、反転入力端子には抵抗34と35で分圧された出力端子33a、33b間の電圧が入力される。
【0070】
63は基準電源であり、基準電圧Vref4を出力する。基準電源63の負電源端子は出力端子33bに接続されている。このため、基準電圧Vref4は電流検出部である抵抗36の出力電圧を基準とする電圧になる。62は増幅器であり、その反転入力端子には抵抗34と35で分圧された出力端子33a、33b間の電圧が入力される。64は抵抗であり、増幅器62の非反転入力端子と基準電源63の出力端子との間に接続される。増幅器62の非反転入力端子には、抵抗64を介して基準電圧Vref4が入力される。65はダイオードであり、そのカソードは増幅器60の出力端子に接続され、アノードは増幅器62の非反転入力端子に接続される。
【0071】
なお、下記(5)式を満たすように、基準電源61、63を選定する。また、基準電源61、63、基準電圧Vref3、Vref4、増幅器60、62、ダイオード65は、それぞれ第3、第4の基準電源、第3、第4の基準電圧、第3、第4の増幅器、第3のダイオードに相当する。
Vref3>Vref4 ・・・・・・ (5)
【0072】
次に、この実施例3の動作を説明する。下記(6)式が成立する電流Isを電圧勾配開始点とする。なお、抵抗34〜36の抵抗値をそれぞれR34〜R36とし、基準電圧Vref3、Vref4の電圧値を同じ記号で表す。
Vref4×G=(Vref3−R36×Is)×G ・・・・・ (6)
但し、G=(1+R34/R35)
【0073】
出力電流Ioutが電圧勾配開始点Isより小さい範囲では、下記(7)式が成立する。ダイオード65はオフになるので、増幅器60は増幅器62から切り離される。基準電圧Vref4は抵抗36の出力電圧を基準とした電圧なので、増幅器62の出力電圧は抵抗36の出力電圧には依存しない。このため、出力電圧Voutは基準電圧Vref4で決まる一定値に維持される。
Vref4×G<(Vref3−R36×Iout)×G ・・・・・・ (7)
但し、G=(1+R34/R35)
【0074】
出力電流Ioutが電圧勾配開始点Isより大きくなると前記(7)式の大小関係は逆になり、ダイオード65がオンになる。増幅器62の非反転入力端子の電圧は増幅器60の出力電圧によって規制される。基準電圧Vref3は共通電位点を基準とした電圧なので、実施例1と同様に、出力電圧Voutは出力電流Ioutが増加すると減少する特性を有し、その勾配は、R36×(1+R34/R35)になる。
【0075】
図5(B)に出力電流Ioutと出力電圧Voutとの関係を示す。出力電流Ioutが電圧勾配開始点Isより小さいときは、出力電圧Voutは一定値になり、Isより大きくなると減少する。図3(B)で説明したように、2重化電源装置では2つの電源装置の出力電圧が一致するまでは、出力電圧が高い方の電源装置からのみ電力が供給される。本実施例では、出力電流が電圧勾配開始点Isより小さい範囲で出力電圧が一定値になるので、一方の電源装置からのみ電力が供給される出力電流の範囲を広げることができる。
【0076】
(実施例4)
図6に、本発明に係る電源装置の実施例4を示す。この実施例4は、実施例3において増幅器60、62と基準電源61、63をシャントレギュレータで置き換えたものである。なお、図5と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0077】
シャントレギュレータは基準電圧源、誤差増幅器、および出力トランジスタを内蔵し、外部から入力される信号と基準電圧を比較して出力トランジスタを駆動するICであり、簡単に定電圧電源を作ることができるという特徴がある。
【0078】
図6において、66、67はシャントレギュレータ、68、69は抵抗である。シャントレギュレータ66、67は、オープンコレクタ出力のものを用いる。抵抗R68、R69の抵抗値をそれぞれR68、R69とすると、これらの抵抗値は下記(8)式を満たすように選定する。
R68/R69>R34/R35 ・・・・・・・・ (8)
【0079】
抵抗68、69は直列接続され、この直列回路の一端はダイオード32のアノードに、他端は出力端子33bに接続される。すなわち、抵抗68と69の直列回路は、抵抗34と35の直列回路に並列に接続される。シャントレギュレータ66、67のカソードは制御部39の入力端子に接続される。シャントレギュレータ66のリファレンス入力端子は抵抗34と35の接続点に接続され、そのアノードは共通電位点に接続される。シャントレギュレータ67のリファレンス入力端子は抵抗68と69の接続点に接続され、そのアノードは出力端子33bに接続される。
【0080】
動作は実施例3とほぼ同じなので、説明を省略する。シャントレギュレータ66、67に内蔵されている基準電源の基準電圧をVref5とすると、電圧勾配開始点Isは下記(9)式で得られる。電圧勾配開始点Is以降の勾配は、実施例3と同じである。
VRef5×(1+R68/R69)=(Vref5−R36×Is)
×(1+R34/R35) ・・・・・・ (9)
【0081】
(実施例5)
図7に、本発明に係る電源装置の実施例5を示す。この実施例5は、出力電流が小さい範囲では出力電圧が一定になり、中間範囲では出力電流の増加に従って出力電圧が減少し、出力電流が更に大きくなると、出力電圧が一定になる特性を有する。なお、図5と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図7(A)は構成図、(B)は出力電流Ioutと出力電圧Voutとの関係を表す特性図である。
【0082】
図7(A)において、71は基準電源であり、基準電圧Vref6を出力する。基準電源71の負電源端子は出力端子33bに接続されている。このため、基準電源71は電流検出部である抵抗36の出力電圧を基準とした基準電圧Vref6を出力する。70は増幅器であり、その非反転入力端子には基準電圧Vref6が入力され、反転入力端子には出力端子33a、33b間の電圧を抵抗34と35で分圧した電圧が入力される。52はダイオードであり、そのアノードは増幅器70の出力端子に接続され、カソードは増幅器60の非反転入力端子に接続される。72は抵抗であり、増幅器60の非反転入力端子と基準電源61の間に挿入される。
【0083】
増幅器70、基準電源71、基準電圧Vref6、ダイオード52は、それぞれ第5の増幅器、第5の基準電源、第5の基準電圧、第4のダイオードに相当する。また、下記(10)式を満たすように、基準電源61、63、71を選定する。
Vref3>Vref4>Vref6 ・・・・・・ (10)
【0084】
図7(B)にこの実施例5の出力電流Ioutと出力電圧Voutとの関係を示す。実施例5は、電圧勾配開始点Isと電圧勾配完了点Idの2つの電流値を有する。出力電流Ioutが電圧勾配開始点Is以下では出力電圧Voutは出力電流Ioutに依存せず一定値を保ち、電圧勾配開始点Isと電圧勾配完了点Idの間の電流のときは、出力電流Ioutの増加に従って出力電圧Voutが低下する。また、出力電流Ioutが電圧勾配完了点Id以上になると、出力電圧は出力電流に依存せず、一定値になる。
【0085】
出力電流Ioutが電圧勾配開始点Isよりも小さい範囲ではダイオード65がオフになり、増幅器60の出力は増幅器62から切り離される。このため、出力電圧Voutは基準電圧Vref4で決まる一定値になる。基準電圧Vref4は電流検出部である抵抗36の出力電圧を基準とした電圧なので、出力電圧Voutは出力電流Ioutに依存せず、一定値になる。
【0086】
出力電流Ioutが電圧勾配開始点Isと電圧勾配完了点Idの間ではダイオード65がオンになり、増幅器62の非反転入力端子の電圧は増幅器60の出力で規制される。また、ダイオード52はオフになるので、増幅器70は増幅器60から切り離される。基準電圧Vref3は共通電位点を基準とした電圧なので、出力電圧Voutは出力電流Ioutが大きくなると小さくなる特性を有する。
【0087】
出力電流Ioutが電圧勾配完了点Idより大きくなるとダイオード52もオンになり、増幅器60の非反転入力端子の電圧は増幅器70の出力で規制される。基準電圧Vref6は電流検出部である抵抗36の出力電圧を基準とした電圧なので、出力電圧Voutは出力電流Ioutに依存せず、一定値になる。
【0088】
なお、電圧勾配開始点Is、電圧勾配完了点Idは、下記(11)、(12)式から計算することができる。
Vref4×G=(Vref3−R36×Is)×G ・・・・ (11)
Vref6×G=(Vref3−R36×Id)×G ・・・・ (12)
G=(1+R34/R35)
【0089】
(実施例6)
図8に、本願発明に係る電源装置の実施例6を示す。図8(A)は構成図、(B)は出力電流Ioutと出力電圧Voutの関係を示す特性図である。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。この実施例6は、電源装置に不可欠な過電流保護回路を、実施例1に付加したものである。
【0090】
図8(A)において、75は増幅器、76は基準電圧Vref7を出力する基準電源、77はダイオード、78抵抗である。基準電源76の負電源端子は共通電位点に接続されている。このため、基準電源76は共通電位点を基準とした基準電圧Vref7を出力する。増幅器75の非反転入力端子には基準電圧Vref7が入力され、反転入力端子には出力端子33a、33b間の電圧を抵抗34と35で分圧した電圧が入力される。77はダイオードであり、そのカソードは増幅器75の出力端子に接続され、アノードは増幅器37の非反転入力端子に接続される。抵抗78は増幅器37の非反転入力端子と基準電源38の間に挿入される。増幅器75は第6の増幅器に、基準電源76は第6の基準電源に、基準電圧Vref7は第6の基準電圧に、ダイオード77は第5のダイオードに相当する。
【0091】
このような構成において、抵抗36の降下電圧(=R36×Iout)が基準電圧Vref7より小さいときはダイオード77がオフになる。増幅器75はダイオード77によって切り離されるので、その動作は実施例1と同じになる。
【0092】
抵抗36の降下電圧が基準電圧Vref7より大きくなるとダイオード77がオンになり、増幅器37の非反転入力端子は増幅器75の出力電圧で規制される。このため、出力電圧はほぼ0になる。
【0093】
図8(B)に、出力電流Ioutと出力電圧Voutとの関係を示す。出力電流IoutがImより小さいときは、実施例1と同様に出力電流Ioutの増加に従って出力電圧Voutが減少する特性を有するが、Imになると出力電圧Voutがほぼ0になる垂下特性を示し、過電流が流れるのを阻止する。Imは下記(13)式で求めることができる。
Im=Vref7/R36 ・・・・・・ (13)
【0094】
(実施例7)
図9に、本発明に係る電源装置の実施例7を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。この実施例は、電流検出部としてカレントトランスを用いたものである。
【0095】
図9において、80はカレントトランスであり、その1次側はスイッチング素子Q1とインダクタL1を接続する経路の途中に配置されている。81はダイオードであり、そのアノードはカレントトランス80の2次側の一端に接続される。82は抵抗であり、その一端はダイオード81のカソードに接続される。83はコンデンサであり、その一端は抵抗82の他端に接続される。コンデンサ83の他端とカレントトランス80の2次側の他端は共通電位点に接続される。84は抵抗であり、その一端は抵抗35の一端に接続され、他端は共通電位点に接続される。なお、抵抗36は用いないので、出力端子33bは共通電位点に接続される。カレントトランス80、ダイオード81、抵抗82および84、コンデンサ83で電流検出部を構成している。
【0096】
カレントトランス80は1次側にM1、2次側にM2の巻数を有しており、1次側に電流が流れると、2次側にM1/M2倍した電流が流れる部品であり、電流検出に用いられる。
【0097】
このような構成において、スイッチング素子Q1で断続された電流はカレントトランス80の一次側に流れ、2次側には1次側に流れる電流のM1/M2倍の電流が流れる。この電流はダイオード81で整流され、抵抗82およびコンデンサ83で平滑されて抵抗84を流れ、その両端に電圧が発生する。カレントトランス80の1次側に流れる電流の平均値は出力端子33aから出力される電流Ioutに比例するので、抵抗84両端には出力電流に比例する電圧が発生する。
【0098】
この抵抗84の両端に発生する電圧をV84とすると、出力端子33aから出力される出力電圧Voutは、下記(14)式で表される。
Vout=(Vref1−V84)×(1+R34/R35)+V84
・・・・・・ (14)
【0099】
抵抗84に発生する電圧V84は出力電流Ioutに比例し、かつ共通電位点を基準とする電圧なので、出力電圧Voutは出力電流Ioutが増加すると減少する特性を有する。出力電流Ioutと出力電圧Voutとの関係は、図3(A)において直線44をV84と読み替えたものと同じである。
【0100】
前述したように、カレントトランス80は、その1次側の電圧降下を図1実施例よりも小さくすることができる。このため、電力損失を更に削減することができる。
【0101】
なお、カレントトランス80の配置位置は図9に限定されることはない。要は出力電流Ioutに関連する電流が流れる位置であればよい。但し、カレントトランスに流す電流は交流電流でなければならないので、交流電流が流れる位置に限定される。また、実施例2〜実施例6に適用することもできる。
【0102】
(実施例8)
図10に、本発明に係る電源装置の実施例8を示す。この実施例8は、実施例1を1次側電圧制御方式の絶縁型電源に適用した例である。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0103】
図10において、90はトランスであり、M3〜M5の3つの巻線を具備している。外部電源30の出力電圧Vinは巻線M3を経由してスイッチング素子Q1に印加される。スイッチング素子Q1のオン、オフは、制御部39の出力で制御される。なお、巻線M3〜M5の黒丸は、巻始めを表している。スイッチング素子Q1とトランス90で電圧変換部を構成している。
【0104】
スイッチング素子Q1に流れる電流は抵抗36で検出される。この抵抗36の電圧は電圧バッファ91を経由し、ダイオード92、コンデンサ93で整流、平滑される。94はバイアス用抵抗であり、その一端はダイオード92のカソードに接続される。
【0105】
巻線M5の出力はダイオード95、コンデンサ96で整流、平滑され、抵抗34、35で分圧される。抵抗94の他端、および抵抗34と35の接続点は、増幅器37の反転入力端子に接続される。巻線M4の出力はダイオード97、32で整流され、コンデンサC1で平滑されて、出力電圧Voutとして出力端子33a、33bから出力される。
【0106】
巻線M4、M5の巻数を同じ記号のM4、M5で表し、抵抗34、35の抵抗値をそれぞれR34、R35、基準電源38の出力電圧をVref1とすると、出力電圧Voutは下記(15)式で表される。
Vout=Vref1×(1+R34/R35)×M4/M5 ・・・・ (15)
【0107】
出力電流が増加すると、抵抗36の両端電圧は増加する。抵抗36の両端電圧を整流、平滑した電圧と抵抗34、35で分圧された電圧は加算されて増幅器37の反転入力端子に印加されるが、これらの電圧は極性が逆なので、図3(A)の44のように、出力電流Ioutが増加すると出力電圧Voutが減少する特性を有する。なお、実施例2〜実施例7に適用することもできる。
【0108】
なお、実施例1〜実施例7では、電圧変換部は降圧型のスイッチング電源として説明したが、昇圧型や昇降圧型、極性反転型、さらには等価的な可変抵抗を挿入して電圧を変換するシリーズ型電源を用いることもできる。
【0109】
また、図2の電源装置40、41として、実施例1〜8のいずれかの電源装置を用いる。これらの電源装置は同じものであってもよく、また異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0110】
30 外部電源
31 電圧変換部
32、52、65、77、81、92、95、97、D1 ダイオード
33a、33b 出力端子
34〜36、53、64、68、69、72、78、82、84、94 抵抗
37、50、60、62、70、75 増幅器
38、51、61、63、71、76 基準電源
39 制御部
40、41 電源装置
42 システム
66、67 シャントレギュレータ
80 カレントトランス
83、93、96、C1 コンデンサ
90 トランス
91 電圧バッファ
L1 インダクタ
Q1 スイッチング素子
Vref1〜Vref6 基準電圧
M1〜M5 巻線
Vref1〜Vref4、Vref5〜Vref7 基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された電圧を安定化して負荷に供給する電源装置において、
入力された電圧を変換し、出力端子に出力する電圧変換部と、
前記出力端子から出力された電流を検出し、共通電位点を基準とする信号を出力する電流検出部と、
前記共通電位点を基準とする第1の基準電圧を出力する第1の基準電源と、
一方の入力端子に前記第1の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力されて、これらの入力信号の差に関連する信号を出力する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力信号が入力され、この入力された信号に基づいて前記電圧変換部を制御する制御部と、
前記電圧変換部と前記出力端子との間に接続される第1のダイオードと、
を具備したことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電流検出部の出力電圧を基準とする第2の基準電圧を出力する第2の基準電源と、
一方の入力端子に前記第2の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力される第2の増幅器と、
前記第2の増幅器の出力端子と、前記第1の増幅器の一方の入力端子との間に接続される第2のダイオードと、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
入力された電圧を安定化して負荷に供給する電源装置において、
入力された電圧を変換し、出力端子に出力する電圧変換部と、
前記出力端子から出力された電流を検出し、共通電位点を基準とする信号を出力する電流検出部と、
前記共通電位点を基準とする第3の基準電圧を出力する第3の基準電源と、
一方の入力端子に前記第3の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力される第3の増幅器と、
前記電流検出部の出力電圧を基準とする第4の基準電圧を出力する第4の基準電源と、
一方の入力端子に前記第4の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力されて、これらの入力信号の差に関連する信号を出力する第4の増幅器と、
前記第3の増幅器の出力端子と、前記第4の増幅器の一方の入力端子との間に接続される第3のダイオードと、
前記第4の増幅器の出力信号が入力され、この入力された信号に基づいて前記電圧変換部を制御する制御部と、
前記電圧変換部と前記出力端子との間に接続される第1のダイオードと、
を具備したことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
前記電流検出部の出力電圧を基準とする第5の基準電圧を出力する第5の基準電源と、
一方の入力端子に前記第5の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力される第5の増幅器と、
前記第5の増幅器の出力端子と前記第3の増幅器の一方の入力端子との間に接続される第4のダイオードと、
を具備したことを特徴とする請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
前記共通電位点を基準とする第6の基準電圧を出力する第6の基準電源と、
一方の入力端子に前記第6の基準電圧が入力され、他方の入力端子に前記出力端子間の電圧を分圧した電圧が入力される第6の増幅器と、
前記第6の増幅器の出力端子と前記第1の増幅器の一方の入力端子との間に接続される第5のダイオードと、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5いずれかに記載の電源装置を並列接続したことを特徴とする2重化電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−27289(P2013−27289A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163331(P2011−163331)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】