説明

電熱線入り合せガラス

【課題】電熱線の近傍で歪みが生じない電熱線入り合せガラスを提供する。
【解決手段】機能層14の上下に上側接着層15及び下側接着層13を被せ、これらの上側・下側接着層13の上下に上側ガラス板16及び下側ガラス板11を被せ、下側接着層13と下側ガラス板11との間に電熱線12を介在させてなる電熱線入り合せガラス10において、機能層14は、下側接着層13よりも柔らかい素材が用いられ、下側接着層13の厚さの下限値は、電熱線12の直径の19倍である。電熱線12の直径の19倍以上に設定することで、電熱線12の近傍で生じ得る歪みを十分に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間膜とガラス板との間に電熱線を介在させた電熱線入り合せガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板に電熱線を載せた状態で中間膜を被せ、この中間膜の上方からさらにガラス板を被せた、電熱線入り合せガラスが知られている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図10に示すように、車両のフロントガラスとしての電熱線入り合せガラス100は、下側ガラス板101と、この下側ガラス板101に複数載せられ通電されることで熱を発する電熱線102と、この電熱線102及び下側ガラス板101に被せられるポリビニルブチラール製の中間膜103と、この中間膜103に載せられ接着される上側ガラス板104とからなる。
【0004】
電熱線102に通電することで電熱線102が発熱する。電熱線102が発熱することで、下側ガラス板101及び上側ガラス板104に曇りが生じることを防止する。
【0005】
ところで、近年、さらに機能性を高めた電熱線入り合せガラスが種々提案されている。このような機能性の高められた電熱線入り合せガラスについて詳細を次図で説明する。
【0006】
図11に示すように、遮音機能を有する電熱線入り合せガラス110は、下側ガラス板111と、この下側ガラス板111に載せられる電熱線112と、この電熱線112に被せられる下側接着層113と、この下側接着層113に載せられ遮音機能を有する機能層114と、この機能層114に被せられる上側接着層115と、この上側接着層115に被せられる上側ガラス板116とからなる。即ち、遮音機能を有する機能層114の挟み込まれた中間膜が用いられるようになった。機能層114が挟み込まれることで、車室内の静粛性を高めることができる。
【0007】
しかし、このような電熱線入り合せガラス110について、本発明者らが観察を行ったところ、電熱線112の近傍で歪みが生じ得ることが分かった。歪みが生じる理由について次図で説明する。
【0008】
図12に示すように、電熱線112に下側接着層113を被せることにより、電熱線112の断面積の分だけ下側接着層113が変形する。機能層114が下側接着層113よりも柔らかいことにより、下側接着層113は機能層114側に向かって突出するように変形する。機能層114側に向かって下側接着層113の一部113aが突出することで、歪みが生じているものと考えられる。
電熱線の近傍で歪みが生じない電熱線入り合せガラスの提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−72674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、電熱線の近傍で歪みが生じない電熱線入り合せガラスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、機能層の上下に上側接着層及び下側接着層を被せ、これらの上側・下側接着層の上下に上側ガラス板及び下側ガラス板を被せ、下側接着層と下側ガラス板との間に電熱線を介在させてなる電熱線入り合せガラスにおいて、機能層は、下側接着層よりも柔らかい素材が用いられ、下側接着層の厚さの下限値は、電熱線の直径の19倍であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明では、機能層は、遮音機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、下側接着層の厚さの下限値は、電熱線の直径の19倍である。
電熱線は下側ガラス板と下側接着層との間に置かれる。下側ガラス板に比較して下側接着層が柔らかいため、電熱線により下側接着層が押される。結果、下側接着層の上面(下側ガラス板から遠い方の面)が局部的に盛り上がり突出する。この突出高さが大きいほど歪みが著しくなる。
【0014】
この突出高さは、下側接着層の厚さが小さい程顕著になり、厚さが大きいほど穏やかになる。
実験の結果、下側接着層の厚さが電熱線の19倍未満であると、歪みが許容できず、19倍以上であれば歪みが許容できることが確認できた。即ち、19倍以上に設定することで、電熱線の近傍で生じ得る歪みを十分に抑制することができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、機能層は、遮音機能を有する。遮音機能を有することで、電熱線入り合せガラスが用いられる、車両や建築物の静粛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1に係る電熱線入り合せガラスの正面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】電熱線入り合せガラスの製造方法を説明する図である。
【図5】電熱線入り合せガラスについて行った実験を説明する図である。
【図6】電熱線の近傍に生じ得る歪みについて説明する図である。
【図7】電熱線入り合せガラスを透視した場合に生じ得る歪みについて説明する図である。
【図8】実施例2に係る電熱線入り合せガラスの製造方法を説明する図である。
【図9】実施例2に係る電熱線入り合せガラスの断面図である。
【図10】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【図11】従来の技術の問題点について説明する図である。
【図12】図11の12部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0018】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、電熱線入り合せガラス10は、車両用フロントガラスに用いられる。このような電熱線入り合せガラス10の詳細を次図以降で説明する。
【0019】
図2に示すように、電熱線入り合せガラス10は、車室側に配置される下側ガラス板11と、この下側ガラス板11に複数載せられている電熱線12と、これらの電熱線12に被せられ接着性を有する下側接着層13と、この下側接着層13に被せられ遮音機能を有する機能層14と、この機能層14に被せられ接着性を有する上側接着層15と、この上側接着層15に載せられる上側ガラス板16とからなる。
【0020】
下側及び上側ガラス板11,16には、厚さ2mmのガラス板を用いることができる。また、下側及び上側ガラス板11,16は、車幅方向に曲げられていると共に、高さ方向にも曲げられている、いわゆる双方向曲げガラスを用いることができる。
【0021】
なお、上側ガラス板16を車室側に配置することもでき、どちらのガラス板を車室側に配置してもよい。
また、ガラスの素材、厚さ及び曲げは、電熱線入り合せガラス10の用途や機能に合わせて適宜選択することができる。
電熱線12、下側接着層13、上側接着層15、及び機能層14についての詳細を次図で説明する。
【0022】
図3に示すように、下側ガラス板11に載せられている電熱線12には、直径21μmのタングステン線を用いることができる。下側及び上側接着層13,15は、共にポリビニルブチラールを用いることができ、下側接着層13の厚さは0.58mm、上側接着層15の厚さは0.2mmとすることができる。機能層14は、厚さ0.1mmの遮音機能を持たせたポリビニルブチラール(Acoustic PVB、以下、適宜「遮音性ポリビニルブチラール」という。)の層である。
【0023】
詳細は後述するが、電熱線12の直径が21μm(0.021mm)である場合に、下側接着層13の厚さは、0.39mm以上であることが望ましい。即ち、電熱線12の直径に対して、下側接着層13の厚さは、19倍以上であることが望ましい。
【0024】
機能層14に用いられる遮音性ポリビニルブチラールは、下側接着層13に用いられるポリビニルブチラールよりも柔らかい素材である。
電熱線12の直径は、15μm〜25μmであることが好ましく、18μm〜21μmであることが望ましい。細すぎると十分な熱エネルギを得ることができず、太すぎると外観性が低下するからである。
【0025】
なお、下側及び上側接着層13,15に錫ドープ酸化インジウム(ITO)を含有したポリビニルブチラールを用いることもできる。即ち、機能層14よりも柔らかければ、下側及び上側接着層13,15に遮熱の機能等を有した素材を用いることもできる。電熱線12の素材についても用途や機能に合わせて適宜選択することができる。
電熱線入り合せガラス10の製造方法の詳細を次図で説明する。
【0026】
図4(a)に示すように、合せガラスの製造に先立って、下側及び上側接着層13,15及び機能層14を接着させ、中間膜17を製造しておく。そして、下側ガラス板11の上面に電熱線12、中間膜17、上側ガラス板16の順に載置する。
【0027】
なお、電熱線12は、電熱線12に通電をするためのバスバー等に接続されている。バスバーを昇降させることにより、電熱線12を一体的に昇降させることができる。バスバーに通電させることで、電熱線12を一体的に発熱させることができる。
【0028】
図4(b)に示すように、下側ガラス板11の下面及び上側ガラス板16の上面からローラ18,18を用いて押圧することにより、下側及び上側ガラス板16が中間膜17に仮接着される。仮接着されて得られた物を仮接着体19とする。
仮接着は、このようなローラ仮接着の他、真空バッグ仮接着やリング仮接着によっても行うことができる。
【0029】
図4(c)に示すように、仮接着体19をオートクレーブ21内に移動させ、本接着を行う。本接着を行うことで電熱線入り合せガラス(図1、符号10)を得ることができる。
このようにして得ることのできる電熱線入り合せガラスについて実験を行った。詳細を次図以降で説明する。
【0030】
(実験例)
本発明に係る実験例を以下に述べる。なお、本発明は実験例に限定されるものではない。
【0031】
図5(a)に示すように、実験に用いられた電熱線入り合せガラス30は、厚さt1のソーダ石灰シリカガラスを用いた下側ガラス板31と、直径dのタングステン線を用いた電熱線32と、厚さt2のポリビニルブチラールを用いた下側接着層33と、厚さt3の遮音性ポリビニルブチラールを用いた機能層34と、厚さt4のポリビニルブチラールを用いた上側接着層35と、厚さt5のソーダ石灰シリカガラスを用いた上側ガラス板36とからなる。
【0032】
下側接着層33の厚さt2及び上側接着層35の厚さt4が異なる、複数の電熱線入り合せガラス30を作成し、実験を行った。即ち、下側ガラス板31の厚さt1、電熱線32の直径d、機能層34の厚さt3、上側ガラス板36の厚さt5については、全ての実験において同じ値とした。
【0033】
一方、全ての実験において、素材の変更は行わなかった。即ち、下側及び上側ガラス板31,36は、双方向に曲げられたソーダ石灰シリカガラスであり、電熱線32にタングステン線を用い、下側及び上側接着層33,35にポリビニルブチラールを用い、機能層34に遮音性ポリビニルブチラールを用いた。
【0034】
図5(b)に示すように、作成した電熱線入り合せガラス30について、電熱線32の近傍で歪みが生じているか否かを目で確認した。歪みが生じていなければ合格であり、歪みが生じていれば不合格である。
【0035】
また、図5(c)に示すように、作成した電熱線入り合せガラス30を介して物41を覗き、歪みが生じているか否かを目で確認した。歪みが生じていなければ合格であり、歪みが生じていれば不合格である。
このようにして行った実験について詳細を表1に沿って説明する。
【0036】
【表1】

【0037】
実験番号1では、以下の条件で実験を行った。
下側ガラス板の種類:ソーダ石灰シリカガラス
下側ガラス板の厚さt1:2.0mm
電熱線の種類:タングステン
電熱線の直径d:21.0μm(0.021mm)
下側接着層の種類:ポリビニルブチラール
下側接着層の厚さt2:0.33mm
機能層の種類:遮音性ポリビニルブチラール
機能層の厚さt3:0.1mm
上側接着層の種類:ポリビニルブチラール
上側接着層の厚さt4:0.33mm
上側ガラス板の種類:ソーダ石灰シリカガラス
上側ガラス板の厚さt5:2.0mm
下側接着層の厚さt2/電熱線の直径d:15.71
下側接着層の厚さt2+機能層の厚さt3+上側接着層の厚さt4:0.76mm
【0038】
以上のような条件で行った実験番号1では、電熱線の近傍で歪みが生じた。電熱線の近傍で歪みが生じたので、不合格を示す×である。一方、電熱線入り合せガラスを介して目視した場合の歪み、即ち、合せガラス全体の歪みは生じなかった。全体の歪みは生じなかったので、合格を示す○である。
【0039】
実験番号2では、下側接着層の厚さt2を0.39mm、上側接着層の厚さt4を0.39mmに変更した。t2/dは、18.57であり、t2+t3+t4は0.88mmであった。
【0040】
以上のような条件で行った実験番号2では、電熱線による歪みが生じなかったので○であり、全体の歪みも生じなかったので○である。
【0041】
実験番号3では、下側接着層の厚さt2を0.58mm、上側接着層の厚さt4を0.20mmに変更した。t2/dは、27.62であり、t2+t3+t4は0.88mmであった。
【0042】
以上のような条件で行った実験番号3では、電熱線による歪みが生じなかったので○であり、全体の歪みも生じなかったので○である。
【0043】
実験番号4では、下側接着層の厚さt2を1.47mm、上側接着層の厚さt4を0.33mmに変更した。t2/dは、70.00であり、t2+t3+t4は1.90mmであった。
【0044】
以上のような条件で行った実験番号4では、電熱線による歪みが生じなかったので○であり、全体の歪みも生じなかったので○である。
【0045】
実験番号5では、下側接着層の厚さt2を2.23mmに変更した。t4は、0.33mmで実験番号4と同じである。t2/dは、106.19であり、t2+t3+t4は2.66mmであった。
【0046】
以上のような条件で行った実験番号5では、電熱線による歪みが生じなかったので○であった。しかし、全体の歪みが生じたので×である。
【0047】
実験番号6では、下側接着層の厚さt2を0.33mm、上側接着層の厚さt4を0.71mmに変更した。t2/dは、15.71であり、t2+t3+t4は1.14mmであった。
【0048】
以上のような条件で行った実験番号6では、電熱線による歪みが生じたので×であった。しかし、全体の歪みは生じなかったので○である。
このような結果になった理由について次図以降で説明する。
【0049】
図6(a)に示すように、比較例に係る電熱線入り合せガラス110は、電熱線112の直径dが21.0μmであり、下側接着層113の厚さT2が0.33mmである。下側接着層113の厚さT2は、電熱線112の直径dに対して、15.71倍である。
【0050】
電熱線112に下側接着層113を被せることで、電熱線112の面積(d/2)×πと同じだけ下側接着層113が変形する。下側接着層113よりも機能層114が柔らかいため、下側接着層113は機能層114に向かって突出するようにして変形する。即ち、機能層114に突出している下側接着層113の面積S1≒(d/2)×πである。また、電熱線112による変形の影響は、電熱線112を中心とした角度θの範囲内に及ぶ。角度θの範囲で、S1の変形量を吸収することで、下側接着層113は最大で高さh1だけ機能層114に向かって突出する。この突出量が大きいことで、電熱線近傍に歪みが生じるものと考えられる。
【0051】
このことは、以下のように言い換えることもできる。下側接着層113の厚さT2が、電熱線112の直径dに対して、18.57倍未満である比較例では、下側接着層113の下部に配置される電熱線112と、下側接着層113の上面に配置される機能層114との距離が近い。電熱線入り合せガラス110は、電熱線112の影響で、下側接着層113の一部が機能層114に向かって突出する。下側接着層113と機能層114とが近い場合は、下側接着層113が機能層114に向かって突出する、突出高さh1が高い。突出高さh1が高いことで、電熱線112の近傍で歪みが生ずる。
【0052】
図6(b)に示すように、実施例に係る電熱線入り合せガラス10は、電熱線12の直径dが21.0μmであり、下側接着層13の厚さt2の最小値が0.39mmである。下側接着層13の厚さt2は、電熱線12の直径に対して、18.57倍である。
【0053】
実施例の場合においても、角度θの範囲で電熱線12の影響が生じるものと考えられる。しかし、比較例に比べて、下側接着層13の厚さt2が大きいことで、変形する部位の幅が大きい。変形する部位の幅が大きいため、変形量S2(≒(d/2)×π)を吸収する際に機能層14に突出する突出高さh2が低くて済む。突出高さh2が低いことで、電熱線近傍で生じ得る歪みの発生を抑制することができる。即ち、下側接着層13の厚さt2の下限値を、電熱線12の直径dの18.57倍に設定することで、電熱線12の近傍で生じ得る歪みを十分に抑制することができる。
本発明によれば、電熱線12近傍での歪みを防ぐために、下側接着層13の厚さを厚くした。容易な手段により電熱線12近傍での歪みの発生を防ぐことができる。
【0054】
図7に示すように、電熱線入り合せガラス10を介して物41を見た場合に、下側ガラス板11、中間膜17及び上側ガラス板16のそれぞれで光が屈折する。中間膜17が厚いことで、変位量δが大きくなり、許容できる範囲を超えた歪みが生じる。
【0055】
前述の実験番号5では、中間膜(下側接着層+機能層+上側接着層)の厚みt2+t3+t4を2.66mmとした。中間膜の厚さが厚い実験番号5では、許容できる範囲を超えた歪みが生じた。
一方、中間膜の厚みが1.90mmであった実験番号4では、歪みが許容できる範囲内であった。
即ち、中間膜の厚さを1.90mm以下とすることで、透視歪みを抑制することができる。
【0056】
以上をまとめると、電熱線による歪みを防ぐという観点からは、下側接着層の厚みの値の下限値を電熱線の直径の19倍に設定することが好ましく、さらに透視歪みを抑制するには、下側接着層と、機能層と、上側接着層とからなる中間膜の厚みを1.90mm以下とすることが望ましい。
別実施例について次図で説明する。
【実施例2】
【0057】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図8は実施例2の電熱線入り合せガラスの製造方法を示し、上記図4(a)に対応させて表している。
図8に示されるように、下側接着層の一部53a、機能層54及び上側接着層55からなる中間膜57(第1中間膜57)と、下側接着層の残部53b(第2中間膜53b)とを用いる。
【0058】
下側ガラス板11に、電熱線12、下側接着層の残部53b、中間膜57、上側ガラス板16の順に載せ、仮接着及び接着を行う。仮接着及び接着については、図4(b)及び図4(c)で説明した方法により行うことができる。
【0059】
下側接着層(中間膜)を2つの部材から構成することで、従来から用いられている部品により、電熱線入り合せガラスを製造することができる。部品のコストを下げることができ、電熱線入り合せガラスの価格も低下させることができる。例えば、中間膜17には、積水化学工業株式会社製、エスレック・サウンドアコースティックフィルムを用いることができる。
【0060】
図9に示すように、2つの中間膜57,53bで下側接着層53を構成した電熱線入り合せガラス50であっても、本発明の効果を得ることができる。
即ち、下側接着層53の厚さを、電熱線12の直径の19倍以上に設定することで、電熱線12の近傍で生じ得る歪みを十分に抑制することができる。
【0061】
尚、本発明に係る電熱線入り合せガラスは、実施の形態では車両のフロントガラスに適用したが、電車や飛行機等他の乗り物に適用することや、建築用窓ガラスに適用することもでき、これらのものに用途は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の電熱線入り合せガラスは、四輪車のフロントガラスに好適である。
【符号の説明】
【0063】
10,50…電熱線入り合せガラス、11…下側ガラス板、12…電熱線、13,53…下側接着層、14,54…機能層、15,55…上側接着層、16…上側ガラス板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能層の上下に上側接着層及び下側接着層を被せ、これらの上側・下側接着層の上下に上側ガラス板及び下側ガラス板を被せ、前記下側接着層と前記下側ガラス板との間に電熱線を介在させてなる電熱線入り合せガラスにおいて、
前記機能層は、前記下側接着層よりも柔らかい素材が用いられ、
前記下側接着層の厚さの下限値は、前記電熱線の直径の19倍であることを特徴とする電熱線入り合せガラス。
【請求項2】
前記機能層は、遮音機能を有することを特徴とする請求項1記載の電熱線入り合せガラス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−56811(P2013−56811A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197039(P2011−197039)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】