説明

電界プログラマブル膜およびそれに基づくメモリデバイス

【課題】電界プログラマブル膜およびそれに基づくメモリデバイスの提供。
【解決手段】バインダー、並びに(a)(i)電子供与体の濃度および(ii)電子受容体の濃度の少なくとも一方が0.05重量%未満である電子供与体および電子受容体、または(b)電子供与体および/または電子受容体がバインダーに化学結合された電子供与体および電子受容体、を含む電界プログラマブル膜組成物が開示される。基体上に電界プログラマブル膜を製造するための方法も開示される。電界プログラマブル膜を含むメモリデバイスをも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界プログラマブル膜組成物、それに基づくメモリデバイス、およびかかるデバイスを含む機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電子メモリおよびスイッチングデバイスは、現在、結晶シリコンをはじめとする無機材料から製造されている。これらのデバイスは技術的にも商業的にも成功しているが、複雑な構造および高い製造コストをはじめ、多数の不利な点を有する。揮発性半導体メモリデバイスの場合、記憶された情報を維持するために、回路に常に電流を供給しなければならない。その結果、熱が発生し、かつ消費電力が多くなる。不揮発性半導体デバイスではこの問題は回避されるが、回路設計のより高い複雑度の結果としてデータ記憶容量が減少し、したがってその結果製造コストがより高くなる。
【0003】
代替的な電子メモリおよびスイッチングデバイスは、電流または他の種類の入力をデバイスに適用することによって高インピーダンス状態と低インピーダンス状態との間の切換えができる双安定素子を使用する。有機および無機薄膜半導体材料は両方とも、電子メモリおよびスイッチングデバイスにおいて、例えばアモルファスカルコゲナイド半導体有機電荷移動錯体のバインダーレス薄膜(例えば銅−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(Cu−TCNQ)薄膜)において、および有機マトリックス中の特定の無機酸化物において用いることができる。これらの材料は、不揮発性メモリの潜在的な候補として提案されている。
【0004】
幾つかの揮発性および不揮発性メモリ素子は、種々の双安定材料を用いるグリッド交点で使用されている。しかし、多くの現在知られている双安定性膜は、費用がかかりかつ制御するのが難しい蒸着法により製造される不均質な多層複合構造である。加えて、これらの双安定性膜では、コンフォーマルからプレーナに及ぶトポグラフィの膜を製造する機会が得られない。高分子マトリックスおよび粒状物質を用いて製造された双安定性膜は一般的に不均質であり、したがってサブミクロンおよびナノメートル規模の電子メモリおよびスイッチングデバイスの製造には適さない。さらに別の双安定性膜は標準的な工業的方法で制御可能に製造することができるが、それらの作業はグリッド交点における高温溶融およびアニーリングを必要とする。かかる膜は一般的に熱管理上の問題を免れず、所要電力消費量が高く、かつ「導電」状態と「非導電」状態との間にわずかな差しかない。さらに、かかる膜は高温で動作するので、高密度のメモリ保存を可能にする積層デバイス構造を設計することが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当該技術分野では改善された電界プログラマブル膜が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様では、配合物Aおよび配合物Bから選択される配合物を含む電界プログラマブル膜組成物を提供する。ここで配合物Aはバインダー、電子供与体、および電子受容体を含み、電子供与体および電子受容体の少なくとも一方がバインダーに化学結合され、および配合物Bはバインダー、電子供与体、および電子受容体を含み、配合物Bは電子供与体および電子受容体の少なくとも一方を0.05重量%未満含む。
【0007】
本発明の別の態様では、本発明の電界プログラマブル膜組成物を基体に堆積することを含む、電界プログラマブル膜の作製方法を提供する。
【0008】
本発明の別の態様では、本発明の電界プログラマブル膜を含むメモリデバイスを提供する。
【0009】
本発明の別の態様では、本発明のメモリデバイスを含む機械を提供する。
【0010】
本明細書および添付する特許請求の範囲で使用する用語「化学結合」とは、共有結合、イオン結合、および水素結合を包含する。
【0011】
電子供与体または電子受容体に関連して、本明細書および添付する特許請求の範囲で使用する用語「誘導体」とは、言及される電子供与体または電子受容体の化学修飾体または類似体、例えば異性体、化学置換体、および電子供与体または電子受容体がバインダーに化学結合されるかまたは単量体としてバインダーに組み込まれる場合を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
幾つかの実施形態では、バインダーは2〜1000の誘電率を示す。
【0013】
幾つかの実施形態では、バインダーは、金属、エッチングバリア層、シード層、金属前駆体、フォトレジストおよび反射防止コーティングの堆積を含む工程に耐えるのに充分な耐化学性および耐熱性を示す。
【0014】
幾つかの実施形態では、バインダーは、「オフ」状態と「オン」状態との間の差が容易に認識されるように、「オフ」状態では電界プログラマブル膜に低レベルの導電率をもたらし、「オン」状態では充分に高濃度の電子供与体および電子受容体により充分に高い導電率を得ることを可能にする。これらの実施形態の幾つかの態様では、バインダーの導電率は約10−10オーム−1cm−1以下である。これらの実施形態の幾つかの態様では、バインダーは、「オン」状態の電流の、「オフ」状態の電流に対する比率が5以上、あるいは100以上、あるいは500以上を提供する。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーは例えばオリゴマ、ポリマー、イオノマー、デンドリマー、ブロックおよびランダムコポリマーをはじめとするコポリマー、グラフトコポリマー、星形ブロックコポリマー、無機物、部分的無機物、ならびにそれらの組合せを含むことができる。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーは、電子供与体および電子受容体のいずれか一方または両方に化学結合し、あるいは共有結合することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、電子供与体および/または電子受容体はバインダーの少なくとも一つのセグメントに化学結合することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、電子供与体および/または電子受容体はバインダーの少なくとも一つのセグメントに共有結合することができる。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーは、例えばポリアセタール、ポリアクリル酸、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリールエート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリットイミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシインドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリ無水物、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリウレア、ポリホスファゼン、ポリシラザン、ポリシロキサン、およびそれらの組合せを含むポリマーから選択することができる。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーは、例えばコポリエステルカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレンアクリロニトリル、ポリイミド−ポリシロキサン、ポリエステル−ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート−ポリシロキサン、ポリウレタン−ポリシロキサン、およびそれらの組合せから選択されるコポリマーであり得る。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーはポリマーの混合物群から選択することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、ポリマーは架橋性とすることができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、バインダーは少なくとも二つのポリマーを含むことができ、少なくとも二つのポリマーの一つは、電子供与体および/または電子受容体に化学結合あるいは共有結合され、かつ少なくとも二つのポリマーの一つは電子供与体または電子受容体のどちらにも化学結合あるいは共有結合されない。これらの実施形態の幾つかの態様では、バインダーは少なくとも二つのポリマーを含むことができ、少なくとも二つのポリマーの一つは、電子供与体に化学結合あるいは共有結合され、かつ少なくとも二つのポリマーの別の一つは電子受容体に化学結合あるいは共有結合される。ポリマーのかかる混合物は、電界プログラマブル膜の特性を微調整するために使用することができる。例えばポリマー混合物は、所定の電界プログラマブル膜組成物における電荷担体密度のバランスを取るために使用することができる。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーはポリマーの混合物である。これらの実施形態の幾つかの態様では、バインダーは、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン/ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ナイロン、ポリスルホン/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート/熱可塑性ウレタン、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマーアロイ、ナイロン/エラストマー、ポリエステル/エラストマー、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、アセタール/エラストマー、スチレン−無水マレイン酸/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルスルホン、ポリエチレン/ナイロン、ポリエチレン/ポリアセタール、およびそれらの組合せから選択されるポリマーの混合物から選択することができる。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーは無機または部分的無機材料とすることができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、バインダーはシリコーン、シルセスキオキサン、およびそれらの組合せを含むことができる。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーは架橋、電子供与体との化学結合、電子受容体との化学結合、電子供与体との共有結合、および電子受容体との共有結合の少なくとも一つを促進するように官能化される。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーは、500〜1,000,000グラム/モル、あるいは3,000〜500,000グラム/モル、あるいは5,000〜100,000グラム/モル、あるいは10,000〜30,000グラム/モルの数平均分子量を有するポリマーまたは複数のポリマーの組合せである。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態では、バインダーは架橋することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、架橋は、バインダーの主鎖に化学結合されあるいは共有結合された官能基の反応によって引き起こされ得る。これらの実施形態の幾つかの態様では、架橋は非共有結合を通して発生し得る。これらの実施形態の幾つかの態様では、バインダーは、例えばシラン、エチレン性不飽和樹脂、アミノプラスト樹脂、フェノール類、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ、およびそれらの組合せを含む架橋剤を用いて架橋することができる。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態では、電界プログラマブル膜組成物は架橋剤を含む。これらの実施形態の幾つかの態様では、電界プログラマブル膜組成物は、0.01〜20重量%、あるいは0.1〜15重量%、あるいは0.5〜10重量%、あるいは1〜7重量%の架橋剤(全固形分基準)を含む。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態では、電界プログラマブル膜組成物は任意の酸および/または酸発生剤を含むことができる。酸および/または酸発生剤の添加は、電界プログラマブル膜組成物の硬化過程におけるバインダーの架橋を触媒または促進することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、酸は、例えば芳香族スルホン酸(例えばトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸)、フッ素化アルキルまたは芳香族スルホン酸(例えばo−トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸、トリフリック酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸)、およびそれらの組合せから選択することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、酸発生剤は、例えば2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、4−ニトロベンジルトシレート、およびそれらの組合せから選択される熱的酸発生剤であり得る。これらの実施形態の幾つかの態様では、電界プログラマブル膜組成物は0.01〜10重量%、あるいは0.1〜8重量%、あるいは0.5〜5重量%、あるいは1〜3重量%の酸発生剤(全固形分基準)を含むことができる。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態では、電子供与体は、例えばアントラセン、テトラチアフルバレン、4,4’,5−トリメチルテトラチアフルバレン、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、p−フェニレンジアミン、カルバゾール、置換カルバゾール(例えばN−ビニルカルバゾール)、テトラチオテトラセン、ヘキサメチルベンゼン、テトラメチルテトラセレノフルバレン、ヘキサメチレンテトラセレノフルバレン、8−ヒドロキシキノリン、フェニルアゾレコルシノールおよび類似のアゾ染料、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、フェノチアジン、置換フェノチアジン(例えばN−ビニルフェノチアジン)、ピレン、アセナフチレン、アクリジン、トリフェニレン、フタロシアニン、2−アミノ−1H−イミダゾール−4,5−ジカルボニトリル(AIDCN)、置換AIDCN(たとえばN−ビニルAIDCN)、それらの誘導体、およびそれらの組合せから選択することができる。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態では、電子供与体は、バインダーに化学結合された電子供与体誘導体(以下および特許請求の範囲で「電子供与体誘導体−バインダー」によって表現される)であってもよい。これらの実施形態の幾つかの態様では、電子供与体誘導体バインダーは、例えば9−アントラセンメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートターポリマー、キノリン−8−イルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマー、9−アントラセンメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマー、キノリン−8−イルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートターポリマー、9−アントラセンメチルメタクリレート、キノリン−8−イルメタクリレート、およびそれらの組合せから選択することができる。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態では、電子受容体は、例えばペンタフルオロアニリン、フタロシアニン、パーフルオロフタロシアニン、テトラフェニルポルフィン、2−(9−ジシアノメチレン−スピロ[5,5]ウンデカ−3−イリデン)−マロノニトリル、4−フェニルアゾ−ベンゼン−1,3−ジオール、4−(ピリジン−2−イルアゾ)−ベンゼン−1,3−ジオール、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール−4,7−ジカルボニトリル、テトラシアノキノジメタン、キノリン、クロルプロマジン、フラーレンC60(例えばバックミンスターフラーレンC60)、フラーレンC70(例えばバックミンスターフラーレンC70)、ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミド、トリニトロベンゼン、2−(3−ニトロ−ベンジリデン)−マロノニトリル、ヘキサシアノブタジエン、無水物、それらの誘導体および組合せから選択することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、電子受容体はフラーレンC60、フラーレンC70、それらの誘導体、およびそれらの組合せから選択され得る。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態では、電子受容体は、例えば無水物、二無水物、イミド、およびジイミド(例えばフタル、特に環に4つのハロゲンを持つもの、ピロメリット酸二無水物、ナフタレン−テトラカロボン酸二無水物(NTCDA)、ペリレン−テトラカルボン酸二無水物(PTCDA))、ベンゾキノン(例えばテトラハロゲン化されたおよびテトラシアノ誘導体)、ナフトキノン、アントラキニン、シアノ化合物(例えばテトラシアノエチレン(TCNE)、TCNQ、AIDCN)、少なくとも3つのニトロ基を有するニトロ化合物(例えばベンゼン類、ナフタレン類、トリニトロフルオレノン、ニトロ化ジベンゾチオフェンジオキシド、ニトロ化フェニルスルホン)、ポリスルホン(例えば1,4−ビス(フェニルスルホニル)ベンゼン)、ビオロゲン、ビオロゲン塩、1,3,5−トリアジン(例えばそのハロゲンおよびシアノ誘導体)、アルファジケトン(例えバインダーントリオン)、硫黄、誘導体、およびそれらの組合せから選択することができる。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態では、電界プログラマブル膜組成物は1重量%未満、あるいは0.5重量%未満、あるいは0.4重量%以下、あるいは0.3重量%以下、あるいは0.25重量%以下、あるいは0.2重量%以下、あるいは0.1重量%以下、あるいは0.09重量%以下、あるいは0.075重量%以下、あるいは0.05重量%以下の電子供与体(全固形分基準)を含む。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態では、電界プログラマブル膜組成物は1重量%未満、あるいは0.5重量%未満、あるいは0.4重量%以下、あるいは0.3重量%以下、あるいは0.25重量%以下、あるいは0.2重量%以下、あるいは0.1重量%以下、あるいは0.09重量%以下、あるいは0.075重量%以下、あるいは0.05重量%以下の電子受容体(全固形分基準)を含む。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態では、電子供与体または電子受容体のいずれかを相対的に過剰に提供することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、電界プログラマブル膜組成物は、電子受容体の濃度に比較してより高い濃度の電子供与体を含む。これらの実施形態の幾つかの態様では、電界プログラマブル膜組成物は、電子供与体の濃度に比較してより高い濃度の電子受容体を含む。これらの実施形態の幾つかの態様では、電界プログラマブル膜組成物の電子供与体の濃度は10〜250mmol/hg、あるいは50〜200mmol/hg、あるいは120〜200mmol/hg、あるいは50〜150mmol/hgであり、および電界プログラマブル膜組成物中の電子受容体の濃度は1〜300μmol/hg、あるいは10〜200μmol/hg、あるいは10〜150μmol/hg、あるいは25〜125μmol/hg、あるいは25〜100μmol/hg、あるいは25〜75μmol/hgである。これらの実施形態の幾つかの態様では、電界プログラマブル膜組成物中の電子受容体の濃度は10〜250mmol/hg、あるいは50〜200mmol/hg、あるいは120〜200mmol/hg、あるいは50〜150mmol/hgであり、電界プログラマブル膜組成物中の電子供与体の濃度は1〜300μmol/hg、あるいは10〜200μmol/hg、あるいは10〜150μmol/hg、あるいは25〜125μmol/hg、あるいは25〜100μmol/hg、あるいは25〜75μmol/hgである。略語「hg」はヘクトグラム(100グラム)を指す。電子供与体または電子受容体を相対的に過剰に提供するかどうかの選択は、使用される具体的な電子供与体および電子受容体、並びに所望の電流方向に依存する。理論によって束縛することを望まないが、例えばアントラセンが電子供与体であり、かつフラーレンが電子受容体であって、電子供与体が電子受容体に比較して過剰に提供される場合、支配的電荷担体は、正に荷電したアントラセン基から中性のアントラセンへの個々に移動する正孔であると考えられる。逆に、電子受容体がテトラシアノキノジメタン(TCNQ)であり、かつ電子供与体がフェノチアジンであって、受容体が相対的に過剰に提供される場合、支配的電荷担体はフェノチアジンから少数のTCNQ基へ移動する電子であり、それは負に荷電したTCNQ基から中性TCNQ基に個別に移動すると考えられる。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態では、電子受容体は、0.8eVより高い、あるいは1.2eVより高い電子親和力を示す分子または誘導体から選択される。最適な電子受容体の選択は、そのイオン化ポテンシャルによって影響され得る。本発明の幾つかの実施形態では、1より多くの電子受容体を使用することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、1より多くの電子受容体の使用により、閾値電圧を低減することができ、及び/または例えば複数スイッチング電位(すなわち1セル当たり複数ビット)をはじめとする好ましい特性を促進することができる。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態では、電子供与体は、8.5eV未満、あるいは8.0eV未満のイオン化ポテンシャルを示す分子または誘導体から選択される。最適な電子供与体の選択は、そのイオン化ポテンシャルによって影響され得る。本発明の幾つかの実施形態では、1より多く電子供与体を使用することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、1より多く電子供与体の使用により、閾値電圧を低減し、及び/または例えば複数スイッチング電位(すなわち1セル当たり複数ビット)をはじめとする好ましい特性を促進することができる。
【0036】
いくつかの分子または誘導体は、電界プログラマブル膜組成物の他の成分(例えばフタロシアニン)の選択に応じて、分子または誘導体が電子供与体または電子受容体のいずれかとして機能し得るような電子親和力およびイオン化ポテンシャルを持つことに留意されたい。理論によって束縛することを望まないが、二つの分子または誘導体の比較において、最も低いイオン化ポテンシャルを持つ分子または誘導体は通常電子供与体であると考えられ、一方、最も高い電子親和力を持つものは電子受容体であると考えらる。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態では、電界プログラマブル膜組成物はさらに、膜の特性、例えば膜の「オン」および「オフ」閾値電圧、「オン」状態電流および/または「オフ」状態電流を調整するために働くことのできる任意の供与体−受容体複合体をさらに含むことができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、電界プログラマブル膜組成物は0.05〜5重量%、あるいは0.5〜4重量%、あるいは1〜3.5重量%、あるいは1.5〜3重量%の任意の供与体−受容体複合体を含むことができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、電界プログラマブル膜組成物は、例えばテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン、ヘキサメチレンテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン、テトラセレナフルバレン−テトラシアノキノジメタン、ヘキサメチレンテトラセレナフルバレン−テトラシアノキノジメタン、メチルカルバゾール−テトラシアノキノジメタン、テトラメチルテトラセレノフルバレン−テトラシアノキノジメタン、フェロセン−テトラシアノキノジメタン、(テトラチオテトラセン、テトラメチル−p−フェニレンジアミン、またはヘキサメチルベンゼン)−テトラシアノキノジメタン、(テトラチアフルバレン、ヘキサメチレンテトラチアフルバレン、テトラセレナフルバレン、ヘキサメチレンテトラセレナフルバレン、またはテトラメチルテトラセレノフルバレン)−N−アルキルカルバゾール(C−C10、直鎖又は分枝)、(テトラチオテトラセン、テトラメチル−p−フェニレンジアミン、またはヘキサメチルベンゼン)−バックミンスターフラーレンC60、(テトラチオテトラセン、テトラメチル−p−フェニレンジアミン、またはヘキサメチルベンゼン)−バックミンスターフラーレンC70、(テトラチオテトラセン、テトラメチル−p−フェニレンジアミン、またはヘキサメチルベンゼン)−テトラシアノベンゼン、(テトラチオテトラセン、テトラメチル−p−フェニレンジアミン、またはヘキサメチルベンゼン)−テトラシアノエチレン、(テトラチオテトラセン、テトラメチル−p−フェニレンジアミン、またはヘキサメチルベンゼン)−p−クロラニル、およびそれらの組合せから選択される任意の供与体−受容体複合体を含むことができる。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態では、電子供与体および電子受容体は供与体−受容体複合体として提供することができ、あるいはバインダーに添加されたときにその場で供与体−受容体複合体を形成することができる。電子供与体および電子受容体がその場で供与体−受容体複合体を形成する程度は、質量作用の法則に依存する。あるいは、本発明の幾つかの実施形態では、供与体−受容体複合体はバインダーに添加されたときにその場で不均衡化し、その結果非イオン化された電子供与体および電子受容体が生じる。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態では、電界プログラマブル膜組成物は任意選択的に、例えば界面活性剤、離型剤、促進剤、酸化防止剤、熱安定剤、オゾン劣化防止剤、充填剤、および繊維をはじめとする処理剤を含有することができる。
【0040】
電界プログラマブル膜は、多種多様な通常の様々な方法によって製造することができる。例えば、膜の製造方法の一つでは、本発明の電界プログラマブル膜組成物を基体上に堆積することができる。堆積された膜組成物を次いで乾燥および/または硬化させて、電界プログラマブル膜を形成することができる。あるいは、電界プログラマブル膜組成物は任意の溶媒の存在下でキャストすることができる。その場合電界プログラマブル膜を溶液からキャストし、溶媒を蒸発させることができる。膜をキャストするための幾つかの方法として、例えばスピンコーティング、スプレイコーティング、静電コーティング、浸漬コーティング、ブレードコーティング、およびスロットコーティングが挙げられる。あるいは、電界プログラマブル膜は、例えば射出成形、真空成形、ブロー成形、および圧縮成形をはじめとする工程によって製造することができる。
【0041】
本発明に使用するのに好適な基体として、例えば半導体基体(例:ドープシリコンウェハ)、および導電性基体(例:アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、スズ、ゲルマニウム、鉛、およびそれらの合金)が挙げられる。本発明の幾つかの実施形態では、基体はパターン形成され得る。
【0042】
本発明の幾つかの実施形態では、電界プログラマブル膜は、それが組み込まれるデバイスの要件に応じて、5〜5000ナノメートル(nm)の厚さを持つことができる。一般的に、スイッチング電圧は膜の厚さの線形関数である。これらの実施形態の幾つかの態様では、約10V未満のスイッチング電圧の大きさを要求するデバイスに組み込まれる場合、電界プログラマブル膜は約10〜100nmの膜厚さ(任意の硬化後)を示す。これらの実施形態の幾つかの態様では、約5V未満のスイッチング電圧の大きさを要求するデバイスに組み込まれる場合、電界プログラマブル膜は5〜50nmの膜厚さ(任意の硬化後)を示す。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態では、電界プログラマブル膜はクロスポイントアレイにおいて使用することができる。膜をクロスポイントアレイにおいて使用する場合、電極を電界プログラマブル膜に電気的に結合することができる。クロスポイントアレイは電気結合要素を含むことが好都合であり得る。電気結合要素は、オーム接触、導電プラグを介した接触、容量接触、介在するトンネル接合を介した接触、ダイオードもしくはトランジスタをはじめとする介在する分離デバイスまたは他の電気デバイスを介した接触を提供することができる。
【0044】
電界プログラマブル膜組成物から得られた電界プログラマブル膜は、電子メモリおよびスイッチングデバイス、またはデータ記憶デバイスにおいて使用することができる。これらのデバイスは単一の膜または複数の膜のいずれも含むことができる。複数の膜を有するデバイスは一般的に積層デバイスと呼ばれる。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態では、電界プログラマブル膜を大量のデータ記憶のための媒体として用いることができる。この実施形態の幾つかの態様では、電界プログラマブル膜は5〜500nm、あるいは10〜200nm、あるいは10〜100nmの厚さを持つことができる。この実施形態の幾つかの態様では、膜は伝導性基体または半導体基体上に堆積することができる。
【0046】
メモリまたはデータ記憶モードでは、メモリセルのプログラミング、読出し、および消去は、閾値電圧より高い電圧をセルに適用してそれを「オン」状態にし、閾値下の電圧をセルに適用してセルを読み出してそれが「オン」であるか「オフ」であるかを決定し、および充分な負の電圧をセルに適用してセルを「オフ」にすることによって達成することができる。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態では、データ記憶は、セルを所望通りに読み出し、書き込み、かつ消去するのに適切なレベルの電圧パルスシーケンスを適用することによって達成することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、適用される電圧は、書込みには約0.5ボルト(V)〜12V、読出しには0.2V〜10V、セルを消去するには−0.5V〜−12Vとすることができる。あるいは、適用される電圧は、書込みには約0.5V〜5V、読出しには0.2V〜4V、消去には−0.5〜−5Vとすることができる。読出しのために適用される電圧は、「読出し支障」つまりセルの意図しない書込みを回避するために、書込み電圧未満としなければならないことを、当業者は直ちに理解する。パルス幅は0.5〜10,000ナノ秒、あるいは2〜100ナノ秒、あるいは1〜50ナノ秒であり得る。
【0048】
本発明の幾つかの実施形態では、データ記憶は、充分な振幅の一連の電圧パルス、交流電流(AC)、直流電流(DC)、またはDCバイアスAC電気信号を適用して、本発明の電界プログラマブル膜を導電状態つまりオン状態にすることによって達成することができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、電気信号は、走査型プローブ顕微鏡で使用されるような伝導性チップを用いて、−10V〜10Vとすることができる。これらの実施形態の幾つかの態様では、AC信号は0.5kHz〜100MHz、あるいは10kHz〜1MHzであり得る。電界は接触モードまたは非接触モードのチップによって適用することができ、その結果、電界プログラマブル膜内に約0.5nm〜約500nmの直径、あるいは0.5〜約50nmの直径を有する伝導性ドメインが生じる。該ドメインは、電流、インピーダンス、電圧降下、キャパシタンス、タッピング位相シフト、または上記のいずれかの組合せを監視しながら、接触または非接触モードのいずれかで約−10V〜約10VのAC、DC、またはDCバイアスAC信号を用いて走査型力顕微鏡チップによって読み出すことができる。加えて、電界プログラマブル膜は、光学的手段または光学的手段と上記電気信号のうちの一つ以上との組合せによって、書き込み、消去し、または読み出すことができる。伝導性ドメインのサイズは、所望の用途に対して最適化することができる。例えば、走査型プローブ顕微鏡チップで読出し可能なドメインは約1nm〜約100nmとすることができる一方、CDプレーヤーなどに見られるようなレーザープローブで読み出し可能なドメインは、約100nm〜約500nmの直径を有することができる。このような仕方で電界プログラマブル膜は、電極の少なくとも一つが電界プログラマブル膜の表面に対して固定位置に保持されない構造において、プログラムすることができる。このような仕方で情報を記憶するための装置の一例は、国際特許出願公開第WO02/077986号に記載されている。
【実施例】
【0049】
ここで、本発明の幾つかの実施形態を以下の実施例で詳述する。
【0050】
実施例1
9アントラセンメチルメタクリレートの調製
2リットルの三つ口丸底フラスコに、凝縮器、滴下添加漏斗、機械的撹拌器、およびガス導入管を装備した。次いでフラスコに9−アントラセンメタノール(48.9g、0.235mol)を注入し、10分間窒素でパージした。次いで撹拌しながらフラスコに無水テトラヒドロフラン(300mL)、ピリジン(33mL)、およびトリエチルアミン(50mL)を添加した。得られた溶液を撹拌しながら0℃に冷却した。シリンジを用いて塩化メタクリロイル(工業グレード、37.5mL、40.1g、0.345mol)を添加漏斗に添加し、添加漏斗から激しく撹拌しているフラスコ内に1時間かけてゆっくりと一滴ずつ添加した。茶色がかった沈殿が形成され、凝集して粘着性の塊になり、それは定期的に撹拌を妨げた。反応を0℃の温度で2時間持続させ、次いで一晩かけて徐々に室温まで暖めた。次いで水(400mL)により反応を停止させた。エチルエーテル(300mL)をフラスコに添加し、2リットルの分液漏斗で相を分離させた。有機相を20%の塩酸(HCl)水溶液(400mL)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)飽和水溶液(800mL)、および塩化ナトリウム(NaCl)飽和水溶液(400mL)で順次洗浄した。次いで有機相を硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥させ、濾過し、真空下で溶媒を除去した。得られた粗製生成物は、メタノール(MeOH)(400mL)を用いて二回に分けて再結晶させた。
【0051】
実施例2
キノリン−8−イルメタクリレートの調製
キノリン−8−イルメタクリレートは、9−アントラセンメタノールの代わりに8−ヒドロキシキノリン(34.1g、0.235mol)を使用する以外は、実施例1に記載したのと同一工程を用いて調製した。
【0052】
実施例3
9−アントラセンメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマーの調製
500mLの三つ口丸底フラスコに凝縮器およびガス導入管を装着し、15分間、窒素でパージした。次いで撹拌しながらフラスコに、脱気したテトラヒドロフラン(THF)(120mL)、9−アントラセンメチルメタクリレート(ANTMA)(10.0g、36.2mmol)、および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(9.3mL、10.0g、76.8mmol)を注入した。次いで撹拌しながらこの混合物に1,1’−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO88としてDu Pontから商業的に入手可能である)(0.57g、2.33mmol、2.85重量%)を添加した。次いでフラスコ内容物を加熱して還流させた。24時間の還流後、追加分の1,1’−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)(0.89g、3.64mmol、4.45重量%)を添加した。次いでフラスコの内容物をさらに24時間還流させた。次いでフラスコの内容物を室温まで冷却させた。次いでフラスコの内容物を、エチルエーテルに20容量パーセントのヘキサンを含有するヘキサン/エチルエーテル溶液500mLに注いで、ポリマーを沈殿させた。固体ポリマーを吸引濾過によって回収し、真空下で乾燥させて、19.5g(98%)を綿毛状白色固体として収量した。
【0053】
実施例4
キノリン−8−イルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマーの調製
キノリン−8−イルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマーは、9−アントラセンメチルメタクリレートの代わりにキノリン−8−イルメタクリレート(7.71g、36.2mmol)を使用する以外は、実施例3に記載したのと同じ工程を用いて調製した。
【0054】
実施例5
9−アントラセンメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートターポリマーの調製
500mLの丸底枝付きフラスコ(「反応体レザーバ」)にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)(117.5g)、9−アントラセンメチルメタクリレート(46.0g、166mmol)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(6.82g、52.4mmol)、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(22.2グラム、89.4mmol)、およびt−アミルペルオキシピバレート(7.5g、39.8mmol)を注入した。反応体レザーバにゴム製セプタムキャップを嵌めた。電子制御ポンプに接続した排出管を、セプタムキャップを通して挿入した。底に弁を持つ1リットルの三つ口フラスコ(「反応容器」)に加熱マントル、可変単巻変圧器、フリードリッヒ凝縮器、機械的撹拌器、クライゼンヘッド、サーマルプローブ(出力制御装置に接続された熱電対)、および窒素導入口を装備した。反応容器にPGMEA(275g)を注入した。反応容器の温度を85℃に上昇させて、平衡させた。約120分の全反応体供給時間が達成されるようにPGMEAで流量を予め較正された電子制御ポンプ(SciLog製)を用いて、反応体リザーバの内容物を約1.69mL/分の反応体供給速度で反応容器に供給した。反応体の供給完了後に、反応容器の内容物を撹拌しながら85℃の温度に30分間維持した。次いで、反応容器の内容物を撹拌しつつ85℃に維持しながら、脱気したt−アミルペルオキシピバレート(7.5g、27.5mmol)およびPGMEA(25g)を約1.14mL/分の速度で反応容器に供給した。脱気したt−アミルペルオキシピバレートおよびPGMEAの添加の完了後、反応容器の内容物を撹拌しながらさらに1時間85℃に維持した。反応容器の内容物を次いで室温まで冷却し、適切な容器に移した。
【0055】
実施例6
キノリン−8−イルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートターポリマーの調製
キノリン−8−イルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートターポリマーは、9−アントラセンメチルメタクリレートの代わりにキノリン−8−イルメタクリレート(35.4g、166mmol)を使用すること、および全添加時間が120分になるように反応体供給速度が約1.60mL/分であったこと以外は、実施例5に記載したのと同じ工程を用いて調製した。
【0056】
実施例7
9−アントラセンメチルメタクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートターポリマーの調製
残留真空を使用して、THF(249kg)を100ガロン(約380L)の反応装置に注入した。9−アントラセンメチルメタクリレート(ANTMA)(21.05kg)を反応装置に添加し、溶解するまでTHFと混合した。事前に秤量した量のメチルメタクリレート(MMA)(16.00kg)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(12.5kg)、およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、「VAZO64」の取引称号で商業的に入手可能)(200g)を反応装置に添加した。反応混合物を真空下で撹拌し、溶存酸素を除去するために窒素で三回パージした。最終窒素パージ後に、反応装置の内容物を66℃に加熱した。反応装置の内容物を30時間66℃および大気圧に維持した。反応装置の内容物を室温まで冷却し、数回に分けて噴霧ノズルを通して、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)を含有する沈殿容器に移し、スラリーを形成した。スラリーは、10μmのポリプロフィルタバッグが装着された48インチ(約122cm)のハステロイブフナー(HastelloyBuchner)漏斗を用いて濾過した。ウェットケーキを追加MTBEで洗浄した。ブフナ漏斗のケーキ状濾過物にダムを配置し、ケーキ状濾過物上に空気を通過させてMTBEを除去し、ケーキを乾燥させた。ケーキを分割して真空中で乾燥させ、ターポリマー生成物を得た。
【0057】
実施例8
キノリン−8−イルメタクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートターポリマーの予言的調製
キノリン−8−イルメタクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートターポリマーは、9−アントラセンメチルメタクリレートの代わりにモル当量のキノリン−8−イルメタクリレート(16.23kg)を使用する以外は、実施例5に記載した工程を使用して調製される。
【0058】
実施例9
N−ビニルフェノチアジン(NVP)/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートターポリマーの予言的調製
N−ビニルフェノチアジン(NVP)/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートターポリマーは、9−アントラセンメチルメタクリレートの代わりにモル当量のN−ビニルフェノチアジン(17.16kg)を使用する以外は、実施例7に記載した工程を使用して調製される。N−ビニルフェノチアジンは、Reppeらのドイツ特許DE946,542(1956年)に記載された方法で合成することができる。
【0059】
実施例10
予言的調合
配合物は、容器内で撹拌しながら以下の成分を組み合わせることによって調製される。活性ポリマー:実施例3から得た9−アントラセンメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマー(10g);
電子受容体:C60、バックミンスターフラーレン(2.16mg、30μmol/hg固形分);および
溶媒:メトキシベンゼンおよび2−ヘプタノンの50/50w/w混合物(240g)。
容器の内容物は、成分を溶解するために実験室ローラで一晩撹拌される。次いで容器の内容物は超音波浴で10分間超音波処理され、生成配合物を回収するために0.2マイクロメートル膜フィルターを通して濾過される。
【0060】
実施例11
予言的試験メモリセル
試験メモリセルは、100ミリメートル(mm)の直径および約0.0001〜約0.1オームcmの抵抗を有するp型シリコンウェハ上に、約2500rpmを典型的なスピン速度として約500〜約4000rpmのスピン速度で、実施例10の配合物をスピンコーティングすることによって、製造することができる。コーティングされたシリコンウェハは次いで250℃のホットプレート上で60秒間ベークすることができ、約20〜約100nmの厚さを有する膜が得られる。平均膜厚さは約50nmとすべきである。次いで、直径約0.5mmおよび厚さ約45nmのアルミニウムドットを、約10−6〜5×10−5トール(1.33×10−3〜6.65×10−2パスカル)の圧力でシャドーマスクを通して膜の上面上に熱で蒸着させることができる。電流−電圧特性は、接地端子として構成されたシリコンウェハおよび作業電極として構成されたアルミニウム電極を備えたKeithley2400ソースメータを使用して測定することができる。全測定は、電圧範囲を調整しながら0.0V〜約10.0V、10.0V〜0.0V、および0.0V〜−10.0V、および−10.0V〜0.0Vを掃引するようにプログラムされたVisual Basic(Microsoft Corporation)で書かれたソフトウェアの制御下で行うことができる。電圧範囲は、正および負電圧掃引中にセルのオーバドライブを回避するように調整することができる。オフ状態での電流は、一般に、約10マイクロアンペア(μA)以下とすることができる一方、一般に、オン状態での典型的な電流は、約100μA以上とすることができる。
【0061】
実施例12
メモリ組成物の予言的調製
メモリ組成物は、以下の成分を一緒に溶解することによって調製される。
活性ポリマー:実施例3のポリマー(1.0g);
電子受容体:Aldrich Chemical Co.製のC60バックミンスターフラーレン(0.144mg、20μmol/hg);および
溶媒:メトキシベンゼンおよび2−ヘプタノンの50/50w/w混合物(24g)。
溶解後、0.2μmの細孔を持つポリプロピレンフィルタを通して溶液を濾過する。メモリ組成物は実施例11に記載した手順を用いて調製し、試験することができる。
【0062】
実施例13
架橋性メモリ組成物の予言的調製
架橋性メモリ組成物は、以下の成分を一緒に溶解することによって調製される。
活性ポリマー:実施例3のポリマー(0.884g);
架橋剤:Cytec Industries製のPowderlink1174グリコールウリル架橋剤(0.111g);
触媒:Aldrich Chemical Co.製のp−トルエンスルホン酸一水和物(PTSA)(0.005g);
電子受容体:Aldrich Chemical Co.製のC60バックミンスターフラーレン(0.144mg、20μmol/hg);および
溶媒:メトキシベンゼンおよび2−ヘプタノンの50/50重量w/w混合物(24g)。
溶解後、0.2μmの細孔サイズのポリプロピレンフィルタを通して溶液を濾過する。メモリ組成物は実施例11に記載した手順を用いて調製し、試験することができる。
【0063】
実施例14
メモリ組成物の予言的調製
メモリ組成物は、以下の成分を一緒に溶解することによって調製される。
活性ポリマー:実施例3のポリマー(0.25g);
希釈剤:日本国755−0067山口県宇部市明和化成株式会社から入手可能な、30%m−クレゾールおよび70%p−クレゾールの組成を有するノボラック樹脂(0.75g);
電子受容体:Aldrich Chemical Co.製のC60バックミンスターフラーレン(0.144mg、20μmol/hg);および
溶媒:メトキシベンゼンおよび2−ヘプタノンの50/50w/w混合物(24g)。
溶解後、0.2μmの細孔サイズのポリプロピレンフィルタを通して溶液を濾過する。メモリ組成物は実施例11に記載した手順を用いて調製し、試験することができる。
【0064】
実施例15
架橋性メモリ組成物の予言的調製
架橋性メモリ組成物は、以下の成分を一緒に溶解することによって調製される。
活性ポリマー:実施例3のポリマー(0.221g);
希釈剤:日本国755−0067山口県宇部市明和化成株式会社から入手可能な、30%m−クレゾールおよび70%p−クレゾールの組成を有するノボラック樹脂(0.663g);
架橋剤:Cytec Industries製のPowderlink1174グリコールウリル架橋剤(0.111g);
触媒:Aldrich Chemical Co.製のp−トルエンスルホン酸一水和物(0.005g);
電子受容体:Aldrich Chemical Co.製のC60バックミンスターフラーレン(0.144mg、20μmol/hg);および
溶媒:メトキシベンゼンおよび2−ヘプタノンの50/50w/w混合物(24g)。溶解後、0.2μmの細孔サイズのポリプロピレンフィルタを通して溶液を濾過する。メモリ組成物は実施例11に記載した手順を用いて調製し、試験することができる。
【0065】
実施例16〜73
メモリ組成物の調製
予言的実施例16〜23、26〜45、48〜50、52〜70、および72は、メモリ組成物を得るために一緒に添加される材料が下の表2に示される材料および量に置き換えられることを除き、表2に示す実施例に記載された手順を使用して調製される。実施例24〜25、46〜47、51、71、および73のメモリ組成物は、メモリ組成物を得るために一緒に添加される材料が下の表2に示される材料および量に置き換えることを除き、表2に示す実施例に記載された手順を使用して調製された。電子受容体のローディングは全固形分のマイクロモル/hg単位で表される。
【0066】
表2に列挙する原材料の手掛かりを、列挙する材料の表2における識別子、化学名、および市販供給源と共に、下の表1に提示する。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合物Aおよび配合物Bから選択される配合物を含む電界プログラマブル膜組成物であって、
配合物Aは、バインダー、電子供与体、および電子受容体を含み、前記電子供与体および前記電子受容体の少なくとも一方が前記バインダーに化学結合され、および
配合物Bは、バインダー、電子供与体、および電子受容体を含み、配合物Bは前記電子供与体および前記電子受容体の少なくとも一方を0.05重量%未満含む、
電界プログラマブル膜組成物。
【請求項2】
少なくともいくつかの前記電子供与体および少なくともいくつかの前記電子受容体が、供与体−受容体複合体を形成する、請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物。
【請求項3】
前記電界プログラマブル膜が供与体−受容体複合体をさらに含む、請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物。
【請求項4】
電子供与体が前記バインダーに化学結合された電子供与体誘導体(「電子供与体誘導体−バインダー」)であり、前記電子供与体誘導体−バインダーが、9−アントラセンメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートターポリマー、キノリン−8−イルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマー、9−アントラセンメチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマー、キノリン−8−イルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートターポリマー、9−アントラセンメチルメタクリレート、キノリン−8−イルメタクリレート、およびそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物。
【請求項5】
前記電子供与体が、アントラセン、テトラチアフルバレン、4,4’,5−トリメチルテトラチアフルバレン、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、p−フェニレンジアミン、カルバゾール、置換カルバゾール、テトラチオテトラセン、ヘキサメチルベンゼン、テトラメチルテトラセレノフルバレン、ヘキサメチレンテトラセレノフルバレン、8−ヒドロキシキノリン、フェニルアゾレコルシノール、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、フェノチアジン、置換フェノチアジン、ピレン、アセナフチレン、アクリジン、トリフェニレン、フタロシアニン、2−アミノ−1H−イミダゾール−4,5−ジカルボニトリル(AIDCN)、置換AIDCN、それらの誘導体、およびそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物。
【請求項6】
前記電子受容体が、ペンタフルオロアニリン、フタロシアニン、パーフルオロフタロシアニン、テトラフェニルポルフィン、2−(9−ジシアノメチレン−スピロ[5.5]ウンデカ−3−イリデン)−マロノニトリル、4−フェニルアゾ−ベンゼン−1,3−ジオール、4−(ピリジン−2−イルアゾ)−ベンゼン−1,3−ジオール、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール−4,7−ジカルボニトリル、テトラシアノキノジメタン、キノリン、クロルプロマジン、フラーレンC60(例えばバックミンスターフラーレンC60)、フラーレンC70(例えばバックミンスターフラーレンC70)、ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミド、トリニトロベンゼン、2−(3−ニトロ−ベンジリデン)−マロノニトリル、ヘキサシアノブタジエン、無水物、それらの誘導体および組合せから選択される、請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物。
【請求項7】
前記電子受容体が、フラーレンC60、フラーレンC70、それらの誘導体、およびそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物。
【請求項8】
前記電界プログラマブル膜組成物中の前記電子供与体の濃度が、前記電界プログラマブル膜組成物中の全固形分の10〜250mmol/hgであり、および前記電界プログラマブル膜組成物中の前記電子受容体の濃度が、前記電界プログラマブル膜組成物中の全固形分の10〜300μmol/hgである、請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物。
【請求項9】
前記電界プログラマブル膜組成物中の前記電子受容体の濃度が、前記電界プログラマブル膜組成物中の全固形分の10〜250mmol/hgであり、および前記電界プログラマブル膜組成物中の前記電子受容体の濃度が、前記電界プログラマブル膜組成物の全固形分の10〜300μmol/hgである、請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物。
【請求項10】
前記バインダーが架橋される、請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の電界プログラマブル膜組成物を基体上に堆積することを含む、電界プログラマブル膜を調製するための方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電界プログラマブル膜を含むメモリデバイス。
【請求項13】
請求項12に記載のメモリデバイスを含む機械。

【公開番号】特開2007−19517(P2007−19517A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−188512(P2006−188512)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】