説明

電源装置

【課題】、入力電圧の変動に伴う出力電圧の変動の発生頻度を抑制する「電源装置」を提供する。
【解決手段】DC-DCコンバータ11の出力可能最大電圧が出力電圧の所望の定格値以上となる、入力電圧値の範囲をレンジAとし、レンジA内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値を定格出力電圧V0とする。また、レンジA未満の入力電圧値の所定範囲を複数のレンジB-Cに分割し、各レンジ内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値を、当該レンジの下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧とする。そして、入力電圧値を監視し、入力電圧値の属するレンジが変化したときに、検出した入力電圧値に対応する出力電圧制御値に、DC-DCコンバータ11の出力電圧値を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の出力を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源装置の出力を制御する技術としては、入力電力から定格の出力電力を生成する電源装置において、入力電力の電圧を監視し、入力電力の電圧が低いときには、出力電力の電圧を低下させることにより、入力電力の電流が過大となってしまうことを抑止する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-084749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トランスに電力を供給するスイッチング素子のオン/オフ期間の比により出力電圧の大きさを制御するスイッチング電源装置が出力可能な電圧(以下、「出力電圧」と称す)の最大値は、スイッチング素子のオン期間の比率を最大としたときの値となり、その値は、スイッチング電源装置の方式(フルブリッジ方式、 ハーフブリッジ方式、プッシュプル方式等)毎に、およそ、入力電力の電圧(以下、「入力電圧」と称す)と使用するトランスの一次側と二次側の巻き線比に応じて固定的に定まる。
【0005】
また、通常、このようなスイッチング電源装置は、出力電圧と定格電圧とを比較し、出力電圧が定格電圧よりも小さい場合には、スイッチング素子のオン期間の比を大きくして、出力電圧を大きくするように動作することにより、出力電圧を定格電圧に制御する。
したがって、入力電圧の大きさが、当該入力電圧に対してスイッチング電源装置が出力可能な出力電圧の最大値が定格電圧未満となる大きさとなると、スイッチング電源装置は出力電圧を定格電圧に維持することができなくなり、出力電圧の大きさは、その時点の入力電圧に対してスイッチング電源装置が出力可能な最大電圧となる。ここで、このような入力電圧の低下は、たとえば、スイッチング電源装置の入力電力が、アイドリングストップ機能を備えた自動車のバッテリから供給されるものであるような場合において、当該自動車のアイドリングストップ時に発生し得る。
【0006】
結果、スイッチング電源装置が出力可能な出力電圧の最大値が定格電圧未満となる入力電圧の範囲内においては、スイッチング電源装置の出力電圧は、入力電圧の変動に追従して変動してしまうこととなる。
そして、このようなスイッチング電源装置の出力電圧の変動は、当該スイッチング電源装置が適用されるシステムの動作不具合を誘引することとなる。すなわち、たとえば、スイッチング電源装置の出力電力をオーディオアンプの電源として用いる場合には、その変動が出力に漏れ、ノイズとなって聞こえることがある。また、スイッチング電源に複数チャネルのパワーアンプが接続されている場合、共通インピーダンスや、スイッチング電源装置に電力を供給するバッテリの内部抵抗により、スイッチング電源装置の出力電圧の変動による、あるチャネルの出力変動が他のチャネルにクロストークを発生させてしまう事がある。
【0007】
なお、スイッチング電源装置を電源として動作する機器が、スイッチング電源装置の定格電圧及び当該定格電圧よりもある程度低い電圧を電源電圧としても正常動作可能なものである場合、スイッチング電源装置の出力電圧の低下自体は問題とならず、当該出力電圧の変動のみが問題となる。
【0008】
そこで、本発明は、入力電圧の変動に伴う電源装置の出力電圧の変動の発生頻度を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題達成のために、本発明は、入力電圧を、出力電圧設定値に可及的に近い電圧に変圧し出力電圧として出力する電源装置に、前記入力電圧の値である入力電圧値を検出する入力電圧検出手段と、前記入力電圧検出手段が検出した入力電圧値が属するレンジが変化したときに、当該入力電圧値が属するレンジに対応する出力電圧制御値に前記出力電圧設定値を切り替える出力電圧設定値切替手段とを設け、前記出力電圧設定値を任意とした場合に、各入力電圧値の入力電圧に対して当該電源装置が出力可能な出力電圧の最大値を、当該入力電圧値に対応する出力可能最大電圧値として、前記レンジを、対応する前記出力可能最大電圧値が予め定めた定格電圧以上となる入力電圧値の範囲である第1レンジと、前記第1レンジに前記入力電圧値が小さくなる方向に隣接する所定の大きさを有する前記入力電圧値の範囲をn(但し、nは自然数)個に分割して得られるn個のレンジとを含むものとし、前記第1のレンジに対応する出力電圧制御値を、前記定格電圧とし、前記n個のレンジに含まれるレンジに対応する出力電圧制御値を、当該レンジの下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧値もしくは当該出力可能最大電圧値未満の電圧値としたものである。
【0010】
このような電源装置によれば、入力電圧値がいずれかのレンジ内で変動している間には、出力電圧は当該レンジ対応する出力電圧制御値に維持され、入力電圧値がレンジ間で移動した場合にのみ出力電圧の変動は生じる。
よって、出力電圧は入力電圧の変動に直接的に追従して変動することはなく、出力電圧の変動頻度を小さく抑えることができる。
なお、以上のような電源装置において、前記出力電圧設定値切替手段は、前記入力電圧値が増加しているときには、当該入力電圧値が属するレンジが変化したときに、当該入力電圧値が属するレンジに対応する出力電圧制御値に前記出力電圧設定値を切り替える代わりに、前記各レンジの境界を入力電圧値が増加する方向に所定量シフトさせた境界をまたいで、当該入力電圧値が変化したときに、当該入力電圧値が属するレンジに対応する出力電圧制御値に前記出力電圧設定値を切り替えるようにしてもよい。または、以上のような電源装置において、前記出力電圧設定値切替手段は、前記入力電圧値の増加によって、当該入力電圧値が属するレンジが変化した場合には、当該変化後のレンジが前記入力電圧値の属するレンジであることが所定期間継続されるまで、前記出力電圧設定値の切替は行わないようにしてもよい。
【0011】
これらのようにすることにより、入力電圧値が前記レンジの境界と頻繁に交差するように変化する場合に、これに追従して出力電圧が頻繁に変動しないようにすることができる。
また、以上の電源装置は、前記入力電圧を、前記出力電圧設定値に可及的に近い電圧に変圧し前記出力電圧として出力するスイッチング電源であってよい。また、以上の電源装置は、自動車に搭載される電源装置であって良く、この場合、前記入力電圧は前記自動車に搭載されたバッテリから供給される電力の電圧であって良い。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、入力電圧の変動に伴う電源装置の出力電圧の変動の発生頻度を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る出力電圧制御値テーブルを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る出力電圧設定切替処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る電源装置の動作例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る出力電圧設定切替処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る出力電圧設定切替処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る電源装置のデジタルアンプ装置の電源としての適用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る電源装置の構成を示す。
図示するように、電源装置1は、バッテリから供給される入力電力から出力電力を生成し、音声出力装置2が出力する音声信号を増幅してスピーカ4に出力するアンプ装置3に、生成した出力電力を供給する装置である。
ここで、以下では、バッテリから供給される入力電力の電圧を「入力電圧」、電源装置1が出力する出力電力の電圧を「出力電圧」と記すことして説明を行う。
さて、図示するように、電源装置1は、バッテリから供給される入力電力の入力電圧を出力電圧に昇圧し、直流の出力電力として出力するスイッチング電源装置であるDC-DCコンバータ11と、入力電圧の大きさを入力電圧値として検出する入力電圧検出回路12と、出力電圧設定切替部13とを備えている。
【0015】
また、DC-DCコンバータ11は、スイッチング素子111、トランス112、整流回路113、平滑回路114、DC-DCコンバータ11の出力電圧の大きさを出力電圧値として検出する出力電圧検出回路115、スイッチング制御回路116とを有する。
スイッチング制御回路116は、出力電圧が出力電圧設定切替部13によって設定された出力電圧設定値となるように、スイッチング素子111をPWM制御する。すなわち、スイッチング制御回路116は、出力電圧設定値と、出力電圧検出回路115が検出した出力電圧値を比較し、スイッチング素子111を所定周期でオン/オフ動作させると共に、デューティ比(オン期間の周期に対する比)を、出力電圧値が出力電圧設定値よりも小さい場合には増加し、出力電圧値が出力電圧設定値よりも大きい場合には減少させる。
【0016】
トランス112は、スイッチング素子111のオン期間に入力電力の転送を受け、これを昇圧して整流回路113に出力する。整流回路113はトランス112の出力を整流し、平滑回路114は整流回路113の出力を平滑化して出力電力として出力する。
結果、DC-DCコンバータ11の出力する出力電圧は、出力電圧設定切替部13によってスイッチング制御回路116に設定された出力電圧設定値に制御される。
次に、このように出力電圧設定値を設定する出力電圧設定切替部13の動作について説明する。
まず、図2aに、出力電圧設定切替部13が出力電圧設定値の算出に用いる出力電圧制御値テーブルを示す。
出力電圧制御値テーブルは、バッテリからの入力電圧値と出力電圧制御値との関係を定義するものであり、当該関係は以下のように定義される。
すなわち、まず、ある入力電圧値に対してDC-DCコンバータ11が出力可能な最大電圧(スイッチング素子111を最大デューティ比でオン/オフ動作させたときの出力電圧)を、当該入力電圧値に対する出力可能最大電圧とする。なお、入力電圧をVi、トランスの巻線比をK、Dmaxをスイッチング素子111のオン/オフ動作におけるデューティ比の制御可能な最大値として、出力可能最大電圧は、およそK×Vi×Dmaxによって定まる。ただし、各入力電圧値に対する出力可能最大電圧は、実験等によって求めるようにしてもよい。
【0017】
そして、出力可能最大電圧が出力電圧の所望の定格値(以下:定格出力電圧V0)以上となる、入力電圧値の範囲をレンジAとし、レンジA内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値を定格出力電圧V0とする。
また、レンジA未満の範囲を複数のレンジに分割し、最小の範囲を除く各レンジ内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値を、当該レンジの下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧とする。また、最小のレンジの入力電圧値に対応する出力電圧制御値を、入力電圧値に対応する出力可能最大電圧する。
【0018】
ただし、入力電圧値が最小のレンジは、故障や過放電等の異常な要因によらずしては、当該レンジ内までバッテリの出力する入力電圧値が低下しないことが見込める範囲とする。また、最小のレンジ内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値は、当該レンジの下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧=0とするようにしてもよい。
【0019】
図2aに示した出力電圧制御値テーブルでは、レンジA未満の範囲を、入力電圧値の大きい順に、レンジB、レンジC、レンジDに三分割している。また、レンジB内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値をレンジB内の下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧であるV1とし、レンジC内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値をレンジC内の下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧であるV2としている。そして、レンジD内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値を、入力電圧値に対応する出力可能最大電圧としている。
【0020】
なお、図2aに点線で示したように、レンジA未満の範囲を複数に分割して得られる範囲のうちの、最小の範囲を除く各範囲(レンジB、C)内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値は、当該範囲内の下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧よりも幾分小さな値とするようにしてもよい。また、この場合には、同様に点線で示すように最小の範囲(レンジD)内の入力電圧値に対応する出力電圧制御値を、入力電圧値に対応する出力可能最大電圧よりも幾分小さな値とするようにしてよい。
【0021】
さて、このような出力電圧制御値テーブルを用いて、出力電圧設定切替部13は、図3に示す出力電圧設定切替処理によりスイッチング制御回路116に、出力電圧設定値を設定する。
すなわち、図示するように、この処理では、まず、入力電圧検出回路12が検出している入力電圧値を取得し(ステップ300)、入力電圧値が変化しているかどうかを調べ(ステップ302)、変化していなければステップ300に戻る。
一方、入力電圧値が変化している場合には、入力電圧値が属するレンジ(上述したレンジA-D)が前回取得した入力電圧値が属するレンジから変化したか、または、入力電圧値がレンジD内に含まれるかどうかを判定し(ステップ304)、いずれでもなければステップ300に戻る。
【0022】
一方、入力電圧値が属するレンジが変化しているか、入力電圧値がレンジD内に含まれる場合には、出力電圧制御値テーブルを参照し、ステップ300で取得した入力電圧値に対応する出力電圧制御値を算定し(ステップ306)、算定した出力電圧制御値を出力電圧設定値としてスイッチング制御回路116に設定する(ステップ308)。
【0023】
そして、ステップ300からの処理に戻る。
以上、出力電圧設定切替部13が行う出力電圧設定切替処理について説明した。
次に、このような電源装置1の動作例を図4に示す。
図示するように、本実施形態に係る電源装置1によれば、図2aに示した出力電圧制御値テーブルを用いる場合、入力電圧値がレンジAの範囲内にある期間中、出力電圧値は定格電圧V0に維持される。
また、入力電圧が、対応する出力可能最大値が出力電圧値の定格電圧V0未満となる値以下に低下した場合においても、入力電圧値がレンジBの範囲内にある期間中には、出力電圧値はV1に維持され、入力電圧値がレンジCの範囲内にある期間中には、出力電圧値はV2に維持される。
【0024】
よって、入力電圧が、対応する出力可能最大値が出力電圧値の定格電圧V0未満となる値以下に低下した場合においても、入力電圧値の属するレンジ入力電圧値の属するレンジがレンジDある場合を除き、出力電圧は入力電圧の変動に直接的に追従して変動することはなく、出力電圧の変動は入力電圧値の属するレンジが変化した時にのみ生じ、結果、出力電圧の変動頻度は小さく抑えられる。
なお、以上のような電源装置1によれば、電源装置1が出力する出力電圧の値が定格電圧V0よりも低下し得るが、電源装置1の出力電力で動作する機器が、電源装置1の定格電圧及び当該定格電圧よりもある程度低い電圧を電源電圧としても正常動作可能なものである場合、この出力電圧の低下は問題とならない。
【0025】
たとえば、図1に示したように、電源装置1の出力電力で動作する機器が、音声信号を増幅してスピーカ4に出力するアンプ装置3である場合、アンプ装置3の最大出力電圧は、電源電圧(電源装置1の出力電圧)によって定まるが、アンプ装置3による増幅後の音声信号の電圧が、アンプ装置3の最大出力電圧以下となる範囲内では、アンプ装置3の音声信号のゲインは、電源電圧によらずに設定されたゲイン値となる。また、アンプ装置3による増幅後の音声信号の電圧がアンプ装置3の最大出力電圧付近となるようなアンプ装置3の利用は稀である。たとえば、音声出力装置2とアンプ装置3とスピーカ4がオーディオ装置を構成するものとして、ユーザがオーディオ装置のボリューム設定を最大として、当該オーディオ装置が出力可能な最大音声をスピーカ4から出力するようなことは稀である。
【0026】
よって、通常の利用形態においては、このようなアンプ装置3は、電源装置1の定格電圧及び当該定格電圧よりもある程度低い電圧を電源電圧としても正常動作可能であって、電源装置1の出力電圧の低下は問題とならない。
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態によれば、上述した入力電圧値のレンジの境界を頻繁に交差するように入力電圧値が変動する場合には、電源装置1の出力電圧の変動も頻繁に生じてしまうこととなる。
そこで、これを抑制するために、以上の出力電圧設定値の制御特性にヒステリシスを持たせるようにしてもよい。
すなわち、たとえば、図2bに示すように、出力電圧制御値テーブルに、バッテリからの入力電圧値と入力電圧減少時出力電圧制御値との対応と、入力電圧値と入力電圧増加時出力電圧制御値との対応を定義しておく。
すなわち、まず、減少方向レンジA-Dを、図2bに示したレンジA-Dと同様に定義する。そして、増加方向レンジAp-Dpを、以下のように定義する。
すなわち、増加方向レンジAp-Bpは、減少方向レンジA-Bを入力電圧値が所定値d増加する方向にシフトさせたレンジとして定義する。また、最小の増加方向レンジDpは、減少方向レンジDと同じレンジとして定義し、最小の増加方向レンジDpの次に大きい増加方向レンジCpは、最小の増加方向レンジDpの上限と、増加方向レンジCpの次に大きい最小の増加方向レンジBpの下限の間のレンジとして定義する。
【0027】
そして、入力電圧値と入力電圧減少時出力電圧制御値との関係を、図2aに示した入力電圧値と出力電圧制御値との対応と等しく定義する。
一方、入力電圧値と入力電圧増加時出力電圧制御値との関係は、以下のように定義する。
すなわち、最小の増加方向レンジDpの範囲内の入力電圧値と入力電圧増加時出力電圧制御値との関係は、入力電圧値と入力電圧減少時時出力電圧制御値との関係と等しくする。
また、他の増加方向レンジの範囲内の入力電圧値に対応する入力電圧増加時出力電圧制御値は、対応する減少方向レンジ内の入力電圧値に対応する入力電圧減少時時出力電圧制御値とする。
すなわち、増加方向レンジApの範囲内の入力電圧値に対応する入力電圧増加時出力電圧制御値を、減少方向レンジAの当該範囲内の下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧とし、増加方向レンジBpの範囲内の入力電圧値に対応する入力電圧増加時出力電圧制御値を、減少方向レンジBの当該範囲内の下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧とし、増加方向レンジCpの範囲内の入力電圧値に対応する入力電圧増加時出力電圧制御値を、減少方向レンジCの当該範囲内の下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧とする。
【0028】
そして、図2bに示したような出力電圧制御値テーブルを用いて、出力電圧設定切替部13は、図3に示す出力電圧設定切替処理に代えて、図5に示す出力電圧設定切替処理によりスイッチング制御回路116に、出力電圧設定値を設定するようにする。
すなわち、図5に示すように、出力電圧設定切替処理この処理では、まず、入力電圧検出回路12が検出している入力電圧値を取得し(ステップ500)、入力電圧値が変化しているかどうかを調べ(ステップ502)、変化していなければステップ500に戻る。
一方、入力電圧値が変化している場合には(ステップ502)、以下の処理を行う。
すなわち、前回から今回の間に入力電圧値が減少方向に減少方向レンジ間を移動しているか、今回の入力電圧値がレンジD内にある場合には(ステップ504)、図2bの出力電圧制御値テーブルよりステップ500で取得した入力電圧値に対応する入力電圧減少時出力電圧制御値を目標出力電圧値として算定する(ステップ506)。
【0029】
一方、前回から今回の間に入力電圧値が増加方向に増加方向レンジ間を移動している場合には(ステップ508)、図2bの出力電圧制御値テーブルよりステップ500で取得した入力電圧値に対応する入力電圧増加時出力電圧制御値を目標出力電圧値として算定する(ステップ510)。
【0030】
ここで、ステップ508で行う、入力電圧値が増加方向に、増加方向レンジApへ移動したことの検出は、減少方向レンジAと減少方向レンジBとの境界をdシフトした境界をまたいで入力電圧値が増加方向に変化したことを検出することと等価であり、入力電圧値が増加方向に、増加方向レンジBpへ移動したことの検出は、減少方向レンジBと減少方向レンジCとの境界をdシフトした境界をまたいで入力電圧値が増加方向に変化したことを検出することと等価である。
また、ステップ510で行う、増加方向レンジAp、増加方向レンジBpに属する入力電圧値に対応する入力電圧増加時出力電圧制御値の目標出力電圧値としての算出は、その時点で入力電圧値が属している減少方向レンジに対応する入力電圧減少時出力電圧制御値の目標出力電圧値としての算出と等価である。
【0031】
一方、今回の入力電圧値がレンジD内になく、かつ、前回から今回の間に入力電圧値が減少方向に減少方向レンジ間を移動しておらず(ステップ504)、かつ、前回から今回の間に入力電圧値が増加方向に増加方向レンジ間を移動していない(ステップ508)場合には、そのままステップ500からの処理に戻る。
【0032】
そして、算定した目標出力電圧値が、現在スイッチング制御回路116に設定されている出力電圧設定値と等しければ(ステップ512)、そのままステップ500に戻り、等しくなければスイッチング制御回路116に出力電圧設定値として設定し(ステップ514)、ステップ500からの処理に戻る。
このような、図5に示す出力電圧設定切替処理によれば、図2bに示すように、出力電圧設定値の切替は、入力電圧値が増加しているときには、入力電圧値が減少しているときよりも、大きな入力電圧値において生じる。
よって、図2aに示した入力電圧値のレンジ(図2bの減少方向レンジ)の境界を頻繁に交差するように入力電圧値が変動する場合にも、電源装置1の出力電圧の変動も頻繁に生じてしまうことはない。
または、以上の実施形態における出力電圧設定切替部13の出力電圧設定切替処理は図2aに示したような出力電圧制御値テーブルを用いて、図6に示すように行うようにしてもよい。
すなわち、この処理では、まず、入力電圧検出回路12が検出している入力電圧値を取得し(ステップ600)、入力電圧値が変化しているかどうかを調べ(ステップ602)、変化していなければステップ600に戻る。
一方、入力電圧値が変化している場合には、(ステップ602)、最後から2番目に入力電圧値を取得してから最後に入力電圧値と取得するまでの間に入力電圧値が減少方向にレンジ間を移動しているか、最後に取得した入力電圧値がレンジD内にある場合には(ステップ604)、図2aの出力電圧制御値テーブルより最後に取得した入力電圧値に対応する出力電圧制御値を算定し(ステップ606)、算定した出力電圧制御値をスイッチング制御回路116に出力電圧設定値として設定し(ステップ608)、ステップ600からの処理に戻る。
【0033】
一方、前回から今回の間に入力電圧値が減少方向にレンジ間を移動しておらず、かつ、入力電圧値がレンジD内にない場合には(ステップ604)、前回から今回の間に入力電圧値が増加方向にレンジ間を移動しているかどうかを調べ(ステップ610)、移動していなければステップ600からの処理に戻り、移動している場合には所定のタイムアウト時間を有するタイマをスタートする(ステップ612)。
【0034】
そして、入力電圧検出回路12が検出している入力電圧値を繰り返し取得しつつ(ステップ614)、入力電圧値が属するレンジの変化の発生と(ステップ616)、タイマのタイムアウトの発生を監視する(ステップ618)。
そして、入力電圧値が属するレンジの変化が発生したならば(ステップ616)、ステップ604の処理に戻る。
一方、タイマのタイムアウトが発生した場合には(ステップ618)、図2aの出力電圧制御値テーブルより最後に取得した入力電圧値に対応する出力電圧制御値を算定し(ステップ606)、算定した出力電圧制御値をスイッチング制御回路116に出力電圧設定値として設定し(ステップ608)、ステップ600からの処理に戻る。
【0035】
このような図6に示す出力電圧設定切替処理によれば、レンジDに入力電圧値がある場合を除き、一旦、出力電圧設定値を減少させた後の、入力電圧値の増加に伴う入力電圧値のレンジ間の移動に伴う出力電圧設定値の切替は、入力電圧値が移動後のレンジ内に、タイマのタイムアウト時間以上、安定して存在した場合にのみ行われる。
【0036】
よって、図2aに示した入力電圧値のレンジの境界を頻繁に交差するように入力電圧値が変動している場合に、電源装置1の出力電圧の変動が抑制されることとなる。
さて、以上の実施形態では、電源装置1の出力電力を電源として用いる機器の例としてアンプ装置3を示したが、当該アンプ装置3は、アナログのアンプ装置であっても、デジタルアンプ装置であってもよい。
すなわち、アナログのアンプ装置の場合は、アンプ装置3において増幅器として用いるオペアンプなどのアナログ素子の電源電圧として電源装置1の出力電圧を供給すればよい。
また、図7に示すような、音声信号をPWM変調するPWM変調回路702、FETスイッチ704、PWM変調回路702が生成したPWMパルスでFETスイッチ704を駆動するFETスイッチドライバ703、FETスイッチ704の出力を積分した音声信号でスピーカ4を駆動するLPF705、FETスイッチ704の出力をPWM変調回路702に入力する音声信号に負帰還させノイズの抑制を図る負帰還回路701で構成されるデジタルアンプ装置を用いる場合には、FETスイッチ704の電源を供給する電源装置1、FETスイッチドライバ703においてFETスイッチ704の駆動信号の生成に用いる電源を供給する電源装置1として、それぞれ本実施形態に係る電源装置1を必要数用いるようにすればよい。
【0037】
ただし、デジタルアンプ装置の構成は多様に可能であり、当該デジタルアンプ装置の構成に応じて、本実施形態に係る電源装置1を必要数、必要な箇所に用いるようにする。たとえば、PWM変調回路702において、FETスイッチ704の電源の電圧レベルに応じた電圧レベルの電源が、FETスイッチ704の電源と別個に必要な場合には、当該PWM変調回路702が必要とする電源を供給する電源としても、本実施形態に係る電源装置1を用いるようにしてよい。
【符号の説明】
【0038】
1…電源装置、2…音声出力装置、3…アンプ装置、4…スピーカ、11…DC-DCコンバータ、12…入力電圧検出回路、13…出力電圧設定切替部、111…スイッチング素子、112…トランス、113…整流回路、114…平滑回路、115…出力電圧検出回路、116…スイッチング制御回路、701…負帰還回路、702…PWM変調回路、703…FETスイッチドライバ、704…FETスイッチ、705…LPF。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を、出力電圧設定値に可及的に近い電圧に変圧し出力電圧として出力する電源装置であって、
前記入力電圧の値である入力電圧値を検出する入力電圧検出手段と、
前記入力電圧検出手段が検出した入力電圧値が属するレンジが変化したときに、当該入力電圧値が属するレンジに対応する出力電圧制御値に前記出力電圧設定値を切り替える出力電圧設定値切替手段とを有し、
前記出力電圧設定値を任意とした場合に、各入力電圧値の入力電圧に対して当該電源装置が出力可能な出力電圧の最大値を、当該入力電圧値に対応する出力可能最大電圧値として、
前記レンジは、対応する前記出力可能最大電圧値が予め定めた定格電圧以上となる入力電圧値の範囲である第1レンジと、前記第1レンジに前記入力電圧値が小さくなる方向に隣接する所定の大きさを有する前記入力電圧値の範囲をn(但し、nは自然数)個に分割して得られるn個のレンジとを含み、
前記第1のレンジに対応する出力電圧制御値は、前記定格電圧であり、
前記n個のレンジに含まれるレンジに対応する出力電圧制御値は、当該レンジの下限の入力電圧値に対応する出力可能最大電圧値もしくは当該出力可能最大電圧値未満の電圧値であることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置であって、
前記出力電圧設定値切替手段は、前記入力電圧値が増加しているときには、当該入力電圧値が属するレンジが変化したときに、当該入力電圧値が属するレンジに対応する出力電圧制御値に前記出力電圧設定値を切り替える代わりに、前記各レンジの境界を入力電圧値が増加する方向に所定量シフトさせた境界をまたいで、当該入力電圧値が変化したときに、当該入力電圧値が属するレンジに対応する出力電圧制御値に前記出力電圧設定値を切り替えることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1記載の電源装置であって、
前記出力電圧設定値切替手段は、前記入力電圧値の増加によって、当該入力電圧値が属するレンジが変化した場合には、当該変化後のレンジが前記入力電圧値の属するレンジであることが所定期間継続されるまで、前記出力電圧設定値の切替は行わないことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の電源装置であって、
当該電源装置は、前記入力電圧を、前記出力電圧設定値に可及的に近い電圧に変圧し前記出力電圧として出力するスイッチング電源であることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項4記載の電源装置であって、
当該電源装置は、自動車に搭載される電源装置であって、
前記入力電圧は前記自動車に搭載されたバッテリから供給される電力の電圧であることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−55802(P2013−55802A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192497(P2011−192497)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】