説明

電源装置

【課題】スイッチング素子をON制御させている間に生じる共振エネルギーを低減させることができると共に、電源効率を向上させ、温度低減を図ることが可能な電源装置を提供すること。
【解決手段】ON/OFF制御されて交流電圧を発生させるスイッチング素子12と、コア24の外周面にスイッチング素子12に接続された一次巻線21と、この一次巻線21に相互インダクタンスで結合された二次巻線22と、リーケージインダクタンスと二次巻線22の分布容量とにより生じる共振エネルギーを回生する回生巻線23とが巻回されたトランス20とを備えた電源装置10であって、一次巻線21と二次巻線22と回生巻線23とは、互いに疎結合となるように巻回されると共に、回生巻線23は、スイッチング素子12がON制御されているときに共振エネルギーを回生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧を発生させるためのスイッチング素子と、コアの外周面に一次巻線と二次巻線と回生巻線とが巻回されたトランスとを備えた電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電源装置では、トランスの一次側にスイッチング素子が設けられ、このスイッチング素子のON/OFF制御によってトランスの二次側に交流電圧を発生させて出力するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図7(a)に示すように、スイッチング素子1がOFF制御された際に電力を回生する回生巻線4を備えた電源装置も考えられている。
【0004】
この電源装置では、コア2を中心としてその直近の外側に一次巻線3と回生巻線4とが積層巻され、さらにその外側に二次巻線5が巻回された構成(図7(b)参照)や、コア2の直近の外側に一次巻線3と回生巻線4とがバイファイラ巻され、その外側に二次巻線5が巻回された構成となっている。
【特許文献1】特開2005−341709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の従来の電源装置では、トランスのインダクタンス、二次巻線の分布容量、外付けのコンデンサ等によって生じる共振エネルギーが、スイッチング素子がON制御されている間に一次側に流れ、一次巻線を流れる電流に重畳されることで電源効率の低下や、スイッチング素子及びトランス等の温度上昇を引き起こしていた。
【0006】
また、この共振エネルギーの影響により、図8に示すように、スイッチング素子をON制御した際に流れる電流に比較的大きな振動が発生している。なお、ON制御からOFF制御に切り替えた際には、このスイッチング素子に印加される電圧にノイズ電圧Vnが生じている。
【0007】
そこで、この共振エネルギーをスナバ回路等により除去することが考えられているが、このスナバ回路等によって電力消費が行われ、電源効率の向上を図ることが難しかった。
【0008】
さらに、回生巻線4を備えた電源装置では、この回生巻線4によって共振エネルギーの回生を行っているが、大きな効果をあげることができず、電源効率の向上を十分に図ることができなかった。
【0009】
そこで、この発明は、スイッチング素子をON制御させている間に生じる共振エネルギーを低減させることができると共に、電源効率を向上させ、温度低減を図ることが可能な電源装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は、ON/OFF制御されて交流電圧を発生させるスイッチング素子と、コアの外周面に前記スイッチング素子に接続された一次巻線と、この一次巻線に相互インダクタンスで結合された二次巻線と、リーケージインダクタンスと前記二次巻線の分布容量とにより生じる共振エネルギーを回生する回生巻線とが巻回されたトランスとを備えた電源装置であって、前記一次巻線と前記二次巻線と前記回生巻線とは、互いに疎結合となるように巻回されると共に、前記回生巻線は、前記スイッチング素子がON制御されているときに共振エネルギーを回生することを特徴としている。
【0011】
また、この発明では、前記一次巻線と前記回生巻線とは、同一層に巻回され、前記二次巻線は、前記一次巻線及び前記回生巻線の外側層に巻回されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電源装置によれば、スイッチング素子をON制御している間に発生する共振エネルギーを低減させることができると共に、電源効率を向上させ、温度低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の電源装置を説明する。
【0014】
図1に示す電源装置10は、直流電源11に接続されたスイッチング素子12と、一次巻線21、二次巻線22、回生巻線23を有するトランス20とを備えている。
【0015】
スイッチング素子12は、直流電源11とトランス20の一次巻線21の一方の端子との間に接続されている。また、このスイッチング素子12は、図示しない制御ICによってON/OFF制御が行われ、直流電源11からの直流電圧を断続させて交流電圧に変換するようになっている。
【0016】
トランス20は、直流電源11からの電力を昇圧して出力するものであり、図2に示すように、磁性体からなるほぼU字状のコア24のコア挿入部24aが一次巻線21及び回生巻線23が巻回される一次ボビン25に挿入され、その後この一次ボビン25は二次巻線22が巻回される二次ボビン26に挿入されることにより形成されている。
【0017】
なお、ここでは、一対のコア24,24により一次ボビン25及び二次ボビン26が挟まれるようになっている。
【0018】
この一次ボビン25は、硬質プラスチック等の絶縁部材により形成され、中空円筒形状の一次巻枠部25aと、この一次巻枠部25aの周面に多数形成された小鍔部25b,・・・と、これら小鍔部25b,・・・と同様に一次巻枠部25aの周面に形成された一対の大鍔部25c,25cとを有している。
【0019】
一次巻枠部25aの内径はコア24のコア挿入部24aの外径とほぼ同じであり、このコア挿入部24aが一次巻枠部25aの内周面に密着するようになっている。また、この一次巻枠部25aの両端は開放している。
【0020】
小鍔部25bは、一次巻枠部25aの径方向に突出したフランジ形状を呈しており、一次巻枠部25aのほぼ全周を取り囲んでいる。
【0021】
大鍔部25cは、小鍔部25bと同様に、一次巻枠部25aの径方向に突出したフランジ形状を呈しており、一次巻枠部25aのほぼ全周を取り囲んでいるが、小鍔部25bよりも突出量が大きくなっている。
【0022】
二次ボビン26は、硬質プラスチック等の絶縁部材により形成され、中空円筒形状の二次巻枠部26aと、この二次巻枠部26aの両端部に多数形成された端子部26b,・・・とを有している。
【0023】
二次巻枠部26aは、一次巻線21及び回生巻線23が巻回された一次ボビン25が挿入可能な内径であり、一次ボビン25が二次巻枠部26aの内周面に密着するようになっている。また、この二次巻枠部26aの両端は開放している。
【0024】
端子部26bは、二次巻枠部26aの軸線方向に対して直交する方向に突出しており、図示しない金属製の端子が取り付けられるようになっている。なお、この図示しない端子には、二次巻枠部26aに巻回された二次巻線22の端部が接続される。
【0025】
一次巻線21は、一端が直流電源11に接続され、他端がスイッチング素子12に接続されている。そして、この一次巻線21は、一次ボビン25の一対の大鍔部25c,25cに沿うと共に、複数の小鍔部25b,・・・の一部に沿って一次巻枠部25aに巻回されている。
【0026】
また、回生巻線23は、トランス20に発生する共振エネルギーを回生するものであり、一端がダイオードD1のアノード側に接続され、他端が直流電源11とスイッチング素子12との間に接続されている。なお、ダイオードD1のカソード側は一次巻線21と直流電源11との間に接続されており、これにより、回生巻線23と一次巻線21とは並列接続されることとなる。
【0027】
そして、この回生巻線23は、複数の小鍔部15b,・・・のうち一次巻線21が巻回されていないものに沿って巻回されている。
【0028】
一方、二次巻線22は、一次巻線21及び回生巻線23と相互インダクタンスで結合されるものであり、ここでは、一端がダイオードD2のアノード側に接続され、他端がアースGに接続されている。
【0029】
ここで、ダイオードD2は、二次巻線22に誘起される交流電圧を整流するものであり、ここでは、カソード側には出力端子Pが接続されている。
【0030】
また、ここでは、出力端子PとアースGとの間には、ダイオードD2の整流電圧を平滑する平滑コンデンサC1が接続されている。
【0031】
そして、この二次巻線22は、二次ボビン26の二次巻枠部26aに巻回されている。
【0032】
なお、二次巻線22とアースGとの間に出力電流検出抵抗を接続したり、ダイオードD2のカソード側と出力端子Pとの間に出力電流制限抵抗を接続したりしてもよい。ここで、出力電流検出抵抗は、二次巻線22と平滑コンデンサC1の接続点と間に配置され、出力電流制限抵抗は、平滑コンデンサC1の接続点と出力端子Pとの間に配置される。
【0033】
次に、この発明の電源装置10の作用について説明する。
【0034】
この電源装置10では、図3に示すように、一次巻線21と回生巻線23とは、コア24の直近の外側の同一層に巻回されている。
【0035】
このとき、一次巻線21は一対の大鍔部25c,25c及び複数の小鍔部25b,・・・の一部に沿って巻回され、回生巻線23は、複数の小鍔部25b,・・・のうち一次巻線21が巻回されていないものに沿って巻回され、両者は疎結合となっている。なお、図3において小鍔部25b,・・・は省略してある。
【0036】
また、二次巻線22は、一次巻線21及び回生巻線23の外側に巻回されて積層されている。これにより、一次巻線21は二次巻線22の長手方向の一部と対向し、回生巻線23も二次巻線22の長手方向の一部と対向することとなる。
【0037】
このように、一次巻線21及び回生巻線23は、いずれも二次巻線22の長手方向全長と対向していない。
【0038】
そのため、一次巻線21と二次巻線22との間、及び、回生巻線23と二次巻線22との間のいずれの相互インダクタンスの結合力が弱くなり、疎結合となっている。
【0039】
そして、このような構成となっているため、図4に示すように、スイッチング素子12がON制御されているときにトランス20に生じる共振エネルギーを回生させることができ、この共振エネルギーのゆれが抑制されて電流の流れをより安定させることができる。
【0040】
また、図5に示す表は、本願発明に係る電源装置10(以下、本発明という)と従来構造の電源装置(以下、従来構造という)とにおいて、入力電圧と電源効率及びスイッチング素子12の温度、トランス20の温度との関係を比較するものである。
【0041】
これによると、直流電源11からの入力電圧が135Vの場合には、本発明では電源効率が90.2%に対し、従来構造では89.4%となっており、電源効率の向上を図ることができた。
【0042】
また、入力電圧が150Vの場合には、本発明では電源効率90.9%であり、従来構造では電源効率89.0%であった。そのため、入力電圧が150Vの場合であっても電源効率の向上を図ることができた。
【0043】
さらに、入力電圧が165Vの場合には、本発明では電源効率90.2%であり、従来構造では電源効率86.0%であった。そのため、入力電圧が165Vの場合であっても電源効率の向上を図ることができ、入力電圧の大きさに関わらず電源効率を向上させることが可能となったことが分かる。
【0044】
なお、入力電圧が大きいほど電源効率の向上率も大きくなっており、入力電圧の大きさに比例して電源効率を向上させることが可能である。
【0045】
一方、スイッチング素子12の温度及びトランス20の温度においても、入力電圧の大きさに関わらず本発明の方が従来構造よりも低温になり、温度低減を図ることが可能となっている(図5参照)。
【0046】
特に、入力電圧が165Vの場合には、スイッチング素子12における本発明と従来構造の温度差が34.4℃であり、トランス20における本発明と従来構造の温度差が27.5℃となり、温度低減率が最も大きくなっている。すなわち、入力電圧が大きいほど温度の低減率も大きくすることができ、入力電圧の大きさに比例して温度低減率を向上させることが可能となっている。
【0047】
このように、本発明に係る電源装置10では、スイッチング素子12がON制御されているときに生じる共振エネルギーを回生する回路方式としたため、この共振エネルギーを抑制することができると共に、電源効率を向上させ、且つ、スイッチング素子12及びトランス20の温度低減を図ることが可能となる。
【0048】
以上、この発明にかかる実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0049】
例えば、上述の実施の形態では、トランス20の二次側の回路が半波整流回路となっているが、これに限らない。
【0050】
図6に示すように、このトランス20の二次側の回路は、半波整流回路を複数接続したもの(図6(a)参照)であってもよいし、チョークインプット回路(平均化整流回路)を複数接続したもの(図6(b)参照)であってもよいし、全波整流回路を複数接続したもの(図6(c)参照)であってもよいし、コッククロフト−ウォルトン回路(ここでは、二倍電圧整流回路となっている)を複数接続したもの(図6(d)参照)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る電源装置の構成を示した回路図である。
【図2】トランスの一次ボビン及び二次ボビンを示した分解斜視図である。
【図3】トランスの断面を示した模式図である。
【図4】本発明に係る電源装置において、スイッチング素子の電流と電圧との関係を示したグラフである。
【図5】本発明に係る電源装置と従来構造の電源装置とにおいて、入力電圧と電源効率及びスイッチング素子の温度、トランスの温度との関係を示した表である。
【図6】本発明に係る電源装置の二次側の回路の他の例を示した回路図であり(a)は半波整流回路を示し、(b)はチョークインプット回路(平均化整流回路)を示し、(c)は全波整流回路を示し、(d)はコッククロフト−ウォルトン回路を示している。
【図7】(a)は従来の電源装置の構成を示した回路図であり、(b)は従来の電源装置におけるトランスの断面を示した模式図である。
【図8】従来の電源装置において、スイッチング素子の電流と電圧との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0052】
10 電源装置
12 スイッチング素子
20 トランス
21 一次巻線
22 二次巻線
23 回生巻線
24 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ON/OFF制御されて交流電圧を発生させるスイッチング素子と、コアの外周面に前記スイッチング素子に接続された一次巻線と、この一次巻線に相互インダクタンスで結合された二次巻線と、リーケージインダクタンスと前記二次巻線の分布容量とにより生じる共振エネルギーを回生する回生巻線とが巻回されたトランスとを備えた電源装置であって、
前記一次巻線と前記二次巻線と前記回生巻線とは、互いに疎結合となるように巻回されると共に、
前記回生巻線は、前記スイッチング素子がON制御されているときに共振エネルギーを回生することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記一次巻線と前記回生巻線とは、同一層に巻回され、前記二次巻線は、前記一次巻線及び前記回生巻線の外側層に巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−100510(P2009−100510A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267848(P2007−267848)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000180450)四変テック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】