電界発光素子、表示装置および照明装置
【課題】発光部から発した光を取り出す際に、簡易な構造で指向性の高い光を取り出すことができ、光の利用効率が高い電界発光素子等を提供する。
【解決手段】陽極部12と、陰極部14と、陽極部12および陰極部14の間に配される誘電体部13と、誘電体部13に隣接して配され陽極部12と陰極部14の間に電圧を印加することで発光する発光部17と、陽極部12と陰極部14の少なくとも一方に隣接して配され発光部17から発した光を取り出すための貫通部16の部分16a,16cと、を備えることを特徴とする電界発光素子10。
【解決手段】陽極部12と、陰極部14と、陽極部12および陰極部14の間に配される誘電体部13と、誘電体部13に隣接して配され陽極部12と陰極部14の間に電圧を印加することで発光する発光部17と、陽極部12と陰極部14の少なくとも一方に隣接して配され発光部17から発した光を取り出すための貫通部16の部分16a,16cと、を備えることを特徴とする電界発光素子10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、表示装置や照明装置に用いられる電界発光素子等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネセンス現象を利用したデバイスが重要度を増している。このようなデバイスとして、発光材料を層状に形成し、この発光層に陽極と陰極とからなる一対の電極を設けて電圧を印加することで発光を行わせる電界発光素子が注目を集めている。このような電界発光素子は、陽極と陰極の間に電圧を印加することで、陽極と陰極からそれぞれ正孔と電子を注入し、注入された電子と正孔とが、発光層で結合することにより生じるエネルギーを利用して発光を行う。即ち、電界発光素子は、この結合によるエネルギーで発光層の発光材料が励起され、励起状態から再び基底状態に戻る際に光を発生する現象を利用したデバイスである。
【0003】
この電界発光素子を表示装置として使用した場合、発光材料が自己発光であるため、表示装置としての応答速度が速く、視野角が広いという特徴を有する。更に電界発光素子の構造上、表示装置の薄型化が容易になるという利点もある。また発光材料として例えば有機物質を利用した有機電界発光素子の場合は、有機物質の選択によって色純度の高い光を発生させやすく、そのため色再現域を広くとることが可能であるという特徴がある。
更に、電界発光素子は、白色での発光も可能であり、面発光であることから、この電界発光素子を照明装置に組み込んで利用する用途も提案されている。
【0004】
特許文献1には、表面上にドットマトリクスアレイに配列されたエレクトロルミネセンスセルを備えた観察表面を有し、各セルは表面に平行な任意の寸法の5乃至10倍である表面に垂直な高さを有し、各セルはディスプレイの表面に平行にセルの両端間に電界を供給するために両側に電極を有しているパネルディスプレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平7−506440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで一般に、エレクトロルミネセンスセルを備えた観察表面を有し、各セルが表面に平行な垂直な高さを有するパネルディスプレイでは、発光面を基板面に対し垂直な発光構造を形成することができ、光の指向性を高めやすい。ところが、このようなセルの構造では、3次元構造体を形成する必要があり工程が多段階となるため、製造コストの上昇、歩留まりの低下、加工精度の低下などの問題が生じやすい。またこのエレクトロルミネセンスセルは無機物質をエレクトロルミネセンス材料として使用することが前提であり、電極間距離が10μm程度と広い。しかしながら有機物質をエレクトロルミネセンス材料として使用する場合は、電極間距離が100nm程度となることが好ましい。そのため有機物質をエレクトロルミネセンス材料として使用する場合に適用するには、電極間距離をナノメートルの精度で均一に形成する必要がある。これには高い精度を有する加工が必要となり、困難が生じやすい。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、発光部から発した光を取り出す際に、簡易な構造で指向性の高い光を取り出すことができ、光の利用効率が高い電界発光素子等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電界発光素子は、第1の電極部と、第2の電極部と、第1の電極部および第2の電極部の間に配される誘電体部と、誘電体部に隣接して配され第1の電極部と第2の電極部の間に電圧を印加することで発光する発光部と、第1の電極部と第2の電極部の少なくとも一方に隣接して配され発光部から発した光を取り出す光取り出し部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、発光部を形成する発光材料を、誘電体部と第2の電極部の間に更に延伸して連続形成することが好ましく、発光部を形成する発光材料は、燐光発光する有機材料を含むことが好ましい。
また誘電体部と発光部とは、交互に繰り返して配列することが好ましく、誘電体部と誘電体部に隣接する誘電体部は、距離が10μm以下であることが好ましい。
また更に光取り出し部は、略円柱形状または互いに略平行である溝形状をなすことが好ましい。
そして第1の電極部を形成するための基板を更に有し、基板は、発光部に対応する位置に穿孔部を有することが好ましい。
【0010】
また本発明の表示装置は、上記の電界発光素子を備えることを特徴とする。
【0011】
また本発明の照明装置は、上記の電界発光素子を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発光部から発した光を取り出す際に、簡易な構造で指向性の高い光を取り出すことができ、光の利用効率が高い電界発光素子等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される電界発光素子の構造の一例を説明した部分断面図である。
【図2】(a)は、本実施の形態において、主発光部で発した光が貫通部内を伝搬する経路について説明した図である。(b)は、貫通部を有さず、従来のサンドイッチ構造の電界発光素子について光の経路を説明した図である。
【図3】(a)〜(e)は、貫通部が、陽極部、誘電体部、陰極部を貫通する形態する種々の形態について説明した図である。
【図4】(a)〜(b)は穿孔部を設けた場合と設けなかった場合とで、発光部において発した光の進路について説明を行なった図である。
【図5】(a)〜(d)は、貫通部が、陽極部、誘電体部を貫通し、陰極部を貫通しない場合の種々の形態について説明した図である。
【図6】(a)〜(b)は、貫通部が、誘電体部、陰極部を貫通し、陽極部を貫通しない場合の種々の形態について説明した図である。
【図7】(a)〜(b)は、誘電体部と発光部とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の一例を説明した図である。
【図8】(a)〜(b)は、誘電体部と発光部とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の他の例を説明した図である。
【図9】(a)〜(b)は、誘電体部と発光部とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の更に他の例を説明した図である。
【図10】(a)〜(g)は、本実施の形態が適用される電界発光素子の製造方法について説明した図である。
【図11】本実施の形態における電界発光素子を用いた表示装置の一例を説明した図である。
【図12】本実施の形態における電界発光素子を備える照明装置の一例を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(電界発光素子)
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される電界発光素子の構造の一例を説明した部分断面図である。
【0015】
図1(a)に示した電界発光素子10は、基板11と、基板11側を下側とした場合に基板11上に形成され正孔を注入するための第1の電極部としての陽極部12と、電子を注入するための第2の電極部としての陰極部14と、陽極部12および陰極部14の間に配される誘電体部13とが積層した構造を採る。また、陽極部12、誘電体部13、および陰極部14を貫通して形成される貫通部16を有する。この貫通部16は、陰極部14を貫通する部分16aと、誘電体部13を貫通する部分16bと、陽極部12を貫通する部分16cとからなる。更に、貫通部16を埋めるようにして形成される発光部17が形成される。この発光部17は、陽極部12および陰極部14の間に電圧を印加することにより発光する。そして主に発光する部分である主発光部17aを有する。主発光部17aは、本実施の形態では、誘電体部13に隣接する位置である。また主発光部17aは、貫通部16が誘電体部13を貫通する部分16bの位置と概ね一致している。なお図1(a)および以下の各図において、上述した貫通部16の各部分16a,16b,16cは、点線によりその境界を示している。
【0016】
ここで、主発光部17aから発した光は、貫通部16における誘電体部13を貫通する部分16bから、陰極部14を貫通する部分16aおよび陽極部12を貫通する部分16c中を伝搬し、それぞれ陽極部12、陰極部14の両側から出射する。これにより光を外部に取り出すことができる。即ち、陰極部14を貫通する部分16aおよび陽極部12を貫通する部分16cは、陽極部12と陰極部14の少なくとも一方に隣接して配され、発光部17から発した光を取り出す光取り出し部として捉えることができる。
【0017】
また図1(b)に示した電界発光素子20は、基板11と、基板11側を下側とした場合に基板11上に形成され正孔を注入するための第1の電極部としての陽極部12と、電子を注入するための第2の電極部としての陰極部14と、陽極部12および陰極部14の間に配される誘電体部13とが積層した構造を採るという点で、図1(a)で説明した電界発光素子10と共通する。ただし、貫通部16が陰極部14を貫通せず、貫通部16は、誘電体部13を貫通する部分16bと、陽極部12を貫通する部分16cとからなる。そのため発光部17は、誘電体部13を貫通する部分16bと、陽極部12を貫通する部分16cを埋めるようにして形成される。
また主発光部17aから発した光は、貫通部16における誘電体部13を貫通する部分16bから、陽極部12を貫通する部分16c中を伝搬し、陽極部12側から出射する。そしてこれにより光を外部に取り出すことができる。即ち、本実施の形態の場合、陽極部12を貫通する部分16cを、光取り出し部として捉えることができる。
【0018】
更に図1(c)に示した電界発光素子30は、電界発光素子20とは逆に貫通部16が、陽極部12を貫通せず、陰極部14を貫通する部分16aと、誘電体部13を貫通する部分16bとからなる。そのため発光部17は、陰極部14を貫通する部分16aと誘電体部13を貫通する部分16bを埋めるようにして形成される。
また主発光部17aから発した光は、貫通部16における誘電体部13を貫通する部分16bから、陰極部14を貫通する部分16a中を伝搬し、陰極部14側から出射する。そしてこれにより光を外部に取り出すことができる。即ち、本実施の形態の場合、陰極部14を貫通する部分16aを、光取り出し部として捉えることができる。
【0019】
図2(a)は、本実施の形態において、主発光部17aで発した光が貫通部16内を伝搬する経路について説明した図である。なおここでは、図1(b)で説明した電界発光素子20を例に採り説明を行なっている。
図2(a)で示したように発光部17aで発した光のうち、例えば、光L1のように図2(a)の向きで垂直方向に近い成分の光は、直接基板11に達し、外部に出射することが可能である。ただしこのような光は、全体としては多くなく、例えば、光L2、光L3の場合のように、図2(a)の向きで垂直方向から少し方向がずれると、基板11でなく、まず陽極部12や誘電体部13に達する。しかしこのような場合でも、陽極部12や誘電体部13において反射を生じ、そしてその反射光が基板11に達して外部に出射することが可能である。
【0020】
一方、図2(b)は、貫通部16を有さず、従来のサンドイッチ構造の電界発光素子について光の経路を説明した図である。
図2(b)で示した従来の電界発光素子80は、基板81上に陽極層82と、陽極層82上に積層して形成され発光材料からなる発光層83と、発光層83を挟んで陽極層82と対向して形成される陰極層84とからなる。
【0021】
このような電界発光素子80の場合は、図2(b)の向きで垂直方向に近い成分の光L4は、陽極層82を通して外部に出射させることができる。ただし発光層83から発する光は、ランダムな方向に均等に広がる光である。そのため電界発光素子80の外部に取り出される光も配光は放射角度に対して均等である所謂ランバーシアント分布となる。即ち、指向性が低い光となる。また、例えば、光L5の場合のように、図2(b)の向きで垂直方向から少し方向がずれると、陽極層82と陰極層84との間で全反射を生じる。そしてこのような光L5は、発光層83内部で全反射を繰り返す間に、反射界面および発光層83によって吸収されてしまい出射することができないか、または吸収されなかったとしても電界発光素子80の端面から横方向に出射する。端面から出射した光は、端面に垂直方向の成分を多く含む。つまり指向性が高い光である。しかし光が出射する部分の面積は、微小であって、また反射界面および発光層83によって多くは吸収され消失するために、光強度は小さく、結果として主たる光としては利用しにくい。
【0022】
一方、図1(a)〜(c)で説明した電界発光素子10,20,30の場合は、貫通部16内における全反射の繰り返し回数が少ないために、貫通部16内で閉じこめられ、吸収される光の割合が小さい。そのため光の取り出し効率は、電界発光素子80の場合より、図1(a)〜(c)で説明した電界発光素子10,20,30の方が高くしやすい。更に貫通部16内部において反射を生じる結果、光の取り出し面に対して垂直に近い光ほど、全反射の回数が少なくなる。そのため光の取り出し面に対して垂直に近い光ほど、貫通部16内で吸収される光が割合が少なくなるため、外部に効率的に取り出すことができる。よって外部に出射する光の指向性についても電界発光素子80より、電界発光素子10,20,30の方が高くなりやすく、更に光を放出する部分を面方向に連続的に並べることができるために、光の利用効率も高くしやすい。
【0023】
なお貫通部16が、陽極部12、誘電体部13、陰極部14を貫通する形態については、図1(a)で説明した電界発光素子10に限られるものではない。
図3(a)〜(e)は、貫通部16が、陽極部12、誘電体部13、陰極部14を貫通する形態する種々の形態について説明した図である。
【0024】
図3(a)に示した電界発光素子10aは、図1(a)で示した電界発光素子10に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を埋めるだけでなく、陰極部14の上部にも展開して連続形成されている点で相違する。
【0025】
また図3(b)に示した電界発光素子10bは、図1(a)で示した電界発光素子10に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を完全には埋めずに形成されている。つまり電界発光素子10bでは、貫通部16のうち誘電体部13を貫通する部分16bと、陽極部12を貫通する部分16cは発光材料により埋められているが、陰極部14を貫通する部分16aは途中までしか埋められていない。このような形態でも、陽極部12と陰極部14との間に電圧を印加することにより発光部17を発光させることは可能である。
【0026】
更に図3(c)に示した電界発光素子10cは、図1(a)で示した電界発光素子10に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を埋めると共に、誘電体部13の上部にも展開して連続形成されている。そして陰極部14は、この発光材料の上に形成される。ここで、誘電体部13の上部に形成される発光材料の厚さは、貫通部16のそれと比較して、半分以下であることが好ましい。つまり、厚さが半分を超えた場合は、光の一部が誘電体部13の上部に形成される発光材料の部分を横に伝搬しやすくなり、その結果、光がこの部分で吸収される結果、光の取り出し効率が低下するためである。
【0027】
また更に図3(d)に示した電界発光素子10dは、図1(a)で示した電界発光素子10に対して、基板11に穿孔部16dを有する。本実施の形態では、穿孔部16dは、貫通部16とその位置を合わせて形成される。そして、発光部17を形成する発光材料は、貫通部16を埋めると共に、穿孔部16dも埋めて形成されている。
そして図3(e)に示した電界発光素子10eは、図3(d)で示した電界発光素子10dに対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を完全には埋めずに形成されている。つまり電界発光素子10eでは、貫通部16のうち誘電体部13を貫通する部分16b、陽極部12を貫通する部分16c、および穿孔部16dは発光材料により埋められているが、陰極部14を貫通する部分16aは途中までしか埋められていない。
これらの電界発光素子10d,10eの場合、貫通部16と共に穿孔部16dも光取り出し部として把握することができる。
【0028】
図4(a)〜(b)は穿孔部16dを設けた場合と設けなかった場合とで、発光部17において発した光の進路について説明を行なった図である。
ここで図4(a)は、貫通部16と共に穿孔部16dを設けて作製した電界発光素子10dにおける光の進路について説明した図である。一方、図4(b)は、貫通部16は設けるが穿孔部16dを設けずに作製した電界発光素子10における光の進路について説明した図である。
図4(b)で示したように穿孔部16dを設けない場合、発光部17から発し、基板11側に向かう光は、その方向が基板11の表面に対し一定の角度より上である場合は、屈折しつつ基板11内に侵入し、光を基板11側から取り出すことができる。ただし、光の方向が基板11の表面に対し一定の角度以下である光L8の場合は、全反射を生じ、基板11内に侵入することができない。
一方、図4(a)で示したように穿孔部16dを設けた場合は、穿孔部16dの底部において全反射を生じる角度の光であっても、光L6のように穿孔部16dの側面においては、基板11内に侵入できる角度となる場合があり、その場合は基板11内に侵入することができる。また光L7のように穿孔部16dの底部において全反射しても穿孔部16dの側面において基板11内に侵入できる場合もある。この場合、陽極部12において更に反射を生じ、外部に出射する。結果として、基板11内に侵入することができる光の割合が図4(b)の場合より増加しやすい。即ち、全反射を生じる光の割合がより減少し、基板11側から取り出すことができる光の量が増加する。その結果、光の取り出し効率の向上を図ることができ、発光効率を向上させることができる。
【0029】
続いて、図1(b)で説明した電界発光素子20の他の形態について説明を行なう。
図5(a)〜(d)は、貫通部16が、陽極部12、誘電体部13を貫通し、陰極部14を貫通しない場合の種々の形態について説明した図である。
【0030】
図5(a)に示した電界発光素子20aは、図1(b)で示した電界発光素子20に対して、陰極部14が、発光部17を覆うだけでなく、発光部17の一部を囲むようにして形成される下垂部14aを有して形成されている。
【0031】
また図5(b)に示した電界発光素子20bは、図1(b)で示した電界発光素子20に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を埋めると共に、誘電体部13の上部にも展開して連続形成されている。そして陰極部14は、発光材料の上に形成される。
【0032】
更に図5(c)に示した電界発光素子20cは、図1(b)で示した電界発光素子20に対して、基板11に穿孔部16dを有する。本実施の形態では、穿孔部16dは、貫通部16とその位置を合わせて形成される場合である。
【0033】
更に図5(d)に示した電界発光素子20dは、図5(c)で示した電界発光素子20cに加えて、陰極部14が、図5(a)で示した電界発光素子20aと同様の下垂部14aを有して形成されている。
【0034】
これらの電界発光素子20c,20dの場合についても、貫通部16と共に穿孔部16dを光取り出し部として把握することができる。
【0035】
続いて、図1(c)で説明した電界発光素子30の他の形態について説明を行なう。
図6(a)〜(b)は、貫通部16が、誘電体部13、陰極部14を貫通し、陽極部12を貫通しない場合の種々の形態について説明した図である。
【0036】
図6(a)に示した電界発光素子30aは、図1(c)で示した電界発光素子30に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を完全には埋めずに形成されている。つまり電界発光素子30aでは、貫通部16のうち誘電体部13を貫通する部分16bは発光材料により埋められているが、陰極部14を貫通する部分16aは途中までしか埋められていない。
また図6(b)に示した電界発光素子30bは、図1(c)で示した電界発光素子30に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16bを埋めると共に、誘電体部13の上部にも展開して連続形成されている。そして陰極部14は、発光材料の上に更に形成される。
【0037】
また上述した各電界発光素子の基本構造において、誘電体部13と発光部17とは、交互に繰り返して配列することが好ましい。
図7(a)〜(b)は、誘電体部13と発光部17とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の一例を説明した図である。
ここで、図7(a)で示した電界発光素子10fは、図3(a)で説明した電界発光素子10aを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。そして、発光部17は、各誘電体部13の間において、凹部18を形成するようにして配列する。
また図7(b)で示した電界発光素子10gも同様にして、図3(a)で説明した電界発光素子10aを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。ただし、発光部17は、各誘電体部13の間において、凹部18を形成せず、各誘電体部13の間を埋めるようにして配列する。そのため発光部17の上面は、平面状となっている。
【0038】
このように、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列することにより、電界発光素子から発する光の光量を増加させることができる。つまり、互いに隣接する誘電体部13の間に発光部17が位置することになり、この部分において主発光部17aが生じることになる。そのため発光する箇所が増大し、光量もそれに応じて増大する。
【0039】
また図8(a)〜(b)は、誘電体部13と発光部17とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の他の例を説明した図である。
ここで、図8(a)で示した電界発光素子20eは、図5(b)で説明した電界発光素子20bを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。そして、発光部17は、陰極部14と共に各誘電体部13の間において、凹部18を形成するようにして配列する。
また図8(b)で示した電界発光素子20fも同様にして、図5(b)で説明した電界発光素子20bを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。ただし、発光部17は、各誘電体部13の間において、凹部18を形成せず、各誘電体部13の間を埋めるようにして配列する。そのため発光部17の上面は、平面状となり、それに応じて陰極部14も平面状となる。
【0040】
更に図9(a)〜(b)は、誘電体部13と発光部17とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の更に他の例を説明した図である。
ここで、図9(a)で示した電界発光素子20gは、図5(c)で説明した電界発光素子20cを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。そして、発光部17は、陰極部14と共に各誘電体部13の間において、凹部18を形成するようにして配列する。
また図9(b)で示した電界発光素子20hも同様にして、図5(c)で説明した電界発光素子20cを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。ただし、発光部17は、各誘電体部13の間において、凹部18を形成せず、各誘電体部13の間を埋めるようにして配列する。そのため発光部17の上面は、平面状となり、それに応じて陰極部14も平面状となる。
【0041】
次に、基板11、陽極部12、誘電体部13、陰極部14、貫通部16、発光部17について更に詳しく説明を行なう。
【0042】
基板11は、陽極部12、誘電体部13、陰極部14、発光部17を形成する支持体となるものである。基板11には、上述した各電界発光素子に要求される機械的強度を満たす材料が用いられる。
【0043】
基板11の材料としては、図1(c)で示した電界発光素子30のように陽極部12が貫通部16に貫通されない場合で、基板11側から光を取り出したい場合は、可視光に対して透明であることが必要である。具体的には、サファイアガラス、ライムソーダガラス、石英ガラスなどのガラス類;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂などの透明樹脂;シリコン樹脂;窒化アルミ、アルミナなどの透明金属酸化物などが挙げられる。なお基板11として、上記透明樹脂からなる樹脂フィルム等を使用する場合は、水、酸素などのガスに対するガス透過性が低いことが好ましい。ガス透過性が高い樹脂フィルム等を使用する場合は、光の透過性を損なわない範囲でガスの透過を抑制するバリア性薄膜を形成することが好ましい。
電界発光素子の基板11側から光を取り出す必要がない場合、または図1(a)〜(b)で示した電界発光素子10,20のように陽極部12が貫通部16により貫通する場合は、基板11の材料としては、電界発光素子の発光色に対して透明であるものに限られず、不透明なものも使用できる。具体的には、上記材料に加えて、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、もしくはニオブ(Nb)の単体、またはこれらの合金、あるいはステンレス、SiO2やAl2O3などの酸化物、n−Siなどの半導体などからなる材料も使用することができる。
なお光を取り出す側が、基板11側の場合、陽極部12は不透明である方が好ましい。つまり、陽極部12が不透明であると発光部17と誘電体部13の界面で反射せずに誘電体部13に侵入した後で基板11側から出射する光を遮断しやすくなる。このような光は、光の取り出し面(本実施の形態の場合、基板11表面)から出射する際の角度が浅いため、取り出した光の指向性を悪化させる要因となる。またこの目的で、陽極部12に透明な材料を使用する場合でも、陽極部12と基板11、あるいは陽極部12と誘電体部13との間に、電界発光素子の発光色に対して不透明な層を追加することもできる。
基板11の厚さは、要求される機械的強度にもよるが、好ましくは、0.1mm〜10mm、より好ましくは0.25mm〜2mmである。
【0044】
陽極部12は、陰極部14との間で電圧を印加し、陽極部12より発光部17に正孔を注入する。陽極部12に使用される材料としては、電気伝導性を有するものであることが必要である。具体的には仕事関数が低いものであり、仕事関数は、−4.5eV以下であることが好ましい。加えて、アルカリ性水溶液に対し、電気抵抗が顕著に変化しないことが好ましい。
【0045】
このような条件を満たす材料として、金属酸化物、金属、合金が使用できる。ここで、金属酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)が挙げられる。また金属としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)等が挙げられる。そしてこれらの金属を含むステンレス等の合金も使用できる。陽極部12の厚さは、例えば、2nm〜2mmで形成することができる。なお仕事関数は、例えば、紫外線光電子分光分析法により測定することができる。
【0046】
誘電体部13は、陽極部12と陰極部14の間に設けられ、陽極部12と陰極部14とを所定の間隔にて分離し絶縁すると共に、発光部17に電圧を印加するためのものである。このため誘電体部13は高抵抗率材料であることが必要であり、電気抵抗率としては、108Ωcm以上、好ましくは1012Ωcm以上有することが要求される。具体的な材料としては、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物;酸化ケイ素(二酸化ケイ素)、酸化アルミニウム等の金属酸化物が挙げられるが、他にポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、パリレン等の高分子化合物も使用可能である。
発光部17から出射した光が誘電体部13との界面で失われることなく、発光部17側に反射されるためには、誘電体部13は、屈折率が発光部17を形成する発光材料と異なることが好ましい。具体的な材料としては、上述の材料はこの要件を満たしている。
ここで、短絡・電流リークを生じにくい電界発光素子を再現よく製造するためには、誘電体部13の厚さは厚いほど好ましい。つまり、誘電体部13の厚さは厚い方が、短絡・電流リークを引き起こす誘電体部13の欠陥の影響を除外あるいは抑制しやすくなる。このような短絡・電流リークを生じる原因としては、誘電体部13を形成する直前の基板11上に付着した埃や、誘電体部13の製造工程で発生する誘電体部13のピンホールなどが挙げられる。
【0047】
他方、電界発光素子全体の厚さを抑えるために誘電体部13の厚さは、1μmを越えないことが好ましい。また、陽極部12と陰極部14との間隔が狭い方が、発光のために必要な電圧が低くて済むので、この観点からも誘電体部13は薄い方がより好ましい。但し、薄すぎると電界発光素子を駆動するための電圧に対し、絶縁耐力が十分でなくなるおそれがある。ここで絶縁耐力は、発光部17が形成されていない状態で、陽極部12と陰極部14の間に流れる電流の電流密度が、0.1mA/cm2以下であることが好ましく、0.01mA/cm2以下であることがより好ましい。また電界発光素子の駆動電圧に対し、2Vを超えた電圧に耐えることが好ましいため、例えば、駆動電圧が5Vである場合は、発光部17が形成されていない状態で、陽極部12と陰極部14の間に約7Vの電圧を印加した場合に上記の電流密度を満たすことが必要である。これを満たす誘電体部13の厚さは、上限としては、750nm以下であることが好ましく、400nm以下であることが更に好ましく、200nm以下であることがまた更に好ましい。また下限としては15nm以上であることが好ましく、30nm以上であることが更に好ましく、50nm以上であることがまた更に好ましい。
【0048】
陰極部14は、陽極部12との間で電圧を印加し、発光部17に電子を注入する。陰極部14に使用される材料としては、陽極部12と同様に電気伝導性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、仕事関数が低く、かつ化学的に安定なものが好ましい。仕事関数は、化学的安定性を考慮すると−2.9eV以下であることが好ましい。具体的には、Al、MgAg合金、AlLiやAlCaなどのAlとアルカリ金属の合金等の材料を例示することができる。陰極部14の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50nm〜500nmがより好ましい。陽極部12と同様に図1(b)で示した電界発光素子20のように陰極部14が貫通部16に貫通されない場合で、陰極部14側から光を取り出したい場合は、陰極部14は、可視光に対して透明であることが必要である。また電界発光素子の陰極部14側から光を取り出す必要がない場合、または図1(a)、(c)で示した電界発光素子10,30のように陰極部14が貫通部16により貫通する場合は、基板11の材料としては、可視光に対して透明であるものに限られず、不透明なものも使用できる。
【0049】
また、陰極部14から発光部17への電子の注入障壁を下げて電子の注入効率を上げる目的で、図示しない陰極バッファ部を、陰極部14に隣接して設けてもよい。陰極バッファ部は、陰極部14より仕事関数の低いことが必要であり、金属材料が好適に用いられる。例えば、アルカリ金属(Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Sr、Ba、Ca、Mg)、希土類金属(Pr、Sm、Eu、Yb)、あるいはこれら金属のフッ化物、塩化物、酸化物から選ばれる単体あるいは2つ以上の混合物を使用することができる。陰極バッファ部の厚さは0.05nm〜50nmが好ましく、0.1nm〜20nmがより好ましく、0.5nm〜10nmがより一層好ましい。
【0050】
また陰極部14から発光部17への電子の注入障壁を下げて電子の注入効率を上げる目的で、陰極バッファ部と発光部17との間に有機物からなる材料を含む有機半導体部としての電子輸送部(図示せず)を更に設けることもできる。
【0051】
電子輸送部に用いることができる材料としては、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体などが挙げられる。更に具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン、バソキュプロイン(略称:BCP)、トリフェニルビスイミダゾール(BPBI)、2,2’,2”−(1,3,5−Benzenetriyl)tris[1−phenyl−1H−benzimidazole](略称:TPBI)、3,3’−[5’−[4−(3−Pyridinyl)phenyl][1,1’:3’,1”−terphenyl]−4,4”−diyl]bispyridine(略称:TPyTPB)、4,4’−[5’−[3−(4−Pyridinyl)phenyl][1,1’:3’,1”−terphenyl]−3,3”−diyl]bispyridine(略称:m4TPyTPB)、3,3’−[5’−[3−(3−Pyridinyl)phenyl][1,1’:3’,1”−terphenyl]−3,3”−diyl]bispyridine(略称:mTPyTPB)、2,2’−[5’−[3−(2−Pyridinyl)phenyl][1,1’:3’,1”−terphenyl]−3,3”−diyl]bispyridine(略称:m2TPyTPB)、3−[4−[Bis(2,4,6−trimethylphenyl)boryl]−3,5−dimethylphenyl]pyridin(略称:Py211B)などである。この中でも、TPBI、TPyTPB、m4TPyTPB、mTPyTPB、m2TPyTPB、Py211Bをより好ましく用いることができる。
【0052】
ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送部として用いても構わない。また、電子輸送部は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。電子輸送膜の膜厚は、薄すぎる場合は電子注入効率を高める効果が発現しない。また、厚すぎる場合、電子輸送部に印加される電圧が高くなるために、素子全体としての駆動電圧が上昇し電力効率の低下となるため好ましくない。よってこれらの条件を満たす電子輸送部の膜厚は、具体的には0.5nm〜50nmであることが好ましく、1nm〜10nmであることがより好ましい。
電子輸送部を形成する手法としては、一般的に用いられる真空蒸着装置を用いた抵抗加熱方式により、真空下の蒸着方法を用いることができる。
【0053】
貫通部16は、発光部17をその内面に塗布し、かつ発光部17からの光を取り出すためのものであり、本実施の形態では、誘電体部13、および第1の電極部である陽極部12と第2の電極部である陰極部14の少なくとも一方を貫通するように形成する。
【0054】
貫通部16の形状は、特に限定されることはない。但し、形状制御が行いやすいという観点から例えば円柱形状または溝形状とすることが好ましい。なお本実施の形態において円柱形状とは、厳密な意味での円柱形状である必要はなく、大体円柱形状であるといういわゆる略円柱形状をも含むものである。なお本実施の形態の場合は、光取り出し部が、円柱形状または溝形状とすることが好ましいと言い換えることもできる。
また、貫通部16を複数の直線状の溝形状で形成した場合、この直線に並行かつ基板11表面に垂直な面に対しては、出射する光の配光は放射角度に対して均等(ランバーシアント)である。対して、この直線に垂直かつ基板11表面に垂直な面に対しては、出射する光の配光は基板11に垂直な方向に強くすることができる。これにより、例えば、棒状の蛍光灯に類似した配光を再現することが可能となる。また、貫通部16を複数の直交する直線状の溝形状で形成した場合、これらの直線に垂直な2つの互いに直交する面(つまりXおよびY面)に対しては、配光は基板11に垂直な方向に強くし、それ以外の方向では、配光がランバーシアントに近くすることができる。
本実施の形態の電界発光素子では、主発光部17aで強く光る場合においては貫通部16の間隔を小さくすれば、それだけ単位面積当たりの貫通部16の数が増加するため、発光強度を大きくすることができる。また、発光部17は、貫通部16の中央部において非発光部分となりやすく、この非発光部分の面積が大きいと電界発光素子を高輝度で発光させにくい。よって、貫通部16の幅を小さくすれば、貫通部16の中央部の非発光部分が減少することになるため、発光強度を大きくしやすくなる。なお、ここで貫通部16の幅とは、貫通部16の端部から他の端部への短軸側の距離(最短距離)を指す。また同上の理由で隣接する貫通部16同士の短軸側の距離(最短距離)も短いほうがよい。具体的には、誘電体部13と隣接する隣の誘電体部13とは、距離が10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが最も好ましい。この距離は即ち貫通部16同士の短軸側の距離(最短距離)となる。
【0055】
発光部17は、電圧を印加し、電流を供給することで光を発する発光材料であり、貫通部16の内面に接触して塗布されることで形成される。発光部17において、陽極部12から注入された正孔と陰極部14から注入された電子(正孔)とが再結合し、発光が生じる。そして本実施の形態では、上述の通り貫通部16は、発光部17により埋められている。
【0056】
発光部17の材料としては、有機材料および無機材料の何れをも使用することができる。この場合、有機材料を用いた電界発光素子は、有機電界発光素子として捉えることができる。
ここで有機材料を発光材料として用いる場合は、低分子化合物及び高分子化合物のいずれをも使用することができる。例えば、大森裕:応用物理、第70巻、第12号、1419−1425頁(2001年)に記載されている発光性低分子化合物及び発光性高分子化合物などを例示することができる。
【0057】
但し、本実施の形態では、塗布性に優れた材料が好ましい。即ち本実施の形態における電界発光素子の構造では、発光部17が貫通部16内で安定に発光するためには発光部17が貫通部16の内面に均一にかつ膜厚が均等に成膜されること、即ちカバレッジ性が向上することが好ましい。塗布性に優れた材料を使用せずに発光部17を形成すると、貫通部16全体に発光部17が一様に接していない、あるいは貫通部16内面の膜厚が均一でない成膜状態になりやすい。
また、貫通部16内に発光部17を均一に形成するためには、塗布法で行うことが好ましい。即ち、塗布法では、貫通部16に発光材料を含む発光材料溶液を埋め込むことが容易であるため、凹凸を有する面においてもカバレッジ性を高めて成膜することが可能である。塗布法においては塗布性を向上させる目的で、主に重量平均分子量で1,000〜2,000,000である材料が好適に用いられる。また、塗布性を向上させるためレベリング剤、脱泡剤などの塗布性向上添加剤を添加したり、電荷トラップ能力の少ないバインダー樹脂を添加することもできる。
【0058】
具体的に、塗布性に優れる材料としては、例えば、特開2007−86639号公報に挙げられている所定の構造を有する分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物や、特開2000−034476号公報に挙げられている所定の高分子蛍光体などが挙げられる。
ここで、塗布性に優れた材料の中でも、電界発光素子の製造のプロセスが簡素化されるという点で発光性高分子化合物が好ましく、発光効率が高い点で燐光発光性化合物が好ましい。従って、特に燐光発光性高分子化合物が好ましい。なお、複数の材料同士を混合、あるいは塗布性を損なわない範囲で低分子発光材料(例えば、分子量1000以下)を添加することも可能である。この際の低分子発光材料の添加量は30wt%以下が好ましい。
また、発光性高分子化合物は、共役発光性高分子化合物と非共役発光性高分子化合物とに分類することもできるが、中でも非共役発光性高分子化合物が好ましい。
上記の理由から、本実施の形態で用いられる発光材料としては、燐光発光性非共役高分子化合物(燐光発光性高分子であり、かつ非共役発光性高分子化合物でもある発光材料)が特に好ましい。
【0059】
本実施の形態の電界発光素子における発光部17は、好ましくは、燐光を発光する燐光発光性単位とキャリアを輸送するキャリア輸送性単位とを一つの分子内に備えた、燐光発光性高分子(燐光発光する有機材料)を少なくとも含む。燐光発光性高分子は、重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物とを共重合することによって得られる。燐光発光性化合物はイリジウム(Ir)、白金(Pt)および金(Au)の中から一つ選ばれる金属元素を含む金属錯体であり、中でもイリジウム錯体が好ましい。
【0060】
燐光発光性化合物における重合性置換基としては、例えば、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などが挙げられ、中でもビニル基、メタクリレート基、スチリル基及びその誘導体が好ましい。これらの置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して金属錯体に結合していてもよい。
重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物は、ホール輸送性および電子輸送性の内のいずれか一方または両方の機能を有する有機化合物における一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。
【0061】
キャリア輸送性化合物における重合性置換基はビニル基であるが、ビニル基をアクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などの重合性置換基で置換した化合物であってもよい。また、これらの重合性置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して結合していてもよい。
【0062】
重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。また、重合体の分子量が重量平均分子量で1,000〜2,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。ここでの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定されるポリスチレン換算分子量である。
【0063】
燐光発光性高分子は、一つの燐光発光性化合物と一つのキャリア輸送性化合物、一つの燐光発光性化合物と二つ以上のキャリア輸送性化合物を共重合したものであってもよく、また二つ以上の燐光発光性化合物をキャリア輸送性化合物と共重合したものであってもよい。
【0064】
燐光発光性高分子におけるモノマーの配列は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよく、燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数をm、キャリア輸送性化合物構造の繰り返し単位数をnとしたとき(m、nは1以上の整数)、全繰り返し単位数に対する燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数の割合、すなわちm/(m+n)の値は、0.001〜0.5が好ましく、0.001〜0.2がより好ましい。
【0065】
燐光発光性高分子のさらに具体的な例と合成法は、例えば特開2003−342325号公報、特開2003−119179号公報、特開2003−113246号公報、特開2003−206320号公報、特開2003−147021号公報、特開2003−171391号公報、特開2004−346312号公報、特開2005−97589号公報、特開2007−305734号公報に開示されている。
【0066】
本実施の形態における電界発光素子の発光部17は、好ましくは前述した燐光発光性化合物を含むが、発光部17のキャリア輸送性を補う目的で正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物が含まれていてもよい。これらの目的で用いられる正孔輸送性化合物としては、例えば、TPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4,4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)などの低分子トリフェニルアミン誘導体が挙げられる。更に、ポリビニルカルバゾール、トリフェニルアミン誘導体に重合性官能基を導入して高分子化したもの;特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物;ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレンなどが挙げられる。また、電子輸送性化合物としては、例えば、Alq3(アルミニウムトリスキノリノレート)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体などの低分子材料が挙げられる。更に上記の低分子電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどの既知の電子輸送性化合物が挙げられる。
【0067】
また、発光部17に使用する発光材料として上述した発光性高分子化合物ではなく発光性低分子化合物を使用する場合でも、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物、もしくは積層が可能である。そして、発光材料として上述した発光性高分子化合物を添加することも可能である。
この場合の正孔輸送性化合物の具体例としては、例えば、特開2006−76901号公報に記載されているTPD、α−NPD、m−MTDATA、フタロシアニン錯体、DTDPFL、spiro−TPD、TPAC、PDA等が挙げられる。
【0068】
電子輸送性化合物の具体例としては、例えば、特開2006−76901号公報に記載されているBPhen、BCP、OXD−7、TAZ等が挙げられる。
【0069】
また、例えば、特開2006−273792号公報に記載の一分子内に正孔輸送性及び電子輸送性を有するバイポーラー型分子構造を有する化合物でも使用可能である。
【0070】
本実施の形態における電界発光素子は、上述の通り発光体として無機材料を用いることもできる。無機材料を用いた電界発光素子は、無機電界発光素子として捉えることができる。無機材料としては、例えば無機蛍光体を用いることができる。この無機蛍光体の具体例、および電界発光素子の構成、製造方法は、例えば特開2008−251531号公報に記載されたものを公知の技術として挙げることができる。
【0071】
なお、以上詳述した各電界発光素子では、基板11側を下側とした場合、陽極部12を下側に形成し、誘電体部13を挟み対向する形で陰極部14を上側に形成する場合を例示して説明を行ったが、これに限られるものではなく、陽極部12と陰極部14を入れ替えた構造でもよい。即ち、基板11側を下側とした場合、陰極部14を下側に形成し、誘電体部13を挟み込み対向する形で陽極部12を上側に形成する形態でもよい。
【0072】
(電界発光素子の製造方法)
次に、本実施の形態が適用される電界発光素子の製造方法について、図8(b)で示した電界発光素子20fを例に取り説明を行う。
図10(a)〜(g)は、本実施の形態が適用される電界発光素子20fの製造方法について説明した図である。
まず基板11上に、第1の電極部である陽極部12を形成する(図10(a):第1電極部形成工程)。本実施の形態では、基板11として、ガラス基板を使用した。また陽極部12を形成する材料としてITOを使用した。
陽極部12を基板11上に形成するには、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などを用いることができる。また、塗布成膜方法、即ち、目的とする材料を溶剤に溶解させた状態で基板11に塗布し乾燥する方法が可能な場合は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などの方法を用いて成膜することも可能である。
なお基板11に陽極部12としてITOが既に形成されているいわゆる電極付き基板を用いることで、この第1電極部形成工程を省略することができる。
【0073】
陽極部12を形成した後は、次に誘電体部13の形成を行なう(図10(b):誘電体部形成工程)。本実施の形態では、誘電体部13を形成する材料として二酸化ケイ素(SiO2)を使用した。誘電体部13の形成についても、陽極部12の形成と同様に抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などを用いることができる。
【0074】
次に、図10(a)〜(b)の工程で形成した各層を貫通する形で貫通部16の形成を行う。ここで貫通部16を形成するには、例えば、リソグラフィを用いた方法が使用できる。これを行うには、まず誘電体部13の上にレジスト液を塗布し、スピンコート等により余分なレジスト液を除去して、レジスト部71を形成する(図10(c))。
【0075】
そして、貫通部16を形成するための所定のパターンが描画されたマスク(図示せず)をかぶせ、紫外線(UV:Ultra Violet)、電子線(EB:Electron Beam)等により露光を行うと、レジスト部71に貫通部16に対応した所定のパターンが露光される。そして現像液を用いてレジスト部71の露光部分を除去すると、露光されたパターンの部分のレジスト部71が除去される(図10(d))。これにより露光されたパターンの部分に対応して、誘電体部13の表面が露出する。
【0076】
次に、残存したレジスト部71をマスクとして、露出した誘電体部13の部分をエッチングし、この部分の誘電体部13および陽極部12を除去することで貫通部16を形成する。(図10(e))。エッチングとしては、ドライエッチングとウェットエッチングの何れをも使用することができる。またこの際に等方性エッチングと異方性エッチングを組合せることで、貫通部16の形状の制御を行うことができる。ドライエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)や誘導結合プラズマエッチングが利用でき、またウェットエッチングとしては、希塩酸や希硫酸への浸漬を行う方法などが利用できる。このエッチングにより上記パターンに対応して、基板11の表面が露出する。なお図10(c)〜図10(e)で説明した各工程は、陽極部12および誘電体部13を貫通する貫通部16を形成する貫通部形成工程として捉えることができる。
【0077】
次に、残存したレジスト部71をレジスト除去液等により除去し、貫通部16の内面および誘電体部13上に発光部17を形成する(図10(f):発光部形成工程)。発光部17の形成には、発光部17の説明において前述した塗布法が用いられる。具体的には、まず発光部17を構成する発光材料を、有機溶媒や水等の所定の溶媒に分散させた発光材料溶液(塗布液)を塗布する。塗布を行う際にはスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング法、インクジェット法、スリットコーティング法、ディスペンサー法、印刷等の種々の方法を使用することができる。塗布を行った後は、加熱あるいは真空引きを行うことで発光材料溶液を乾燥させ、発光材料が貫通部16の内面に固着し、発光部17が形成される。この際、発光部17は、誘電体部13上に展開した形で形成される。この形態によれば、塗布を行なった後、貫通部16以外の部分に塗布された塗布液を除去する必要がなくなるため、貫通部16の内部だけに発光部17を形成する場合に比べ電界発光素子20fの製造がより容易になる。なお発光部17を形成する前に、誘電体部13の表面と発光部17を形成する発光材料とが接する部分を、発光材料との親和性を高め、他方、それ以外の部分を、発光材料との親和性を低下させる処理を行なうことが好ましい。即ち、この場合、発光材料が誘電体部13の部分において形成されやすくなり、陽極部12と陰極部14の両電極に渡って形成されやすくなる。
【0078】
そして、第2電極部である陰極部14を、発光部17上に積層する形で形成する(図10(g):第2電極部形成工程)。陰極部14を形成するには、陽極部12を形成する方法と同様の方法で行うことができる。
【0079】
以上の工程により、電界発光素子20fを製造することができる。また、これら一連の工程後、電界発光素子20fを長期安定的に用い、電界発光素子20fを外部から保護するための保護層や保護カバー(図示せず)を装着することが好ましい。保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物、窒化ケイ素、酸化ケイ素等のシリコン化合物などを用いることができる。そして、これらの積層体も用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板、金属などを用いることができる。この保護カバーは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で基板11と貼り合わせて密閉する方法を採ることが好ましい。またこの際に、スペーサを用いることで所定の空間を維持することができ、電界発光素子20fが傷つくのを防止できるため好ましい。そして、この空間に窒素、アルゴン、ヘリウムのような不活性なガスを封入すれば、上側の陰極部14の酸化を防止しやすくなる。特にヘリウムを用いた場合、熱伝導が高いため、電圧印加時に電界発光素子20fより発生する熱を効果的に保護カバーに伝えることができるため、好ましい。更に酸化バリウム等の乾燥剤をこの空間内に設置することにより上記一連の製造工程で吸着した水分が電界発光素子20fにダメージを与えるのを抑制しやすくなる。
【0080】
なお、穿孔部16dを製造するには、上記の図10(e)で示したエッチングにより陽極部12および誘電体部13を除去する工程の後に、更に基板11の一部を穿つことで除去すればよい。これにより穿孔部16dを形成することができる。基板11の一部除去を行なうには、図10(e)で説明した方法と同様のエッチングを用いる方法で可能である。そしてこの際のエッチン部条件により穿孔部16dの形状を制御することができる。
【0081】
(表示装置)
次に、以上詳述した電界発光素子を備える表示装置について説明を行う。
図11は、本実施の形態における電界発光素子を用いた表示装置の一例を説明した図である。
図11に示した表示装置200は、いわゆるパッシブマトリクス型の表示装置であり、表示装置基板202、陽極配線204、陽極補助配線206、陰極配線208、絶縁膜210、陰極隔壁212、電界発光素子214、封止プレート216、シール材218とを備えている。
【0082】
表示装置基板202としては、例えば、矩形状のガラス基板等の透明基板を用いることができる。表示装置基板202の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1〜1mmのものを用いることができる。
【0083】
表示装置基板202上には、複数の陽極配線204が形成されている。陽極配線204は、一定の間隔を隔てて平行に配置される。陽極配線204は、透明導電膜により構成され、例えばITO(Indium Tin Oxide)を用いることができる。また陽極配線204の厚さは例えば、100nm〜150nmとすることができる。そして、それぞれの陽極配線204の端部の上には、陽極補助配線206が形成される。陽極補助配線206は陽極配線204と電気的に接続されている。このように構成することにより、陽極補助配線206は、表示装置基板202の端部側において外部配線と接続するための端子として機能し、外部に設けられた図示しない駆動回路から陽極補助配線206を介して陽極配線204に電流を供給することができる。陽極補助配線206は、例えば、厚さ500nm〜600nmの金属膜によって構成される。
【0084】
また、電界発光素子214上には、複数の陰極配線208が設けられている。複数の陰
極配線208は、それぞれが平行となるよう、かつ、陽極配線204と直交するように配設されている。陰極配線208には、Al又はAl合金を使用することができる。陰極配線208の厚さは、例えば、100nm〜150nmである。また、陰極配線208の端部には、陽極配線204に対する陽極補助配線206と同様に、図示しない陰極補助配線が設けられ、陰極配線208と電気的に接続されている。よって、陰極配線208と陰極補助配線との間に電流を流すことができる。
【0085】
表示装置基板202上には、陽極配線204を覆うように絶縁膜210が形成される。絶縁膜210には、陽極配線204の一部を露出するように矩形状の開口部220が設けられている。複数の開口部220は、陽極配線204の上にマトリクス状に配置されている。この開口部220において、後述するように陽極配線204と陰極配線208の間に電界発光素子214が設けられる。すなわち、それぞれの開口部220が画素となる。従って、開口部220に対応して表示領域が形成される。ここで、絶縁膜210の膜厚は、例えば、200nm〜300nmとすることができ、開口部220の大きさは、例えば、300μm×300μmとすることができる。
【0086】
陽極配線204上の開口部220の位置に対応した箇所に、電界発光素子214が形成されている。なお、ここで電界発光素子214は、陽極配線204が基板11の代わりとなるため、陽極配線204の上に直接、陽極部12、誘電体部13、陰極部14、発光部17(図1参照)が形成されている。電界発光素子214は、開口部220において陽極配線204と陰極配線208とに挟持されている。すなわち、電界発光素子214の陽極部12が陽極配線204と接触し、陰極部14が陰極配線208と接触する。電界発光素子214の厚さは、例えば、150nm〜200nmとすることができる。
【0087】
絶縁膜210の上には、複数の陰極隔壁212が陽極配線204と垂直な方向に沿って形成されている。陰極隔壁212は、陰極配線208の配線同士が導通しないように、複数の陰極配線208を空間的に分離するための役割を担っている。従って、隣接する陰極隔壁212の間にそれぞれ陰極配線208が配置される。陰極隔壁212の大きさとしては、例えば、高さが2μm〜3μm、幅が10μmのものを用いることができる。
【0088】
表示装置基板202は、封止プレート216とシール材218を介して貼り合わせられている。これにより、電界発光素子214が設けられた空間を封止することができ、電界発光素子214が空気中の水分により劣化するのを防ぐことができる。封止プレート216としては、例えば、厚さが0.7mm〜1.1mmのガラス基板を使用することができる。
【0089】
このような構造の表示装置200において、図示しない駆動装置により、陽極補助配線206、図示しない陰極補助配線を介して、電界発光素子214に電流を供給し、発光部17を発光させ、貫通部16から光を出射させることができる。そして、上述の画素に対応した電界発光素子214の発光、非発光を制御装置により制御することにより、表示装置200に画像を表示させることができる。
【0090】
(照明装置)
次に、電界発光素子20fを用いた照明装置について説明を行う。
図12は、本実施の形態における電界発光素子を備える照明装置の一例を説明した図である。
図12に示した照明装置300は、上述した電界発光素子20fと、電界発光素子20fの基板11(図1参照)に隣接して設置され陽極部12(図1参照)に接続される端子302と、基板11(図1参照)に隣接して設置され電界発光素子20fの陰極部14(図1参照)に接続される端子303と、端子302と端子303とに接続し電界発光素子20fを駆動するための点灯回路301とから構成される。
【0091】
点灯回路301は、図示しない直流電源と図示しない制御回路を内部に有し、端子302と端子303を通して、電界発光素子20fの陽極部12と陰極部14との間に電流を供給する。そして、電界発光素子20fを駆動し、発光部17(図1参照)を発光させて、貫通部16から基板11を通し、光を出射させ、照明光として利用する。発光部17は白色光を出射する発光材料より構成されていてもよく、また緑色光(G)、青色光(B)、赤色光(R)を出射する発光材料を使用した電界発光素子20fをそれぞれ複数個設け、その合成光が白色となるようにしてもよい。なお、本実施の形態の照明装置300では、貫通部16(図1参照)の径と間隔を小さくして発光させた場合、人間の目には面発光しているように見える。
【符号の説明】
【0092】
10…電界発光素子、11…基板、12…陽極部、13…誘電体部、14…陰極部、16…貫通部、16d…穿孔部、17…発光部、200…表示装置、300…照明装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、表示装置や照明装置に用いられる電界発光素子等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネセンス現象を利用したデバイスが重要度を増している。このようなデバイスとして、発光材料を層状に形成し、この発光層に陽極と陰極とからなる一対の電極を設けて電圧を印加することで発光を行わせる電界発光素子が注目を集めている。このような電界発光素子は、陽極と陰極の間に電圧を印加することで、陽極と陰極からそれぞれ正孔と電子を注入し、注入された電子と正孔とが、発光層で結合することにより生じるエネルギーを利用して発光を行う。即ち、電界発光素子は、この結合によるエネルギーで発光層の発光材料が励起され、励起状態から再び基底状態に戻る際に光を発生する現象を利用したデバイスである。
【0003】
この電界発光素子を表示装置として使用した場合、発光材料が自己発光であるため、表示装置としての応答速度が速く、視野角が広いという特徴を有する。更に電界発光素子の構造上、表示装置の薄型化が容易になるという利点もある。また発光材料として例えば有機物質を利用した有機電界発光素子の場合は、有機物質の選択によって色純度の高い光を発生させやすく、そのため色再現域を広くとることが可能であるという特徴がある。
更に、電界発光素子は、白色での発光も可能であり、面発光であることから、この電界発光素子を照明装置に組み込んで利用する用途も提案されている。
【0004】
特許文献1には、表面上にドットマトリクスアレイに配列されたエレクトロルミネセンスセルを備えた観察表面を有し、各セルは表面に平行な任意の寸法の5乃至10倍である表面に垂直な高さを有し、各セルはディスプレイの表面に平行にセルの両端間に電界を供給するために両側に電極を有しているパネルディスプレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平7−506440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで一般に、エレクトロルミネセンスセルを備えた観察表面を有し、各セルが表面に平行な垂直な高さを有するパネルディスプレイでは、発光面を基板面に対し垂直な発光構造を形成することができ、光の指向性を高めやすい。ところが、このようなセルの構造では、3次元構造体を形成する必要があり工程が多段階となるため、製造コストの上昇、歩留まりの低下、加工精度の低下などの問題が生じやすい。またこのエレクトロルミネセンスセルは無機物質をエレクトロルミネセンス材料として使用することが前提であり、電極間距離が10μm程度と広い。しかしながら有機物質をエレクトロルミネセンス材料として使用する場合は、電極間距離が100nm程度となることが好ましい。そのため有機物質をエレクトロルミネセンス材料として使用する場合に適用するには、電極間距離をナノメートルの精度で均一に形成する必要がある。これには高い精度を有する加工が必要となり、困難が生じやすい。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、発光部から発した光を取り出す際に、簡易な構造で指向性の高い光を取り出すことができ、光の利用効率が高い電界発光素子等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電界発光素子は、第1の電極部と、第2の電極部と、第1の電極部および第2の電極部の間に配される誘電体部と、誘電体部に隣接して配され第1の電極部と第2の電極部の間に電圧を印加することで発光する発光部と、第1の電極部と第2の電極部の少なくとも一方に隣接して配され発光部から発した光を取り出す光取り出し部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、発光部を形成する発光材料を、誘電体部と第2の電極部の間に更に延伸して連続形成することが好ましく、発光部を形成する発光材料は、燐光発光する有機材料を含むことが好ましい。
また誘電体部と発光部とは、交互に繰り返して配列することが好ましく、誘電体部と誘電体部に隣接する誘電体部は、距離が10μm以下であることが好ましい。
また更に光取り出し部は、略円柱形状または互いに略平行である溝形状をなすことが好ましい。
そして第1の電極部を形成するための基板を更に有し、基板は、発光部に対応する位置に穿孔部を有することが好ましい。
【0010】
また本発明の表示装置は、上記の電界発光素子を備えることを特徴とする。
【0011】
また本発明の照明装置は、上記の電界発光素子を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発光部から発した光を取り出す際に、簡易な構造で指向性の高い光を取り出すことができ、光の利用効率が高い電界発光素子等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される電界発光素子の構造の一例を説明した部分断面図である。
【図2】(a)は、本実施の形態において、主発光部で発した光が貫通部内を伝搬する経路について説明した図である。(b)は、貫通部を有さず、従来のサンドイッチ構造の電界発光素子について光の経路を説明した図である。
【図3】(a)〜(e)は、貫通部が、陽極部、誘電体部、陰極部を貫通する形態する種々の形態について説明した図である。
【図4】(a)〜(b)は穿孔部を設けた場合と設けなかった場合とで、発光部において発した光の進路について説明を行なった図である。
【図5】(a)〜(d)は、貫通部が、陽極部、誘電体部を貫通し、陰極部を貫通しない場合の種々の形態について説明した図である。
【図6】(a)〜(b)は、貫通部が、誘電体部、陰極部を貫通し、陽極部を貫通しない場合の種々の形態について説明した図である。
【図7】(a)〜(b)は、誘電体部と発光部とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の一例を説明した図である。
【図8】(a)〜(b)は、誘電体部と発光部とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の他の例を説明した図である。
【図9】(a)〜(b)は、誘電体部と発光部とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の更に他の例を説明した図である。
【図10】(a)〜(g)は、本実施の形態が適用される電界発光素子の製造方法について説明した図である。
【図11】本実施の形態における電界発光素子を用いた表示装置の一例を説明した図である。
【図12】本実施の形態における電界発光素子を備える照明装置の一例を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(電界発光素子)
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される電界発光素子の構造の一例を説明した部分断面図である。
【0015】
図1(a)に示した電界発光素子10は、基板11と、基板11側を下側とした場合に基板11上に形成され正孔を注入するための第1の電極部としての陽極部12と、電子を注入するための第2の電極部としての陰極部14と、陽極部12および陰極部14の間に配される誘電体部13とが積層した構造を採る。また、陽極部12、誘電体部13、および陰極部14を貫通して形成される貫通部16を有する。この貫通部16は、陰極部14を貫通する部分16aと、誘電体部13を貫通する部分16bと、陽極部12を貫通する部分16cとからなる。更に、貫通部16を埋めるようにして形成される発光部17が形成される。この発光部17は、陽極部12および陰極部14の間に電圧を印加することにより発光する。そして主に発光する部分である主発光部17aを有する。主発光部17aは、本実施の形態では、誘電体部13に隣接する位置である。また主発光部17aは、貫通部16が誘電体部13を貫通する部分16bの位置と概ね一致している。なお図1(a)および以下の各図において、上述した貫通部16の各部分16a,16b,16cは、点線によりその境界を示している。
【0016】
ここで、主発光部17aから発した光は、貫通部16における誘電体部13を貫通する部分16bから、陰極部14を貫通する部分16aおよび陽極部12を貫通する部分16c中を伝搬し、それぞれ陽極部12、陰極部14の両側から出射する。これにより光を外部に取り出すことができる。即ち、陰極部14を貫通する部分16aおよび陽極部12を貫通する部分16cは、陽極部12と陰極部14の少なくとも一方に隣接して配され、発光部17から発した光を取り出す光取り出し部として捉えることができる。
【0017】
また図1(b)に示した電界発光素子20は、基板11と、基板11側を下側とした場合に基板11上に形成され正孔を注入するための第1の電極部としての陽極部12と、電子を注入するための第2の電極部としての陰極部14と、陽極部12および陰極部14の間に配される誘電体部13とが積層した構造を採るという点で、図1(a)で説明した電界発光素子10と共通する。ただし、貫通部16が陰極部14を貫通せず、貫通部16は、誘電体部13を貫通する部分16bと、陽極部12を貫通する部分16cとからなる。そのため発光部17は、誘電体部13を貫通する部分16bと、陽極部12を貫通する部分16cを埋めるようにして形成される。
また主発光部17aから発した光は、貫通部16における誘電体部13を貫通する部分16bから、陽極部12を貫通する部分16c中を伝搬し、陽極部12側から出射する。そしてこれにより光を外部に取り出すことができる。即ち、本実施の形態の場合、陽極部12を貫通する部分16cを、光取り出し部として捉えることができる。
【0018】
更に図1(c)に示した電界発光素子30は、電界発光素子20とは逆に貫通部16が、陽極部12を貫通せず、陰極部14を貫通する部分16aと、誘電体部13を貫通する部分16bとからなる。そのため発光部17は、陰極部14を貫通する部分16aと誘電体部13を貫通する部分16bを埋めるようにして形成される。
また主発光部17aから発した光は、貫通部16における誘電体部13を貫通する部分16bから、陰極部14を貫通する部分16a中を伝搬し、陰極部14側から出射する。そしてこれにより光を外部に取り出すことができる。即ち、本実施の形態の場合、陰極部14を貫通する部分16aを、光取り出し部として捉えることができる。
【0019】
図2(a)は、本実施の形態において、主発光部17aで発した光が貫通部16内を伝搬する経路について説明した図である。なおここでは、図1(b)で説明した電界発光素子20を例に採り説明を行なっている。
図2(a)で示したように発光部17aで発した光のうち、例えば、光L1のように図2(a)の向きで垂直方向に近い成分の光は、直接基板11に達し、外部に出射することが可能である。ただしこのような光は、全体としては多くなく、例えば、光L2、光L3の場合のように、図2(a)の向きで垂直方向から少し方向がずれると、基板11でなく、まず陽極部12や誘電体部13に達する。しかしこのような場合でも、陽極部12や誘電体部13において反射を生じ、そしてその反射光が基板11に達して外部に出射することが可能である。
【0020】
一方、図2(b)は、貫通部16を有さず、従来のサンドイッチ構造の電界発光素子について光の経路を説明した図である。
図2(b)で示した従来の電界発光素子80は、基板81上に陽極層82と、陽極層82上に積層して形成され発光材料からなる発光層83と、発光層83を挟んで陽極層82と対向して形成される陰極層84とからなる。
【0021】
このような電界発光素子80の場合は、図2(b)の向きで垂直方向に近い成分の光L4は、陽極層82を通して外部に出射させることができる。ただし発光層83から発する光は、ランダムな方向に均等に広がる光である。そのため電界発光素子80の外部に取り出される光も配光は放射角度に対して均等である所謂ランバーシアント分布となる。即ち、指向性が低い光となる。また、例えば、光L5の場合のように、図2(b)の向きで垂直方向から少し方向がずれると、陽極層82と陰極層84との間で全反射を生じる。そしてこのような光L5は、発光層83内部で全反射を繰り返す間に、反射界面および発光層83によって吸収されてしまい出射することができないか、または吸収されなかったとしても電界発光素子80の端面から横方向に出射する。端面から出射した光は、端面に垂直方向の成分を多く含む。つまり指向性が高い光である。しかし光が出射する部分の面積は、微小であって、また反射界面および発光層83によって多くは吸収され消失するために、光強度は小さく、結果として主たる光としては利用しにくい。
【0022】
一方、図1(a)〜(c)で説明した電界発光素子10,20,30の場合は、貫通部16内における全反射の繰り返し回数が少ないために、貫通部16内で閉じこめられ、吸収される光の割合が小さい。そのため光の取り出し効率は、電界発光素子80の場合より、図1(a)〜(c)で説明した電界発光素子10,20,30の方が高くしやすい。更に貫通部16内部において反射を生じる結果、光の取り出し面に対して垂直に近い光ほど、全反射の回数が少なくなる。そのため光の取り出し面に対して垂直に近い光ほど、貫通部16内で吸収される光が割合が少なくなるため、外部に効率的に取り出すことができる。よって外部に出射する光の指向性についても電界発光素子80より、電界発光素子10,20,30の方が高くなりやすく、更に光を放出する部分を面方向に連続的に並べることができるために、光の利用効率も高くしやすい。
【0023】
なお貫通部16が、陽極部12、誘電体部13、陰極部14を貫通する形態については、図1(a)で説明した電界発光素子10に限られるものではない。
図3(a)〜(e)は、貫通部16が、陽極部12、誘電体部13、陰極部14を貫通する形態する種々の形態について説明した図である。
【0024】
図3(a)に示した電界発光素子10aは、図1(a)で示した電界発光素子10に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を埋めるだけでなく、陰極部14の上部にも展開して連続形成されている点で相違する。
【0025】
また図3(b)に示した電界発光素子10bは、図1(a)で示した電界発光素子10に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を完全には埋めずに形成されている。つまり電界発光素子10bでは、貫通部16のうち誘電体部13を貫通する部分16bと、陽極部12を貫通する部分16cは発光材料により埋められているが、陰極部14を貫通する部分16aは途中までしか埋められていない。このような形態でも、陽極部12と陰極部14との間に電圧を印加することにより発光部17を発光させることは可能である。
【0026】
更に図3(c)に示した電界発光素子10cは、図1(a)で示した電界発光素子10に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を埋めると共に、誘電体部13の上部にも展開して連続形成されている。そして陰極部14は、この発光材料の上に形成される。ここで、誘電体部13の上部に形成される発光材料の厚さは、貫通部16のそれと比較して、半分以下であることが好ましい。つまり、厚さが半分を超えた場合は、光の一部が誘電体部13の上部に形成される発光材料の部分を横に伝搬しやすくなり、その結果、光がこの部分で吸収される結果、光の取り出し効率が低下するためである。
【0027】
また更に図3(d)に示した電界発光素子10dは、図1(a)で示した電界発光素子10に対して、基板11に穿孔部16dを有する。本実施の形態では、穿孔部16dは、貫通部16とその位置を合わせて形成される。そして、発光部17を形成する発光材料は、貫通部16を埋めると共に、穿孔部16dも埋めて形成されている。
そして図3(e)に示した電界発光素子10eは、図3(d)で示した電界発光素子10dに対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を完全には埋めずに形成されている。つまり電界発光素子10eでは、貫通部16のうち誘電体部13を貫通する部分16b、陽極部12を貫通する部分16c、および穿孔部16dは発光材料により埋められているが、陰極部14を貫通する部分16aは途中までしか埋められていない。
これらの電界発光素子10d,10eの場合、貫通部16と共に穿孔部16dも光取り出し部として把握することができる。
【0028】
図4(a)〜(b)は穿孔部16dを設けた場合と設けなかった場合とで、発光部17において発した光の進路について説明を行なった図である。
ここで図4(a)は、貫通部16と共に穿孔部16dを設けて作製した電界発光素子10dにおける光の進路について説明した図である。一方、図4(b)は、貫通部16は設けるが穿孔部16dを設けずに作製した電界発光素子10における光の進路について説明した図である。
図4(b)で示したように穿孔部16dを設けない場合、発光部17から発し、基板11側に向かう光は、その方向が基板11の表面に対し一定の角度より上である場合は、屈折しつつ基板11内に侵入し、光を基板11側から取り出すことができる。ただし、光の方向が基板11の表面に対し一定の角度以下である光L8の場合は、全反射を生じ、基板11内に侵入することができない。
一方、図4(a)で示したように穿孔部16dを設けた場合は、穿孔部16dの底部において全反射を生じる角度の光であっても、光L6のように穿孔部16dの側面においては、基板11内に侵入できる角度となる場合があり、その場合は基板11内に侵入することができる。また光L7のように穿孔部16dの底部において全反射しても穿孔部16dの側面において基板11内に侵入できる場合もある。この場合、陽極部12において更に反射を生じ、外部に出射する。結果として、基板11内に侵入することができる光の割合が図4(b)の場合より増加しやすい。即ち、全反射を生じる光の割合がより減少し、基板11側から取り出すことができる光の量が増加する。その結果、光の取り出し効率の向上を図ることができ、発光効率を向上させることができる。
【0029】
続いて、図1(b)で説明した電界発光素子20の他の形態について説明を行なう。
図5(a)〜(d)は、貫通部16が、陽極部12、誘電体部13を貫通し、陰極部14を貫通しない場合の種々の形態について説明した図である。
【0030】
図5(a)に示した電界発光素子20aは、図1(b)で示した電界発光素子20に対して、陰極部14が、発光部17を覆うだけでなく、発光部17の一部を囲むようにして形成される下垂部14aを有して形成されている。
【0031】
また図5(b)に示した電界発光素子20bは、図1(b)で示した電界発光素子20に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を埋めると共に、誘電体部13の上部にも展開して連続形成されている。そして陰極部14は、発光材料の上に形成される。
【0032】
更に図5(c)に示した電界発光素子20cは、図1(b)で示した電界発光素子20に対して、基板11に穿孔部16dを有する。本実施の形態では、穿孔部16dは、貫通部16とその位置を合わせて形成される場合である。
【0033】
更に図5(d)に示した電界発光素子20dは、図5(c)で示した電界発光素子20cに加えて、陰極部14が、図5(a)で示した電界発光素子20aと同様の下垂部14aを有して形成されている。
【0034】
これらの電界発光素子20c,20dの場合についても、貫通部16と共に穿孔部16dを光取り出し部として把握することができる。
【0035】
続いて、図1(c)で説明した電界発光素子30の他の形態について説明を行なう。
図6(a)〜(b)は、貫通部16が、誘電体部13、陰極部14を貫通し、陽極部12を貫通しない場合の種々の形態について説明した図である。
【0036】
図6(a)に示した電界発光素子30aは、図1(c)で示した電界発光素子30に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16を完全には埋めずに形成されている。つまり電界発光素子30aでは、貫通部16のうち誘電体部13を貫通する部分16bは発光材料により埋められているが、陰極部14を貫通する部分16aは途中までしか埋められていない。
また図6(b)に示した電界発光素子30bは、図1(c)で示した電界発光素子30に対して、発光部17を形成する発光材料が貫通部16bを埋めると共に、誘電体部13の上部にも展開して連続形成されている。そして陰極部14は、発光材料の上に更に形成される。
【0037】
また上述した各電界発光素子の基本構造において、誘電体部13と発光部17とは、交互に繰り返して配列することが好ましい。
図7(a)〜(b)は、誘電体部13と発光部17とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の一例を説明した図である。
ここで、図7(a)で示した電界発光素子10fは、図3(a)で説明した電界発光素子10aを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。そして、発光部17は、各誘電体部13の間において、凹部18を形成するようにして配列する。
また図7(b)で示した電界発光素子10gも同様にして、図3(a)で説明した電界発光素子10aを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。ただし、発光部17は、各誘電体部13の間において、凹部18を形成せず、各誘電体部13の間を埋めるようにして配列する。そのため発光部17の上面は、平面状となっている。
【0038】
このように、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列することにより、電界発光素子から発する光の光量を増加させることができる。つまり、互いに隣接する誘電体部13の間に発光部17が位置することになり、この部分において主発光部17aが生じることになる。そのため発光する箇所が増大し、光量もそれに応じて増大する。
【0039】
また図8(a)〜(b)は、誘電体部13と発光部17とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の他の例を説明した図である。
ここで、図8(a)で示した電界発光素子20eは、図5(b)で説明した電界発光素子20bを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。そして、発光部17は、陰極部14と共に各誘電体部13の間において、凹部18を形成するようにして配列する。
また図8(b)で示した電界発光素子20fも同様にして、図5(b)で説明した電界発光素子20bを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。ただし、発光部17は、各誘電体部13の間において、凹部18を形成せず、各誘電体部13の間を埋めるようにして配列する。そのため発光部17の上面は、平面状となり、それに応じて陰極部14も平面状となる。
【0040】
更に図9(a)〜(b)は、誘電体部13と発光部17とが、交互に繰り返して配列する電界発光素子の更に他の例を説明した図である。
ここで、図9(a)で示した電界発光素子20gは、図5(c)で説明した電界発光素子20cを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。そして、発光部17は、陰極部14と共に各誘電体部13の間において、凹部18を形成するようにして配列する。
また図9(b)で示した電界発光素子20hも同様にして、図5(c)で説明した電界発光素子20cを基本構造として、誘電体部13と発光部17とが交互に繰り返して配列する場合を示している。ただし、発光部17は、各誘電体部13の間において、凹部18を形成せず、各誘電体部13の間を埋めるようにして配列する。そのため発光部17の上面は、平面状となり、それに応じて陰極部14も平面状となる。
【0041】
次に、基板11、陽極部12、誘電体部13、陰極部14、貫通部16、発光部17について更に詳しく説明を行なう。
【0042】
基板11は、陽極部12、誘電体部13、陰極部14、発光部17を形成する支持体となるものである。基板11には、上述した各電界発光素子に要求される機械的強度を満たす材料が用いられる。
【0043】
基板11の材料としては、図1(c)で示した電界発光素子30のように陽極部12が貫通部16に貫通されない場合で、基板11側から光を取り出したい場合は、可視光に対して透明であることが必要である。具体的には、サファイアガラス、ライムソーダガラス、石英ガラスなどのガラス類;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂などの透明樹脂;シリコン樹脂;窒化アルミ、アルミナなどの透明金属酸化物などが挙げられる。なお基板11として、上記透明樹脂からなる樹脂フィルム等を使用する場合は、水、酸素などのガスに対するガス透過性が低いことが好ましい。ガス透過性が高い樹脂フィルム等を使用する場合は、光の透過性を損なわない範囲でガスの透過を抑制するバリア性薄膜を形成することが好ましい。
電界発光素子の基板11側から光を取り出す必要がない場合、または図1(a)〜(b)で示した電界発光素子10,20のように陽極部12が貫通部16により貫通する場合は、基板11の材料としては、電界発光素子の発光色に対して透明であるものに限られず、不透明なものも使用できる。具体的には、上記材料に加えて、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、もしくはニオブ(Nb)の単体、またはこれらの合金、あるいはステンレス、SiO2やAl2O3などの酸化物、n−Siなどの半導体などからなる材料も使用することができる。
なお光を取り出す側が、基板11側の場合、陽極部12は不透明である方が好ましい。つまり、陽極部12が不透明であると発光部17と誘電体部13の界面で反射せずに誘電体部13に侵入した後で基板11側から出射する光を遮断しやすくなる。このような光は、光の取り出し面(本実施の形態の場合、基板11表面)から出射する際の角度が浅いため、取り出した光の指向性を悪化させる要因となる。またこの目的で、陽極部12に透明な材料を使用する場合でも、陽極部12と基板11、あるいは陽極部12と誘電体部13との間に、電界発光素子の発光色に対して不透明な層を追加することもできる。
基板11の厚さは、要求される機械的強度にもよるが、好ましくは、0.1mm〜10mm、より好ましくは0.25mm〜2mmである。
【0044】
陽極部12は、陰極部14との間で電圧を印加し、陽極部12より発光部17に正孔を注入する。陽極部12に使用される材料としては、電気伝導性を有するものであることが必要である。具体的には仕事関数が低いものであり、仕事関数は、−4.5eV以下であることが好ましい。加えて、アルカリ性水溶液に対し、電気抵抗が顕著に変化しないことが好ましい。
【0045】
このような条件を満たす材料として、金属酸化物、金属、合金が使用できる。ここで、金属酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)が挙げられる。また金属としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)等が挙げられる。そしてこれらの金属を含むステンレス等の合金も使用できる。陽極部12の厚さは、例えば、2nm〜2mmで形成することができる。なお仕事関数は、例えば、紫外線光電子分光分析法により測定することができる。
【0046】
誘電体部13は、陽極部12と陰極部14の間に設けられ、陽極部12と陰極部14とを所定の間隔にて分離し絶縁すると共に、発光部17に電圧を印加するためのものである。このため誘電体部13は高抵抗率材料であることが必要であり、電気抵抗率としては、108Ωcm以上、好ましくは1012Ωcm以上有することが要求される。具体的な材料としては、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物;酸化ケイ素(二酸化ケイ素)、酸化アルミニウム等の金属酸化物が挙げられるが、他にポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、パリレン等の高分子化合物も使用可能である。
発光部17から出射した光が誘電体部13との界面で失われることなく、発光部17側に反射されるためには、誘電体部13は、屈折率が発光部17を形成する発光材料と異なることが好ましい。具体的な材料としては、上述の材料はこの要件を満たしている。
ここで、短絡・電流リークを生じにくい電界発光素子を再現よく製造するためには、誘電体部13の厚さは厚いほど好ましい。つまり、誘電体部13の厚さは厚い方が、短絡・電流リークを引き起こす誘電体部13の欠陥の影響を除外あるいは抑制しやすくなる。このような短絡・電流リークを生じる原因としては、誘電体部13を形成する直前の基板11上に付着した埃や、誘電体部13の製造工程で発生する誘電体部13のピンホールなどが挙げられる。
【0047】
他方、電界発光素子全体の厚さを抑えるために誘電体部13の厚さは、1μmを越えないことが好ましい。また、陽極部12と陰極部14との間隔が狭い方が、発光のために必要な電圧が低くて済むので、この観点からも誘電体部13は薄い方がより好ましい。但し、薄すぎると電界発光素子を駆動するための電圧に対し、絶縁耐力が十分でなくなるおそれがある。ここで絶縁耐力は、発光部17が形成されていない状態で、陽極部12と陰極部14の間に流れる電流の電流密度が、0.1mA/cm2以下であることが好ましく、0.01mA/cm2以下であることがより好ましい。また電界発光素子の駆動電圧に対し、2Vを超えた電圧に耐えることが好ましいため、例えば、駆動電圧が5Vである場合は、発光部17が形成されていない状態で、陽極部12と陰極部14の間に約7Vの電圧を印加した場合に上記の電流密度を満たすことが必要である。これを満たす誘電体部13の厚さは、上限としては、750nm以下であることが好ましく、400nm以下であることが更に好ましく、200nm以下であることがまた更に好ましい。また下限としては15nm以上であることが好ましく、30nm以上であることが更に好ましく、50nm以上であることがまた更に好ましい。
【0048】
陰極部14は、陽極部12との間で電圧を印加し、発光部17に電子を注入する。陰極部14に使用される材料としては、陽極部12と同様に電気伝導性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、仕事関数が低く、かつ化学的に安定なものが好ましい。仕事関数は、化学的安定性を考慮すると−2.9eV以下であることが好ましい。具体的には、Al、MgAg合金、AlLiやAlCaなどのAlとアルカリ金属の合金等の材料を例示することができる。陰極部14の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50nm〜500nmがより好ましい。陽極部12と同様に図1(b)で示した電界発光素子20のように陰極部14が貫通部16に貫通されない場合で、陰極部14側から光を取り出したい場合は、陰極部14は、可視光に対して透明であることが必要である。また電界発光素子の陰極部14側から光を取り出す必要がない場合、または図1(a)、(c)で示した電界発光素子10,30のように陰極部14が貫通部16により貫通する場合は、基板11の材料としては、可視光に対して透明であるものに限られず、不透明なものも使用できる。
【0049】
また、陰極部14から発光部17への電子の注入障壁を下げて電子の注入効率を上げる目的で、図示しない陰極バッファ部を、陰極部14に隣接して設けてもよい。陰極バッファ部は、陰極部14より仕事関数の低いことが必要であり、金属材料が好適に用いられる。例えば、アルカリ金属(Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Sr、Ba、Ca、Mg)、希土類金属(Pr、Sm、Eu、Yb)、あるいはこれら金属のフッ化物、塩化物、酸化物から選ばれる単体あるいは2つ以上の混合物を使用することができる。陰極バッファ部の厚さは0.05nm〜50nmが好ましく、0.1nm〜20nmがより好ましく、0.5nm〜10nmがより一層好ましい。
【0050】
また陰極部14から発光部17への電子の注入障壁を下げて電子の注入効率を上げる目的で、陰極バッファ部と発光部17との間に有機物からなる材料を含む有機半導体部としての電子輸送部(図示せず)を更に設けることもできる。
【0051】
電子輸送部に用いることができる材料としては、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体などが挙げられる。更に具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン、バソキュプロイン(略称:BCP)、トリフェニルビスイミダゾール(BPBI)、2,2’,2”−(1,3,5−Benzenetriyl)tris[1−phenyl−1H−benzimidazole](略称:TPBI)、3,3’−[5’−[4−(3−Pyridinyl)phenyl][1,1’:3’,1”−terphenyl]−4,4”−diyl]bispyridine(略称:TPyTPB)、4,4’−[5’−[3−(4−Pyridinyl)phenyl][1,1’:3’,1”−terphenyl]−3,3”−diyl]bispyridine(略称:m4TPyTPB)、3,3’−[5’−[3−(3−Pyridinyl)phenyl][1,1’:3’,1”−terphenyl]−3,3”−diyl]bispyridine(略称:mTPyTPB)、2,2’−[5’−[3−(2−Pyridinyl)phenyl][1,1’:3’,1”−terphenyl]−3,3”−diyl]bispyridine(略称:m2TPyTPB)、3−[4−[Bis(2,4,6−trimethylphenyl)boryl]−3,5−dimethylphenyl]pyridin(略称:Py211B)などである。この中でも、TPBI、TPyTPB、m4TPyTPB、mTPyTPB、m2TPyTPB、Py211Bをより好ましく用いることができる。
【0052】
ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送部として用いても構わない。また、電子輸送部は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。電子輸送膜の膜厚は、薄すぎる場合は電子注入効率を高める効果が発現しない。また、厚すぎる場合、電子輸送部に印加される電圧が高くなるために、素子全体としての駆動電圧が上昇し電力効率の低下となるため好ましくない。よってこれらの条件を満たす電子輸送部の膜厚は、具体的には0.5nm〜50nmであることが好ましく、1nm〜10nmであることがより好ましい。
電子輸送部を形成する手法としては、一般的に用いられる真空蒸着装置を用いた抵抗加熱方式により、真空下の蒸着方法を用いることができる。
【0053】
貫通部16は、発光部17をその内面に塗布し、かつ発光部17からの光を取り出すためのものであり、本実施の形態では、誘電体部13、および第1の電極部である陽極部12と第2の電極部である陰極部14の少なくとも一方を貫通するように形成する。
【0054】
貫通部16の形状は、特に限定されることはない。但し、形状制御が行いやすいという観点から例えば円柱形状または溝形状とすることが好ましい。なお本実施の形態において円柱形状とは、厳密な意味での円柱形状である必要はなく、大体円柱形状であるといういわゆる略円柱形状をも含むものである。なお本実施の形態の場合は、光取り出し部が、円柱形状または溝形状とすることが好ましいと言い換えることもできる。
また、貫通部16を複数の直線状の溝形状で形成した場合、この直線に並行かつ基板11表面に垂直な面に対しては、出射する光の配光は放射角度に対して均等(ランバーシアント)である。対して、この直線に垂直かつ基板11表面に垂直な面に対しては、出射する光の配光は基板11に垂直な方向に強くすることができる。これにより、例えば、棒状の蛍光灯に類似した配光を再現することが可能となる。また、貫通部16を複数の直交する直線状の溝形状で形成した場合、これらの直線に垂直な2つの互いに直交する面(つまりXおよびY面)に対しては、配光は基板11に垂直な方向に強くし、それ以外の方向では、配光がランバーシアントに近くすることができる。
本実施の形態の電界発光素子では、主発光部17aで強く光る場合においては貫通部16の間隔を小さくすれば、それだけ単位面積当たりの貫通部16の数が増加するため、発光強度を大きくすることができる。また、発光部17は、貫通部16の中央部において非発光部分となりやすく、この非発光部分の面積が大きいと電界発光素子を高輝度で発光させにくい。よって、貫通部16の幅を小さくすれば、貫通部16の中央部の非発光部分が減少することになるため、発光強度を大きくしやすくなる。なお、ここで貫通部16の幅とは、貫通部16の端部から他の端部への短軸側の距離(最短距離)を指す。また同上の理由で隣接する貫通部16同士の短軸側の距離(最短距離)も短いほうがよい。具体的には、誘電体部13と隣接する隣の誘電体部13とは、距離が10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが最も好ましい。この距離は即ち貫通部16同士の短軸側の距離(最短距離)となる。
【0055】
発光部17は、電圧を印加し、電流を供給することで光を発する発光材料であり、貫通部16の内面に接触して塗布されることで形成される。発光部17において、陽極部12から注入された正孔と陰極部14から注入された電子(正孔)とが再結合し、発光が生じる。そして本実施の形態では、上述の通り貫通部16は、発光部17により埋められている。
【0056】
発光部17の材料としては、有機材料および無機材料の何れをも使用することができる。この場合、有機材料を用いた電界発光素子は、有機電界発光素子として捉えることができる。
ここで有機材料を発光材料として用いる場合は、低分子化合物及び高分子化合物のいずれをも使用することができる。例えば、大森裕:応用物理、第70巻、第12号、1419−1425頁(2001年)に記載されている発光性低分子化合物及び発光性高分子化合物などを例示することができる。
【0057】
但し、本実施の形態では、塗布性に優れた材料が好ましい。即ち本実施の形態における電界発光素子の構造では、発光部17が貫通部16内で安定に発光するためには発光部17が貫通部16の内面に均一にかつ膜厚が均等に成膜されること、即ちカバレッジ性が向上することが好ましい。塗布性に優れた材料を使用せずに発光部17を形成すると、貫通部16全体に発光部17が一様に接していない、あるいは貫通部16内面の膜厚が均一でない成膜状態になりやすい。
また、貫通部16内に発光部17を均一に形成するためには、塗布法で行うことが好ましい。即ち、塗布法では、貫通部16に発光材料を含む発光材料溶液を埋め込むことが容易であるため、凹凸を有する面においてもカバレッジ性を高めて成膜することが可能である。塗布法においては塗布性を向上させる目的で、主に重量平均分子量で1,000〜2,000,000である材料が好適に用いられる。また、塗布性を向上させるためレベリング剤、脱泡剤などの塗布性向上添加剤を添加したり、電荷トラップ能力の少ないバインダー樹脂を添加することもできる。
【0058】
具体的に、塗布性に優れる材料としては、例えば、特開2007−86639号公報に挙げられている所定の構造を有する分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物や、特開2000−034476号公報に挙げられている所定の高分子蛍光体などが挙げられる。
ここで、塗布性に優れた材料の中でも、電界発光素子の製造のプロセスが簡素化されるという点で発光性高分子化合物が好ましく、発光効率が高い点で燐光発光性化合物が好ましい。従って、特に燐光発光性高分子化合物が好ましい。なお、複数の材料同士を混合、あるいは塗布性を損なわない範囲で低分子発光材料(例えば、分子量1000以下)を添加することも可能である。この際の低分子発光材料の添加量は30wt%以下が好ましい。
また、発光性高分子化合物は、共役発光性高分子化合物と非共役発光性高分子化合物とに分類することもできるが、中でも非共役発光性高分子化合物が好ましい。
上記の理由から、本実施の形態で用いられる発光材料としては、燐光発光性非共役高分子化合物(燐光発光性高分子であり、かつ非共役発光性高分子化合物でもある発光材料)が特に好ましい。
【0059】
本実施の形態の電界発光素子における発光部17は、好ましくは、燐光を発光する燐光発光性単位とキャリアを輸送するキャリア輸送性単位とを一つの分子内に備えた、燐光発光性高分子(燐光発光する有機材料)を少なくとも含む。燐光発光性高分子は、重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物とを共重合することによって得られる。燐光発光性化合物はイリジウム(Ir)、白金(Pt)および金(Au)の中から一つ選ばれる金属元素を含む金属錯体であり、中でもイリジウム錯体が好ましい。
【0060】
燐光発光性化合物における重合性置換基としては、例えば、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などが挙げられ、中でもビニル基、メタクリレート基、スチリル基及びその誘導体が好ましい。これらの置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して金属錯体に結合していてもよい。
重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物は、ホール輸送性および電子輸送性の内のいずれか一方または両方の機能を有する有機化合物における一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。
【0061】
キャリア輸送性化合物における重合性置換基はビニル基であるが、ビニル基をアクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などの重合性置換基で置換した化合物であってもよい。また、これらの重合性置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して結合していてもよい。
【0062】
重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。また、重合体の分子量が重量平均分子量で1,000〜2,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。ここでの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定されるポリスチレン換算分子量である。
【0063】
燐光発光性高分子は、一つの燐光発光性化合物と一つのキャリア輸送性化合物、一つの燐光発光性化合物と二つ以上のキャリア輸送性化合物を共重合したものであってもよく、また二つ以上の燐光発光性化合物をキャリア輸送性化合物と共重合したものであってもよい。
【0064】
燐光発光性高分子におけるモノマーの配列は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよく、燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数をm、キャリア輸送性化合物構造の繰り返し単位数をnとしたとき(m、nは1以上の整数)、全繰り返し単位数に対する燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数の割合、すなわちm/(m+n)の値は、0.001〜0.5が好ましく、0.001〜0.2がより好ましい。
【0065】
燐光発光性高分子のさらに具体的な例と合成法は、例えば特開2003−342325号公報、特開2003−119179号公報、特開2003−113246号公報、特開2003−206320号公報、特開2003−147021号公報、特開2003−171391号公報、特開2004−346312号公報、特開2005−97589号公報、特開2007−305734号公報に開示されている。
【0066】
本実施の形態における電界発光素子の発光部17は、好ましくは前述した燐光発光性化合物を含むが、発光部17のキャリア輸送性を補う目的で正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物が含まれていてもよい。これらの目的で用いられる正孔輸送性化合物としては、例えば、TPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4,4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)などの低分子トリフェニルアミン誘導体が挙げられる。更に、ポリビニルカルバゾール、トリフェニルアミン誘導体に重合性官能基を導入して高分子化したもの;特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物;ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレンなどが挙げられる。また、電子輸送性化合物としては、例えば、Alq3(アルミニウムトリスキノリノレート)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体などの低分子材料が挙げられる。更に上記の低分子電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどの既知の電子輸送性化合物が挙げられる。
【0067】
また、発光部17に使用する発光材料として上述した発光性高分子化合物ではなく発光性低分子化合物を使用する場合でも、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物、もしくは積層が可能である。そして、発光材料として上述した発光性高分子化合物を添加することも可能である。
この場合の正孔輸送性化合物の具体例としては、例えば、特開2006−76901号公報に記載されているTPD、α−NPD、m−MTDATA、フタロシアニン錯体、DTDPFL、spiro−TPD、TPAC、PDA等が挙げられる。
【0068】
電子輸送性化合物の具体例としては、例えば、特開2006−76901号公報に記載されているBPhen、BCP、OXD−7、TAZ等が挙げられる。
【0069】
また、例えば、特開2006−273792号公報に記載の一分子内に正孔輸送性及び電子輸送性を有するバイポーラー型分子構造を有する化合物でも使用可能である。
【0070】
本実施の形態における電界発光素子は、上述の通り発光体として無機材料を用いることもできる。無機材料を用いた電界発光素子は、無機電界発光素子として捉えることができる。無機材料としては、例えば無機蛍光体を用いることができる。この無機蛍光体の具体例、および電界発光素子の構成、製造方法は、例えば特開2008−251531号公報に記載されたものを公知の技術として挙げることができる。
【0071】
なお、以上詳述した各電界発光素子では、基板11側を下側とした場合、陽極部12を下側に形成し、誘電体部13を挟み対向する形で陰極部14を上側に形成する場合を例示して説明を行ったが、これに限られるものではなく、陽極部12と陰極部14を入れ替えた構造でもよい。即ち、基板11側を下側とした場合、陰極部14を下側に形成し、誘電体部13を挟み込み対向する形で陽極部12を上側に形成する形態でもよい。
【0072】
(電界発光素子の製造方法)
次に、本実施の形態が適用される電界発光素子の製造方法について、図8(b)で示した電界発光素子20fを例に取り説明を行う。
図10(a)〜(g)は、本実施の形態が適用される電界発光素子20fの製造方法について説明した図である。
まず基板11上に、第1の電極部である陽極部12を形成する(図10(a):第1電極部形成工程)。本実施の形態では、基板11として、ガラス基板を使用した。また陽極部12を形成する材料としてITOを使用した。
陽極部12を基板11上に形成するには、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などを用いることができる。また、塗布成膜方法、即ち、目的とする材料を溶剤に溶解させた状態で基板11に塗布し乾燥する方法が可能な場合は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などの方法を用いて成膜することも可能である。
なお基板11に陽極部12としてITOが既に形成されているいわゆる電極付き基板を用いることで、この第1電極部形成工程を省略することができる。
【0073】
陽極部12を形成した後は、次に誘電体部13の形成を行なう(図10(b):誘電体部形成工程)。本実施の形態では、誘電体部13を形成する材料として二酸化ケイ素(SiO2)を使用した。誘電体部13の形成についても、陽極部12の形成と同様に抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などを用いることができる。
【0074】
次に、図10(a)〜(b)の工程で形成した各層を貫通する形で貫通部16の形成を行う。ここで貫通部16を形成するには、例えば、リソグラフィを用いた方法が使用できる。これを行うには、まず誘電体部13の上にレジスト液を塗布し、スピンコート等により余分なレジスト液を除去して、レジスト部71を形成する(図10(c))。
【0075】
そして、貫通部16を形成するための所定のパターンが描画されたマスク(図示せず)をかぶせ、紫外線(UV:Ultra Violet)、電子線(EB:Electron Beam)等により露光を行うと、レジスト部71に貫通部16に対応した所定のパターンが露光される。そして現像液を用いてレジスト部71の露光部分を除去すると、露光されたパターンの部分のレジスト部71が除去される(図10(d))。これにより露光されたパターンの部分に対応して、誘電体部13の表面が露出する。
【0076】
次に、残存したレジスト部71をマスクとして、露出した誘電体部13の部分をエッチングし、この部分の誘電体部13および陽極部12を除去することで貫通部16を形成する。(図10(e))。エッチングとしては、ドライエッチングとウェットエッチングの何れをも使用することができる。またこの際に等方性エッチングと異方性エッチングを組合せることで、貫通部16の形状の制御を行うことができる。ドライエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)や誘導結合プラズマエッチングが利用でき、またウェットエッチングとしては、希塩酸や希硫酸への浸漬を行う方法などが利用できる。このエッチングにより上記パターンに対応して、基板11の表面が露出する。なお図10(c)〜図10(e)で説明した各工程は、陽極部12および誘電体部13を貫通する貫通部16を形成する貫通部形成工程として捉えることができる。
【0077】
次に、残存したレジスト部71をレジスト除去液等により除去し、貫通部16の内面および誘電体部13上に発光部17を形成する(図10(f):発光部形成工程)。発光部17の形成には、発光部17の説明において前述した塗布法が用いられる。具体的には、まず発光部17を構成する発光材料を、有機溶媒や水等の所定の溶媒に分散させた発光材料溶液(塗布液)を塗布する。塗布を行う際にはスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング法、インクジェット法、スリットコーティング法、ディスペンサー法、印刷等の種々の方法を使用することができる。塗布を行った後は、加熱あるいは真空引きを行うことで発光材料溶液を乾燥させ、発光材料が貫通部16の内面に固着し、発光部17が形成される。この際、発光部17は、誘電体部13上に展開した形で形成される。この形態によれば、塗布を行なった後、貫通部16以外の部分に塗布された塗布液を除去する必要がなくなるため、貫通部16の内部だけに発光部17を形成する場合に比べ電界発光素子20fの製造がより容易になる。なお発光部17を形成する前に、誘電体部13の表面と発光部17を形成する発光材料とが接する部分を、発光材料との親和性を高め、他方、それ以外の部分を、発光材料との親和性を低下させる処理を行なうことが好ましい。即ち、この場合、発光材料が誘電体部13の部分において形成されやすくなり、陽極部12と陰極部14の両電極に渡って形成されやすくなる。
【0078】
そして、第2電極部である陰極部14を、発光部17上に積層する形で形成する(図10(g):第2電極部形成工程)。陰極部14を形成するには、陽極部12を形成する方法と同様の方法で行うことができる。
【0079】
以上の工程により、電界発光素子20fを製造することができる。また、これら一連の工程後、電界発光素子20fを長期安定的に用い、電界発光素子20fを外部から保護するための保護層や保護カバー(図示せず)を装着することが好ましい。保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物、窒化ケイ素、酸化ケイ素等のシリコン化合物などを用いることができる。そして、これらの積層体も用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板、金属などを用いることができる。この保護カバーは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で基板11と貼り合わせて密閉する方法を採ることが好ましい。またこの際に、スペーサを用いることで所定の空間を維持することができ、電界発光素子20fが傷つくのを防止できるため好ましい。そして、この空間に窒素、アルゴン、ヘリウムのような不活性なガスを封入すれば、上側の陰極部14の酸化を防止しやすくなる。特にヘリウムを用いた場合、熱伝導が高いため、電圧印加時に電界発光素子20fより発生する熱を効果的に保護カバーに伝えることができるため、好ましい。更に酸化バリウム等の乾燥剤をこの空間内に設置することにより上記一連の製造工程で吸着した水分が電界発光素子20fにダメージを与えるのを抑制しやすくなる。
【0080】
なお、穿孔部16dを製造するには、上記の図10(e)で示したエッチングにより陽極部12および誘電体部13を除去する工程の後に、更に基板11の一部を穿つことで除去すればよい。これにより穿孔部16dを形成することができる。基板11の一部除去を行なうには、図10(e)で説明した方法と同様のエッチングを用いる方法で可能である。そしてこの際のエッチン部条件により穿孔部16dの形状を制御することができる。
【0081】
(表示装置)
次に、以上詳述した電界発光素子を備える表示装置について説明を行う。
図11は、本実施の形態における電界発光素子を用いた表示装置の一例を説明した図である。
図11に示した表示装置200は、いわゆるパッシブマトリクス型の表示装置であり、表示装置基板202、陽極配線204、陽極補助配線206、陰極配線208、絶縁膜210、陰極隔壁212、電界発光素子214、封止プレート216、シール材218とを備えている。
【0082】
表示装置基板202としては、例えば、矩形状のガラス基板等の透明基板を用いることができる。表示装置基板202の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1〜1mmのものを用いることができる。
【0083】
表示装置基板202上には、複数の陽極配線204が形成されている。陽極配線204は、一定の間隔を隔てて平行に配置される。陽極配線204は、透明導電膜により構成され、例えばITO(Indium Tin Oxide)を用いることができる。また陽極配線204の厚さは例えば、100nm〜150nmとすることができる。そして、それぞれの陽極配線204の端部の上には、陽極補助配線206が形成される。陽極補助配線206は陽極配線204と電気的に接続されている。このように構成することにより、陽極補助配線206は、表示装置基板202の端部側において外部配線と接続するための端子として機能し、外部に設けられた図示しない駆動回路から陽極補助配線206を介して陽極配線204に電流を供給することができる。陽極補助配線206は、例えば、厚さ500nm〜600nmの金属膜によって構成される。
【0084】
また、電界発光素子214上には、複数の陰極配線208が設けられている。複数の陰
極配線208は、それぞれが平行となるよう、かつ、陽極配線204と直交するように配設されている。陰極配線208には、Al又はAl合金を使用することができる。陰極配線208の厚さは、例えば、100nm〜150nmである。また、陰極配線208の端部には、陽極配線204に対する陽極補助配線206と同様に、図示しない陰極補助配線が設けられ、陰極配線208と電気的に接続されている。よって、陰極配線208と陰極補助配線との間に電流を流すことができる。
【0085】
表示装置基板202上には、陽極配線204を覆うように絶縁膜210が形成される。絶縁膜210には、陽極配線204の一部を露出するように矩形状の開口部220が設けられている。複数の開口部220は、陽極配線204の上にマトリクス状に配置されている。この開口部220において、後述するように陽極配線204と陰極配線208の間に電界発光素子214が設けられる。すなわち、それぞれの開口部220が画素となる。従って、開口部220に対応して表示領域が形成される。ここで、絶縁膜210の膜厚は、例えば、200nm〜300nmとすることができ、開口部220の大きさは、例えば、300μm×300μmとすることができる。
【0086】
陽極配線204上の開口部220の位置に対応した箇所に、電界発光素子214が形成されている。なお、ここで電界発光素子214は、陽極配線204が基板11の代わりとなるため、陽極配線204の上に直接、陽極部12、誘電体部13、陰極部14、発光部17(図1参照)が形成されている。電界発光素子214は、開口部220において陽極配線204と陰極配線208とに挟持されている。すなわち、電界発光素子214の陽極部12が陽極配線204と接触し、陰極部14が陰極配線208と接触する。電界発光素子214の厚さは、例えば、150nm〜200nmとすることができる。
【0087】
絶縁膜210の上には、複数の陰極隔壁212が陽極配線204と垂直な方向に沿って形成されている。陰極隔壁212は、陰極配線208の配線同士が導通しないように、複数の陰極配線208を空間的に分離するための役割を担っている。従って、隣接する陰極隔壁212の間にそれぞれ陰極配線208が配置される。陰極隔壁212の大きさとしては、例えば、高さが2μm〜3μm、幅が10μmのものを用いることができる。
【0088】
表示装置基板202は、封止プレート216とシール材218を介して貼り合わせられている。これにより、電界発光素子214が設けられた空間を封止することができ、電界発光素子214が空気中の水分により劣化するのを防ぐことができる。封止プレート216としては、例えば、厚さが0.7mm〜1.1mmのガラス基板を使用することができる。
【0089】
このような構造の表示装置200において、図示しない駆動装置により、陽極補助配線206、図示しない陰極補助配線を介して、電界発光素子214に電流を供給し、発光部17を発光させ、貫通部16から光を出射させることができる。そして、上述の画素に対応した電界発光素子214の発光、非発光を制御装置により制御することにより、表示装置200に画像を表示させることができる。
【0090】
(照明装置)
次に、電界発光素子20fを用いた照明装置について説明を行う。
図12は、本実施の形態における電界発光素子を備える照明装置の一例を説明した図である。
図12に示した照明装置300は、上述した電界発光素子20fと、電界発光素子20fの基板11(図1参照)に隣接して設置され陽極部12(図1参照)に接続される端子302と、基板11(図1参照)に隣接して設置され電界発光素子20fの陰極部14(図1参照)に接続される端子303と、端子302と端子303とに接続し電界発光素子20fを駆動するための点灯回路301とから構成される。
【0091】
点灯回路301は、図示しない直流電源と図示しない制御回路を内部に有し、端子302と端子303を通して、電界発光素子20fの陽極部12と陰極部14との間に電流を供給する。そして、電界発光素子20fを駆動し、発光部17(図1参照)を発光させて、貫通部16から基板11を通し、光を出射させ、照明光として利用する。発光部17は白色光を出射する発光材料より構成されていてもよく、また緑色光(G)、青色光(B)、赤色光(R)を出射する発光材料を使用した電界発光素子20fをそれぞれ複数個設け、その合成光が白色となるようにしてもよい。なお、本実施の形態の照明装置300では、貫通部16(図1参照)の径と間隔を小さくして発光させた場合、人間の目には面発光しているように見える。
【符号の説明】
【0092】
10…電界発光素子、11…基板、12…陽極部、13…誘電体部、14…陰極部、16…貫通部、16d…穿孔部、17…発光部、200…表示装置、300…照明装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極部と、
第2の電極部と、
前記第1の電極部および第2の電極部の間に配される誘電体部と、
前記誘電体部に隣接して配され、第1の電極部と第2の電極部の間に電圧を印加することで発光する発光部と、
前記第1の電極部と前記第2の電極部の少なくとも一方に隣接して配され、前記発光部から発した光を取り出す光取り出し部と、
を備えることを特徴とする電界発光素子。
【請求項2】
前記発光部を形成する発光材料を、前記誘電体部と前記第2の電極部の間に更に延伸して連続形成することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項3】
前記発光部を形成する発光材料は、燐光発光する有機材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電界発光素子。
【請求項4】
前記誘電体部と前記発光部とは、交互に繰り返して配列することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電界発光素子。
【請求項5】
前記誘電体部と当該誘電体部に隣接する誘電体部は、距離が10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電界発光素子。
【請求項6】
前記光取り出し部は、略円柱形状または互いに略平行である溝形状をなすことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電界発光素子。
【請求項7】
前記第1の電極部を形成するための基板を更に有し、
前記基板は、前記発光部に対応する位置に穿孔部を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の電界発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の電界発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の電界発光素子を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項1】
第1の電極部と、
第2の電極部と、
前記第1の電極部および第2の電極部の間に配される誘電体部と、
前記誘電体部に隣接して配され、第1の電極部と第2の電極部の間に電圧を印加することで発光する発光部と、
前記第1の電極部と前記第2の電極部の少なくとも一方に隣接して配され、前記発光部から発した光を取り出す光取り出し部と、
を備えることを特徴とする電界発光素子。
【請求項2】
前記発光部を形成する発光材料を、前記誘電体部と前記第2の電極部の間に更に延伸して連続形成することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項3】
前記発光部を形成する発光材料は、燐光発光する有機材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電界発光素子。
【請求項4】
前記誘電体部と前記発光部とは、交互に繰り返して配列することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電界発光素子。
【請求項5】
前記誘電体部と当該誘電体部に隣接する誘電体部は、距離が10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電界発光素子。
【請求項6】
前記光取り出し部は、略円柱形状または互いに略平行である溝形状をなすことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電界発光素子。
【請求項7】
前記第1の電極部を形成するための基板を更に有し、
前記基板は、前記発光部に対応する位置に穿孔部を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の電界発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の電界発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の電界発光素子を備えることを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−159531(P2011−159531A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21094(P2010−21094)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]