説明

電球形電灯及びその筐体

【課題】従来のものより部品点数を少なくすることが可能な電球形電灯及びその筐体の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電球形電灯10の筐体13は、電球形電灯10の口金17から素子実装基板15に向かって徐々に拡径した筒状をなし、その大径側端部に素子実装基板15と透光カバー12とが装着される金属製筐体20と、金属製筐体20の小径側端部を貫通した筒状をなし、金属製筐体20から外側に突出した外側突出部32に、口金17が装着される樹脂製筐体30とから構成され、金属製筐体20における小径側端部の開口縁を内側に屈曲させてなる結合鍔部22を、樹脂製筐体30を構成する樹脂に埋設することで、金属製筐体20と樹脂製筐体30とを抜け止め状態に結合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を実装した素子実装基板を有する電球形電灯及びその筐体に関し、特に、口金から素子実装基板に向かって拡径した筒状の金属製筐体と、金属製筐体の小径側端部を貫通した筒状の樹脂製筐体とを備えた電球形電灯及びその筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の電球形電灯の筐体としては、金属製筐体の大径側端部から樹脂製筐体を挿入して、その樹脂製筐体のうち、金属製筐体の小径側端部から突出した外側突出部の外側に、抜け止め部材を取り付けることで、金属製筐体と樹脂製筐体とを抜け止め状態に結合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3156685号公報(段落[0033]、第8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、半導体発光素子を有する電球形電灯は価格競争が激しくなっており、上記した従来のものより部品点数を削減して、より低コストで製造することが可能な電球形電灯の開発が求められていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、従来のものより部品点数を少なくすることが可能な電球形電灯及びその筐体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る電球形電灯の筐体は、発光素子を実装した素子実装基板を有する電球形電灯の口金から素子実装基板に向かって拡径した筒状をなし、その大径側端部に素子実装基板と透光カバーとが装着される金属製筐体と、金属製筐体の小径側端部を貫通した筒状をなし、金属製筐体から外側に突出した外側突出部に、口金が装着される樹脂製筐体とからなる電球形電灯の筐体において、金属製筐体における小径側端部の開口縁を内側に屈曲させてなる結合鍔部を、樹脂製筐体を構成する樹脂に埋設したところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電球形電灯の筐体において、樹脂製筐体のうち金属製筐体内で結合鍔部を覆った鍔被覆部を、金属製筐体の軸方向で貫通した鍔部露出孔を設けたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の電球形電灯の筐体において、樹脂製筐体には、素子実装基板に向かって拡径し、金属製筐体の内側に嵌合したインナー嵌合筒部が備えられ、インナー嵌合筒部を、金属製筐体の軸方向で貫通したアウター内面露出孔を設けたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1に記載の電球形電灯の筐体において、金属製筐体と樹脂製筐体とに、金属製筐体と樹脂製筐体との相対回転を禁止する回り止め部を設けたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の電球形電灯の筐体において、回り止め部として、結合鍔部の内縁部に切り欠き部を設けたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の電球形電灯の筐体において、樹脂製筐体の外側突出部の外面における軸方向の中間位置に口金の先端を突き当て可能な段差面を設け、外側突出部のうち段差面より金属製筐体から離れた側を口金が嵌合装着される口金装着部としたところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明に係る電球形電灯は、請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の電球形電灯の筐体を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1及び7の発明]
請求項1及び7の発明によれば、金属製筐体における小径側端部の開口縁を内側に屈曲させてなる結合鍔部を、樹脂製筐体を構成する樹脂に埋設したことで、金属製筐体と樹脂製筐体とを抜け止め状態に結合することができ、抜け止め部材を別途必要とする従来のものに比べて、部品点数を少なくすることが可能になる。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、筐体内に籠もった熱が鍔部露出孔を介して金属製筐体に伝わって金属製筐体から放熱されるから、筐体内の温度上昇を抑えることができる。例えば、口金を上にした状態で電球形電灯を使用した場合には、筐体内の暖気が鍔部露出孔のある上方へと移動するので、鍔部露出孔が特に効果的である。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、インナー嵌合筒部によって筐体を内側から補強することができる。しかも、インナー嵌合筒部内に籠もった熱が筒部内面露出孔を介して金属製筐体に伝わって金属製筐体から放熱されるから、インナー嵌合筒部内の温度上昇を抑えることができる。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、金属製筐体を把持して電球形電灯の口金をソケットに着脱する際に、金属製筐体が樹脂製筐体に対して回転して着脱不能になることを防止することができる。
【0017】
[請求項5の発明]
請求項5の発明の発明によれば、結合鍔部の内縁部に設けた切り欠き部が、樹脂製筐体を構成する樹脂と係合することで、金属製筐体と樹脂製筐体との相対回転を禁止(回り止め)することができる。
【0018】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、口金を樹脂製筐体の外側突出部に嵌合装着したときに、外側突出部の外面に形成された段差面に口金の先端が突き当たって、それ以上、金属製筐体に口金が接近することが禁止される。つまり、口金と金属製筐体とを離して配置することができ、口金と金属製筐体との間を絶縁することができる。また、口金と金属製筐体との間に別途、絶縁部材を取り付ける必要が無くなり、この点でも部品点数を少なくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る電球形電灯の側面図
【図2】電球形電灯の側断面図
【図3】伝熱プレート及び素子実装基板の平面図
【図4】金属製筐体の平面図
【図5】電球形電灯の筐体を大径側端部から見た斜視図
【図6】筐体の平面図
【図7】図6におけるX−X切断面における断面図
【図8】図6におけるY−Y切断面における断面図
【図9】筐体の成形金型を型開き状態にしたときの側断面図
【図10】筐体の成形金型を型締め状態にしたときの側断面図
【図11】変形例に係る筐体の側断面図
【図12】変形例に係る筐体の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図10に基づいて説明する。図1及び図2には、本発明に係る電球形電灯10の全体が示されている。電球形電灯10は、「LED電球」と称される電球形電灯であって、透光カバー12と筐体13とで構成されたハウジング11の内側に、「発光素子」としてのLED14が実装された素子実装基板15と、LED14を駆動するためのドライバモジュール16とを収容している。
【0021】
透光カバー12は、透明又は半透明な樹脂又はガラスで構成されており、筐体13から膨出したドーム形となっている。これに対し、筐体13は、口金17から透光カバー12に向かってテーパー状に拡径している。そして、図2に示すように、筐体13の大径側端部に素子実装基板15が配置されており、その素子実装基板15が筐体13の大径側端部に装着された透光カバー12によって覆われている。図2及び図3に示すように、素子実装基板15は、例えば、矩形平板状をなしており、透光カバー12との対向面に複数のLED14,14・・・が分散配置され、その裏面にはコネクタ15Cが実装されている。また、素子実装基板15の裏面には、LED14,14・・・から発生した熱を筐体13に逃がすために、金属製(例えば、アルミニウム製)の伝熱部材40が宛がわれており、その伝熱部材40が筐体13の大径側端部に嵌合装着されている。
【0022】
筐体13は、金属製筐体20と樹脂製筐体30とから構成されている。金属製筐体20は、ヒートシンクとして機能するように熱伝導性のよい金属(例えば、アルミニウム)で構成されている。一方、樹脂製筐体30は、筐体13内に収容したドライバモジュール16と金属製筐体20とを電気的に絶縁するために絶縁樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂)で構成されている。なお、金属製筐体20及び樹脂製筐体30は、熱伝導性のよいその他の金属及び樹脂で構成してもよい。
【0023】
金属製筐体20は、プレス成形品であって、口金17から素子実装基板15に向かってテーパー状(円錐状)に拡径した筒状(漏斗状)をなすと共に、その小径側端部の開口縁を内側に屈曲させて円環状の結合鍔部22が形成されている。また、図4に示すように、結合鍔部22には、その内周縁を、例えば、矩形状に切り欠いた切り欠き部24が周方向に間隔を開けて複数形成されている。本実施形態では、結合鍔部22の周方向で互いに180度離れた2カ所に切り欠き部24,24が形成されている。
【0024】
図7に示すように、結合鍔部22の内縁部は、樹脂製筐体30を構成する樹脂に埋設されている。また、その埋設部分において、結合鍔部22の内縁部に形成された切り欠き部24,24と樹脂製筐体30とが凹凸係合している。
【0025】
樹脂製筐体30は、金属製筐体20の内側に嵌合したインナー嵌合筒部31と、金属製筐体20の小径側端部から金属製筐体20の外側に突出した外側突出部32とを備えている。インナー嵌合筒部31は、金属製筐体20の内面形状に対応した形状、即ち、素子実装基板15に向かってテーパー状(円錐状)に拡径した筒状(漏斗状)をなし、金属製筐体20のテーパー内面を覆っている。また、図5及び図7に示すように、インナー嵌合筒部31の大径側端部は、金属製筐体20の大径側端部よりも小径側端部の方に一定幅でずらされている。即ち、金属製筐体20の大径側端部には、樹脂製筐体30によって覆われることなく内面が露出した内面露出部23が全周に亘って設けられている。
【0026】
図7に示すように、インナー嵌合筒部31の小径側端部からは円環状の鍔被覆部33が内側に向かって突出しており、その鍔被覆部33が金属製筐体20の結合鍔部22の内面を覆っている。
【0027】
図5及び図6に示すように、鍔被覆部33には、周方向で等間隔に複数の鍔部露出孔33A,33Aが形成されている。鍔部露出孔33A,33Aは、鍔被覆部33を金属製筐体20の軸方向で貫通している(図2参照)。そして、これら鍔部露出孔33A,33Aによって、結合鍔部22の内面の一部が樹脂製筐体30の内側に露出されている。
【0028】
鍔部露出孔33A,33Aが設けられたことで、筐体13内に籠もった熱(ドライバモジュール16から発生した熱)が金属製筐体20に伝わって、金属製筐体20から放熱される。例えば、口金17を上にした状態で電球形電灯10を使用した場合には、筐体13内の暖気が鍔部露出孔33A,33Aのある上方へと移動するので、鍔部露出孔33A,33Aが特に効果的となる。
【0029】
図7に示すように、樹脂製筐体30の外側突出部32は、インナー嵌合筒部31と同軸の円筒形をなしている。外側突出部32は鍔被覆部33の内縁部から起立しており、それら鍔被覆部33と外側突出部32との境界部分に、金属製筐体20における結合鍔部22の内縁部が埋設されている。
【0030】
外側突出部32は、鍔被覆部33(インナー嵌合筒部31)に近い方から順に、大径筒部32A、中径筒部32B、小径筒部32Cとなっており、その順に段階的に外径が小さくなっている。鍔被覆部33から最も離れた小径筒部32Cの外周面にはねじ山が形成されており(図1及び図2参照)、ここに一端有底筒形のねじ式口金17(E形口金)が螺合されている。そして、口金17の開口端寄り部分が、中径筒部32Bの外側に嵌合しかつカシメ固定されている。ここで、中径筒部32B及び小径筒部32Cは、本発明の「口金装着部」に相当する。
【0031】
図1及び図2に示すように、外側突出部32(中径筒部32B及び小径筒部32C)の外側に装着された口金17の開口端は、中径筒部32Bと大径筒部32Aとの間の段差面32Dに突き当てられており、それ以上、金属製筐体20に接近することが禁止される。つまり、口金17と金属製筐体20とが大径筒部32Aの軸長分だけ離して配置されており、口金17と金属製筐体20との間を電気的に絶縁することができる。
【0032】
樹脂製筐体30の内側にはドライバモジュール16が収容されている。ドライバモジュール16は、例えば、コンデンサやスイッチング素子等の複数の電気部品16E,16E・・・を回路基板16Kに実装した構造をなし、商用電源の交流を直流に変換してLED14,14・・・に定電流の直流電流を供給する。図2に示すように、回路基板16Kは、樹脂製筐体30の軸方向に延びた縦長平板状をなしており、インナー嵌合筒部31と外側突出部32とに跨って収容されている。また、回路基板16Kは、インナー嵌合筒部31に収容された部分が、外側突出部32に収容された部分よりも幅広となっている(図7参照)。さらに、回路基板16Kに実装された電気部品16E,16E・・・は、樹脂製筐体30及び伝熱部材40から離されている。
【0033】
図2に示すように、ドライバモジュール16からは複数本のリード線16A,16Bが延びている。ドライバモジュール16の出力部から延びたリード線16A,16Aは、素子実装基板15のコネクタ15Cに接続されている。
【0034】
一方、ドライバモジュール16の入力部から延びたリード線16B,16Bは、口金17に接続(ハンダ付け)されている。詳細には、外側突出部32の筒壁を貫通したリード線挿通孔32Eと、外側突出部32の末端開口32Fとからリード線16B,16Bが引き出されて、それぞれ口金17の筒壁及び底壁に接続されている。
【0035】
図2に示すように、樹脂製筐体30のうち外側突出部32の内側には、ドライバモジュール16を保持するための保持部38が形成されている。保持部38は、外側突出部32の筒壁内面から張り出しかつ挿通孔38Cを挟んで配置された1対の基板突当壁38A,38Aと、両基板突当壁38A,38Aからそれぞれドライバモジュール16側に起立した基板挟持壁38B,38Bとを備えている(図6参照)。
【0036】
図2及び図7に示すように、ドライバモジュール16の回路基板16Kは、その長手方向の一端部が基板突当壁38A,38Aに突き当てられかつ、その一端部が基板挟持壁38B,38Bのスリット部38S,38Sに挿入されている。
【0037】
図5に示すように、樹脂製筐体30のうちインナー嵌合筒部31の内面には、複数の補強リブ34,34・・・が形成されている。補強リブ34,34・・・は、インナー嵌合筒部31の内面から突出しかつ軸方向と平行に延びている。補強リブ34,34・・・は、インナー嵌合筒部31の大径側端部及び小径側端部から共に離れた軸方向の中間部に形成されている。また、補強リブ34,34・・・のうち、樹脂製筐体30の内側を向いた内側辺は樹脂製筐体30の軸方向と平行であり、大径側端部の方を向いた先端面は、樹脂製筐体30の軸方向と直交した同一平面で揃えられている(図7及び図8参照)。
【0038】
本実施形態では、図6に示すように、補強リブ34,34・・・が全部で8つ設けられており、隣同士になった2つの補強リブ34,34が対をなしている。そして、対をなした2つの補強リブ34,34を間に挟んで、素子実装基板15及び伝熱部材40を固定支持する固定支持柱35,35・・・が設けられている。
【0039】
固定支持柱35,35・・・は、インナー嵌合筒部31の内面から樹脂製筐体30の軸方向と平行に大径側端部に向かって起立しかつ、軸心部にビス締結孔を備えた円柱構造をなしている。ここで、固定支持柱35,35・・・の先端面は、補強リブ34の先端面よりもインナー嵌合筒部31の大径側端部の方に突出しかつ、インナー嵌合筒部31の大径側端部よりも小径側端部の方に位置している(図8参照)。
【0040】
インナー嵌合筒部31の内面には位置決めリブ37が形成されている。図7に示すように、位置決めリブ37は、補強リブ34と同様にインナー嵌合筒部31の内面から突出しかつ軸方向と平行に延びている。また、位置決めリブ37は、補強リブ34よりも厚肉であり、補強リブ34の先端面よりもインナー嵌合筒部31の大径側端部の方に突出している(図6及び図7参照)。
【0041】
インナー嵌合筒部31の内面には、補強リブ34,34に加えて1対の補強壁36,36が形成されている。これら補強壁36,36は、インナー嵌合筒部31の内面から樹脂製筐体30の軸方向と平行に起立しており、インナー嵌合筒部31の径方向、より詳細には、基板突当壁38A,38Aの並び方向で対向配置されている(図6参照)。そして、各補強壁36,36は、2つの固定支持柱35,35とそれら2つの固定支持柱35,35の間で対をなした2つの補強リブ34,34とを連結している。
【0042】
1対の補強壁36,36の対向面からは帯板状の基板支持壁39,39が突出している。基板支持壁39,39は、樹脂製筐体30の軸方向と平行に延びており、ドライバモジュール16の回路基板16Kのうち、長手方向に延びた両側辺が、これら基板支持壁39,39と係止している。また、ドライバモジュール16を筐体13の大径側端部から挿入する際に、回路基板16Kの長手方向に延びた両側辺を基板支持壁39,39に摺接させながら挿入すると、回路基板16Kの長手方向の一端部が基板挟持壁38B,38Bのスリット部38S,38Sに向けて案内されるようになっている。そして、ドライバモジュール16は、基板支持壁39,39及び基板挟持壁38B,38Bに対する回路基板16Kの摩擦係合によって保持されている。
【0043】
筐体13の大径側端部に嵌合装着された伝熱部材40は、円板形の底壁41と、底壁41の外周縁から曲げ起こされた円環状の周壁42とから構成されている。
【0044】
伝熱部材40の底壁41には、前記固定支持柱35,35の数及び配置と一致した複数(本実施形態では、4つ)のビス孔41A,41A・・・が貫通形成されており、その底壁41上に載置された素子実装基板15にも、固定支持柱35,35の数及び配置と一致した複数(本実施形態では、4つ)のビス孔15A,15A・・・が貫通形成されている(図3参照)。そして、素子実装基板15と伝熱部材40は、これらビス孔15A,41Aを貫通したビス(図示せず)によって固定支持柱35,35・・・の先端、即ち、筐体13の大径側端部に固定支持されている。なお、図3には、素子実装基板15に貫通形成された4つのビス孔15A,15A・・・のうちの3つと、伝熱部材40に貫通形成された4つのビス孔40A,40A・・・のうちの1つが示されている。また、図示しないが、伝熱部材40の底壁41には、コネクタ用開口が貫通形成され、そのコネクタ用開口に素子実装基板15のコネクタ15Cが挿通されている。
【0045】
図2に示すように、伝熱部材40の周壁42は、底壁41から離れるに従って拡径している。詳細には、周壁42は、底壁41の外周縁からテーパー状に拡径した第1拡径部42Aと、第1拡径部42Aの大径側端部から径方向外側に張り出した環状段差部42Bと、環状段差部42Bの外周縁からテーパー状に拡径した第2拡径部42Cとを有している。そして、第1拡径部42Aが樹脂製筐体30の大径側端部の内側に遊嵌すると共に、第2拡径部42Cが金属製筐体20の大径側端部における内面露出部23に接触状態で嵌合している。また、第2拡径部42Cと内面露出部23とがカシメ固定されて、両者が接触状態に保持されている。つまり、素子実装基板15と金属製筐体20との間が伝熱部材40によって連結され、LED14,14・・・から発生した熱を金属製筐体20から放熱することが可能となっている。ここで、口金17を下にした状態で電球形電灯10を使用した場合には、樹脂製筐体30内の暖気が伝熱部材40のある上方へと移動するので、伝熱部材40が特に効果的となる。
【0046】
図3に示すように、伝熱部材40には、その外縁部の一部を長孔状に切除した位置決め凹部43が形成されている。伝熱部材40を筐体13の大径側端部に嵌合装着する際に、位置決め凹部43と樹脂製筐体30に形成された位置決めリブ37(図6参照)とを凹凸係合させると、伝熱部材40の各ビス孔41A,41A・・・と、樹脂製筐体30の固定支持柱35,35・・・とが同軸線上に位置決めされるようになっている。
【0047】
以上が、本実施形態の電球形電灯10及びその筐体13の構成であって、次に、電球形電灯10及びその筐体13の製造方法について説明する。筐体13の製造方法は以下のようである。まずは、板金をプレス加工して金属製筐体20を成形する。
【0048】
次いで、成形金型60(図9及び図10参照)に金属製筐体20をインサートして射出成形(インサート成形)を行う。即ち、金属製筐体20を、図10に示すように、成形金型60のキャビティ60A内にインサートした状態で、そのキャビティ60A内に樹脂製筐体30を構成する樹脂を射出し、金属製筐体20と樹脂製筐体30とが一体に結合した筐体13を成形する。
【0049】
成形金型60は、例えば、筐体13の外面形状に対応した成形面を有する第1ブロック61と、筐体13の内面形状に対応した成形面を有する第2ブロック62とを含む複数の金型ブロック61〜64から構成されている。そして、図9に示すように、型開き状態で第1ブロック61の成形面に金属製筐体20をセットして成形金型60を型締め状態にすると、図10に示すように、第1ブロック61と第2ブロック62との間で、金属製筐体20の大径側端部が全周に亘って挟持される。
【0050】
また、金属製筐体20の結合鍔部22には、第2ブロック62から型締め方向に突出した複数の押えピン62T,62Tが突き当てられて、それら複数の押えピン62T,62Tと第1ブロック61の成形面との間で結合鍔部22が挟持される。これらの挟持によって金属製筐体20が位置ズレすることなくキャビティ60A内に固定される。
【0051】
この状態でキャビティ60Aに樹脂製筐体30を構成する樹脂を射出すると、第1ブロック61と第2ブロック62との間で挟持された金属製筐体20の大径側端部に、樹脂製筐体30で被覆されずに内面が露出した内面露出部23が形成される。また、結合鍔部22の内面が樹脂で覆われて鍔被覆部33が形成されると共に、押えピン62T,62Tが突き当てられた部分だけが樹脂で覆われずに、鍔被覆部33を貫通した鍔部露出孔33A,33Aが形成される。
【0052】
また、図9に示すように、金属製筐体20における結合鍔部22の内縁部は、第1ブロック61の成形面からキャビティ60A内に突出しており、その突出した結合鍔部22の内縁部が樹脂製筐体30を構成する樹脂に埋設される。即ち、上記したように、樹脂製筐体30における鍔被覆部33と外側突出部32との境界部分に、結合鍔部22の内縁部が全周に亘って埋設される(図7及び図8参照)。これにより、樹脂製筐体30と金属製筐体20とが抜け止め状態で結合される。
【0053】
また、結合鍔部22の内縁部に形成された切り欠き部24,24(図4参照)に、樹脂製筐体30を構成する樹脂が入り込むことにより、樹脂製筐体30と金属製筐体20とが周方向で係合して、両者の相対回転が禁止(回り止め)される。この構成が本発明における「回り止め部」に相当する。
【0054】
キャビティ60A内の樹脂製筐体30が固まったら、成形金型60を型開きして筐体13を抜き取る。以上が筐体13の製造方法である。
【0055】
電球形電灯10は、以下のようにして組み立てられる。まずは、筐体13(樹脂製筐体30)の内側にドライバモジュール16を組み付ける。具体的には、筐体13の大径側端部からドライバモジュール16を挿入し、基板挟持壁38B,38Bのスリット部38S,38Sに回路基板16Kを挿入して挟持させる。このとき、回路基板16Kの長手方向に延びた両側辺を基板支持壁39,39に摺接させながら挿入することで、回路基板16Kをスムーズにスリット部38S,38Sに挿入することができる。
【0056】
次に、ドライバモジュール16から延びた入力側のリード線16B,16Bを、外側突出部32の末端開口32F及びリード線挿通孔32Eから引き出す。そして、外側突出部32の外側に口金17を装着する共に、リード線16B,16Bを口金17の所定部位に接続(ハンダ付け)する。
【0057】
次に、伝熱部材40及び素子実装基板15を筐体13に取り付ける。具体的には、ドライバモジュール16の出力側のリード線16A,16Aを、伝熱部材40のコネクタ用開口(図示せず)に通して素子実装基板15のコネクタ15Cに接続しておき、伝熱部材40の位置決め凹部43と樹脂製筐体30の位置決めリブ37とを凹凸係合させて、伝熱部材40を筐体13の大径側端部に嵌合装着する。
【0058】
次に、伝熱部材40及び素子実装基板15を樹脂製筐体30にビス止めする。即ち、伝熱部材40上に素子実装基板15を載置して、両者のビス孔15A,41Aの位置を合わせ、それらビス孔15A,41Aに挿入したビスを固定支持柱35,35に締め付ける。
【0059】
伝熱部材40及び素子実装基板15を筐体13に固定したら、必要に応じて、金属製筐体20の大径側端部の形状を矯正して、伝熱部材40の第2拡径部42Cと金属製筐体20の内面露出部23との接触状態を調節する。そして、第2拡径部42Cと内面露出部23とをかしめて、両者を接触状態で固定する。最後に、筐体13の大径側端部に透光カバー12を装着する。以上が電球形電灯10の製造方法である。
【0060】
このように、本実施形態によれば、金属製筐体20における小径側端部の開口縁を内側に屈曲させて結合鍔部22を形成し、その結合鍔部22を樹脂製筐体30を構成する樹脂に埋設することで、樹脂製筐体30と金属製筐体20とを抜け止め状態に結合することができるから、抜け止め部材を別途必要としていた従来のものに比べて、部品点数を少なくすることができる。これにより、電球形電灯10及びその筐体13の製造コストを従来より抑えることが可能になる。
【0061】
また、結合鍔部22の内面を樹脂製筐体30の内側に露出させた鍔部露出孔33A,33Aを設けたことで、筐体13の内部に籠もった熱が鍔部露出孔33A,33Aを介して金属製筐体20に伝わり金属製筐体20から放熱されるので、筐体13内の温度上昇を抑えることができる。
【0062】
また、金属製筐体20の結合鍔部22に形成した切り欠き部24,24と、樹脂製筐体30とが凹凸係合して、金属製筐体20と樹脂製筐体30との相対回転を禁止(回り止め)するから、ソケットへの電球形電灯10の着脱時に、金属製筐体20が樹脂製筐体30に対して空回りして着脱不能になるという事態を防止することができる。
【0063】
さらに、外側突出部32の外側に装着された口金17の開口端が、大径筒部32Aと中径筒部32Bとの間の段差面32Dに突き当たるから、口金17と金属製筐体20とを離して絶縁することができる。また、これらの絶縁のために別途、絶縁部材を必要としないから、この点でも、部品点数を少なくすることが可能となる。
【0064】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0065】
(1)上記実施形態では、素子実装基板15に実装された発光素子としてLED14を例示したが、本発明に係る発光素子はLEDに限定するものではなく、例えば、エレクトロルミネッセンスであってもよい。
【0066】
(2)上記実施形態において、樹脂製筐体30のインナー嵌合筒部31の外面と金属製筐体20の内面とを接着剤によって固着してもよい。具体的には、ホットメルト型の接着剤を金属製筐体20の内面に予め塗布しておき、インサート成形によって樹脂製筐体を30を成形すると共に、その樹脂製筐体30を構成する樹脂の熱で接着剤を溶かして金属製筐体20と樹脂製筐体30のインナー嵌合筒部31とを固着させればよい。なお、インナー嵌合筒部31と金属製筐体20とを接着剤で固着した場合は、固着していない場合と比べて、筐体13の剛性が高まると共に筐体13内の温度上昇を抑えることが可能となる。
【0067】
(3)また、接着剤によらず、金属製筐体20の内面に細かな凹凸面を形成してインサート成形を行い、樹脂製筐体30を構成する樹脂が、金属製筐体20の内面の凹凸に入り込んで硬化することによるアンカー効果によってインナー嵌合筒部31の外面と金属製筐体20の内面とを固着させてもよい。
【0068】
(4)上記実施形態では、金属製筐体20の結合鍔部22を樹脂製筐体30の内側に露出させた鍔部露出孔33A,33Aを形成していたが、図11に示すように、インナー嵌合筒部31を貫通して金属製筐体20のテーパー内面を樹脂製筐体30の内側に露出させた筒部内面露出孔31A,31Aを形成してもよい。筒部内面露出孔31Aを形成する場合には、樹脂製筐体30の軸方向と直交する方向から筒部内面露出孔31Aを見たときに、その筒部内面露出孔31Aを通して金属製筐体20のテーパー内面が見えないような大きさとすることが好ましい。また、例えば、図12に示すように、インナー嵌合筒部31のうち、補強壁36と重なった部分に筒部内面露出孔31Aを設けてもよい。なお、図11に図示した筐体13には、筒部内面露出孔31A,31Aと鍔部露出孔33A,33Aの両方が備えられているが、筒部内面露出孔31A,31Aのみを備えていてもよい。
【0069】
(5)上記実施形態の筐体13のうち、金属製筐体20及び樹脂製筐体30のインナー嵌合筒部31の形状は、テーパー形状(円錐形)に限定するものではなく、小径側端部から大径側端部に向かって湾曲しながら拡径したラッパ形又は砲弾形でもよい。
【0070】
(6)上記実施形態の樹脂製筐体30の内部に形成された補強リブ34や固定支持柱35の数、配置及び形状は、上記実施形態の構成に限定するものではなく、ドライバモジュール16の形状、配置及び保持構造等に応じて適宜変更してもよい。
【0071】
(7)上記実施形態において結合鍔部22は、金属製筐体20の小径側端部の開口縁の全周を内側に屈曲させた形状であったが、金属製筐体20の小径側端部の開口縁の一部のみ内側に屈曲させた形状でもよい。
【0072】
(8)上記実施形態では、金属製筐体20と樹脂製筐体30とを回り止めするために、結合鍔部22の周方向に間隔を開けて複数の切り欠き部24,24を形成していたが、結合鍔部22の内周縁の全周又は一部に鋸歯部を形成したり、結合鍔部22に係合孔を貫通形成して、それら鋸歯部や係合孔と樹脂製筐体30を構成する樹脂とを係合させて回り止めを行ってもよい。
【0073】
(9)さらに、結合鍔部22の内縁部の一部を切り起こして、切り起こし片と切り欠き部24とを形成し、それら切り起こし片と切り欠き部24を、樹脂製筐体30を構成する樹脂に埋設することで回り止めを行ってもよい。このとき、切り起こし片と切り欠き部24とで、より強固な回り止めを行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
10 電球形電灯
13 筐体
14 LED(発光素子)
15 素子実装基板
17 口金
20 金属製筐体
22 結合鍔部
24 切り欠き部
30 樹脂製筐体
31 インナー嵌合筒部
31A 筒部内面露出孔
32 外側突出部
32D 段差面
33 鍔被覆部
33A 鍔部露出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を実装した素子実装基板を有する電球形電灯の口金から前記素子実装基板に向かって拡径した筒状をなし、その大径側端部に前記素子実装基板と透光カバーとが装着される金属製筐体と、前記金属製筐体の小径側端部を貫通した筒状をなし、前記金属製筐体から外側に突出した外側突出部に、前記口金が装着される樹脂製筐体とからなる電球形電灯の筐体において、
前記金属製筐体における前記小径側端部の開口縁を内側に屈曲させてなる結合鍔部を、前記樹脂製筐体を構成する樹脂に埋設したことを特徴とする電球形電灯の筐体。
【請求項2】
前記樹脂製筐体のうち前記金属製筐体内で前記結合鍔部を覆った鍔被覆部を、前記金属製筐体の軸方向で貫通した鍔部露出孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電球形電灯の筐体。
【請求項3】
前記樹脂製筐体には、前記素子実装基板に向かって拡径し、前記金属製筐体の内側に嵌合したインナー嵌合筒部が備えられ、
前記インナー嵌合筒部を、前記金属製筐体の軸方向で貫通した筒部内面露出孔を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電球形電灯の筐体。
【請求項4】
前記金属製筐体と前記樹脂製筐体とに、前記金属製筐体と前記樹脂製筐体との相対回転を禁止する回り止め部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載の電球形電灯の筐体。
【請求項5】
前記回り止め部として、前記結合鍔部の内縁部に切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の電球形電灯の筐体。
【請求項6】
前記樹脂製筐体の前記外側突出部の外面における軸方向の中間位置に前記口金の先端を突き当て可能な段差面を設け、前記外側突出部のうち前記段差面より前記金属製筐体から離れた側を前記口金が嵌合装着される口金装着部としたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の電球形電灯の筐体。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の電球形電灯の筐体を備えたことを特徴とする電球形電灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−252895(P2012−252895A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125018(P2011−125018)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】