説明

電球型ヒータ、灯具装置

【課題】点灯時に自然なローソク色を、非点灯時は白金のシルバー色を演出することが電球型ヒータで実現する。
【解決手段】放射透過性のバルブ12とこのバルブ12内に封装された高融点金属のフィラメントおよびハロゲンを封入して構成され、バルブ12外表面に所定の深さのフロスト加工により凹凸のフロスト19が形成され、フロスト19上に白金による薄膜の白金コート部20を形成した。これにより、フロスト19が白金コート部20との接合面積を増加させて白金コート部20の剥がれを防止できる。また、フロスト19と白金点灯時はバルブ12を通してフィラメントの色を、非点灯時は白金コート部20の反射光であるシルバー色を可視できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射透過性のバルブ内に高融点金属のフィラメントが封装されるとともに、ハロゲンが封入された暖房用等に用いられる電球型ヒータおよびこの電球型ヒータを用いた灯具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハロゲン電球型ヒータとしては、白熱電球のバルブ表面に低屈折率層と高屈折率層を複数層設けてコーティングを行い、眩しくないヒータに仕上げ、バルブ表面がケイ素または金属酸化物の色である金色の光沢を可視している。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平7−220692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、点灯時は780nm以下の波長の光を放射させてフィラメントの光を赤紫色として可視し、非点灯時は780nm以下がカットされているため、反射した光は金色として可視できる。しかし、780nm以下をカットさせるためのコーティング層とバルブの接合面積の関係からコーティング層が剥がれやすい、という問題があった。また、780nm以下の波長の光を放射しつつ、非点灯時にシルバー色の光沢を可視したい、との要望もあった。
【0004】
この発明の目的は、点灯時に自然なローソク色を、非点灯時は白金のシルバー色を演出しつつ、コーティング層の剥がれを防ぐことを可能とした電球型ヒータおよびこの電球型ヒータを用いた灯具装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の電球型ヒータでは、放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントおよびハロゲンを封入して構成され、前記バルブ外表面に所定の深さのフロスト加工により凹凸のフロストが形成されたものにあって、前記フロスト上に白金薄膜を形成したことを特徴とする。
【0006】
また、放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントにより構成され、前記バルブ表面に、所定の深さのフロスト加工によりフロストを形成し、該フロスト上に低屈折率膜と金属酸化物を含む高屈折率膜を交互に複数層形成したものにあって、前記バルブの外表面壁に凹凸を形成し、内面に高融点金属のフィラメントを具備したバルブの外表面に、白金薄膜を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、点灯時に自然なローソク色を、非点灯時は白金のシルバー色を演出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1、図2は、それぞれこの発明の電球型ヒータの一実施形態について説明するためのもので、図1はハロゲンランプの全体構成を示す構成図、図2は図1の要部を拡大して示すとともに、フロスト処理された状態の構成図である。
【0009】
図1、図2において、11はハロゲンランプであり、例えば食品保温用や暖房用等のヒータとして多用される管型であり、放射透過性を有する石英ガラス製等のバルブ12を有する。バルブ12は、その内部に耐火性金属の電気抵抗線の一例であるタングステンフィラメント13を熱源として同心状に収容している。このフィラメント13は、バルブ12内で軸方向に複数配設されたアンカー14…により、バルブ12に対する同心状態が保持される。また、バルブ12内には、アルゴン等の不活性ガスとともに、所容量のハロゲンガスを封入し、その軸方向両端部を直径方向に圧潰するピンチシールにより矩形扁平状の一対の封止端部151,152を形成し、これら封止端部151,152内にはバルブ12と膨張係数が近似した導電性の例えばモリブデン(Mo)で形成された矩形箔状の金属箔161,162をそれぞれ埋設している。
【0010】
各金属箔161,162は、その内端部に、一対のインナーリード線171,172を介してフィラメント13の軸方向両端を接続する一方、各外端部には、給電のための一対のアウターリード線181,182とをそれぞれ接続している。アウターリード線181,182は、各封止端部151,152から気密に外部へ延出している。
【0011】
バルブ12の外表面には、例えばサンドブラスター(微粒の砂)を利用して図2のハッチングで示す微細な凹凸をつけるフロスト加工により0.1mm以下の凹凸のフロスト19が施される。
【0012】
図3は図2のIIIに示す囲み部分のフロスト19をさらに拡大した図である。図3に示すように、フロスト19の外表面には、白金(Pt)をコーティングして形成した白金コート部20の薄膜が形成される。高温での白金コート部20は蒸発してしまうので、これを防止するため白金コート部20上に、例えばSiO等をコーティングして焼成した保護層30を形成する。
【0013】
ここで、フィラメント13が通電されると、フィラメント13は発熱と発光を開始し、同時に赤外線がバルブ12を介してバルブ12の外部に放射されるようになる。次に、アウターリード線181,182への電力供給が停止されると、フィラメント13の通電が停止する。
【0014】
このとき、ハロゲンランプ11が通電された場合は、白金コート部20により480nm付近以上の波長の光を放射させてフィラメント13の点灯色であるローソク色が、通電が停止された場合は、白金コート部20の白金の色であるシルバー色として見えるようにしたものである。
【0015】
図4は、バルブ12の外表面に白金コート部20を施こさない場合Aと施した場合Bにおける分光分布波長を比較して説明するための説明図である。図に示すように、白金コート部20が施された場合は、480nm付近以上の波長の発光色の波長を放射させることができることがわかる。
【0016】
この実施形態では、点灯時は可視光をカットせずに自然色であるローソク色を、非点灯時はシルバー色を見るこれまでに電球型ヒータを実現することが可能となる。また、フロスト上に白金をコーティングして形成した白金コート部を施したため、白金コート部とバルブとの接合面積が増えことになる。このため、白金コート部の剥離を抑えることができる。
【0017】
次に、図3に相当する図5を参照してこの発明の電球型ヒータの第2の実施形態について説明する。なお、図3と同一の構成部分には同一の符号を付してここでは異なる構成部分について説明する。
【0018】
図5において、フロスト19上には、SiOを主成分とする低屈折率膜211を、この低屈折率膜211上に金属酸化物である例えばFeを主成分とする高屈折率膜221が形成される。以降、低屈折率膜211と高屈折率膜221を交互に複数層形成にする。
【0019】
低屈折率膜211と高屈折率膜221を交互に複数層形成にする場合の一例としてバルブ12表面に深さを4μm越えるフロスト19を形成するとともに、フロスト19上に低屈折率膜211と高屈折率膜221を交互に複数層形成することにより光干渉膜効果で眩しさを防止することができる。
【0020】
バルブ12外表面には、白金(Pt)のコーティングを行って白金コート部20の薄膜が形成される。さらに、白金コート部20上に、例えばSiO等をコーティングして焼成した保護層30を形成する。
【0021】
この例の場合、フィラメント13に通電されたときに色度分布図のx座標で0.570±0.015、y座標で0.400±0.01の範囲を持つ演色性の優れた黄色(ローソク色に近似)の発光色を得ることができる。非通電時は、白金コート部20のシルバー色を目視することができる。
【0022】
次に、サンドブラスターを利用したフロスト加工により2μm〜4μmのフロスト19が形成された別の例について説明する。このフロスト上に上記例と同様に、低屈折率膜211と高屈折率膜221を交互に複数層形成する。バルブ12外表面には、白金のコーティングを行って白金コート部20の薄膜が形成される。
【0023】
この例では、バルブ12表面にフロスト19の深さを2μm〜4μmに形成することによって、フロスト19上に低屈折率膜211と高屈折率膜221を交互に複数層形成することにより光干渉膜効果で眩しさを防止することができる。
【0024】
この例の場合、フィラメント13に通電されたときに色度分布図のx座標で0.595±0.015、y座標で0.385±0.01の範囲を持つ演色性の優れたオレンジ色〜黄色の発光色を得ることができる。非通電時は、白金コート部20のシルバー色を目視することができる。
【0025】
ここで、図5を参照しながらバルブ12に形成されたフロスト19上に低屈折率膜211と高屈折率膜221を交互に複数層形成する、この発明の電球形ヒータの製造方法の一実施形態について説明する。
【0026】
先ず、サンドブラスターを用いてバルブ12の表面にフロスト19の深さが4μm(または2μm〜4μm)を越える程度の加工を施す。
【0027】
フロスト19の表面に1層目としてディピング方式でSiOを主成分とする低屈折率膜液をコーティングし、その後焼成して低屈折率膜21を形成する。
【0028】
次に、2層目としてFeを主成分とする高屈折率膜液を低屈折率膜211上にコーティングし、その後焼成して高屈折率膜221を形成する。
【0029】
3層目は同様に低屈折率膜212と高屈折率膜222とを交互にコーティング、焼成を繰り返し、以降これを繰り返して複数層形成する。
【0030】
最上層にある高屈折率膜上に白金のコーティングを行い、焼成して薄膜の白金コート部20を形成する。
【0031】
以上の工程を経ることによって、深さが4μmを越える程度(または2μm〜4μm)のフロスト19上に、低屈折率膜と高屈折率が交互に複数層形成された上層部分に白金コート部20を形成させることができる。
【0032】
再び図5を参照し、この発明の電球型ヒータの第3の実施形態について説明する。この実施形態は、フロスト19上に交互に複数層に形成された低屈折率膜211,212…と高屈折率膜221,222…の最小の膜厚Dminと最大の膜厚Dmaxとし、Dmin/Dmaxを所望の値に調整するものである。Dmin/Dmaxは、0.05以下になると、Dmaxに位置する低屈折率膜と高屈折率膜の膜厚が大きくなり、それぞれの膨張率の差が原因と思われる低屈折率膜の膜中に隙間ができ、膜剥がれの発生原因となる。
【0033】
このため、膜厚は0.05<Dmin/Dmax<1の範囲とする。この範囲内でDmin/Dmaxを調整すると、演色性の非常に優れた発光色のコントロールを図ることができる。以下このことについて図6、図7を参照して説明する。
【0034】
図6は、バルブ12の外表面にフロスト19を施し、低屈折率膜211と高屈折率膜221を交互に複数層とし、図5に示すように凹凸に膜厚を変化させ形成させた。このときフロスト19の深さを変えることにより、Dmin/Dmaxが異なるA,B,C3種類のランプとフロストなしで低屈折率膜211と高屈折率膜221を交互に複数層製作したものを比較した。
【0035】
これによれば、フロスト無しでは発光色が赤であるのに対して、フロストありの場合、Dmin/Dmaxの変化に伴い発光色も、黄色〜オレンジ色間を任意の色にコントロール可能となる。
【0036】
このことは、上記フロストの深さの異なる3種類のA,B,Cランプとフロスト無しのランプの色度分布を示す図7からも明らかなように、フロスト無しのランプは色度分布のx座標が0.643、y座標が0.351の赤色の発光色を示し、ランプA〜Cは色度分布図のxy座標の黄色の領域からオレンジ色の領域にあることがわかる。
【0037】
この結果からも分かるとおり、膜厚を変化させてDmin/Dmaxを調整することにより、発光色を黄色の領域からオレンジ色の領域に渡ってコントロールすることが可能となる。
【0038】
従って、この実施形態の場合、フィラメント13に通電されたときに黄色の領域からオレンジ色の領域に渡ってコントロールされた発光色を、非通電時は、白金コート部20のシルバー色を目視することができる。
【0039】
以上説明したように、電球型ヒータの各実施形態によれば、フィラメントが通電時はローソク系の発光色と熱を放射し、フィラメントが非通電時はシルバー色を可視することができる。バルブに塗布される白金等はフロスト上にコーティングすることになり剥離防止に寄与する。
【0040】
図8は、この発明の灯具装置の一実施形態について説明するための構成図である。ハロゲンランプ11は、器具本体をなす筐体81の内部にはミラー82およびソケット83,83(片方は図示せず)が設けられていて、このソケット83,83にハロゲンランプ11のアウターリード線181,182が取り付けられ、ハロゲンランプ11の保持と給電がなされる。84は、筐体81の開放部を覆いハロゲンランプ11を密閉させるための透光性のカバー部材である。また、85はカバー部材84を保護するための保護部材である。
【0041】
このようにカバー部材84によって密閉された灯具装置は、ハロゲンランプ11からの放射光が直接あるいはミラー82を介してカバー部材84から放出される。このとき、点灯時の発光色はローソク色を呈し、非点灯時はシルバー色を呈することになる。
【0042】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、上記した実施形態によって把握される技術思想をその効果とともに以下に説明する。
【0043】
(1)放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントにより構成され、前記バルブ表面に、所定の深さのフロスト加工によりフロストを形成し、該フロスト上に低屈折率膜と金属酸化物を含む高屈折率膜を交互に複数層形成して積層部が形成された電球型ヒータにあって、前記バルブの外表面壁に凹凸を形成し、内面に高融点金属のフィラメントを具備したバルブの外表面に白金薄膜を設け、さらに該白金薄膜上に例えばSiOによる保護層を形成した電球型ヒータ。
この技術思想によれば、白金が比較的に低い温度で蒸発してしまうため、これよりも高温に耐えしかも透光性のあるSiOの薄膜による保護層で白金の蒸発を防止した。
【0044】
(2) 放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントにより構成され、前記バルブ表面に、所定の深さのフロスト加工によりフロストを形成し、該フロスト上に低屈折率膜と金属酸化物を含む高屈折率膜を交互に複数層形成して積層部が形成された電球型ヒータにあって、前記バルブの外表面壁に凹凸を形成し、内面に高融点金属のフィラメントを具備したバルブの外表面に白金薄膜を設け、さらに該白金薄膜上に例えばSiOによる保護層を形成し、さらに前記凹凸の深さの関係をコントロールした電球型ヒータ。
この技術思想は、白金が比較的に低い温度で蒸発してしまうため、これよりも高温に耐えしかも透光性のあるSiOの薄膜による保護層で白金の蒸発を防止できることに加え、バルブから放射される光の色を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の電球型ヒータの第1の実施形態について説明するための構成図。
【図2】図1の要部の拡大断面図。
【図3】図2のIIIに示す部分をさらに拡大して示した部分拡大図。
【図4】図3に示す白金コート部を施こさない場合Aと施した場合Bにおける分光分布波長を比較して説明するための説明図。
【図5】この発明の電球型ヒータの第2の実施形態について説明するための構成図。
【図6】この発明の第3の実施形態による発光色の変化について説明するための説明図。
【図7】この発明の第3の実施形態による色度分布について説明するための説明図。
【図8】この発明の灯具装置の一実施形態について説明するための構成図。
【符号の説明】
【0046】
11 ハロゲンランプ
12 バルブ
13 フィラメント
19 フロスト
20 白金コート部
30 保護層
211,212…
221,222…
81 筐体
82 ミラー
83 ソケット
84 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントおよびハロゲンを封入して構成され、前記バルブ外表面に所定の深さのフロスト加工により凹凸のフロストが形成された電球型ヒータにおいて、
前記フロスト上に白金薄膜を形成したことを特徴とする電球型ヒータ。
【請求項2】
放射透過性のバルブと該バルブ内に封装された高融点金属のフィラメントにより構成され、前記バルブ表面に、所定の深さのフロスト加工によりフロストを形成し、該フロスト上に低屈折率膜と金属酸化物を含む高屈折率膜を交互に複数層形成した電球型ヒータにおいて、
前記バルブの外表面壁に凹凸を形成し、内面に高融点金属のフィラメントを具備したバルブの外表面に、白金薄膜を設けたことを特徴とする電球型ヒータ。
【請求項3】
前記請求項1の電球型ヒータと、
前記電球型ヒータに給電させるとともに、前記電球型ヒータからの光や熱を放射させる筐体とを具備したことを特徴とする灯具装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−286398(P2006−286398A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104662(P2005−104662)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)