説明

電界発光素子、及び電界発光素子の製造方法

【課題】ナノ構造を有する電極とそれを覆う蛍光体層との間に隙間および空洞(エアーポケット)が形成されず、強度を増加させる。
【解決手段】本発明の電界発光素子は、下部電極202と上部電極212とからなる一対の電極を有し、下部電極202と上部電極212との間に蛍光体を含む蛍光体層206が設けられた電界発光素子であって、下部電極202は、ナノメートルオーダーの微小突起204が下部電極202表面に複数設けられたナノ構造を有し、蛍光体層206は、その底面210及び上面208が微小突起204の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されているので、ナノ構造を有する下部電極204と蛍光体層206との間に、隙間または空洞部分(エアーポケット)が形成されにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光素子、及び電界発光素子の製造方法に関するものであり、より詳しくは、集積回路(IC)に適した電界発光素子、及び電界発光素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体材料のバンドギャップが直接遷移型あるいは間接遷移型であるかに関わらず、半導体素子(デバイス:device)から発光させることが可能である。高電界の逆バイアスpn接合により、ホットキャリア群が生成される。このホットキャリアは、遊離光量子と再結合する。シリコン素子においては、発光効率が悪い事が知られており、光量子のエネルギーが約2eVであるものがほとんどである。電気エネルギーを可視光エネルギーへ変換することは、電界発光(EL)と呼ばれている。室温で、少ない電気信号で動作可能な効率的な電界発光素子が製造されてきている。しかしながら、これらの素子は、シリコンと相性が悪い材料(例えば、InGaN、AlGaAs、GaAsP、GaN、及びGaPといったIII−V族の材料)の上に加工される。これら材料のうち1つの基板上に設けられた電界発光素子は、使用される特定の材料に応じて、可視領域を含む狭波長帯域の光を効率的に出射することが可能である。さらに、ZnSeといったII−VI族の材料が使用されている。また、ZnSやZnOといった他のII−VI族の材料は、交流バイアス(ac bias)条件下で電界発光を示すことが知られている。これらの素子は、発光素子として利用するために、シリコン上に堆積可能である。ただし、これは特定(従来とは異なる)のCMOS工程が実行される場合に限られる。発光装置の他の分類としては、有機発光ダイオード(OLEDs)、ナノ結晶性シリコン(nc−Si)、及び重合体LEDが挙げられる。
【0003】
従来、シリコンは、そのエネルギーバンドギャップが間接型であるため、光電子工学的な用途には向かないと考えられてきた。実際に、バルクシリコンは、きわめて効率が悪い発光体である。この問題を解決するために、さまざまな方法がなされてきた。この中で、ナノ構造中の量子閉じ込め、及び結晶性シリコンへの希土類ドーピングがきわめて多くの注目を浴びている。
【0004】
光学素子(発光素子及び光検出素子)が必要とされる用途において、シリコンと相性が良く、直流電圧(dc voltage)により出力可能な、簡易でかつ効率的な発光素子が要望されている。電界発光素子のための有効なシリコン基板は、従来の金属処理と比較して、より迅速でありかつ信頼性がある、信号結合手段を可能にする。大型のシステムオンチップ型(system-on-chip)の装置のチップ内配線(intra-chip connection)においては、光学手段による信号の経路設定(routing)が要望されている。チップ間通信(inter-chip communication)においては、導波路、または離間したシリコン部材間の光学的な結合により、チップ間の電気的接続がない状態での実装が可能になる。小型ディスプレイにおいては、可視光の小さな点光源を生成する方法により、簡単でかつ安価なディスプレイが形成可能になる。
【0005】
図1は、薄膜半導体Si系蛍光体電界発光素子(solid-state Si phosphor EL device)(従来技術)の部分断面図である。現在、光内部結合(optical interconnect)といった多くの用途のために、シリコンと相性がよい電界発光素子が探し求められている。交流(AC)電界発光素子は、基板1と、任意の下部電極2と、上部誘電層5と下部誘電層3との間に挟まれた蛍光体層4と、上部透明電極6とから構成される。そのような素子には、典型的に、下部電極2から電子を上記蛍光体層に注入するために、高い動作電界が必要である。電子は、この電界によって加速され、発光中心で放射減衰するまでエネルギーを得る。図示されているように、この素子においてすべての層は平面である。
【0006】
ナノワイヤ、ナノロッド、およびナノ粒子といったナノ構造を有する材料は、2〜3例を挙げると、ナノケミカルおよびナノバイオセンサー、ナノLED、ナノトランジスタ、ナノレーザーといった用途で使用される可能性がある。Si、Ge、他の半導体元素、ZnO、および他の2成分半導体(binary semiconductor)といった材料が、ナノ構造化されてきた。ナノワイヤ形成のための主な方法の1つとしては、触媒を使用して気相からナノワイヤを成長させるVLS(vapor-liquid-solid)成長法がある。また、他の方法も使用されてきた。
【0007】
光ルミネセンス(PL)の発生を促進させるために、ナノ構造を有する電極が使用されており、シリコンと相性がよい蛍光材料において電界強度をより高くしてきた。例えば、本願として同じ譲受人に譲受された、先願発明(米国出願番号11/061,946;2005年2月17日出願:本願の出願前の確認時点で未公開;代理人整理番号SLA891)である、「ナノ電極を有するシリコン蛍光電界発光素子」において、スウらは、酸化インジウムからなるナノメートルオーダーの微小突起を使用して作製された電界発光素子を提案している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記先願発明には、ナノ構造を有する電極とその上を覆う蛍光体層との間に隙間及び空洞(エアーポケット)が形成されるという課題が残されている。
【0009】
すなわち、ELナノ構造の開発が継続することにより、光ルミネセンス(PL)強度がさらに改善されると望ましい。しかしながら、ナノ構造特有の高い表面積により、微小突起表面を等方的に被覆する(conformally covering)際に問題が起きてしまう。また同様に、この等方性(conformality)の問題により、ナノ構造を有する電極とそれを覆う蛍光体層との間に隙間および空洞(エアーポケット)が形成されてしまうおそれがある。
【0010】
ナノ構造の形成により、シリコンと相性がよい蛍光電界発光素子の強度が増加すると、好都合である。
【0011】
また、電界発光素子のシリコン蛍光体層が、ナノ電極の形状と一致するような輪郭になっていれば、好都合である。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ナノ構造を有する電極とそれを覆う蛍光体層との間に隙間および空洞(エアーポケット)が形成されず、強度を増加させることが可能な電界発光素子、及び電界発光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電界発光素子は、上記課題を解決するために、下部電極と上部電極とからなる一対の電極を有し、下部電極と上部電極との間に蛍光体を含む蛍光体層が設けられた電界発光素子であって、上記下部電極は、ナノメートルオーダーの微小突起が下部電極表面に複数設けられたナノ構造を有し、上記蛍光体層は、その底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、下部電極は、ナノメートルオーダーの微小突起が下部電極表面に複数設けられたナノ構造を有し、蛍光体層は、その底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されているので、ナノ構造を有する下部電極と蛍光体層との間に、隙間または空洞部分(エアーポケット)が形成されにくくなる。その結果、上記の構成によれば、電界発光素子の強度が増加し、光ルミネセンス(PL)強度が向上する。
【0015】
本発明に係る電界発光素子では、上記上部電極は、その底面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることが好ましい。
【0016】
これにより、蛍光体層の上面における凹凸面と上部電極の底面における凹凸面との両方が、微小突起の輪郭に沿ったものになる。その結果、上記の構成によれば、上部電極と蛍光体層との間に、隙間または空洞部分(エアーポケット)が形成されにくくなり、電界発光素子の強度がさらに増加する。
【0017】
本発明に係る電界発光素子では、下部電極と蛍光体層との間に、誘電体材料からなる下部誘電体層が形成されており、上記下部誘電体層は、その底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、下部電極と蛍光体との間の距離(誘電体層の厚さ)がいたるところで均一となるため、下部電極から蛍光体に注入されるキャリアを蛍光体全体に均一化することができる。このため、蛍光体全体から均一な発光を得ることができ、最も効率よく光を得ることができる。
【0019】
また、上記下部誘電体層が、HfO、Al、SiO、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、および金属ケイ酸塩を含む集団から選択された材料からなっていることが好ましい。
【0020】
本発明に係る電界発光素子では、蛍光体層と上部電極との間に、誘電体からなる上部誘電体層が形成されており、上記上部誘電体層は、その底面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、誘電体層と蛍光体との間に空隙が生じることがないため、部分的に電界の強弱が生じることにより発生するデバイスの劣化の問題を回避することができ、デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、上記上部誘電体層が、SiO、SiON、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、および金属ケイ酸塩を含む集団から選択された材料からなっていることが好ましい。
【0023】
本発明に係る電界発光素子の製造方法は、上記の課題を解決するために、下部電極と上部電極とからなる一対の電極を有し、下部電極と上部電極との間に蛍光体を含む蛍光体層が設けられた電界発光素子の製造方法であって、ナノメートルオーダーの微小突起が複数設けられたナノ構造を有する下部電極を形成する下部電極形成工程と、底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程とを含むことを特徴としている。
【0024】
上記の構成によれば、蛍光体層形成工程にて、底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように蛍光体層を形成するので、ナノ構造を有する下部電極と蛍光体層との間に、隙間または空洞部分(エアーポケット)が形成されにくくなる。その結果、上記の構成によれば、強度が増加し、かつ光ルミネセンス(PL)強度が向上した電界発光素子を製造することが可能になる。
【0025】
本発明に係る電界発光素子の製造方法では、底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように上部電極を形成する上部電極形成工程を含むことが好ましい。
【0026】
これにより、蛍光体層の上面における凹凸面と上部電極の底面における凹凸面との両方が、微小突起の輪郭に沿ったものになる。その結果、上記の構成によれば、上部電極と蛍光体層との間に、隙間または空洞部分(エアーポケット)が形成されにくくなり、強度がさらに増加した電界発光素子を製造することが可能になる。
【0027】
また、上記蛍光体層形成工程では、原子層堆積(ALD)により蛍光体層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る電界発光素子は、以上のように、上記下部電極は、ナノメートルオーダーの微小突起が下部電極表面に複数設けられたナノ構造を有し、上記蛍光体層は、その底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されている構成である。
【0029】
また、本発明に係る電界発光素子の製造方法は、以上のように、ナノメートルオーダーの微小突起が複数設けられたナノ構造を有する下部電極を形成する下部電極形成工程と、底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程とを含む構成である。
【0030】
それゆえ、ナノ構造を有する下部電極と蛍光体層との間に、隙間または空洞部分(エアーポケット)が形成されにくくなる。その結果、電界発光素子の強度がさらに増加し、光ルミネセンス(PL)強度が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、集積回路(IC)作製に関するものであり、より具体的には、微小突起の輪郭に沿って形成された蛍光体層を有し、ナノ電極(微小突起を有する電極)を使用して作製された電界発光(EL)素子に関するものである。上述した方法および微小突起の輪郭になった蛍光体層を有する電界発光素子の詳細について、図2ないし図12に基づいて説明すると以下の通りである。
【0032】
図2は、微小突起の輪郭に沿って形成された蛍光体層を有する電界発光(EL)素子の詳細な部分断面図である。電界発光素子200は、微小突起204を有する下部電極(BE)202を備えている。蛍光体層206は、下部電極202を覆うように形成されており、凹凸形状の(irregularly-shaped)上面208と凹凸形状の底面210とを有している。上部電極212は、蛍光体層206を覆うように形成されている。
【0033】
基板213は、下部電極202の下に配されており、シリコン、シリコン酸化物、窒化ケイ素、ガラス、石英、またはプラスチックといった材料からなっている。構成の一例としては、基板213、下部電極202、および微小突起204が透明材料である一方、上部電極212が不透明材料である構成が挙げられる。また、別の構成の一例としては、上部電極212が透明材料である一方、下部電極202および基板213が不透明材料である構成が挙げられる。さらに別の構成の一例としては、基板213、下部電極202、および上部電極212が全て透明材料である構成が挙げられる。
【0034】
ここでいう「微小突起」とは、「ナノメートルオーダーの微小突起」のことを意味するものであり、一般的には「nanotip」として知られている。また、「ナノメートルオーダー」とは、ナノメートル単位で表すことが可能な寸法であり、具体的には、1ナノメートルから500ナノメートルまでの範囲にある寸法のことをいう。そして、この微小突起は、ある特定の物理的性質、形状、または寸法に限定されるものではない。微小突起は、ナノロッド、ナノチューブ、またはナノワイヤとして知られているものであってもよい。また、ここでは示さないが、微小突起は、中空構造を形成していてもよい。さらに、ここでは示さないが、微小突起は、複数のチップ端から形成されていてもよい。
【0035】
蛍光体層206は、ZnO、ZnS:Mn、シリコンが豊富に含まれた(シリコンリッチの)シリコン酸化物(silicon-rich silicon oxide)(SROまたはSRSO)、ドープZnO、ドープZnS:Mn、またはドープSROといった材料からなっていてもよい。上部電極212は、インジウムすず酸化物(ITO)、アルミニウム(Al)ドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)、ワイドバンドギャップの導電性酸化物といった透明材料からなる、あるいは、伝導性金属の透明薄膜であってもよい。上部電極が不透明である場合、上部電極として他の従来の材料を使用してもよいが、典型的には、伝導性の金属である。
【0036】
図3は、図2の素子における、いくつかの微小突起を詳細に示した部分断面図である。下部電極の微小突起204は、突起基底幅(tip base size)300を有している。突起基底幅300は、約50ナノメーター以下である。また、下部電極の微小突起204は、チップ高さ302を有している。この突起高さ302は、5nmから500nmまでの範囲内である。
【0037】
構成の一例としては、微小突起204は、インジウムすず酸化物(ITO)からなっている。本発明では、ITOからなる微小突起が使用されているが、微小突起は他の遷移金属の導電性酸化物からなっていてもよい。下部電極202及び微小突起204は、アルミニウム(Al)ドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)といった他の透明材料であってもよい。他の一例としては、下部電極202及び微小突起204は、金属といった不透明材料、またはイリジウム酸化物(IrO)といった金属の導電性酸化物からなっていてもよい。
【0038】
再び図2に示すように、下部電極202は、上面214を有し、この上面214が微小突起の輪郭になっていることがわかる。蛍光体層の上面208は、下部電極の上面214における微小突起の輪郭と、ほぼ一致するような輪郭を有する。同様に、蛍光体層の底面210もまた、下部電極の上面214における微小突起の輪郭とほぼ一致するような輪郭を有する。蛍光体層の上面208及び底面210は、表面凹凸を有する。そして、この表面凹凸が5から500ナノメートル(nm)までの範囲内となっている。この範囲は、表面凹凸は表面の平坦性のばらつきによるものである。したがって、得られる等方一致性(conformality)によっては、上記表面凹凸は、上記微小突起の高さと同じになっていてもよい(図3参照)。図示されたいくつかの一例においては、下部電極における微小突起の輪郭に沿って形成された上面の細部は、その上を覆う各層へ行くに従い失われていてもよい。それゆえ、シリコン蛍光体層の上面208は、底面210と比較して、微小突起の細部の輪郭に沿った形状になっていなくてもよい。それゆえ、上面208は、底面210よりも、表面凹凸が少なくなっている。
【0039】
各面における輪郭の細部の消失は、異なる物質層間の緊張および異方蒸着特性(anisotropic deposition characteristics)によるものである。このような理由により、上記シリコン蛍光体層の表面の輪郭は、上記微小突起の輪郭とほぼ一致しているといえる。図示されているように、上部電極212は、底面216を有し、この底面216が蛍光体層の上面208の輪郭とほぼ一致する輪郭となっている。
【0040】
図4は、図2の電界発光素子の変形例を示す部分断面図である。図4の構成では、下部電極202と蛍光体層206との間に、(微小突起の)輪郭に沿って形成された下部誘電体層400が形成されている。下部誘電体層400は、上面402および底面404を有している。上面402と底面404とはともに、下部電極の上面214における微小突起の輪郭に沿った形状とほぼ一致する輪郭になっている。下部誘電体層400は、HfO、Al、SiO、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、または金属ケイ酸塩といった材料からなっていてもよい。
【0041】
別の一例においては、上部電極212と蛍光体層206との間に、上部誘電体層406が形成されている。上部誘電体層406は、底面408を有し、この底面408が蛍光体層の上面208の輪郭とほぼ一致する輪郭になっている。また、上部誘電体層406は、平坦な上面410を有する。上部誘電体層406は、SiO、SiON、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、または金属ケイ酸塩といった材料からなっていてもよい。
【0042】
以下、本発明の電界発光素子の機能について説明する。
【0043】
図5、及び図7ないし図11は、本発明の電界発光素子を完成させる工程を示した図である。上述したように、交流(AC)型電界発光素子では、基板、ナノ構造を有する下部電極、下部誘電体層、蛍光体層、上部誘電体層、透明上部電極が、底部から上部へ向かってこの順に形成されていてもよい。上記基板500は、シリコンウエハまたはガラスウエハであってもよい。シリコン基板が形成されている場合、標準的なRCA洗浄といった適切な表面洗浄処理が施され、その後、HF(フッ酸)工程が行われる。そして、ITOといったナノ構造を有する導電性の下部電極502が堆積される(下部電極形成工程)。図示されているように、ITO膜(下部電極)502の表面は、結晶性三角ITO(crystalline triangular ITO)ナノロッド(微小突起)で覆われている。
【0044】
図6は、ナノロッドの走査電子顕微鏡(SEM)画像である。このSEM画像から、ナノロッドの長さが約0.5マイクロメータ(μm)であり、ある端の部分では基部の幅が約0.1μmであることがわかる。他の異なる寸法のナノロッドが使用されていてもよい。また、導電性の下部電極は、必ずしもITOである必要はなく、図示したものと類似した好適なナノ構造を有する表面に形成可能な材料であればよい。また、ナノワイヤ、微小突起、またはナノロッド形成可能な任意の堆積技術を使用することもできる。
【0045】
図7は、図5の電界発光素子において、下部誘電体層の材料を堆積した後の状態を示す図である。(ナノ構造を有する導電性の下部電極502を堆積した下部電極形成工程後の)次の工程では、下部誘電体層504が堆積される。下部誘電体層504としてHfOを堆積する場合、原子層堆積(ALD)といった等方性製膜技術(conformal technique)により下部誘電体層504を堆積する。また、下部誘電体層としてSiO、他の高誘電率誘電体といった材料を使用することが可能である。さらに、他の等方性堆積技術(conformal deposition technique)を使用することが可能である。
【0046】
図8は、図7の電界発光素子において、蛍光体層を堆積した後の状態を示す図である。(下部誘電体層を堆積した後の)次の工程では、ALDといった等方性製膜技術により、蛍光体層506が堆積される(蛍光体層形成工程)。図に示した例では、蛍光体層の材料としてZnOを使用している。しかしながら、原理上、蛍光体層の材料として、ZnS:Mnのような他の任意の最新式で好適な材料を使用してもよい。また、任意の好適な等方性堆積技術を使用してもよい。必要に応じて、適切なアニールを施し、蛍光体層の発光特性を活性化または改善させてもよい。蛍光体層が下部電極の微小突起の輪郭に沿って形成されている場合、隙間または空洞部分(エアーポケット)が形成されにくくなり、PL強度が増すという点で有利である。
【0047】
図9は、図8の電界発光素子において、上部誘電体層を堆積した後の状態を示す図である。(蛍光体層を堆積した蛍光体層形成工程後の)次の工程では、上部誘電層508が堆積される。上部誘電層の材料として、SiO、SiONといった誘電体、または2成分金属酸化物、3成分金属酸化物といった高誘電率誘電体を使用することが可能である。例えば、これらの材料をスピンオンし、下面の凹凸形状(rough topography)を平坦にしてもよい。
【0048】
図10は、図9の電界発光素子において、上部電極を堆積した後の状態を示す図である。最後に、電界発光素子との電気接点を完成させるために、上部電極510を堆積する(上部電極形成工程)。この上部電極は、上面が平坦であり、ナノ構造の表面を有するものではない。(この例では)この上部電極は、導電性であり、かつ透明であり、光を通すようになっている。示された例では、平坦、導電性で、かつ透明な膜をもたらすように特定されたプロセス・パラメータで、マグネトロンDCスパッタリングによって、ITOが堆積されている。原理上は、任意の最新式の方法で、任意の透明で導電性の最新式の好適な電極を堆積可能である。
【0049】
図11は、図10の電界発光素子における、完成後の状態を示す図である。適切なバイアスまたは波形が印加されると、電界発光素子は、電界が高められたナノロッドの先端近傍の蛍光体領域で優先的に発光する。
【0050】
別の形態においては、下部誘電体層を省略することにより、直流(DC)型電界発光素子が形成される。さらに別の変形例としては、下部誘電体層を使用するが、上部誘電体層を省略するような構成が挙げられる。さらに別の変形例としては、下部誘電体層及び上部誘電体層を使用しない構成(図2参照)が挙げられる。
【0051】
さらに別の一例としては、上述のSOG膜に代わりに上部誘電体層として、等方性誘電体膜(例えば、ALDにより形成されたHfO、HfSiON等、またはその他の誘電体膜)を使用する点を除き、図11に図示された全構造と同様のものが用いられた構成が挙げられる。上記構造全てが使用されている。さらに、等方性が低い膜形成技術(less conformal technique)の代わりに、等方性であり、かつ導電性の透明電極層(例えばALDにより形成されたZnO:Al)を使用してもよい。この構成によって、蛍光膜の区画を大きく超えた発光が可能になる。
【0052】
図12は、微小突起の輪郭に沿って形成された蛍光体層を有する電界発光素子の製造方法を示すフローチャートである。なお、当該方法は、明瞭に示すために、番号が振られた工程の順番として示しているが、特に明示されていないかぎり、これらの番号から順番が推断されるものではない。いくつかの工程は、飛ばされたり、平行して行われたり、または、順番を厳密に維持するという条件を満たさずに行われても良いことを理解されたい。この方法のいくつかの詳細は、上記図1〜図11の説明内容から理解される。上記方法は、工程120から開始される。
【0053】
工程1201では、シリコンといった材料、またはガラス、石英、もしくはプラスチックといった透明材料から基板を形成する。工程1202では、透明または不透明な材料から、微小突起を有する下部電極を形成する。工程1204では、下部電極を覆うように蛍光体層を形成する。なお、この蛍光体層の上面及び底面は凹凸形状になっている。また、この面の輪郭は、5nmから500nmまでの範囲内の表面凹凸を有する。一例として、工程1204では、突起基底幅が約100nm以下であり、チップ高さが5nmから500nmまでの範囲内である微小突起を形成する。工程1206では、上記蛍光体層を覆うように、上部電極を形成する。
【0054】
典型的に、工程1202では、下部電極において微小突起の輪郭となる上面を形成する。その後、工程1204では、上記下部電極の上面の輪郭とほぼ一致する輪郭になるように、蛍光体層の上面及び底面を形成する。一形態においては、工程1206では、蛍光体層上面の輪郭とほぼ一致する輪郭になった底面を有する上部電極を形成する。
【0055】
工程1204にて形成された蛍光体層は、ZnO、ZnS:Mn、SRO、ドープZnO、ドープZnS、またはドープSROといった材料であってもよい。工程1206にて形成された上部電極は、インジウムすず酸化物(ITO)、アルミニウム(Al)ドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)、ワイドバンドギャップの導電性酸化物といった透明材料からなる、あるいは、伝導性金属の透明薄膜であってもよい。上部電極が不透明である場合、典型的には、上部電極は伝導性の金属からなる。
【0056】
工程1202における、微小突起を有する下部電極は、ITO、ZnO:Alといった透明材料、または伝導性金属酸化物(例えばIrO)、金属といった不透明材料からなっていてもよい。
【0057】
一変形例においては、工程1203では、下部電極と蛍光体層との間に、微小突起の輪郭に沿った下部誘電体層を形成する。この下部誘電体層の上面及び底面は、微小突起の輪郭とほぼ一致する輪郭となっている。下部誘電体層は、HfO、Al、SiO、他の2成分金属酸化物または3成分金属酸化物、もしくは金属ケイ酸塩といった材料からなっていてもよい。下部誘電体層は、原子層堆積(ALD)、化学気相成長(CVD)、回転塗布法、または、スパッタ堆積といった堆積処理により形成されていてもよい。
【0058】
さらに別の変形例においては、工程1205aにて、上部電極と蛍光体層との間に、上部誘電体層を形成する。この上部誘電体層の底面は、蛍光体層の上面の輪郭とほぼ一致する輪郭となっている。さらに、工程1205bでは、上部誘電体層の上面を平坦化する。上部誘電体層は、SiO、SiO、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、または金属ケイ酸塩といった材料からなっていてもよい。一形態においては、上記上部電極を、スピン塗布(SOG)処理を使用して形成することが可能である。
【0059】
以上のように、本発明の電界発光素子は、下部電極202と上部電極212とからなる一対の電極を有し、下部電極202と上部電極212との間に蛍光体を含む蛍光体層206が設けられた電界発光素子であって、下部電極202は、ナノメートルオーダーの微小突起204が下部電極202表面に複数設けられたナノ構造を有し、蛍光体層206は、その底面210及び上面208が微小突起204の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることを特徴としている。
【0060】
これにより、ナノ構造を有する下部電極204と蛍光体層206との間に、隙間または空洞部分(エアーポケット)が形成されにくくなる。その結果、電界発光素子の強度が増加し、光ルミネセンス(PL)強度が向上する。
【0061】
また、上部電極212は、その底面216が微小突起204の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることが好ましい。
【0062】
また、本発明の電界発光素子では、例えば図4に示されるように、下部電極202と蛍光体層206との間に、誘電体材料からなる下部誘電体層400が形成されており、下部誘電体層400は、その底面402及び上面404が微小突起204の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることが好ましい。
【0063】
さらに、蛍光体層206と上部電極212との間に、誘電体からなる上部誘電体層406が形成されており、上部誘電体層406は、その底面408が微小突起204の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることが好ましい。
【0064】
また、本発明に係る電界発光素子の製造方法は、下部電極と上部電極とからなる一対の電極を有し、下部電極と上部電極との間に蛍光体を含む蛍光体層が設けられた電界発光素子の製造方法であって、ナノメートルオーダーの微小突起が複数設けられたナノ構造を有する下部電極を形成する下部電極形成工程と、底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程(工程1204)とを含むことを特徴としている。
【0065】
本発明に係る電界発光素子の製造方法では、底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように上部電極を形成する上部電極形成工程(工程1206)を含むことが好ましい。
【0066】
電界発光素子のためのナノ構造ナノロッド材料でできた下部電極の用途をここで述べる。このような素子のための電極としてITOが長い間使用されてきたが、それは平面的であるという典型的な特徴を持っている。周囲の電界が増加すると、鋭利形状の伝導体内で面電荷密度が増進されることはよく知られている。最近、ナノチューブやナノワイヤのような鋭利形状ナノ構造物質は効果的な電界放出素子であることが示されている。
【0067】
上記ナノ構造ITO電極は、ナノロッドで覆われている。これらは、このような素子の蛍光体層への電子の電界放出を促進させるはたらきをする、棒状の、鋭いチップを有するナノ構造である。この電極によって、このような電界発光素子の作業電圧およびルミネセンス閾値が低減可能となる。また、上記電極の上に重なる前記蛍光物質は、上記ナノロッドの形状とほぼ一致する輪郭を描いている。
【0068】
以上のように、本発明は、微小突起の輪郭に沿って形成された蛍光体層を備えた電界発光素子及びその製造方法である。この製造方法は、微小突起を有する下部電極を形成する工程、下部電極を覆うように、上面と底面との形が不ぞろいな蛍光体層を形成する工程、および該蛍光体層を覆うように上部電極を形成する工程が含まれる。上述したように、上記下部電極の上面は、微小突起の輪郭を有する。したがって、上記蛍光体層の不ぞろいな上面及び底面は、上記下部電極上面の微小突起の輪郭とほぼ一致する輪郭を有する。一形態において、上記上部電極は、上記蛍光体層上面の輪郭とほぼ一致する輪郭になった底面を有する。
【0069】
上記蛍光体層は、ZnO、ZnS:Mn、シリコン過剰酸化物(SRO)、ドープZnO、ドープZnS、またはドープSROのような物質であり得る。上記下部電極は、ITOまたはZnO:Alのような透明素材であり得る。上記上部電極が透明である場合、上記下部電極は、酸化イリジウム(IrOx)のような伝導性の金属の酸化物もしくは金属のような不透明な物質であり得る。
【0070】
別の形態においては、下部電極と蛍光体層との間に、微小突起の輪郭に沿って形成された下部誘電体層を形成する。下部誘電体層の上面及び底面は、微小突起の輪郭とほぼ一致する輪郭となっている。下部誘電体層の材料としては、2〜3例を挙げると、HfO、Al、またはSiOといった材料であってもよい。同様に、上部誘電体層もまた、蛍光体層上面の輪郭とほぼ一致する輪郭を有する底面を有し、上部電極と蛍光体層との間に形成されている。一形態においては、上記上部誘電体層は、平坦化された上面を有する。つまり、上記上部電極底面が平坦なのである。
【0071】
なお、本発明は、以下のように、言い換えることができる。
【0072】
すなわち、本発明の電界発光素子の製造方法は、微小突起の輪郭を有する蛍光体層を有するエレクトロルミネセンス(EL)素子を製造する方法であって、微小突起を有する下部電極を形成する工程と、上記下部電極を覆うように、凹凸形状の上面及び底面を有する蛍光体層を形成する工程と、上記蛍光体層を覆うように上部電極を形成する工程とを含む製造方法であるといえる。
【0073】
また、本発明の製造方法では、上記下部電極を形成する工程が、微小突起の輪郭を有する下部電極上面を形成する工程を含み、凹凸形状の上面及び底面を有する蛍光体層を形成する工程が、上記下部電極の上面の微小突起の輪郭とほぼ一致する輪郭を有する上面と底面とを形成する工程を含むことが好ましいといえる。
【0074】
また、本発明の製造方法では、上記上部電極を形成する工程が、上記蛍光体層上面の上記輪郭とほぼ一致する輪郭を有する底面を有する上部電極を形成する工程を含むことが好ましいといえる。
【0075】
また、本発明の製造方法では、微小突起を有する上記下部電極を形成する工程が、基部のサイズが約100ナノメートルまたはそれ以下である微小突起を形成する工程を含むことが好ましいといえる。
【0076】
また、本発明の製造方法では、微小突起を有する上記下部電極を形成する工程が、基部の高さが約5〜500nmである微小突起を形成する工程を含むことが好ましいといえる。
【0077】
また、微小突起を有する上記下部電極を形成する工程では、インジウムすず酸化物(ITO)およびZnO:Alのグループから選択された透明素材から、ならびに、酸化インジウム(IrOx)、他の導電性金属の酸化物、および金属のグループから選択された不透明な物質から下部電極と微小突起とを形成することが好ましいといえる。
【0078】
また、この製造方法では、上記下部電極と前記蛍光体層との間に、微小突起の輪郭に沿って形成された下部誘電体層を形成し、その下部誘電体層が上記微小突起の輪郭とほぼ一致する輪郭を有する上面と底面とを有するようにする工程をさらに含むことが好ましいといえる。
【0079】
上記下部誘電体層を形成する工程では、HfO、Al、SiO、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、および金属ケイ酸塩を含む集団から選択された材料から上記下部誘電体層を形成することが好ましいといえる。
【0080】
上記下部誘電体層を形成する工程では、原子層堆積(ALD)、化学気相成長(CVD)、回転塗布法、およびスパッタ堆積を含む集団から選択された堆積処理を使用して上記下部誘電体層を形成することが好ましいといえる。
【0081】
また、本発明の製造方法では、前記上部電極と該蛍光体層との間に上部誘電体層を形成し、この上部誘電体層の底面が蛍光体層の上面の輪郭とほぼ一致する輪郭となるようにする工程をさらに含むことが好ましいといえる。
【0082】
上記上部誘電体層を形成する工程は、上部誘電体層の上面を形成する工程を含み、この工程が上記上部誘電体層上面を平坦にする工程をさらに含むことが好ましいといえる。
請求項10に記載の方法。
【0083】
上記上部誘電体層を形成する工程では、SiO、SiON、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、および金属ケイ酸塩を含む集団から選択された材料から上記上部誘電体層を形成することが好ましいといえる。
【0084】
上記上部誘電体層を形成する工程では、スピン塗布(SOG)工程を使用して上記上部誘電体層を形成することが好ましいといえる。
【0085】
本発明の製造方法では、シリコン、ガラス、石英、およびプラスチックを含む集団から選択された材料から、基板を前記下部電極の下に形成する工程をさらに含むことが好ましいといえる。
【0086】
本発明の製造方法では、上記基板を形成する工程が、透明材料から基板を形成する工程を含み、かつ、微小突起を有する上記下部電極を形成する工程が、透明材料から下部電極と微小突起とを形成する工程を含むことが好ましいといえる。
【0087】
前記蛍光体層を形成する工程にて、ZnO、ZnS:Mn、シリコンリッチの酸化物(SRO)、ドープZnO、ドープZnS、およびドープSROを含む集団から選択された材料から上記蛍光体層を形成することが好ましいといえる。
【0088】
前記上部電極を形成する工程にて、ITO、ZnO:Al、ワイドバンドギャップの導電性酸化物、および、伝導性金属透明薄膜を含む集団から選択された透明材料、または、不透明伝導性金属から上記上部電極を形成することが好ましいといえる。
【0089】
輪郭を有する上記蛍光体層上面および底面を形成する工程が、輪郭面(contour surface)の表面に5〜500nmの凹凸を持たせる工程を含むことが好ましいといえる。
【0090】
本発明の電界発光素子は、微小突起の輪郭に沿って形成された蛍光体層を有する電界発光(EL)素子であって、微小突起を有する下部電極と、上記下部電極の上に重なり、形が不ぞろいな上面と底面とを有する蛍光体層と、上記蛍光体層の上に重なる上部電極とを備えた電界発光(EL)素子であるといえる。
【0091】
本発明の電界発光素子においては、上記下部電極が微小突起の輪郭を有する上面を有し、かつ、上記蛍光体層が上記下部電極上面の微小突起の輪郭とほぼ一致する輪郭を有する上面と底面とを有することが好ましいといえる。
【0092】
本発明の電界発光素子においては、上記上部電極が上記蛍光体層上面の上記輪郭とほぼ一致する輪郭を有する底面を有することが好ましいといえる。
【0093】
本発明の電界発光素子においては、上記下部電極の微小突起の基部のサイズが約100ナノメートル以下であることが好ましいといえる。
【0094】
本発明の電界発光素子においては、上記下部電極の微小突起の高さが5〜500nmであることが好ましいといえる。
【0095】
本発明の電界発光素子においては、上記下部電極および微小突起が、インジウムスズ酸化物(ITO)、Alドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)の集団から選択された透明材料、または、酸化イリジウム(IrO)、他の伝導性金属酸化物、および金属を含む集団から選択された不透明材料からなることが好ましいといえる。
【0096】
本発明の電界発光素子においては、上記下部電極と前記蛍光体層との間に、微小突起の輪郭に沿って形成された下部誘電体層を備え、上記下部誘電体層の上面及び底面が、上記微小突起の輪郭とほぼ一致する輪郭となっていることが好ましいといえる。
【0097】
上記下部誘電体層が、HfO、Al、SiO、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、および金属ケイ酸塩を含む集団から選択された材料からなっていることが好ましいといえる。
【0098】
本発明の電界発光素子においては、前記上部電極と上記蛍光体層との間に、上部誘電体層を備え、この上部誘電体層の底面が、蛍光体層上面の輪郭とほぼ一致する輪郭となっていることが好ましいといえる。
【0099】
さらに、上記上部誘電体層の上面が平坦であることが好ましいといえる。
【0100】
上記上部誘電体層が、SiO、SiON、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、および金属ケイ酸塩を含む集団から選択された材料からなることが好ましいといえる。
【0101】
本発明の電界発光素子においては、前記下部電極の下に基板が配され、この基板が、シリコン、ガラス、石英、およびプラスチックを含む集団から選択された材料からなっていることが好ましいといえる。
【0102】
また、上記基板が透明材料であり、かつ、微小突起を有する上記下部電極が透明材料であることが好ましいといえる。
【0103】
前記蛍光体層が、ZnO、ZnS:Mn、シリコン過剰酸化物(SRO)、ドープZnO、ドープZnS:Mn、およびドープSROを含む集団から選択された材料からなっていることが好ましいといえる。
【0104】
前記上部電極が、ITO、ZnO:Al、ワイドバンドギャップの導電性酸化物、および、伝導性金属透明薄膜を含む集団から選択された透明材料、または不透明な伝導性金属からなっていることが好ましいといえる。
【0105】
上記蛍光体層の上面及び底面が、5〜500nmの表面凹凸になっていることが好ましいといえる。
【0106】
本発明においては、ナノ電極およびその輪郭に沿って形成された蛍光体層を備えた電界発光素子、その製造方法が提供されている。本発明の説明を補助するために、特定の材料および製造方法の詳細が例として示されているが、本発明は、あくまでもこれらの例に限定されるものではなく、他の変形および形態が当業者によってなされるであろう。
【0107】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、集積回路に関連する半導体産業に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】薄膜半導体Si系蛍光体電界発光素子(従来技術)の部分断面図である。
【図2】微小突起の輪郭に沿って形成された蛍光体層を有する電界発光(EL)素子の詳細な部分断面図である。
【図3】図2の素子における、いくつかの微小突起を詳細に示した部分断面図である。
【図4】図2の電界発光素子の変形例を示す部分断面図である。
【図5】下部電極形成工程後の電界発光素子を示した図である。
【図6】ナノロッドの走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図7】図5の電界発光素子において、下部誘電体層の材料を堆積した後の状態を示す図である。
【図8】図7の電界発光素子において、蛍光体層を堆積した後の状態を示す図である。
【図9】図8の電界発光素子において、上部誘電体層を堆積した後の状態を示す図である。
【図10】図9の電界発光素子において、上部電極を堆積した後の状態を示す図である。
【図11】本発明の電界発光素子の完成させる工程を示した図である。
【図12】微小突起の輪郭に沿って形成された蛍光体層を有する電界発光素子の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0110】
202 下部電極
204 微小突起
206 蛍光体層
208 上面(蛍光体層の上面)
210 底面(蛍光体層の底面)
212 上部電極
400 下部誘電体層
402 底面(下部誘電体層の底面)
404 上面(下部誘電体層の上面)
406 上部誘電体層
408 底面(上部誘電体層の底面)
1204 工程(蛍光体層形成工程)
1206 工程(上部電極形成工程)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と上部電極とからなる一対の電極を有し、下部電極と上部電極との間に蛍光体を含む蛍光体層が設けられた電界発光素子であって、
上記下部電極は、ナノメートルオーダーの微小突起が下部電極表面に複数設けられたナノ構造を有し、
上記蛍光体層は、その底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることを特徴とする電界発光素子。
【請求項2】
上記上部電極は、その底面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項3】
下部電極と蛍光体層との間に、誘電体材料からなる下部誘電体層が形成されており、
上記下部誘電体層は、その底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電界発光素子。
【請求項4】
上記下部誘電体層が、HfO、Al、SiO、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、および金属ケイ酸塩を含む集団から選択された材料からなっていることを特徴とする請求項3に記載の電界発光素子。
【請求項5】
蛍光体層と上部電極との間に、誘電体からなる上部誘電体層が形成されており、
上記上部誘電体層は、その底面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電界発光素子。
【請求項6】
上記上部誘電体層が、SiO、SiON、2成分金属酸化物、3成分金属酸化物、および金属ケイ酸塩を含む集団から選択された材料からなっていることを特徴とする請求項5に記載の電界発光素子。
【請求項7】
下部電極と上部電極とからなる一対の電極を有し、下部電極と上部電極との間に蛍光体を含む蛍光体層が設けられた電界発光素子の製造方法であって、
ナノメートルオーダーの微小突起が複数設けられたナノ構造を有する下部電極を形成する下部電極形成工程と、
底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程とを含むことを特徴とする電界発光素子の製造方法。
【請求項8】
底面及び上面が上記微小突起の輪郭に沿った凹凸面になるように上部電極を形成する上部電極形成工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の電界発光素子の製造方法。
【請求項9】
上記蛍光体層形成工程では、原子層堆積(ALD)により蛍光体層を形成することを特徴とする請求項7または8に記載の電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−244998(P2006−244998A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45847(P2006−45847)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】