電源装置および当該電源装置を備えた画像形成装置
【課題】出力制御へのリップルの影響を低減できる電源装置を提供すること。
【解決手段】電源装置は、所定の出力信号Itを生成し、出力信号Itを負荷に対して出力する出力手段と、出力手段によって出力された出力信号Itを検出する検出手段と、出力信号Itの検出値に基づいて、出力信号が目標信号範囲となるように出力手段を制御する制御信号を生成する制御手段と、出力信号Itが目標信号範囲ΔIt0に入った場合(時刻t1、t3、t5)、目標信号範囲ΔIt0を拡張するレンジ切替手段とを備える。レンジ切替手段は、出力信号Itが拡張された目標信号範囲ΔIt1から外れた場合(時刻t2、t4)、拡張された目標信号範囲ΔIt1を狭める。
【解決手段】電源装置は、所定の出力信号Itを生成し、出力信号Itを負荷に対して出力する出力手段と、出力手段によって出力された出力信号Itを検出する検出手段と、出力信号Itの検出値に基づいて、出力信号が目標信号範囲となるように出力手段を制御する制御信号を生成する制御手段と、出力信号Itが目標信号範囲ΔIt0に入った場合(時刻t1、t3、t5)、目標信号範囲ΔIt0を拡張するレンジ切替手段とを備える。レンジ切替手段は、出力信号Itが拡張された目標信号範囲ΔIt1から外れた場合(時刻t2、t4)、拡張された目標信号範囲ΔIt1を狭める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源装置に関し、詳しくは、電源装置の出力信号のリップル処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源装置の出力信号のリップル処理に関して、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1では、負荷に、リップル電流、過電流等の悪影響を与えない安定した定電圧制御を行うために、出力信号である出力電圧の検出値に電流変動検出値を適切な比率で加算した値が出力検出値とされる。そして、その出力検出値に基づいて、出力電圧を制御する技術が示されている。
【特許文献1】特開平08−251911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、通常、出力信号が大きくなるにしたがってリップルが大きくなる傾向がある。そのため、例えば、高電圧を出力する電源装置にあっては、制御する出力電圧が、目標電圧範囲(目標信号範囲)の設定の度合いによっては、大きいリップルによってその目標信号範囲から外れる可能性が増大する。出力電圧が目標信号範囲から外れた場合、従来の電源装置および特許文献1に記載された電源装置においては、出力電圧を目標信号範囲内に戻そうとする制御が行われるため、逆に出力電圧(出力信号)が変動しやすくなる虞があった。
【0004】
本発明は、所定の出力信号を出力する際に、出力制御へのリップルの影響を低減できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る電源装置は、所定の出力信号を生成し、前記出力信号を負荷に対して出力する出力手段と、前記出力手段によって出力された前記出力信号を検出する検出手段と、前記出力信号の検出値に基づいて、前記出力信号が目標信号範囲となるように前記出力手段を制御する制御信号を生成する制御手段と、前記出力信号が前記目標信号範囲に入った場合、前記目標信号範囲を拡張するレンジ切替手段とを備えた電源装置。
【0006】
本構成によれば、所定の出力信号、例えば、出力電圧信号あるいは出力電流信号の発生に起因する大きなリップルに応じて出力信号が目標信号範囲、例えば、目標電圧範囲あるいは目標電流範囲を外れる場合、制御手段がそのリップルに応答して、出力信号の制御が不安定となる場合がある。そのような場合であっても、目標信号範囲を広げることによって、リップルによって出力信号が目標信号範囲を外れることを低減して、出力信号制御へのリップルの影響を抑制することができる。すなわち、所定のを出力する際に、出力制御へのリップルの影響を低減することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の電源装置において、前記レンジ切替手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲から外れた場合、前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【0008】
本構成によれば、出力信号が拡張された目標信号範囲を外れた場合、その要因がリップルではなく実際の出力信号の変動にある可能性が高い。そのため、拡張された目標信号範囲を狭めることによって、出力信号を狭められた目標信号範囲内に戻すことができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明の電源装置において、前記制御手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲を外れてから所定時間の間、前記制御信号の制御変化量を小さくし、前記レンジ切替手段は、前記所定時間の経過後に前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【0010】
本構成によれば、例えば、出力信号が拡張された目標信号範囲の上限を外れ場合、その直後に拡張された目標信号範囲を狭め、出力信号を急に低減させようとすると、リップルの性状によっては、出力信号が拡張された目標信号範囲の下限を外れることが、有りえる。そのため、出力信号が拡張された目標信号範囲を外れてから所定時間の間、制御信号の制御変化量を小さし、その後に拡張された目標信号範囲を狭めることによって、そのような不都合を抑制することができる。
【0011】
第4の発明は、第2の発明の電源装置において、前記検出手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲を外れた場合、前記出力信号の検出間隔を短くし、前記レンジ切替手段は、短くされた検出間隔において検出された複数の検出値の平均値であって、前記複数の検出値のうち少なくとも一つの検出値を除いた平均値を求め、前記平均値が前記拡張された目標信号範囲を外れている場合、前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【0012】
本構成によれば、出力信号が拡張された目標信号範囲を外れた場合において、その直後において、少なくとも一つの検出値、例えば、最大値および最小値を除いた、複数の検出値の平均値を求め、その平均値が拡張された目標信号範囲内にあるかどうかが判断される。すなわち、出力信号が拡張された目標信号範囲を外れた原因がノイズ(検出値の最大値および最小値の要因と考えられる)であるかどうかが判断され、目標信号範囲を外れた要因がノイズである場合には、拡張された目標信号範囲を狭められない。そのため、出力信号制御におけるノイズの影響を低減できる。
【0013】
第5の発明は、第4の発明の電源装置において、前記少なくとも一つの検出値は、前記複数の検出値の最大値および最小値を含む。
本構成によれば、ノイズが存在する場合、その結果が検出値の最大値および最小値として検出される可能性が高い。そのため、好適にノイズの影響を低減できる。
【0014】
第6の発明は、第2〜5のいずれか一つの発明の電源装置において、前記レンジ切替手段は、前記拡張された目標信号範囲を広げる前の前記目標信号範囲まで狭める。
本構成によれば、目標信号範囲を元の目標信号範囲に戻すことができる。
【0015】
第7の発明は、第1〜6のいずれか一つの発明の電源装置において、前記レンジ切替手段は、前記目標信号範囲の上限を増加させ、かつ、前記目標信号範囲の下限を低下させることによって、前記目標信号範囲を拡張する。
本構成によれば、リップル波形の形状および大きさに応じて、リップルによる出力信号の変動を、拡張された目標信号範囲内に好適に収めることができる。
【0016】
第8の発明は、第1〜7のいずれか一つの発明の電源装置において、前記出力信号のリップルの大きさに応じて、前記レンジ切替手段による前記目標信号範囲の拡張量を設定する設定手段を、さらに備える。
本構成によれば、目標信号範囲を無用に拡張し過ぎたりすることなく、リップルの影響を低減できる。
【0017】
第9の発明は、第8の発明の電源装置において、前記設定手段は、前記出力信号の目標信号値、前記負荷、および前記制御信号うちの、少なくとも一つに基づき前記リップルの大きさを推定する。
【0018】
本構成によれば、例えば、出力信号の目標信号値とリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータ、あるいは負荷の大きさとリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータ、あるいは制御信号の大きさ(制御電圧値)とリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータを、記憶装置内に設ける。そして、設定手段がそのテーブルデータを参照することによって、リップルの大きさを簡易な構成によって推定できる。
【0019】
第10の発明は、第8の発明の電源装置において、前記リップルを測定する測定手段をさらに備える。
本構成によれば、リップルの大きさが実際に測定されるため、リップルが推定される場合と比べて、目標信号範囲の拡張量をより好適に設定できる。
【0020】
第11の発明に係る画像形成装置は、第1〜10のいずれか一つの発明の電源装置と、前記電源装置の前記出力手段から出力される前記出力信号を用いて、被記録媒体に画像を形成する画像形成部とを備える。
本構成によれば、画像を形成するために使用される出力信号にリップルが含まれる場合であっても、所定の画像品質が維持される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電源装置によれば、出力信号を出力する際に、出力制御へのリップルの影響を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施形態>
本発明による電源装置を画像形成装置としてのレーザプリンタに用いた一実施形態を、図1〜図10を参照しつつ説明する。なお、画像形成装置は、レーザプリンタに限られず、例えば、LEDプリンタ、ファクシミリ装置、あるいはコピー機能及びスキャナ機能等を備えた複合機であってもよい。さらに、本発明による電源装置の適用は画像形成装置に限られず、電源装置を利用するあらゆる装置に適用できる。
【0023】
1.レーザプリンタの全体構成
図1は、レーザプリンタの概略的な要部側断面図である。図1において、レーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」と記す)1は、本体フレーム2内に、用紙(「被記録媒体」の一例)3を給紙するためのフィーダ部4や、給紙された用紙3に画像を形成するための画像形成部5等を備えている。
【0024】
(1)フィーダ部
フィーダ部4は、本体フレーム2内の底部に設けられ、給紙トレイ6、給紙トレイ6の一端側(以下、一端側(図1で紙面右側)を前側、その反対側(図1で紙面左側)を後側とする)端部の上方に設けられる給紙ローラ8、給紙ローラ8に対し用紙3の搬送方向の下流側に設けられるレジストローラ12等を含む。
【0025】
給紙トレイ6の最上位にある用紙3は、給紙ローラ8の回転によって1枚毎に給紙される。給紙された用紙3は、レジストローラ12に送られる。レジストローラ12は、用紙3をレジスト後に、画像形成位置に送る。なお、画像形成位置は、感光体ドラム27と転写ローラ30との接触位置とされる。
【0026】
(2)画像形成部
画像形成部5は、スキャナ部16、プロセスカートリッジ17および定着部18を含む。
スキャナ部16は、本体フレーム2内の上部に設けられ、レーザ発光部(図示せず)、ポリゴンミラー、反射鏡等を含む。レーザ発光部から発光される、画像データに基づくレーザビームは、鎖線で示すように、ポリゴンミラー、反射鏡等を介して、感光体ドラム27の表面上に高速走査にて照射される。
【0027】
プロセスカートリッジ17は、スキャナ部16の下方に設けられ、ドラムユニット51と、ドラムユニット51に収容される現像カートリッジ28とを含む。現像カートリッジ28は、ドラムユニット51に対して着脱自在に収容されており、例えば、現像ローラ31、供給ローラ33、およびトナーホッパ34等を含む。
【0028】
トナーホッパ34内には、トナー(現像剤)が充填されている。トナーホッパ34の後方位置には、供給ローラ33が設けられており、また、この供給ローラ33に対向して、現像ローラ31が設けられている。現像時に、現像ローラ31には所定の現像バイアス電圧が印加される。トナーホッパ34から放出されるトナーは、供給ローラ33の回転により、現像ローラ31に供給される。
【0029】
ドラムユニット51は、感光体ドラム27、スコロトロン型帯電器29、および転写ローラ30等を備えている。感光体ドラム27は、現像ローラ31と対向配置され、筒状のドラム本体と、そのドラム本体の軸心に、接地された金属製のドラム軸27aとを含む。ドラム本体の表面には、正帯電性の感光層が形成されている。また、感光体ドラム27の上方には、レーザビームの通路として露光窓が設けられている。
【0030】
帯電器29は、感光体ドラム27の上方に、感光体ドラム27に接触しないように所定間隔を隔てて対向配置されている。帯電器29は、帯電ワイヤ29aとグリッド29bとを含み、帯電ワイヤ29aからの放電によって、グリッド29bを介して感光体ドラム27の表面を一様に例えば、正極性(例えば、約870V)に帯電させる。帯電ワイヤ29aには所定の帯電電圧(例えば、5kV〜8kV)が印加される。
【0031】
感光体ドラム27の表面は、感光体ドラム27の回転に伴って、まず、帯電器29により一様に正帯電される。その後、帯電表面は、スキャナ部16からのレーザビームの高速走査により露光され、画像データに基づく静電潜像が形成される。次いで、現像ローラ31の回転により、現像ローラ31の表面上に担持されかつ正極性に帯電されているトナーが、感光体ドラム27の表面上の静電潜像に供給され、静電潜像が現像される。
【0032】
転写ローラ30は、金属製のローラ軸30aを有し、感光体ドラム27の下方において、感光体ドラム27に対向配置される。ローラ軸30aには、例えば導電性のゴム材料からなるローラが被覆されている。
【0033】
転写ローラ30のローラ軸30aには、図2に示されるように、バイアス印加回路(本発明による「電源装置」の一例)60が接続されている。そして、転写位置において現像ローラ31に担持されたトナー像を用紙3に転写するための転写動作時には、転写ローラ30のローラ軸30aに、バイアス印加回路60から、例えば−6kVの転写バイアス電圧(高電圧)Vtが印加される。
【0034】
定着部18は、図1に示すように、プロセスカートリッジ17の後方下流側に設けられる。定着部18では、用紙3上に転写されたトナーが熱定着され、その後、用紙3は、排紙トレイ46上に排紙される。
【0035】
2.バイアス印加回路(電源装置)
次に、図2を参照して、バイアス印加回路60について説明する。図2は、転写ローラ30に対して転写バイアス電圧Vtを印加するバイアス印加回路60の要部構成のブロック図である。
【0036】
バイアス印加回路60は、CPU(「制御手段」、「レンジ切替手段」および「設定手段」の一例)61と、転写バイアス電圧Vtを生成し出力する転写バイアス印加回路(「出力手段」の一例)62とを備えている。転写バイアス印加回路62は、転写ローラ30のローラ軸30aに接続される接続ライン90に接続されている。なお、CPU61は、バイアス印加回路60の制御の他に、画像形成に係るプリンタ1の各部の制御も行う。
【0037】
また、バイアス印加回路60は、接続ライン90に流れる転写電流(「出力信号」の一例)Itの値に応じた検出信号S3を出力する出力検出回路84を含む。ここで、出力検出回路84は、例えば検出抵抗89によって構成される。検出信号S3に基づいて、転写バイアス印加回路62を制御する制御信号Vcnが生成される。検出信号S3は、また、バイアス印加回路60の負荷(負荷抵抗)を算出するために用いられる。算出された負荷は、例えば、後述するように、転写電流Itのリップルを推定するために利用される。なお、バイアス印加回路60は、その他の高電圧、例えば帯電電圧等を生成するための回路を含むが、その図示は省略されている。
【0038】
転写バイアス印加回路62は、CPU61のPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によって定電流制御される。また、CPU61にはメモリ100が接続されている。このメモリ100には、バイアス印加回路60を制御するプログラム、カウンタの所定カウント値、および各種テーブルデータ等が格納されている。
【0039】
転写バイアス印加回路62は、高電圧(負電圧)発生回路であり、PWM信号平滑回路70、トランスドライブ回路71、昇圧・平滑整流回路72、および出力電圧検出回路(「検出手段」の一例)73を含む。
【0040】
PWM信号平滑回路70は、CPU61のPWMポート61aからのPWM信号S1を平滑し、平滑されたPWM信号S1をトランスドライブ回路71に提供する。トランスドライブ回路71は、平滑されたPWM信号S1に基づき、昇圧・平滑整流回路72の1次側巻線75bに発振電流を流す。なお、CPU61は、PWM信号S1のデューティ比(パルス幅)を、転写バイアス電圧Vtおよび転写電流Itを制御する制御信号Vcnの電圧値に基づいて制御する。
【0041】
昇圧・平滑整流回路72は、トランス75、ダイオード76、平滑コンデンサ77等を備えている。トランス75は、2次側巻線75a,1次側巻線75b及び補助巻線75cを備えている。2次側巻線75aの一端は、ダイオード76を介して接続ライン90に接続されている。一方、2次側巻線75aの他端は、出力検出回路84に接続されている。また、平滑コンデンサ77及び抵抗78がそれぞれ2次側巻線75aに並列に接続されている。
【0042】
このような構成により、1次側巻線75bの電圧は、昇圧・平滑整流回路72において昇圧及び整流され、バイアス印加回路60の出力端Aに接続された転写ローラ30のローラ軸30aに転写バイアス電圧Vtとして印加される。
【0043】
出力電圧検出回路73は、昇圧・平滑整流回路72のトランス75の補助巻線75cと、CPU61とに接続されている。出力電圧検出回路73は、転写バイアス印加回路62による転写動作時において、補助巻線75cの間で発生する出力電圧Vdを検出して、その検出信号S2をCPU61のA/Dポート61bに供給する。CPU61は、検出信号S2に基づいて転写出力電圧Vtを検出する。
【0044】
その際、さらに、CPU61は、接続ライン90に流れる転写電流値Itに応じた検出信号S3に基づき制御信号Vcnを生成し、制御信号Vcnに基づいて、転写電流値Itが目標電流範囲(「目標信号範囲」の一例)内となるようにPWM信号S1のデューティ比を適宜変更する。すなわち、CPU61は、転写電流値Itを定電流制御する。
【0045】
3.目標電流範囲(目標信号範囲)のレンジ切替制御
次に、図3〜図10を参照して、本発明に係る、転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替制御について説明する。まず図3を参照して、以下の実施例に共通する基本的な概念について説明する。図3は、本発明を概略的に示すタイムチャートである。転写バイアス電圧Vtの印加に伴う転写電流Itの上昇時において、図3の時刻t1において転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入った場合、CPU61は、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1にレンジ切替を行う。すなわち、CPU61は、転写電流Itの目標上限電流Itu0を拡張量「A」だけ増加させて拡張目標上限電流Itu1とし、転写電流Itの目標下限電流Itd0を拡張量「B」だけ減少させて拡張目標下限電流Itd1とする。
【0046】
このように、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入った場合に目標電流範囲ΔIt0を拡張するのは以下の理由による。高電圧である転写バイアス電圧Vtの発生に起因する大きなリップルに応じて転写電流Itにもリップルが生じる。そのリップルに応じて転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0を外れる場合(図3のP1〜P5参照)、CPU61がそのリップルに応答してしまい、転写電流Itの制御が不安定となる場合がある。そのような場合であっても、目標電流範囲ΔIt0を広げることによって、リップルによって転写電流Itが目標電流範囲を外れることを低減して、出力制御へのリップルの影響を抑制するためである。すなわち、出力電流制御へのリップルの影響を低減するためである。次に、図3に示された基本概念を基づいた実施例を説明する。
【0047】
(実施例1)
まず実施例1を、図4および図5を参照して説明する。実施例1において、CPU61は、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1から外れた場合、拡張目標電流範囲ΔIt1を元の目標電流範囲ΔIt0に狭める。図4は、実施例1における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替に係る各処理を示すフローチャートである。各処理は、所定のプログラムにしたがって、CPU61によって実行される。図5は実施例1における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替態様を概略的に示すタイムチャートである。
【0048】
プリンタ1に対するユーザの印字指示によって印字処理が開始されると、図4のステップS110において、CPU61は、まず、初期設定処理を行う。CPU61は、転写電流Itの目標上限電流Itu0および目標下限電流Itd0、すなわち、目標電流範囲ΔIt0を設定する。また、CPU61は、制御モードMODEをアップモードUPに設定し、制御電圧Vcnに「ゼロ」Vを設定する。ここで、制御電圧Vcnは、上記したように、転写バイアス印加回路62を制御する電圧であって、制御電圧Vcnに基づいてPWM信号S1のデューティ比が設定される。
【0049】
次いで、ステップS115において、CPU61は、転写電流Itのリップルの大きさに応じて、目標電流範囲ΔIt0の拡張量(「A」および「B」)を設定する。その際、転写電流Itの目標電流値(あるいは、目標電流範囲)、バイアス印加回路60の負荷、および制御信号Vcnの電圧値のうちの、少なくとも一つに基づきリップルの大きさを推定する。その際、例えば、転写電流Itの目標電流値(あるいは、目標電流範囲)とリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータ、あるいは負荷の大きさとリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータ、あるいは制御信号Vcnの大きさ(制御電圧値)とリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータを、メモリ100内に設ける。そして、CPU61がそのテーブルデータを参照することによって、リップルの大きさを推定する。そして、推定されたリップルの大きさに応じて、拡張量(「A」および「B」)を設定する。
【0050】
次いで、ステップS120において、CPU61は、出力検出回路84を介して転写電流Itを読み込み、ステップS125において、転写電流Itが目標上限電流(上限値)Itu0より大きいかどうかを判定する。ステップS125において、転写電流Itが目標上限電流Utu0より大きくないと判定された場合、ステップS130において、CPU61は、転写電流Itが目標下限電流(下限値)Itd0より小さいかどうかを判定する。
【0051】
ステップS130において、転写電流Itが目標下限電流Itd0より小さいと判定された場合は、すなわち、例えば、図5の時刻t1よりも以前においては、ステップS135において、現在、制御モードMODEが駆動モードDRVであるかどうかを判定する。ここで、駆動モードDRVは、転写電流Itが目標電流範囲にある場合において、一定の制御電圧Vcnによって転写バイアス印加回路62が制御されているモードである。
【0052】
ステップS135において、現在、制御モードMODEが駆動モードDRVでないと判定された場合は、ステップS140において、CPU61は、制御電圧Vcnを所定増加量UD1だけ増加させ、制御モードMODEをアップモードUPに設定する。そして、ステップS175に移行して、転写電流Itが安定する所定時間、例えば、1msの間、待機する。ここで、ステップS130、ステップS135、ステップS140およびステップS175に至る処理は、図5において時刻t1に至るまでに相当する。すなわち、転写電流Itを目標下限電流Itd0まで初期増加させる期間に相当する。
【0053】
一方、図5の時刻t1において、転写電流Itが目標下限電流Itd0に到達すると、すなわち、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入ると、ステップS130において、「NO」判定がなされ、処理はステップS145に移行する。ステップS145において、現在、制御モードMODEがアップモードUPであるため、「NO」判定がなされ、処理はステップS150に移行する。
【0054】
ステップS150において、CPU61は、転写電流Itが目標下限電流Itd0に到達したため、上記したように、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に切替える。すなわち、CPU61は、転写電流Itの目標上限電流Itu0を拡張量「A」だけ増加させて拡張目標上限電流Itu1とし、転写電流Itの目標下限電流Itd0を拡張量「B」だけ減少させて拡張目標下限電流Itd1とする。また、制御モードMODEをアップモードUPから駆動モードDRVに変更する。
【0055】
次いで、ステップS175において1ms待機し、ステップS180において、印字処理が終了して転写バイアス電圧Vtの印加が終了したかどうかを判定する。印字処理が終了していない場合は、ステップS120に戻って印字処理が終了するまで処理を繰返す。
【0056】
その際、例えば、図5の時刻t2に示されるように、転写電流Itが目標下限電流、この場合、拡張目標下限電流Itd1を下回ると、ステップS130およびステップS135において「YES」判定される。そして、処理がステップS170に移行する。
【0057】
ステップS170において、CPU61は、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める。すなわち、CPU61は、転写電流Itの目標上限電流Itu0を拡張量「A」だけ減少させて目標上限電流Itu0とし、転写電流Itの目標下限電流Itd0を拡張量「B」だけ増加させて目標下限電流Itd0とする。また、転写電流Itを上昇させるために、ステップS140において、制御モードMODEを駆動モードDRVからアップモードUPに変更する。
【0058】
それによって、図5の時刻t3において、転写電流Itが目標下限電流Itd0に到達するため、再度、目標電流範囲ΔIt0が拡張目標電流範囲ΔIt1に切替えられる(ステップS150)。そして、図5の時刻t4に示されるように、転写電流Itが目標上限電流、この場合、拡張目標上限電流Itu1を上回ると、ステップS125およびステップS155において「YES」判定されるため、処理がステップS160に移行する。
【0059】
ステップS160においては、ステップS170と同様に、CPU61は、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める。そして、転写電流Itを下降させるために、ステップS165において、CPU61は、制御電圧Vcnを所定減少量DD1だけ減少させ、制御モードMODEをダウンモードDOWNに設定する。次いで、ステップS175に移行して、1msの間、待機する。
【0060】
(実施例1の効果)
上記したように、実施例1においては、CPU61は、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入った場合、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張するとともに、その後、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1から外れた場合、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める。通常、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、その要因がリップルではなく転写電流Itの変動にある可能性が高い。そのため、転写電流Itが変動した場合においても、拡張目標電流範囲ΔIt1を狭めることによって、転写電流Itを狭められた元の目標電流範囲ΔIt0内に戻すことができる。
【0061】
(実施例2)
次に、実施例2を、図6および図7を参照して説明する。図6は、実施例2における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替に係る各処理を示すフローチャートである。各処理は、実施例1と同様に、CPU61によって実行される。図7は実施例2における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替態様を概略的に示すタイムチャートである。なお、図6において実施例1の図4のフローチャートと同一の処理は同一のステップ番号を付し、その説明を省略し、実施例1との相違点のみを説明する。
【0062】
実施例2の実施例1との相違点は、以下にある。すなわち、実施例2においては、CPU61は、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、所定時間の間、制御電圧Vcnの制御変化量を小さくし、所定時間の経過後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭める。
【0063】
すなわち、実施例2においては、実施例1と異なり、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、その直後に拡張目標電流範囲ΔIt1は狭められない。それは、以下の理由による。
【0064】
例えば、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1の上限Itu1を外れ場合、その直後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭め、転写電流Itを急に低減させようとすると、リップルの性状によっては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1の下限Itd1を続いて外れることが考えられる。そのような転写電流Itの急変動は、出力制御の安定性に影響する。そのため、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れてから所定時間の間、制御電圧Vcnの制御変化量を小さし、その後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭めることによって、そのような急変動を抑制するためである。
【0065】
図6のステップS110Aの初期設定処理において、CPU61は、さらに、カウント値CNT1およびCNT2を「ゼロ」に設定する。カウント値CNT1は、図7に示す所定時間K1を計測するためのカウント値であり、カウント値CNT2は、図7に示す所定時間K2を計測するためのカウント値である。
【0066】
今、図7の時刻t2において、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を上方に外れるとすると、図6のステップS125およびステップS155において「YES」判定され、ステップS220に移行する。ステップS220において、CPU61は、カウント値CNT1が、例えば、「2」を超えるかどうかを判定する。
【0067】
カウント値CNT1が「2」を超える場合は、所定期間K1(図7参照)が経過したとして、ステップS160において、CPU61は、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める(図7の時刻t3に相当)。一方、カウント値CNT1が「2」を超えない場合は、ステップS230において、CPU61は、制御電圧Vcnを所定減少量(制御変化量)DD2だけ減少させる。なお、ここで、所定減少量DD2は、ステップS165における所定減少量DD1より小さい値である。すなわち、図7に示される所定期間K1においては、制御電圧Vcnの制御変化量を小さくして、転写電流Itの減少量が抑えられる。そして、カウント値CNT1をインクリメントする。
【0068】
次いで、図7の時刻t4において、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入ると、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張する。すなわち、図6のステップS125、ステップS130、およびステップS145において「NO」判定され、ステップS150に移行する。そして、ステップS210において、カウント値CNT1およびCNT2が「ゼロ」にクリアされる。
【0069】
次いで、図7の時刻t5において、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を下方に外れるとすると、図6のステップS125において「NO」判定され、ステップS130およびステップS135において「YES」判定され、ステップS240に移行する。
【0070】
ステップS240において、CPU61は、カウント値CNT2が、例えば、「2」を超えるかどうかを判定する。カウント値CNT2が「2」を超える場合は、所定期間K2(図7参照)が経過したとして、ステップS170において、CPU61は、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める(図7の時刻t6に相当)。一方、カウント値CNT2が「2」を超えない場合は、ステップS250において、CPU61は、制御電圧Vcnを所定増加量(制御変化量)UD2だけ増加させる。なお、ここで、所定増加量UD2は、ステップS140における所定増加量UD1より小さい値である。すなわち、図7に示される所定期間K2においては、制御電圧Vcnの制御変化量を小さくして、転写電流Itの増加量が抑えられる。そして、カウント値CNT2がインクリメントされる。
【0071】
次いで、図7の時刻t7において、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入ると、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張する。すなわち、図6のステップS125、ステップS130、およびステップS145において「NO」判定され、ステップS150に移行する。そして、ステップS210において、カウント値CNT1およびCNT2が「ゼロ」にクリアされる。なお、ステップS220およびステップS240における、判定カウント値「2」は、任意である。すなわち、所定期間K1およびK2は、適宜設定される期間であり、所定期間K1と所定期間K2とは異なる時間長であってもよい。
【0072】
(実施例2の効果)
上記したように、実施例2において、CPU61は、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、所定時間(K1、K2)の間、制御電圧Vcnの制御変化量を小さくし、所定時間(K1、K2)の経過後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭める。そのため、例えば、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1の上限Itu1を外れ場合、その直後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭め、転写電流Itを急に低減させようとすると、リップルの性状によっては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1の下限Itd1を続いて外れることが、有りえる。それは、出力制御に影響する。そのため、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れてから所定時間(K1、K2)の間、制御電圧Vcnの制御変化量を小さし、その後において拡張目標電流範囲ΔIt1を狭めることによって、そのような不都合が抑制される。
【0073】
(実施例3)
次に、実施例3を、図8〜図10を参照して説明する。図8は、実施例3における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替に係る各処理を示すフローチャートである。図9は、図8のフローチャートにおける「It複数読み込み」ルーチンを示すフローチャートである。各処理は、実施例1と同様に、CPU61によって実行される。図10は実施例3における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替態様を概略的に示すタイムチャートである。なお、図8において実施例1の図4のフローチャートと同一の処理は同一のステップ番号を付し、その説明を省略し、実施例1との相違点のみを説明する。
【0074】
実施例3の実施例1との相違点は、以下にある。すなわち、実施例3においては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、転写電流Itの検出間隔が短くされる。また、CPU61は、短くされた検出間隔において検出された複数の検出値の平均値であって、複数の検出値の最大値および最小値を除いた平均値を求める。そして、平均値が拡張目標電流範囲ΔIt1を外れている場合にのみ、拡張目標電流範囲ΔIt1が狭められる。それは、以下の理由による。
【0075】
転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合において、その要因がノイズである場合がある。そのため、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、その直後において、転写電流Itの検出値の最大値および最小値を除いた、複数の検出値の平均値を求め、その平均値が拡張目標電流範囲ΔIt1内にあるかどうかが判断される。それによって、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた要因がノイズであるかどうかが判断される。そして、拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた要因がノイズである場合には、拡張目標電流範囲ΔIt1を狭めないようにして、出力電圧制御におけるノイズの影響を低減するためである。
【0076】
今、図10の時刻t2において、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を下方に外れるとすると、図8のステップS125において「NO」判定され、ステップS130およびステップS135において「YES」判定され、ステップS300の「It複数読み込み」ルーチンに移行する。
【0077】
図9に示される「It複数読み込み」ルーチンのステップS301において、転写電流Itが読み込まれ、ステップS302において、所定時間、例えば、0.1msの間、待機する。この待機時間は、図4のステップS175における待機時間1msより短い。これは、転写電流Itの検出間隔を短くするためである。
【0078】
次いで、ステップS302において、図10の時刻t2からの転写電流Itの読み込み回数が所定回数、例えば、10回に達したかどうか判定される。読み込み回数が所定回数に達していない場合は、ステップS301に戻って転写電流Itが読み込まれる。一方、読み込み回数が所定回数に達した場合、ステップS304において、CPU61は、所定回数読み込まれた検出データから、転写電流Itの平均値を求める。ここで、平均値を求める際に、CPU61は、複数の検出値のうち、最大値および最小値(「少なくとも一つの検出値」の一例)を除いた平均値を求める。これは、ノイズと関連すると考えられる検出値を排除するためである。そして、図8のステップS310の処理に戻る。
【0079】
ステップS310において、CPU61は、転写電流Itの平均値が下限値Itd1より小さいかどうか判定する。平均値が下限値Itd1より小さいと判定された場合は、ステップS170に移行して、拡張目標電流範囲ΔIt1が目標電流範囲ΔIt0に狭められる(図10の時刻t3)。一方、平均値が下限値Itd1より小さくないと判定された場合は、ステップS175に移行する。すなわち、この場合、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を下方に外れたのはノイズに起因すると判断され、拡張目標電流範囲ΔIt1は狭められない(図10の時刻t6に相当)。
【0080】
次いで、図10の時刻t4において転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入ると、目標電流範囲ΔIt0が拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張される。すなわち、図8のステップS125、ステップS130、およびステップS145において「NO」判定され、ステップS150に移行する。
【0081】
次いで、図10の時刻t5において、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を上方に外れると、図8のステップS125およびステップS155において「YES」判定され、ステップS320に移行する。ステップS320においては、ステップS300と同様に、「It複数読み込み」ルーチンが実行され、転写電流Itの平均値が求められる。
【0082】
そして、ステップS330において、CPU61は、転写電流Itの平均値が上限値Itu1より大きいかどうかを判定する。平均値が上限値Itu1より大きいと判定された場合は、ステップS160に移行して、拡張目標電流範囲ΔIt1が目標電流範囲ΔIt0に狭められる。一方、平均値が上限値Itu1より大きくないと判定された場合は、ステップS175に移行する。すなわち、この場合、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を上方に外れたのはノイズに起因すると判断され、拡張目標電流範囲ΔIt1は狭められない(図10の時刻t5に相当)。
【0083】
(実施例3の効果)
上記したように、実施例3において、CPU61は、転写電流Itが拡張された拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合において、その直後において、最大値および最小値を除いた、複数の転写電流Itの検出値の平均値を求める。そして、その平均値が拡張目標電流範囲ΔIt1内にあるかどうか判断される。すなわち、実施例3においては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた要因がノイズ(検出値の最大値および最小値の要因と考えられる)であるかどうかが判断される。そして、拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた要因が、出力制御以外のノイズであると考えられる場合には、拡張目標電流範囲ΔIt1は狭められない。そのため、出力制御におけるノイズの影響が低減される。
【0084】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0085】
(1)上記実施形態においては、転写電流Itの目標電流値等に基づきリップルの大きさを推定し、推定されたリップルの大きさ(以下、「リップル量」と記す)に応じて、拡張量(「A」および「B」)を設定する例を示したが、これに限定されない。リップルの大きさは、図11および図12に示すように、リップル量を測定する測定手段によって測定されるようにしてもよい。
【0086】
図11は、図4において、ステップS115の処理に代えて、ステップS400の「リップル測定」ルーチン処理が設けられた場合を示す。「リップル測定」ルーチンは、例えば、図11のステップS125、ステップS130、およびステップS145において「NO」判定された場合に、CPU(「測定手段」の一例)61によって実行される。すなわち、「リップル測定」ルーチンは、転写電流Itが上昇し、下限値Itd0に達した場合、例えば、図3における時刻t1に実行される。
【0087】
図12に示される「リップル測定」ルーチンのステップS410において、転写電流Itが読み込まれ、ステップS420において、所定時間、例えば、0.1msの間、待機する。この待機時間は、図4のステップS175における待機時間1msより短い。これは、リップル量の検出時間を短時間で行うためである。
【0088】
次いで、ステップS430において、転写電流Itの読み込み回数が所定回数、例えば、10回に達したかどうか判定される。読み込み回数が所定回数に達していない場合は、ステップS410に戻って転写電流Itが読み込まれる。一方、読み込み回数が所定回数に達した場合、ステップS440において、CPU61は、所定回数読み込まれた検出データから、転写電流Itの最大値It(MAX)および最小値It(MIN)を求める。
【0089】
次いで、ステップS450において、最大値It(MAX)と最小値It(MIN)との差を、拡張量(「A」および「B」)として設定し、図11のステップS150の処理に戻る。すなわち、ここでは、最大値It(MAX)と最小値It(MIN)との差(MAX−MIN)がリップル量として測定され、そのリップル量が拡張量(「A」および「B」)として設定される。
【0090】
この場合、拡張量(「A」および「B」)は、実際に測定されたリップル量によって設定されるため、リップル量が推定される場合と比べて、拡張量(「A」および「B」)をより好適に設定できる。なお、リップル量による拡張量(「A」および「B」)の設定態様はこれに限られない。例えば、差(MAX−MIN)の70%が拡張量(「A」および「B」)として設定されてもよい。あるいは、差(MAX−MIN)の80%が拡張量「A」として設定され、差(MAX−MIN)の50%が拡張量「B」として設定されるようにしてもよい。
【0091】
(2)上記実施形態においては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1から外れた場合、拡張目標電流範囲ΔIt1を元の目標電流範囲ΔIt0に狭める例を示したが、拡張目標電流範囲ΔIt1を狭める態様はこれに限られない。例えば、拡張目標電流範囲ΔIt1が、元の目標電流範囲ΔIt0よりも広くなるように狭められてもよいし、あるいは元の目標電流範囲ΔIt0よりも狭くなるように狭められてもよい。
【0092】
(3)上記実施形態においては、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張させる場合、目標上限電流(目標電流範囲の上限)Itu0を増加させ、かつ、目標下限電流(目標電流範囲の下限)Itd0を低下させる例を示したが、これに限られない。例えば、目標上限電流Itu0のみを増加させるようにしてもよいし、目標下限電流Itd0のみを低下させるようにしてもよい。
【0093】
また、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める場合においても、拡張目標上限電流Itu1を低下させ、かつ、拡張目標下限電流Itd1を増加させる例を示したが、これに限られない。例えば、拡張目標上限電流Itu1のみを低下させるようにしてもよいし、拡張目標下限電流Itd1のみを増加させるようにしてもよい。
【0094】
(4)上記実施形態においては、目標電流範囲ΔIt0の拡張量である拡張量「A」と拡張量「B」とが等しい量である例を示したが、これに限られない。すなわち、拡張量「A」と拡張量「B」とは、異なる量であってもよい。
【0095】
また、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張させる場合、および拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める場合において、それぞれ、等しい量である拡張量「A」および拡張量「B」を用いる例を示したがこれに限られない。例えば、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める場合において、拡張量「A」および拡張量「B」とは異なる量の拡張量「C」および、拡張量「C」とは異なる拡張量「D」を用いるようにしてもよい。
【0096】
(5)上記実施形態においては、図9のステップS304において、転写電流Itの平均値を求める際に、複数の検出値のうち、最大値および最小値を除く例を示したが、これに限られない。例えば、最大値のみを除くようにしてもよいし、あるいは最大値から三番目までの大きさの検出値を除くようにしてもよい。要は、ノイズに関連すると考えられる、少なくとも一つの検出値が除かれればよい。
【0097】
(6)上記実施形態の各実施例において、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に最初に達したとき(時刻t1)、リップル量を検出するようにしてもよい。そして、検出されたリップル量が所定値を超える場合に、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張するようにしてもよい。その際、例えば、図11のステップS400に示した「リップル測定」ルーチンを実行して、リップル量を検出するようにしてもよい。転写電流Itのリップル量が所定量より小さく、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0を外れないと想定される場合には、目標電流範囲ΔIt0を拡張する必要がない。そのため、この構成によれば、不必要な目標電流範囲ΔIt0の拡張処理を省略することができる。
【0098】
(7)上記実施形態および他の実施形態において、本発明における「出力信号」が、電流信号である転写電流Itである例を示したが、これに限定されない。本発明は、「出力信号」が、例えば電圧信号である場合にも適用できる。その場合、目標電圧範囲が、本発明における「目標信号範囲」に相当し、拡張された目標電圧範囲が、本発明における「拡張された目標信号範囲」に相当することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に係るレーザプリンタの内部構成を示す側断面図
【図2】本発明の一実施形態に係るバイアス印加回路の要部構成のブロック図
【図3】本発明の基本概念を示すタイムチャート
【図4】実施例1に係るレンジ切替の処理を示すフローチャート
【図5】図4の処理に関連するタイムチャート
【図6】実施例2に係るレンジ切替の処理を示すフローチャート
【図7】図6の処理に関連するタイムチャート
【図8】実施例3に係るレンジ切替の処理を示すフローチャート
【図9】実施例3における「It複数読み込み」ルーチンを示すフローチャート
【図10】図8の処理に関連するタイムチャート
【図11】別の実施例に係る処理内容を示すフローチャート
【図12】別の実施例おける「リップル測定」ルーチンを示すフローチャート
【符号の説明】
【0100】
1…レーザプリンタ(画像形成装置)
60…バイアス印加回路(電源装置)
61…CPU(制御手段、レンジ切替手段、設定手段、測定手段)
62…転写バイアス印加回路(出力手段)
84…出力検出回路(検出手段)
It…転写電流(出力信号)
【技術分野】
【0001】
本発明は電源装置に関し、詳しくは、電源装置の出力信号のリップル処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源装置の出力信号のリップル処理に関して、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1では、負荷に、リップル電流、過電流等の悪影響を与えない安定した定電圧制御を行うために、出力信号である出力電圧の検出値に電流変動検出値を適切な比率で加算した値が出力検出値とされる。そして、その出力検出値に基づいて、出力電圧を制御する技術が示されている。
【特許文献1】特開平08−251911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、通常、出力信号が大きくなるにしたがってリップルが大きくなる傾向がある。そのため、例えば、高電圧を出力する電源装置にあっては、制御する出力電圧が、目標電圧範囲(目標信号範囲)の設定の度合いによっては、大きいリップルによってその目標信号範囲から外れる可能性が増大する。出力電圧が目標信号範囲から外れた場合、従来の電源装置および特許文献1に記載された電源装置においては、出力電圧を目標信号範囲内に戻そうとする制御が行われるため、逆に出力電圧(出力信号)が変動しやすくなる虞があった。
【0004】
本発明は、所定の出力信号を出力する際に、出力制御へのリップルの影響を低減できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る電源装置は、所定の出力信号を生成し、前記出力信号を負荷に対して出力する出力手段と、前記出力手段によって出力された前記出力信号を検出する検出手段と、前記出力信号の検出値に基づいて、前記出力信号が目標信号範囲となるように前記出力手段を制御する制御信号を生成する制御手段と、前記出力信号が前記目標信号範囲に入った場合、前記目標信号範囲を拡張するレンジ切替手段とを備えた電源装置。
【0006】
本構成によれば、所定の出力信号、例えば、出力電圧信号あるいは出力電流信号の発生に起因する大きなリップルに応じて出力信号が目標信号範囲、例えば、目標電圧範囲あるいは目標電流範囲を外れる場合、制御手段がそのリップルに応答して、出力信号の制御が不安定となる場合がある。そのような場合であっても、目標信号範囲を広げることによって、リップルによって出力信号が目標信号範囲を外れることを低減して、出力信号制御へのリップルの影響を抑制することができる。すなわち、所定のを出力する際に、出力制御へのリップルの影響を低減することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の電源装置において、前記レンジ切替手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲から外れた場合、前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【0008】
本構成によれば、出力信号が拡張された目標信号範囲を外れた場合、その要因がリップルではなく実際の出力信号の変動にある可能性が高い。そのため、拡張された目標信号範囲を狭めることによって、出力信号を狭められた目標信号範囲内に戻すことができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明の電源装置において、前記制御手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲を外れてから所定時間の間、前記制御信号の制御変化量を小さくし、前記レンジ切替手段は、前記所定時間の経過後に前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【0010】
本構成によれば、例えば、出力信号が拡張された目標信号範囲の上限を外れ場合、その直後に拡張された目標信号範囲を狭め、出力信号を急に低減させようとすると、リップルの性状によっては、出力信号が拡張された目標信号範囲の下限を外れることが、有りえる。そのため、出力信号が拡張された目標信号範囲を外れてから所定時間の間、制御信号の制御変化量を小さし、その後に拡張された目標信号範囲を狭めることによって、そのような不都合を抑制することができる。
【0011】
第4の発明は、第2の発明の電源装置において、前記検出手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲を外れた場合、前記出力信号の検出間隔を短くし、前記レンジ切替手段は、短くされた検出間隔において検出された複数の検出値の平均値であって、前記複数の検出値のうち少なくとも一つの検出値を除いた平均値を求め、前記平均値が前記拡張された目標信号範囲を外れている場合、前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【0012】
本構成によれば、出力信号が拡張された目標信号範囲を外れた場合において、その直後において、少なくとも一つの検出値、例えば、最大値および最小値を除いた、複数の検出値の平均値を求め、その平均値が拡張された目標信号範囲内にあるかどうかが判断される。すなわち、出力信号が拡張された目標信号範囲を外れた原因がノイズ(検出値の最大値および最小値の要因と考えられる)であるかどうかが判断され、目標信号範囲を外れた要因がノイズである場合には、拡張された目標信号範囲を狭められない。そのため、出力信号制御におけるノイズの影響を低減できる。
【0013】
第5の発明は、第4の発明の電源装置において、前記少なくとも一つの検出値は、前記複数の検出値の最大値および最小値を含む。
本構成によれば、ノイズが存在する場合、その結果が検出値の最大値および最小値として検出される可能性が高い。そのため、好適にノイズの影響を低減できる。
【0014】
第6の発明は、第2〜5のいずれか一つの発明の電源装置において、前記レンジ切替手段は、前記拡張された目標信号範囲を広げる前の前記目標信号範囲まで狭める。
本構成によれば、目標信号範囲を元の目標信号範囲に戻すことができる。
【0015】
第7の発明は、第1〜6のいずれか一つの発明の電源装置において、前記レンジ切替手段は、前記目標信号範囲の上限を増加させ、かつ、前記目標信号範囲の下限を低下させることによって、前記目標信号範囲を拡張する。
本構成によれば、リップル波形の形状および大きさに応じて、リップルによる出力信号の変動を、拡張された目標信号範囲内に好適に収めることができる。
【0016】
第8の発明は、第1〜7のいずれか一つの発明の電源装置において、前記出力信号のリップルの大きさに応じて、前記レンジ切替手段による前記目標信号範囲の拡張量を設定する設定手段を、さらに備える。
本構成によれば、目標信号範囲を無用に拡張し過ぎたりすることなく、リップルの影響を低減できる。
【0017】
第9の発明は、第8の発明の電源装置において、前記設定手段は、前記出力信号の目標信号値、前記負荷、および前記制御信号うちの、少なくとも一つに基づき前記リップルの大きさを推定する。
【0018】
本構成によれば、例えば、出力信号の目標信号値とリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータ、あるいは負荷の大きさとリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータ、あるいは制御信号の大きさ(制御電圧値)とリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータを、記憶装置内に設ける。そして、設定手段がそのテーブルデータを参照することによって、リップルの大きさを簡易な構成によって推定できる。
【0019】
第10の発明は、第8の発明の電源装置において、前記リップルを測定する測定手段をさらに備える。
本構成によれば、リップルの大きさが実際に測定されるため、リップルが推定される場合と比べて、目標信号範囲の拡張量をより好適に設定できる。
【0020】
第11の発明に係る画像形成装置は、第1〜10のいずれか一つの発明の電源装置と、前記電源装置の前記出力手段から出力される前記出力信号を用いて、被記録媒体に画像を形成する画像形成部とを備える。
本構成によれば、画像を形成するために使用される出力信号にリップルが含まれる場合であっても、所定の画像品質が維持される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電源装置によれば、出力信号を出力する際に、出力制御へのリップルの影響を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施形態>
本発明による電源装置を画像形成装置としてのレーザプリンタに用いた一実施形態を、図1〜図10を参照しつつ説明する。なお、画像形成装置は、レーザプリンタに限られず、例えば、LEDプリンタ、ファクシミリ装置、あるいはコピー機能及びスキャナ機能等を備えた複合機であってもよい。さらに、本発明による電源装置の適用は画像形成装置に限られず、電源装置を利用するあらゆる装置に適用できる。
【0023】
1.レーザプリンタの全体構成
図1は、レーザプリンタの概略的な要部側断面図である。図1において、レーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」と記す)1は、本体フレーム2内に、用紙(「被記録媒体」の一例)3を給紙するためのフィーダ部4や、給紙された用紙3に画像を形成するための画像形成部5等を備えている。
【0024】
(1)フィーダ部
フィーダ部4は、本体フレーム2内の底部に設けられ、給紙トレイ6、給紙トレイ6の一端側(以下、一端側(図1で紙面右側)を前側、その反対側(図1で紙面左側)を後側とする)端部の上方に設けられる給紙ローラ8、給紙ローラ8に対し用紙3の搬送方向の下流側に設けられるレジストローラ12等を含む。
【0025】
給紙トレイ6の最上位にある用紙3は、給紙ローラ8の回転によって1枚毎に給紙される。給紙された用紙3は、レジストローラ12に送られる。レジストローラ12は、用紙3をレジスト後に、画像形成位置に送る。なお、画像形成位置は、感光体ドラム27と転写ローラ30との接触位置とされる。
【0026】
(2)画像形成部
画像形成部5は、スキャナ部16、プロセスカートリッジ17および定着部18を含む。
スキャナ部16は、本体フレーム2内の上部に設けられ、レーザ発光部(図示せず)、ポリゴンミラー、反射鏡等を含む。レーザ発光部から発光される、画像データに基づくレーザビームは、鎖線で示すように、ポリゴンミラー、反射鏡等を介して、感光体ドラム27の表面上に高速走査にて照射される。
【0027】
プロセスカートリッジ17は、スキャナ部16の下方に設けられ、ドラムユニット51と、ドラムユニット51に収容される現像カートリッジ28とを含む。現像カートリッジ28は、ドラムユニット51に対して着脱自在に収容されており、例えば、現像ローラ31、供給ローラ33、およびトナーホッパ34等を含む。
【0028】
トナーホッパ34内には、トナー(現像剤)が充填されている。トナーホッパ34の後方位置には、供給ローラ33が設けられており、また、この供給ローラ33に対向して、現像ローラ31が設けられている。現像時に、現像ローラ31には所定の現像バイアス電圧が印加される。トナーホッパ34から放出されるトナーは、供給ローラ33の回転により、現像ローラ31に供給される。
【0029】
ドラムユニット51は、感光体ドラム27、スコロトロン型帯電器29、および転写ローラ30等を備えている。感光体ドラム27は、現像ローラ31と対向配置され、筒状のドラム本体と、そのドラム本体の軸心に、接地された金属製のドラム軸27aとを含む。ドラム本体の表面には、正帯電性の感光層が形成されている。また、感光体ドラム27の上方には、レーザビームの通路として露光窓が設けられている。
【0030】
帯電器29は、感光体ドラム27の上方に、感光体ドラム27に接触しないように所定間隔を隔てて対向配置されている。帯電器29は、帯電ワイヤ29aとグリッド29bとを含み、帯電ワイヤ29aからの放電によって、グリッド29bを介して感光体ドラム27の表面を一様に例えば、正極性(例えば、約870V)に帯電させる。帯電ワイヤ29aには所定の帯電電圧(例えば、5kV〜8kV)が印加される。
【0031】
感光体ドラム27の表面は、感光体ドラム27の回転に伴って、まず、帯電器29により一様に正帯電される。その後、帯電表面は、スキャナ部16からのレーザビームの高速走査により露光され、画像データに基づく静電潜像が形成される。次いで、現像ローラ31の回転により、現像ローラ31の表面上に担持されかつ正極性に帯電されているトナーが、感光体ドラム27の表面上の静電潜像に供給され、静電潜像が現像される。
【0032】
転写ローラ30は、金属製のローラ軸30aを有し、感光体ドラム27の下方において、感光体ドラム27に対向配置される。ローラ軸30aには、例えば導電性のゴム材料からなるローラが被覆されている。
【0033】
転写ローラ30のローラ軸30aには、図2に示されるように、バイアス印加回路(本発明による「電源装置」の一例)60が接続されている。そして、転写位置において現像ローラ31に担持されたトナー像を用紙3に転写するための転写動作時には、転写ローラ30のローラ軸30aに、バイアス印加回路60から、例えば−6kVの転写バイアス電圧(高電圧)Vtが印加される。
【0034】
定着部18は、図1に示すように、プロセスカートリッジ17の後方下流側に設けられる。定着部18では、用紙3上に転写されたトナーが熱定着され、その後、用紙3は、排紙トレイ46上に排紙される。
【0035】
2.バイアス印加回路(電源装置)
次に、図2を参照して、バイアス印加回路60について説明する。図2は、転写ローラ30に対して転写バイアス電圧Vtを印加するバイアス印加回路60の要部構成のブロック図である。
【0036】
バイアス印加回路60は、CPU(「制御手段」、「レンジ切替手段」および「設定手段」の一例)61と、転写バイアス電圧Vtを生成し出力する転写バイアス印加回路(「出力手段」の一例)62とを備えている。転写バイアス印加回路62は、転写ローラ30のローラ軸30aに接続される接続ライン90に接続されている。なお、CPU61は、バイアス印加回路60の制御の他に、画像形成に係るプリンタ1の各部の制御も行う。
【0037】
また、バイアス印加回路60は、接続ライン90に流れる転写電流(「出力信号」の一例)Itの値に応じた検出信号S3を出力する出力検出回路84を含む。ここで、出力検出回路84は、例えば検出抵抗89によって構成される。検出信号S3に基づいて、転写バイアス印加回路62を制御する制御信号Vcnが生成される。検出信号S3は、また、バイアス印加回路60の負荷(負荷抵抗)を算出するために用いられる。算出された負荷は、例えば、後述するように、転写電流Itのリップルを推定するために利用される。なお、バイアス印加回路60は、その他の高電圧、例えば帯電電圧等を生成するための回路を含むが、その図示は省略されている。
【0038】
転写バイアス印加回路62は、CPU61のPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によって定電流制御される。また、CPU61にはメモリ100が接続されている。このメモリ100には、バイアス印加回路60を制御するプログラム、カウンタの所定カウント値、および各種テーブルデータ等が格納されている。
【0039】
転写バイアス印加回路62は、高電圧(負電圧)発生回路であり、PWM信号平滑回路70、トランスドライブ回路71、昇圧・平滑整流回路72、および出力電圧検出回路(「検出手段」の一例)73を含む。
【0040】
PWM信号平滑回路70は、CPU61のPWMポート61aからのPWM信号S1を平滑し、平滑されたPWM信号S1をトランスドライブ回路71に提供する。トランスドライブ回路71は、平滑されたPWM信号S1に基づき、昇圧・平滑整流回路72の1次側巻線75bに発振電流を流す。なお、CPU61は、PWM信号S1のデューティ比(パルス幅)を、転写バイアス電圧Vtおよび転写電流Itを制御する制御信号Vcnの電圧値に基づいて制御する。
【0041】
昇圧・平滑整流回路72は、トランス75、ダイオード76、平滑コンデンサ77等を備えている。トランス75は、2次側巻線75a,1次側巻線75b及び補助巻線75cを備えている。2次側巻線75aの一端は、ダイオード76を介して接続ライン90に接続されている。一方、2次側巻線75aの他端は、出力検出回路84に接続されている。また、平滑コンデンサ77及び抵抗78がそれぞれ2次側巻線75aに並列に接続されている。
【0042】
このような構成により、1次側巻線75bの電圧は、昇圧・平滑整流回路72において昇圧及び整流され、バイアス印加回路60の出力端Aに接続された転写ローラ30のローラ軸30aに転写バイアス電圧Vtとして印加される。
【0043】
出力電圧検出回路73は、昇圧・平滑整流回路72のトランス75の補助巻線75cと、CPU61とに接続されている。出力電圧検出回路73は、転写バイアス印加回路62による転写動作時において、補助巻線75cの間で発生する出力電圧Vdを検出して、その検出信号S2をCPU61のA/Dポート61bに供給する。CPU61は、検出信号S2に基づいて転写出力電圧Vtを検出する。
【0044】
その際、さらに、CPU61は、接続ライン90に流れる転写電流値Itに応じた検出信号S3に基づき制御信号Vcnを生成し、制御信号Vcnに基づいて、転写電流値Itが目標電流範囲(「目標信号範囲」の一例)内となるようにPWM信号S1のデューティ比を適宜変更する。すなわち、CPU61は、転写電流値Itを定電流制御する。
【0045】
3.目標電流範囲(目標信号範囲)のレンジ切替制御
次に、図3〜図10を参照して、本発明に係る、転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替制御について説明する。まず図3を参照して、以下の実施例に共通する基本的な概念について説明する。図3は、本発明を概略的に示すタイムチャートである。転写バイアス電圧Vtの印加に伴う転写電流Itの上昇時において、図3の時刻t1において転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入った場合、CPU61は、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1にレンジ切替を行う。すなわち、CPU61は、転写電流Itの目標上限電流Itu0を拡張量「A」だけ増加させて拡張目標上限電流Itu1とし、転写電流Itの目標下限電流Itd0を拡張量「B」だけ減少させて拡張目標下限電流Itd1とする。
【0046】
このように、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入った場合に目標電流範囲ΔIt0を拡張するのは以下の理由による。高電圧である転写バイアス電圧Vtの発生に起因する大きなリップルに応じて転写電流Itにもリップルが生じる。そのリップルに応じて転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0を外れる場合(図3のP1〜P5参照)、CPU61がそのリップルに応答してしまい、転写電流Itの制御が不安定となる場合がある。そのような場合であっても、目標電流範囲ΔIt0を広げることによって、リップルによって転写電流Itが目標電流範囲を外れることを低減して、出力制御へのリップルの影響を抑制するためである。すなわち、出力電流制御へのリップルの影響を低減するためである。次に、図3に示された基本概念を基づいた実施例を説明する。
【0047】
(実施例1)
まず実施例1を、図4および図5を参照して説明する。実施例1において、CPU61は、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1から外れた場合、拡張目標電流範囲ΔIt1を元の目標電流範囲ΔIt0に狭める。図4は、実施例1における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替に係る各処理を示すフローチャートである。各処理は、所定のプログラムにしたがって、CPU61によって実行される。図5は実施例1における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替態様を概略的に示すタイムチャートである。
【0048】
プリンタ1に対するユーザの印字指示によって印字処理が開始されると、図4のステップS110において、CPU61は、まず、初期設定処理を行う。CPU61は、転写電流Itの目標上限電流Itu0および目標下限電流Itd0、すなわち、目標電流範囲ΔIt0を設定する。また、CPU61は、制御モードMODEをアップモードUPに設定し、制御電圧Vcnに「ゼロ」Vを設定する。ここで、制御電圧Vcnは、上記したように、転写バイアス印加回路62を制御する電圧であって、制御電圧Vcnに基づいてPWM信号S1のデューティ比が設定される。
【0049】
次いで、ステップS115において、CPU61は、転写電流Itのリップルの大きさに応じて、目標電流範囲ΔIt0の拡張量(「A」および「B」)を設定する。その際、転写電流Itの目標電流値(あるいは、目標電流範囲)、バイアス印加回路60の負荷、および制御信号Vcnの電圧値のうちの、少なくとも一つに基づきリップルの大きさを推定する。その際、例えば、転写電流Itの目標電流値(あるいは、目標電流範囲)とリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータ、あるいは負荷の大きさとリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータ、あるいは制御信号Vcnの大きさ(制御電圧値)とリップルの大きさとの関係を示すテーブルデータを、メモリ100内に設ける。そして、CPU61がそのテーブルデータを参照することによって、リップルの大きさを推定する。そして、推定されたリップルの大きさに応じて、拡張量(「A」および「B」)を設定する。
【0050】
次いで、ステップS120において、CPU61は、出力検出回路84を介して転写電流Itを読み込み、ステップS125において、転写電流Itが目標上限電流(上限値)Itu0より大きいかどうかを判定する。ステップS125において、転写電流Itが目標上限電流Utu0より大きくないと判定された場合、ステップS130において、CPU61は、転写電流Itが目標下限電流(下限値)Itd0より小さいかどうかを判定する。
【0051】
ステップS130において、転写電流Itが目標下限電流Itd0より小さいと判定された場合は、すなわち、例えば、図5の時刻t1よりも以前においては、ステップS135において、現在、制御モードMODEが駆動モードDRVであるかどうかを判定する。ここで、駆動モードDRVは、転写電流Itが目標電流範囲にある場合において、一定の制御電圧Vcnによって転写バイアス印加回路62が制御されているモードである。
【0052】
ステップS135において、現在、制御モードMODEが駆動モードDRVでないと判定された場合は、ステップS140において、CPU61は、制御電圧Vcnを所定増加量UD1だけ増加させ、制御モードMODEをアップモードUPに設定する。そして、ステップS175に移行して、転写電流Itが安定する所定時間、例えば、1msの間、待機する。ここで、ステップS130、ステップS135、ステップS140およびステップS175に至る処理は、図5において時刻t1に至るまでに相当する。すなわち、転写電流Itを目標下限電流Itd0まで初期増加させる期間に相当する。
【0053】
一方、図5の時刻t1において、転写電流Itが目標下限電流Itd0に到達すると、すなわち、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入ると、ステップS130において、「NO」判定がなされ、処理はステップS145に移行する。ステップS145において、現在、制御モードMODEがアップモードUPであるため、「NO」判定がなされ、処理はステップS150に移行する。
【0054】
ステップS150において、CPU61は、転写電流Itが目標下限電流Itd0に到達したため、上記したように、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に切替える。すなわち、CPU61は、転写電流Itの目標上限電流Itu0を拡張量「A」だけ増加させて拡張目標上限電流Itu1とし、転写電流Itの目標下限電流Itd0を拡張量「B」だけ減少させて拡張目標下限電流Itd1とする。また、制御モードMODEをアップモードUPから駆動モードDRVに変更する。
【0055】
次いで、ステップS175において1ms待機し、ステップS180において、印字処理が終了して転写バイアス電圧Vtの印加が終了したかどうかを判定する。印字処理が終了していない場合は、ステップS120に戻って印字処理が終了するまで処理を繰返す。
【0056】
その際、例えば、図5の時刻t2に示されるように、転写電流Itが目標下限電流、この場合、拡張目標下限電流Itd1を下回ると、ステップS130およびステップS135において「YES」判定される。そして、処理がステップS170に移行する。
【0057】
ステップS170において、CPU61は、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める。すなわち、CPU61は、転写電流Itの目標上限電流Itu0を拡張量「A」だけ減少させて目標上限電流Itu0とし、転写電流Itの目標下限電流Itd0を拡張量「B」だけ増加させて目標下限電流Itd0とする。また、転写電流Itを上昇させるために、ステップS140において、制御モードMODEを駆動モードDRVからアップモードUPに変更する。
【0058】
それによって、図5の時刻t3において、転写電流Itが目標下限電流Itd0に到達するため、再度、目標電流範囲ΔIt0が拡張目標電流範囲ΔIt1に切替えられる(ステップS150)。そして、図5の時刻t4に示されるように、転写電流Itが目標上限電流、この場合、拡張目標上限電流Itu1を上回ると、ステップS125およびステップS155において「YES」判定されるため、処理がステップS160に移行する。
【0059】
ステップS160においては、ステップS170と同様に、CPU61は、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める。そして、転写電流Itを下降させるために、ステップS165において、CPU61は、制御電圧Vcnを所定減少量DD1だけ減少させ、制御モードMODEをダウンモードDOWNに設定する。次いで、ステップS175に移行して、1msの間、待機する。
【0060】
(実施例1の効果)
上記したように、実施例1においては、CPU61は、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入った場合、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張するとともに、その後、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1から外れた場合、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める。通常、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、その要因がリップルではなく転写電流Itの変動にある可能性が高い。そのため、転写電流Itが変動した場合においても、拡張目標電流範囲ΔIt1を狭めることによって、転写電流Itを狭められた元の目標電流範囲ΔIt0内に戻すことができる。
【0061】
(実施例2)
次に、実施例2を、図6および図7を参照して説明する。図6は、実施例2における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替に係る各処理を示すフローチャートである。各処理は、実施例1と同様に、CPU61によって実行される。図7は実施例2における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替態様を概略的に示すタイムチャートである。なお、図6において実施例1の図4のフローチャートと同一の処理は同一のステップ番号を付し、その説明を省略し、実施例1との相違点のみを説明する。
【0062】
実施例2の実施例1との相違点は、以下にある。すなわち、実施例2においては、CPU61は、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、所定時間の間、制御電圧Vcnの制御変化量を小さくし、所定時間の経過後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭める。
【0063】
すなわち、実施例2においては、実施例1と異なり、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、その直後に拡張目標電流範囲ΔIt1は狭められない。それは、以下の理由による。
【0064】
例えば、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1の上限Itu1を外れ場合、その直後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭め、転写電流Itを急に低減させようとすると、リップルの性状によっては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1の下限Itd1を続いて外れることが考えられる。そのような転写電流Itの急変動は、出力制御の安定性に影響する。そのため、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れてから所定時間の間、制御電圧Vcnの制御変化量を小さし、その後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭めることによって、そのような急変動を抑制するためである。
【0065】
図6のステップS110Aの初期設定処理において、CPU61は、さらに、カウント値CNT1およびCNT2を「ゼロ」に設定する。カウント値CNT1は、図7に示す所定時間K1を計測するためのカウント値であり、カウント値CNT2は、図7に示す所定時間K2を計測するためのカウント値である。
【0066】
今、図7の時刻t2において、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を上方に外れるとすると、図6のステップS125およびステップS155において「YES」判定され、ステップS220に移行する。ステップS220において、CPU61は、カウント値CNT1が、例えば、「2」を超えるかどうかを判定する。
【0067】
カウント値CNT1が「2」を超える場合は、所定期間K1(図7参照)が経過したとして、ステップS160において、CPU61は、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める(図7の時刻t3に相当)。一方、カウント値CNT1が「2」を超えない場合は、ステップS230において、CPU61は、制御電圧Vcnを所定減少量(制御変化量)DD2だけ減少させる。なお、ここで、所定減少量DD2は、ステップS165における所定減少量DD1より小さい値である。すなわち、図7に示される所定期間K1においては、制御電圧Vcnの制御変化量を小さくして、転写電流Itの減少量が抑えられる。そして、カウント値CNT1をインクリメントする。
【0068】
次いで、図7の時刻t4において、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入ると、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張する。すなわち、図6のステップS125、ステップS130、およびステップS145において「NO」判定され、ステップS150に移行する。そして、ステップS210において、カウント値CNT1およびCNT2が「ゼロ」にクリアされる。
【0069】
次いで、図7の時刻t5において、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を下方に外れるとすると、図6のステップS125において「NO」判定され、ステップS130およびステップS135において「YES」判定され、ステップS240に移行する。
【0070】
ステップS240において、CPU61は、カウント値CNT2が、例えば、「2」を超えるかどうかを判定する。カウント値CNT2が「2」を超える場合は、所定期間K2(図7参照)が経過したとして、ステップS170において、CPU61は、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める(図7の時刻t6に相当)。一方、カウント値CNT2が「2」を超えない場合は、ステップS250において、CPU61は、制御電圧Vcnを所定増加量(制御変化量)UD2だけ増加させる。なお、ここで、所定増加量UD2は、ステップS140における所定増加量UD1より小さい値である。すなわち、図7に示される所定期間K2においては、制御電圧Vcnの制御変化量を小さくして、転写電流Itの増加量が抑えられる。そして、カウント値CNT2がインクリメントされる。
【0071】
次いで、図7の時刻t7において、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入ると、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張する。すなわち、図6のステップS125、ステップS130、およびステップS145において「NO」判定され、ステップS150に移行する。そして、ステップS210において、カウント値CNT1およびCNT2が「ゼロ」にクリアされる。なお、ステップS220およびステップS240における、判定カウント値「2」は、任意である。すなわち、所定期間K1およびK2は、適宜設定される期間であり、所定期間K1と所定期間K2とは異なる時間長であってもよい。
【0072】
(実施例2の効果)
上記したように、実施例2において、CPU61は、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、所定時間(K1、K2)の間、制御電圧Vcnの制御変化量を小さくし、所定時間(K1、K2)の経過後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭める。そのため、例えば、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1の上限Itu1を外れ場合、その直後に拡張目標電流範囲ΔIt1を狭め、転写電流Itを急に低減させようとすると、リップルの性状によっては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1の下限Itd1を続いて外れることが、有りえる。それは、出力制御に影響する。そのため、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れてから所定時間(K1、K2)の間、制御電圧Vcnの制御変化量を小さし、その後において拡張目標電流範囲ΔIt1を狭めることによって、そのような不都合が抑制される。
【0073】
(実施例3)
次に、実施例3を、図8〜図10を参照して説明する。図8は、実施例3における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替に係る各処理を示すフローチャートである。図9は、図8のフローチャートにおける「It複数読み込み」ルーチンを示すフローチャートである。各処理は、実施例1と同様に、CPU61によって実行される。図10は実施例3における転写電流Itの目標電流範囲のレンジ切替態様を概略的に示すタイムチャートである。なお、図8において実施例1の図4のフローチャートと同一の処理は同一のステップ番号を付し、その説明を省略し、実施例1との相違点のみを説明する。
【0074】
実施例3の実施例1との相違点は、以下にある。すなわち、実施例3においては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、転写電流Itの検出間隔が短くされる。また、CPU61は、短くされた検出間隔において検出された複数の検出値の平均値であって、複数の検出値の最大値および最小値を除いた平均値を求める。そして、平均値が拡張目標電流範囲ΔIt1を外れている場合にのみ、拡張目標電流範囲ΔIt1が狭められる。それは、以下の理由による。
【0075】
転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合において、その要因がノイズである場合がある。そのため、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合、その直後において、転写電流Itの検出値の最大値および最小値を除いた、複数の検出値の平均値を求め、その平均値が拡張目標電流範囲ΔIt1内にあるかどうかが判断される。それによって、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた要因がノイズであるかどうかが判断される。そして、拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた要因がノイズである場合には、拡張目標電流範囲ΔIt1を狭めないようにして、出力電圧制御におけるノイズの影響を低減するためである。
【0076】
今、図10の時刻t2において、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を下方に外れるとすると、図8のステップS125において「NO」判定され、ステップS130およびステップS135において「YES」判定され、ステップS300の「It複数読み込み」ルーチンに移行する。
【0077】
図9に示される「It複数読み込み」ルーチンのステップS301において、転写電流Itが読み込まれ、ステップS302において、所定時間、例えば、0.1msの間、待機する。この待機時間は、図4のステップS175における待機時間1msより短い。これは、転写電流Itの検出間隔を短くするためである。
【0078】
次いで、ステップS302において、図10の時刻t2からの転写電流Itの読み込み回数が所定回数、例えば、10回に達したかどうか判定される。読み込み回数が所定回数に達していない場合は、ステップS301に戻って転写電流Itが読み込まれる。一方、読み込み回数が所定回数に達した場合、ステップS304において、CPU61は、所定回数読み込まれた検出データから、転写電流Itの平均値を求める。ここで、平均値を求める際に、CPU61は、複数の検出値のうち、最大値および最小値(「少なくとも一つの検出値」の一例)を除いた平均値を求める。これは、ノイズと関連すると考えられる検出値を排除するためである。そして、図8のステップS310の処理に戻る。
【0079】
ステップS310において、CPU61は、転写電流Itの平均値が下限値Itd1より小さいかどうか判定する。平均値が下限値Itd1より小さいと判定された場合は、ステップS170に移行して、拡張目標電流範囲ΔIt1が目標電流範囲ΔIt0に狭められる(図10の時刻t3)。一方、平均値が下限値Itd1より小さくないと判定された場合は、ステップS175に移行する。すなわち、この場合、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を下方に外れたのはノイズに起因すると判断され、拡張目標電流範囲ΔIt1は狭められない(図10の時刻t6に相当)。
【0080】
次いで、図10の時刻t4において転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に入ると、目標電流範囲ΔIt0が拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張される。すなわち、図8のステップS125、ステップS130、およびステップS145において「NO」判定され、ステップS150に移行する。
【0081】
次いで、図10の時刻t5において、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を上方に外れると、図8のステップS125およびステップS155において「YES」判定され、ステップS320に移行する。ステップS320においては、ステップS300と同様に、「It複数読み込み」ルーチンが実行され、転写電流Itの平均値が求められる。
【0082】
そして、ステップS330において、CPU61は、転写電流Itの平均値が上限値Itu1より大きいかどうかを判定する。平均値が上限値Itu1より大きいと判定された場合は、ステップS160に移行して、拡張目標電流範囲ΔIt1が目標電流範囲ΔIt0に狭められる。一方、平均値が上限値Itu1より大きくないと判定された場合は、ステップS175に移行する。すなわち、この場合、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を上方に外れたのはノイズに起因すると判断され、拡張目標電流範囲ΔIt1は狭められない(図10の時刻t5に相当)。
【0083】
(実施例3の効果)
上記したように、実施例3において、CPU61は、転写電流Itが拡張された拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた場合において、その直後において、最大値および最小値を除いた、複数の転写電流Itの検出値の平均値を求める。そして、その平均値が拡張目標電流範囲ΔIt1内にあるかどうか判断される。すなわち、実施例3においては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた要因がノイズ(検出値の最大値および最小値の要因と考えられる)であるかどうかが判断される。そして、拡張目標電流範囲ΔIt1を外れた要因が、出力制御以外のノイズであると考えられる場合には、拡張目標電流範囲ΔIt1は狭められない。そのため、出力制御におけるノイズの影響が低減される。
【0084】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0085】
(1)上記実施形態においては、転写電流Itの目標電流値等に基づきリップルの大きさを推定し、推定されたリップルの大きさ(以下、「リップル量」と記す)に応じて、拡張量(「A」および「B」)を設定する例を示したが、これに限定されない。リップルの大きさは、図11および図12に示すように、リップル量を測定する測定手段によって測定されるようにしてもよい。
【0086】
図11は、図4において、ステップS115の処理に代えて、ステップS400の「リップル測定」ルーチン処理が設けられた場合を示す。「リップル測定」ルーチンは、例えば、図11のステップS125、ステップS130、およびステップS145において「NO」判定された場合に、CPU(「測定手段」の一例)61によって実行される。すなわち、「リップル測定」ルーチンは、転写電流Itが上昇し、下限値Itd0に達した場合、例えば、図3における時刻t1に実行される。
【0087】
図12に示される「リップル測定」ルーチンのステップS410において、転写電流Itが読み込まれ、ステップS420において、所定時間、例えば、0.1msの間、待機する。この待機時間は、図4のステップS175における待機時間1msより短い。これは、リップル量の検出時間を短時間で行うためである。
【0088】
次いで、ステップS430において、転写電流Itの読み込み回数が所定回数、例えば、10回に達したかどうか判定される。読み込み回数が所定回数に達していない場合は、ステップS410に戻って転写電流Itが読み込まれる。一方、読み込み回数が所定回数に達した場合、ステップS440において、CPU61は、所定回数読み込まれた検出データから、転写電流Itの最大値It(MAX)および最小値It(MIN)を求める。
【0089】
次いで、ステップS450において、最大値It(MAX)と最小値It(MIN)との差を、拡張量(「A」および「B」)として設定し、図11のステップS150の処理に戻る。すなわち、ここでは、最大値It(MAX)と最小値It(MIN)との差(MAX−MIN)がリップル量として測定され、そのリップル量が拡張量(「A」および「B」)として設定される。
【0090】
この場合、拡張量(「A」および「B」)は、実際に測定されたリップル量によって設定されるため、リップル量が推定される場合と比べて、拡張量(「A」および「B」)をより好適に設定できる。なお、リップル量による拡張量(「A」および「B」)の設定態様はこれに限られない。例えば、差(MAX−MIN)の70%が拡張量(「A」および「B」)として設定されてもよい。あるいは、差(MAX−MIN)の80%が拡張量「A」として設定され、差(MAX−MIN)の50%が拡張量「B」として設定されるようにしてもよい。
【0091】
(2)上記実施形態においては、転写電流Itが拡張目標電流範囲ΔIt1から外れた場合、拡張目標電流範囲ΔIt1を元の目標電流範囲ΔIt0に狭める例を示したが、拡張目標電流範囲ΔIt1を狭める態様はこれに限られない。例えば、拡張目標電流範囲ΔIt1が、元の目標電流範囲ΔIt0よりも広くなるように狭められてもよいし、あるいは元の目標電流範囲ΔIt0よりも狭くなるように狭められてもよい。
【0092】
(3)上記実施形態においては、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張させる場合、目標上限電流(目標電流範囲の上限)Itu0を増加させ、かつ、目標下限電流(目標電流範囲の下限)Itd0を低下させる例を示したが、これに限られない。例えば、目標上限電流Itu0のみを増加させるようにしてもよいし、目標下限電流Itd0のみを低下させるようにしてもよい。
【0093】
また、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める場合においても、拡張目標上限電流Itu1を低下させ、かつ、拡張目標下限電流Itd1を増加させる例を示したが、これに限られない。例えば、拡張目標上限電流Itu1のみを低下させるようにしてもよいし、拡張目標下限電流Itd1のみを増加させるようにしてもよい。
【0094】
(4)上記実施形態においては、目標電流範囲ΔIt0の拡張量である拡張量「A」と拡張量「B」とが等しい量である例を示したが、これに限られない。すなわち、拡張量「A」と拡張量「B」とは、異なる量であってもよい。
【0095】
また、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張させる場合、および拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める場合において、それぞれ、等しい量である拡張量「A」および拡張量「B」を用いる例を示したがこれに限られない。例えば、拡張目標電流範囲ΔIt1を目標電流範囲ΔIt0に狭める場合において、拡張量「A」および拡張量「B」とは異なる量の拡張量「C」および、拡張量「C」とは異なる拡張量「D」を用いるようにしてもよい。
【0096】
(5)上記実施形態においては、図9のステップS304において、転写電流Itの平均値を求める際に、複数の検出値のうち、最大値および最小値を除く例を示したが、これに限られない。例えば、最大値のみを除くようにしてもよいし、あるいは最大値から三番目までの大きさの検出値を除くようにしてもよい。要は、ノイズに関連すると考えられる、少なくとも一つの検出値が除かれればよい。
【0097】
(6)上記実施形態の各実施例において、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0に最初に達したとき(時刻t1)、リップル量を検出するようにしてもよい。そして、検出されたリップル量が所定値を超える場合に、目標電流範囲ΔIt0を拡張目標電流範囲ΔIt1に拡張するようにしてもよい。その際、例えば、図11のステップS400に示した「リップル測定」ルーチンを実行して、リップル量を検出するようにしてもよい。転写電流Itのリップル量が所定量より小さく、転写電流Itが目標電流範囲ΔIt0を外れないと想定される場合には、目標電流範囲ΔIt0を拡張する必要がない。そのため、この構成によれば、不必要な目標電流範囲ΔIt0の拡張処理を省略することができる。
【0098】
(7)上記実施形態および他の実施形態において、本発明における「出力信号」が、電流信号である転写電流Itである例を示したが、これに限定されない。本発明は、「出力信号」が、例えば電圧信号である場合にも適用できる。その場合、目標電圧範囲が、本発明における「目標信号範囲」に相当し、拡張された目標電圧範囲が、本発明における「拡張された目標信号範囲」に相当することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に係るレーザプリンタの内部構成を示す側断面図
【図2】本発明の一実施形態に係るバイアス印加回路の要部構成のブロック図
【図3】本発明の基本概念を示すタイムチャート
【図4】実施例1に係るレンジ切替の処理を示すフローチャート
【図5】図4の処理に関連するタイムチャート
【図6】実施例2に係るレンジ切替の処理を示すフローチャート
【図7】図6の処理に関連するタイムチャート
【図8】実施例3に係るレンジ切替の処理を示すフローチャート
【図9】実施例3における「It複数読み込み」ルーチンを示すフローチャート
【図10】図8の処理に関連するタイムチャート
【図11】別の実施例に係る処理内容を示すフローチャート
【図12】別の実施例おける「リップル測定」ルーチンを示すフローチャート
【符号の説明】
【0100】
1…レーザプリンタ(画像形成装置)
60…バイアス印加回路(電源装置)
61…CPU(制御手段、レンジ切替手段、設定手段、測定手段)
62…転写バイアス印加回路(出力手段)
84…出力検出回路(検出手段)
It…転写電流(出力信号)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の出力信号を生成し、前記出力信号を負荷に対して出力する出力手段と、
前記出力手段によって出力された前記出力信号を検出する検出手段と、
前記出力信号の検出値に基づいて、前記出力信号が目標信号範囲となるように前記出力手段を制御する制御信号を生成する制御手段と、
前記出力信号が前記目標信号範囲に入った場合、前記目標信号範囲を拡張するレンジ切替手段と、
を備えた電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記レンジ切替手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲から外れた場合、前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置において、
前記制御手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲を外れてから所定時間の間、前記制御信号の制御変化量を小さくし、
前記レンジ切替手段は、前記所定時間の経過後に前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【請求項4】
請求項2に記載の電源装置において、
前記検出手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲を外れた場合、前記出力信号の検出間隔を短くし、
前記レンジ切替手段は、短くされた検出間隔において検出された複数の検出値の平均値であって、前記複数の検出値のうち少なくとも一つの検出値を除いた平均値を求め、前記平均値が前記拡張された目標信号範囲を外れている場合、前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【請求項5】
請求項4に記載の電源装置において、
前記少なくとも一つの検出値は、前記複数の検出値の最大値および最小値を含む。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記レンジ切替手段は、前記拡張された目標信号範囲を広げる前の前記目標信号範囲まで狭める。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記レンジ切替手段は、前記目標信号範囲の上限を増加させ、かつ、前記目標信号範囲の下限を低下させることによって、前記目標信号範囲を拡張する。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記出力信号のリップルの大きさに応じて、前記レンジ切替手段による前記目標信号範囲の拡張量を設定する設定手段を、さらに備える。
【請求項9】
請求項8に記載の電源装置において、
前記設定手段は、前記出力信号の目標信号値、前記負荷、および前記制御信号うちの、少なくとも一つに基づき前記リップルの大きさを推定する。
【請求項10】
請求項8に記載の電源装置において、
前記リップルを測定する測定手段をさらに備える。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の電源装置と、
前記電源装置の前記出力手段から出力される前記出力信号を用いて、被記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
を備える、画像形成装置。
【請求項1】
所定の出力信号を生成し、前記出力信号を負荷に対して出力する出力手段と、
前記出力手段によって出力された前記出力信号を検出する検出手段と、
前記出力信号の検出値に基づいて、前記出力信号が目標信号範囲となるように前記出力手段を制御する制御信号を生成する制御手段と、
前記出力信号が前記目標信号範囲に入った場合、前記目標信号範囲を拡張するレンジ切替手段と、
を備えた電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記レンジ切替手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲から外れた場合、前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置において、
前記制御手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲を外れてから所定時間の間、前記制御信号の制御変化量を小さくし、
前記レンジ切替手段は、前記所定時間の経過後に前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【請求項4】
請求項2に記載の電源装置において、
前記検出手段は、前記出力信号が拡張された前記目標信号範囲を外れた場合、前記出力信号の検出間隔を短くし、
前記レンジ切替手段は、短くされた検出間隔において検出された複数の検出値の平均値であって、前記複数の検出値のうち少なくとも一つの検出値を除いた平均値を求め、前記平均値が前記拡張された目標信号範囲を外れている場合、前記拡張された目標信号範囲を狭める。
【請求項5】
請求項4に記載の電源装置において、
前記少なくとも一つの検出値は、前記複数の検出値の最大値および最小値を含む。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記レンジ切替手段は、前記拡張された目標信号範囲を広げる前の前記目標信号範囲まで狭める。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記レンジ切替手段は、前記目標信号範囲の上限を増加させ、かつ、前記目標信号範囲の下限を低下させることによって、前記目標信号範囲を拡張する。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電源装置において、
前記出力信号のリップルの大きさに応じて、前記レンジ切替手段による前記目標信号範囲の拡張量を設定する設定手段を、さらに備える。
【請求項9】
請求項8に記載の電源装置において、
前記設定手段は、前記出力信号の目標信号値、前記負荷、および前記制御信号うちの、少なくとも一つに基づき前記リップルの大きさを推定する。
【請求項10】
請求項8に記載の電源装置において、
前記リップルを測定する測定手段をさらに備える。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の電源装置と、
前記電源装置の前記出力手段から出力される前記出力信号を用いて、被記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
を備える、画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−158111(P2010−158111A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335033(P2008−335033)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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