電源装置の寿命監視装置
【課題】スイッチング電源装置のメーカ、方式によらず、電源の寿命予測を行う。
【解決手段】スイッチング電源装置100の入力端8には、電圧と電流を測定する電流計51、電圧計53が接続されている。また、スイッチング電源装置100の出力端9には電圧と電流を計測するする電流計52、電圧計54が接続されている。計算機50は、各計測装置51〜54による計測値から入出力における電力の比を計算して出力効率を求めて蓄積し、蓄積された出力効率から過去のある時点の出力効率の変動中心を求め、当該時点以前の出力効率のうち予め定められた変動範囲内を超えているものがいくつ発生しているかを示す発生頻度を計算する。警報装置70は、発生頻度が、予め定めた頻度に達しているときに警報出力を発生する。
【解決手段】スイッチング電源装置100の入力端8には、電圧と電流を測定する電流計51、電圧計53が接続されている。また、スイッチング電源装置100の出力端9には電圧と電流を計測するする電流計52、電圧計54が接続されている。計算機50は、各計測装置51〜54による計測値から入出力における電力の比を計算して出力効率を求めて蓄積し、蓄積された出力効率から過去のある時点の出力効率の変動中心を求め、当該時点以前の出力効率のうち予め定められた変動範囲内を超えているものがいくつ発生しているかを示す発生頻度を計算する。警報装置70は、発生頻度が、予め定めた頻度に達しているときに警報出力を発生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠方監視制御装置等に適用する電源装置の寿命監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠方監視制御装置に適用する電源装置として、例えば特許文献1,2に示されるように、電源装置内に実装している電解コンデンサの特性を計測し、容量が設定値より下回っていれば遠隔地の制御装置に警報出力を送る装置が知られている。電解コンデンサは電源に通常使用されている部品であり、かつ電源故障の要因となっている可能性が高いので電解コンデンサを対象とした監視が行われている。
【0003】
また、電解コンデンサ以外の光アイソレータを対象とした故障監視技術として、特許文献3に示されるように、スイッチング電源装置において、電源出力側から電流を注入し、帰還回路の経路を通じてリンギング雑音を発生させて、これにより挙動を監視する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−151722号公報
【特許文献2】特開2000−350456号公報
【特許文献3】特表2009−544273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング電源装置は、スイッチング素子を用いた電源装置であり、その出力電圧制御は、電源出力と並列に接続した出力検出回路により、出力を検出してこれをフィードバックして、スイッチング素子へのデューティ・サイクルを制御している。
この制御によりスイッチング電源装置の出力は安定化しているため、電源出力を外部から見ていても電源の劣化状況が不明である。従って、上記特許文献に示されるように電源内部に電源故障を監視する回路を作り込むことにより劣化の検出が行われる。尚、特許文献3の光アイソレータは、フィードバックの経路に設けられるものである。
【0006】
しかしながら、既に設置されている電源に、劣化検出用の回路を後から組み込むことは当該電源のメーカでもない限り困難である。また、劣化検出の機能が備わった電源であっても、電源劣化の検出のやり方が電源メーカにより異なると病院施設、娯楽施設など市井に展開された既設の電源の監視を集中して行うことが出来ない。例えば病院設備に設置される電源に関しても数多くのメーカが存在し、統一的に管理することが出来ない。このような既存の電源についても、電源の交換時期が事前に分かる劣化検出が要望されている。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、スイッチング電源装置のメーカや方式によらず、電源の寿命が近づいていることを統一的に監視することができる寿命監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、スイッチング電源装置の寿命監視装置において、前記スイッチング電源装置の入力端に入力される電圧と電流を測定する計測装置と、前記スイッチング電源装置の出力端から出力される電圧と電流を計測する計測装置と、各計測装置により計測値から入出力における電力の比を計算し、前記求めた比と前記スイッチング電源装置の運用開始時点の比との変動率を計算する計算機と、前記変動率が予め定めた変化率よりも変化しているときに警報出力を発生させる警報装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、電解コンデンサを含むスイッチング電源装置の寿命監視装置において、
前記スイッチング電源装置の入力端に入力される電圧と電流を測定する計測装置と、前記スイッチング電源装置の出力端から出力される電圧と電流を計測する計測装置と、各計測装置により計測値から入出力における電力の比を計算して蓄積し、蓄積された入出力における電力の比から過去のある時点の電力の比の変動中心を求め、当該時点以前の電力の比のうち予め定められた変動範囲内を超えているものがいくつ発生しているかを示す発生頻度を計算する計算機と、前記頻度が予め定めた頻度に達しているときに警報出力を発生させる警報装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スイッチング電源装置の入出力の電力比を計算し、この比により警報を出力するようにしており、スイッチング電源装置の方式によらず電源の故障予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スイッチング電源装置の動作を説明する図である。
【図2】制御信号を説明する図である。
【図3】1次側の電解コンデンサの劣化による電圧波形を示す図である。
【図4】1次側の入力電圧と入力電流波形を示す図である。
【図5】2次側の電解コンデンサの劣化による電圧波形を示す図である。
【図6】スイッチング電源装置が故障するまでの各波形を示す図である。
【図7】スイッチング電源装置が故障するまでの出力効率を示す図である。
【図8】寿命監視装置を示す図である。
【図9】情報収集ソフトウェアのフロー図である。
【図10】検出事象を説明する図である。
【図11】情報収集ソフトウェアのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
入力を交流電源とするスイッチング電源装置の一般的な動作について説明する。図1において、交流電源からスイッチング電源装置100の入力端8に入力された交流は、整流ブリッジ1で整流されて一次側の電解コンデンサ2で平滑化される。スイッチング素子3がスイッチング電源装置することによって交流に返還し、トランス4を介して二次側に伝達する。二次側では、整流回路5がこれを整流し、さらに二次側の電解コンデンサ6で平滑化して直流を出力する。
出力端9に出力された直流は、制御回路7により検出され、出力電圧が一定に保たれるようスイッチング素子3へのデューティ・サイクルを制御する。
【0013】
図示した例は、一般的なシングルフォワード方式のスイッチング電源装置である。スイッチング電源装置としては他にも、フライバック方式、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、フルブリッジ方式などの種類が存在する。いずれも、交流から直流した後の処理、すなわち直流から交流にしまた直流にするDC−DCコンバータに相当する部分の方式によって区別される。また、制御の方式としては、定電流制御の電源や、定電圧制御、定電力制御のものがある。基本的、いずれの方式であっても、出力電流や電圧あるいは、これらの積がフィードバックされて、スイッチング素子のデューティ・サイクルを制御する点では同じである。尚、スイッチング素子3をトランス4の二次側に配置する例もある。
【0014】
このようなスイッチング電源装置においては、例えば電解コンデンサ2、6等のキャパシタンスの劣化が生じたとしても、制御回路7の動作により、出力端9側は安定化されその変動は見えなくなる。又、スイッチング電源装置においてはチョークコイル(図示せず)やトランス等のインダクタンスも用いられており、これらの劣化による変動も見えない。しかしながら、スイッチング電源装置の劣化がさらに進むと、制御回路7のフィードバックでは出力端9側を安定化できない事態になったり、或いは出力電圧が失われ故障に至る。一方、大きな負荷が加わると、スイッチング電源装置の制御回路7では出力端9側を安定に保てなくなることもあり、単に電源の出力端9側の安定(或いは、定電流、定電力)を保てなくなったからといって、スイッチング電源装置が劣化したという判断はできない。
【0015】
制御回路7に着目すると、その原理は図2に示すように出力電圧(或いは出力電流、若しくは積)を検出値10と、基準となる三角波11とを比較し、三角波11が高い期間スイッチング素子3をオンさせ制御信号12を発生させている。
【0016】
図3は1次側の電解コンデンサ2の劣化による電圧波形の変化を示しており、図3AはAC入力波形を、図3Bは整流ブリッジ1による全波整流した波形を、図3Cは電解コンデンサ2により平滑化された正常波形を示している。電解コンデンサ2が劣化すると(容量抜け)、図3Dに示すように平滑能力が落ちる。このときに、入力負荷電流が増える。また、スイッチング素子3が劣化すると、電解コンデンサ2の劣化と同様に、スイッチング素子3自体の負荷が増えて入力負荷電流が増える。
【0017】
図4は、1次側の入力電圧と入力電流を10msのオーダで観察した波形であり、図4Aは正常状態、図4Bは1次側の電解コンデンサ2が劣化してきたときの波形である。図4Aにおいて、入力電圧が正弦波形を示しているのに対して、入力電流に過渡応答的な波形が見られるのは、電解コンデンサ2の放電によるものである。入力電流は増加していることが観察できる。また、図4Aにおいて入力電圧と入力電流のピーク位置はほぼ一致していたが、図4Bにおいては一致しなくなっている。さらに、出力側においても出力電流、出力電圧の波形に窪みが出ており、平滑化が追いついていない状態を示している。
【0018】
図5は2次側の電解コンデンサ6の劣化による電圧波形の変化を示しており、図4Aは電解コンデンサ6により平滑化された正常波形を(破線は整流回路5の波形)、図4Bは図3Cと同じであり、図4Cは制御回路7によるスイッチング素子3への制御信号である。制御回路7のデューティは、出力低下時に広がるが、出力が定常状態しであれば、ほぼ同じである。電解コンデンサ6が劣化して容量抜けが起きて出力低下し始めると(図4D)、それを補うため、制御信号のONタイムが長くなるが、許容量を超えると、1次側からの電力の供給をさせようとし、スイッチング電源装置周期内でオーバーフローを起こす。また、2次側に定電圧安定化のためにツェナーダイオードを有している場合でも、ツェナーダイオードが劣化すると出力電圧が落ちるので、上記と同様に1次側からの電力の供給をさせようとする。
【0019】
図6は、スイッチング電源装置が故障するまでの入力電圧、入力電流、力率、入力電力、出力電圧、出力電流、出力電力、出力効率の各波形を示している。このスイッチング電源装置の電解コンデンサの部品寿命を10年とするものであるが、これに205度の温度負荷を掛けてエージング試験を行う。予想される寿命は、約7日に短縮される。図6の横軸は時間であり、図6Aから図6Dの波形図に掛けて時間が経過している。各波形図とも9時間分の変化を表しており、1時間は通常使用時の22日分に相当する。従って、各波形図あたり198日相当分の変化となる。図6Aは、エージング開始から初期の9時間経過時点までを示し、図6B、図6Cは、その後の途中経過である。図6Dは、11年半に相当する時間を超えたあたりの波形図であり、この間において1次側の電解コンデンサが破壊されている(容量ほぼ0μF)。
【0020】
図7は、図6の出力効率のみを縦軸を拡大して示した波形図である。波形図の右から左に掛けてエージング下で連続的に14年分の変化を示している。先の図6Dに示した故障は、11年半を経過したときに発生している。出力効率は、時間とともに出力効率が下がる傾向ではなく、寿命が近づくにつれ変動中心から上下にゆらいでおり、かつ変動中心は出力効率が上昇する傾向を示している。
【実施例1】
【0021】
スイッチング電源装置の入出力における電力の比(出力電力/入力電力、出力効率)を求め、電源運用開始時の出力効率からの変動率により、交換時期についての警報出力を発生する実施例を説明する。
【0022】
本実施例においては、スイッチング電源装置100の出力端9側の電力値と入力端側8との入出力電力の比をパラメータとして、図7において揺らぎが発生した時点を捕らえて交換時期についての警報出力を発生する。前提として、スイッチング電源装置100は内部構造をブラックボックスとして扱う。上記したように、スイッチング電源装置は少なくとも直流出力をフィードバックして、スイッチング素子のオンオフをするものである点で共通であるからである。
【0023】
本実施例では、後述する入出力電力の比の基準値からの変動率に基づき、これを超過したかどうかで交換時期を予測するものである。入出力電力の比の揺らぎは上下方向に出ており、必ずしも、最初の揺らぎが図7のように出力効率低下の時点であることは無いため、基準値に対して上下に変動率のリミット(上限リミット、下限リミット)を設定する。図7では、リミットの超過が3年目に起こっている。
【0024】
図8は、電源装置の寿命監視装置を示している。寿命監視装置は、クライアントのサイト(病院30、事務所40等)に設置されているスイッチング電源装置100に対して、計算機50と、入力端8側の入力を計測する計測装置(電流計51、電圧計53)及び出力端9側の出力を計測する計測装置(電流計52、電圧計54)とが配置される。電流計51、電圧計53はスイッチング電源装置100の交流側(入力端8側)に接続されている。電流計51、電圧計53により、電圧×電流×力率で表される電力が求められる。スイッチング電源装置100の直流側(出力端側)には、電圧計51と電流計54が夫々負荷15に並列、直列に設けられている。出力端側は直流であるので、出力電力は電圧×電流である。
【0025】
計算機50は、スイッチング電源装置100の設置サイト30、40において電流計51、52、電圧計53、54からの測定信号を受信する。計算機50は、メモリやCPUを有する汎用の計算機であり、計算機50での処理は情報収集ソフトウェアにより行う。計算機50は、ネットワーク60を介して警報装置70に対して、電源寿命に関する情報を提供する。警報装置70は、予め定められた許容される変動率71を記憶している。
【0026】
図9は、情報収集ソフトウェアのフローである。情報収集ソフトウェアは、初期化されてから数日分の間、可動状態におけるスイッチング電源装置100への入力電力、出力電流、出力電圧を収集してメモリに記憶する(ステップS1)。求めた電力、電流、電圧に基づき、この期間における平均化された入出力電力の比を基準値とする(ステップS2)。
【0027】
その後、この初期データとの比較により、故障予測を行う。サンプリング期間は、1マイクロ秒(ステップS3)として、入出力電圧、電流をサンプリングし(ステップS4)、1秒間隔(ステップS5)で平均化した比を計算する(ステップS6)。そして、求めた比が初期データからどの程度変動したかを、警報装置70に対してネットワークを介してパケット送信する(ステップS7)。
【0028】
一方、警報装置70では、計算機から送られてくるパケットにより現時点の変動率を取得し、予め決めている上限リミット、下限リミットで決められる許容変動率の幅の中に入っているかどうかについて閾値を用いた比較を行い、超えた場合に安全交換時期に達したとして警報を管理者に警告する。この変動率は、監視すべきサイトのスイッチ電源についての故障実績データが積みあがっていれば、そのデータに基づいて許容変動率を定める。一方、監視すべきサイトの電源がブラックボックスである場合は、平均的な電源の故障実績データから許容変動率を定めている。いずれの場合も変動率という統一したパラメータを遠隔監視装置30により収集することにより、スイッチング電源装置によらない管理ができることになる。
【0029】
上記した実施例においては、交流を直流にするスイッチング電源装置について示したが、直流から交流にしまた直流にするDC−DCコンバータに相当する部分を有するスイッチング電源装置、例えばDC−DCコンバータについても適応することができる。
【実施例2】
【0030】
上記実施例においては、図10Aに示すようにスイッチング電源装置の入出力における電力の比(出力効率)を求め、電源運用開始時の入出力電力の比とからの変動率が許容変動率を超えたときに安全交換時期に達したとして警報出力を発生させた。この方法では、許容変動率を超えても、まだ使用寿命に余裕がある。第2の実施例では、より製品寿命に近い時期で交換・保守等をすることを可能にする。
【0031】
図10Bは、第2の実施例において検出する事象を示す図である。スイッチング電源装置の寿命が終盤に近づくと、入出力電力の比(出力効率)が揺らぐ。そして、その揺らぎは終盤に近づくにつれ、周期が短くなる。本実施例では、この事象を利用して入出力電力の比(出力効率)の許容変動範囲を固定的に設定し、その中央値を入出力電力の変化に沿うようにしている。そして、一定周期間における許容範囲を超える発生頻度により故障を予測する。
【0032】
本実施例において検出する事象は、以下の理由によって起こると考えられる。電解コンデンサ2、6のいずれかで劣化が起こりはじめると、先に図3〜5で説明した通り1次側の電流量が増加する。電流量の増加に伴いスイッチング素子3のオンオフによるスイッチング電源装置ノイズが発生しやすくなる。スイッチング電源装置ノイズの影響により、出力電圧が不安定になり、出力電圧レベルがスイッチング電源装置ノイズの影響により上がったり下がったりする。このとき、出力効率に長い周期(1年単位)の揺らぎが発生する。電解コンデンサ2、6の劣化が進むと、安定域の出力効率の変動幅を超えるポイントが増えてくると考えられる。
【0033】
このように、時間経過により出力効率は良くなったり悪くなったりするが、振れ幅は大きくなってきている。実施例1のように基準値とこれに対する許容範囲(上限、下限リミット)を設定し、リミット超過により予想すれば、ある程度の寿命予測は可能である。しかしながら、故障発生までは、実際にはまだ余裕があるのであって、実施例2ではさらに寿命を精度良く推定する。
【0034】
図7において示したように、実際に観測された出力効率の揺らぎは、図10Bに示した波形とは異なり、必ずしも下降傾向にあるわけではない。一方、故障発生に近づくと出力効率は変動中心から上下に揺らぐが、故障発生に近づくにつれ、変動中心の上下に設定した変動範囲(変動上限、変動下限)を超える頻度が増加してくる。図7の観測例では、リミット超過後は、出力効率が変動中心に1年相当の期間以内に戻っていたが、寿命が尽きる直前では1年相当の期間を超えて変動範囲を超えている期間が存在している。そして、寿命を迎えるに従って、変動範囲を超えている頻度が多くなり、超えていない場合が少なくなっている。そこで、実施例2においては、この事象を捕らえて故障予測を行う。例えば、変動範囲を超えることが頻繁に発生するようになったら故障が近いと判断する。図7に示される通り、出力変動の揺らぎの周期は数年に渡るものであるため、変動中心を求めるには、少なくとも前後数年分(図7の例では3年分)の出力変動のデータが必要である。頻度を求めるに当っても数年分の期間で、出力効率が変動範囲を超えているかをみる必要がある。
【0035】
図11は、実施例2の情報収集ソフトウェアのフローを示すものである。本実施例を実現するハードウェアの構成は、図8に示した実施例1の構成と同じであり、実施例2のソフトウェアは計算機50に実装される。
ステップS11において、変動範囲を超えた出力効率の発生を計数するタイムスパンを設定する。例えば、過去3年間をタイムスパンとすると、この間の発生回数を「変動範囲を超えた出力効率の発生頻度」とする。
ステップS12において、可動状態におけるスイッチング電源装置11への入力電力、出力電流、出力電圧をサンプリング収集する。
ステップ13において、入出力電力の比(出力効率)を求める。
出力効率は、
=出力電力/入力電力
=出力電圧×出力電流/(入力電圧×入力電圧×力率)
である。
ステップS14において、求めた出力効率を時間軸に従って計算機50のメモリに蓄積してゆく。
【0036】
ステップS15において、出力効率の変動中心を計算する。求める変動中心は、現時点のものではなく、過去の時点のものである(例えば、1年半前)。変動中心の計算は、当該過去の時点の前後(例えば、3年)に渡たる出力効率のデータに基づいて決定される。変動中心が求まると、変動の上限値、下限値を決める。この上限値、下限値は、スイッチング電源装置100の初期の状態における、出力効率の変動幅に若干の余裕を持たせて大きな範囲に設定される。
【0037】
スイッチング電源装置100の初期の状態における、出力効率の変動幅について説明する。スイッチング電源装置100の受電の環境、負荷の環境により出力効率が変動する。受電の環境については、電力会社の発電計画や、スイッチング電源装置100の設置サイトの近隣の電力需要により影響を受けている。また、スイッチング電源装置100の負荷は使用により変化する。これらの変化は、1週間の1つのサイクルとして繰り返すのが普通である。出力効率の変動幅は、スイッチング電源装置100の使用当初の1〜数週間分の出力効率の変動を元に、その変動幅を求めることができる。本実施例では、スイッチング電源装置100の初期の状態における1週間分の出力効率を計測して、変動幅を求める。この期間における出力効率の上限値と下限値とを求め、スイッチング電源装置の初期状態における変動中心を中心に対して、上限値と下限値の差を変動幅とする。
【0038】
ステップS16において、変動範囲外となる頻度を計算する。これは、ステップS15において変動中心を求めた時点以前の、ステップS11で設定されたタイムスパンの間における過去の出力効率データに対して、各時点の変動中心に対して変動範囲を超えているデータがいくつ発生しているかを発生頻度として計算する。ステップS17において、求めた頻度を警報装置70にパケットで送信する。
【0039】
一方、警報装置70では、計算機50から送られてくるパケットにより発生頻度を取得し、予め許容値として決めている発生頻度72を用いた比較を行い、これに達したと判断した場合に故障が近々起こると予想して警報を管理者に警告する。
【0040】
本実施例においては、図7に示すように出力効率が変動範囲を超えた状態が頻度高く発生(一年超過する事態が短い期間で繰返し起こる)していることを検知すると、故障が近いことを予測する。但し、変動中心を求めるのに必要なデータが揃うのを待つために、長期間必要なため、この時間遅れを考慮して頻度の許容値を決めておく必要がある。
【0041】
第2の実施例によれば、図10Bに示したように、出力効率を超過する頻度が高くなったことを検出すると故障が近いと判断するため、実際に故障が発生する時期に近づけた予想をすることができる。
【符号の説明】
【0042】
100…スイッチング電源装置
2、6…電解コンデンサ
3…スイッチング素子
4…トランス
5…整流用回路
7…制御回路
8…入力端
9…出力端
50…計算機
51、52…電流計
53、54…電圧計
70…警報装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠方監視制御装置等に適用する電源装置の寿命監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠方監視制御装置に適用する電源装置として、例えば特許文献1,2に示されるように、電源装置内に実装している電解コンデンサの特性を計測し、容量が設定値より下回っていれば遠隔地の制御装置に警報出力を送る装置が知られている。電解コンデンサは電源に通常使用されている部品であり、かつ電源故障の要因となっている可能性が高いので電解コンデンサを対象とした監視が行われている。
【0003】
また、電解コンデンサ以外の光アイソレータを対象とした故障監視技術として、特許文献3に示されるように、スイッチング電源装置において、電源出力側から電流を注入し、帰還回路の経路を通じてリンギング雑音を発生させて、これにより挙動を監視する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−151722号公報
【特許文献2】特開2000−350456号公報
【特許文献3】特表2009−544273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング電源装置は、スイッチング素子を用いた電源装置であり、その出力電圧制御は、電源出力と並列に接続した出力検出回路により、出力を検出してこれをフィードバックして、スイッチング素子へのデューティ・サイクルを制御している。
この制御によりスイッチング電源装置の出力は安定化しているため、電源出力を外部から見ていても電源の劣化状況が不明である。従って、上記特許文献に示されるように電源内部に電源故障を監視する回路を作り込むことにより劣化の検出が行われる。尚、特許文献3の光アイソレータは、フィードバックの経路に設けられるものである。
【0006】
しかしながら、既に設置されている電源に、劣化検出用の回路を後から組み込むことは当該電源のメーカでもない限り困難である。また、劣化検出の機能が備わった電源であっても、電源劣化の検出のやり方が電源メーカにより異なると病院施設、娯楽施設など市井に展開された既設の電源の監視を集中して行うことが出来ない。例えば病院設備に設置される電源に関しても数多くのメーカが存在し、統一的に管理することが出来ない。このような既存の電源についても、電源の交換時期が事前に分かる劣化検出が要望されている。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、スイッチング電源装置のメーカや方式によらず、電源の寿命が近づいていることを統一的に監視することができる寿命監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、スイッチング電源装置の寿命監視装置において、前記スイッチング電源装置の入力端に入力される電圧と電流を測定する計測装置と、前記スイッチング電源装置の出力端から出力される電圧と電流を計測する計測装置と、各計測装置により計測値から入出力における電力の比を計算し、前記求めた比と前記スイッチング電源装置の運用開始時点の比との変動率を計算する計算機と、前記変動率が予め定めた変化率よりも変化しているときに警報出力を発生させる警報装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、電解コンデンサを含むスイッチング電源装置の寿命監視装置において、
前記スイッチング電源装置の入力端に入力される電圧と電流を測定する計測装置と、前記スイッチング電源装置の出力端から出力される電圧と電流を計測する計測装置と、各計測装置により計測値から入出力における電力の比を計算して蓄積し、蓄積された入出力における電力の比から過去のある時点の電力の比の変動中心を求め、当該時点以前の電力の比のうち予め定められた変動範囲内を超えているものがいくつ発生しているかを示す発生頻度を計算する計算機と、前記頻度が予め定めた頻度に達しているときに警報出力を発生させる警報装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スイッチング電源装置の入出力の電力比を計算し、この比により警報を出力するようにしており、スイッチング電源装置の方式によらず電源の故障予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スイッチング電源装置の動作を説明する図である。
【図2】制御信号を説明する図である。
【図3】1次側の電解コンデンサの劣化による電圧波形を示す図である。
【図4】1次側の入力電圧と入力電流波形を示す図である。
【図5】2次側の電解コンデンサの劣化による電圧波形を示す図である。
【図6】スイッチング電源装置が故障するまでの各波形を示す図である。
【図7】スイッチング電源装置が故障するまでの出力効率を示す図である。
【図8】寿命監視装置を示す図である。
【図9】情報収集ソフトウェアのフロー図である。
【図10】検出事象を説明する図である。
【図11】情報収集ソフトウェアのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
入力を交流電源とするスイッチング電源装置の一般的な動作について説明する。図1において、交流電源からスイッチング電源装置100の入力端8に入力された交流は、整流ブリッジ1で整流されて一次側の電解コンデンサ2で平滑化される。スイッチング素子3がスイッチング電源装置することによって交流に返還し、トランス4を介して二次側に伝達する。二次側では、整流回路5がこれを整流し、さらに二次側の電解コンデンサ6で平滑化して直流を出力する。
出力端9に出力された直流は、制御回路7により検出され、出力電圧が一定に保たれるようスイッチング素子3へのデューティ・サイクルを制御する。
【0013】
図示した例は、一般的なシングルフォワード方式のスイッチング電源装置である。スイッチング電源装置としては他にも、フライバック方式、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、フルブリッジ方式などの種類が存在する。いずれも、交流から直流した後の処理、すなわち直流から交流にしまた直流にするDC−DCコンバータに相当する部分の方式によって区別される。また、制御の方式としては、定電流制御の電源や、定電圧制御、定電力制御のものがある。基本的、いずれの方式であっても、出力電流や電圧あるいは、これらの積がフィードバックされて、スイッチング素子のデューティ・サイクルを制御する点では同じである。尚、スイッチング素子3をトランス4の二次側に配置する例もある。
【0014】
このようなスイッチング電源装置においては、例えば電解コンデンサ2、6等のキャパシタンスの劣化が生じたとしても、制御回路7の動作により、出力端9側は安定化されその変動は見えなくなる。又、スイッチング電源装置においてはチョークコイル(図示せず)やトランス等のインダクタンスも用いられており、これらの劣化による変動も見えない。しかしながら、スイッチング電源装置の劣化がさらに進むと、制御回路7のフィードバックでは出力端9側を安定化できない事態になったり、或いは出力電圧が失われ故障に至る。一方、大きな負荷が加わると、スイッチング電源装置の制御回路7では出力端9側を安定に保てなくなることもあり、単に電源の出力端9側の安定(或いは、定電流、定電力)を保てなくなったからといって、スイッチング電源装置が劣化したという判断はできない。
【0015】
制御回路7に着目すると、その原理は図2に示すように出力電圧(或いは出力電流、若しくは積)を検出値10と、基準となる三角波11とを比較し、三角波11が高い期間スイッチング素子3をオンさせ制御信号12を発生させている。
【0016】
図3は1次側の電解コンデンサ2の劣化による電圧波形の変化を示しており、図3AはAC入力波形を、図3Bは整流ブリッジ1による全波整流した波形を、図3Cは電解コンデンサ2により平滑化された正常波形を示している。電解コンデンサ2が劣化すると(容量抜け)、図3Dに示すように平滑能力が落ちる。このときに、入力負荷電流が増える。また、スイッチング素子3が劣化すると、電解コンデンサ2の劣化と同様に、スイッチング素子3自体の負荷が増えて入力負荷電流が増える。
【0017】
図4は、1次側の入力電圧と入力電流を10msのオーダで観察した波形であり、図4Aは正常状態、図4Bは1次側の電解コンデンサ2が劣化してきたときの波形である。図4Aにおいて、入力電圧が正弦波形を示しているのに対して、入力電流に過渡応答的な波形が見られるのは、電解コンデンサ2の放電によるものである。入力電流は増加していることが観察できる。また、図4Aにおいて入力電圧と入力電流のピーク位置はほぼ一致していたが、図4Bにおいては一致しなくなっている。さらに、出力側においても出力電流、出力電圧の波形に窪みが出ており、平滑化が追いついていない状態を示している。
【0018】
図5は2次側の電解コンデンサ6の劣化による電圧波形の変化を示しており、図4Aは電解コンデンサ6により平滑化された正常波形を(破線は整流回路5の波形)、図4Bは図3Cと同じであり、図4Cは制御回路7によるスイッチング素子3への制御信号である。制御回路7のデューティは、出力低下時に広がるが、出力が定常状態しであれば、ほぼ同じである。電解コンデンサ6が劣化して容量抜けが起きて出力低下し始めると(図4D)、それを補うため、制御信号のONタイムが長くなるが、許容量を超えると、1次側からの電力の供給をさせようとし、スイッチング電源装置周期内でオーバーフローを起こす。また、2次側に定電圧安定化のためにツェナーダイオードを有している場合でも、ツェナーダイオードが劣化すると出力電圧が落ちるので、上記と同様に1次側からの電力の供給をさせようとする。
【0019】
図6は、スイッチング電源装置が故障するまでの入力電圧、入力電流、力率、入力電力、出力電圧、出力電流、出力電力、出力効率の各波形を示している。このスイッチング電源装置の電解コンデンサの部品寿命を10年とするものであるが、これに205度の温度負荷を掛けてエージング試験を行う。予想される寿命は、約7日に短縮される。図6の横軸は時間であり、図6Aから図6Dの波形図に掛けて時間が経過している。各波形図とも9時間分の変化を表しており、1時間は通常使用時の22日分に相当する。従って、各波形図あたり198日相当分の変化となる。図6Aは、エージング開始から初期の9時間経過時点までを示し、図6B、図6Cは、その後の途中経過である。図6Dは、11年半に相当する時間を超えたあたりの波形図であり、この間において1次側の電解コンデンサが破壊されている(容量ほぼ0μF)。
【0020】
図7は、図6の出力効率のみを縦軸を拡大して示した波形図である。波形図の右から左に掛けてエージング下で連続的に14年分の変化を示している。先の図6Dに示した故障は、11年半を経過したときに発生している。出力効率は、時間とともに出力効率が下がる傾向ではなく、寿命が近づくにつれ変動中心から上下にゆらいでおり、かつ変動中心は出力効率が上昇する傾向を示している。
【実施例1】
【0021】
スイッチング電源装置の入出力における電力の比(出力電力/入力電力、出力効率)を求め、電源運用開始時の出力効率からの変動率により、交換時期についての警報出力を発生する実施例を説明する。
【0022】
本実施例においては、スイッチング電源装置100の出力端9側の電力値と入力端側8との入出力電力の比をパラメータとして、図7において揺らぎが発生した時点を捕らえて交換時期についての警報出力を発生する。前提として、スイッチング電源装置100は内部構造をブラックボックスとして扱う。上記したように、スイッチング電源装置は少なくとも直流出力をフィードバックして、スイッチング素子のオンオフをするものである点で共通であるからである。
【0023】
本実施例では、後述する入出力電力の比の基準値からの変動率に基づき、これを超過したかどうかで交換時期を予測するものである。入出力電力の比の揺らぎは上下方向に出ており、必ずしも、最初の揺らぎが図7のように出力効率低下の時点であることは無いため、基準値に対して上下に変動率のリミット(上限リミット、下限リミット)を設定する。図7では、リミットの超過が3年目に起こっている。
【0024】
図8は、電源装置の寿命監視装置を示している。寿命監視装置は、クライアントのサイト(病院30、事務所40等)に設置されているスイッチング電源装置100に対して、計算機50と、入力端8側の入力を計測する計測装置(電流計51、電圧計53)及び出力端9側の出力を計測する計測装置(電流計52、電圧計54)とが配置される。電流計51、電圧計53はスイッチング電源装置100の交流側(入力端8側)に接続されている。電流計51、電圧計53により、電圧×電流×力率で表される電力が求められる。スイッチング電源装置100の直流側(出力端側)には、電圧計51と電流計54が夫々負荷15に並列、直列に設けられている。出力端側は直流であるので、出力電力は電圧×電流である。
【0025】
計算機50は、スイッチング電源装置100の設置サイト30、40において電流計51、52、電圧計53、54からの測定信号を受信する。計算機50は、メモリやCPUを有する汎用の計算機であり、計算機50での処理は情報収集ソフトウェアにより行う。計算機50は、ネットワーク60を介して警報装置70に対して、電源寿命に関する情報を提供する。警報装置70は、予め定められた許容される変動率71を記憶している。
【0026】
図9は、情報収集ソフトウェアのフローである。情報収集ソフトウェアは、初期化されてから数日分の間、可動状態におけるスイッチング電源装置100への入力電力、出力電流、出力電圧を収集してメモリに記憶する(ステップS1)。求めた電力、電流、電圧に基づき、この期間における平均化された入出力電力の比を基準値とする(ステップS2)。
【0027】
その後、この初期データとの比較により、故障予測を行う。サンプリング期間は、1マイクロ秒(ステップS3)として、入出力電圧、電流をサンプリングし(ステップS4)、1秒間隔(ステップS5)で平均化した比を計算する(ステップS6)。そして、求めた比が初期データからどの程度変動したかを、警報装置70に対してネットワークを介してパケット送信する(ステップS7)。
【0028】
一方、警報装置70では、計算機から送られてくるパケットにより現時点の変動率を取得し、予め決めている上限リミット、下限リミットで決められる許容変動率の幅の中に入っているかどうかについて閾値を用いた比較を行い、超えた場合に安全交換時期に達したとして警報を管理者に警告する。この変動率は、監視すべきサイトのスイッチ電源についての故障実績データが積みあがっていれば、そのデータに基づいて許容変動率を定める。一方、監視すべきサイトの電源がブラックボックスである場合は、平均的な電源の故障実績データから許容変動率を定めている。いずれの場合も変動率という統一したパラメータを遠隔監視装置30により収集することにより、スイッチング電源装置によらない管理ができることになる。
【0029】
上記した実施例においては、交流を直流にするスイッチング電源装置について示したが、直流から交流にしまた直流にするDC−DCコンバータに相当する部分を有するスイッチング電源装置、例えばDC−DCコンバータについても適応することができる。
【実施例2】
【0030】
上記実施例においては、図10Aに示すようにスイッチング電源装置の入出力における電力の比(出力効率)を求め、電源運用開始時の入出力電力の比とからの変動率が許容変動率を超えたときに安全交換時期に達したとして警報出力を発生させた。この方法では、許容変動率を超えても、まだ使用寿命に余裕がある。第2の実施例では、より製品寿命に近い時期で交換・保守等をすることを可能にする。
【0031】
図10Bは、第2の実施例において検出する事象を示す図である。スイッチング電源装置の寿命が終盤に近づくと、入出力電力の比(出力効率)が揺らぐ。そして、その揺らぎは終盤に近づくにつれ、周期が短くなる。本実施例では、この事象を利用して入出力電力の比(出力効率)の許容変動範囲を固定的に設定し、その中央値を入出力電力の変化に沿うようにしている。そして、一定周期間における許容範囲を超える発生頻度により故障を予測する。
【0032】
本実施例において検出する事象は、以下の理由によって起こると考えられる。電解コンデンサ2、6のいずれかで劣化が起こりはじめると、先に図3〜5で説明した通り1次側の電流量が増加する。電流量の増加に伴いスイッチング素子3のオンオフによるスイッチング電源装置ノイズが発生しやすくなる。スイッチング電源装置ノイズの影響により、出力電圧が不安定になり、出力電圧レベルがスイッチング電源装置ノイズの影響により上がったり下がったりする。このとき、出力効率に長い周期(1年単位)の揺らぎが発生する。電解コンデンサ2、6の劣化が進むと、安定域の出力効率の変動幅を超えるポイントが増えてくると考えられる。
【0033】
このように、時間経過により出力効率は良くなったり悪くなったりするが、振れ幅は大きくなってきている。実施例1のように基準値とこれに対する許容範囲(上限、下限リミット)を設定し、リミット超過により予想すれば、ある程度の寿命予測は可能である。しかしながら、故障発生までは、実際にはまだ余裕があるのであって、実施例2ではさらに寿命を精度良く推定する。
【0034】
図7において示したように、実際に観測された出力効率の揺らぎは、図10Bに示した波形とは異なり、必ずしも下降傾向にあるわけではない。一方、故障発生に近づくと出力効率は変動中心から上下に揺らぐが、故障発生に近づくにつれ、変動中心の上下に設定した変動範囲(変動上限、変動下限)を超える頻度が増加してくる。図7の観測例では、リミット超過後は、出力効率が変動中心に1年相当の期間以内に戻っていたが、寿命が尽きる直前では1年相当の期間を超えて変動範囲を超えている期間が存在している。そして、寿命を迎えるに従って、変動範囲を超えている頻度が多くなり、超えていない場合が少なくなっている。そこで、実施例2においては、この事象を捕らえて故障予測を行う。例えば、変動範囲を超えることが頻繁に発生するようになったら故障が近いと判断する。図7に示される通り、出力変動の揺らぎの周期は数年に渡るものであるため、変動中心を求めるには、少なくとも前後数年分(図7の例では3年分)の出力変動のデータが必要である。頻度を求めるに当っても数年分の期間で、出力効率が変動範囲を超えているかをみる必要がある。
【0035】
図11は、実施例2の情報収集ソフトウェアのフローを示すものである。本実施例を実現するハードウェアの構成は、図8に示した実施例1の構成と同じであり、実施例2のソフトウェアは計算機50に実装される。
ステップS11において、変動範囲を超えた出力効率の発生を計数するタイムスパンを設定する。例えば、過去3年間をタイムスパンとすると、この間の発生回数を「変動範囲を超えた出力効率の発生頻度」とする。
ステップS12において、可動状態におけるスイッチング電源装置11への入力電力、出力電流、出力電圧をサンプリング収集する。
ステップ13において、入出力電力の比(出力効率)を求める。
出力効率は、
=出力電力/入力電力
=出力電圧×出力電流/(入力電圧×入力電圧×力率)
である。
ステップS14において、求めた出力効率を時間軸に従って計算機50のメモリに蓄積してゆく。
【0036】
ステップS15において、出力効率の変動中心を計算する。求める変動中心は、現時点のものではなく、過去の時点のものである(例えば、1年半前)。変動中心の計算は、当該過去の時点の前後(例えば、3年)に渡たる出力効率のデータに基づいて決定される。変動中心が求まると、変動の上限値、下限値を決める。この上限値、下限値は、スイッチング電源装置100の初期の状態における、出力効率の変動幅に若干の余裕を持たせて大きな範囲に設定される。
【0037】
スイッチング電源装置100の初期の状態における、出力効率の変動幅について説明する。スイッチング電源装置100の受電の環境、負荷の環境により出力効率が変動する。受電の環境については、電力会社の発電計画や、スイッチング電源装置100の設置サイトの近隣の電力需要により影響を受けている。また、スイッチング電源装置100の負荷は使用により変化する。これらの変化は、1週間の1つのサイクルとして繰り返すのが普通である。出力効率の変動幅は、スイッチング電源装置100の使用当初の1〜数週間分の出力効率の変動を元に、その変動幅を求めることができる。本実施例では、スイッチング電源装置100の初期の状態における1週間分の出力効率を計測して、変動幅を求める。この期間における出力効率の上限値と下限値とを求め、スイッチング電源装置の初期状態における変動中心を中心に対して、上限値と下限値の差を変動幅とする。
【0038】
ステップS16において、変動範囲外となる頻度を計算する。これは、ステップS15において変動中心を求めた時点以前の、ステップS11で設定されたタイムスパンの間における過去の出力効率データに対して、各時点の変動中心に対して変動範囲を超えているデータがいくつ発生しているかを発生頻度として計算する。ステップS17において、求めた頻度を警報装置70にパケットで送信する。
【0039】
一方、警報装置70では、計算機50から送られてくるパケットにより発生頻度を取得し、予め許容値として決めている発生頻度72を用いた比較を行い、これに達したと判断した場合に故障が近々起こると予想して警報を管理者に警告する。
【0040】
本実施例においては、図7に示すように出力効率が変動範囲を超えた状態が頻度高く発生(一年超過する事態が短い期間で繰返し起こる)していることを検知すると、故障が近いことを予測する。但し、変動中心を求めるのに必要なデータが揃うのを待つために、長期間必要なため、この時間遅れを考慮して頻度の許容値を決めておく必要がある。
【0041】
第2の実施例によれば、図10Bに示したように、出力効率を超過する頻度が高くなったことを検出すると故障が近いと判断するため、実際に故障が発生する時期に近づけた予想をすることができる。
【符号の説明】
【0042】
100…スイッチング電源装置
2、6…電解コンデンサ
3…スイッチング素子
4…トランス
5…整流用回路
7…制御回路
8…入力端
9…出力端
50…計算機
51、52…電流計
53、54…電圧計
70…警報装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサを含むスイッチング電源装置の寿命監視装置において、
前記スイッチング電源装置の入力端に入力される電圧と電流を測定する計測装置と、
前記スイッチング電源装置の出力端から出力される電圧と電流を計測する計測装置と、
各計測装置により計測値から入出力における電力の比を計算し、前記求めた比と前記スイッチング電源装置の運用開始時点の比との変動率を計算する計算機と、
前記変動率が予め定めた変化率よりも変化しているときに警報出力を発生させる警報装置とを備えたことを特徴とする寿命監視装置。
【請求項2】
請求項1の寿命監視装置において、前記計算機はネットワークを通じて、前記求めた変動率を前記警報装置へ送ることを特徴とする寿命監視装置。
【請求項3】
電解コンデンサを含むスイッチング電源装置の寿命監視装置において、
前記スイッチング電源装置の入力端に入力される電圧と電流を測定する計測装置と、
前記スイッチング電源装置の出力端から出力される電圧と電流を計測する計測装置と、
各計測装置により計測値から入出力における電力の比を計算して蓄積し、蓄積された入出力における電力の比から過去のある時点の電力の比の変動中心を求め、当該時点以前の電力の比のうち予め定められた変動範囲内を超えているものがいくつ発生しているかを示す発生頻度を計算する計算機と、
前記頻度が予め定めた頻度に達しているときに警報出力を発生させる警報装置とを備えたことを特徴とする寿命監視装置。
【請求項4】
請求項2の寿命監視装置において、前記変動範囲はスイッチング電源装置の初期状態における変動中心を中心とした、当該スイッチング電源装置の初期状態において取得された電力の比の上限値と下限値との差に相当する変動幅よりも大きい範囲であることを特徴とする寿命監視装置。
【請求項1】
電解コンデンサを含むスイッチング電源装置の寿命監視装置において、
前記スイッチング電源装置の入力端に入力される電圧と電流を測定する計測装置と、
前記スイッチング電源装置の出力端から出力される電圧と電流を計測する計測装置と、
各計測装置により計測値から入出力における電力の比を計算し、前記求めた比と前記スイッチング電源装置の運用開始時点の比との変動率を計算する計算機と、
前記変動率が予め定めた変化率よりも変化しているときに警報出力を発生させる警報装置とを備えたことを特徴とする寿命監視装置。
【請求項2】
請求項1の寿命監視装置において、前記計算機はネットワークを通じて、前記求めた変動率を前記警報装置へ送ることを特徴とする寿命監視装置。
【請求項3】
電解コンデンサを含むスイッチング電源装置の寿命監視装置において、
前記スイッチング電源装置の入力端に入力される電圧と電流を測定する計測装置と、
前記スイッチング電源装置の出力端から出力される電圧と電流を計測する計測装置と、
各計測装置により計測値から入出力における電力の比を計算して蓄積し、蓄積された入出力における電力の比から過去のある時点の電力の比の変動中心を求め、当該時点以前の電力の比のうち予め定められた変動範囲内を超えているものがいくつ発生しているかを示す発生頻度を計算する計算機と、
前記頻度が予め定めた頻度に達しているときに警報出力を発生させる警報装置とを備えたことを特徴とする寿命監視装置。
【請求項4】
請求項2の寿命監視装置において、前記変動範囲はスイッチング電源装置の初期状態における変動中心を中心とした、当該スイッチング電源装置の初期状態において取得された電力の比の上限値と下限値との差に相当する変動幅よりも大きい範囲であることを特徴とする寿命監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−39025(P2013−39025A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157164(P2012−157164)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(509300876)株式会社イシオカ (2)
【出願人】(511172014)ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(509300876)株式会社イシオカ (2)
【出願人】(511172014)ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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