説明

電界発光装置、及び、その製造方法、電界発光装置の駆動方法、並びに、電界発光装置の駆動回路、照明システム

【課題】電界発光材に電界を印加することにより電界発光材を発光させ、照明を行なう電界発光装置、及び、その製造方法、電界発光装置の駆動方法、並びに、電界発光装置の駆動回路、照明システムに関し、高輝度、長寿命、低消費電力化を可能とした電界発光装置、及び、その製造方法、電界発光装置の駆動方法、並びに、電界発光装置の駆動回路、照明システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、電界発光材からなる電界発光層に電界を印加することにより電界発光層を発光させる電界発光装置と、前記電界発光層に印加する電圧を生成する駆動回路とを有する照明システムにおいて、電界発光装置を電界発光層が電界発光材からなる複数の薄膜を積層した構造とし、駆動回路を電界発光層に複数回断続して電圧を印加することにより、電界発光層の印加電圧を所定の電圧に昇圧し、電界発光層を発光させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光装置、及び、その製造方法、電界発光装置の駆動方法、並びに、電界発光装置の駆動回路、照明システムに係り、特に、電界発光材に電界を印加することにより電界発光材を発光させ、照明を行なう電界発光装置、及び、その製造方法、電界発光装置の駆動方法、並びに、電界発光装置の駆動回路、照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの携帯端末装置では、キー操作などを照明し、質感、操作性の向上を図っている。このような、携帯端末装置に搭載される照明装置として、薄型化が可能な電界発光(EL:electro luminescence)現象を用いた照明装置が注目されている。
【0003】
従来の電界発光現象を用いた照明装置は、電極と透明電極間に電界発光層を配した構成とされていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−359067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、従来の電界発光現象を用いた照明装置は電界発光層の粒子が大きく、粒子の間に間隙が発生し、粒子に電界が効率よく印加されなかったため、輝度が低くかった。また、高電圧を印加するため、寿命も短かった。さらに、粒径が大きいので、電界発光層にひびなどが発生しやすく、このひびを通して電流が流れ、輝度が低下するなどの課題もあった。
【0006】
例えば、従来のELシートでは、輝度が50cd/m^2程度であり、寿命は半減値で最大でも800時間程度であった。なお、半減値は、輝度が当初の半分になるまでの時間を示しており、寿命の指標となる値である。
【0007】
また、ELシートは、高電圧で駆動する必要があり、効率が悪く、無駄な電力を消費するなどの課題があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、高輝度、長寿命、低消費電力化を可能とした電界発光装置、及び、その製造方法、電界発光装置の駆動方法、並びに、電界発光装置の駆動回路、照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電界発光材からなる電界発光層に電界を印加することにより電界発光層を発光させる電界発光装置において、電界発光層を電界発光材からなる複数の薄膜を積層した構造とされたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、電界発光層を電界発光材からなる複数の薄膜を積層した構造とすることにより、高輝度、長寿命を実現できる。
【0011】
また、本発明は、電界発光材からなる電界発光層に電界を印加することにより電界発光層を発光させる電界発光装置を駆動させるときに、電界発光層に複数回断続して電圧を印加することにより、電界発光層の印加電圧を所定の電圧に昇圧し、電界発光層を発光させることを特徴とする。また、このとき、電界発光層に印加する電圧を所定のタイミング毎に反転させることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、電界発光層に複数回断続して電圧を印加することにより、電界発光層の印加電圧を所定の電圧に昇圧し、電界発光層を発光させることにより、電界発光層への印加電圧を丸めることができるため、電界発光層の負担を軽減でき、よって、長寿命化することができる。また、このとき、電界発光層に印加する電圧を所定のタイミング毎に反転させることにより、電界発光層の負担を軽減でき、よって、長寿命化することができる。
【0013】
また、本発明は、電界発光材からなる電界発光層に電界を印加することにより電界発光層を発光させる電界発光装置と、前記電界発光層に印加する電圧を生成する駆動回路とを有する照明システムにおいて、電界発光装置を電界発光層が電界発光材からなる複数の薄膜を積層した構造とし、駆動回路を電界発光層に複数回断続して電圧を印加することにより、電界発光層の印加電圧を所定の電圧に昇圧し、電界発光層を発光させることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、電界発光装置を電界発光層が電界発光材からなる複数の薄膜を積層した構造とし、駆動回路を電界発光層に複数回断続して電圧を印加することにより、電界発光層の印加電圧を所定の電圧に昇圧し、電界発光層を発光させることにより、電界発光層の負担を軽減できるとともに、電界発光層を効率よく駆動できるため、高輝度、長寿命化が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電界発光層を電界発光材からなる複数の薄膜を積層した構造とすることにより、電界発光層の負担を軽減できるととのに、電界発光を効率よく行なえるため、高輝度、長寿命を実現できるなどの特長を有する。
【0016】
また、本発明によれば、駆動回路を電界発光層に複数回断続して電圧を印加することにより、電界発光層の印加電圧を所定の電圧に昇圧し、電界発光層を発光させることにより、電界発光層の負担を軽減できるとともに、電界発光層を効率よく駆動できるため、高輝度、長寿命化が可能となるなどの特長を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔システム構成〕
図1は本発明の一実施例のシステム構成図を示す。
【0018】
本実施例の照明システム1は、EL(electro luminescence)シート11及び駆動回路12から構成されている。
【0019】
ELシート11は、駆動回路12から供給される駆動信号によって駆動され、発光する。駆動回路12には、電源電圧Vdd、トリガ信号Stが供給されている。駆動回路12は、電源電圧Vddによって駆動されており、トリガ信号Stに応じて駆動信号を生成し、ELシート11に供給する。
【0020】
〔ELシート11〕
次にELシート11について説明する。
【0021】
図2はELシート11の断面図を示す。なお、本実施例のELシート11は、電界発光層131の構造に特徴があるため、電荷輸送層やバッファ層など他の層については省略している。本実施例のELシート11に電荷輸送層やバッファ層を設けるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0022】
ELシート11は、ITO(indium tin oxide)などからなる透明電極111及び絶縁層112が形成された樹脂フィルム113と絶縁層121及び電極122が形成された樹脂フィルム123とにより、電界発光層131を挟持した構造とされている。電界発光層131は、電界発光材からなる4層の電界発光薄膜L1〜L4を積層した構造とされている。なお、電界発光材は、例えば、硫化塩などの粒子から構成される。
【0023】
また、本実施例では、電界発光層131を4層の電界発光薄膜L1〜L4から構成したが、4層に限定されるものではなく、2層以上あれば、高輝度、長寿命化を実現できる。
【0024】
〔ELシート11の製造方法〕
図3はELシート11の製造方法を説明するための図を示す。
【0025】
透明電極111及び絶縁層112が形成された樹脂フィルム113上に数〜数十μm程度の粒径の電界発光材を含むペーストを印刷する。なお、印刷方法は、例えば、シルクスクリーン法などであり、所望のパターンに印刷可能とされている。なお、シルクスクリーン法により電界発光材を含むペーストを樹脂フィルム113に印刷するときにスキージにかける圧力は、電界発光材が均一で、かつ、印刷されたペーストの厚さが電界発光材の粒径程度となるように調整する。このとき、スキージにかける圧力は実験などの結果に基づいて設定される。
【0026】
次に、電界発光材を含むペーストが印刷された樹脂フィルム113は、100°C程度の比較的低温の雰囲気中で乾燥が行なわれる。これによって、図3(A)に示すように電界発光材が薄く均一に形成された第1の電界発光薄膜L1が形成される。
【0027】
このとき、第1の電界発光薄膜L1を形成する電界発光材を含むペーストは、電界発光材が均一であり、かつ、薄く印刷されているので、低温でも乾燥時間は短くて済む。また、低温で乾燥を行なうことにより、ひび割れなどの発生を抑制できる。
【0028】
第1の電界発光材層L1が形成された後に、図3(B)、(C)、(D)に示すように第1の電界発光薄膜L1と同様に、第2の電界発光薄膜L2、第3の電界発光薄膜L3、第4の電界発光薄膜L4が順次に形成される。
【0029】
次に図3(E)に示すように絶縁層121及び電極122が形成され、樹脂フィルム123によりカバーされた構成とされている。
【0030】
図4は電界発光層131の構造を説明するための図を示す。
【0031】
本実施例の電界発光層131は、第1の電界発光薄膜L1〜第4の電界発光薄膜L4を順次に印刷、乾燥させることにより形成されているので、図4に示すように電界発光材の粒子が隙間なく、重なりあって積層された構造をとる。これによって、粒子同士を確実に結合できるので、確実に電界発光材に電界が印加され、電界発光材を発光させることができるとともに、インピーダンスを低下させることができる。
【0032】
また、ひび割れなどが発生しにくいので、漏れ電流の発生を防止でき、確実に電界発光材に電界が印加され、電界発光材を発光させることができ、高輝度化を図れる。
【0033】
さらに、第1の電界発光薄膜L1〜第4の電界発光薄膜L4の各々で印刷、乾燥を行ない、別々の工程で形成することによって、第1の電界発光薄膜L1〜第4の電界発光薄膜L4の間が隔離され、薄い絶縁膜L0が形成されたような状態となる。これによって、全体の容量を高くできる。また、印刷によって、発光部分をパターン化できるため、種々の発光形状に容易に対応できる。
【0034】
このように、本実施例のELシート11によれば、高輝度化、長寿命化することができる。
【0035】
〔駆動回路12〕
駆動回路12は、駆動用集積回路211、トランス212、ダイオード214から構成されている。
【0036】
駆動用集積回路211は、1チップの半導体チップであり、少なくとも発振回路221、トリガ入力回路222、コントローラ223、MOS電界効果トランジスタ224、サイリスタ225、226、トランジスタ227、228が内蔵されている。
【0037】
発振回路221は、端子T1、T2に接続されている。端子T1には、キャパシタC1が接続され、端子T2には、キャパシタC2が接続される。発振回路221は、端子T1に接続されたキャパシタC1の容量に応じた第1の周波数f1の第1の発振出力及び端子T2に接続されたキャパシタC2の容量に応じた第2の周波数f2の第2の発振出力を生成する。発振回路221で生成された第1の発振出力及び第2の発振出力は、コントローラ223に供給される。
【0038】
コントローラ223は、第1の発振出力によりMOS電界効果トランジスタ224を駆動するための第1の駆動パルスを生成する。第1の駆動パルスは、MOS電界効果トランジスタ224のゲートに供給される。また、コントローラ223は、第2の発振出力によりサイリスタ225、226、トランジスタ227、228を駆動するための第2の駆動パルス及びその反転パルスを生成する。第2の駆動パルスは、サイリスタ225のゲート及びトランジスタ228のベースに供給される。また、第2の駆動パルスの反転パルスは、サイリスタ226のゲート及びトランジスタ227のベースに供給される。
【0039】
また、コントローラ223には、トリガ入力回路221からトリガ信号が供給されている。トリガ信号入力回路221には、端子T3からトリガ信号が供給される。トリガ信号入力回路221は、例えば、端子T3に供給されるトリガ信号をパルス状に波形整形して、コントローラ223に供給する。
【0040】
コントローラ223は、トリガ信号入力回路221からのトリガ信号がハイレベルのときに、第1の駆動パルスをMOS電界効果トランジスタ224のゲートに供給するとともに、第2の駆動パルスをサイリスタ225のゲート及びトランジスタ228のベースに供給し、第2の駆動パルスの反転パルスをサイリスタ226のゲート及びトランジスタ227のベースに供給する。また、コントローラ223は、トリガ信号入力回路221からのトリガ信号がローレベルのときに、第1の駆動パルス及び第2の駆動パルス並びに第2の駆動パルスの反転パルスのMOS電界効果トランジスタ224のゲート及びサイリスタ225のゲート及びトランジスタ228のベース、並びに、サイリスタ226のゲート及びトランジスタ227のベースへの供給を停止する。このように、端子T3に供給されるトリガ信号によって、ELシート11が発光又は消灯される。
【0041】
MOS電界効果トランジスタ224は、ゲートがコントローラ223に接続され、ドレイン−ソースが端子T4と接地との間に接続されている。端子T4には、トランス213の1次コイルL1の一端が接続されている。トランス213の一次コイルL1の他端には、電源電圧Vddが印加される。このように、駆動回路12では、トランス213の1次コイルL1に流れる電流をMOS電界効果トランジスタ224により制御することにより、トランス213の1次コイルL1に流れる電流を効率よく制御できるため、駆動電圧を低減できるとともに、消費電流を低減できる。
【0042】
また、トランス213の2次コイルL2の一端は接地され、他端はダイオード214を介して端子T5に接続されている。ダイオード214は、アノードがトランス213の2次コイルL2の他端に接続され、カソードが端子T5に接続されている。
【0043】
サイリスタ225は、アノードが端子T5に接続され、カソードがトランジスタ227のコレクタに接続され、ゲートがコントローラ223に接続されている。サイリスタ226は、アノードが端子T5に接続され、カソードがトランジスタ228のコレクタに接続され、ゲートがコントローラ223に接続されている。
【0044】
トランジスタ227は、NPNトランジスタから構成され、コレクタがサイリスタ225のカソードに接続され、エミッタが接地され、ベースはコントローラ223に接続されている。トランジスタ228は、NPNトランジスタから構成され、コレクタがサイリスタ226のカソードに接続され、エミッタが接地され、ベースはコントローラ223に接続されている。
【0045】
サイリスタ225のアノードとトランジスタ227のコレクタとの接続点は、端子T6に接続され、サイリスタ226のアノードとトランジスタ228のコレクタとの接続点は、端子T7に接続されており、端子T6と端子T7との間に出力駆動電圧が発生する。ELシート11は、端子T6と端子T7との間に接続される。
【0046】
駆動回路12は、トランス213のインダクタンスとELシート12のキャパシタンスとにより共振が行なわれるように、MOS電界効果トランジスタ224を駆動する第1の駆動パルスの周波数f1とサイリスタ225、226、トランジスタ227、228を駆動する第2の駆動パルス及びその反転パルスの周波数f2とを整合させることにより、効率よく、ELシート12を駆動可能としている。このとき、周波数f1は外付けのキャパシタC1により調整され、また、周波数f2は外付けのキャパシタC2により調整される。
【0047】
〔動作〕
図5は本発明の一実施例の動作波形図を示す。図5(A)はMOS電界効果トランジスタ224のスイッチング状態、図5(B)は端子T5に発生する電圧、図5(C)はサイリスタ225のスイッチング状態、図5(D)はトランジスタ227のスイッチング状態、図5(E)はサイリスタ226のスイッチング状態、図5(F)はトランジスタ228のスイッチング状態、図5(G)は端子T6に発生する電圧、図5(H)は端子T7に発生する電圧、図5(I)はELシート11に印加される電圧を示している。
【0048】
MOS電界効果トランジスタ224は、周波数f1の第1の駆動パルスによって図5(A)に示すように、断続的にスイッチングされる。これによって、端子T5には、図5(B)に示すような電圧が発生する。
【0049】
期間T11においては、図5(C)〜図5(F)に示すようにサイリスタ225及びトランジスタ228がオンし、サイリスタ226及びトランジスタ227はオフする。これによって、トランス213の2次コイルL2に発生した電圧は、図5(G)に示すようにELシート11の端子T6側に印加される。
【0050】
期間T12においては、図5(C)〜図5(F)に示すようにサイリスタ226及びトランジスタ227がオンし、サイリスタ225及びトランジスタ228はオフする。これによって、トランス213の2次コイルL2に発生した電圧は、図5(H)に示すようにELシート11の端子T7側に印加される。
【0051】
これによって、ELシート11には、図5(I)で示すような交流波形が印加されることになる。ELシート11に印加される交流波形は、ダイオード214によって、図5(B)に示すような3つの半波として出力される。このとき、3つの半波の波形は、トランス213のインダクタンス成分によって丸められ、急峻な変化の少ない、スムーズな波形とされる。
【0052】
急峻な変化の少ない、スムーズな3つの半波波形がELシート11に印加され、ELシート11の容量成分に順次に蓄積されて、最終的に所定の昇圧された電圧とされる。よって、ELシート11に印加される電圧は、半波波形に増して、急峻で変化の少ない、スムーズな波形となる。また、ELシート11を両極性で駆動できる。このため、ELシート11に、急激に変化する電圧が印加されることがなくなり、また、電界発光材に一方の極性で電圧が印加されることがなくなるので、電界発光層131への負担を軽減でき、寿命を長くすることができる。
【0053】
〔具体例〕
図6は本発明の一実施例の照明システムの評価結果を説明するための図を示す。
【0054】
例えば、図6に示すように1層の膜厚が約65μmの電界発光薄膜を2層重ねたA4サイズのELシートを周波数1kHzの電圧200Vp-pの交流で駆動した場合、インピーダンス1380Ω、静電容量90nF、輝度220cd/m^2、半減値約900〜1400時間という実験結果を得た。このように、従来のELシートの輝度50cd/m^2、半減値800時間以下に比べて、輝度、寿命とも向上することがわかる。なお、本実施例では、一例として1層の膜厚を約65μmとして実験を行なったが、1層の膜厚が略70μm以下の電界発光薄膜を2層以上重ねることにより、輝度、寿命とも向上させることは可能である。
【0055】
例えば、1層の膜厚が約32μmの電界発光薄膜を4層重ねたA4サイズのELシートを上記駆動回路12により周波数1kHzの電圧200Vp-pの交流で駆動した場合、インピーダンス1150Ω、静電容量112nF、輝度350cd/m^2、半減値約3000〜5000時間という実験結果を得た
【0056】
これは、従来のELシートを用いた照明システムに比べて、輝度、半減値ともに大幅に上回っており、薄膜の電界発光薄膜を多数層重ねて形成することに、良好な電界発光層を得られることがわかる。更に膜厚が薄い電界発光薄膜を、更に多層に重ねることにより、更に高輝度化、長寿命化が可能となる。
【0057】
また、本実施例のELシート11と駆動回路12との組み合わせについては、消費電力についても良好な結果が得られている。例えば、面積比によるLEDとの消費電力比が5〜8分の1となり、LEDに比べて消費電力を十分に小さくできる。
【0058】
〔効果〕
本実施例によれば、ELシート11は、インピーダンスが小さいので、低電圧で駆動可能となる。これにより、漏れ電流などを低減でき、よって、消費電力を低減できる。
【0059】
また、本実施例のELシート11は、従来のELシートに比べて容量が大きいので、波形の立ち上がり、立下りなどを緩やかにでき、よって、ELシート11に急激な電圧が印加されることを防止できるため、ELシート11の寿命を長くできる。また、別途容量素子などを駆動回路12に設けることなく、トランス213のインダクタンス成分と共振回路を構成できるため、簡単な構成でシステムを構築できる。
【0060】
さらに、本実施例によれば、ELシート11が駆動回路12により両極性で駆動されるため、ELシート11の寿命を長くできる。
【0061】
また、本実施例によれば、ELシート11の駆動時のインピーダンスを低減できるため、同じ輝度を得る場合でも駆動電圧を低減させることができるため、消費電力を低減させることができる。
【0062】
また、本実施例では、3つの半波波形をELシート11に印加し、ELシート11の容量に順次に蓄積して、ELシート11の印加電圧を最終的に所定の昇圧された電圧としたが、3つの半波波形に限定されるものではなく、2つ以上の半波波形であれば、同様な作用効果が得られる。なお、印加する半波波形の数は、コントローラ223によるMOS電界効果トランジスタ224、サイリスタ225、226、トランジスタ227、228の切換タイミングを調整することにより、種々設定可能である。
【0063】
以上、本実施例によれば、効率よく電界発光層を発光させることができ、高輝度化、長寿命化、低電圧による駆動、及び、これらに伴う、低消費電力化が可能となる。
【0064】
なお、本実施例では、上記ELシート11と上記駆動回路12とを組み合わせることにより、互いの相乗効果によって、各々別々に、適用する場合より、更に、高輝度化、長寿命化を実現できる。
【0065】
〔適用例〕
図7はELシート11を携帯端末装置の照明装置に適用した場合の分解斜視図、図8はELシート11に形成された電界発光層131のパターンの形状を示す図である。なお、図8(A)は平面図、図8(B)は断面図を示す。
【0066】
ELシート11には、図8に示すように所定のパターン、例えば、キー311に対応しており、かつ、キースイッチ312の周囲を囲むようなパターンで、電界発光層131が形成されている。ELシート11は、回路基板313上に密着される。このとき、キースイッチ312は、ELシート11に形成された貫通孔314を通して、キー311に係合する。
【0067】
ELシート11の上下の電極111、122との間に駆動回路12によって電圧を印加することにより、電界発光層131が発光する。このとき、電界発光層131は、ELシート11のキー311に対応した部分に形成されているので、キー311には、下面側から光が入射する。キー311は、光透過性の材料で構成されている。このため、キー311の下面側で発光した光がキー311を透過して、外部に出射される。これによって、キー311が照明される。
【0068】
このとき、本実施例のELシート11は、非常に薄型、平板状であるので、キースイッチ312が搭載された回路基板313に密着させることができるため、キー311と回路基板313との間隙を小さくでき、よって、携帯端末装置の低背化に寄与する。
【0069】
図9はELシート11の携帯端末装置の照明装置に適用した場合の他の適用例の分解斜視図を示す。
【0070】
なお、本適用例では、フィルム状のELシート11を回路基板313上に搭載するようにしたが、図9に示すように回路基板313上に電極111、122及び絶縁層112、121などとともに、電界発光層131を直接印刷して、形成し、透明樹脂フィルム113により被覆することにより、回路基板313をELシートとして作用させるように構成することも可能である。なお、このとき、図9に示すように回路基板313の液晶パネル315が搭載される部分にも電界発光層131を形成し、液晶パネル315のバックライトとして作用させることにより、携帯端末装置を薄型化できる。
【0071】
〔その他〕
本実施例では、無機電界発光材を用いたELシートを例に説明を行なったが、有機電界発光材を用いたELシートに対して同様な構造、同様な製造方法を適用できることは言うまでもない。
【0072】
また、本実施例では、駆動回路12により電界発光層131が複数の電界発光材薄膜L1〜L4から構成されたELシート11を駆動する例について説明したが、これに限定されるものではなく、通常の電界発光層が1層構造の通常のELシートに適用した場合においても他の駆動回路により駆動する場合に比べて輝度を高くできるとともに、ELシートの寿命を長くすることができる。
【0073】
さらに、適用例では、携帯端末装置のキーの照明装置を例に説明したが、本実施例の照明システムの適用範囲はこれに限定されるものではなく、例えば、時計、液晶ディスプレイ、PDA(personal digital assistant)などの携帯端末装置などの表示装置、自動車などに搭載されるメータ類、家電、コンピュータ類などのバックライトなどとしても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施例のシステム構成図である。
【図2】ELシート11の断面図である。
【図3】ELシート11の製造方法を説明するための図である。
【図4】電界発光層131の構造を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施例の動作波形図である。
【図6】本発明の一実施例の照明システムの評価を説明するための図である。
【図7】ELシート11を携帯端末装置の照明装置に適用した場合の分解斜視図である。
【図8】ELシート11に形成された電界発光層131のパターンの形状を示す図である。
【図9】ELシート11の携帯端末装置の照明装置に適用した場合の他の適用例の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 照明システム
11 ELシート、12 駆動回路
111 透明電極、112 絶縁層、113 透明樹脂フィルム
121 絶縁層、122 電極、123 樹脂フィルム
131 電界発光層
L1〜L4 電界発光材薄膜
211 駆動用集積回路、213 トランス、214 ダイオード
221 発振回路、222 トリガ入力回路、223 コントローラ
224 MOS電界効果トランジスタ、225、226 サイリスタ
227、228 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界発光材からなる電界発光層に電界を印加することにより該電界発光層を発光させる電界発光装置において、
前記電界発光層は、電界発光材からなる複数の薄膜を積層した構造とされていることを特徴とする電界発光装置。
【請求項2】
前記電界発光材からなる薄膜は、1層が略70μm以下であることを特徴とする請求項1記載の電界発光装置。
【請求項3】
前記電界発光層は、互いに対向する面に、導電膜及び絶縁体層が順次積層された樹脂フィルムにより、挟持された構造とされたことを特徴とする請求項1又は2記載の電界発光装置。
【請求項4】
電界発光材からなる電界発光層に電界を印加することにより該電界発光層を発光させる電界発光装置の製造方法において、
前記電界発光材からなる薄膜を、複数回にわたって積層して前記電界発光層を形成することを特徴とする電界発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記電界発光材からなる薄膜は、前記電界発光材を印刷することにより形成されることを特徴とする請求項4記載の電界発光装置の製造方法。
【請求項6】
電界発光材からなる電界発光層に電界を印加することにより該電界発光層を発光させる電界発光装置の駆動方法であって、
前記電界発光層に複数回断続して電圧を印加することにより、前記電界発光層の印加電圧を所定の電圧に昇圧し、前記電界発光層を発光させることを特徴とする電界発光装置の駆動方法。
【請求項7】
前記電界発光層に印加する電圧を所定のタイミング毎に反転させることを特徴とする請求項6記載の電界発光装置の駆動方法。
【請求項8】
電界発光材からなる電界発光層に電界を印加することにより該電界発光層を発光させる電界発光装置の駆動回路であって、
前記電界発光層に複数回断続して電圧を印加することにより、前記電界発光層の印加電圧を所定の電圧に昇圧し、前記電界発光層を発光させる昇圧回路を有することを特徴とする電界発光装置の駆動回路。
【請求項9】
前記昇圧回路は、1次コイルに流れる電流に応じた電圧を2次コイルに発生させるトランスと、
前記トランスの1次コイルに流れる電流を制御するスイッチング手段と、
前記トランスの2次コイルに発生した電圧を整流し、前記電界発光装置に供給する整流手段とを有することを特徴とする請求項8記載の電界発光装置の駆動回路。
【請求項10】
前記昇圧回路で昇圧された電圧を前記電界発光層に所定のタイミング毎に反転させて印加する反転回路とを有する特徴とする請求項8又は9記載の電界発光装置の駆動回路。
【請求項11】
前記スイッチング手段は、ドレイン−ソース間が前記トランスの1次コイルに直列に接続されたMOS電界効果トランジスタから構成されたことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項記載の電界発光装置の駆動回路。
【請求項12】
電界発光材からなる電界発光層に電界を印加することにより該電界発光層を発光させる電界発光装置と、前記電界発光層に印加する電圧を生成する駆動回路とを有する照明システムにおいて、
前記電界発光装置は、前記電界発光層が電界発光材からなる複数の薄膜を積層した構造とされており、
前記駆動回路は、前記電界発光層に複数回断続して電圧を印加することにより、前記電界発光層の印加電圧を所定の電圧に昇圧し、前記電界発光層を発光させることを特徴とする照明システム。
【請求項13】
前記駆動回路は、前記電界発光層に印加する電圧を所定のタイミング毎に反転させることを特徴とする請求項12記載の照明システム。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−317359(P2007−317359A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243972(P2004−243972)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(504321599)株式会社バリオス (1)
【出願人】(504322530)
【Fターム(参考)】