説明

電熱調理器

【課題】この発明は、主として配電用配線のない地域において電熱を用いて食材を調理することを目的とした電熱調理器に関する。
【解決手段】この発明は、耐熱容器と、耐熱容器内へセットできるようにした通電により発熱する電熱シートと、電熱シートの電源となる乾電池をセットしたリード線付きの電池ボックスと、前記電熱シートへの通電を制御する制御器とを組合せたことを特徴とする電熱調理器により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電熱シートを熱源とし、電源は主として電池とすると共に、耐熱板に前記電熱シートをセットして、炊飯、焼物、その他の食材を調理をすることを目的とした電熱調理器に関するものである。
【0002】
この発明は主として野外などの配電がなく、その他の熱源もない場所において、調理に使用する為に、主として乾電池を電源として発熱するもので、携帯に便利であることを条件として開発したものである。
【背景技術】
【0003】
従来和紙糸で製織した織物地を炭化した炭化シート又は炭素粒子を耐熱シート上へ印刷又は塗布した炭素粒シートが知られており、これに通電して発熱する電熱シートも知られている。
【0004】
従来携帯用調理器については、ガスコンロが使用されている。また、耐熱性内容器と外容器との間に電熱シートを介装した遠赤外線放射厨房用器が知られているが、携帯に便利であり、かつ電気を蓄電池から得るようにした調理器は未だ知られていない。
【特許文献1】特許第3579679号
【特許文献2】実開平1−155924
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来和紙糸で製織した織物地を炭化した炭化シートが知られているが(特許文献1)、未だ多量に使用されるような用途がない。また電熱器は、調理器又は暖房器として知られているが、その多くは、電気発熱線(ニクロム線)を敷設したもので、発熱線を耐熱具に敷設し、又は巻きつける為に、その厚さは通常1cm以上になると共に、折畳などは不可能であって、携帯に不便であるなど、携帯用調理器としては幾多の難点があった。
【0006】
一方、登山、その他軽装で広い地域を行動する場合に、発熱線を用い又はガスコンロ方式の従来の調理器は、携帯に不便であり、重量、容積共に増大する問題点があった。
【0007】
また熱源として、電気、ガス、炭などが考えられるが、電気は配線のない山中又は原野において発電が困難である。またガスボンベの場合は、比較的効率のよい熱源であるが、嵩張るとか、重量とかにおいて携帯上の難点があり、炭についても同様の問題点があった。
【0008】
従来知られている電池についても、通常使用される液体電池は、重量が大きくなって携帯に不便であり、乾電池は、効率のよい発熱具がないと、多量の乾電池が必要になる問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、電気発熱シートを熱源とし、電源を主として乾電池とすることにより、前記従来の問題点を解決したのである。
【0010】
即ちこの発明は、耐熱容器と、耐熱容器内へセットできるようにした通電により発熱する電熱シートと、電熱シートの電源となる乾電池をセットしたリード線付きの電池ボックスと、前記電熱シートへの通電を制御する制御器とを組合せたことを特徴とする電熱調理器であり、耐熱容器は、電熱シートを気密に設置し得ると共に、前記電熱シートの熱により食品を調理できる形状としたものであり、耐熱容器は、ガラス製、陶磁器製又は金属製であって、底部に電熱シートを気密にセットし、食品を調理できる空間が設けてあるものである。
【0011】
また他の発明は、電熱シートは、和紙で製織した織物地の炭化物よりなる炭化シート又は耐熱フィルムに炭素粒を層着した炭素粒シートに電極を取付け、全体を耐熱シートで挟着したものであり、電池ボックスは、乾電池を複数本直列してセットし得る容器であって、ON、OFFスイッチ、タイマー、警報の制御機能を具備したものであり、耐熱容器、電熱シート、電池ボックス及び制御器を組み合せて、同一ケースに収容したことを特徴とするケース入り電熱調理器である。
【0012】
この発明で使用する電気発熱シートは、炭素層の厚さは、例えば0.5mm〜1.0mmで、広さは100cmとすれば単4乾電池4本で、100℃〜350℃の温度に1時間保持することができる。
【0013】
然して発熱シート上へ調理器を載置するのでなく、調理器の適所に発熱シートを埋設し、発熱量の大部分を調理用に使用できるようにすれば、熱効率を著しく向上させることができる。また電熱シートは、炭素層(炭化物又は炭素粒の層)に通電して赤熱させ、遠赤外線の生成と発熱による伝導熱を得るもので、食材は、前記遠赤外線の照射を受けると共に、伝導熱による加熱で調理される。
【0014】
この発明は、従来知られている調理器(例えば鍋、フライパン、肉又は魚焼器)の熱源として、その底部へ電気発熱シートを埋設する方式と、電気発熱シートの下面に反射層及び断熱層を設けて調理シートとし、この調理シートで、伝熱性の優れた容器(例えばアルミ製又は鉄製のパン類)を載置して調理することもできる。
【0015】
次にこの発明で使用する電源は、乾電池を主とするが、必ずしも乾電池に限定することはない。例えば配線された家庭内では、家庭用電源を変圧して使用し、配線がなくとも発電機があれば、何所でも自由に必要な電力を得ることができるので、使用することができる。
【0016】
一例として軍隊、その他グループ行動する団体の調理器として使用する場合には、太陽が照射する時は太陽電池を利用し、太陽が出ていない場合には自動車の動力により発電機を動かして必要な電力を得ることもできる。
【0017】
前記電熱シートは、単位広さ(例えば100cm)毎に独立使用し、又は数枚単位又は数十枚単位でも使用可能にしておけば、少熱量から、大熱量まで自由に得ることができる。
【0018】
また乾電池は充電方式の乾電池としてあって、電気の余る時に充電しておけば、有効利用をシステム化して、効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、熱源として電熱シートを用い、電源として乾電池又はバッテリーを用いることにより、携帯に便利であり、登山又は原野の跋渉など人工エネルギーの不便な場所においても、調理器を有効に使用できる効果がある。
【0020】
また電熱シートは軽量、薄く、強靭であり原則として柔軟であって折畳み、巻込みが自由である。従って対象物を包み込むことができるので、携帯に便利で簡易に必要な熱源を得ることができる効果がある。
【0021】
また乾電池は携帯が便利であって、安全かつ確実に電気の供給を得ることができると共に、充電方式の乾電池を用いれば、耐用期限を伸ばし、必要期間の使用を確保できるなどの諸効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明は、和紙糸よりなる織布を炭化してなる電気発熱シートの下面に反射シートを設け、該反射シートの下面に断熱シートを設け、前記電気発熱シートの上面に透明耐熱シートを設けて、この発明の電熱シートとしたものである。
【0023】
前記各シートの厚さを、0.5mm〜1mmとすれば、電熱シートは2mm〜4mmの薄板となる。前記電熱シートを例えば100cmで200℃〜300℃の温度で30分間発熱させるには、5V、0.1アンペアの電流を30分間送電しなければならないので、単4電池ならば4本必要である。
【実施例1】
【0024】
この発明の電熱シートの実施例を図1について説明すれば、耐熱シート1の上面へ炭化シート2を層着して厚さ1mmの電気発熱シート3とし、この電気発熱シート3の下面へ、厚さ0.5mmのアルミニュームシート4を層着し、アルミニュームシート4の下面へ、厚さ2mmの断熱シート5を層着し、前記電気発熱シート3の上面へ両縁部へ電極板7、8を固定し、その全面へ厚さ1mmの防水シート6を層着し、前記電極板7、8にリード線9を接続して全体を一体的にした電熱シート10とする。この電熱シート10は柔軟性を有するので、折畳み、ロール巻きの何れも可能であり、これにより電熱シートを損傷するおそれはない。
【0025】
前記実施例は、単独使用の電熱シート10であるが、この電熱シート10を調理器の底部へ埋め込む場合には、調理器の必要熱量に応じて、その面積を10cm〜100cm又はそれ以上とした電熱シート10とすることができる。前記電熱シート10の面積、形状については特別の制限はない。図中11は電池16及び制御器13を収容した電池ボックスである。
【0026】
この発明の電熱シート10の厚さと形状について、特別の制限はないので、使用目的に応じ、自由に選択することができる。また発熱量に応じ、必要とする熱量を得る為に複数枚の電熱シートと、これに対応する乾電池を用いることもある。
【実施例2】
【0027】
この発明の他の実施例を図2について説明すれば、フライパン12の底板12aの凹入部12b内へ、電熱シート10を設置したものである。図中15はコード14の先端に取付けたプラグであって、電池ボックス11のコンセント17に接続している。図中25は保護板である。
【0028】
また深鍋18の底板18aの凹入部18bへ電熱シート10を収容固定したもので、図中14はコード、15はプラグである。
【0029】
前記実施例中図2の(a)、(b)は、フライパン12又は深鍋18の底板の凹入部へ電熱シート10を埋設した構造であるが、容器は従来どおりの形状構造であって、従来の電熱器のニクロム線に代えて電熱シートを用いた電熱器とし、その電熱シート10上へ容器を載置して加熱することもできる。
【0030】
図2(c)は、セラミックス皿19の底板19a上へ電熱シート10を載置したもので、コード14はセラミックス皿19の溝20から外側へ引き出すようになっている。
【0031】
この発明の電熱シート10は、柔軟な材料によって成形してあるので、図3(a)の如く筒状21に巻き込み、または二つ折り22とし、更に四つ折り23とし、夫々袋24内に入れて収納し、携帯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)この発明の実施例の一部を省略した断面拡大図、(b)同じく一部を省略した平面図。
【図2】(a)同じくフライパンの実施例の一部を省略した断面図、(b)同じく他の実施例の一部を省略した断面図、(c)同じく他の実施例の一部を省略した断面図。
【図3】(a)同じく電熱シートを巻き込んだ実施例の斜視図、(b)同じく折畳した実施例の説明図。
【符号の説明】
【0033】
1 耐熱シート
2 炭化シート
3 電気発熱シート
4 アルミニュームシート
5 断熱シート
6 防水シート
7、8 電極板
9 リード線
10 電熱シート
11、16 電池ボックス
12 フライパン
13 プラグ
14 コード
15 プラグ
17 コンセント
18 深鍋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱容器と、耐熱容器内へセットできるようにした通電により発熱する電熱シートと、電熱シートの電源となる乾電池をセットしたリード線付きの電池ボックスと、前記電熱シートへの通電を制御する制御器とを組合せたことを特徴とする電熱調理器。
【請求項2】
耐熱容器は、電熱シートを気密に設置し得ると共に、前記電熱シートの熱により食品を調理できる形状としたことを特徴とする請求項1記載の電熱調理器。
【請求項3】
耐熱容器は、ガラス製、陶磁器製又は金属製であって、底部に電熱シートを気密にセットし、食品を調理できる空間が設けてあることを特徴とした請求項1記載の電熱調理器。
【請求項4】
電熱シートは、和紙で製織した織物地の炭化物よりなる炭化シート又は耐熱フィルムに炭素粒を層着した炭素粒シートに電極を取付け、全体を耐熱シートで挟着したことを特徴とした請求項1記載の電熱調理器。
【請求項5】
電池ボックスは、乾電池を複数本直列してセットし得る容器であって、ON、OFFスイッチ、タイマー、警報の制御機能を具備したことを特徴とする請求項1記載の電熱調理器。
【請求項6】
耐熱容器、電熱シート、電池ボックス及び制御器を組み合せて、同一ケースに収容したことを特徴とするケース入り電熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−161422(P2008−161422A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353982(P2006−353982)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(303013039)
【Fターム(参考)】