説明

電球型ヒータ、密閉型灯具装置

【課題】表面がフロスト加工された放射透過性のバルブ上に膜厚を凹凸に変化させ、その膜厚を調整し形成したことにより、製造条件や膜材料を変えずに、点灯時の点灯色を黄色〜オレンジ色とする電球型ヒータのピンチシール部の金属箔温度上昇を抑えながら演色性の非常に優れたものを実現可能とする。
【解決手段】石英ガラスのバルブ12の表面にフロスト加工を施して形成されたフロスト19の深さを4μm超える程度とする。フロスト19上の1層目としてSiOを主成分とする低屈折率膜を塗布後に焼成し、2層目にFeを主成分とする高屈折率膜を塗布し焼成する3層目以降交互に低・高屈折率膜を複数形成する。フロスト加工を金属箔161,162の箔端部1611,1621までとする。これにより、金属箔161,162の温度上昇を許容範囲内に抑えて演色性の非常に優れた電球型ヒータを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射透過性バルブ外面に光学フィルター膜を備えた電球型ヒータおよびこれ電球型ヒータを用いた灯具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射透過性バルブ内部にタングステンフィラメントを収納したランプのバルブ外面に、複数の高屈折率膜および低屈折率膜を形成させたハロゲン電球ヒータは、可視光の波長域をカットし赤外線の波長域を選択的に透過させる、防眩効果を有する赤外線光源として用いられている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平3−226959号公報(第2頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1のハロゲン電球ヒータの両端封止部はピンチシールタイプを採用しており、ピンチシールを含めてヒータの発光管にフロスト加工する場合、封止部にもフロスト加工が施されることになる。例えば、密閉型灯具内で点灯させた場合、フロストの影響で点灯時に封止部の金属箔は温度が上昇し、金属箔と封止部との間に空気漏れが生じて不点灯に至ってしまう、という問題があった。
【0004】
この発明の目的は、点灯時にピンチシール部の金属箔温度上昇を抑えて、点灯時の点灯色を黄色〜オレンジ色とする演色性の非常に優れた電球型ヒータを実現可能とする電球型ヒータおよびこれ電球型ヒータを用いた灯具装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の電球型ヒータは、放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された耐火性金属の電気抵抗線により構成され、前記バルブ表面に、所定の深さのフロスト加工により深さが4μm以上または2μm以上〜4μm未満のフロストを形成し、該フロスト上にSiOを含む低屈折率膜と金属酸化物を含む高屈折率膜を交互に複数層形成したものにあって、前記フロスト加工は、前記バルブの発光面を含み、少なくともピンチシール部内に封止された金属箔の端部まで施したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、密閉型灯具内で点灯させた場合における点灯時のピンチシール封止部の金属箔部における温度上昇を抑えながら点灯時の点灯色を黄色〜オレンジ色とする演色性の非常に優れた電球型ヒータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1、図2は、それぞれこの発明の一実施形態について説明するためのもので、図1はハロゲンランプの全体構成を示す構成図、図2は図1の要部を拡大して示すとともに、フロスト処理された状態の構成図である。
【0008】
図1、図2において、11はハロゲンランプであり、例えば食品保温用や暖房用等のヒータとして多用される管型であり、放射透過性を有する石英ガラス製等のバルブ12を有する。バルブ12は、その内部に熱源の一例であるタングステンフィラメント13を同心状に収容している。このフィラメント13は、バルブ12内で軸方向に複数配設されたアンカー14…により、バルブ12に対する同心状態が保持される。また、バルブ12内には、アルゴン等の不活性ガスとともに、所容量のハロゲンガスを封入し、その軸方向両端部を直径方向に圧潰するピンチシールにより矩形扁平状の一対の封止端部151,152を形成し、これら封止端部151,152内には矩形箔状の例えばモリブデン(Mo)で形成された金属箔161,162をそれぞれ埋設している。
【0009】
各金属箔161,162は、その内端部に、一対のインナーリード線171,172を介してフィラメント13の軸方向両端を接続する一方、各外端部には、給電のための一対のアウターリード線181,182とをそれぞれ接続している。各アウターリード線181,182は、各封止端部151,152から気密に外部へ延出している。
【0010】
バルブ12の外表面には、例えばサンドブラスター(微粒の砂)を利用して図2のハッチングで示す微細な凹凸をつけるフロスト加工により4μmを越える程度のフロスト19が施される。
【0011】
図3は図2のIIIに示す囲み部分のフロスト19をさらに拡大した図である。フロスト19上には、SiOを主成分とする低屈折率膜21を、この低屈折率膜21上に金属酸化物である例えばFeを主成分とする高屈折率膜22が形成される。以降、低屈折率膜21と高屈折率膜22を交互に複数層形成にする。
【0012】
バルブ12表面に深さdを4μm越えるフロスト19を形成するとともに、フロスト19上に低屈折率膜21と高屈折率膜22を交互に複数層形成することにより光干渉膜効果で眩しさを防止することができる。この場合、色度分布図のx座標で0.570±0.015、y座標で0.400±0.01の範囲を持つ演色性の優れた黄色(ローソク色に近似)の発光色を得ることができる。
【0013】
同様に、バルブ12表面にフロスト19の深さdを2μm以上〜4μm未満に形成することによって、フロスト19上に低屈折率膜21と高屈折率膜22を交互に複数層形成することにより光干渉膜効果で眩しさを防止することができる。この場合、色度分布図のx座標で0.595±0.015、y座標で0.385±0.01の範囲を持つ演色性の優れたオレンジ色〜黄色の発光色を得ることができる。
【0014】
ここで、図3を参照しながらバルブ12に形成されたフロスト19上に低屈折率膜と高屈折率膜を交互に複数層形成する方法について説明する。
【0015】
先ず、サンドブラスターを用いてバルブ12の表面にフロスト19の深さdが4μm(または2μm〜4μm)を越える程度の加工を施す。
フロスト19の表面に1層目としてディピング方式でSiOを主成分とする低屈折率膜液をコーティングし、その後焼成して低屈折率膜21を形成する。
【0016】
次に、2層目としてFeを主成分とする高屈折率膜液を低屈折率膜21上にコーティングし、その後焼成して高屈折率膜22を形成する。
【0017】
3層目以降は同様に低屈折率膜21と高屈折率膜22とを交互にコーティング、焼成を繰り返して複数層形成する。
【0018】
以上の工程を経ることによって、深さdが4μmを越える程度(または2μm〜4μm)のフロスト19上に、低屈折率膜21と高屈折率膜22を交互に複数層形成することができる。
【0019】
図4は、この発明の一実施形態について説明するための一部切り欠いて示した構成図である。この実施形態では、バルブ12の表面に形成されたフロスト19は、金属箔161,162の箔端部1611,1621までフロスト19の端部191,192を位置させて施したものである。
【0020】
ここで、密閉型灯具内で点灯させた場合において、フロスト19を封止部151,152全体形成した場合と、箔端部1611,1621まで施した場合とのそれぞれ封止部151,152における温度について検証した結果を図5に示す。
【0021】
すなわち、全体に施した場合の温度比率を100%とすると、フロスト19の端部191,192を箔端部1611,1621まで施した場合の温度比率は90%である、との結果が得られた。温度比率は90%以下であれば、金属箔161,162の補償温度は許容範囲であることが確かめられていることから、フロスト19の端部191,192を箔端部1611,1621までは許容されるものである。
【0022】
従って、封止部151,152の箔端部1611,1621までフロスト19の端部191,192を施せば、フロスト19よる演色性の向上とフロスト19を施すことにより上昇する封止部151,152の温度比率を90%以内に抑えることが可能となる。
【0023】
この実施形態によれば、密閉型灯具内で点灯させた場合における点灯時のピンチシール封止部の金属箔における温度上昇を許容範囲に抑えながら点灯時の点灯色を黄色〜オレンジ色とする演色性の非常に優れた電球型ヒータを得ることができる。
【0024】
図6は、この発明の密閉型灯具装置の一実施形態について説明するための構成図である。ハロゲンランプ11は、器具本体をなす筐体61の内部にはミラー62およびソケット63,63(片方は図示せず)が設けられていて、このソケット63,63にハロゲンランプ11のアウターリード線181,182が取り付けられ、ハロゲンランプ11の保持と給電がなされる。64は、筐体61の開放部を覆いハロゲンランプ11を密閉させるための透光性のカバー部材である。また、65はカバー部材64を保護するための保護部材である。
【0025】
このようにカバー部材64密閉された灯具装置は、ハロゲンランプ11からの放射光が直接あるいはミラー62を介してカバー部材64から放出される。このとき、点灯時のピンチシール封止部の金属箔における温度上昇を許容範囲に抑えながら点灯時の点灯色を黄色〜オレンジ色とする演色性の非常に優れた密閉型灯具装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の電球型ヒータについて説明するための構成図。
【図2】図1の要部について説明するための拡大構成図。
【図3】図2のIIIの部分を拡大して示した断面図。
【図4】この発明の電球型ヒータの一実施形態について説明するための構成図。
【図5】この発明の効果について説明するための説明図。
【図6】この発明の密閉型灯具装置の一実施形態について説明するための構成図。
【符号の説明】
【0027】
11 ハロゲンランプ
12 バルブ
13 フィラメント
14 アンカー
151,152 封止端部
161,162 金属箔
1611,1621 箔端部
171,172 インナーリード線
181,182 アウターリード線
19 フロスト
191,192 端部
21 低屈折率膜
22 高屈折率膜
61 筐体
64 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された耐火性金属の電気抵抗線により構成され、前記バルブ表面に、所定の深さのフロスト加工により深さが4μm以上または2μm以上〜4μm未満のフロストを形成し、該フロスト上にSiOを含む低屈折率膜と金属酸化物を含む高屈折率膜を交互に複数層形成したハロゲン電球ヒータにおいて、
前記フロスト加工は、前記バルブの発光面を含み、少なくともピンチシール部内に封止された金属箔の端部まで施したことを特徴とする電球型ヒータ。
【請求項2】
前記請求項1の電球型ヒータと、
前記電球型ヒータに給電させるとともに、前記電球型ヒータからの光や熱を通過させるカバー部材で密閉された筐体とを具備したことを特徴とする密閉型灯具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−278086(P2006−278086A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93849(P2005−93849)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)