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電界書込み型磁気記録装置
説明

電界書込み型磁気記録装置

【課題】
書込みヘッドにコイルを使用せず、これにより、抜本的な低消費電力化、書込みの超高速化、記録情報の超高密度化、または低価格化を図った電界書込み型磁気記録装置を提供する。
【解決手段】
電界書込み型磁気記録装置1は、強磁性強誘電性物質層を少なくとも1層含む磁気記録膜が基盤111にの表面に形成されている回転ディスク11と、基盤111に対して電位を持つことで基盤との間に電束を生成する書込み電極1211を持ち電界により(磁界によらずに)情報の書込みを磁気記録膜112に対して行う書込み素子121と、情報の書込み動作ごとに、書込み電極に2つの電位レベルのうちの1つの電位を選択して与える書込み回路13とを備え、書込み回路13が書込み電極1211に与えた電位に応じて生成された電束により、強磁性強誘電性物質層を特定の方向に磁化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
強磁性強誘電性物質層を少なくとも1層含む磁気記録膜が基盤の表面に形成されている回転ディスクを使用した磁気記録技術に関し、書込み素子により、前記基盤との間に電束を生成し、当該電束により、書込み動作ごとに前記強磁性強誘電性物質層の電束が照射された部分を特定の方向に磁化する電界書込み型磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、磁気記録装置であるハードディスク装置では、磁束生成コイルから磁束を照射する。そして、基盤の表面に強磁性体が成膜された回転ディスクに、磁束照射部位をNまたはSの極性で磁化することで、情報の書込みを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−034087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のハードディスク装置は、磁束による書込みを行っているため、情報書込み時の、書込みヘッドのコイルの抵抗等による消費電力が非常に大きい。
また、書込みには、コイルに流れる電流を高速に制御しなくてはならない。高密度記録を行おうとすると、コイルコアの磁化の向きを超高速に変更する必要があるが、反転には自ずと限界がある。
コイルから発生する最大磁束密度は、コイルコアの材質の飽和磁束密度で決まる。このため、もっとも大きな磁束密度を発生させるFe−Coを使用しても、最大磁束密度は、2.4T(テスラ)程度である。よって、通常のコイルを使用した場合には、超高密度記録に対応し得る、保磁力が極めて高い磁気記録膜を、NまたはSの極性で磁化することができない(書込みを行うことができない)。
また、従来のハードディスク装置の書込みヘッドは、微細なコイルやコイルコア等を含む複雑な構造をしているし、これが製造コストが高くなる原因となっている。また、磁気記録媒体は大量の貴金属元素を含むため、これも製造コストが高くなる原因となっている。
なお、現行の磁気記録媒体は厚い多層構造であるため、製造装置の規模が巨大化しているといった問題もある。
また、従来のハードディスク装置の磁気記録媒体に使用される貴金属元素の安定供給が、現状では保証されていない。
したがって、従来のハードディスク装置では、抜本的な低消費電力化、書込みの超高速化、記録情報の超高密度化、低価格化を図ることが容易ではない。また、従来のハードディスク装置では、磁気記録媒体の製造装置の巨大化は避けられないし、磁気記録媒体の安定供給を図ることにも限界がある。
【0005】
なお、特許文献1に記載の発明では、複数層からなる磁気記録材料層の一層にマルチフェロイック材料を使用し、データの書込み時に電界を、磁気記録材料に与える。これにより、当該磁気記録材料内の面外磁気異方性を低下させ、磁束を与えた際に容易に磁化反転させることができるため、磁気データ記憶装置の容量を増加させることができる。
特許文献1に記載の発明では、本発明と同様、マルチフェロイック材料を使用しているが、特許文献1に記載の発明は、データの書込みを磁気コイルで行うので、本発明とは直接の関係が無い。
【0006】
本発明の目的は、書込み素子により、基盤との間に電束を生成し、当該電束により、書込み動作ごとに前記基盤に形成した強磁性強誘電性物質層を特定の方向に磁化する電界書込み型磁気記録装置を提供することである。
本発明の他の目的は、磁気記録装置の、抜本的な低消費電力化、書込みの超高速化、記録情報の超高密度化、低価格化を図ること、および、磁気記録媒体の製造装置の巨大化を抑制し、磁気記録媒体の安定供給を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電界書込み型磁気記録装置は、以下を要旨とする。
〔1〕
強磁性強誘電性物質層を少なくとも1層含む磁気記録膜が基盤の表面に形成されている回転ディスクと、
前記基盤に対して電位を持つことで前記基盤との間に電束を生成する書込み電極を持ち電界により(磁界によらずに)情報の書込みを前記磁気記録膜に対して行う書込み素子と、
前記情報の書込み動作ごとに、前記書込み電極に複数の電位レベルのうちの1つの電位を選択して与える書込み回路と、
を備え、
前記書込み回路が前記書込み電極に与えた電位に応じて生成された前記電束により、前記強磁性強誘電性物質層を特定の方向に磁化する、
ことを特徴とする電界書込み型磁気記録装置。
【0008】
書込み回路は、2つの電位レベルのうちから1つの電位を選択して書込み電極に与えるように構成できる。この場合、〔6〕に明示するように、書込み回路は、書込み動作ごとに、2つの電位レベル(書込み電位レベル)、V1,V2を書込み電極に与えることができる。典型的には、V2>0>V1であるが、V2>V1>0または0>V2>V1であってもよい。
また、書込み回路は、3つ以上の電位レベルのうちから1つの電位を選択して書込み電極に与えることができる。たとえば、書込み回路は、4つの電位レベル(書込み電位レベル)、V+2,V+1,V-1,V-2(V+2>V+1>0>V-1>V-2)を書込み電極に与えることができる。電位レベルがV+2のときはプラス方向(+方向)に大きな磁化MM+で磁化し、電位レベルがV+1のときはプラス方向(+方向)に小さな磁化Mm+で磁化する。また、電位レベルがV-1のときはマイナス方向(−方向)に小さな磁化Mm-で磁化し、電位レベルがV-2のときはマイナス方向(−方向)に大きな磁化MM-で磁化することで、情報の書込みを行う。
なお、この例では、電位を生成する電界の向きと磁化の向きが平行(同方向)の場合を説明したが、電位を生成する電界の向きと磁化の向きが反平行(逆方向)となる場合もある。
強磁性強誘電性物質層は、いわゆるマルチフェロイック層である。強磁性強誘電性物質層が電束により磁化される「特定の方向」とは、典型的には、基盤の表面に垂直な二方向の何れかであるが、当該表面に平行な方向または傾斜した方向であってもよい。すなわち、磁化が基盤の表面に平行であることもあるし、平行な成分を持つこともある。本発明の電界書込み型磁気記録装置は、〔9〕において説明するように、磁気記録膜の磁化を読み取る読取り素子を備えることができ、この読取り素子が磁気記録膜の「特定の方向」の磁化を読み取ることができる。
強磁性強誘電性物質層としては、電界をかけることにより磁化が変化する、強磁性強誘電性の物質であれば、どのような物質を用いてもよい。
たとえば、強磁性強誘電性物質層として、単一の層で、電界により磁化が変化する強磁性強誘電性物質を用いることもできるし、強磁性材料の層と強誘電性の層との積層体を用いることもできる。ただし、強磁性材料の層と強誘電性の層との積層体を強磁性強誘電性物質層として用いる場合には、記録速度が著しく低下することがある。このようなことから、単一の層で、電界により磁化が変化する強磁性強誘電性の物質が好ましく使用される。
強磁性強誘電性物質層の構成材料として、たとえば、下記の一般式(1)で示される強磁性強誘電性物質を用いることができる。
(Ax1-xl(My1-ymn ・・・(1)
(1)式中、A及びBは、それぞれ、Bi,La,Tb,Pb,Y,Cr,Co,Ba,Lu,YbまたはEuのいずれかの元素を表す。
MおよびNは、それぞれ、Fe,Mn,Ni,Ti,Cr,CoまたはVのいずれかの元素を表す。
xは0〜1の実数を表し、yは0〜1の実数を表す。
l(アルファベットのエル)は1〜3の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、nは3〜6の整数を表す。
具体的には、電界により磁化が変化する既知の強磁性強誘電性材料として、BiMnO3,TbMnO3,TbMn25,YMnO3,EuTiO3,CoCr24,Cr23,BiMn0.5Ni0.53,BiFe0.5Cr0.53,La0.1Bi0.9MnO3,La1-xBixNi0.5Mn0.53,Bi1-xBaxFeO3等を用いることができる。
【0009】
〔2〕
前記基盤を構成する基体が導電体からなること、
または、
前記基盤を構成する基体が絶縁体または半導体からなり前記基体の前記磁気記録膜との間に導電層が形成されていること、
を特徴とする〔1〕に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【0010】
前記基体として使用される導電体は、たとえばアルミニウム等の金属である。
また、前記基体として使用される絶縁体は、たとえばガラスであり、前記基体として使用される半導体は、たとえばシリコンである。
【0011】
〔3〕
前記磁気記録膜は、前記電束の拡散を抑制するための導電性の電束拡散抑制層を少なくとも1層含むことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【0012】
回転ディスクの表面には、通常、保護膜(たとえば、ダイヤモンドライクカーボンからなる)が形成されており、磁気記録膜は前記保護膜により保護される。
ただし、本発明では、保護膜が前記電束拡散抑制層としての機能を奏することは妨げない。
【0013】
〔4〕
前記磁気記録膜は、導電性または絶縁性の強磁性層を少なくとも1層含むことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【0014】
強磁性層は、強磁性強誘電性物質層からの磁化情報の読取りに際しての補助として使用されるし、強磁性強誘電性物質層に記録した磁気情報が消失することを防止することができる。
強磁性層が、導電性であるときは、当該強磁性層は電束拡散抑制層としても機能することもできる。逆に、電束拡散抑制層が強磁性層からなるときは、当該電束拡散抑制層は強磁性層としても機能する(強磁性強誘電性物質層からの磁化情報の読取りに際しての補助として使用され、強磁性強誘電性物質層に記録した磁気情報が消失することを防止する)ことができる。
【0015】
〔5〕
前記強磁性強誘電性物質層が1層であり、前記電束の拡散を抑制するための導電性の電束拡散抑制層と、導電性または絶縁性の強磁性層とをそれぞれ少なくとも1層含むこと、
または、
前記強磁性強誘電性物質層を複数層含むとともに、
前記電束の拡散を抑制するための導電性の電束拡散抑制層および導電性または絶縁性の強磁性層をそれぞれ少なくとも1層含むこと、
を特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【0016】
〔6〕
前記書込み回路は、前記書込み動作ごとに、正負の2つの電位レベルのうち何れかの電位を前記書込み素子に与える、
ことを特徴とする〔1〕から〔5〕の何れか1項に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【0017】
〔7〕
前記書込み素子は、複数の書込み電極を備え、
前記書込み回路は、前記書込み動作ごとに、前記複数の書込み電極のそれぞれに、複数の電位レベルのうちの1つの電位を前記書込み素子に与える、
ことを特徴とする〔1〕から〔5〕の何れかに記載の電界書込み型磁気記録装置。
【0018】
〔8〕
前記書込み素子が、前記回転ディスクの表面上を前記回転ディスクの径方向に移動できるように構成されていることを特徴とする〔1〕から〔5〕の何れか1項に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【0019】
〔9〕
さらに、前記磁気記録膜の磁化状態を読み取る読取り素子を備えたことを特徴とする〔1〕から〔8〕の何れかに記載の電界書込み型磁気記録装置。
【0020】
「磁気記録膜の磁化状態」は、典型的には、「磁気記録膜の磁化方向」または/および「磁気記録膜の磁化の大きさ」である。
読取り素子は、磁気記録膜に保持された磁化状態を情報として読み取ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、実質上、電界による書込みを行っている。これにより、情報書込み時の電力消費は極めて小さくなる。
また、書込みのための素子にはコイルがないので(すなわちインダクタンスがなく構成が簡単なので)、超高速書込み、記録情報の超高密度化が可能となる。
さらに、本発明では、記録媒体の積層数を少なくでき、トータル膜厚を薄くできるので、記録媒体製造装置の規模を半分程度に縮減できる。しかも、記録媒体には、貴金属元素をほとんど使用しないので、記録媒体が低価格で安定して提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電界書込み型磁気記録装置を示す説明図であり、(A)は平面説明図、(B)は側面説明図である。
【図2】本発明の電界書込み型磁気記録装置の特徴を明示する説明図であり、(A)はアームの先端を示す正面模式図、(B)は(A)の矢視B−B′方向の断面図(書込み電極を示す図)、(C)は(A)の矢視C−C′方向の断面図(読取り素子を示す図)である。
【図3】(A)は複数の書込み電極を書込み素子に隣接させて形成した例を示す図、(B)は1つの書込み電極を突出させないように形成した場合の例を示す図、(C)は同じく複数の書込み電極を突出させないように形成した場合を例示する図である。
【図4】磁気記録膜が強磁性強誘電性物質層からなる本発明の電界書込み型磁気記録装置の実施形態を示す図であり、(A)は基盤を構成する基体が導電体である場合を、(B)は基盤を構成する基体が絶縁体である場合を示している。
【図5】磁気記録膜が強磁性強誘電性物質層と電束拡散抑制層とからなる本発明の電界書込み型磁気記録装置の実施形態を示す図であり、(C)は基盤を構成する基体が導電体である場合を、(D)は基盤を構成する基体が絶縁体である場合を示している。
【図6】磁気記録膜が強磁性強誘電性物質層と絶縁性強磁性層とからなる本発明の電界書込み型磁気記録装置の実施形態を示す図であり、(E)は基盤を構成する基体が導電体である場合を、(F)は基盤を構成する基体が絶縁体である場合を示している。
【図7】磁気記録膜が強磁性強誘電性物質層と導電性強磁性層とからなる本発明の電界書込み型磁気記録装置の実施形態を示す図であり、(G)は基盤を構成する基体が導電体である場合を、(H)は基盤を構成する基体が絶縁体である場合を示している。
【図8】磁気記録膜が強磁性強誘電性物質層と絶縁性強磁性層と導電性強磁性層とからなる本発明の電界書込み型磁気記録装置の実施形態を示す図であり、(I)は基盤を構成する基体が導電体である場合を、(J)は基盤を構成する基体が絶縁体である場合を示している。
【図9】磁気記録膜が2つの強磁性強誘電性物質層と2つの導電性強磁性層とからなる本発明の電界書込み型磁気記録装置の実施形態を示す図であり、(K)は基盤を構成する基体が導電体である場合を、(L)は基盤を構成する基体が絶縁体である場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明の電界書込み型磁気記録装置を示す説明図であり、(A)は平面説明図、(B)は側面説明図である。
実際の電界書込み型磁気記録装置は、両面に磁性膜が成膜されたディスクを間隔を空けて数枚配置される。そして、各ディスクの両面に、先端に書込み素子および読取り素子が搭載されたアームが配置される。
図1の電界書込み型磁気記録装置1は、説明のために簡略化して示してあり、回転ディスクは一枚からなり、かつ回転ディスクの片面のみに磁気記録膜が形成されている。
電界書込み型磁気記録装置1は、回転ディスク11と、先端に書込み素子121および読取り素子122(これらは、図1(A)では図示せず)が搭載されたアーム1201と、書込み用の信号を書込み素子121に与える書込み回路13(図1(B)では図示せず)と、回転ディスク11に書き込まれた情報を読取り素子122を介して読み取る読取り回路14(図1(B)では図示せず)とを備えている。
図1において、回転ディスク11の表面には後述する磁気記録膜(図4〜図9の符号112参照)が形成されている。
アーム1201は、アクチュエータ1202により回動操作される。これにより、書込み素子121および読取り素子122は、回転ディスク11の表面上を回転ディスク11の径方向に移動できる。
アクチュエータ1202の先端に設けられた書込み素子121および読取り素子122の構成は後述する(図2参照)。
書込み回路13は書込み素子121を駆動し、読取り回路14は読取り素子122を駆動する。
【0024】
図1(A),(B)の電界書込み型磁気記録装置1の技術的特徴は、図2(A),(B)および(C)に明示されている。図2(A)はアーム1201の先端を示す正面模式図であり、図2(B)は図2(A)の矢視B−B′方向の断面図、図2(C)は図2(A)の矢視C−C′方向の断面図である。
図1の書込み回路13は、書込み素子121に書込み信号を送る。図2(A)に示す書込み素子121の書込み電極(図4〜図9の符号1211)には、正または負の極性の電位が生じ、回転ディスク11の表面の磁気記録膜に磁気情報(典型的にはNまたはSのビット情報)を書き込まれる。
図2(A)に示す読取り素子122の読取り部1221は、回転ディスク11の表面の磁気記録膜に書き込まれている磁気情報(典型的にはNまたはSのビット情報)を読み取り、図1の読取り回路14に送出する。
【0025】
従来の、電界書込み型磁気記録装置では、書込みヘッドは、コイルおよびコイルコアからなる。したがって、一つの書込みヘッドに、コイルおよびコイルコアの組を、複数、隣接させて設けることは不可能であった。
しかし、電界書込み型磁気記録装置1の書込み素子121は構造が単純なので、図3(A)に示すように、書込み素子121に複数の書込み電極1211を隣接させることが可能である。
また、図3(B),(C)に示すように、書込み素子121に形成される書込み電極1211を突出させないように構成することもできる。図3(B)は書込み電極が1つの場合を、図3(C)は書込み電極が複数の場合を例示している。
【0026】
以下、電界書込み型磁気記録装置1の構成(主として書込み動作にかかる構成)を詳細に説明する。なお、以下の説明でも、基盤111、磁気記録膜112、書込み素子121等を模式的に示してあり、これらの図面上の形状、サイズ等は実際のものを反映してはいない。また、便宜上、書込み電極1211が基盤111に対して正電位である場合を示す。
さらに、実際の磁気記録膜112の表面には、ダイヤモンドライクカーボン等の保護膜が形成されるが、以下の説明では保護層の説明は省略する。
【0027】
図4は、磁気記録膜112が強磁性強誘電性物質層からなる本発明の電界書込み型磁気記録装置1の実施形態を示す図である。図4(A)は基盤111を構成する基体が導電体である場合を示している。図4(B)は基盤111を構成する基体が絶縁体である場合を示している。
なお、図4および図5〜8では、説明をわかりやすくするために、書込まれた分極方向に対する記録磁化の向きを同方向で示してある。
図4(A)の電界書込み型磁気記録装置1Aでは、回転ディスク11の基盤111は、アルミニウム等の導電体からなる基体1111からなる。基盤111の表面には、磁気記録膜112が形成されている。磁気記録膜112は、強磁性強誘電性物質層1121からなる。
強磁性強誘電性物質層1121としては、電界をかけることにより磁化が変化する、強磁性強誘電性の物質であれば、どのような物質を用いてもよい。
たとえば、強磁性強誘電性物質層1121として、単一の層で、電界により磁化が変化する強磁性強誘電性物質を用いることもできるし、強磁性材料の層と強誘電性の層との積層体を用いることもできる。本実施形態では、強磁性強誘電性物質層1121として、(111)配向の(Bi1-xBax)(Fe1-yMny)O3を使用している。
後述するように(図9参照)、磁気記録膜112は、複数の強磁性強誘電性物質層1121を複数含むことができる。
【0028】
書込み素子121は書込み電極1211を持ち、書込み電極1211は基盤111に対して電位を持つことで基盤111との間に電束Φを生成することができる。
書込み回路13は、情報の書込み動作ごとに、書込み電極1211に正電位および負電位の2つの電位レベルのうちの何れかの電位を与えることができる。
書込み回路13が書込み電極1211に与えた電位に応じて生成された電束Φにより、強磁性強誘電性物質層1121を特定の方向に磁化する。
なお、強磁性強誘電性物質層1121の電束Φが通る領域には当該電束Φの向きに応じた向きに分極Pが起こる。この分極Pに伴い前記領域は当該電束Φの向きに応じた向きに磁化される(磁化M)。
なお、分極Pを白抜き矢印で示し、磁化Mを黒の塗潰し矢印で示す。
上記の磁化Mの状態は、強磁性強誘電性物質層1121に記憶されるので、図2(A),(C)に示した読取り素子122により(読取り部1221により)により読み取ることができる。
【0029】
この磁化Mの方向は、通常は、電束Φの向き(Φは正負の方向を持つ)と同じであるが、基盤111の表面に垂直な方向(法線方向または法線方向とは逆の方向)に対してゼロ以外の角度を持つ(磁化が、基盤111の表面の面内方向に向くか当該面内方向の成分を持つ)こともある。
【0030】
なお、書込み回路13は、4つの電位レベル(書込み電位レベル)、V+2,V+1,V-1,V-2(V+2>V+1>0>V-1>V-2)を書込み電極1211に与えることができる。電位レベルがV+2のときはプラス方向(+方向)に大きな磁化MM+で磁化し、電位レベルがV+1のときはプラス方向(+方向)に小さな磁化Mm+で磁化する。また、電位レベルがV-1のときはマイナス方向(−方向)に小さな磁化Mm-で磁化し、電位レベルがV-2のときはマイナス方向(−方向)に大きな磁化MM-で磁化することで、情報の書込みを行う。なお、電位を生成する電界の向きと磁化の向きが平行(同方向)の場合を説明したが、電位を生成する電界の向きと磁化の向きが反平行(逆方向)となる場合もある。
【0031】
図4(A)の電界書込み型磁気記録装置1Aでは、基盤111の基体1111は導電体としたが、図4(B)の電界書込み型磁気記録装置1Bでは、基盤111の基体1112を絶縁体としてある。この場合には、絶縁体からなる基体1112と磁気記録膜112との間に導電層1113が形成される。基体1112として使用される絶縁体として、たとえばガラス、セラミック、プラスチック等が使用できる。なお、絶縁体に代えてシリコン等の半導体を使用することもできる。
【0032】
図5(C)の電界書込み型磁気記録装置1Cでは、磁気記録膜112は、強磁性強誘電性物質層1121と、電束拡散抑制層1122を含む。すなわち、磁気記録膜112の表面側には電束拡散抑制層1122が形成されている。電束拡散抑制層1122は導電性である。磁気記録膜112の表面側に導電性の層を形成することで、書込み電極1211と磁気記録膜112との間の電束の広がりが抑制される(書込み電極1211と磁気記録膜112との間の電束を集束させる)。これにより、書込み情報の書込み密度を高くすることができる。
【0033】
図5(C)の電界書込み型磁気記録装置1Cでは、基盤111の基体1111は導電体としたが、図5(D)の電界書込み型磁気記録装置1Dでは、基盤111の基体1112を絶縁体としてある。この場合には、絶縁体からなる基体1112と磁気記録膜112との間に導電層1113が形成される。
【0034】
図6(E)の電界書込み型磁気記録装置1Eでは、磁気記録膜112は、強磁性強誘電性物質層1121と、絶縁性強磁性層1123を含む。すなわち、磁気記録膜112の基盤111側には絶縁性強磁性層1123が形成されている。絶縁性強磁性層1123は、図示するように、強磁性強誘電性物質層1121に接触して形成することが好ましい。書込み電極1211により強磁性強誘電性物質層1121が磁化されると、これに伴い絶縁性強磁性層1123も磁化される。絶縁性強磁性層1123の存在により、磁気記録膜112に記録された磁化方向が安定し、かつ読取り素子122(図2(A),(C)参照)による、磁気記録膜112に記録された磁化の読取り精度も格段に向上する。
なお、絶縁性強磁性層1123は、磁気記録膜112の表面側に形成することもできる。
【0035】
図6(E)の電界書込み型磁気記録装置1Eでは、基盤111の基体1111は導電体としたが、図6(F)の電界書込み型磁気記録装置1Fでは、基盤111の基体1112を絶縁体としてある。この場合には、絶縁体からなる基体1112と磁気記録膜112との間に導電層1113が形成される。なお、この場合にも、絶縁性強磁性層1123は、磁気記録膜112の表面側に形成することもできる。
【0036】
図7(G)の電界書込み型磁気記録装置1Gでは、磁気記録膜112は、強磁性強誘電性物質層1121と、導電性強磁性層1124を含む。すなわち、磁気記録膜112の表面側には導電性強磁性層1124が形成されている。導電性強磁性層1124は、図示するように強磁性強誘電性物質層1121に接触して形成することが好ましい。書込み電極1211により強磁性強誘電性物質層1121が磁化されると、これに伴い導電性強磁性層1124も磁化される。導電性強磁性層1124の存在により、磁気記録膜112に記録された磁化方向が安定し、かつ読取り素子122(図2(A),(C)参照)による、磁気記録膜112に記録された磁化の読取り精度も格段に向上する。
これに加えて、図7(G)の電界書込み型磁気記録装置1Gでは、磁気記録膜112の表面側が導電性である(表面側に導電性強磁性層1124が形成されている)。したがって、図5(C)の電界書込み型磁気記録装置1Cと同様、書込み電極1211と磁気記録膜112との間の電束の広がりが抑制され、これにより、書込み情報の書込み密度を高くすることができる。
なお、図7(G)の電界書込み型磁気記録装置1Gでは、導電性強磁性層1124は、磁気記録膜112の基盤111側に形成することを妨げるものではない。
【0037】
図7(G)の電界書込み型磁気記録装置1Gでは、基盤111の基体1111は導電体としたが、図7(H)の電界書込み型磁気記録装置1Hでは、基盤111の基体1112を絶縁体としてある。この場合には、絶縁体からなる基体1112と磁気記録膜112との間に導電層1113が形成される。
図7(H)の電界書込み型磁気記録装置1Hでは、導電層1113を磁性材により形成したが、非磁性材により形成することを妨げるものではない。
【0038】
図8(I)の電界書込み型磁気記録装置1Iでは、磁気記録膜112は、強磁性強誘電性物質層1121と、絶縁性強磁性層1123と、導電性強磁性層1124を含む。すなわち、磁気記録膜112の基盤111側には絶縁性強磁性層1123が形成され、表面側には導電性強磁性層1124が形成されている。
導電性強磁性層1124は、書込み電極1211と磁気記録膜112との間の電束の広がりを抑制する(書込み電極1211と磁気記録膜112との間の電束を集束させる)ことに役立つし、磁気記録膜112に記録された磁化方向が安定し、かつ読取り素子122(図2(A),(C)参照)による、磁気記録膜112に記録された磁化の読取り精度も格段に向上することができる。
なお、図8(I)の電界書込み型磁気記録装置1Iでは、絶縁性強磁性層1123に代えて、導電性強磁性層を用いる妨げるものではない。
【0039】
図8(I)の電界書込み型磁気記録装置1Iでは、基盤111の基体1111は導電体としたが、図8(J)の電界書込み型磁気記録装置1Jでは、基盤111の基体1112を絶縁体としてある。この場合には、絶縁体からなる基体1112と磁気記録膜112との間に導電層1113が形成される。
【0040】
図9(K)の電界書込み型磁気記録装置1Kでは、磁気記録膜112は、2つの強磁性強誘電性物質層1121と、2つの導電性強磁性層1124を含む。すなわち、磁気記録膜112の表面側には第1の導電性強磁性層1124が形成され、その下面に第1の強磁性強誘電性物質層1121が形成され、さらにその下面に第2の導電性強磁性層1124が形成され、その下面に第2の強磁性強誘電性物質層1121が形成されている。
導電性強磁性層1124は、書込み電極1211と磁気記録膜112との間の電束の広がりを抑制する(書込み電極1211と磁気記録膜112との間の電束を集束させる)ことに役立つし、磁気記録膜112に磁化方向が安定し、かつ読取り素子122(図2(A),(C)参照)による、磁気記録膜112に記録された磁化の読取り精度も格段に向上する。
【0041】
図9(K)の電界書込み型磁気記録装置1Kでは、基盤111の基体1111は導電体としたが、図9(L)の電界書込み型磁気記録装置1Lでは、基盤111の基体1112を絶縁体としてある。この場合には、絶縁体からなる基体1112と磁気記録膜112との間に導電層1113が形成される。
【符号の説明】
【0042】
1,1A〜1L 電界書込み型磁気記録装置
11 回転ディスク
13 書込み回路
14 読取り回路
111 基盤
112 磁気記録膜
121 書込み素子
122 読取り素子
1111,1112 基体
1113 導電層
1121 強磁性強誘電性物質層
1122 電束拡散抑制層
1123 絶縁性強磁性層
1124 導電性強磁性層
1201 アーム
1202 アクチュエータ
1211 書込み電極
1221 読取り部
M 磁化
P 分極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性強誘電性物質層を少なくとも1層含む磁気記録膜が基盤の表面に形成されている回転ディスクと、
前記基盤に対して電位を持つことで前記基盤との間に電束を生成する書込み電極を持ち電界により情報の書込みを前記磁気記録膜に対して行う書込み素子と、
前記情報の書込み動作ごとに、前記書込み電極に複数の電位レベルのうちの1つの電位を選択して与える書込み回路と、
を備え、
前記書込み回路が前記書込み電極に与えた電位に応じて生成された前記電束により、前記強磁性強誘電性物質層を特定の方向に磁化する、
ことを特徴とする電界書込み型磁気記録装置。
【請求項2】
前記基盤を構成する基体が導電体からなること、
または、
前記基盤を構成する基体が絶縁体または半導体からなり前記基体の前記磁気記録膜との間に導電層が形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【請求項3】
前記磁気記録膜は、前記電束の拡散を抑制するための導電性の電束拡散抑制層を少なくとも1層含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【請求項4】
前記磁気記録膜は、導電性または絶縁性の強磁性層を少なくとも1層含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【請求項5】
前記強磁性強誘電性物質層が1層であり、前記電束の拡散を抑制するための導電性の電束拡散抑制層と、導電性または絶縁性の強磁性層とをそれぞれ少なくとも1層含むこと、
または、
前記強磁性強誘電性物質層を複数層含むとともに、
前記電束の拡散を抑制するための導電性の電束拡散抑制層および導電性または絶縁性の強磁性層をそれぞれ少なくとも1層含むこと、
を特徴とする請求項1または2に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【請求項6】
前記書込み回路は、前記書込み動作ごとに、正負の2つの電位レベルのうち何れかの電位を前記書込み素子に与える、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【請求項7】
前記書込み素子は、複数の書込み電極を備え、
前記書込み回路は、前記書込み動作ごとに、前記複数の書込み電極のそれぞれに、複数の電位レベルのうちの1つの電位を前記書込み素子に与える、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【請求項8】
前記書込み素子が、前記回転ディスクの表面上を前記回転ディスクの径方向に移動できるように構成されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電界書込み型磁気記録装置。
【請求項9】
さらに、前記磁気記録膜の磁化状態を読み取る読取り素子を備えたことを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の電界書込み型磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−109798(P2013−109798A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253356(P2011−253356)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】