説明

電界効果型トランジスタ。

【課題】CNTを含有する半導体層を有する電界効果型トランジスタにおいて、高移動度・高オンオフ比を達成し、且つターンオン電圧・ヒステリシスを低減すること。
【解決手段】表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブを含有する半導体層、ポリマーおよび無機酸化物微粒子を含有するゲート絶縁層、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を有する電界効果型トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電界効果型トランジスタに関する。より詳しくは、カーボンナノチューブを半導体層に含有する電界効果型トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、成形性に優れた有機半導体を半導体層として用いた電界効果型トランジスタ(以下、FETという)が提案されている。有機半導体をインクとして利用することで、インクジェット印刷法やスクリーン印刷法等により、基板上に直接回路パターンを形成することが可能になることから、従来の高真空プロセスを必要とした無機半導体を用いたFETにかわり、有機半導体を用いたFETが盛んに検討されている。
【0003】
FETの性能を示す重要な指標として、移動度とオンオフ比が挙げられる。移動度の向上は、すなわち、オン電流を増加させることを意味する。一方、オンオフ比の向上は、オン電流を増加させるとともにオフ電流を減少させることを意味する。これらはどちらもFETのスイッチング特性を向上させ、例えば液晶表示装置においては高階調を実現させることにつながる。例えば液晶表示装置の場合、移動度0.1cm/V・sec以上、オンオフ比10以上が求められる。
【0004】
移動度を向上させるための技術として、ポリチオフェン類などの共役系重合体とカーボンナノチューブ(以下、CNTという)を有する重合体コンポジットを用いる方法(例えば、特許文献1参照)が開示されている。しかしながら、CNTを含む重合体コンポジットから形成される半導体層を用いた場合、移動度は向上するものの、ターンオン電圧、ヒステリシスが高くなるという課題があった。これらは、駆動電圧が高い、駆動安定性が低い、といった問題の原因となるため、ターンオン電圧、ヒステリシスの低減は必須である。ここで課題となるヒステリシスは、半導体層や絶縁層に含まれる不純物によるチャージトラップに起因するものと推定されている。
【0005】
ターンオン電圧やヒステリシスを低減する技術として、有機半導体層に対してゲート絶縁層と反対側にも絶縁層(オーバーコート層)を設ける方法が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法においてもターンオン電圧とヒステリシスの低減は必ずしも十分ではない。一方で、有機半導体FETのターンオン電圧を低減する方法として、ゲート絶縁層に高誘電率無機化合物粒子を分散させる方法がいくつか開示されているが、ヒステリシスへの影響については触れられていない(特許文献3〜4、非特許文献1参照)。例えば、特許文献4については、半導体層の一例にCNTを挙げているものの、やはりヒステリシスへの影響については触れられていない。また、非特許文献1には、CNTを半導体層としたFETのゲート絶縁層にチタン酸バリウムとポリメチルメタクリレートの混合材料を用いているが、これはゲート絶縁層の厚みを厚くすることが目的であり、ヒステリシスの低減効果については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−265534号公報
【特許文献2】特開2009−283924号公報
【特許文献3】特許第3515507号公報
【特許文献4】特開2008−130910号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Applied Physics 108,102811(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、CNTを含有する半導体層を有する電界効果型トランジスタにおいて、高移動度・高オンオフ比を維持し且つ、低ターンオン電圧・低ヒステリシスを達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電界効果型トランジスタは、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブを含有する半導体層、ポリマーならびに3〜14族のいずれかに属する元素および酸素からなる無機酸化物微粒子を含有するゲート絶縁層、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高移動度、高オンオフ比、低ターンオン電圧、低ヒステリシスを高い水準で達成した電界効果型トランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一態様であるFETを示した模式断面図
【図2】本発明の別の態様であるFETを示した模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電界効果型トランジスタについて説明する。
【0013】
本発明の電界効果型トランジスタは、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブ(以下、CNT複合体という)を含有する半導体層と、ポリマーおよび無機酸化物微粒子を含有するゲート絶縁層を有することを特徴とする。半導体層がCNT複合体を含有することにより、高移動度、高オンオフ比を有するFETを得ることができる一方で、ターンオン電圧、ヒステリシスが高いという、CNTを含有する半導体層を有するFETに特有の課題があった。本発明によれば、ポリマーと無機酸化物微粒子を含有するゲート絶縁層を用いることにより、CNT複合体を含有する半導体層を備えるFETに特有の課題を大幅に改善することができる。
【0014】
図1〜図2は、本発明のFETの例を示す模式断面図である。図1に示すFETは、ゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に、ソース電極5およびドレイン電極6が形成され、その上に半導体層4が形成されている。図2に示すFETは、ゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に半導体層4が形成され、その上にソース電極5およびドレイン電極6が形成されている。
【0015】
基板1に用いられる材料としては特に制限はないが、例えば、シリコンウエハー、ガラス、アルミナ焼結体等の無機材料、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン等の有機材料が挙げられる。
【0016】
ゲート電極2、ソース電極5およびドレイン電極6に用いる材料としては特に制限はないが、例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズインジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、あるいは白金、金、銀、銅、鉄、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属やこれらの合金、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体など、ヨウ素などのドーピングなどで導電率を向上させた導電性ポリマー、カーボンナノチューブやグラフェンなどの導電性炭素材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0017】
上記ゲート電極2、ソース電極5およびドレイン電極6の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェットおよび印刷などが挙げられるが、導通を取ることができれば特に制限されない。また電極パターンの形成方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を公知のフォトリソグラフィー法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、あるいは電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
【0018】
ゲート絶縁層3にはポリマーおよび無機酸化物微粒子が含まれる。ゲート絶縁層3の膜厚は、薄すぎるとリーク電流の原因になり、厚すぎると得られる電界効果が不十分となるため、好ましくは50nm〜3μm、より好ましくは100nm〜1μmである。ゲート絶縁層3は単層でも複数層でもよい。ゲート絶縁層3の膜厚は、触針式段差計により測定できる。具体的には基板上の一部からゲート絶縁層を削りとるなどして、基板表面とゲート絶縁層表面の段差を触針式段差計にて測定する。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して形成しても構わない。ゲート絶縁層は、ポリマーと無機酸化物微粒子を含有する溶液または分散液を塗布し、それを乾燥することにより得ることができる。塗布法として、具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、ドロップキャスト法などを好ましく用いることができ、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。アニーリング温度としては、100〜300℃の範囲が好ましく、プラスチック基板上へのゲート絶縁膜の形成という観点から、100〜200℃であることがさらに好ましい。
【0019】
ゲート絶縁層3に用いられるポリマーは、溶媒に可溶性のものが好ましく、その骨格は直鎖状、環状、分岐状の何れも用いられる。また側鎖には架橋性やの官能基や、極性を有する官能基や、ポリマーの種々の特性を制御する官能基が導入されていることが好ましい。これらの特性を制御したポリマーを用いることによって、FET素子の作製工程においては例えば、塗布性、表面の平坦性、耐溶剤性、透明性、他インクの良好な濡れ性などが得られ、さらにはFET素子形成後の耐久性や安定性などに優れた、良好なFET素子を得ることができる。
【0020】
本発明に用いられるポリマーはFETが正常に機能する程度の絶縁性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、ポロシロキサン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール等を用いることができる。また、これらのポリマーに他のポリマーを共重合したもの、混合したものを用いることもできる。これらの何れも好ましく用いることができるが、ポリシロキサン、ポリビニルフェノールがより好ましく用いられる。
【0021】
ゲート絶縁層3に含まれる無機酸化物微粒子としては、3〜14族のいずれかに属する元素および酸素からなる無機酸化物微粒子が用いられる。これにより高性能の電界効果型トランジスタを得ることができる。中でも、式(1)で表される無機酸化物の微粒子を用いることが好ましい。無機酸化物微粒子は1種類を単独で用いても、複数の種類を混合して用いてもよい。
【0022】
MxOy (1)
(式中Mは3〜14族のいずれかに属する無機元素を表し、Oは酸素原子を表す。また、xおよびyはそれぞれ1〜4の整数を表す。)
Mの好ましい例としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズが挙げられる。これら好ましい例に限らず、無機酸化物微粒子を有するゲート絶縁層では同様の効果が期待できる。
【0023】
特に好ましい例として、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、酸化ハフニウム(HfO)、などが挙げられる。市販されている無機酸化物微粒子の例を以下に挙げる。酸化ジルコニウム粒子としては、数平均粒子径9nmの“ナノユース(登録商標)”OZ−S30K−AC、数平均粒子径10nmの“ナノユース”OZ−S30K、数平均粒子径30nmの“ナノユース”OZ−S30M(以上商品名、日産化学工業(株)製)、酸化ジルコニウム粒子((株)高純度化学研究所製)等が挙げられる。酸化ケイ素粒子としては、数平均粒子径12nmのIPA−ST、MIBK−ST、PMA−ST、数平均粒子径45nmのIPA−ST−L、数平均粒子径100nmのIPA−ST−ZL、数平均粒子径15nmのPGM−ST(以上商品名、日産化学工業(株)製)、数平均粒子径12nmの“オスカル(登録商標)”101、数平均粒子径60nmの“オスカル”105、数平均粒子径120nmの“オスカル”106、数平均粒子径5〜80nmの“カタロイド(登録商標)”−S(以上商品名、触媒化成工業(株)製)、数平均粒子径16nmの“クォートロン(登録商標)”PL−2L−PGME、数平均粒子径17nmの“クォートロン”PL−2L−BL、“クォートロン”PL−2L−DAA、数平均粒子径18〜20nmの“クォートロン”PL−2L、GP−2L(以上商品名、扶桑化学工業(株)製)、数平均粒子径100nmのシリカ(SiO2)SG−SO100(商品名、共立マテリアル(株)製)、数平均粒子径5〜50nmの“レオロシール(登録商標)”(商品名、(株)トクヤマ製)等が挙げられる。酸化ケイ素−酸化チタン複合粒子としては“オプトレイク(登録商標)”TR−502、“オプトレイク”TR−503、“オプトレイク”TR−504、“オプトレイク”TR−513、“オプトレイク”TR−520、“オプトレイク”TR−527、“オプトレイク”TR−528、“オプトレイク”TR−529等が挙げられる。酸化チタン粒子としては“オプトレイク”TR−505((以上、商品名、触媒化成工業(株)製)等が挙げられる。また、酸化スズ−酸化ジルコニウム複合粒子(触媒化成工業(株)製)、酸化スズ粒子((株)高純度化学研究所製)などが挙げられる。これらの中でも特に好ましくは酸化ジルコニウム、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)が挙げられる。
【0024】
無機酸化物微粒子の粒径に特に制限はないが、ゲート絶縁層の表面を平滑に保つため、数平均粒子径が100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。なお、下限としては特に制限はないが5nm以上であることが好ましい。無機酸化物微粒子の数平均粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。また、無機酸化物微粒子の形状に特に制限はないが、ゲート絶縁層の表面を平滑に保つためには、低アスペクト比の形状が好ましく、球状であることがより好ましい。ゲート絶縁層3における無機酸化物微粒子の含有量に特に制限はないが、ポリマー100重量部に対して1〜10000重量部であるのが好ましい。ゲート絶縁層の製膜の容易さを考慮すると、10〜1000重量部であるのがより好ましい。さらに100〜300重量部であると、ターンオン電圧とヒステリシスを低減する十分な効果が得られるためより好ましい。
【0025】
ゲート絶縁層を得るために用いられる、ポリマーと無機酸化物微粒子を含有する組成物には溶媒が含まれる。溶媒としては、特に限定はされないが、エチレングリゴールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン等の環状エステル類が挙げられる。中でも1気圧における沸点が110〜200℃の有機溶剤を含有することが好ましい。沸点が110℃以上であれば、ゲート絶縁層塗布時、溶媒の揮発が抑制されて、塗布性が良好となりまた、200℃以下であれば、膜中に残存する溶媒が少なく、耐薬品性や絶縁性に優れたゲート絶縁膜が得られる。さらに好ましくは沸点が130℃〜190℃である。
【0026】
これらの溶媒は、1種類を単独で用いることも2種以上を混合して用いることもできる。溶媒を2種以上用いる場合、大気圧下沸点が110℃を下回る低沸点溶媒あるいは、大気圧下沸点が200℃を越える高沸点溶媒を1種以上含有することも可能である。
【0027】
また、ポリマーと無機酸化物微粒子を含有する組成物には、さらに基板への濡れ性を改善するための界面活性剤やポリマーの硬化を促進する硬化剤・架橋剤が含有されていてもよい。
【0028】
半導体層4には、CNT複合体、またはCNT複合体と有機半導体の混合体が用いられる。
【0029】
CNT複合体に用いられるCNTの長さは少なくともソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いことが好ましい。これよりも長い場合、電極間を短絡させる原因となる。このため、長さが少なくともソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いCNTを用いるか、またはCNTをチャネル長よりも短くする工程を経ることが好ましい。一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがある。長いCNTを含む場合は、チャネル長よりも短くする工程を加えることで、電極間の短絡を確実に防ぐことができる。CNTの平均長さは電極間距離によるが、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下で使用される。また、CNTの直径は特に限定されないが、1nm以上100nm以下、より好ましくは50nm以下である。CNTの長さは、透過型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡を用いて評価できる。CNTの直径は、上記電子顕微鏡のほか、共鳴ラマン散乱によっても評価できる。
【0030】
CNT複合体とは、CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体を付着したものである。共役系重合体が付着することによってCNTが溶媒中に均一に分散し、その結果、基板上でもより均一に分散することができ、高オンオフ比のFETが得られる。また、溶媒中に均一に分散することで、インクジェット法などの塗布法でも安定して使用することができる。CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着した状態とは、CNTの表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのは、それぞれの共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、X線光電子分光(XPS)などの元素分析によって、付着物の存在とCNTに対する付着物の重量比を同定することができる。
【0031】
CNTに共役系重合体を付着させる方法は(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法、(III)CNTをあらかじめ超音波等で予備分散させておき、そこへ共役系重合体を添加し混合する方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTをいれ、この混合系へ超音波を照射して混合する方法などが挙げられる。本発明では、いずれの方法を用いてもよく、いずれかの方法を組み合わせてもよい。
【0032】
上記のCNTを被覆する共役重合体は、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体などが挙げられるが、特に限定されない。上記重合体は単一のモノマーユニットが並んだもののほか、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したものも用いられる。また、グラフト重合したものも用いることができる。上記重合体の中でも本発明においては、CNTへの付着が容易であり、CNT複合体を形成しやすいポリチオフェン系重合体、ポリフルオレン系重合体が好ましく使用される。以下にCNTを被覆する共役重合体の具体的な例を挙げる。ポリチオフェン系重合体としては、ポリ−チオフェン構造の骨格を持つ重合体に側鎖を有するものが好ましい。具体例としては、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルチオフェンなどのポリ−3−アルキルチオフェン(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜12);ポリ−3−メトキシチオフェン、ポリ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシチオフェンなどのポリ−3−アルコキシチオフェン(アルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜12);ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェンなどのポリ−3−アルコキシ−4−アルキルチオフェン(アルコキシ基およびアルキル基の炭素数は好ましくは1〜12);ポリ−3−チオヘキシルチオフェンやポリ−3−チオドデシルチオフェンなどのポリ−3−チオアルキルチオフェン(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜12)が挙げられ、1種もしくは2種以上を用いることができる。中でも、ポリ−3−アルキルチオフェンまたはポリ−3−アルコキシチオフェンが好ましい。前者としては特にポリ−3−ヘキシルチオフェンが好ましい。ポリフルオレン系重合体としては、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−[4,7−ビス(3−デシロキシチエン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール]−5’、5’−ジイル}、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,8−ジイル)}、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−ビチオフェン}}、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。ポリチオフェン系重合体のおよびポリフルオレン系重合体の好ましい分子量は、数平均分子量で800〜100000である。また、上記重合体は必ずしも高分子量である必要はなく、直鎖状共役系からなるオリゴマーであってもよい。
【0033】
CNT複合体と混合して用いられる有機半導体には、半導体性を示す材料であれば分子量にかかわらず用いることができ、キャリア移動度の高い材料が好ましく用いることができる。また、有機溶媒に可溶のものがより好ましく、溶液をガラス基板やプラスチック基板に塗布することで簡便に半導体層を形成することができる。有機半導体の種類は特に限定されないが、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリ(2,5−ビス(2−チエニル)−3,6−ジペンタデシルチエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(4,8−ジヘキシル−2,6−ビス(3−ヘキシルチオフェン−2−イル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)、ポリ(4−オクチル−2−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チアゾール)、ポリ(5,5’−ビス(4−オクチルチアゾール−2−イル)−2,2’−ビチオフェン)などのチオフェンユニットを主鎖中に含む化合物、ポリピロール類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリカルバゾール類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香環を構成単位とするポリヘテロアリール類、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ルブレンなどの縮合多環芳香族化合物、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含ヘテロ原子芳香族化合物、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルに代表される芳香族アミン誘導体、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、銅ポルフィリンなどの金属ポルフィリン類、ジスチリルベンゼン誘導体、アミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミドなどの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、メロシアニン、フェノキサジン、ローダミンなどの有機色素などが例として挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。中でも、チオフェン骨格を有する有機半導体が好ましい。
【0034】
CNT複合体は、溶媒に分散したCNT複合体分散液として使用できる。有機溶媒の具体例としては、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン等の含ハロゲン炭化水素類、デカヒドロナフタレン、デカン等の脂肪族炭化水素類、エチレングリゴールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル等のエステル類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン、テトラヒドロナフタレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン等の環状エステル類、N−メチルピロリジノンなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
またCNT複合体分散液には、さらにゲート絶縁層への濡れ性を改善するための界面活性剤が含有されていてもよい。
【0036】
半導体層4は、CNT複合体分散液を塗布し、それを乾燥することにより得ることができる。塗布法の具体例としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などを好ましく用いることができ、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。アニーリング温度としては、100〜300℃の範囲が好ましく、プラスチック基板上への半導体層の形成という観点からは、100〜200℃であることがさらに好ましい。
【0037】
形成されたFETは、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流をゲート電圧を変化させることによって制御することができる。FETの移動度は、下記の(a)式を用いて算出することができる。
【0038】
μ=(δId/δVg)L・D/(W・ε・ε・Vsd) (a)
ただしIdはソース・ドレイン間の電流、Vsdはソース・ドレイン間の電圧、Vgはゲート電圧、Dは絶縁層の厚み、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、εはゲート絶縁層の比誘電率、εは真空の誘電率(8.85×10−12F/m)である。
【0039】
また、あるマイナスのゲート電圧におけるId(オン電流)の値と、あるプラスのゲート電圧におけるId(オフ電流)の値の比からオンオフ比を求めることができる。
【0040】
ヒステリシスは、Vgを正から負へと印加した際のId=10−8Aにおけるゲート電圧Vgと、Vgを負から正へと印加した際のId=10−8Aにおけるゲート電圧Vgとの差の絶対値|Vg−Vg|から求めることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0042】
実施例1
(1)CNT複合体分散液の作製
共役系重合体であるポリ−3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、レジオレギュラー、数平均分子量(Mn):13000、以下P3HTという)0.10gをクロロホルム5mlの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mlと0.1規定塩酸10mlの混合溶液の中に0.5mlずつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のメンブレンフィルター(PTFE社製:4フッ化エチレン)によって濾別捕集し、メタノールでよくすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
【0043】
単層CNT(CNI社製の単層カーボンナノチューブ、純度95%)1.0mgと、上記P3HT1.0mgを10mlのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX−500)を用いて出力250Wで30分間超音波撹拌した。超音波照射を30分間行った時点で一度照射を停止し、上記P3HTを1.0mg追加し、さらに1分間超音波照射することによって、CNT複合体分散液A(溶媒に対するCNT濃度0.1g/l)を得た。
【0044】
CNT複合体分散液A中で、P3HTがCNTに付着しているかどうかを調べるため、分散液A5mlをメンブレンフィルターを用いてろ過を行い、フィルター上にCNTを捕集した。捕集したCNTを、溶媒が乾かないうちに素早くシリコンウエハー上に転写し、乾燥したCNTを得た。このCNTを、X線光電子分光法(XPS)を用いて元素分析したところP3HTに含まれる硫黄元素が検出された。従って、CNT複合体分散液A中のCNTにはP3HTが付着していることが確認できた。
【0045】
上記CNT複合体分散液Aにo−ジクロロベンゼン(沸点180℃、以下o−DCBという)5mlを加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて、低沸点溶媒であるクロロホルムを留去し、溶媒をo−DCBで置換し、CNT複合体分散液Bを得た。次に分散液Bをメンブレンフィルター(孔径3μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNTを除去した。得られたろ液にo−DCBを加えて希釈し、CNT複合体分散液C(溶媒に対するCNT濃度0.06g/l)とした。
【0046】
(2)絶縁層用ポリシロキサン溶液の合成
メチルトリメトキシシラン61.29g(0.45モル)、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン12.31g(0.05モル)、およびフェニルトリメトキシシラン99.15g(0.5モル)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAという)203.36gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出した。次いでバス温130℃で2.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とPGMEAからなる成分を留出した後、室温まで冷却し、固形分濃度44.7重量%のポリシロキサン溶液Aを得た。
【0047】
(3)ゲート絶縁材溶液の作製
得られたポリシロキサン溶液Aを11.2gはかり取り、酸化ジルコニウム微粒子分散液(“ナノユース”OZ−S30K−AC(日産化学(株)製):酸化ジルコニウム微粒子濃度30.7重量%)48.9gおよびPGMEA39.9gを混合して室温で2時間攪拌して溶解し、ゲート絶縁材溶液B(ポリマー固形分濃度5重量%、酸化ジルコニウム微粒子固形分濃度15重量%)を得た。
【0048】
(4)FETの作製
図1のFETを作製した。ガラス製の基板1(厚み0.7mm)上に、抵抗加熱法により、メタルマスクを介して、クロムを厚み5nm、続いて金を厚み50nmで真空蒸着し、ゲート電極2を形成した。次に上記(2)で作製したゲート絶縁材溶液Bを上記ゲート電極が形成されたガラス基板上にスピンコート塗布(2000rpm×30秒)し、得られたコーティング膜を窒素気流下200℃、1時間加熱処理することによって、膜厚が600nmのゲート絶縁膜を得て、ゲート絶縁層3を形成した。このゲート絶縁層が形成された基板上に、金を厚み50nmになるように真空蒸着した。次に、ポジ型レジスト溶液を滴下し、スピナーを用いて塗布した後、90℃のホットプレートで乾燥し、レジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、露光機を用いて、フォトマスクを通して紫外線照射を行った。続いて、基板をアルカリ水溶液に浸漬し、紫外線照射部を除去し、電極形状にパターン加工されたレジスト膜を得た。得られた基板を金エッチング液(アルドリッチ社製、Gold etchant,standard)中に浸漬し、レジスト膜が除去された部分の金を溶解・除去した。得られた基板をアセトン中に浸漬し、レジストを除去した後、純水で洗浄し、100℃のホットプレートで30分間乾燥した。このようにして、電極の幅(チャネル幅)0.2mm、電極の間隔(チャネル長)20μm、厚み50nmの金ソース・ドレイン電極を得た。
【0049】
次に、電極が形成された基板上に、上述の(1)で調製したCNT複合体分散液Cをインクジェット法を用いて塗布し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃、30分間の熱処理を行い、CNT複合体分散膜をチャネル層とするFETを作製した。この際、インクジェット装置に、簡易吐出実験セットPIJL−1(クラスターテクノロジー(株)製)を用いた。
【0050】
(5)FETの評価
上記FETのゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)−ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定には半導体特性評価システム4200−SCS型(ケースレーインスツルメンツ(株)製)を用い、大気中で測定した。Vg=+30〜−30Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.56cm/V・secであった。また、このときのIdの最大値と最小値の比からオンオフ比を求めたところ1×10であった。Vgを+30から−30Vへ掃引したときのI−Vカーブにおいて、電流Iの値が急激に起ち上がるVgの値をターンオン電圧として読みとったところ+3Vであった。さらに、Id=10−8Aにおける行きと帰りのゲート電圧差の絶対値|Vg−Vg|からヒステリシスを求めたところ、0Vであった。結果は表1に示した。
【0051】
実施例2
酸化ジルコニウム微粒子溶液の代わりに酸化ケイ素微粒子溶液(PMA−ST(日産化学(株)製):酸化ケイ素微粒子濃度30.7重量%)を用いた以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0052】
実施例3
ポリビニルフェノール(アルドリッチ社製:重量平均分子量:11000)25gをPGMEA75gに溶解しポリビニルフェノール溶液Cを作製した。ポリシロキサン溶液Aの代わりにポリビニルフェノール溶液C(固形分濃度25.0重量%)を用い、ゲート絶縁材溶液Bの調製比率をポリビニルフェノール溶液C20.0g、酸化ジルコニウム微粒子分散液48.9g、PGMEA31.1gに変更し、それぞれの固形分濃度をポリビニルフェノール5重量%、酸化ジルコニウム微粒子15重量%とした以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0053】
実施例4
P3HTの代わりにポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−alt−ベンゾチアジアゾール)(アルドリッチ社製、Mn:10000〜20000(以下、F8BTという))を用いた以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。なお、F8BTは精製なしで使用した。
【0054】
実施例5
ゲート絶縁材溶液Bの調製比率をポリシロキサン溶液A22.4g、酸化ジルコニウム微粒子分散液32.6g、PGMEA45.0gに変更し、それぞれの固形分濃度をポリシロキサン10重量%、酸化ジルコニウム微粒子10重量%とした以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0055】
実施例6
酸化ジルコニウム微粒子溶液の代わりに酸化チタン微粒子溶液(“オプトレイク”TR−505(触媒化成工業(株)製):固形分濃度15.0重量%)を用い、ゲート絶縁材溶液Bの調製比率をポリシロキサン溶液A22.4g、酸化ジルコニウム微粒子分散液66.7g、PGMEA10.9gに変更し、それぞれの固形分濃度をポリシロキサン10重量%、酸化チタン微粒子10重量%とした以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0056】
比較例1
ゲート絶縁材溶液Bの調製比率をポリシロキサン溶液A44.8g、PGMEA55.2gに変更し、ポリシロキサンの固形分濃度を20重量%とした以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0057】
比較例2
P3HTの代わりにF8BTを用いた以外は比較例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。また、F8BTは精製なしで使用した。
【0058】
比較例3
ポリシロキサン溶液Aの代わりに実施例3で作製したポリビニルフェノール溶液Cを用い、ゲート絶縁材溶液Bの調製比率をポリビニルフェノール溶液C80.0g、PGMEA20.0gに変更し、ポリビニルフェノールの固形分濃度を20重量%とした以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0059】
比較例4
テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)140g、分散剤“HOA−MPL”(共栄社化学(株)製)20g、無機粒子“T−BTO−030R”(チタン酸バリウム微粒子、戸田工業(株)製、平均粒子径30nm)400gを混合した。次いで、ビーズミル“ウルトラアペックスミルUAM−015”(寿工業(株)製)のベッセル内にジルコニアビーズ((株)ニッカトー製、YTZボール、寸法φ0.05mm)を400g充填し、ローターを回転させながら、上記混合液をベッセル内に送液、循環させて無機粒子の分散を行った。ローターの周速を9.5m/sとして2時間分散し、さらにTHFAを加えて固形分濃度を30.7%に調製し、チタン酸バリウム微粒子分散液Yを得た。
【0060】
酸化ジルコニウム微粒子溶液の代わりにチタン酸バリウム微粒子分散液Yを用いた以外は実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0061】
【表1】

【符号の説明】
【0062】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層、ゲート絶縁層、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を有する電界効果型トランジスタであって、前記半導体層は表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブを含有し、前記ゲート絶縁層はポリマーおよび無機酸化物微粒子を含有し、前記無機酸化物微粒子が3〜14族のいずれかに属する元素および酸素からなる無機酸化物微粒子であることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記無機酸化物微粒子が以下の式(1)で示される無機酸化物を1種以上含むことを特徴とする請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
MxOy (1)
(式中Mは3〜14族に属する元素から選ばれる。Oは酸素原子を表す。また、xおよびyはそれぞれ1〜4の整数を表す。)
【請求項3】
前記式(1)において、Mがチタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズからなる群より選ばれる請求項2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
前記無機酸化物微粒子が酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化ハフニウムのいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電界効果型トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−115162(P2013−115162A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258466(P2011−258466)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】