説明

電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出装置及びその検出方法

【課題】 従来、サンプル中における電荷分布の変化自体を直接的に観察することはできなかった。
【解決手段】 電極間における電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出装置100であって、ペンタセンFET50に基本波を照射する照射部1と、ペンタセンFET50における電圧印加時の電界分布又はキャリア分布に応じて生成された前記高次高調波を検出する検出部15と、第1信号に基づき前記照射部よりペンタセンFET50に前記基本波を照射させ、第2信号に基づきペンタセンFET50に電圧を印加する制御信号出力部30と、を備え、制御信号出力部30は、前記第1信号の出力時点と前記第2信号の出力時点との間の時間間隔を変更可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出装置及びその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子工学の分野においては、物体中でのキャリアの動的特性を明らかにすることが非常に重要である。昨今から、キャリアの動的特性を評価する各種の手法(例えば、後述するTOF法)が開発されている。
【0003】
また、近年においては、有機FET(Field Effect Transistor))等に代表されるような有機材料を活用した電子デバイス(有機電子デバイス)が特に注目を集めている。有機電子デバイスは可撓性を有するなど通常の電子デバイスとは異なる特性を有するからである。このような有機電子デバイスにおいても、キャリアの動的特性を評価することはデバイス等の開発を進めるうえで非常に重要である。なお、キャリアの動的特性とは、キャリアの注入(Injection)、キャリアの蓄積(Accumulation)、キャリアの輸送(Transport)といった諸特性を示す。
【0004】
ここで、キャリアの動的な特性(特に、キャリアの移動度)を評価する手法の1つであるTOF(Time Of Flight)法について説明する。
【0005】
図12に、TOF法を説明するための説明図を示す。図12に示すように、TOF法では、電源E1を用いて、一対の電極200、201に挟持されたサンプル203に電圧を印加する。サンプルに電圧が印加された時点にあわせて、電極200側からレーザ光をサンプル203に照射する。レーザ光が照射されることによって、サンプル203の電極200近傍には電子が生成される。生成された電子は、電界に従って、電極201に向かって進む。そして、電極201に接続された電流計202によって、電極201−グランド間の電流量が測定される。なお、電極200は、レーザ光に対して透明な電極である。このような構成を前提として、TOF法では、まず、測定した電流波形から電極間のキャリアの移動時間を求め、求めたキャリアの移動時間と設定済みの電極間距離に基づいてキャリアの移動度を求める。なお、TOF法に用いられる装置は、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2006−135125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TOF法では測定した電流量に基づいてキャリアの動的特性を求めている。しかしながら、TOF法では、電極201とグランド間に流れる電流を測定しているにすぎず、サンプル203中における電荷分布自体を観察することはできない。TOF法で測定された電流波形に基づいて数学的な手法によりサンプル203中での電荷分布の変化を推定することも可能であるが、あくまで推定することに留まり、サンプル203中における電荷の分布の変化自体を直接的に観察することはできない。
【0007】
またTOF法の原理は、電極200と201の間にパルス電圧やステップ電圧などを加えることによって観測される電流波形からサンプル203中を移動する電荷(正孔、電子)の様子を推定する場合にも用いることができる。しかし、正の電荷分布が電極200から201へ移動する場合の波形は、同じ速度と分布で負の電荷が電極201から200へ移動するとした場合に得られる波形と全く同じであることから、サンプル203中を正の電荷が移動するのか負の電荷が移動するのか決定することができない。これはTOF法では、電荷分布の変化自体を直接的に観測できないためである。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出装置及びその検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる検出装置は、観察対象物に設けられた電極間における電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出装置であって、前記観察対象物に基本波を照射する照射部と、前記観察対象物における電圧印加時の電界分布又はキャリア分布に応じて生成された前記高次高調波を検出する検出部と、第1信号に基づき前記照射部より前記観察対象物に前記基本波を照射させ、第2信号に基づき前記観察対象物に電圧を印加する制御信号出力部と、を備え、前記制御信号出力部は、前記第1信号の出力時点と前記第2信号の出力時点との間の時間間隔を変更可能に構成される。
【0010】
前記検出部は、前記第2信号の出力時点と前記第1信号の出力時点との間の時間間隔が異なる複数の条件で生成される高次高調波を検出する、と良い。
【0011】
前記制御信号出力部は、前記第2信号の出力後に、前記第1信号を出力する、と良い。
【0012】
前記観察対象物は、電極間に有機材料が配置された電子デバイスである、と良い。
【0013】
前記有機材料は、テトラセン、フタロシアニン、ポリジアセチレン、ペンタセン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポルフィリン、フラーレン、ルブレン、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリスチレンスルフォン酸、フルオレン、トリフェニルアミン、ジアミン、アルミキノリノール錯体(Alq3)、ナフチルフェニレンジアミンのうち少なくともいずれか1つである、と良い。
【0014】
前記制御信号出力部は、共通のパルス発振器から出力されたパルス信号に基づいて前記第1信号及び前記第2信号を生成する、と良い。
【0015】
前記高次高調波を通過させ、前記基本波を遮断するフィルタが、前記観察対象物と前記検出部との間に配置されている、と良い。
【0016】
前記基本波を前記観察対象物上に集光させる対物レンズと、前記対物レンズに対する前記観察対象物の相対的な位置を変更するステージと、をさらに備え、前記対物レンズに対する前記観察対象物の相対的な位置は、時間間隔が異なる複数の条件で生成される高次高調波が前記検出部で検出された後、前記ステージによって変更される、と良い。
【0017】
前記基本波は、所定幅のパルス光である、と良い。
【0018】
本発明にかかる検出装置は、観察対象物に設けられた電極間における電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出装置であって、前記観察対象物に照射される基本波を出射する光源と、前記観察対象物における電圧印加時の電界分布又はキャリア分布に応じて生成された前記高次高調波を検出する検出部と、前記観察対象物への前記基本波の進行を制御するスイッチ部と、第1信号に基づき前記スイッチ部に前記基本波を進行させ、第2信号に基づき前記観察対象物に電圧を印加する制御信号出力部と、を備え、前記制御信号出力部は、前記第1信号の出力時点と前記第2信号の出力時点との間の時間間隔を変更可能に構成される。
【0019】
前記スイッチ部は、前記第1信号の入力に基づいて前記基本波に対して実質的に透明となる電気光学素子である、と良い。
【0020】
前記光源は、レーザ発振器であって、前記スイッチ部は、前記レーザ発振器の共振器内に配置される、と良い。
【0021】
前記高次高調波を通過させ、前記基本波を遮断するフィルタが、前記観察対象物と前記検出部との間に配置されている、と良い。
【0022】
前記基本波を前記観察対象物上に集光させる対物レンズと、前記対物レンズに対する前記観察対象物の相対的な位置を変更するステージと、をさらに備え、前記対物レンズに対する前記観察対象物の相対的な位置は、時間間隔が異なる複数の条件で生成される高次高調波が前記検出部で検出された後、前記ステージによって変更される、と良い。
【0023】
前記基本波は、所定幅のパルス光である、と良い。
【0024】
本発明にかかる検出方法は、観察対象物に設けられた電極間における電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出方法であって、前記観察対象物に基本波を照射し、前記観察対象物に電圧を印加し、前記観察対象物への前記基本波の照射時点と前記観察対象物への電圧の印加時点との間の時間間隔が異なる複数の条件で生成される高次高調波を検出する。
【0025】
本発明にかかる検出方法は、観察対象物における電界分布又はキャリア分布の変化を検出する検出方法であって、前記観察対象物に電圧を印加し、前記観察対象物の第1領域に基本波を照射し、前記基本波の照射により前記観察対象物で生成される高次高調波を検出する第1ステップを、前記観察対象物に電圧が印加される第1時点と前記基本波が前記観察対象物に照射される第2時点との間の時間間隔が異なる複数の条件で実行し、前記観察対象物に電圧を印加し、前記観察対象物の前記第1領域とは異なる第2領域に前記基本波を照射し、前記基本波の照射により前記観察対象物で生成される高次高調波を検出する第2ステップを、前記観察対象物に電圧が印加される第1時点と前記基本波が前記観察対象物に照射される第2時点との間の時間間隔が異なる複数の条件で実行する。
【0026】
前記基本波は所定幅のパルス光であって、前記第1時点は前記第2時点よりも前の時点である、と良い。
【発明の効果】
【0027】
電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出装置及びその検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。尚、図面は簡略的なものであって、示された構成要素の正確な大きさ等を示すものではない。また、図面に基づいて、本発明の技術的範囲を狭めるように解釈してはならない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視して用いることを前提とする。
【0029】
〔第1の実施の形態〕
以下、図1乃至図11を用いて、第1の実施の形態について説明する。図1は、電界分布又はキャリア分布の観察に用いられる2次高調波(高次高調波)の検出装置(以下、単にSHG(Second-Harmonics Generation)強度分布取得装置100と呼ぶ)の概略的な構成図である。図2は、制御信号出力部30の構成について説明するための模式図である。図3は、制御信号出力部30による制御を説明するための概略的なタイミングチャートである。図4は、電界分布又はキャリア分布の観察方法を説明するための概略的なフローチャートである。図5は、ペンタセンFET50の付近を拡大した概略的な模式図である。図6は、ペンタセンFET50のソース−ドレイン間に電圧が印加される時点に対してペンタセン層8にレーザ光が照射される時点を変更することの概略的な説明図である。図7は、2次高調波の発生メカニズムの説明図である。図8及び図9は、SHG強度分布取得装置100を用いた測定結果を示す説明図である。図10は、ペンタセンFET50がオン状態となったときのシミュレーション結果を示す説明図である。図11は、ペンタセンFET50のバリエーションを示す模式図である。
【0030】
図1に示すように、SHG強度分布取得装置100は、レーザ発振器(光源)1、波長変換器2、ミラーRM、減衰フィルタ3、偏光板4、ハイパスフィルタ5、ハーフミラーHM1、対物レンズOLを有する。また、SHG強度分布取得装置100は、ペンタセンFET(観察対象物)50が載置されるステージ11を有する。また、SHG強度分布取得装置100は、ハーフミラーHM2、ハイカットフィルタ12、偏光板13、バンドパスフィルタ14、光電子増倍管(検出部)15を有する。また、SHG強度分布取得装置100は、レンズ17、撮像装置18を有する。また、SHG強度分布取得装置100は、制御信号出力部30、処理部16を有する。
【0031】
SHG強度分布取得装置100は、レーザ発振器1によって励起される波長変換器2からレーザ光(基本波)をペンタセンFET50に照射し、ペンタセンFET50にて生成された2次高調波を光電子増倍管15で検出する。後述の説明から明らかになるが、制御信号出力部30は、ペンタセンFET50のソース電極6にパルス信号S2を出力する時点と、スイッチ素子21にパルス信号S3を出力する時点とを制御する。これによって、ペンタセンFET50に電圧が実際に印加される時点(第1時点(電圧印加時点))とペンタセンFET50にレーザ光が照射される時点(第2時点(レーザ照射時点))とが変更可能とされる。なお、スイッチ素子21にパルス信号S3を出力する時点後に、レーザ発振器1からレーザ光が出力される。
【0032】
SHG強度分布取得装置100を用いて、ペンタセンFET50に形成されうるチャネル(キャリアの移動通路)の複数個所ごとに、上述の電圧印加時点−レーザ照射時点間の時間間隔が異なる複数の条件について、2次高調波の強度分布を測定する。これによって、ペンタセンFET50のチャネルにおける電界分布又はキャリア分布の推移を観察することができる。なお、この点は、後述の説明から明らかになる。
【0033】
以下、図1を参照して、SHG強度分布取得装置100の構成について説明する。
【0034】
レーザ発振器1は、フラッシュランプ(励起光源)19、ロッド20、スイッチ素子(スイッチ部)21、反射ミラーM1、M2、THG(Third Harmonic Genaration)結晶22を有する。レーザ発振器1は、いわゆる固体レーザ装置であって、Qスイッチ動作し、所定のパルス幅のレーザ光(基本光若しくは基本波)を出力する。レーザ発振器1からは、355nmの波長のレーザ光が出力される。レーザ発振器1は、光源であるとともに、照射部として機能する。
【0035】
フラッシュランプ19は、ポンピング用の励起光源である。ロッド20は、Nd:YAG(レーザ媒質)がドープされた母体である。ロッド20の一方には反射ミラーM1が配置され、ロッド20の他方には反射ミラーM2が配置される。ロッド20、反射ミラーM1、M2により、共振器が構成される。スイッチ素子21は、ロッド20と反射ミラーM1との間に配置される。
【0036】
フラッシュランプ19は、制御信号出力部30からハイレベルのパルス信号(制御信号)S1が入力されたとき励起光を出力する。ロッド20にドープされたNd:YAGは、フラッシュランプ19からポンピングされる励起光により励起状態となる。Nd:YAGは、励起状態から基底状態に変化するときに光を放出する。ロッド20からの出射光は、反射ミラーM1と反射ミラーM2との間で共振し、励起状態にあるNd:YAGは誘導放出される。なお、半導体レーザを励起光源として用いても良い。
【0037】
スイッチ素子21は、いわゆる電気光学結晶であって、電圧印加時に、レーザ光(1064nm)に対する透明度が高くなる。つまり、スイッチ素子21は、電圧印加時にレーザ光に対して透明となり、電圧無印加時にレーザ光に対して不透明となる。ここでは、制御信号出力部30からのパルス信号(制御信号)S3がハイレベルの間、スイッチ素子21はレーザ光に対する透明度が高くなる。スイッチ素子21を制御することによって、レーザ発振器1は、所定のパルス幅のレーザ光(基本光又は基本波)を出力する。換言すると、スイッチ素子21は、ペンタセンFET50へのレーザ光の進行を制御するスイッチ部として機能する。なお、ここでは、電気光学素子を用いて、Qスイッチ動作を実現しているが、他の構成を採用してQスイッチ動作するレーザ発振器を実現しても良い。例えば、反射ミラーM1の角度を調整することで、Qスイッチ動作を実現しても良い。この場合には、反射ミラーがスイッチ部として機能する。
【0038】
波長変換器2は、光学結晶を用いて、レーザ発振器1からの出射されたレーザ光の波長を変換する。ここでは、レーザ発振器1から出力されたレーザ光は、波長355nmから波長1120nmに変換される。
【0039】
波長変換器2と減衰フィルタ3との間の反射ミラーRMは、波長変換器2から出力されたレーザ光を減衰フィルタ3に向けて進行させる。
【0040】
減衰フィルタ3は、レーザ光の強度を調整するための部材(光強度減衰部材)である。観察対象物であるペンタセンFET50は、有機デバイスである。従って、ペンタセン層8自体が照射されるレーザ光によって物理的に破壊されないようにレーザ光の強度を減衰させている。
【0041】
偏光板4は、所定の振動方向のレーザ光のみを通過させる。すなわち、ペンタセンFET50に照射されるレーザ光の偏光成分の品質を高めている。ハイパスフィルタ5は、所定波長以上の光のみを通過させる。すなわち、ここでは、波長1120nmの光を通過させ、波長710nm以下の光を遮断する。ハイパスフィルタ5と対物レンズOLとの間のハーフミラーHM1は、ハイパスフィルタ5を通過したレーザ光の50%を対物レンズOLに向けて進行させる。対物レンズOLは、レーザ発振器1からのレーザ光をペンタセンFET50の所定箇所(図5の単位領域P1)に集光する。
【0042】
なお、上述の対物レンズOLは、ペンタセンFET50から放出された2次高調波を採光する。また、上述のハーフミラーHM1は、ペンタセンFET50から放出された2次高調波の50%を通過させる。
【0043】
ハーフミラーHM2は、ハーフミラーHM1を通過した光の50%をハイカットフィルタ12に出力する。ハーフミラーHM2は、ハーフミラーHM1を通過した光の50%の光を撮像装置18に出力する。
【0044】
ハイカットフィルタ12は、波長800nm以上の光を遮断する。ハイカットフィルタ12は、ペンタセンFET50で反射されたレーザ光をカットし、反射されたレーザ光(波長:1120nm)が光電子増倍管15に入力されないようにする。
【0045】
偏光板13は、所定の振動方向の2次高調波のみを通過させる。すなわち、光電子増倍管15に入力される2次高調波の偏光品質を高めている。
【0046】
バンドパスフィルタ14は、2次高調波(波長:560nm)付近の帯域の光のみを通過させるフィルタである。ここでは、波長555nm〜波長565nmを通過させる。
【0047】
光電子増倍管15は、入射された2次高調波を光電変換する。光電子増倍管15は、処理部16に接続され、2次高調波の光量に応じた電気信号を処理部16に出力する。
【0048】
レンズ17は、ハーフミラーHM2から入力される像を撮像装置18に結像する。撮像装置18は、一般的なカメラ(CCD(Charge Coupled Device)カメラ)である。撮像装置18は、処理部16に接続され、画像信号を処理部16に出力する。
【0049】
制御信号出力部30は、フラッシュランプ19、スイッチ素子21、ペンタセンFET50のソース電極6に接続される。制御信号出力部30は、フラッシュランプ19にパルス信号S1を出力し、ペンタセンFET50のソース電極6にパルス信号S2を出力し、スイッチ素子21にパルス信号S3を出力する。
【0050】
処理部30は、撮像装置18、ステージ11に接続される。制御信号出力部30と処理部16とは、相互に連絡可能に構成され、各種信号の受発信が実行される。
【0051】
尚、図1に示すように、観察対象物としてステージ11上に載置されたペンタセンFET50は、ソース電極6、ドレイン電極7、ペンタセン層(有機半導体層)8、絶縁層9、ゲート電極10を有する。ペンタセンFET50は、いわゆる有機FET(有機デバイス)であって、有機材料としてペンタセンを用いている。ここでは、ソース電極6を電源側(第1電源)に接続し、ドレイン電極7、ゲート電極10を接地側(第2電源)に接続させている。また、ペンタセン層8の上面の所定箇所には、波長変換器2からのレーザ光が対物レンズOLによって集光される。なお、有機材料は、ペンタセンのほか、テトラセン、フタロシアニン、ポリジアセチレン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポルフィリン、フラーレン、ルブレン、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリスチレンスルフォン酸、フルオレン、トリフェニルアミン、ジアミン、アルミキノリノール錯体(Alq3)、ナフチルフェニレンジアミンであっても良い。
【0052】
ペンタセンFET50は、例えば、次のように製造される。通常の薄膜形成技術によって、絶縁層(例えば、SiO層)9の上面にペンタセン層8を形成する。また、通常の半導体プロセス技術(例えば、通常の薄膜形成技術の1つである蒸着法)によって、互いに離間する一対の上部電極(ソース電極6、ドレイン電極7)をペンタセン層8上に形成する。また、絶縁層9の下面には、通常の半導体プロセス技術によって、下部電極(ゲート電極10)形成する。なお、ここでは、上部電極、下部電極を金(Au)で形成している。但し、上部電極、下部電極は、いわゆる透明電極であっても構わない。
【0053】
図2を参照して、制御信号出力部30の構成について説明する。図2に示すように、制御信号出力部30は、パルス発振器31、遅延回路(第1遅延回路)32、遅延回路(第2遅延回路)33、パルス発振器34を有する。パルス発振器31、遅延回路32、遅延回路33には、処理部16から所定の信号が入力される。処理部16からのスタート信号により、パルス発振器31はパルス信号(電圧信号)を出力する。遅延回路32における遅延量及び遅延回路33における遅延量は、処理部16からの遅延量設定信号に基づいて設定される。
【0054】
図2から明らかなように、制御信号出力部30からフラッシュランプ19には、パルス発振器31から出力されたパルス信号(パルス信号S1)が入力される。また、制御信号出力部30からペンタセンFET50のソース電極6は、パルス発振器31から出力され、遅延回路32で遅延されたパルス信号に基づいてパルス発振器34が新たに生成したパルス信号(パルス信号S2)が出力される。なお、パルス発振器34の出力パルス幅は可変である。また、制御信号出力部30からスイッチ素子21には、パルス発振器31から出力され、遅延回路32と遅延回路33とで遅延されたパルス信号(パルス信号S3)が入力される。
【0055】
遅延回路32の遅延量、遅延回路33の遅延量は、任意の値に設定される。これにより、パルス信号S2の出力時点、パルス信号S3の出力時点が制御され、パルス信号S1−パルス信号S2間の出力間隔、パルス信号S2−パルス信号S3間の出力間隔が調整される。換言すると、制御信号出力部30は、パルス信号S2をペンタセンFETのソース電極6に出力する時点と、パルス信号S3をスイッチ素子21に出力する時点との間の時間間隔を変更可能に構成される。尚、上述の遅延回路における遅延量の変更は、具体的には、遅延回路内のバッファ段数を変更すること等で実現できる。
【0056】
制御信号出力部30は、遅延回路32における遅延量を変化させることによって、パルス信号S1に対するパルス信号S2の遅延時間およびパルス信号S1に対するパルス信号S3の遅延時間を変更することができる。また、制御信号出力部30は、遅延回路33における遅延量を変化させることによって、パルス信号S2に対するパルス信号S3の遅延時間を変更することができる。
【0057】
ここで、図3及び図1を相互に参照しながら、SHG強度分布取得装置100の動作の概要について説明する。
【0058】
図3に示すように、時刻t1にて、制御信号出力部30からフラッシュランプ19にパルス信号S1が出力される。そして、フラッシュランプはオン状態、すなわち励起光を出力する状態となる。
【0059】
次に所定時間後の時刻t2にて、制御信号出力部30からペンタセンFET50にパルス信号S2が出力される。そして、ペンタセンFET50のソース電極6とドレイン電極7間に正のパルス電圧が印加される。そして、ペンタセンFET50はオン状態となる。
【0060】
次に、時刻t3にて、制御信号出力部30からスイッチ素子21にパルス信号S3が出力される。そして、スイッチ素子21は、パルス信号S3のパルス幅に対応した期間、レーザ光に対して高い透過率となる。そして、レーザ発振器1からは所定のパルス幅のレーザ光が出力される。ここでは、レーザ発振器1から出力されるレーザ光のパルス幅は10ns以下に設定される。なお、使用するレーザ発振器1の性能によっては、出力されるレーザ光のパルス幅をfsレベルに設定することも可能である。
【0061】
図1に示すように、レーザ発振器1から出力されたレーザ光は、波長変換器2に入力される。波長変換器2では、入力されたレーザ光は、波長変換され、反射ミラーRMに出力される。反射ミラーRMは、入力されたレーザ光の進行方向を変更する。そして、反射ミラーRMで反射されたレーザ光は、減衰フィルタ3に入力される。減衰フィルタ3では、レーザ光の強度が弱められる。減衰フィルタ3から出力されたレーザ光は、偏光板4に入力される。偏光板4では、特定の振動方向の光のみが抽出される。偏光板4から出力されたレーザ光は、ハイパスフィルタ5に入力される。ハイパスフィルタ5では、波長710nm以下の光は遮断される(波長1120nmのレーザ光は通過する)。ハイパスフィルタ5から出力されたレーザ光は、ハーフミラーHM1に入力される。そして、ハーフミラーHM1から出力されたレーザ光は、対物レンズOLを介して、ペンタセンFET50の所定箇所に集光される。
【0062】
ペンタセンFET50のソース−ドレイン間に電圧が印加されているとき、ペンタセンFET50のペンタセン層8の所定箇所には10ns以下のパルス幅のレーザ光が照射され、ペンタセン層8の所定箇所には2次高調波(2次高調波光)が生成される。
【0063】
図1に示すように、ペンタセン層8で生成された2次高調波は、対物レンズOL、ハーフミラーHM1、ハーフミラーHM2を介して、ハイカットフィルタ12に入力される。ハイカットフィルタ12では、800nmよりも長波長の光の通過が禁止される。端的には、ハイカットフィルタ12は、レーザ発振器1から出力され、ペンタセン層8で反射されたレーザ光の通過を禁止する。ハイカットフィルタ12から出力された2次高調波は、バンドパスフィルタ14に入力される。バンドパスフィルタ14では、2次高調波が通過される。そして、バンドパスフィルタ14から出力された2次高調波は、光電子増倍管15に入力される。光電子増倍管15は、受光した2次高調波を光電変換し、受光した2次高調波の光量に応じた電気信号を処理部16に出力する。SHG強度分布取得装置100の動作の概要は、上述のとおりである。
【0064】
ここで、図4乃至図6を用いて、SHG強度分布取得装置100を用いて、観察対象物であるペンタセンFET50の電界分布又はキャリア分布を観察する手順について説明する。
【0065】
図4のS1にて、ステージを移動し、ペンタセンFET50を所定の位置にセットする。ここでは、図5に示すように、対物レンズOLで集光されたレーザ光のスポットが単位領域P1に配置されるように設定する。具体的には、ペンタセンFET50がスタート位置に配置されるように、撮像装置18が取得した像に基づいて処理部16はステージ11を操作する。なお、単位領域P1は、レーザ光のスポットが形成される領域に対応する。
【0066】
次に、図4のS2にて、遅延時間を設定する。ここでは、図6に示すように、ペンタセンFET50のソース−ドレイン間に電圧が印加される時点t1に対してペンタセン層8にレーザ光が照射される時点をずらした複数の測定条件を設定する。まず、レーザ光がペンタセン層8に時刻t2にて照射される測定条件(第1測定条件)を設定する。尚、t2は、t1よりも0.1μs遅延した時点である。なお、電圧印加時点に対するレーザ光照射時点の遅延時間は、遅延回路32、遅延回路33の遅延量を所定値に設定することで設定される。
【0067】
次に、図4のS3にて、実際に、単位領域P1で1回目の測定を実行する。これによって、単位領域P1における時点t2の2次高調波の強度が測定される。なお、S3では、60回程度の測定を実行し、その平均値を求めるものとする。
【0068】
次に、図4のS4にて、設定したすべての測定条件が終了したのかを判断する。ここでは、2回目以降の測定条件が実行されていないため、再び遅延時間の設定のステップS2に戻る。尚、ここでは、単位領域P1で、第1測定条件〜第6測定条件まで計6回の測定を行うものとする。
【0069】
ループ後のS2では、図6に示すように、レーザ光がペンタセン層8に時刻t3にて照射される測定条件(第2測定条件)を設定する。尚、t3は、t2よりも0.1μs遅延した時点である。そして、S3、S4を上述のように実行する。なお、電圧印加時点に対するレーザ光照射時点の遅延時間の設定方法は、上述と同様である。
【0070】
次のループ後のS2では、図6に示すように、レーザ光がペンタセン層8に時刻t4にて照射される測定条件(第3測定条件)を設定する。尚、t4は、t3よりも0.1μs遅延した時点である。そして、S3、S4を上述のように実行する。
【0071】
次のループ後のS2では、図6に示すように、レーザ光がペンタセン層8に時刻t5にて照射される測定条件(第4測定条件)を設定する。尚、t5は、t4よりも0.1μs遅延した時点である。そして、S3、S4を上述のように実行する。
【0072】
次のループ後のS2では、図6に示すように、レーザ光がペンタセン層8に時刻t6にて照射される測定条件(第5測定条件)を設定する。尚、t6は、t5よりも0.1μs遅延した時点である。そして、S3、S4を上述のように実行する。
【0073】
次のループ後のS2では、図6に示すように、レーザ光がペンタセン層8に時刻t7にて照射される測定条件(第6測定条件)を設定する。尚、t7は、t6よりも0.1μs遅延した時点である。そして、S3を上述のように実行する。今回のループ時のS4では、すべての測定条件が実行されたと判断される。
【0074】
なお、処理部16は、2回目のS2にて、1回目の測定後の遅延回路33の遅延量を増加させる。また、処理部16は、3回目のS2にて、2回目の測定後の遅延回路33の遅延量を増加させる。4回目以降の測定においても同様である。このようにして、スイッチ素子21に電圧が印加される時点を遅らすことによって、ペンタセンFET50のソース−ドレイン間に電圧が印加される時点t1に対してペンタセン層8にレーザ光が照射される時点をずらした測定条件を設定することができる。なお、このような条件設定は、処理部16に格納されたプログラムに実行されるとよい。
【0075】
図4のS5では、すべての単位領域で測定が実行されたのか判断される。ここでは、単位領域P1の測定のみしか終わっていない。従って、図4のS1に戻り、ステージ11の移動が実行される。すなわち、ステージ11の移動によって、図5に模式的に示すように、ペンタセンFET50は右方向に移動される。そして、図5に模式的に示すように、対物レンズOLの焦点は、単位領域P1から単位領域P2に移動される。なお、単位領域P1と単位領域P2との間の間隔は、例えば、5μm程度に設定される。
【0076】
単位領域P2においても、上述と同様の測定を実行する。図5の単位領域P2よりも左側に設定される単位領域についても同様である。このようにして、ペンタセンFET50のソース電極6とドレイン電極7との間に形成され得るチャネルにおける異なる時点ごとの電界分布又はキャリア分布情報が取得される。
【0077】
ここで、図7を参照して、2次高調波の発生メカニズムについて簡単に説明する。図7(a)に示すように、観察される物質における双極子モーメントがランダムであるほど、観察される2次高調波の強度(SHG強度)は低くなる。他方、観察される物質における双極子モーメントが整っているほど、観察される2次高調波の強度(SHG強度)は高くなる。図7(b)のように、芳香環構造を含む物質においては電界E(分子に局所的に加わる電界)が強いほど、芳香環における電子雲に偏りが生じ、観察される2次高調波の強度は高くなる。2次高調波の検出は、物質における電界分布を探ることに他ならず、そのため電界の源となるキャリア分布を探ることができる。
【0078】
図8、図9に、SHG強度分布取得装置100を用いた測定結果を示す。具体的には、図8、図9に、ペンタセンFET50のソース−ドレイン間に電圧が印加される時点とペンタセンFET50にレーザ光が照射される時点との時間間隔(時間差)が異なる複数の条件について、ペンタセンFET50のチャネルに沿う2次高調波の強度分布を示す。図8に、ペンタセンFET50のソース−ドレイン間に正の電圧を印加した場合の測定結果を示す。図9に、ペンタセンFET50のソース−ドレイン間に負の電圧を印加した場合の測定結果を示す。尚、図8、図9において、ソース電極6のチャネル側の端面(ソース電極6のエッジ)は14μmの位置にあり、ドレイン電極7のチャネル側の端面(ドレイン電極7のエッジ)は56μmの位置にある。
【0079】
図8に矢印で模式的に示すように、ソース−ドレイン間に正の電圧を印加した場合、時間の経過に伴って、2次高調波の強度のピーク(SHG強度のピーク)は、ソース側からドレイン側に移動している。これによって、ペンタセン層8に注入されたキャリアが、ソース電極6側からドレイン電極7側に移動していることが視覚的に理解できる。なお、SHG強度のピークは、ソース電極6からドレイン電極7に向かって形成される後述のキャリア層70(図10参照)の先端部分に相当する。図8の場合、ペンタセンFET50をオン状態とすることができる。
【0080】
図9に矢印で模式的に示すように、ソース−ドレイン間に負の電圧を印加した場合、時間の経過に伴って、SHG強度のピークは、ソース側からドレイン側に移動していない。換言すると、SHG強度のピークは、時間が経過しても、ソース電極付近に留まっている。これによって、ペンタセン層8に印加された負のバイアスによって、ソース電極6からペンタセン層8にキャリアが注入されていないと理解できる。
【0081】
上述のように、ペンタセンFET50のソース−ドレイン間に電圧が印加される時点t1に対してペンタセン層8にレーザ光が照射される時点をずらした複数の測定条件を設定し、設定した複数の測定条件でチャネルの複数個所において2次高調波の強度を測定する。これによって、キャリアの動的特性を光学的に観察することができる。光学的観察は電気的観察に比べて、外来ノイズに対する耐性が高い。従って、精度の高い測定を実現することができる。
【0082】
ここで、図10に、ペンタセンFET50がオン状態となったときのシミュレーション結果を示す。図10(a)〜(d)のそれぞれでは、上側にペンタセンFET50の概略的な断面を表す模式図を示し、下側にSHG強度分布を示す。
【0083】
図10に示すように、図10(a)(b)(c)(d)の順番に従って、ペンタセン層8に形成されるキャリア層70はソース側からドレイン側に移動する。これに伴って、SHG強度のピーク80も、ソース側からドレイン側に移動する。すなわち、SHG強度のピーク位置を観察することによって、キャリアの移動状態を観察することができる。
【0084】
最後に、図11に、ペンタセンFETのバリエーションを示す。図11に示すように、ソース電極6、ドレイン電極7が絶縁層9の直上に形成されていても良い。そして、ソース電極6、ドレイン電極7を覆うように、ペンタセン層8を形成しても良い。なお、SHG強度分布取得装置100の観察対象物は、有機デバイスに限定されない。通常の半導体デバイスであっても良い。
【0085】
SHG強度分布取得装置100によれば、上述の測定結果に示すように、キャリアの動的な特性(キャリア注入、キャリアの蓄積、キャリアの輸送)を視覚的に観察することができる。当然、キャリア分布に基づいて、キャリアの移動度を算出することもできる。
【0086】
また、SHG強度分布取得装置100によれば、正負ごとのキャリア分布も、それぞれを識別して観察することができる。また、キャリアのトラップといった過程まで観察することができる。また、SHG強度分布取得装置100では、照射されるレーザ光の波長を変更する等して、多層構造の中に含まれる所定の層におけるキャリア分布のみを抽出することもできる。また、空間的なキャリア分布も測定することができる。従って、SHG強度分布取得装置100を用いて、有機デバイスをはじめとする各種のデバイスの開発を進めることは非常に有益である。また、SHG強度分布取得装置100を用いて、有機材料における新たなキャリア輸送理論を発展させることもできる。
【0087】
なお、本発明の実施の形態は、上述の実施の形態に限定されない。レーザ発振器1とペンタセンFET50との間に、レーザ発振器1からのレーザ光を通過又は遮断する光学素子を配置しても良い。換言すると、スイッチ部の配置箇所は、レーザ共振器1の共振器外であっても良い。ペンタセンFET50へのレーザ光の進行を制御する構成(スイッチ部の構成)は、スイッチ素子21に限定されない。また、当然、スイッチ部は、電気光学結晶以外であっても良い。つまり、レーザ共振器1からのレーザ光の進行方向を、パルス信号S3に基づいて、所定の方向に設定することができる可動式ミラーであっても構わない。この場合、可動式ミラーは、パルス信号S3の入力に伴って、レーザ発信器1からのレーザ光を観察対象物に照射可能な状態とする。但し、このような場合、レーザ発振器1からレーザ光を常に出力させる必要があるため電力消費量が増大することを招いたり、複雑な光路設計をすることを招いたりしてしまう。
【0088】
また、ペンタセンFET50のペンタセン層8における複数の単位領域に同時にレーザ光を照射するように光学系を変更し、マルチチャネルの光電子増倍管を検出部として用いても良い。
【0089】
検出部としては、2次高調波に対して所定の感度を有していればよく、光電子増倍管といった微弱光用の検出部を用いる必要は必ずしもない。例えば、CCD(Charge Coupled Devices)といった汎用的な撮像装置を用いることもできる。カメラを用いて2次高調波の分布の空間的な広がりを検出することも有効である。
【0090】
測定する具体的な手順は、図4のフローチャートに限らない。同一の測定条件で複数の単位領域で測定した後、測定条件を変えて、複数の単位領域を測定することもできる。一回の測定で複数の単位領域からのSHG強度を取得する場合、ステージの移動を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】電界分布又はキャリア分布の観察装置の概略的な構成図である。
【図2】制御信号出力部30の構成について説明するための模式図である。
【図3】制御信号出力部30による制御を説明するための概略的なタイミングチャートである。
【図4】電界分布又はキャリア分布の観察方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【図5】ペンタセンFET50の付近を拡大した概略的な模式図である。
【図6】ペンタセンFET50のソース−ドレイン間に電圧が印加される時点に対してペンタセン層8にレーザ光が照射される時点を変更することの概略的な説明図である。
【図7】2次高調波の発生メカニズムの説明図である。
【図8】SHG強度分布取得装置100を用いた測定結果を示す説明図である。
【図9】SHG強度分布取得装置100を用いた測定結果を示す説明図である。
【図10】ペンタセンFET50がオン状態となったときのシミュレーション結果を示す説明図である。
【図11】ペンタセンFETのバリエーションを示す模式図である。
【図12】TOF法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0092】
50 ペンタセンFET
8 ペンタセン層
100 強度分布取得装置
30 制御信号出力部
1 レーザ発振器
2 波長変換器
3 減衰フィルタ
4 偏光板
5 ハイパスフィルタ
HM1 ハーフミラー
HM2 ハーフミラー
OL 対物レンズ
11 ステージ
12 ハイカットフィルタ
13 偏光板
14 バンドパスフィルタ
15 光電子増倍管
16 処理部
17 レンズ
18 撮像装置
19 フラッシュランプ
20 ロッド
21 スイッチ素子
M1 反射ミラー
M2 反射ミラー
P1 単位領域
P2 単位領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象物に設けられた電極間における電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出装置であって、
前記観察対象物に基本波を照射する照射部と、
前記観察対象物における電圧印加時の電界分布又はキャリア分布に応じて生成された前記高次高調波を検出する検出部と、
第1信号に基づき前記照射部より前記観察対象物に前記基本波を照射させ、第2信号に基づき前記観察対象物に電圧を印加する制御信号出力部と、
を備え、
前記制御信号出力部は、前記第1信号の出力時点と前記第2信号の出力時点との間の時間間隔を変更可能に構成される、検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記第2信号の出力時点と前記第1信号の出力時点との間の時間間隔が異なる複数の条件で生成される高次高調波を検出することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記制御信号出力部は、前記第2信号の出力後に、前記第1信号を出力することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項4】
前記観察対象物は、電極間に有機材料が配置された電子デバイスであることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項5】
前記有機材料は、テトラセン、フタロシアニン、ポリジアセチレン、ペンタセン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポルフィリン、フラーレン、ルブレン、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリスチレンスルフォン酸、フルオレン、トリフェニルアミン、ジアミン、アルミキノリノール錯体(Alq3)、ナフチルフェニレンジアミンのうち少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項4記載の検出装置。
【請求項6】
前記制御信号出力部は、共通のパルス発振器から出力されたパルス信号に基づいて前記第1信号及び前記第2信号を生成することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項7】
前記高次高調波を通過させ、前記基本波を遮断するフィルタが、前記観察対象物と前記検出部との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項8】
前記基本波を前記観察対象物上に集光させる対物レンズと、
前記対物レンズに対する前記観察対象物の相対的な位置を変更するステージと、
をさらに備え、
前記対物レンズに対する前記観察対象物の相対的な位置は、時間間隔が異なる複数の条件で生成される高次高調波が前記検出部で検出された後、前記ステージによって変更されることを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項9】
前記基本波は、所定幅のパルス光であることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項10】
観察対象物に設けられた電極間における電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出装置であって、
前記観察対象物に照射される基本波を出射する光源と、
前記観察対象物における電圧印加時の電界分布又はキャリア分布に応じて生成された前記高次高調波を検出する検出部と、
前記観察対象物への前記基本波の進行を制御するスイッチ部と、
第1信号に基づき前記スイッチ部に前記基本波を進行させ、第2信号に基づき前記観察対象物に電圧を印加する制御信号出力部と、
を備え、
前記制御信号出力部は、前記第1信号の出力時点と前記第2信号の出力時点との間の時間間隔を変更可能に構成される、検出装置。
【請求項11】
前記スイッチ部は、前記第1信号の入力に基づいて前記基本波に対して実質的に透明となる電気光学素子であることを特徴とする請求項10記載の検出装置。
【請求項12】
前記光源は、レーザ発振器であって、
前記スイッチ部は、前記レーザ発振器の共振器内に配置されることを特徴とする請求項10記載の検出装置。
【請求項13】
前記高次高調波を通過させ、前記基本波を遮断するフィルタが、前記観察対象物と前記検出部との間に配置されていることを特徴とする請求項10記載の検出装置。
【請求項14】
前記基本波を前記観察対象物上に集光させる対物レンズと、
前記対物レンズに対する前記観察対象物の相対的な位置を変更するステージと、
をさらに備え、
前記対物レンズに対する前記観察対象物の相対的な位置は、時間間隔が異なる複数の条件で生成される高次高調波が前記検出部で検出された後、前記ステージによって変更されることを特徴とすることを特徴とする請求項10記載の検出装置。
【請求項15】
前記基本波は、所定幅のパルス光であることを特徴とする請求項10記載の検出装置。
【請求項16】
観察対象物に設けられた電極間における電界分布又はキャリア分布を高次高調波の強度に基づいて検出する検出方法であって、
前記観察対象物に基本波を照射し、
前記観察対象物に電圧を印加し、
前記観察対象物への前記基本波の照射時点と前記観察対象物への電圧の印加時点との間の時間間隔が異なる複数の条件で生成される高次高調波を検出する、検出方法。
【請求項17】
観察対象物における電界分布又はキャリア分布の変化を検出する検出方法であって、
前記観察対象物に電圧を印加し、前記観察対象物の第1領域に基本波を照射し、前記基本波の照射により前記観察対象物で生成される高次高調波を検出する第1ステップを、前記観察対象物に電圧が印加される第1時点と前記基本波が前記観察対象物に照射される第2時点との間の時間間隔が異なる複数の条件で実行し、
前記観察対象物に電圧を印加し、前記観察対象物の前記第1領域とは異なる第2領域に前記基本波を照射し、前記基本波の照射により前記観察対象物で生成される高次高調波を検出する第2ステップを、前記観察対象物に電圧が印加される第1時点と前記基本波が前記観察対象物に照射される第2時点との間の時間間隔が異なる複数の条件で実行する、検出方法。
【請求項18】
前記基本波は所定幅のパルス光であって、
前記第1時点は前記第2時点よりも前の時点であることを特徴とする請求項17記載の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−218957(P2008−218957A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58219(P2007−58219)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】