説明

電界効果トランジスタの不動態化のための方法

【課題】少なくとも1つのソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極とを有する電界効果トランジスタの不動態化において、従来技術の問題点を解決する。
【解決手段】少なくとも1つの化学的感受性の電極を有する半導体構成素子の不動態化のために、少なくとも、該化学的感受性の電極を、ガラス層もしくはガラスセラミック層の施与によって覆い隠す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極とを有する電界効果トランジスタの不動態化のための方法に関する。更に、本発明は、流体流中に含まれる少なくとも1種の物質の検出のための装置であって、測定センサとしての少なくとも1つの半導体素子並びに参照素子として作用する少なくとも1つの半導体素子を含み、該半導体構成素子が化学的感受性の電極を有し、参照素子として作用する半導体構成素子の化学的感受性の電極が不動態化されている形式の検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を基礎とする感ガス性電界効果トランジスタは、センサでの使用がますます増えてきている。通常は、その際に、検出すべき試験物質種、例えばガス又は液体もしくはガス/液体混合物を流すと、チャネルインピーダンスが変化するため、ソース電極からドレイン電極へとトランジスタを流れる電流が変化する。係る電界効果トランジスタは、例えばUS5,698,771号から公知である。電界効果トランジスタは、センサ用途では、2eVより高い禁制帯を有する半導体材料、例えば窒化ガリウムもしくは炭化ケイ素が使用される場合には、800℃までが使用可能である。
【0003】
電界効果トランジスタのチャネル電流は、選択された動作点において、しばしば、試験物質種が流れることによるチャネル電流変化よりも数オーダー(通常は103)だけ大きい。このことから、電流測定への高い要求が生まれる。更に、オフセットが外乱によって影響されうるという問題は、いわゆるノイズを生ずる。外乱は、例えば温度変化もしくはセンサ分解であり、それはチャネル電流の変化をもたらし、試験物質種の存在によらない。与えられるシグナル−オフセット比に基づき、外乱によるチャネル電流の変化は、試験物質種の存在によって起きる変化と同じオーダーであるか、又は極めて不利な場合にはそれよりも大きいことがある。前記の外乱は完全に排除することができないので、それに関連する測定シグナルの誤差は大きく、そして極めて不利な場合には試験物質種の有効な測定を阻む。
【0004】
外乱とオフセットを補償するために、例えば、参照素子として作用する検出すべき物質に対して不感受性である電界効果トランジスタを使用することができる。好ましくは、該参照素子と、測定センサとして作用する電界効果トランジスタとは、半導体構造、幾何学的寸尺及び電気的特性に関して同一である。同じ電気的特性に基づき、両方の電界効果トランジスタは、同一のゼロシグナルを有する。両方の電界効果トランジスタの空間的分離が小さい場合には、更に、良好な熱的結合が生ずる。そのことは、例えば1つのチップへと複数の構成素子を集積する際にもたらされる。これによって、両方の電界効果トランジスタは、同じ外乱を受ける。測定センサとして作用する電界効果トランジスタと、参照素子として作用する電界効果トランジスタのチャネル電流における差異は、その際、理想的には、検出されるべき物質の存在のみによるものである。
【0005】
電界効果トランジスタを不動態化して、これを参照素子にすることは、半導体プロセスでの技術水準に従って、誘電体層を用いて行われる。これらは、一般に薄膜技術によって堆積される。しかしながら、係る不動態化層は、事情により、電界効果トランジスタの電気的特性に影響を与える。ここで、例えば、窒化ガリウムなどの圧電性半導体材料の場合における不動態化層とその下にある層との間の境界層での歪みは、電界効果トランジスタチャネルにおける変化をもたらすことがある。更に、誘電体の不動態化層は、しばしば、電荷を蓄えることができ、それによりゲート電極下の電界に影響を及ぼすことができる電子状態を示す。
【0006】
更に、参照素子として使用される電界効果トランジスタの不動態化は、集積型チップに対しては半導体プロセスにおいて非常に費用がかかる。ここで、例えばプロセス技術的な制限は、不動態化の完全な側方構造化を可能にせず、他方で、例えば不動態化の堆積に際して高い温度などのプロセスパラメータは、測定センサの化学的感受性のゲートを損傷する。前記の理由から、参照素子として作用する電界効果トランジスタと、測定センサとして作用する電界効果トランジスタとは、互いに別々に加工せねばならない。しかしながら、そのことは、事情によっては、もはや同じ電界効果トランジスタをもたらさず、それらは場合により異なる電気的特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US5,698,771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、少なくとも1つのソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極とを有する電界効果トランジスタの不動態化において、前記問題点を解決することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、少なくとも1つの化学的感受性の電極を有する半導体構成素子の不動態化のために、少なくとも、該化学的感受性の電極を、ガラス層もしくはガラスセラミック層の施与によって覆い隠すことによって解決された。
【0010】
該ガラス層もしくはガラスセラミック層は、非晶質、部分晶質もしくは晶質であってよい。
【0011】
ガラス層もしくはガラスセラミック層の施与によって、半導体構成素子の化学的感受性の電極は、検出すべき物質に対して不感受性となり、そして流体流中に存在する物質が半導体構成素子の化学的感受性の電極と相互作用することを妨げる。係る半導体構成素子は、特に流体流中の物質の検出のための装置における外乱排除のための参照素子として使用される。
【0012】
化学的感受性の電極上にガラス層もしくはガラスセラミック層を施与することの利点は、参照素子として作用する半導体構成素子が、半導体構造、幾何学的寸尺、ゲートスタックの構造並びに電気的特性に関して、測定センサとして使用される半導体構成素子と同じ構成を有しうることである。同じ構造によって、測定センサとして作用する半導体構成素子と参照素子として作用する半導体構成素子のチャネル電流における差異は、検出されるべき物質の存在のみによるものである。この場合に、測定は、個々の半導体構成素子の電流変化によらずに、測定センサとして作用する半導体構成素子と参照素子として作用する半導体構成素子との間のチャネル電流の差異により行われる。
【0013】
半導体構成素子の少なくとも化学的感受性の電極上に、それを覆い隠すために、すなわち前記化学的感受性の電極を、流体流中の物質の影響に対して不感受性にするために、ガラス層もしくはガラスセラミック層を施与することは、例えば溶剤中に分散されたガラス粉末を含有する懸濁液を該化学的感受性の電極上に施与することによって行われる。引き続き、溶剤を蒸発させ、そしてガラス粉末を溶融させる。場合により該懸濁液中に含まれる更なる有機成分であって蒸発しないものは、ガラスの溶融に必要な高い温度によって燃焼される。こうして、ガラス被膜が半導体構成素子の化学的感受性の電極上に残り、それは有機混在物を含まない。好ましくは、該ガラス粉末は、400〜800℃の範囲の温度で溶融するガラスを含有する。しかしながらその際、溶融温度は、半導体構成素子の作動時にガラス層が再び溶融することを回避するために、後々の半導体構成素子の作動温度より高い。ガラスの軟化温度は、好ましくは、半導体構成素子の作動温度よりも50℃より高い。半導体構成素子の材料もしくは半導体構成素子がガラスの溶融に際して損傷を受けないためには、しかしながら、好ましくは、できる限り低い溶融温度を有するガラスを選択すべきである。
【0014】
ガラスの溶融は、100K/sまでの加熱速度、0〜60分の範囲の保持時間、そして50K/sまでの冷却速度で行われる。
【0015】
ガラス層もしくはガラスセラミック層の形成のために使用されるガラス粉末もしくはガラスセラミック粉末は、アルカリ金属不含もしくはアルカリ金属含有のいずれかである。好ましいアルカリ金属不含のガラス粉末は、例えばビスマス、亜鉛、ホウ素もしくはこれらの材料の組み合わせを含有するケイ酸塩ガラス粉末、例えばビスマス−ホウ素−亜鉛−ケイ酸塩ガラス粉末である。ビスマス−ホウ素−亜鉛−ケイ酸塩ガラス粉末の利点は、これが約600℃の温度で既に溶融することである。選択的に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属含有のガラス粉末もしくはガラスセラミック粉末、例えばアルカリ金属−アルカリ土類金属−ホウ素−ケイ酸塩ガラス粉末を使用することができる。
【0016】
一般に、低い温度で、すなわち約600℃付近の温度で溶融するガラスは、ほぼ常に非常に高い割合の酸化鉛もしくは酸化ビスマスを含有する。高い割合の酸化鉛もしくは酸化ビスマスによって、該ガラスは、一般に、高融点の酸化ケイ素に富んだガラスよりも容易に還元することができる。ガラスの還元は、例えば一酸化炭素の存在下で又は半導体チップの表面との反応に際して行われる。還元はガラス層の損傷を引き起こすので、好ましくは、酸化鉛もしくは酸化ビスマスの少ない成分しか含有しないガラスが使用される。
【0017】
また、低い温度で溶融するアルカリ金属−アルカリ土類金属−ホウ素−ケイ酸塩ガラスが得られるが、これらは、一般に高い熱膨張係数を有する。該アルカリ金属−アルカリ土類金属−ホウ素−ケイ酸塩ガラス粉末の熱膨張係数は、一般に、半導体構成素子のために半導体材料として使用される炭化ケイ素の熱膨張係数よりも高い。しかしながら、熱膨張係数の適合は、例えば、アルカリ金属−アルカリ土類金属−ホウ素−ケイ酸塩ガラスの熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を有する添加剤の添加によって行うことができる。好適な添加剤は、例えばコーディエライトもしくはリチウム−アルミニウム−ケイ酸塩ガラスセラミックである。前記の添加剤によって、溶融と引き続いての凝固に際して、ガラスセラミック複合材料が形成される。
【0018】
該ガラスが、半導体材料及びガラスの熱膨張係数の差異があっても亀裂を形成しないために、好ましくは、該ガラスは低い層厚で形成されるべきである。しかしながら、該層厚は、ガラスが流体流に対して密であるのに十分に大きくなければならない。従って、層厚は、好ましくは0.1〜100μm、好ましくは1〜50μmの範囲にある。
【0019】
ガラス粉末が分散されている溶剤は、例えばエステルもしくはアルコール−ケトンである。
【0020】
溶剤の他に、懸濁液は、例えばまたバインダーを含有してよい。好適なバインダーは、例えばポリメタクリレートもしくは硝酸セルロースである。
【0021】
バインダーの使用によって、懸濁液のより高い粘度が達成される。こうして、例えば懸濁液がペーストの形態となることが可能である。これによって、懸濁液が半導体構成素子への施与後に延びて、不定の形態となり、場合により半導体構成素子上のガラス層によって覆われるべきでない領域をも覆われることが回避される。
【0022】
懸濁液の施与は、あらゆる任意の好適な印刷法によって、配量(Dispense)によって、又はピコ堆積(Pico−Deposition)法によって行うことができる。懸濁液の好適な施与法は、例えばスクリーン印刷もしくは滴下(Auftropfen)である。
【0023】
本発明によれば、化学的感受性の電極であってガラス層の施与によって覆い隠される電極は、好ましくは電界効果トランジスタもしくはダイオードのゲート電極である。
【0024】
更に、本発明は、流体流中に含まれる少なくとも1種の物質の検出のための装置であって、測定センサとしての少なくとも1つの半導体構成素子並びに参照素子として作用する少なくとも1つの半導体構成素子を含み、それらの半導体構成素子がそれぞれ1つの化学的感受性の電極を有する検出装置に関する。参照素子として作用する半導体構成素子の化学的感受性の電極は不動態化されている。不動態化のために、少なくとも参照素子として作用する半導体構成素子の化学的感受性の電極上にガラス層が施与されている。
【0025】
該ガラス層によって、既に上述したように、流体の成分が半導体構成素子と相互作用し、そして1つの測定シグナルをもたらすことが回避される。参照素子として作用する半導体構成素子は、検出装置に作用する外乱が排除されうるために使用される。
【0026】
好ましい一実施態様においては、参照素子として作用する半導体構成素子及び測定センサとして作用する半導体構成素子は、集積型構成素子として1つのチップで形成されている。特に好ましくは、参照素子として作用する半導体構成素子及び測定センサとして作用する半導体構成素子は、同じ構成を有する。同じ構成によって、特に半導体構造、幾何学的寸尺、ゲートスタックの構成並びに電気的特性に関して同じ構成によって、測定センサとして作用する半導体構成素子も、参照センサとして作用する半導体構成素子も、周囲の影響に、例えば温度の変動に同様に反応する。測定センサとして作用する半導体構成素子及び参照素子として作用する半導体構成素子のシグナルの差の形成によって、前記の外乱を排除することができる。
【0027】
しかしながら、参照素子として作用する半導体構成素子及び測定センサとして作用する半導体構成素子の同じ構成の他に、選択的に、例えば測定センサとして作用する半導体構成素子のみを官能化して、参照素子として作用する半導体構成素子を、既に半導体プロセスにおいてゲート電極の異なる金属被覆を施与することも可能である。
【0028】
特に、測定センサとして作用する半導体構成素子及び参照素子として作用する半導体構成素子の実質的に同じ構成において、まず、両方の半導体構成素子を製造し、それらの半導体構成素子の完成後はじめて、参照素子として用いられる半導体構成素子の化学的感受性の電極を、本発明によるガラス層の施与によって不動態化することが可能である。不動態化のためには、ガラス層が少なくとも、参照素子として用いられる構成素子の化学的感受性の電極を気密的に覆っていることが必要である。しかしながら、該化学的感受性の電極の表面より大きい表面が覆われていてもよい。ここで、例えば参照素子として作用する半導体構成素子全体か、それどころか参照素子として作用する半導体構成素子より広範囲が、ガラス層によって覆われていてもよい。測定センサとして作用する半導体構成素子も、参照素子として作用する半導体構成素子も、共通の1つのチップ上でプロセシングされる場合には、測定センサとして作用する半導体構成素子の化学的感受性の電極がガラス層によって覆われないことが単に顧慮されるべきである。
【0029】
測定センサとして使用される半導体構成素子もしくは参照素子として作用する半導体構成素子は、好ましくは電界効果トランジスタもしくはダイオードである。検出されるべきガスの場合には、これは、感ガス性の電界効果トランジスタもしくは感ガス性のダイオードである。
【0030】
次に、図面を参照しながら実施例に基づき本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明により形成される半導体構成素子の断面の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
唯一の図面において、本発明による方法に従って製造された半導体構成素子の断面が図示されている。
【0033】
半導体構成素子1は、一般に、半導体材料からなる基板3を含む。半導体材料としては、原則的に、2eVより高い禁制帯を有するあらゆる半導体材料が適している。好適な半導体材料は、例えば炭化ケイ素もしくは窒化ガリウムである。更なる好適な半導体材料は、例えばZnOもしくはダイヤモンドである。
【0034】
半導体構成素子が電界効果トランジスタである場合には、これは、少なくとも1つのソース電極5とドレイン電極7を含む。一般に、ソース電極5及びドレイン電極7は、半導体材料3によって取り囲まれており、自由表面9を有している。しかしながら、選択的に、ソース電極5とドレイン電極7が、例えば半導体材料3上に施与されていてもよい。
【0035】
ソース電極5とドレイン電極7のための材料としては、例えば白金、チタン、タンタル、ケイ化物もしくは炭化物が適している。
【0036】
本願に表される実施態様において、ソース電極及びドレイン電極7の自由表面9並びに基板3の表面は、同じ高さの表面を形成する。この表面上に、誘電体11が施与されている。誘電体11は、部分的にソース電極5及びドレイン電極7並びにそのソース電極とドレイン電極7の間にある基板3を覆う。誘電体11のための材料としては、例えば酸化物、例えばSiO2、Al23、ZrO2、窒化物、例えばSi34もしくは炭化物、例えばSiCが適している。
【0037】
誘電体11上に、導電性層13が施与されている。該導電性層13は、例えば電界効果トランジスタの場合にゲート電極17である。
【0038】
本願に表される誘電体11と導電性層13からなる2層の構成の他に、また、2層より多くの層からなる構成も可能である。ここで、例えば誘電体からなる更なる層及び更なる誘電性層が施与されていてよい。更に、例えば、触媒活性な多孔質層であってそこで化学反応が起こりうる層を施与することもできる。選択的に、導電性層13が、例えば多孔質に形成されていてもよい。更に、導電性層13は、触媒活性材料を含有してもよく、そこで化学反応を行うことができる。係る化学反応は、ゲート電圧の変化をもたらし、それによって検出されるべき物質の存在を測定することができる。
【0039】
参照素子として使用される半導体素子1は、付加的に、ゲート電極17として用いられる導電性層13上に不動態化層を含んでよい。該不動態化層は、例えば複数の材料層を有してよい。しかしながら、一般に、付加的な不動態化層は導電性層13上に施与されない。
【0040】
誘電体11と、導電性材料13と、場合により他の層の施与は、当業者に公知の半導体工学において確立された任意の方法によって行うことができる。好適な方法は、例えばCVD法又は他の微細構造化可能な薄膜法、例えば蒸着もしくはスパッタリングである。場合により、堆積は、層11、13の緻密焼結を促す熱処理工程を伴ってよい。しかしながら、選択的には、例えば誘電体11と、導電性層13と、場合により更なる層のための材料の湿式化学的堆積を行うことも可能である。湿式化学的堆積に引き続き、熱処理を行ってよい。その熱処理の高められた温度は、一方で、揮発性溶剤の蒸発をもたらし、他方では層11、13の堆積された材料の緻密焼結をもたらす。しかしながら、選択的に、例えば、誘電体11及び導電性層13を、例えばペーストを用いたプリントなどの構造化する厚膜法と、場合により後続の熱処理工程によって施与することもできる。
【0041】
本発明によれば、誘電体11及び導電性層13によって形成されたゲート電極17の不動態化は、ガラス層もしくはガラスセラミック層15の施与によって行われる。ガラス層15のガラスは、一般に、液体もしくはガスに対して不透過性なので、これらは導電性層13へと到達しない。ガラスの施与は、一般に、当業者に公知の方法によって行われる。ここで、ガラス層15用のガラスは、特にガラス粉末の懸濁液もしくはペーストの施与によって、好適な印刷法、配量もしくはピコ堆積法によって実施することができる。施与されたガラス粉末のペーストもしくは懸濁液は、そこに含まれる溶剤が蒸発するように加熱される。引き続き、該ペーストもしくは懸濁液は、好適な加熱速度での加熱と、好適な温度での保持時間によって溶融され、そして懸濁液中に含まれるガラス粉末の分散のために使用される有機成分が燃焼される。ここで、例えば、不動態化のために、有機溶剤と、ポリメタクリレートと、硝酸セルロースバインダーと、ビスマス−ホウ素−亜鉛−ケイ酸塩ガラス粉末とからなるペーストを、スクリーン印刷もしくは滴下によって施与することができる。引き続き、該ペーストは、100K/sまで、好ましくは50K/sまでの加熱速度及び0〜60分、好ましくは5〜15分の600℃の温度での保持時間及び引き続いての50K/sまでの冷却速度での冷却で溶融される。気密であり、かつ実質的に有機残留物不含であるガラス層15が形成される。その際、600℃の温度は、ポリメタクリレートバインダー及び硝酸セルロースバインダーによって懸濁液中に含まれている有機成分を燃焼するのに十分である。
【0042】
ガラス層15のために好適なガラスの選択において、これが十分に高い溶融温度を有することを顧慮すべきである。ここで、ガラスの溶融温度が、半導体素子1の意図される使用のための温度よりも少なくとも50℃高いことが好ましい。しかしながら、他方で、ガラス層15用のガラスが溶融する温度が高すぎず、ガラス層15用のガラスの溶融の間に半導体素子1の分解を防止することも顧慮されるべきである。
【0043】
本発明によるガラス層15を有する半導体素子1は、特に、ガス流中のガスの検出のための参照素子として適している。しかしながら、選択的に、例えば液体流中の液体も又は液体流中に溶解されたガスも検出することができる。検出のためには、この場合に付加的に、測定センサとして用いられる半導体素子1が必要となる。一般に、半導体素子1としては、電界効果トランジスタもしくはダイオードが使用される。
【0044】
参照素子として用いられる半導体素子1のためのガラス層もしくはガラスセラミック層15を有する本発明による構成によって、測定センサ及び参照素子として実質的に同じ構成の半導体素子1を接続することが可能である。その製造のためには、好ましくは、基板3上に、測定センサとして用いられる半導体構成素子及び参照素子として用いられる半導体構成素子のための個々の層が同時に施与される。これによって、層厚及びその構成と構造に関して実質的に同じ層を達成することができる。まず、半導体構成素子1の加工に引き続き、すなわち該素子が完全に構成された場合に、参照素子として用いられる半導体構成素子1のゲート領域、少なくとも誘電体11及び導電性層13はガラス層15によって覆われる。しかしながら、参照素子として用いられる半導体構成素子のソース電極5及びドレイン電極7は、ガラス層15によって共に完全に覆われてもよい。また、基板3の更により大きな範囲が、ガラス層15によって覆われていてよい。ただ測定センサとして用いられる半導体構成素子のゲート電極17の導電性層だけは、ガラス層15によって覆われてはならない。
【0045】
測定センサとして用いられる半導体構成素子1及び参照素子として用いられる半導体構成素子1の同じ構成の代わりに、参照素子として用いられる半導体構成素子1が、測定センサとして用いられる半導体構成素子のゲート電極17用のものとは別のゲート電極17用の材料を使用することもできる。しかしながら、その構成は、妨害信号が、測定センサで用いられる半導体構成素子でも、参照素子として用いられる半導体構成素子1でもそれぞれ同じ信号をもたらすために同一であることが好ましい。
【0046】
1つのチップ上に複数の同じ半導体構成素子を同時に製造し、ただ参照素子として用いられる幾つかだけにガラス層15を設けることは、更に、それらの素子を、多くのプロセス工程の削減によってより迅速にかつ廉価に完成できるという利点を有する。
【0047】
図に示される半導体構成素子1としての電界効果トランジスタの他に、ガラス層15で不動態化された半導体素子1は、化学的感受性の電極を有し、かつガスの検出のために用いられるあらゆる任意の他の半導体素子であってもよい。ここで、例えばダイオードの化学的感受性の電極にガラス層を設けることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体構成素子、 3 基板、 5 ソース電極、 7 ドレイン電極、 9 自由表面、 11 誘電体、 13 導電性層、 15 ガラス層、 17 ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの化学的感受性の電極(17)を有する半導体構成素子(1)の不動態化のための方法において、少なくとも化学的感受性の電極(17)を、ガラス層もしくはガラスセラミック層(15)の施与によって覆い隠すことを特徴とする不動態化方法。
【請求項2】
化学的感受性の電極(17)上に、溶剤中に分散されたガラス粉末を含有する懸濁液を施与し、溶剤を蒸発させ、そしてガラス粉末を溶融させることを特徴とする、請求項1に記載の不動態化方法。
【請求項3】
溶融を、100K/sまでの加熱速度、0〜60分の範囲の保持時間、そして50K/sまでの冷却速度で行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の不動態化方法。
【請求項4】
ガラス粉末が、400〜800℃の範囲の温度で溶融するガラスを含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の不動態化方法。
【請求項5】
ガラス粉末もしくはガラスセラミック粉末が、ビスマス、ホウ素、亜鉛、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の不動態化方法。
【請求項6】
ガラス粉末が、ビスマス−ホウ素−亜鉛−ケイ酸塩ガラス粉末もしくはアルカリ金属−アルカリ土類金属−ホウ素−ケイ酸塩ガラス粉末であることを特徴とする、請求項5に記載の不動態化方法。
【請求項7】
アルカリ金属−アルカリ土類金属−ホウ素−ケイ酸塩ガラス粉末が、アルカリ金属−アルカリ土類金属−ホウ素−ケイ酸塩ガラスの熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を有する添加剤を含有することを特徴とする、請求項6に記載の不動態化方法。
【請求項8】
施与されたガラス層もしくはガラスセラミック層(15)が、0.1〜100μmの範囲の、好ましくは1〜50μmの範囲の層厚を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の不動態化方法。
【請求項9】
化学的感受性の電極が、電界効果トランジスタもしくはダイオードのゲート電極(17)であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の不動態化方法。
【請求項10】
流体流中に含まれる少なくとも1種の物質の検出のための装置であって、測定センサとしての少なくとも1つの半導体素子並びに参照素子として作用する少なくとも1つの半導体素子(1)を含み、該半導体構成素子(1)が化学的感受性の電極(17)を有し、参照素子として作用する半導体構成素子(1)の化学的感受性の電極(17)が不動態化されている形式の検出装置において、前記不動態化のために、少なくとも、参照素子として作用する半導体構成素子(1)の化学的感受性の電極(17)上にガラス層(15)が施与されていることを特徴とする検出装置。
【請求項11】
参照素子として作用する半導体構成素子(1)及び測定センサとして作用する半導体構成素子が、集積型構成素子として1つのチップで形成されていることを特徴とする、請求項10に記載の検出装置。
【請求項12】
参照素子として作用する半導体構成素子(1)及び測定センサとして作用する半導体構成素子が、同じ構成を有することを特徴とする、請求項10又は11に記載の検出装置。
【請求項13】
半導体構成素子(1)が、電界効果トランジスタもしくはダイオードであることを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項に記載の検出装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−122217(P2010−122217A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261718(P2009−261718)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】