説明

電球用フィラメント

【課題】長寿命のコイル状の電球用フィラメントを提供することにある。
【解決手段】全長に亘って所定の巻線ピッチで一定に且つ所定の総巻線数で巻かれた基本フィラメントを想定して該基本フィラメントの巻線ピッチ及び全長の下に、両端部を同一の巻線数及び巻線ピッチで密に巻いて夫々を片端密巻部5a、5bとする両端密巻部5と中央部を疎に巻いた中央疎巻部10からなるフィラメント1を形成した。フィラメント1は中央疎巻部10の巻線数は総巻線数の75%よりも多く100%よりも少なく、且つ中央疎巻部10の巻線ピッチを基本フィラメントの巻線ピッチで割った値が1.03以上1.045以下の範囲になるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電球用フィラメントに関するものであり、詳しくは、長寿命のコイル状の電球用フィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコイル状の電球用フィラメントには、例えば、全長に亘って間隙pを隔て規則的に巻回したもの(例えば、特許文献1参照。)、中央部13bの巻きピッチを両端部13aの巻きピッチよりも疎にしたもの(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【0003】
そのうち、特許文献1に開示された電球用フィラメントのように、全長15に亘って一定の巻線ピッチで巻かれた従来のコイルフィラメント20(図2参照)は、一般的にその巻線ピッチがおおよそ150〜180%の範囲とされ、その中でも多くは150〜165%の範囲とされている。ちなみに、%で表された巻線ピッチP[%]はコイルの巻線ピッチ(巻線間隔)[mm]をコイルの線径d[mm]で割った値であり、通常%で表記される。つまり、式で表すと、P[%]=(巻線間隔/d)×100となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−50321号公報
【特許文献2】実開平01−161547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、全長に亘って一定のピッチで巻いたコイル状のフィラメントは、通電時の温度分布が図9のサンプル(8)に示すように均一とはならず、両端部の温度に対して発熱が集中する中央部の温度が高くなる。
【0006】
フィラメントが、タングステン(W)からなる場合、高温になるにつれてフィラメントからのタングステンの蒸発量が多くなり、その結果、フィラメントは消耗されて細くなり最終的には断線に至る。つまり、フィラメントの全長のうち相対的な最高温部分で断線が生じ、絶対的な温度によって断線に至るまでの時間が決まる。
【0007】
したがって、図9のサンプル(8)に示す温度分布を有するような、全長に亘って一定のピッチで巻いたコイル状のフィラメントにおいては、相対的な最高温部分で且つ絶対的な温度も高い中央部で集中的に且つ早期に断線が起こる可能性が高い。
【0008】
そこで、中央部の巻線ピッチを両端部の巻線ピッチよりも疎にすることにより(図1参照)、フィラメントの全長に亘って温度分布の均整化を図ると共に最高温度の低温度化を図り、それによって断線箇所の集中を防止すると共に断線寿命を延ばすことが考えられる。
【0009】
このような巻線構造を有するフィラメントは上述の特許文献2に開示されているが、その中では、フィラメントの巻線数や巻線ピッチ等の設計値に係わる具体的な数値は開示されておらず、現実に実施するにあたっては実現性に乏しいものである。
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、長寿命のコイル状の電球用フィラメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、電球に用いるコイル状のフィラメントであって、前記フィラメントは、全長に亘って150〜180%の範囲の巻線ピッチで一定に且つ所定の総巻線数で巻かれた基本フィラメントを想定して該基本フィラメントの前記巻線ピッチ及び総巻線数から全長を求め、前記総巻線数と前記全長の下に、両端部を同一の巻線数及び巻線ピッチで密に巻いて夫々を片端密巻部とする両端密巻部と中央部を疎に巻いた中央疎巻部で構成し、前記中央疎巻部の巻線数は前記総巻線数の75%よりも多く100%よりも少なく、且つ前記中央疎巻部の巻線ピッチを前記基本フィラメントの巻線ピッチで割った値が1.03以上1.045以下の範囲にあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
全長に亘って所定の巻線ピッチで一定に且つ所定の総巻線数で巻かれた基本フィラメントを想定して該基本フィラメントの巻線ピッチ及び全長の下に、両端部を同一の巻線数及び巻線ピッチで密に巻いて夫々を片端密巻部とする両端密巻部と中央部を疎に巻いた中央疎巻部からなるフィラメントを形成した。フィラメントは中央疎巻部の巻線数は総巻線数の75%よりも多く100%よりも少なく、且つ中央疎巻部の巻線ピッチを基本フィラメントの巻線ピッチで割った値が1.03以上1.045以下の範囲になるようにした。
【0013】
その結果、フィラメントの全長に亘って一定の巻線ピッチで巻かれた従来のコイルフィラメントに対して、温度分布が全長に亘って均整化されると共に中央部における最大色温度が下がり、フィラメントの断線寿命の長寿命化を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係わるコイルフィラメントの説明図である。
【図2】従来例のコイルフィラメントの説明図である。
【図3】試験サンプルの仕様の一覧表である。
【図4】通電試験による断線寿命の表である。
【図5】図4をグラフ化したものである。
【図6】通電試験による断線寿命の表である。
【図7】色温度のグラフである。
【図8】通電試験による断線寿命の表である。
【図9】色温度のグラフである。
【図10】寿命向上率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の好適な実施形態を図1から図10を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係わるフィラメントの概略図である。
【0017】
フィラメント1は、タングステン(W)からなるコイル状のフィラメント(以下、コイルフィラメントと呼称する)であり、両端部を密に巻いた両端密巻部5と中央部を疎に巻いた中央疎巻部10で構成されている。
【0018】
両端密巻部5は、片端部の夫々を密巻部とする片端密巻部5a、5bからなり、片端密巻部5a、5b同士は互いに巻線数及び巻線ピッチが同一である。
【0019】
本発明は、コイルフィラメント1を両端密巻部5と中央疎巻部10で構成することにより通電時のフィラメントの断線による寿命(以下、断線寿命と呼称する)を、コイルの全長(以下、全長と略称する)に亘って一定の巻線ピッチで巻かれた従来のコイルフィラメントよりも長寿命化するものである。
【0020】
発明者は、両端密巻部5と中央疎巻部10で構成されたコイルフィラメント1について、具体的に巻き方の最適化を図るために種々の巻き方のサンプルを作製して通電試験に供し、それにより夫々のサンプルの性能・断線寿命を確認・評価した。そして、その確認・評価の結果に基づいてコイルフィラメントの巻き方の最適化を図ったものである。
【0021】
以下に、図1から図10を参照して、上記通電試験に係わる詳細を説明する。
【0022】
図3は、通電試験に投入したコイルフィラメントの試作サンプルの仕様について表にまとめたものである。
【0023】
通電試験に際しては12種類の試験サンプルを作製し、そのうち、サンプル(1)とサンプル(8)については図2に示す従来のコイルフィラメントのような、全長に亘って巻線ピッチを一定とする構成とし、サンプル(2)〜サンプル(7)及びサンプル(9)〜サンプル(12)については図1に示す本発明で提案するような、中央部の巻線ピッチを両端部の巻線ピッチよりも疎とする巻線構成とした。
【0024】
また、サンプル(2)〜サンプル(7)は、従来の巻線構成を有するサンプル(1)を基本として設計試作したものであり、具体的には、サンプル(2)〜サンプル(7)の夫々の全長及び総巻線数をサンプル(1)の全長及び総巻線数と同一に設定し、その条件下において中央部の巻線ピッチを両端部の巻線ピッチよりも疎とする巻き方で構成したものである。
【0025】
そこで、サンプル(1)は、総巻線数TaをTa=32T(ターン)、巻線ピッチPをP=154%とした。従って、全長CLはCL=d×1.54×32T=d×49.28mm(dはコイルの線径)となる(図3参照)。
【0026】
これにより、サンプル(2)〜サンプル(7)は、総巻線数Ta=32T、全長CL=d×49.28mmの条件下で、コイルの両端部の夫々(片端部)を中央部よりも密に巻いて両端密巻部を形成し、中央部を両端密巻部よりも疎に巻いて中央疎巻部を形成した。
【0027】
同様に、サンプル(9)〜サンプル(12)は、従来の巻線構成を有するサンプル(8)を基本として設計試作したものであり、具体的には、サンプル(9)〜サンプル(12)の夫々の全長及び総巻線数をサンプル(8)の全長及び総巻線数と同一に設定し、その条件下において中央部の巻線ピッチを両端部の巻線ピッチよりも疎とする巻き方で構成したものである。
【0028】
そこで、サンプル(8)は、総巻線数TaをTa=28T、巻線ピッチPをP=180%とした。従って、全長CLはCL=d×1.8×28T=d×50.4mm(dはコイルの線径)となる(図3参照)。
【0029】
これにより、サンプル(9)〜サンプル(12)は、総巻線数Ta=28T、全長CL=d×50.4mmの条件下で、コイルの両端部の夫々(片端部)を中央部よりも密に巻いて両端密巻部を形成し、中央部を両端密巻部よりも疎に巻いて中央疎巻部を形成した。
【0030】
なお、サンプル(2)〜サンプル(7)及びサンプル(9)〜サンプル(12)はいずれも、中央疎巻部を挟んだ、両端密巻部を構成する片端密巻部同士は、巻線数及び巻線ピッチとも同一である。
【0031】
そこで、図3の表に記載された個々の試作サンプルの巻線仕様を見てみると、サンプル(2)〜サンプル(4)はいずれも両端密巻部の巻線ピッチを120%で同一とし、両端密巻部の巻線数をサンプル(2)を8T、サンプル(3)を12T、サンプル(4)を16Tとしている。
【0032】
したがって、サンプル(2)〜サンプル(4)の夫々の中央疎巻部の巻線ピッチは、サンプル(2)〜サンプル(4)の夫々の両端密巻部の巻線数及び巻線ピッチと、全長及び総巻線数から求められ、サンプル(2)は159%、サンプル(3)は162%、サンプル(4)は165%となっている。
【0033】
また、サンプル(5)〜サンプル(7)については、いずれも中央疎巻部の巻線数を24Tで同一とし、中央疎巻部の巻線ピッチをサンプル(5)を157%、サンプル(6)を159%、サンプル(7)を163%としている。
【0034】
したがって、サンプル(5)〜サンプル(7)の夫々の両端密巻部の巻線ピッチは、サンプル(5)〜サンプル(7)の夫々の中央密巻部の巻線数及び巻線ピッチと、全長及び総巻線数から求められ、サンプル(5)は145%、サンプル(6)は139%、サンプル(7)は127%となっている。
【0035】
更に、サンプル(9)〜サンプル(12)については、いずれも中央疎巻部の巻線数を22Tで同一とし、中央疎巻部の巻線ピッチをサンプル(9)を182%、サンプル(10)を184%、サンプル(11)を186%、サンプル(12)を189%としている。
【0036】
したがって、サンプル(9)〜サンプル(12)の夫々の両端密巻部の巻線ピッチは、サンプル(9)〜(12)の夫々の中央疎巻部の巻線数及び巻線ピッチと、全長及び総巻線数から求められ、サンプル(9)は168%、サンプル(10)は156%、サンプル(11)は144%、サンプル(12)は126%となっている。
【0037】
次に、上記試作サンプル(1)〜(12)を用いた通電試験及びそれにより得られた断線寿命及び諸性能に係わるデータ及びその評価について詳細に説明する。
【0038】
まず、サンプル(2)〜サンプル(4)について、各5個ずつの通電試験により得られた平均断線寿命を表にしたものを図4に示しており、それをグラフ化したものを図5に示している。図5において、横軸は両端密巻部の巻線数(T)を表し、縦軸は5個の試験サンプルの平均断線寿命(h)を表しており、グラフ中の3点は夫々サンプル(2)、サンプル(3)、サンプル(4)の平均断線寿命を示している。
【0039】
このグラフは、サンプル(2)が最も平均断線寿命が長く、続いてサンプル(3)となり、サンプル(4)が最も平均断線寿命が短いことを示している。これにより、両端密巻部の巻線ピッチが同一の場合は、両端密巻部の巻線数の少ない方が平均断線寿命が長いことがわかる。
【0040】
このことから、コイルフィラメントの総巻数をTaとし、両端密巻部の夫々の片端密巻部の巻線数をTcとすると、TaとTcはTc/Ta≦0.125の関係にあることが好ましい。つまり、コイルフィラメントの各片端密巻部で構成される両端密巻部の巻線数は、コイルフィラメントの総巻線数の25%以下であることが好ましい。換言すると、コイルフィラメントの中央疎巻部の巻線数は、コイルフィラメントの総巻線数の75%よりも多いことが好ましい。
【0041】
次に、サンプル(1)、サンプル(5)〜サンプル(7)について、各15個ずつの通電試験により得られた平均断線寿命を表にしたものを図6に示している。図6の表より、従来の巻線構成を有するサンプル(1)を除くと、サンプル(6)が最も平均断線寿命が長く、続いてサンプル(5)となり、サンプル(7)が最も平均断線寿命が短いことがわかる。つまり、中央疎巻部においては断線寿命の長寿命化に最適な巻線ピッチが存在することを意味している。
【0042】
また、サンプル(5)〜サンプル(7)のうち、通電試験において平均断線寿命が最も長かったサンプル(6)[(中央疎巻部の巻線数:24T、巻線ピッチ:159%)、(両端密巻部の巻線数:8T、巻線ピッチ:139%)]と、従来の巻線構成を有するサンプル(1)[(総巻線数:32T、巻線ピッチ:154%)]の夫々について全長に亘る温度分布を測定した。図7はその測定結果をグラフ化したものであり、横軸にフィラメントの位置を巻線位置(T)で表し、縦軸に色温度(K)を表している。
【0043】
このグラフより、サンプル(6)はサンプル(1)に対して、温度分布が全長に亘って均整化されていると共に中央部における最大色温度が下がっていることがわかる。この結果より、コイルフィラメントは、全長に亘って一定の巻線ピッチで巻かれた従来の巻線構成を有するコイルフィラメントに対して両端密巻部と中央疎巻部からなる巻線構成とすることにより、温度分布が全長に亘って均整化されると共に中央部における最大色温度が下がり、平均断線寿命が20%近く長寿命化することが明らかになった。
【0044】
更に、サンプル(8)〜サンプル(12)について、各10個ずつの通電試験により得られた平均断線寿命を表にしたものを図8に示している。図8の表より、従来の巻線構成を有するサンプル(8)を除くと、サンプル(11)が最も平均断線寿命が長く、続いてサンプル(12)及びサンプル(10)の順となり、サンプル(9)が最も平均断線寿命が短いことがわかる。つまり、中央疎巻部においては断線寿命の長寿命化に最適な巻線ピッチが存在することを意味している。
【0045】
また、サンプル(9)〜サンプル(12)のうち、通電試験において平均断線寿命が最も長かったサンプル(11)[(中央疎巻部の巻線数:22T、巻線ピッチ:186%)、(両端密巻部の巻線数:6T、巻線ピッチ:144%)]と、従来の巻線構成を有し上記サンプル(1)とは異なる総巻線数及び巻線ピッチを有するサンプル(8)[(総巻線数:28T、巻線ピッチ:180%)]の夫々について全長に亘る温度分布を測定した。図9はその測定結果をグラフ化したものであり、横軸にフィラメントの位置を巻線位置(T)で表し、縦軸に色温度(K)を表している。
【0046】
このグラフより、サンプル(11)はサンプル(8)に対して、温度分布が全長に亘って均整化されていると共に中央部における最大色温度が下がっていることがわかる。この結果より、コイルフィラメントは、全長に亘って一定の巻線ピッチで巻かれた従来の巻線構成を有するコイルフィラメントにおいて、その全長及び総巻線数に係わる数値が異なっても、該従来のコイルフィラメントに対して両端密巻部と中央疎巻部からなる巻線構成とすることにより、温度分布が全長に亘って均整化されると共に中央部における最大色温度が下がり、平均断線寿命が20%近く長寿命化することが明らかになった。
【0047】
つまり、上記通電試験の結果より、全長に亘って150〜180%の一定の巻線ピッチで巻かれた巻線構成からなる従来のコイルフィラメントにおいて、その全長及び総巻線数に係わる数値が異なっても、該従来のコイルフィラメントの巻線仕様を基本として両端密巻部と中央疎巻部からなる巻線構成とするコイルフィラメントを設計製作することにより、従来のコイルフィラメントよりも平均断線寿命を20%近く長寿命化できることがわかった。
【0048】
そこで、このような巻線設計手法を確立するために、中央疎巻部の巻線ピッチを制御因子とし、その制御パラメータを算出した。
【0049】
図10は、サンプル(5)〜サンプル(7)とサンプル(9)〜サンプル(12)の夫々の平均断線寿命をグラフ化したものである。図10において、横軸はJp(最適化するコイルフィラメントの中央疎巻部の巻線ピッチ/最適化するコイルフィラメントの基本となる巻線仕様を有する、全長に亘って130〜180%の範囲のピッチで一定に巻かれた巻線構成を有する従来のフィラメントの該巻線ピッチ)を表し、縦軸は寿命向上率を表している。
【0050】
この場合、寿命向上率とは、従来の巻線構成を有するフィラメントの平均断線寿命と最適化した両端密巻部と中央疎巻部からなる巻線構成を有するフィラメントの平均断線寿命を比較したときの寿命の向上率をパーセンテージで示したものであり、例えば、サンプル(8)とサンプル(11)を例にとると、サンプル(8)に対するサンプル(11)の寿命向上率は、サンプル(11)の平均断線寿命をサンプル(8)の平均断線寿命で割った値、つまり((サンプル(11)の平均断線寿命)/((サンプル(8)の平均断線寿命))で表され、527h/452h≒1.17で約117%の寿命向上率となる。
【0051】
図10のグラフにおいて、サンプル(5)〜サンプル(7)の夫々の寿命向上率を結んだ近似曲線と、サンプル(9)〜サンプル(12)の夫々の寿命向上率を結んだ近似曲線は、いずれも横軸のJp=104%付近に寿命向上率のピークを有していることがわかる。
【0052】
その結果、従来の巻線構成からなるコイルフィラメントに対して該従来のコイルフィラメントの巻線仕様を基本にコイルフィラメントの巻線構成を最適化して寿命向上率115%以上を狙う場合、コイルフィラメントの中央疎巻部の巻線ピッチの制御範囲は、103%≦Jp≦104.5%となる。
【0053】
以上のように、本発明は、照明あるいは表示装置の光源として使用する電球の発光源にコイルフィラメントを用いるにあたり、従来であれば、全長に亘って一定の巻線ピッチで巻かれた巻線構成を有するコイルフィラメントを用いるところを、該従来のコイルフィラメントの全長及び総巻線数をそのまま全長及び総巻線数とすると共に両端部を同一の巻線数及び巻線ピッチで密に巻いて夫々を片端密巻部とする両端密巻部と中央部を疎に巻いた中央疎巻部で構成した巻線構成を有する最適化された本発明のコイルフィラメントを用いることにより、従来のコイルフィラメントに対して115%以上の断線寿命を得ることができ、長寿命化に寄与するものとなる。
【0054】
但し、コイルフィラメントの最適化の条件として、コイルフィラメントの中央疎巻部の巻線数を総巻線数の75%よりも多く100%よりも少なく、且つ中央疎巻部の巻線ピッチを従来のコイルフィラメントの巻線ピッチで割った値が1.03以上1.045以下の範囲にあることが必要となる。
【符号の説明】
【0055】
1… フィラメント
5… 両端密巻部
5a… 片端密巻部
5b… 片端密巻部
10… 中央疎巻部
15… 全長
20… フィラメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電球に用いるコイル状のフィラメントであって、
前記フィラメントは、全長に亘って150〜180%の範囲の巻線ピッチで一定に且つ所定の総巻線数で巻かれた基本フィラメントを想定して該基本フィラメントの前記巻線ピッチ及び総巻線数から全長を求め、前記総巻線数と前記全長の下に、両端部を同一の巻線数及び巻線ピッチで密に巻いて夫々を片端密巻部とする両端密巻部と中央部を疎に巻いた中央疎巻部で構成し、
前記中央疎巻部の巻線数は前記総巻線数の75%よりも多く100%よりも少なく、且つ前記中央疎巻部の巻線ピッチを前記基本フィラメントの巻線ピッチで割った値が1.03以上1.045以下の範囲にあることを特徴とする電球用フィラメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97916(P2013−97916A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237460(P2011−237460)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(591149034)株式会社偕揚社 (4)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)