説明

電界発光灯及びその製造方法

【課題】液晶のバックライトや携帯電話のキー部照明に好適な機械的強度に優れた超薄型の電界発光灯及びその製造方法を提供する。
【解決手段】微粘着フィルム4に薄膜透明フィルム5を貼り付けた二層構造の基材フィルム6を用い、その上に透明電極7、発光層8、反射絶縁層9、裏面電極10、保護層11を順次印刷形成し、乾燥固化後、微粘着フィルム4を薄膜透明フィルム5から剥離除去することにより超薄型の電界発光灯1を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電界発光灯及びその製造方法に関し、特に薄膜の基材フィルムを使用した超薄型の電界発光灯及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超薄型の電界発光灯は、基材フィルムのない印刷層のみに形成される電界発光灯が、例えば特開2004−55440号公報及び特開2004−207015号公報に開示されている。
【0003】
図3(a)、(b)は、従来の電界発光灯40の構成を示す要部断面図である。従来の電界発光灯40は離型処理を施した離型基材41の上面に、透明電極層42 、発光層43 、反射絶縁層44 、裏面電極層45を積層して順次形成し、最後に離型基材41を透明電極層42から剥離して電界発光灯40を製造している。また、図4(a)、(b)に示す他の従来の電界発光灯50のように、離型処理を施した離型基材51の上面に、透明絶縁層52 、透明電極層53 、発光層54 、反射絶縁層55 、裏面電極層56を積層して順次形成し、最後に離型基材51を透明絶縁層52から剥離して電界発光灯50を製造している。
【特許文献1】特開2004−55440号公報
【特許文献2】特開2004−207015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の電界発光灯40、50には次のような問題があった。
【0005】
基材フィルムがなく、印刷層のみで形成されているので引張り、引き裂き、押し圧という機械的な強度に対して弱いという問題があった。また、シリコン等の離型処理を施した離型基材41、51の上に直接印刷するので樹脂の種類によっては印刷性が悪くなる。そのため印刷時にはじきが発生しやすく、乾燥時の熱収縮によって製造課程で部分的に印刷層と離型基材41、51が剥がれるという問題があった。また、薄膜の透明フィルムをそのまま基材として利用することにより超薄型の電界発光灯を製造することも考えられるが、基材フィルムが薄いと例えばスクリーン印刷する際に、印刷装置の吸着痕が印刷面に残る、印刷後の取り扱いが困難である、加工性が悪い等の問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するために考えられたもので、液晶のバックライトや携帯電話のキー部照明に好適な強度的にも優れた超薄型の電界発光灯及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の電界発光灯は、透明電極と裏面電極の間に発光層と反射絶縁層が形成されてなる電界発光灯において、前記透明電極を支持する基材が厚さ10〜35μmの薄膜透明フィルムからなることを特徴とする。この構成によれば、基材がフィルムでできているため機械的強度や絶縁性に優れた超薄型の電界発光灯を提供することができる。
【0008】
また、請求項2記載の電界発光灯は、請求項1記載の電界発光灯において、前記透明電極が、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛及び導電性高分子の少なくとも一種類以上を含む透明導電性材料からなることを特徴とする。この構成によれば、透明性及び導電性に優れた透明電極を容易に得ることができる。
【0009】
また、請求項3記載の電界発光灯は、請求項2記載の電界発光灯において、前記透明電極が、印刷、蒸着及びコーティングのいずれかにより形成したことを特徴とする。この構成によれば、透明性及び導電性に優れた透明電極を生産性よく容易に得ることができる。
【0010】
また、請求項4の電界発光灯の製造方法は、厚さ50〜188μmの透明フィルムの上に微粘着層を形成した微粘着フィルムに、厚さ10〜35μmの薄膜透明フィルムを貼り付けてなる二層構造の基材フィルム上に、透明電極、発光層、反射絶縁層、裏面電極、保護層を順次印刷形成し、乾燥固化後、前記微粘着フィルムを前記薄膜透明フィルムから剥離除去することを特徴とする。この製造方法によれば、製造時点での基材フィルムは十分厚いため、印刷時あるいは取り扱い時にシワや折れが発生することもなく、電界発光灯形成後、微粘着フィルムを薄膜透明フィルムから剥がすことができるため、容易に超薄型の電界発光灯を製造することができる。
【0011】
また、請求項5の電界発光灯の製造方法は、厚さ50〜188μmの透明フィルムの上に微粘着層を形成した微粘着フィルムに、厚さ10〜35μmの薄膜透明フィルムに透明電極を形成した薄膜透明導電フィルムを貼り付けてなる二層構造の基材フィルム上に、発光層、反射絶縁層、裏面電極、保護層を順次印刷形成し、乾燥固化後、前記微粘着フィルムを前記薄膜透明導電フィルムから剥離除去することを特徴とする。この製造方法によれば、超薄型の電界発光灯を容易に製造できるとともに、印刷層を一層削減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電界発光灯によれば、基材フィルムに微粘着フィルムと薄膜透明フィルムの二層構造品を用いているため、製造時に取り扱いで不具合を引き起こすことがなく、製造後、容易に微粘着フィルムを薄膜透明フィルムから剥離できる。これにより、薄膜透明フィルムを基材とした機械的な強度に優れた携帯電話のキー部照明に好適な超薄型の電界発光灯を容易に製造することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の電界発光灯の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の第1実施例の電界発光灯1の要部断面図であり、図1(b)は電界発光灯1の製造方法を説明する要部断面図である。
【0014】
図1(a)に示すように、本発明の電界発光灯1は、厚さ50〜188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)等からなる透明フィルム2の上に微粘着層3を形成した微粘着フィルム4に、厚さ10〜35μmのPET等からなる薄膜透明フィルム5を貼り付けた積層フィルムを基材フィルム6としている。この電界発光灯1の製造方法は、先ず、基材フィルム6の上に透明ITO(Indium tin oxide)等の透明導電粉末からなる透明導電ペーストを印刷し、透明電極7を5〜15μmの厚さに形成する。次に、透明電極7の上に硫化亜鉛を銅で付活し防湿コーティングを施した蛍光体8aを例えばフッ素ゴム等の樹脂8b中に分散したインクを印刷し、発光層8を20〜40μmの厚さに形成する。次に、発光層8の上にチタン酸バリウム等の白色誘電粉末を樹脂中に分散させたインクを印刷し、反射絶縁層9を10〜20μmの厚さに形成する。次に、反射絶縁層9の上にカーボンインク等の導電ペーストを印刷し、裏面電極10を10〜20μmの厚さに形成する。次に、裏面電極10の上に絶縁性のインクを印刷し、保護層11を10〜20μmの厚さに形成する。その後、図1(b)に示すように、微粘着フィルム4を薄膜透明フィルム5から剥ぎ取り、厚さ70〜150μmの超薄型の電界発光灯1を得る。
【0015】
このように、本実施例の電界発光灯1は、基材に薄膜透明フィルム5を使用しているため、引張り、引き裂き強度に優れ、かつ局部的な押し圧による変形も少なく、500g、100万回の打鍵試験実施後の変形や断線、発光上の異常もなく携帯電話のキー部照明等に用いられた場合の打鍵にも十分耐えうることができる。さらに、最終的に微粘着フィルム4を剥がすようにすれば、工程上あるいは輸送上の傷防止にも効果がある。
【0016】
ここで、薄膜透明フィルム5の厚さは10〜35μmとしているが、10μm以下では微粘着フィルム4への貼り付けする際にシワがはいりやすく実現性が劣り、35μm以上では薄型のメリットが乏しくなるためである。より望ましい薄膜透明フィルム5の厚さは16〜25μmである。また、薄膜透明フィルム5の材料もPETのみならず、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂等が使用できる。
【0017】
また、微粘着フィルム4の厚さは50〜188μmとしているが、50μm以下では前述した印刷上の問題(吸着痕、取り扱い、加工性等)が発生する恐れがあるとともに最終的に剥ぎ取る際に剥ぎ取りにくく、188μm以上では基材のコスト増とともにフィルムの巻き取り数が少なくなり原反自体の値段が高くなるためである。
【0018】
また、微粘着フィルム4の粘着力が強すぎると製品化後剥離することが困難となるため、粘着力としては0.01〜0.2N/25mm(対PET)のものが望ましい。
【0019】
また、薄膜透明フィルム5の微粘着層3への貼り付け側に離型処理を施すようにすれば、微粘着フィルム4をより剥離しやすくすることができる。
【0020】
なお、本実施例では透明電極7の材料にITO粉末を用いた透明導電ペーストを用いたが、酸化アンチモン、酸化亜鉛等の粉末やPEDOT(Polyethylene dioxythiophene)等の有機ポリマーを用いることもできる。有機ポリマーを用いた場合の透明電極7の厚さは2〜5μmであり、さらに薄型の電界発光灯1を提供することができる。
【0021】
次に、本発明の第2実施例の電界発光灯を、図面を参照して説明する。図2(a)は本発明の第2実施例の電界発光灯20の要部断面図であり、図2(b)は電界発光灯20の製造方法を説明する要部断面図である。
【0022】
図2(a)に示すように、本発明の電界発光灯20は、厚さ50〜188μmのPET等からなる透明フィルム21の上に微粘着層22を形成した微粘着フィルム23に、厚さ10〜35μmのPET等からなる薄膜透明フィルム24にITO等の透明電極25を蒸着してなる薄膜透明導電フィルム26を貼り付けた積層フィルムを基材フィルム27としている。この電界発光灯20の製造方法は、先ず、基材フィルム27の上に硫化亜鉛を銅で付活し防湿コーティングを施した蛍光体28aを例えばフッ素ゴム等の樹脂28b中に分散したインクを印刷し、発光層28を20〜40μmの厚さに形成する。次に、発光層28の上にチタン酸バリウム等の白色誘電粉末を樹脂中に分散させたインクを印刷し、反射絶縁層29を10〜20μmの厚さに形成する。次に、反射絶縁層29の上にカーボンインク等の導電ペーストを印刷し、裏面電極30を10〜20μmの厚さに形成する。次に、裏面電極30の上に絶縁性のインクを印刷し、保護層31を10〜20μmの厚さに形成する。その後、図2(b)に示すように、微粘着層フィルム23を薄膜透明導電フィルム26から剥ぎ取り、超薄型の電界発光灯20を得る。
【0023】
このように、本実施例の電界発光灯20は、基材に薄膜透明導電フィルム26を使用しており、透明電極25の厚さを数千Åと薄く出来るため、さらに厚さの薄い電界発光灯20を提供することができ、さらに透明電極25を印刷する必要がないため生産性を大きく向上させることができる。
【0024】
本実施例では透明電極25の材料にITOを蒸着した透明導電膜を用いたが、PEDOT等の有機ポリマーやITO、酸化アンチモン、酸化亜鉛等の導電粉末をコーティングしたものでも同様の効果が得られる。
【0025】
また、薄膜のフィルムに透明電極の蒸着やコーティングが困難な場合はPET等からなる透明フィルム21の上に微粘着層22を形成した微粘着フィルム23にPET等からなる薄膜透明フィルム24をあらかじめ貼り付けた積層フィルムの形態で蒸着やコーティングを施してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の電界発光灯によれば、基材フィルムとして微粘着フィルムと薄膜透明フィルムの二層構造品を用いることにより、製造時の取り扱いで不具合を引き起こすことがなく、しかも製造後容易に微粘着フィルムを薄膜透明フィルムから剥離できるので、薄膜透明フィルムを基材とした機械的な強度に優れた携帯電話のキー部照明に好適な超薄型の電界発光灯を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施例の電界発光灯及びその製造方法を説明する要部断面図
【図2】本発明の第2の実施例の電界発光灯及びその製造方法を説明する要部断面図
【図3】従来の電界発光灯の要部断面図
【図4】他の従来の電界発光灯の要部断面図
【符号の説明】
【0028】
1 本発明の第1実施例の電界発光灯
2 透明フィルム
3 微粘着層
4 微粘着フィルム
5 薄膜透明フィルム
6 基材フィルム
7 透明電極
8 発光層
9 反射絶縁層
10 裏面電極
11 保護層
20 本発明の第2実施例の電界発光灯
21 透明フィルム
22 微粘着層
23 微粘着フィルム
24 薄膜透明フィルム
25 透明電極
26 透明導電フィルム
27 基材フィルム
28 発光層
29 反射絶縁層
30 裏面電極
31 保護層
40 従来の電界発光灯
41 離型基材
42 透明電極層
43 発光層
44 反射絶縁層
45 裏面電極
50 他の従来の電界発光灯
51 離型基材
52 透明絶縁層
53 透明電極層
54 発光層
55 反射絶縁層
56 裏面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極と裏面電極の間に発光層と反射絶縁層が形成されてなる電界発光灯において、前記透明電極を支持する基材が厚さ10〜35μmの薄膜透明フィルムからなることを特徴とする電界発光灯。
【請求項2】
前記透明電極が、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛及び導電性高分子の少なくとも一種類以上を含む透明導電性材料からなることを特徴とする請求項1記載の電界発光灯。
【請求項3】
前記透明電極が、印刷、蒸着及びコーティングのいずれかにより形成したことを特徴とする請求項2記載の電界発光灯。
【請求項4】
厚さ50〜188μmの透明フィルムの上に微粘着層を形成した微粘着フィルムに、厚さ10〜35μmの薄膜透明フィルムを貼り付けてなる二層構造の基材フィルム上に、透明電極、発光層、反射絶縁層、裏面電極、保護層を順次印刷形成し、乾燥固化後、前記微粘着フィルムを前記薄膜透明フィルムから剥離除去することを特徴とする電界発光灯の製造方法。
【請求項5】
厚さ50〜188μmの透明フィルムの上に微粘着層を形成した微粘着フィルムに、厚さ10〜35μmの薄膜透明フィルムに透明電極を形成した薄膜透明導電フィルムを貼り付けてなる二層構造の基材フィルム上に、発光層、反射絶縁層、裏面電極、保護層を順次印刷形成し、乾燥固化後、前記微粘着フィルムを前記薄膜透明導電フィルムから剥離除去することを特徴とする電界発光灯の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−260862(P2006−260862A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74260(P2005−74260)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000156950)関西日本電気株式会社 (26)
【Fターム(参考)】