説明

電源装置

【課題】スタンバイ状態における消費電力を無くすとともに、スイッチング周波数を可変することができ、また、スイッチング周波数を高く設定した場合においても安定して動作するスイッチングレギュレータ型の電源装置を提供する。
【解決手段】レギュレータIC10は、外部接続用の7個の接続端子と、Pチャンネル型のMOSトランジスタ26、MOS26を制御する内部制御回路15と、内部制御回路15に動作電源を与えるスイッチ回路14とから構成されている。内部制御回路15は、ソフトスタート回路16、基準電圧源17、誤差増幅器18、PWMコンパレータ19、発振回路20、ラッチ回路21、ドライバ22、TSD回路(過熱保護回路)23、過電流保護回路24、定電圧源25、リセット信号発生回路28から構成されている。外部のスイッチ12がオフの場合、スイッチ回路14はオフになり、レギュレータIC10の消費電力は0となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、詳しくはスイッチングレギュレータ型の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、集積回路装置で構成された従来のスイッチングレギュレータ型の電源装置は、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のDC−DCコンバータは、従来の電源装置である1チップの集積回路上に形成される制御回路と、多数の外付け素子とから構成されている。この制御回路は、外部から制御信号CTLが与えられると活性化して、直流電源に接続された出力トランジスタをスイッチング駆動する。そして、出力トランジスタからの出力電流が平滑回路に与えられ、平滑回路からの電圧が出力電圧として出力端子から供給されるようになっている。
【0003】
また、この制御回路は、出力電圧が分圧された分圧電圧と基準電圧とを比較する誤差増幅器と、この誤差増幅器の出力と発振器からの三角波とを比較するPWM比較器と、PWM比較器からの出力信号で前記出力トランジスタを駆動する出力回路を有しており、制御回路が活性化しているときは出力電圧を所定の電圧に一定に維持するように動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−323026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の電源装置によると、外部からの制御信号CTLが与えられずに活性化していないときに、出力トランジスタの駆動を停止して、DC−DCコンバータの出力電圧を発生させないようにする、いわゆるスタンバイ状態にすることはできる。しかし、そのときに制御回路の動作は完全に停止していないため、この制御回路による消費電力が発生し、スタンバイ状態における省電力が十分に図れていないという問題があった。
【0006】
また、ラジオやモニタ等の電子機器の電源装置として搭載された場合には、スイッチング周波数によっては、そのスイッチング周波数に基づくスイッチングノイズが、搭載されているラジオやモニタ等の電子機器の出力に影響を与えてしまう場合がある。このようなときには、スイッチング周波数を連続動作のまま変更することによりスイッチングノイズの影響を回避する方法がある。しかし、上記従来の電源装置によると、出力トランジスタのスイッチング周波数は内部の発振器の固定された発振周波数に基づく周波数であるため、スイッチング周波数を変更することができない。そのため、スイッチングノイズの影響を防ぐためには、スイッチングノイズ源である出力トランジスタ等をシールドする必要があり、使い勝手が悪いという問題があった。
【0007】
また、一般的に、スイッチングレギュレータ型の電源装置を小型化、軽量化するためにはスイッチング周波数を高く設定すると良い。高いスイッチング周波数に対応するために誤差増幅器を周波数特性の良いものにすると、回路の発振の問題が生じるため、誤差増幅器をあまり周波数特性の良いものにすることはできなかった。従って、スイッチング周波数を高く設定することができないので、小型化、軽量化を図ることができないという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑み、スタンバイ状態における消費電力を無くすとともに、スイッチング周波数を可変することができ、また、スイッチング周波数を高く設定した場合においても安定して動作するスイッチングレギュレータ型の電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、入力電圧を変換して平滑回路に与え、該平滑回路からの出力が所定の出力電圧になるように動作するスイッチングレギュレータ型の電源装置において、前記出力が前記所定の出力電圧になるように制御信号をPWM方式で発生する制御回路と、前記制御信号によってスイッチングされることによって、入力電圧を変換して前記平滑回路に与えるスイッチング素子とから成り、前記出力電圧の出力をオン・オフする外部信号に基づいて、前記制御回路を構成する素子への動作電力の供給経路の導通・遮断を切り換えるように構成している。
【0010】
この構成によると、出力停止を指示する外部信号が与えられると、出力電圧が停止するとともに、切換回路が制御回路への動作電源の供給経路を遮断するため制御回路を完全に停止させる。
【0011】
また、本発明の前記制御回路は、前記出力電圧に基づく帰還電圧と基準電圧とを比較して誤差信号を生成する誤差増幅器と、所定の周波数の発振信号を生成する発振回路と、前記発振信号と前記誤差信号とを比較してPWM信号を生成するPWMコンパレータと、前記PWM信号に基づいて前記制御信号を前記スイッチング素子に与えて駆動する駆動回路と、前記制御回路を構成する素子への動作電力の供給経路の前記導通・遮断の切り換えを行う切換回路とから成り、前記電源装置は、更に前記入力電圧が与えられる入力端子と、前記スイッチング素子の一端に接続されて前記平滑回路に与える電圧が出力されるスイッチング端子と、前記帰還電圧が与えられる帰還電圧端子と、前記発振信号の所定の周波数を決定する外部素子が接続される外部素子接続端子と、前記制御回路の自己誤発振を防止するために一端が前記帰還電圧端子に接続された遅れ位相補償回路の他端が接続されるとともに、前記誤差増幅器の出力が接続されるフィードバック端子と、前記外部信号が与えられるスタンバイ端子とを有するように構成されている。
【0012】
この構成によると、スタンバイ端子に出力停止を指示する外部信号が与えられると、切換回路が制御回路への動作電源の供給経路を遮断するので制御回路を完全に停止させる。また、外部素子接続端子に接続する外部素子により発振回路の発振周波数を決定することができる。また、帰還電圧端子とフィードバック端子間に遅れ位相補償回路を接続できる。
【0013】
更に、本発明の前記発振回路は、充放電を行うコンデンサと、前記外部素子の抵抗値によって前記コンデンサの充電電流の値を決定する第1のカレントミラー回路と、前記コンデンサの放電電流の値を決定する第2のカレントミラー回路と、前記コンデンサの両端電圧と、第1及び第2の閾値電圧とを比較して、第2のカレントミラー回路をオン/オフすることよって、前記コンデンサへの充電と放電を切り換える充放電切換回路とから成る。
【0014】
この構成によると、発振回路の出力信号としてのコンデンサの出力電圧は、第1、第2の閾値電圧の差分を振幅とする三角波となる。そして、外部素子接続端子に接続される抵抗素子の抵抗値に基づいて前記コンデンサへの充放電電流値が決定される。
【0015】
また、本発明の前記制御回路は、前記スイッチング素子に流れる電流を検出し、この電流が所定の電流値を超えたときに前記駆動回路を停止させる過電流保護回路を備える。
【0016】
また、本発明の前記制御回路は、更に電源装置内の所定箇所の温度が所定の温度を超えたときに、前記駆動回路を停止させる過熱保護回路を備える。
【0017】
更に、本発明の前記制御回路は、前記出力電圧が起動時に緩やかに立ち上がるように前記誤差増幅器を制御するソフトスタート回路を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、出力停止を指示する外部信号が与えられると、切換回路が制御回路への動作電源の供給経路を遮断することにより、制御回路が完全に停止するため、スタンバイ状態における消費電力を0にすることができる。
【0019】
また、外部素子接続端子に接続する外部素子を変更することにより、発振回路の発振周波数、即ち、スイッチング素子のスイッチング周波数を変更することができ、特定周波数で発生するノイズを回避することが可能になる。
【0020】
更に、スイッチング周波数が高く設定された場合においても、帰還電圧端子とフィードバック端子間に遅れ位相補償回路を接続することによって、回路の発振を防止して、安定した動作を行わせることが可能になる。
【0021】
また、前記スイッチング素子に流れる電流を検出し、この電流が所定の電流値を超えたときに前記駆動回路を停止させる過電流保護回路を備えるので、過電流による破損等を防止することができる。
【0022】
また、前記過電流保護回路の過電流検出コンパレータが、スイッチング素子からの出力電圧が所定の電圧より低くなったときに、スイッチング素子に流れる電流が所定の電流以上になったと判断して駆動回路を停止させるので、他の電流検出器等を用いることなく過電流保護を行うことができる。
【0023】
また、集積回路装置内の所定箇所の温度が所定の温度を超えたときに前記駆動回路を停止させるので、集積回路装置の過熱による破損等を防止することができる。また、起動時に前記出力電圧が緩やかに立ち上がるので、起動時に負荷に突入電流等の過大な電流が流れることを防止することができ、スイッチング素子や負荷の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態のレギュレータIC(電源装置)の電気的構成を示す回路ブロック図である。
【図2】図1に示す発振回路の具体的回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態のレギュレータIC(電源装置)の電気的構成を示す回路ブロック図である。図1において、10は1チップに集積化されたレギュレータICであり、図1は、更に、レギュレータIC10に接続される多数の外付け素子等を示している。
【0026】
レギュレータIC10は、外部接続用の7個の接続端子と、Pチャンネル型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ(以後、MOSと称する)26、MOS26を制御する内部制御回路15と、内部制御回路15に動作電源を与えるスイッチ回路(切換回路)14とから構成されている。また、内部制御回路15は、ソフトスタート回路16、基準電圧源17、誤差増幅器18、PWMコンパレータ19、発振回路20、ラッチ回路21、ドライバ(駆動回路)22、TSD(Thermal
Shut Down)回路(過熱保護回路)23、過電流検出コンパレータ(過電流保護回路)24、定電圧源25、リセット信号発生回路28から構成されている。
【0027】
入力端子1には、入力電圧(例えば、5〜35V)Vinが供給され、入力端子1とグランド間には、平滑用のコンデンサC1とノイズカット用のコンデンサC2とが並列に外付けされている。また、MOS26によりスイッチングされたスイッチング電流が出力されるSW端子(スイッチング端子)2には、平滑回路11が外付けされている。この平滑回路11は、コイルL1と、ダイオード(例えば、ショットキーバリアダイオード)D1と、平滑用のコンデンサ(例えば、電解コンデンサ)C5とから構成され、SW端子2にダイオードD1のカソードとコイルL1の一端とが接続され、コイルL1の他端は出力コンデンサC5の一端に接続され、コンデンサC5の他端とダイオードD1のアノードはグランドに接続されている。
【0028】
また、コイルL1の他端は分圧抵抗R1、R2の直列回路を介してグランドに接続され、分圧抵抗R1、R2の接続ノードはINV端子(帰還電圧端子)5に接続され、INV端子5はレギュレータIC10内部で誤差増幅器18の反転入力端子(−)に接続されている。そして、誤差増幅器18の第1非反転入力端子(+)はソフトスタート回路16に接続され、第2非反転入力端子(+)は基準電圧源17に接続されている。
【0029】
また、誤差増幅器18の出力端子はPWMコンパレータ19の反転入力端子(−)とFB端子(フィードバック端子)3とに接続されている。FB端子3とINV端子5との間には、コンデンサC3と抵抗R3の直列回路から成る遅れ位相補償回路27が外付けされている。
【0030】
PWMコンパレータ19の非反転入力端子(+)は、発振回路20の出力端子に接続されている。そして、PWMコンパレータ19の出力端子は、波形整形用のラッチ回路21を介してドライバ22の入力端子に接続され、ドライバ22の出力端子はMOS26のゲートに接続されている。また、MOS26のソースは入力端子1に接続され、ドレインはSW端子2に接続され、ゲートはプルアップ抵抗R5(例えば、50kΩ)を介して入力端子1に接続されている。
【0031】
また、発振回路20の出力端子は、リセット信号発生回路28を介してラッチ回路21のリセット端子に接続され、ラッチ回路21のセット端子は過電流検出コンパレータ24の出力端子に接続されている。そして、過電流検出コンパレータ24の非反転入力端子(+)には、定電圧源25を介して入力電圧Vinが供給され、過電流検出コンパレータ24の反転入力端子(−)は、MOS26のドレインに接続されている。また、ドライバ22には、TSD回路23からの過熱検出信号が与えられるようになっている。
【0032】
また、レギュレータIC10には、発振回路20に接続されているRT端子(外部素子接続端子)6が設けられており、RT端子6とグランド間には発振回路20の発振周波数を定める抵抗R4とノイズ除去用のコンデンサC4とが並列に外付けされている。尚、GND端子(接地端子)4がグランドに接続されて、レギュレータIC10の基準電位が定められている。
【0033】
また、スイッチ回路14の一端は入力端子1に接続されている。その他端は、図示しないが、内部制御回路15内の各素子の電源として接続されており、EN端子(スタンバイ端子)7から入力される出力停止を指示する外部信号に基づいて、内部制御回路15への電源の供給を断続するようになっている。そして、EN端子7とグランド間には、前記外部信号としての電圧を与えるスイッチ12と定電圧源13との直列回路が外付けされている。
【0034】
次に、このような構成のレギュレータIC10のスタンバイ状態と動作状態との切り換え動作について説明する。入力端子1には、図示しない直流電源からの直流電圧がコンデンサC1で平滑化、及び、コンデンサC2でノイズ除去され、入力電圧Vinとなって供給されている。
【0035】
先ず、外部のスイッチ12がオフ(開状態)の場合、スイッチ回路14はオフ(開状態)になり、内部制御回路15には入力電圧Vinが供給されない状態となる。従って、内部制御回路15が動作しないため、レギュレータIC10はスイッチング動作を行うことができない。即ち、レギュレータIC10は、出力電圧Voとして所定の電圧を発生させない、いわゆるスタンバイ状態となる。このとき、レギュレータIC10の全ての内部回路は完全に停止しているので、レギュレータIC10の消費電力は0となる。尚、このとき、MOS26のゲートはプルアップ抵抗R5により高レベルに固定されている。
【0036】
一方、外部のスイッチ12がオン(閉状態)の場合、定電圧源13からの電圧がスイッチ回路14に与えられ、スイッチ回路14はオン(閉状態)になり、内部制御回路15に入力電圧Vinが供給される。従って、内部制御回路15は動作を開始し、レギュレータIC10はスイッチング動作を開始する。即ち、レギュレータIC10は、出力電圧Voとして所定の電圧を発生させる動作状態となる。
【0037】
次に、この動作状態のレギュレータIC10の各部の動作について以下に説明する。入力電圧Vinは、MOS26のスイッチング動作によりパルス電圧に変換されて平滑回路11に与えられ、MOS26がオン状態のときは、入力端子1からMOS26を介してコイルL1へ電流が流れる。これにより、コイルL1にエネルギーが蓄えられるとともに、コンデンサC5が充電される。一方、MOS26がオフ状態のときは、コイルL1に蓄えられたエネルギーがダイオードD1により環流させられてコンデンサC5が充電される。そして、コンデンサC5から出力される電圧が出力電圧Voとして外部に供給される。
【0038】
また、出力電圧Voが分圧抵抗R1、R2により分圧された帰還電圧Vadjが、INV端子5を介して誤差増幅器18の反転入力端子(−)に入力される。そして、誤差増幅器18は、第1、第2非反転入力端子(+)に入力される電圧のうち、より低レベルの電圧と、反転入力端子(−)に入力される帰還電圧Vadjとの電位差に基づく電圧を出力する。
【0039】
誤差増幅器18の第1非反転入力端子(+)には、ソフトスタート回路16からソフトスタート回路16の動作開始時点、即ち、レギュレータIC10の起動時から時間とともに一定に増加する電圧が与えられる。第2非反転入力端子(+)には、基準電圧源17からの基準電圧Vrefが与えられる。尚、この基準電圧Vrefは、所定の出力電圧Voを分圧抵抗R1、R2で分圧した電圧Vadjに設定される。
【0040】
誤差増幅器18から出力される誤差信号は、PWMコンパレータ19の反転入力端子(−)に入力される。また、PWMコンパレータ19の非反転入力端子(+)には、発振回路20から一定周波数の三角波信号Voscが与えられる。そして、このPWMコンパレータ19は、反転入力端子(−)の電圧と非反転入力端子(+)の電圧とを比較し、非反転入力端子(+)電圧が反転入力端子(−)電圧より低い場合はL(Low)レベル、非反転入力端子(+)電圧が反転入力端子(−)電圧より高くなればH(High)レベルのPWM信号をラッチ回路21に出力する。
【0041】
ラッチ回路21は、一旦、HレベルのPWM信号が入力されると出力をラッチし、Hレベルの出力信号をドライバ22に出力する。そして、発振回路20から出力される三角波信号Voscに基づいてリセット信号発生回路28で生成された三角波信号Voscと同じ一定周波数のリセット信号がリセット端子に入力されると、ラッチを解除し出力をLレベルにする。このようにして、PWMコンパレータ19からのPWM信号が波形整形されてドライバ22に与えられる。尚、リセット信号発生回路28は、発振回路20から出力される三角波信号Voscと基準電圧源28aからの基準電圧とをコンパレータ28bで比較することにより、前記リセット信号を生成している。
【0042】
ドライバ22は、ラッチ回路21からの出力信号をバッファリングした出力信号をMOS26のゲートに出力し、MOS26を駆動する。即ち、ラッチ回路21を介したPWM信号が、HレベルのときはMOS26をオフさせ、LレベルのときはMOS26をオンさせる。従って、ドライバ22の出力信号は、発振回路20の発振周波数と同一周波数のパルス信号となり、そのデューティは誤差増幅器18からの誤差信号に基づいて決定される。即ち、出力電圧Voが所定の電圧より上昇するほど、Hレベルとなる時間、即ち、MOS26がオフとなる時間が長くなり、逆に、出力電圧Voが所定の電圧より下降するほど、Lレベルとなる時間、即ち、MOS26がオンとなる時間が長くなる。
【0043】
このようにして、帰還電圧Vadjと基準電圧Vrefとが一致するようにPWM信号のデューティが調整されるので、出力電圧Voは所定の電圧に安定的に維持される。但し、起動時において、ソフトスタート回路16からの電圧が基準電圧Vrefを超えるまでの間は、出力電圧Voがソフトスタート回路16からの電圧の上昇に伴って緩やかに上昇する、いわゆるソフトスタート動作を行うようになっている。これにより、出力電圧Voが供給される負荷に起動時に過大な突入電流が流れることを防ぐことができる。
【0044】
また、MOS26を流れる電流が増大して、レギュレータIC10が過熱する場合がある。このとき、TSD回路26は、レギュレータIC10の所定箇所の温度が所定の温度以上になったことを検知すると、過熱検出信号をドライバ22に与える。この過熱検出信号が与えられたドライバ22は出力を停止してMOS26をオフにする。このようにして、レギュレータIC10が所定の温度以上に上昇することを防止して過熱保護を図っている。
【0045】
また、出力電圧Voを負荷に供給するラインに短絡等が発生すると、MOS26等に過電流が流れてMOS26等が破損してしまうおそれがある。MOS26に電流が流れると、MOS26のオン抵抗と流れる電流とを乗算した電圧降下がMOS26のソース−ドレイン間に発生する。従って、MOS26に流れる電流が所定の電流を超えたとき、MOS26のソース−ドレイン間の電圧降下は所定の値より大きくなる。
【0046】
過電流検出コンパレータ24は、MOS26のドレイン電圧が、入力電圧Vinから定電圧源25の電圧を差し引いた所定の電圧よりも低くなると、Hレベルのセット信号をラッチ回路21のセット端子に与えるので、ラッチ回路21の出力はHレベルにセットされ、ドライバ22はMOS26をオフさせる。即ち、MOS26に流れる電流が所定の電流を超えたとき、MOS26のドレイン電圧は所定の電圧より小さくなるので、このときにMOS26をオフにすることにより、レギュレータIC10の過電流保護を図っている。尚、セット信号は、リセット信号発生回路28からの一定周期で発生するリセット信号により解除される。
【0047】
また、レギュレータIC10をラジオやモニタ等の電子機器に制御用電源として組み込んだ場合、MOS26のスイッチングにより発生する特定周波数(高調波成分を含む)のスイッチングノイズが、出力電圧Voを供給するラジオやモニタ等の出力に影響を及ぼす場合がある。例えば、ラジオの出力音声にノイズ音が混入したり、モニタの画面にちらつきが生じたりというような影響を及ぼす場合がある。このようなときに、RT端子6に接続する抵抗R4の抵抗値を変更することにより、スイッチング周波数を、影響を与えない周波数に変更してスイッチングノイズの影響を回避することができる。
【0048】
図2は、発振回路20の具体的回路を示す回路図である。説明の便宜上、図2において、図1と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。図2に示す発振回路20は、カレントミラー回路20aを構成するPNPトランジスタQ1、Q2、Q3と、PNPトランジスタQ2、Q3の下流側においてカレントミラー回路20bを構成するNPNトランジスタQ4、Q5と、コンデンサC20と、充放電切換回路SW20とから成る。
【0049】
図2において、Vccは入力電圧Vin、または、入力電圧Vinから生成された所定の電圧が供給される電源ラインであり、本例においては入力電圧Vinが供給されているものとする。そして、この電源ラインVccにPNPトランジスタQ1、Q2、Q3の各エミッタが接続されている。また、PNPトランジスタQ1、Q2、Q3の各ベースとPNPトランジスタQ1のコレクタとが共にRT端子6に接続されている。尚、RT端子6とグランド間には、抵抗R4とコンデンサC4とが並列に外付けされている。尚、この外付けのコンデンサC4はノイズ除去を目的とするものである。
【0050】
また、PNPトランジスタQ2のコレクタは、NPNトランジスタQ4のコレクタ−エミッタを介してグランドに接続され、PNPトランジスタQ3のコレクタは、NPNトランジスタQ5のコレクタ−エミッタを介してグランドに接続されている。そして、NPNトランジスタQ4、Q5の各ベースとNPNトランジスタQ4のコレクタとが接続され、NPNトランジスタQ5のコレクタはコンデンサC20を介してグランドに接続されている。そして、このコンデンサC20の電圧が、三角波信号VoscとしてPWMコンパレータ19の非反転入力端子(+)に与えられる(図1参照)。
【0051】
また、充放電切換回路SW20は、NPNトランジスタQ4及びQ5のベースの接続点とグランド間に接続され、三角波信号Voscの電圧に応じてオン/オフ制御される。従って、この充放電切換回路SW20のオフ/オンに応じてNPNトランジスタQ4、Q5、即ち、カレントミラー回路20bがオン/オフする。
【0052】
次に、このような構成の発振回路20の動作を説明する。電源ラインVccに入力電圧Vinが供給されると、電源ラインVccからPNPトランジスタQ1のエミッタ−コレクタ、RT端子6、抵抗R4を介してグランドへ、入力電圧Vin/抵抗R4で定まる電流Iが流れる。そして、この電流Iはカレントミラー回路20aを構成するPNPトランジスタQ2、Q3にミラーされ、その下流のNPNトランジスタQ4、Q5に出力される。
【0053】
充放電切換回路SW20は、三角波信号Voscが上側閾値電圧Vhになったときにオフ、下側閾値電圧Vl(Vh>Vl)になったときにオンになるように制御される。そして、三角波信号Voscが下側閾値電圧Vlになったとき、即ち、充放電切換回路SW20がオンになったとき、NPNトランジスタQ5はオフになるため、PNPトランジスタQ3から出力される電流IでコンデンサC20が充電される。三角波信号VoscはコンデンサC20の充電に伴って一定の傾きで上昇する。そして、三角波信号Voscが上側閾値電圧Vhに達すると、充放電切換回路SW20はオフ、NPNトランジスタQ5はオンになり、コンデンサC20はNPNトランジスタQ5を介して放電を開始する。
【0054】
NPNトランジスタQ5は、NPNトランジスタQ4に対してエミッタ面積が2倍のものとなっており、NPNトランジスタQ4に電流Iが流れているときには、2Iの電流を流す能力がある。従って、NPNトランジスタQ5がオンになったときの電流は2Iであり、コンデンサC20がNPNトランジスタQ5を介して放電する放電電流は、2I−I(PNPトランジスタQ3から出力される電流I)=Iとなり、三角波信号Voscは充電時と同じ一定の傾きで下降する。
【0055】
そして、三角波信号Voscが下側閾値電圧Vlに達すると、充放電切換回路SW20はオン、NPNトランジスタQ5はオフになり、コンデンサC20は再び電流Iで充電を開始する。以上の動作を繰り返して生成された特定周波数の三角波が、三角波信号Voscとして出力される。尚、上述したように、NPNトランジスタQ5のエミッタ面積をNPNトランジスタQ4のエミッタ面積の2倍にすると、コンデンサC20の充電電流と放電電流の電流値が同じになり、三角波信号Voscの上昇と下降の傾きが同じになるが、上昇と下降の傾きは特に同じにする必要はなく、NPNトランジスタQ5のエミッタ面積は、NPNトランジスタQ4のエミッタ面積の所定の倍数にしても良い。
【0056】
また、抵抗R4の抵抗値を変更すると、上述の電流Iの大きさが変わることになり、コンデンサC20の充放電電流の大きさが変わることになる。即ち、抵抗R4の抵抗値を小さくすると、電流Iは大きくなり、コンデンサC20の充放電電流は大きくなる。すると、三角波信号Voscは、充電時にはより早く上側閾値電圧Vhに、放電時にはより早く下側閾値電圧Vlに到達することになり、三角波信号Voscの周期は短くなる。一方、抵抗R4の抵抗値を大きくした場合は、上述の動作と逆の動作となり、三角波信号Voscの周期は長くなる。
【0057】
このように、抵抗R4の抵抗値を変更することにより、発振回路20の発振周波数を変更することができる。そして、図1に示すレギュレータIC10をラジオやモニタ等の電子機器に組み込んで動作させたときに、スイッチングノイズがこの電子機器の出力に影響を及ぼす場合であっても、抵抗R4を異なる抵抗値のものに変更するだけで、スイッチング周波数を電子機器の出力に影響を及ばさない周波数に変更してスイッチングノイズの問題を回避することができる。また、抵抗R4を可変抵抗にして、電子機器を動作させたままの状態でスイッチング周波数を電子機器の出力に影響を及ばさない周波数に変更することも可能である。
【0058】
また、スイッチング周波数を高く設定する場合、内部制御回路15内の各制御素子等を周波数特性の良いものにする必要があるが、誤差増幅器18を周波数特性の良いものにすると、回路の発振の問題が生じることがある。そこで、FB端子3とINV端子5との間にコンデンサC3と抵抗R3との直列回路から成る遅れ位相補償回路27を外付けすることにより、誤差増幅器18を周波数特性の良いものにしてスイッチング周波数を高く設定した場合であっても、回路の発振を防止することができる。
【0059】
例えば、この遅れ位相補償回路27を外付けしない場合の上限のスイッチング周波数は300kHz程度であるのに対して、遅れ位相補償回路27を外付けした場合は、上限のスイッチング周波数を500kHz程度に上昇させることができる。これにより、スイッチング周波数を高く設定してもレギュレータIC10の変換効率を上げて安定した動作をさせることができ、レギュレータIC10及びレギュレータIC10を用いた電源装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0060】
以上、説明したように、レギュレータIC10は、外部のスイッチ12がオフされることによりスタンバイ状態になったときには、スイッチ回路14によって内部制御回路15を完全に停止させるので、スタンバイ時の消費電力を0にすることができ、省電力を図ることができる。
【0061】
また、レギュレータIC10は、発振回路20の発振周波数、即ち、MOS26のスイッチング周波数を決める抵抗R4を接続するRT端子6を備えているので、スイッチングノイズによる影響を回避するなどの目的でスイッチング周波数を変更する場合に、レギュレータIC10そのものを変更せずとも、抵抗R4を異なる抵抗値のものに変更するだけで、スイッチング周波数の変更を行うことができる。そして、抵抗R4を可変抵抗にしてレギュレータIC10を連続動作させたままでスイッチング周波数の変更を行うことも可能である。
【0062】
また、レギュレータIC10は、コンデンサC3と抵抗R3との直列回路から成る外付けの遅れ位相補償回路27が接続され、誤差増幅器18の出力を反転入力端子(−)にこの遅れ位相補償回路27を介してフィードバックするためのFB端子3を備えている。そのため、誤差増幅器18を周波数特性の良いものにしたうえで、スイッチング周波数を高く設定した場合であっても、回路の発振を防止することができ、スイッチング周波数を高く設定することができる。従って、レギュレータIC10及びレギュレータIC10を用いた電源装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0063】
また、レギュレータIC10は、TSD回路23を備えて過熱保護を図っている。また、過電流コンパレータ24を備えて過電流保護を図っている。更に、ソフトスタート回路16を備えているので、起動時に出力電圧Voを所定の電圧まで緩やかに立ち上げるソフトスタート動作を行うことができる。
【0064】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各部の構成等を適宜に変更して実施することも可能である。例えば、MOS26をバイポーラ型のトランジスタにすることも可能であるし、発振回路20のカレントミラー回路20a、20bをMOSトランジスタで構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、他の電子機器、特にスタンバイ時の省電力が要求される電子機器の電源装置として利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 入力端子
2 SW端子(スイッチング端子)
3 FB端子(フィードバック端子)
4 GND端子(接地端子)
5 INV端子(帰還電圧端子)
6 RT端子(外部素子接続端子)
7 EN端子(スタンバイ端子)
10 レギュレータIC(電源装置)
11 平滑回路
12 スイッチ
13、25 定電圧源
14 スイッチ回路(切換回路)
15 内部制御回路
16 ソフトスタート回路
17 基準電圧源
18 誤差増幅器
19 PWMコンパレータ
20 発振回路
20a、20b カレントミラー回路
21 ラッチ回路
22 ドライバ(駆動回路)
23 TSD回路(過熱保護回路)
24 過電流検出コンパレータ(過電流保護回路)
26 MOS(スイッチング素子)
27 遅れ位相補償回路
28 リセット信号発生回路
28a 基準電圧源
28b コンパレータ
C1、C2、C3、C4、C5、C20 コンデンサ
D1 ダイオード
L1 コイル
R1、R2 分圧抵抗
R3 抵抗
R4 抵抗(抵抗素子、外部素子)
R5 プルアップ抵抗
SW20 充放電切換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を変換して平滑回路に与え、該平滑回路からの出力が所定の出力電圧になるように動作するスイッチングレギュレータ型の電源装置において、
前記出力が前記所定の出力電圧になるように制御信号をPWM方式で発生する制御回路と、
前記制御信号によってスイッチングされることによって、入力電圧を変換して前記平滑回路に与えるスイッチング素子とから成り、
前記出力電圧の出力をオン・オフする外部信号に基づいて、前記制御回路を構成する素子への動作電力の供給経路の導通・遮断を切り換えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記出力電圧に基づく帰還電圧と基準電圧とを比較して誤差信号を生成する誤差増幅器と、所定の周波数の発振信号を生成する発振回路と、前記発振信号と前記誤差信号とを比較してPWM信号を生成するPWMコンパレータと、前記PWM信号に基づいて前記制御信号を前記スイッチング素子に与えて駆動する駆動回路と、前記制御回路を構成する素子への動作電力の供給経路の前記導通・遮断の切り換えを行う切換回路とから成り、
前記電源装置は、更に前記入力電圧が与えられる入力端子と、前記スイッチング素子の一端に接続されて前記平滑回路に与える電圧が出力されるスイッチング端子と、前記帰還電圧が与えられる帰還電圧端子と、前記発振信号の所定の周波数を決定する外部素子が接続される外部素子接続端子と、前記制御回路の自己誤発振を防止するために一端が前記帰還電圧端子に接続された遅れ位相補償回路の他端が接続されるとともに、前記誤差増幅器の出力が接続されるフィードバック端子と、前記外部信号が与えられるスタンバイ端子とを有することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記発振回路は、前記外部素子に流れる電流の値によって充放電周期が決定する充放電コンデンサから成り、前記発振周波数の前記所定の周波数は、前記外部素子の抵抗値を変化させて前記外部素子に流れる電流値を変えることによって変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記発振回路は、充放電を行うコンデンサと、前記外部素子の抵抗値によって前記コンデンサの充電電流の値を決定する第1のカレントミラー回路と、前記コンデンサの放電電流の値を決定する第2のカレントミラー回路と、前記コンデンサの両端電圧と、第1及び第2の閾値電圧とを比較して、第2のカレントミラー回路をオン/オフすることよって、前記コンデンサへの充電と放電を切り換える充放電切換回路とから成ることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1のカレントミラー回路は、前記外部素子がその電流経路に接続される第1の入力側回路と、前記第1の入力側回路に流れる入力側電流に比例した第1の出力側電流が流れる第1の出力側回路と、前記第1の入力側回路に流れる入力側電流に比例した第2の出力側電流が流れる第2の出力側回路とから構成され、
前記第2のカレントミラー回路は、前記第1の出力側電流の電流経路に接続された第2の入力側回路と、前記第2の出力側の電流経路と前記コンデンサの一端との接続点に接続された第3の出力側回路とから構成され、
前記充放電切換回路は、前記第3の出力側回路を遮断させて前記第2の出力側電流によって前記コンデンサを充電させ、前記第3の出力側回路を導通させて前記コンデンサを放電させることを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記制御回路は、更に前記スイッチング素子に流れる電流が所定の電流値を超えたときに前記駆動回路を停止させる過電流保護回路を備えることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項7】
前記過電流保護回路は、前記スイッチング素子による電圧降下を検出し、この電圧降下が所定の電圧を超える場合に前記駆動回路を停止させることを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記過電流保護回路は、前記スイッチング素子から出力される電圧と所定の電圧とを比較する過電流検出コンパレータを備え、この過電流検出コンパレータは、前記スイッチング素子から出力される電圧が前記所定の電圧より低くなったときに前記駆動回路を停止させることを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【請求項9】
前記制御回路は、更に電源装置内の所定箇所の温度が所定の温度を超えたときに、前記駆動回路を停止させる過熱保護回路を備えることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項10】
前記制御回路は、更に前記出力電圧が起動時に緩やかに立ち上がるように前記誤差増幅器を制御するソフトスタート回路を備えることを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項11】
前記電源装置は、集積回路装置で構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−142111(P2010−142111A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29628(P2010−29628)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願2006−510884(P2006−510884)の分割
【原出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】