説明

電熱窓ガラス

【課題】金属細線群が視認されにくく、金属細線群と電極との接触部の発熱を低コストで抑制する。
【解決手段】電熱窓ガラス10は、長手方向に沿って形成された発熱部14と、発熱部14の上下に形成された第1電極16及び第2電極18とを備えている。発熱部14には、金属細線42の細線間隔が大きいメッシュ状パターン43Aからなる発熱区域43が形成されており、第1電極16及び第2電極18には、金属細線42の細線間隔が小さいメッシュ状パターン44Aからなる電極区域44が形成されている。それぞれの区域が金属細線で覆われている面積のそれぞれの区域全体の面積に占める割合を電極区域44はAe%、発熱区域43はAc%とすると、
Ac≦Ae、5≦Ae、かつ0<Ac≦20を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電熱窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、航空機、船舶などの窓ガラスに電極ワイヤを埋め込み、電極ワイヤに電流を通して加熱する電気加熱窓が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、3次元曲面ガラス上に数mm間隔で電熱ワイヤを配列し、電熱ワイヤの配列が窓の透明部分の実質上全体にわたって延在するようにした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−207718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、3次元曲面ガラス上に数mm間隔で電熱ワイヤを配列する工程が煩雑でコストが高い。また、運転席の前方に電気加熱窓を設けると、運転席から電熱ワイヤが見え、運転しにくい。さらに、電熱ワイヤと電極との接触部の抵抗が大きく、接触部で発熱が起こる可能性がある。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、金属細線群が視認されにくく、金属細線群と電極との接触部の発熱を低コストで抑制することができる電熱窓ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る電熱窓ガラスは、窓ガラス材料からなる1枚以上のガラス層と、前記ガラス層に支持された支持体に多数の金属細線群が形成された導電性層と、前記導電性層の面方向の両側に設けられ、前記導電性層に電気を供給する一対の電極と、を有し、前記導電性層が、前記電極が設けられた電極区域と、前記電極区域に挟まれ前記金属細線群が発熱する発熱区域と、を備え、前記電極区域の面積Eで前記金属細線群で覆われている面積eが占める割合をAe%、前記発熱区域の面積Cで前記金属細線群で覆われている面積cが占める割合をAc%とすると、
Ac≦Ae、5≦Ae、かつ0<Ac≦20
を満たしている。
【0008】
上記の発明によれば、電極区域における金属細線群の割合であるAeと発熱区域における金属細線群の割合であるAcが上記関係式を満たすことにより、発熱区域の透明度が電極区域よりも高くなり、運転席から金属細線群が視認されにくくなる。また、上記関係式を満たすことにより、金属細線群と電極との接触部の抵抗が小さくなり、接触部の発熱を抑制することができる。また、電極区域における金属細線群の割合であるAeと発熱区域における金属細線群の割合であるAcを変える構成であるため、製造が容易であり、低コスト化が可能である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記支持体は、前記金属細線群に覆われていない非発熱区域を有している。
【0010】
上記の発明によれば、支持体は金属細線群に覆われていない非発熱区域を有しており、電熱窓ガラスの不要な区域を発熱させないように構成することができる。また、金属細線群で覆われた区域はETCシステムなどで使用される電波が遮蔽されやすいが、非発熱区域を設けることにより、電波を遮蔽することが阻止される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記電極区域の前記金属細線群の上に、導電性ペースト層と金属箔が順次積層されており、前記金属箔は、電気供給源と接続された電線に接続されている。
【0012】
上記の発明によれば、電極区域の金属細線群の上に導電性ペースト層と金属箔を順次積層することで、金属細線群と電極との接触部の抵抗が小さくなり、接触部の発熱を抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記電極区域の前記金属細線群の上に金属箔が積層されており、前記電極区域の前記金属細線群の線幅が前記発熱区域の前記金属細線群の線幅よりも大きく、かつ、前記金属箔は、電気供給源と接続された電線に接続されている。
【0014】
上記の発明によれば、電極区域の金属細線群の上に金属箔を積層すると共に、電極区域の金属細線群の線幅を発熱区域の金属細線群の線幅よりも大きくすることで、金属細線群と電極との接触部の抵抗が小さくなり、接触部の発熱を抑制することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記電極区域の前記金属細線群の上に金属箔が積層されており、前記電極区域の単位面積当たりの前記金属細線群の数が前記発熱区域の単位面積当たりの前記金属細線群の数よりも多く、かつ、前記金属箔は、電気供給源と接続された電線に接続されている。
【0016】
上記の発明によれば、電極区域の金属細線群の上に金属箔を積層すると共に、電極区域の単位面積当たりの金属細線群の数を発熱区域の単位面積当たりの金属細線群の数よりも多くすることで、金属細線群と電極との接触部の抵抗が小さくなり、接触部の発熱を抑制することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の構成において、前記発熱区域の前記金属細線群を黒化処理し、前記電極区域の前記金属細線群を黒化処理しない。
【0018】
上記の発明によれば、発熱区域の金属細線群を黒化処理(例えば、ニッケルめっき等)することにより、金属細線群が視認されにくくなる。また、電極区域の金属細線群を黒化処理しないことにより、電極区域の金属細線群の抵抗が大きくなることを回避できる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の構成において、前記一対の電極の少なくとも一方が途中で折れ曲がり、前記一対の電極間の距離が異なる区域を2つ以上有している。
【0020】
上記の発明によれば、一対の電極間の距離が異なる区域を2つ以上有しており、一対の電極間の距離が短い区域の外側は、金属細線群で覆われていない。このため、ETCシステムなどで使用される電波を遮蔽することを阻止することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の構成において、前記一対の電極間の距離が短い区域と隣接する位置に前記金属細線群で覆われていない非発熱区域が設けられている。
【0022】
上記の発明によれば、一対の電極間の距離が短い区域と隣接する位置に金属細線群で覆われていない非発熱区域を設けることにより、ETCシステムなどで使用される電波を遮蔽することを阻止することができる。また、非発熱区域を設ける位置的な制限が少なく、設計の自由度が向上する。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の構成において、前記一対の電極に電圧を印加して前記発熱区域の前記金属細線群を発熱させたときに、前記発熱区域の単位面積当たりの発熱量が均一になるように前記発熱区域の前記金属細線群の表面抵抗が制御されている。
【0024】
上記の発明によれば、一対の電極間の距離が異なる発熱区域の金属細線群の表面抵抗を制御することにより、発熱区域の単位面積当たりの発熱量をほぼ均一にし、発熱ムラを抑制することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の構成において、前記一対の電極間の距離に比例するように前記金属細線群の線幅を変化させる。
【0026】
上記の発明によれば、一対の電極間の距離に比例するように金属細線群の線幅を変化させる。すなわち、一対の電極間の距離が長くなるに従って金属細線群の線幅を大きくすることにより、一対の電極間の距離が異なる発熱区域の単位面積当たりの発熱量をほぼ均一にすることができる。
【0027】
請求項11に記載の発明は、請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の構成において、前記一対の電極間の距離に反比例するように前記金属細線群の金属細線間距離を変化させる。
【0028】
上記の発明によれば、一対の電極間の距離に反比例するように金属細線群の金属細線間距離を変化させる。すなわち、一対の電極間の距離が長くなるに従って金属細線群の金属細線間距離を小さくすることにより、一対の電極間の距離が異なる発熱区域の単位面積当たりの発熱量をほぼ均一にすることができる。
【0029】
請求項12に記載の発明は、請求項7から請求項11までのいずれか1項に記載の構成において、前記一対の電極間の距離が異なる区域の境界に前記区域よりも抵抗が高い高抵抗区域が設けられている。
【0030】
上記の発明によれば、一対の電極間の距離が異なる区域の境界に当該区域よりも抵抗が高い高抵抗区域を設けることにより、高抵抗区域の両側で発熱させる領域を分けることができる。
【0031】
請求項13に記載の発明は、請求項7から請求項11までのいずれか1項に記載の構成において、前記一対の電極間の距離が異なる区域の境界に絶縁層が設けられている。
【0032】
上記の発明によれば、一対の電極間の距離が異なる区域の境界に絶縁層が設けられており、絶縁層の両側で発熱させる領域を分けることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の電熱窓ガラスによれば、金属細線群が視認されにくく、金属細線群と電極との接触部の発熱を低コストで抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係る電熱窓ガラスの全体構成を示す平面図である。
【図2】第1実施形態に係る電熱窓ガラスにおける導電性フィルムの発熱区域を示す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る電熱窓ガラスにおける導電性フィルムの電極区域を示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係る電熱窓ガラスにおける導電性フィルムの発熱区域及び電極区域の金属細線群を示す拡大構成図である。
【図5】図5(A)〜図5(E)は第1実施形態の金属細線によるメッシュ状パターンを形成する方法の一例(第1方法)を示す工程図である。
【図6】第1実施形態に係る電熱窓ガラスにおける導電性フィルムを示す断面図である。
【図7】第2実施形態に係る電熱窓ガラスにおける導電性フィルムの発熱区域及び電極区域の金属細線群を示す拡大構成図である。
【図8】第3実施形態に係る電熱窓ガラスの全体構成を示す平面図である。
【図9】第3実施形態に係る電熱窓ガラスにおける導電性フィルムの第1発熱区域、第2発熱区域及び電極区域の金属細線群を示す拡大構成図である。
【図10】第4実施形態に係る電熱窓ガラスにおける導電性フィルムの第1発熱区域、第2発熱区域及び電極区域の金属細線群を示す拡大構成図である。
【図11】第3実施形態の変形例に係る電熱窓ガラスの全体構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態である電熱窓ガラスを図1〜図5を参照しながら説明する。
【0036】
図1には、電熱窓ガラスの全体構成が平面図にて示されている。この図に示されるように、電熱窓ガラス10は、上辺と下辺がほぼ平行で、かつ上辺よりも下辺が長く形成された略矩形状の電熱窓ガラス本体12と、電熱窓ガラス本体12の長手方向に沿って帯状に形成された略長方形状の発熱部14と、この発熱部14の上下に対向するように配置された上下一対の第1電極16及び第2電極18と、を備えている。さらに、電熱窓ガラス本体12には、発熱部14の長手方向両側(図1中の左右両側)に、上下方向に沿って非発熱部20が設けられている。
【0037】
第1電極16及び第2電極18は、電熱窓ガラス本体12の上辺と下辺の縁部に沿って配設されており、略平行でかつ略同じ長さに形成されている。第1電極16と第2電極18には電源22が接続されている。
【0038】
図2には電熱窓ガラス10の発熱部14が断面図にて示されている。図2では、説明を分りやすくするために各部材の断面を模式的に表している。この図に示されるように、電熱窓ガラス10は、窓ガラス材料からなる2枚のガラス30、32を備えており、2枚のガラス30、32に挟まれた部位には、一方のガラス30に積層された樹脂層34と、樹脂層34に積層された導電性フィルム36と、導電性フィルム36と他方のガラス32との間に介在された樹脂層38と、を備えている。導電性フィルム36の一方の面(樹脂層38側の面)には導電層40が形成されている。樹脂層34、38は、本実施形態ではPVB(ポリビニルブチラール)で形成されている。PVB(ポリビニルブチラール)は通常の状態では柔軟性があるが、熱により架橋して硬くなる性質を有している。
【0039】
図3には電熱窓ガラス10の第1電極16及び第2電極18の部分が断面図にて示されている。図3では、説明を分りやすくするために各部材の断面を模式的に表している。この図に示されるように、電熱窓ガラス10は、2枚のガラス30、32に挟まれた部位に、ガラス30に順次積層された樹脂層34及び導電性フィルム36を備えており、さらに、導電性フィルム36の導電層40に積層された導電性ペースト層46と、導電性ペースト層46に積層された金属箔48と、を備えている。さらに、電熱窓ガラス10は、金属箔48とガラス32との間に介在された樹脂層38を備えている。
【0040】
導電性フィルム36は、図6に示されるように、支持体としての絶縁性の透明フィルム50と、この透明フィルム50の一方の面に形成された導電層40と、を備えている。図4に示されるように、導電層40は、導電性の金属細線42にて構成された多数の格子の交点を有する多数の金属細線群としてのメッシュ状パターンを有し、発熱部14に形成された粗いメッシュ状パターン43Aからなる発熱区域43と、第1電極16及び第2電極18に形成された細かいメッシュ状パターン44Aからなる電極区域44と、を備えている。すなわち、発熱区域43には、金属細線42の細線間隔が大きいメッシュ状パターン43Aが形成されており、電極区域44には、発熱区域43よりも金属細線42の細線間隔が小さいメッシュ状パターン44Aが形成されている。導電性フィルム36の一方の面には、導電層40(メッシュ状パターン)を形成しない非発熱区域45が設けられており、この非発熱区域45が電熱窓ガラス10の非発熱部20となる。
【0041】
電熱窓ガラス10では、電極区域44のメッシュ状パターン44Aと、導電性ペースト層46と、金属箔48とで第1電極16及び第2電極18が構成されている。図示を省略するが、金属箔48は、電源22と接続された電線に接続されている。
【0042】
電源22から第1電極16と第2電極18との間に電圧を印加して導電層40の金属細線42に通電させることで、発熱区域43のメッシュ状パターン43Aが発熱して発熱領域となる。
【0043】
電熱窓ガラス10は、例えば車両のウィンドウガラス(例えばリアガラスやフロントガラスなど)に使用されており、上下方向に沿った中心線に対して左右対称の曲面形状に形成されている。
【0044】
従来、リアガラスやヘッドランプカバーで使用されている面発熱体は、ヘッドランプカバーのような小さなヒーターでは通常1本、ヒーター面積の大きいリアガラスでもせいぜい10本以下の線発熱体を用いて、加熱したい面全体にわたって線発熱体を引き回していた。電流は、線発熱体の一方の端からもう一方の端まで線に沿って流れるため、すべての線発熱体が同じ材料で同じ線幅、線厚さであれば、線の存在密度により発熱量が決まる。つまり、どこでも同じような密度になるように発熱体を設ければ、加熱したい領域がどんな形状であろうとも均一な発熱を得ることができた。
【0045】
しかし、上述のような線発熱体の引き回しでは、肉眼で線発熱体を容易に視認でき、車両のウィンドウガラスに使用した場合に視界を妨げるという問題がある。そこで、本実施形態では、発熱区域43に金属細線42からなるメッシュ状パターン43Aを形成して、透明性の高い発熱部14を構成するようにしている。ところが、このようなメッシュ状パターン43Aを有する透明性の高い発熱部14では、電流が流れる経路は無数にあり、表面抵抗が少なく流れやすい経路に電流が集中する。そのため、発熱させたい領域を均一に加熱するには工夫が必要である。
【0046】
透明性の高い発熱部14を均一に加熱する方法は次のようにして達成できる。すなわち、発熱区域43が略長方形状となるようにメッシュ状パターン43Aを形成し、発熱区域43の上下方向両側に長手方向に沿って帯状の第1電極16及び第2電極18を設け、第1電極16と第2電極18との間に電圧を印加し、電流を流す。メッシュ状パターン43Aが形成された発熱区域43を略長方形状とすることで、ほぼ均一に発熱させることができる。
【0047】
また、線状発熱体をジグザグに引き回す構成の場合は、隣接する導線間で電位差が生じ、マイグレーションの原因になるという問題があったが、本実施形態では、導電性の金属細線42にて構成された多数の格子の交点を有するメッシュ状パターン43Aとしており、隣接する金属細線間は初めから短絡状態であるためマイグレーションがあっても問題にならない。
【0048】
また、メッシュ状パターンで発熱区域を形成した場合にはメッシュ状パターンと一対の電極との接触部の抵抗が大きくなり、接触部で発熱が起こる可能性がある。そのため、メッシュ状パターンと一対の電極との接触部の発熱を抑制するには工夫が必要である。
【0049】
メッシュ状パターンと一対の電極との接触部の発熱を抑制する方法は次のようにして達成できる。すなわち、導電性フィルム36の導電層40は、発熱部14に形成された金属細線42の細線間隔が大きいメッシュ状パターン43Aからなる発熱区域43と、第1電極16及び第2電極18に形成された金属細線42の細線間隔が小さいメッシュ状パターン44Aからなる電極区域44と、で構成されている。さらに、電極区域44全体の面積でメッシュ状パターン44Aで覆われている面積が占める割合(電極区域44がメッシュ状パターン44Aで覆われている面積の当該電極区域44全体の面積に占める割合)をAe%とし、発熱区域43全体の面積でメッシュ状パターン43Aで覆われている面積が占める割合(発熱区域43がメッシュ状パターン43Aで覆われている面積の当該発熱区域43全体の面積に占める割合)をAc%とすると、
Ac≦Ae、5≦Ae、かつ0<Ac≦20
を満たすように構成されている。
【0050】
上記関係式を満たすようにAc、Aeを設定することにより、発熱区域43の透明度が高くなり、運転席から発熱区域43のメッシュ状パターン43Aが視認されにくくなる。また、上記関係式を満たすようにAc、Aeを設定することにより、発熱区域43のメッシュ状パターン43Aと第1電極16又は第2電極18との接触部の抵抗、すなわち、金属細線42と金属箔48間の抵抗が小さくなり、接触部の発熱を抑制することができる。
【0051】
本実施形態では、発熱区域43には金属細線42の細線間隔が約120μmのメッシュ状パターン43Aを形成し、電極区域44には金属細線42の細線間隔が約600μmのメッシュ状パターン44Aを形成している。発熱区域43のメッシュ状パターン43Aと電極区域44のメッシュ状パターン44Aの細線間隔を変える構成であるため、製造が容易であり、低コスト化が可能である。
【0052】
電熱窓ガラス10は、Ac<Ae、10≦Ae、かつ0<Ac<10を満たすことがより好ましく、Ac<Ae、30≦Ae、かつ0<Ac<7を満たすことがさらに好ましい。
【0053】
また、本実施形態においては、発熱区域43の金属細線42の線幅が1μm以上、40μm以下であることが好ましい。これにより、発熱区域43のメッシュ状パターン43Aが見えにくくなり、透明性を向上させることができる。
【0054】
金属箔48は、銀、銅、アルミ等の低比抵抗の金属薄板を用いることが好ましい。また、酸化防止やハンダ性付与のため、金属箔48の表面に錫或いは錫と鉛の合金で被覆されていることが好ましい。
【0055】
非発熱区域45は、メッシュ状パターン43A、44Aがない領域であり、本発明において必須ではない。
【0056】
電極区域44は、発熱区域43のメッシュ状パターン43Aに均等に電流を供給するためのバスバーを形成する領域であり、本実施形態では、電極区域44のメッシュ状パターン44Aの上に導電性ペースト層46を介して金属箔48を積層している。
【0057】
次に、電熱窓ガラス10の製造方法について説明する。
【0058】
先ず、絶縁性の透明フィルム50(図5参照)上に導電層40として、導電性の金属細線42で構成されたメッシュ状パターン43Aからなる発熱区域43とメッシュ状パターン44Aからなる電極区域44とを形成する。メッシュ状パターン43A、44Aの形成方法については後述する。さらに、電極区域44のメッシュ状パターン44Aの上に銀ペーストなどの導電性ペーストを塗布し、加熱処理することにより導電性ペースト層46を形成する。
【0059】
次いで、ガラス30の上にPVBフィルム(樹脂層34)、上記の導電性フィルム36、導電性フィルム36の導電性ペースト層46上に金属箔テープ(金属箔48)、PVBフィルム(樹脂層38)、ガラス32を記載順に重ねて真空乾燥機に入れ、真空脱気した後、真空を保ったまま加熱して電熱窓ガラスの積層材料を仮接着させる。さらに、電熱窓ガラスの積層材料を真空乾燥機から取り出し、オートクレーブに移して空気圧0.1〜20MPaの圧力下で120〜150℃に加熱処理することにより積層材料が接着し、電熱窓ガラス10が得られる。電熱窓ガラス10の第1電極16及び第2電極18への電源22の接続は、電熱窓ガラス10を車両の窓枠に取り付けた後に行われる。
【0060】
ここで、透明フィルム50上に金属細線42によるメッシュ状パターン43A、44Aを形成するいくつの方法(第1方法〜第4方法)について、図5を参照しながら説明する。発熱区域43のメッシュ状パターン43Aと電極区域44のメッシュ状パターン44Aは金属細線42の細線間隔が異なるのみで形成方法は同じであるので、図5では、発熱区域43と電極区域44とを区別せずに説明する。
【0061】
第1方法は、透明フィルム50上に設けられた銀塩感光層を露光し、現像、定着することによって形成された金属銀部にてメッシュ状パターン43A、44Aを構成する方法である。
【0062】
具体的には、図5(A)に示すように、ハロゲン化銀54(例えば臭化銀粒子、塩臭化銀粒子や沃臭化銀粒子)をゼラチン56に混ぜてなる銀塩感光層58を透明フィルム50上に塗布する。なお、図5(A)〜図5(C)では、ハロゲン化銀54を「粒々」として表記してあるが、あくまでも本発明の理解を助けるために誇張して示したものであって、大きさや濃度等を示したものではない。
【0063】
その後、図5(B)に示すように、銀塩感光層58に対して発熱区域43のメッシュ状パターン43A及び電極区域44のメッシュ状パターン44Aの形成に必要な露光を行う。具体的には、発熱区域43では細線間隔が大きいメッシュ状パターンを露光し、電極区域44では発熱区域43よりも細線間隔が小さいメッシュ状パターンを露光する。本実施形態では、発熱区域43及び電極区域44の形成のための露光を同時に行う。ハロゲン化銀54は、光エネルギーを受けると感光して「潜像」と称される肉眼では観察できない微小な銀核を生成する。
【0064】
その後、潜像を肉眼で観察できる可視化された画像に増幅するために、図5(C)に示すように、現像処理を行う。具体的には、潜像が形成された銀塩感光層58を現像液(アルカリ性溶液と酸性溶液のどちらもあるが通常はアルカリ性溶液が多い)にて現像処理する。この現像処理とは、ハロゲン化銀粒子ないし現像液から供給された銀イオンが現像液中の現像主薬と呼ばれる還元剤により潜像銀核を触媒核として金属銀に還元されて、その結果として潜像銀核が増幅されて可視化された銀画像(現像銀60)を形成する。
【0065】
現像処理を終えたあとに銀塩感光層58中には光に感光できるハロゲン化銀54が残存するのでこれを除去するために図5(D)に示すように定着処理液(酸性溶液とアルカリ性溶液のどちらもあるが通常は酸性溶液が多い)により定着を行う。
【0066】
この定着処理を行うことによって、露光された部位には金属銀部62が形成され、露光されていない部位にはゼラチン56のみが残存し、光透過性部64となる。すなわち、透明フィルム50上に金属銀部62と光透過性部64との組み合わせによりメッシュ状パターン43Aからなる発熱区域43及びメッシュ状パターン44Aからなる電極区域44が形成されることになる。
【0067】
ハロゲン化銀54として臭化銀を用い、チオ硫酸塩で定着処理した場合の定着処理の反応式を以下に示す。
AgBr(固体)+2個のS23イオン → Ag(S232
(易水溶性錯体)
【0068】
すなわち、2個のチオ硫酸イオンS23とゼラチン56中の銀イオン(AgBrからの銀イオン)が、チオ硫酸銀錯体を生成する。チオ硫酸銀錯体は水溶性が高いのでゼラチン56中から溶出されることになる。その結果、現像銀60が金属銀部62として定着されて残ることになる。この金属銀部62にてメッシュ状パターン43A、44Aが構成されることになる。
【0069】
なお、現像工程は、潜像に対し還元剤を反応させて現像銀60を析出させる工程であり、定着工程は、現像銀60にならなかったハロゲン化銀54を水に溶出させる工程である。詳細は、T.H.James, The Theory of the Photographic Process, 4th ed., Macmillian Publishing Co.,Inc, NY,Chapter15, pp.438−442. 1977を参照されたい。
【0070】
現像処理は多くの場合アルカリ性溶液で行われることから、現像処理工程から定着処理工程に入る際に、現像処理にて付着したアルカリ溶液が定着処理溶液(多くの場合は酸性溶液である)に持ち込まれるため、定着処理液の活性が変わるといった問題がある。また、現像処理槽を出た後、膜に残留した現像液により意図しない現像反応が更に進行する懸念もある。そこで、現像処理後で、定着処理工程に入る前に、酢酸(酢)溶液等の停止液で銀塩感光層58を中和もしくは酸性化することが好ましい。
【0071】
もちろん、図5(E)に示すように、上述のようにして、金属銀部62を形成した後、例えばめっき処理(無電解めっきや電気めっきを単独ないし組み合わせる)を行って、金属銀部62のみに導電性金属66を担持させることによって、金属銀部62と該金属銀部62に担持された導電性金属66にてメッシュ状パターン43A、44Aを形成するようにしてもよい。
【0072】
本実施形態では、図6に示されるように、現像定着により金属銀部62を形成した後に、銅を電解めっきして銅めっき層68を形成する。さらに、ニッケルを黒化層めっきすることにより、金属銀部62と銅めっき層68の表面に黒化層70を形成する。すなわち、金属銀部62に担持された銅めっき層68及びニッケルの黒化層70にて発熱区域43のメッシュ状パターン43Aを形成する。これは、銅めっき層68は赤いため、ニッケルの黒化層70を形成することにより、メッシュ状パターン43Aを見えにくくするためである。また、電極区域44ではニッケルの黒化層めっきを行わず、金属銀部62に担持された銅めっき層68にて電極区域44のメッシュ状パターン44Aを形成する。
【0073】
次に、第2方法は、例えば透明フィルム上に形成された銅箔上のフォトレジスト膜を露光、現像処理してレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する銅箔をエッチングすることによって、銅箔によるメッシュ状パターンを形成する。
【0074】
次に、第3方法は、透明フィルム上に金属微粒子を含むペーストを印刷することによってメッシュ状パターンを形成する方法である。もちろん、印刷されたペーストに、金属めっきを行うことによって、ペーストと金属めっきによるメッシュ状パターンを形成するようにしてもよい。
【0075】
第4方法は、透明フィルムに金属薄膜をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷してメッシュ状パターンを形成する方法である。
【0076】
さらに、メッシュ状パターンの形成方法として、銀塩写真とカレンダー処理を組み合わせたものを採用することができる。ここで、カレンダー処理とは、露光・現像後の後処理であり、圧力をかけて平滑化する処理をいう。カレンダー処理の直前あるいは直後に80℃以上の温度の蒸気に接触させるとカレンダー処理による効果をより引き出すことができる。
【0077】
以上の方法によって形成された導電層40を備えた電熱窓ガラス10は、発熱区域43の発熱の均一性を向上させることができ、マイグレーションの懸念の解消を実現することができる。
【0078】
また、電熱窓ガラス10は、電極区域44がメッシュ状パターン44Aで覆われている面積の当該電極区域44全体の面積に占める割合をAe%、発熱区域43がメッシュ状パターン43Aで覆われている面積の当該発熱区域43全体の面積に占める割合をAc%とすると、
Ac≦Ae、5≦Ae、かつ0<Ac≦20
を満たしていることにより、発熱区域43の透明度が高くなり、運転席から発熱区域43のメッシュ状パターン43Aが視認されにくくなる。また、上記関係式を満たすようにAc、Aeを設定することにより、発熱区域43のメッシュ状パターン43Aと第1電極16又は第2電極18との接触部の抵抗、すなわち、金属細線42と金属箔48間の抵抗が小さくなり、接触部の発熱を抑制することができる。
【0079】
さらに、電熱窓ガラス10は以下のような条件を満たしている。
【0080】
(1)発熱区域43の可視光線透過率は、70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは89%以上に設定されている。
【0081】
(2)CIE1976(L*a*b*)表色系で表した発熱区域43の反射色度は、L*は22以下が好ましく、16以下が更に好ましく、12以下が特に好ましい。またa*とb*は共に−4から+4が好ましく−2から+2が特に好ましい。
【0082】
(3)可視光線の反射率は4%以下が好ましく、3%以下が更に好ましく、2.4%以下が特に好ましい。
【0083】
(4)金属細線42が直線の時は、対向車のライトなどで光干渉によるスターマークを生じる可能性があり、目障りである。金属細線を曲線にしたり、線と線との間隔を広くとるなどして光干渉を少なくすることができる。金属細線は波線が好ましい。また、金属細線は、網目状でなく交差のない平行線でも可能である。
【0084】
(5)導電性フィルム36あるいは電熱窓ガラス10は、少なくとも一対の電極と、その電極間に存在する発熱区域からなる1組のヒーター群よりなるが、1枚の導電性フィルムあるいは電熱窓ガラスが2組以上のヒーター群を有していても良い。1枚の導電性フィルムあるいは電熱窓ガラスの中に複数のヒーター群がある場合、それぞれの発熱区域の発熱量を変えることにより電熱窓ガラスに発熱分布をつくることができる。例えば、導電性フィルムあるいは電熱窓ガラスの中央部分を速く昇温させて霜を融かすなどの設定を行うことができる。発熱量を変える方法は、金属細線の線幅を変えたり、金属細線の線間距離を変えたりすることにより実施することができる。
【0085】
次に、本実施形態に係る導電層40において、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いてメッシュ状パターン43A、44Aを形成する方法を中心にして述べる。
【0086】
本実施形態に係るメッシュ状パターン43A、44Aは、上述したように、透明フィルム50上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって露光部及び未露光部に、それぞれ金属銀部62及び光透過性部64を形成することで形成することができる(図5を参照)。さらに金属銀部62に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部62に導電性金属66を担持させるようにしてもよい。
【0087】
メッシュ状パターン43A、44Aの形成方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの態様が含まれる。
【0088】
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は物理現像して金属銀部62を該感光材料上に形成させる態様。
【0089】
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を物理現像して金属銀部62を該感光材料上に形成させる態様。
【0090】
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部62を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0091】
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電膜等の透光性導電膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は物理現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
【0092】
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性導電膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀の比表面は小さい球形である。
【0093】
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に透光性導電膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
【0094】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
【0095】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
【0096】
(感光材料)
[透明フィルム50]
本実施形態の製造方法に用いられる透明フィルム50としては、フレキシブルなプラスチックフイルムを用いることができる。
【0097】
上記プラスチックフイルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、EVA等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル樹脂、ポリイミド、又はアラミド等を用いることができる。
【0098】
本実施形態においては、透光性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレートフイルムが適しているが、耐熱性・熱可塑性等の必要性により、適宜選択される。
【0099】
[保護層]
用いられる感光材料は、後述する乳剤層上に保護層を設けていてもよい。本実施形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層に形成される。上記保護層は、めっき処理する上では設けない方が好ましく、設けるとしても薄い方が好ましい。その厚みは0.2μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法の形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0100】
[乳剤層]
本実施形態の製造方法に用いられる感光材料は、透明フィルム50上に、光センサとして銀塩を含む乳剤層(銀塩感光層58)を有することが好ましい。本実施形態における乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダ、溶媒等を含有することができる。
【0101】
<銀塩>
本実施形態で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩が好ましく、特に銀塩がハロゲン化銀写真感光材料用ハロゲン化銀粒子の形で用いられるのが好ましい。ハロゲン化銀は、光センサとしての特性に優れている。
【0102】
ハロゲン化銀写真感光材料の写真乳剤の形で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
【0103】
本実施形態では、光センサとして機能させるためにハロゲン化銀を使用することが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本実施形態においても用いることができる。
【0104】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0105】
なお、ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0106】
本実施形態に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、4以上の階調を得るためや低かぶりを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物等を含有することが好ましい。
【0107】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0108】
本実施形態では、さらに光センサとしての感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感の方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感等のカルコゲン増感、金増感等の貴金属増感、還元増感等を用いることができる。これらは、単独又は組み合わせて用いられる。上記化学増感の方法を組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法等の組み合わせが好ましい。
【0109】
<バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明において、上記バインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0110】
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0111】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、銀塩含有層中のAg/バインダ体積比が1/4以上になるように調節することが好ましく、1/2以上になるように調節することがさらに好ましい。
【0112】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0113】
本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0114】
次に、メッシュ状パターン43A、44Aを形成するための各工程について説明する。
【0115】
[露光]
本実施形態では、透明フィルム50上に設けられた銀塩感光層58を有する感光材料への露光が行われる。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0116】
パターン像を形成させる露光方式としては、均一光をマスクパターンを介して感光面に照射してマスクパターンを像様形成させる面露光方式と、レーザ光等のビームを走査してパターン状の照射部を感光性面上に形成させる走査露光方式とがある。
【0117】
露光は、種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、本実施形態における露光は、ガスレーザ、発光ダイオード、半導体レーザ、半導体レーザ又は半導体レーザを励起光源に用いた固体レーザと非線形光学結晶を組合わせた第2高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらに、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ等も用いることができる。システムをコンパクトで、安価なものにするために、露光は、半導体レーザ、半導体レーザあるいは固体レーザと非線形光学結晶を組合わせた第2高調波発生光源(SHG)を用いて行うことがより好ましい。
【0118】
銀塩感光層58をパターン状に露光する方法は、レーザービームによる走査露光も好ましい。特開2000−39677号公報記載のキャプスタン方式のレーザ走査露光装置も好ましく、さらには該キャプスタン方式においてポリゴンミラーの回転によるビーム走査の代わりに特開2004−1224号公報記載のDMDを光ビーム走査系に用いることも好ましい。特に、3m以上の長尺フレキシブルフイルムヒータを作製する場合には、湾曲した露光ステージ上において、感光材料を搬送しながらレーザビームで露光するのが好ましい。
【0119】
メッシュ状パターン43A、44Aは、後述するように、実質的に平行の直線状細線が交叉してなす三角形、四角形(菱形、正方形等)、六角形等の格子紋様や、平行な直線やジグザグ線、波線等、電圧の印加される電極間に電流を流せる構造であれば特に限定されない。
【0120】
[現像処理]
本実施形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。
【0121】
リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部に金属銀部、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。
【0122】
現像処理で用いられる現像液は、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えばベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合、特に、ポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0123】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0124】
本実施形態における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透光性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0125】
[物理現像及びめっき処理]
本実施形態では、上述した露光及び現像処理により形成された金属銀部62の導電性を向上させる目的で、金属銀部62に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本実施形態では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部62に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部62に担持させることもできる。
【0126】
本実施形態における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオン等の金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフイルム、インスタントスライドフイルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。
【0127】
また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
【0128】
なお、本発明は、以下に記載の公開番号の技術と適宜組合わせて使用することができる。特開2004−221564号公報、特開2004−221565号公報、特開2007−200922号公報、特開2006−352073号公報、国際公開第2006/001461号パンフレット、特開2007−129205号公報、特開2007−235115号公報、特開2007−207987号公報、特開2006−012935号公報、特開2006−010795号公報、特開2006−228469号公報、特開2006−332459号公報、特開2007−207987号公報、特開2007−226215号公報、国際公開第2006/088059号パンフレット、特開2006−261315号公報、特開2007−072171号公報、特開2007−102200号公報、特開2006−228473号公報、特開2006−269795号公報、特開2006−267635号公報、特開2006−267627号公報、国際公開第2006/098333号パンフレット、特開2006−324203号公報、特開2006−228478号公報、特開2006−228836号公報、特開2006−228480号公報、国際公開2006/098336号パンフレット、国際公開第2006/098338号パンフレット、特開2007−009326号公報、特開2006−336057号公報、特開2006−339287号公報、特開2006−336090号公報、特開2006−336099号公報、特開2007−039738号公報、特開2007−039739号公報、特開2007−039740号公報、特開2007−002296号公報、特開2007−084886号公報、特開2007−092146号公報、特開2007−162118号公報、特開2007−200872号公報、特開2007−197809号公報、特開2007−270353号公報、特開2007−308761号公報、特開2006−286410号公報、特開2006−283133号公報、特開2006−283137号公報、特開2006−348351号公報、特開2007−270321号公報、特開2007−270322号公報、国際公開第2006/098335号パンフレット、特開2007−088218号公報、特開2007−201378号公報、特開2007−335729号公報、国際公開第2006/098334号パンフレット、特開2007−134439号公報、特開2007−149760号公報、特開2007−208133号公報、特開2007−178915号公報、特開2007−334325号公報、特開2007−310091号公報、特開2007−311646号公報、特開2007−013130号公報、特開2006−339526号公報、特開2007−116137号公報、特開2007−088219号公報、特開2007−207883号公報、特開2007−207893号公報、特開2007−207910号公報、特開2007−013130号公報、国際公開第2007/001008号パンフレット、特開2005−302508号公報、特開2005−197234号公報。
【0129】
なお、上記実施形態では、図1に示されるように、第1電極16と第2電極18の位置は発熱部14の上下に対向するように配置されているが、これに限定されず、発熱部14の左右に対向するように配置してもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、図3及び図4に示されるように、導電性フィルム36が細線間隔が大きいメッシュ状パターン43Aからなる発熱区域43と、発熱区域43よりも細線間隔が小さいメッシュ状パターン44Aからなる電極区域44と、を備え、電極区域44のメッシュ状パターン44Aに導電性ペースト層46と金属箔48が順次積層された構成であるが、これに限定されず、電極区域44に金属箔48を積層する構成でもよい。電極区域44に導電性ペースト層だけを積層する構成でもよい。
【0131】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態の電熱窓ガラスについて以下に説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0132】
図7に示されるように、電熱窓ガラス90は、導電層94が形成された導電性フィルム92を備える点は第1実施形態と同じであるが、導電層94の構成が異なる。すなわち、導電層94は、細い金属細線42で構成されたメッシュ状パターン96Aからなる発熱区域96と、金属細線42よりも太い金属細線97で構成されたメッシュ状パターン98Aからなる電極区域98と、備えている。金属細線42の細線幅は、例えば約20μmであり、金属細線97の細線幅は、例えば約40μmである。電極区域98のメッシュ状パターン98Aには、図3に示す第1実施形態と同様に、導電性ペースト層46、金属箔48が順次積層されて第1電極16及び第2電極18が構成されている。
金属細線42の細線幅は、5〜50μmが好ましく、10〜30μmが更に好ましい。金属細線97の細線幅は、20μm以上が好ましく、40μm以上が更に好ましい。40μm以上には無限大も含まれる。線幅が無限大とは空間部分がなく電極区域全体が金属層で覆われている状態を表す。
【0133】
また、電極区域98が太い金属細線97からなるメッシュ状パターン98Aで覆われている面積の当該電極区域98全体の面積に占める割合をAe%、発熱区域96が細い金属細線42からなるメッシュ状パターン96Aで覆われている面積の当該発熱区域96全体の面積に占める割合をAc%とすると、
Ac≦Ae、5≦Ae、かつ0<Ac≦20
を満たしている。
【0134】
このような電熱窓ガラス90では、上記関係式を満たすようにAc、Aeを設定することにより、発熱区域96の透明度が高くなり、運転席から発熱区域96のメッシュ状パターン96Aが視認されにくくなる。また、上記関係式を満たすようにAc、Aeを設定することにより、発熱区域96のメッシュ状パターン96Aと第1電極16又は第2電極18との接触部の抵抗、すなわち、金属細線42と金属箔48間の抵抗が小さくなり、接触部の発熱を抑制することができる。
【0135】
なお、上記実施形態では、電極区域98のメッシュ状パターン98Aに導電性ペースト層46と金属箔48が順次積層された構成であるが、これに限定されず、電極区域98のメッシュ状パターン98Aに導電性ペースト46あるいは金属箔48の一方だけを積層する構成でもよい。
【0136】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態の電熱窓ガラスについて以下に説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と実質的に同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0137】
図8に示されるように、電熱窓ガラス100は、電熱窓ガラス本体102の発熱部104の上下に第1電極106と第2電極18を備える点は第1実施形態と同じであるが、発熱部104及び第1電極106の構成が異なる。すなわち、第1電極106は、両側部106Aが電熱窓ガラス本体102の上辺に沿って横線状に形成されており、中央部106Bが電熱窓ガラス本体102の内側に凹状に略直角に折れ曲がった屈曲部となっている。第1電極106の両側部106Aと第2電極18との距離は、第1電極106の中央部106Bと第2電極18との距離よりも長い。
【0138】
第1電極106の中央部106Bの上方には、第1電極106の屈曲部で囲まれた部分に非発熱区域108が形成されている。非発熱区域108には、金属細線によるメッシュ状パターンは形成されていない。発熱部104を金属細線によるメッシュ状パターンで形成すると、これらの領域でETCシステムなどで使用される電波が遮蔽される可能性がある。このため、第1電極106の中央部106Bの上方に金属細線によるメッシュ状パターンを形成しない非発熱区域108を設けることで、電波が遮蔽されるのを阻止するものである。
【0139】
図8及び図9に示されるように、発熱部104は、第1電極106の両側部106Aと第2電極18との間に挟まれた第1発熱区域110と、第1電極106の中央部106Bと第2電極18との間に挟まれた第2発熱区域112と、を備えている。第1発熱区域110と第2発熱区域112との境界には、電熱窓ガラス本体102の上下方向に沿って第1発熱区域110及び第2発熱区域112よりも電気抵抗が高い高抵抗区域114が設けられている。高抵抗区域114は、第1発熱区域110及び第2発熱区域112よりも電気抵抗が3倍以上、好ましくは10倍以上高いことが望ましい。また、高抵抗区域114に絶縁層を塗布してもよい。
【0140】
発熱部104は、第1電極106と第2電極18との距離に反比例するように金属細線116の細線間隔(線間距離)を変化させている。すなわち、第1発熱区域110には、金属細線116の細線間隔が小さいメッシュ状パターン110Aが形成されており、第2発熱区域112には、金属細線116の細線間隔が第1発熱区域110よりも大きいメッシュ状パターン112Aが形成されている。一般的に、第1電極と第2電極との距離が異なる領域を形成すると、第1電極と第2電極との距離が短い領域に電流が集中して流れる傾向がある。このため、本実施形態では、第1発熱区域110と第2発熱区域112の表面抵抗が同じになるように金属細線116の細線間隔を調整することにより、第1発熱区域110及び第2発熱区域112の単位面積当たりの発熱量がほぼ均一になるようにしたものである。
【0141】
本実施形態では、第1発熱区域110には金属細線116の細線間隔が約650μmのメッシュ状パターン110Aを形成し、第2発熱区域112には金属細線116の細線間隔が約750μmのメッシュ状パターン112Aを形成している。また、電極区域44には、金属細線42の細線間隔が約120μmのメッシュ状パターン44Aを形成している。
【0142】
このような電熱窓ガラス100は、非発熱区域108を設けることで、ETCシステムなどで使用される電波が遮蔽されるのをより確実に阻止することができる。また、非発熱区域108を設けるために第1電極106の中央部106Bを屈曲させた場合でも、第1発熱区域110と第2発熱区域112の表面抵抗が同じになるように金属細線116の細線間隔を調整することにより、第1発熱区域110及び第2発熱区域112の単位面積当たりの発熱量をほぼ均一にすることができる。また、第1発熱区域110及び第2発熱区域112の金属細線116の細線間隔を調整するため、製造が容易であり、低コスト化が可能である。
【0143】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態の電熱窓ガラスについて以下に説明する。なお、第1実施形態〜第3実施形態と実質的に同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0144】
図10に示されるように、電熱窓ガラス120は、電熱窓ガラス本体102の発熱部104の上下に第1電極106と第2電極18を備える点は第3実施形態と同じであるが、第1発熱区域122及び電極区域126の構成が異なる。
【0145】
この電熱窓ガラス120では、第1電極106と第2電極18との距離に比例するように金属細線116、124の細線幅を変化させている。すなわち、第1発熱区域122と第2発熱区域112の表面抵抗が同じになるように、第1発熱区域122では金属細線124の細線幅が太いメッシュ状パターン122Aを形成し、第2発熱区域112では第1発熱区域122よりも金属細線116の細線幅が細いメッシュ状パターン112Aを形成する。
【0146】
また、電極区域126では、第1発熱区域122よりも細線幅が太い金属細線97の細線幅が太いメッシュ状パターン126Aを形成する。
【0147】
本実施形態では、金属細線124の細線幅は約40μmに設定し、金属細線116の細線幅は約20μmに設定している。
【0148】
このような電熱窓ガラス120は、第3実施形態と同様に非発熱区域108を設けることで、ETCシステムなどで使用される電波が遮蔽されるのをより確実に阻止することができる。また、第1発熱区域122と第2発熱区域112の表面抵抗が同じになるように金属細線116、124の細線幅を調整することにより、第1発熱区域122及び第2発熱区域112の単位面積当たりの発熱量をほぼ均一にすることができる。また、第1発熱区域122及び第2発熱区域112の金属細線116、124の細線幅を調整するため、製造が容易であり、低コスト化が可能である。
【実施例】
【0149】
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、下記実施例は説明を分りやすくするために、図1に示す電熱窓ガラス10の各部材の構成と同一の符号を用いて説明しているが、各部材の構成は実施例1〜実施例9に記載された通りである。
【0150】
〔実施例1〕
<メッシュの形成>
水媒体中のAg60gに対してゼラチン7.5gを含む、球相当径平均0.05μmの沃臭化銀粒子(I=2モル%)を含有する乳剤を調製した。この際、Ag/ゼラチン体積比は1/1とし、ゼラチン種としては平均分子量2万の低分子量ゼラチンを用いた。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、更に塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が1g/m2となるようにポリエチレンテレフタレート(PET)上に塗布した。PETは塗布前にあらかじめ親水化処理したものを用いた。乾燥させた塗布膜に次のような現像銀像を与えうるフォトマスクを介して紫外線ランプを用いて露光し、下記の現像液を用いて25℃で45秒間現像し、さらに定着液(スーパーフジフィックス:富士写真フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0151】
[マスクのメッシュパターン]
導電性フィルム36の発熱区域43は線幅17μm、ピッチ600μmのメッシュ状パターンを露光し、電極区域44は線幅17μm、ピッチ600μmのメッシュ状パターンを露光した。
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N−メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
【0152】
次いで現像・定着により形成された金属銀部62に銅を電解めっきして銅めっき層68を形成する。銅めっき後の細線幅は約20μmであった。更に金属銀部62及び銅めっき層68にニッケルをめっきして黒化層70を形成する。このようにして形成された金属細線42による発熱区域43のメッシュ状パターン43Aの表面抵抗は0.34Ω/□であった。発熱区域43のサイズは横650mm、縦760mmとし、電極区域44は二つ共に横方向に650mm、幅25mmとした。電極区域44の上に太陽インキ製造株式会社製銀ペーストECM−100 AF4820を塗布し、120℃で30分間熱処理し、銀ペースト層(導電性ペースト層46)を形成する。このとき、電極区域44の金属細線42の割合Ae(%)と発熱区域43の金属細線42の割合Ac(%)は共に6.6%であった。
【0153】
ガラス30の上にPVBフィルム(樹脂層34)、上記の導電性フィルム36、この導電性フィルム36の電極区域44上にスリーエム社製アルミ箔テープAL−50BT(金属箔48)、PVBフィルム(樹脂層38)、ガラス32を記載順に重ねて真空乾燥機に入れ、真空脱気したのち真空を保ったまま110℃に加熱する。PVBフィルム(樹脂層34、38)が透明になったら真空乾燥機から取り出し、各アルミ箔テープ(金属箔48)を直流定電圧電源につなぎ、発熱区域43の中央が45℃になるように電圧を調整しながら発熱させる。発熱状態を放射温度計で観察し、第1電極16及び第2電極18の発熱を測定した。表面抵抗の測定には、三菱化学株式会社製MCP−T610の表面抵抗計を使用した。
【0154】
〔実施例2〕
ニッケルの黒化層めっきを発熱区域43のみに実施し、電極区域44は黒化層めっきを行わなかった。また、電極区域44には銀ペーストの塗布を行わなかった。そのほかは実施例1と同様にして電熱窓ガラスを作成した。
【0155】
〔実施例3〕
ニッケルの黒化層めっきを発熱区域43のみに実施し、電極区域44は黒化めっきを行わなかったほかは実施例1と同様にして電熱窓ガラスを作成した。
【0156】
〔実施例4〕
電極区域44のメッシュ状パターンの露光を線幅17μm、ピッチ120μmにしたほかは実施例2と同じにして電熱窓ガラスを作成した。電極区域44の金属細線42の割合Ae(%)は30.6%であり、発熱区域43の金属細線42の割合Ac(%)は6.6%であった。
【0157】
〔実施例5〕
電極区域44のメッシュ状パターンの露光を線幅36μm、ピッチ600μmにしたほかは実施例2と同じにして電熱窓ガラスを作成した。銅めっき後の電極区域44の金属細線の線幅は40μmであった。電極区域44の金属細線42の割合Ae(%)は12.9%であり、発熱区域43の金属細線42の割合Ac(%)は6.6%であった。
【0158】
〔実施例6〕
電極区域44のメッシュ状パターンの露光を線幅17μm、ピッチ120μmにしたほかは実施例3と同じにして電熱窓ガラスを作成した。電極区域44の金属細線42の割合Ae(%)は30.6%であり、発熱区域43の金属細線42の割合Ac(%)は6.6%であった。
【0159】
〔比較例1〕
電極区域44には銀ペーストの塗布を行わなかった。また、電極区域44のメッシュ状パターンに黒化層めっきを行った。そのほかは実施例1と同様にして電熱窓ガラスを作成した。
【0160】
上記実施例1〜実施例6及び比較例1の評価結果を表1に示す。
【表1】

【0161】
導電性フィルム36上の金属細線42とアルミ箔(金属箔48)との接触抵抗が大きい電熱窓ガラスは、電極区域44と発熱区域43の境界部で発熱し、電極区域44が高温になる。表1に示されるように、比較例1では、電極区域44に銀ペーストを塗布しないことにより、電極区域44が高温になり、部分的に100℃を越えて焼け焦げることが確認された。
【0162】
実施例1〜実施例6に示されるように、電極区域44の金属細線42の割合Aeを大きくしたり、金属細線42とアルミ箔との間に銀ペースト層(導電性ペースト層46)を設けることにより、金属細線42とアルミ箔間の接触抵抗が下がり、電極区域44の発熱を減少させることができた。
【0163】
表1により、電極区域44の金属細線42の割合Ae(%)と、発熱区域43の金属細線42の割合Ac(%)は、
【0164】
Ac≦Ae、5≦Aeを満たすことが好ましい。また、発熱区域43のメッシュ状パターン43Aを視認されにくくするためには、0<Ac≦20を満たすことが好ましい。
【0165】
〔実施例7〕
<メッシュの形成>
水媒体中のAg80gに対してゼラチン5gを含む、球相当径平均0.05μmの沃臭化銀粒子(I=2モル%)を含有する乳剤を調製した。この際、Ag/ゼラチン体積比は2/1とし、ゼラチンはフタル化ゼラチンを用いた。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、更に塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が1.5g/m2となるようにポリエチレンテレフタレート(PET)上に塗布した。PETは塗布前にあらかじめ親水化処理したものを用いた。電極区域44は線幅20μm、ピッチ100μmのメッシュ状パターンを、発熱区域43は線幅20μm、ピッチ600μmのメッシュ状パターンを露光し、実施例1と同様に現像定着処理を行った。その後3000N/cmの線圧でカレンダー処理し、更に100℃の水蒸気中に1分間曝して乾燥した。
実施例2と同様に電極区域にアルミ箔テープを貼り、その後合せガラス加工することにより実施例7の電熱窓ガラスを作成した。電極区域44の金属細線42の割合Ae(%)は36.0%であり、発熱区域43の金属細線42の割合Ac(%)は6.6%であった。
【0166】
〔実施例8〕
電極区域44の露光を線幅40μm、ピッチ600μmとしたほかは実施例7と同様にして電熱窓ガラスを作成した。
【0167】
上記実施例7及び実施例8の評価結果を表2に示す。
【表2】

【0168】
表2に示されるように、メッシュ状パターンの露光、現像後に、金属銀部をカレンダー処理することにより、電極区域44の発熱を減少させることができた。これは、カレンダー処理により金属銀部が圧縮されて導電性が上がったためと考えられる。
【0169】
〔実施例9〕
この実施例9では、図11に示す電熱窓ガラス130を作成した。この電熱窓ガラス130では、長手方向両側の第1発熱区域110は金属細線116の細線幅17μm、細線間隔650μmのメッシュ状パターン、第2発熱区域112は金属細線116の細線幅17μm、細線間隔750μmのメッシュ状パターン、また電極区域44は金属細線42の細線幅17μm、細線間隔120μmのメッシュ状パターンになるようにそれぞれ露光し、現像及び定着を行った。第1発熱区域110と第2発熱区域112との境界部には、約1mm幅に絶縁膜(高抵抗区域114に相当する)を塗布した。その後、金属銀部に銅を電解めっきすることにより、絶縁膜で覆われた部分以外の金属細線116は赤い銅で覆われた。
【0170】
銅めっき後の金属細線116の細線幅は約20μmであった。更にニッケルからなる黒化層を銅の上にめっきした。第1発熱区域110のサイズは横600mm、縦750mmとし、第2発熱区域112のサイズは横200mm、縦650mmとした。電極区域44の金属細線42の割合Aeは30.6%、第1発熱区域110の金属細線116の割合Acは6.1%、第2発熱区域112の金属細線116の割合Acは5.3%であった。第1発熱区域110の表面抵抗は0.37Ω/□、第2発熱区域112の表面抵抗は0.42Ω/□であった。電極区域44に太陽インキ製造株式会社製銀ペーストECM−100 AF4820を塗布し、120℃で30分間熱処理することにより、銀ペースト層(導電性ペースト層46)を形成した。
【0171】
ガラスの上にPVBフィルム、前記の導電性フィルム、導電性フィルムの電極区域44上にスリオンテック製No.8701銅箔テープ(24mm幅)、PVBフィルム、ガラスを記載順に重ねて真空乾燥機に入れる。上部の第1電極132の曲げ部132Aは銅箔テープを折り曲げることにより1本の銅箔テープで作成した。真空脱気したのち真空を保ったまま110℃に加熱する。
【0172】
PVBフィルムが透明になったら真空乾燥機から取り出し、第1電極132と第2電極18(一対の銅箔テープ)を直流12ボルトの電源22につなぎ発熱させたところ、安定状態で48アンペアの電流が得られた。発熱状態を放射温度計で観察したところ、放熱の影響がある発熱部104の周縁域を除いて長手方向両側の第1発熱区域110及び第2発熱区域112のほぼ全域が45℃から50℃の温度であった。
【0173】
また、電熱窓ガラス130を用いてETCシステムの電波を受信する試験を行ったところ、電波を遮蔽しないことが確認された。
【0174】
なお、本発明に係る電熱窓ガラス及び電熱窓ガラスの製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0175】
10 電熱窓ガラス
14 発熱部
16 第1電極(電極)
18 第2電極(電極)
20 非発熱部
22 電源(電気供給源)
30 ガラス(ガラス層)
32 ガラス(ガラス層)
36 導電性フィルム
40 導電層(導電性層)
42 金属細線
43 発熱区域
43A メッシュ状パターン(金属細線群)
44 電極区域
44A メッシュ状パターン(金属細線群)
45 非発熱区域
46 導電性ペースト層
48 金属箔
50 透明フィルム(支持体)
90 電熱窓ガラス
92 導電性フィルム
94 導電層(導電性層)
96 発熱区域
96A メッシュ状パターン(金属細線群)
97 金属細線
98 電極区域
98A メッシュ状パターン(金属細線群)
100 電熱窓ガラス
104 発熱部
106 第1電極(電極)
108 非発熱区域
110 第1発熱区域(電極間の距離が異なる区域)
110A メッシュ状パターン(金属細線群)
112 第2発熱区域(電極間の距離が異なる区域)
112A メッシュ状パターン(金属細線群)
114 高抵抗区域
116 金属細線
120 電熱窓ガラス
122 第1発熱区域(電極間の距離が異なる区域)
122A メッシュ状パターン(金属細線群)
124 金属細線
126 電極区域
126A メッシュ状パターン(金属細線群)
130 電熱窓ガラス
132 第1電極(電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラス材料からなる1枚以上のガラス層と、
前記ガラス層に支持された支持体に多数の金属細線群が形成された導電性層と、
前記導電性層の面方向の両側に設けられ、前記導電性層に電気を供給する一対の電極と、を有し、
前記導電性層が、前記電極が設けられた電極区域と、前記電極区域に挟まれ前記金属細線群が発熱する発熱区域と、を備え、前記電極区域の面積Eで前記金属細線群で覆われている面積eが占める割合をAe%、前記発熱区域の面積Cで前記金属細線群で覆われている面積cが占める割合をAc%とすると、
Ac≦Ae、5≦Ae、かつ0<Ac≦20
を満たす電熱窓ガラス。
【請求項2】
前記支持体は、前記金属細線群に覆われていない非発熱区域を有する請求項1に記載の電熱窓ガラス。
【請求項3】
前記電極区域の前記金属細線群の上に、導電性ペースト層と金属箔が順次積層されており、
前記金属箔は、電気供給源と接続された電線に接続されている請求項1又は請求項2に記載の電熱窓ガラス。
【請求項4】
前記電極区域の前記金属細線群の上に金属箔が積層されており、
前記電極区域の前記金属細線群の線幅が前記発熱区域の前記金属細線群の線幅よりも大きく、かつ、前記金属箔は、電気供給源と接続された電線に接続されている請求項1又は請求項2に記載の電熱窓ガラス。
【請求項5】
前記電極区域の前記金属細線群の上に金属箔が積層されており、
前記電極区域の単位面積当たりの前記金属細線群の数が前記発熱区域の単位面積当たりの前記金属細線群の数よりも多く、かつ、前記金属箔は、電気供給源と接続された電線に接続されている請求項1又は請求項2に記載の電熱窓ガラス。
【請求項6】
前記発熱区域の前記金属細線群を黒化処理し、前記電極区域の前記金属細線群を黒化処理しない請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の電熱窓ガラス。
【請求項7】
前記一対の電極の少なくとも一方が途中で折れ曲がり、前記一対の電極間の距離が異なる区域を2つ以上有する請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電熱窓ガラス。
【請求項8】
前記一対の電極間の距離が短い区域と隣接する位置に前記金属細線群に覆われていない非発熱区域が設けられている請求項7に記載の電熱窓ガラス。
【請求項9】
前記一対の電極に電圧を印加して前記発熱区域の前記金属細線群を発熱させたときに、前記発熱区域の単位面積当たりの発熱量が均一になるように前記発熱区域の前記金属細線群の表面抵抗が制御されている請求項7又は請求項8に記載の電熱窓ガラス。
【請求項10】
前記一対の電極間の距離に比例するように前記金属細線群の線幅を変化させる請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の電熱窓ガラス。
【請求項11】
前記一対の電極間の距離に反比例するように前記金属細線群の金属細線間距離を変化させる請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の電熱窓ガラス。
【請求項12】
前記一対の電極間の距離が異なる区域の境界に前記区域よりも表面抵抗が高い高抵抗区域が設けられている請求項7から請求項11までのいずれか1項に記載の電熱窓ガラス。
【請求項13】
前記一対の電極間の距離が異なる区域の境界に絶縁層が設けられている請求項7から請求項11までのいずれか1項に記載の電熱窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−251230(P2010−251230A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101749(P2009−101749)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】