電界通信システム
【課題】信号量の設置場所依存性を排除して信号量を増強すると共に、放射性の雑音の取り込みを極力抑えた高SNRの電界通信システムを提供する。
【解決手段】設置端末2は、第1電極21、第1電極21より面積において大きく、かつ第1電極21の周囲に配置され、かつ電極12に浮遊容量C1を介して容量結合する第2電極22および通信部23を有する。
【解決手段】設置端末2は、第1電極21、第1電極21より面積において大きく、かつ第1電極21の周囲に配置され、かつ電極12に浮遊容量C1を介して容量結合する第2電極22および通信部23を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体などの電界伝達媒体に電界を誘起し、その誘起された電界を検出して通信を行う電界通信システムに関するものであり、特に「信号(Signal)」対「雑音(Noise)」比(以下「SNR」と記す)を改善して良好な通信を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電波を空中に伝搬させる無線通信に代わる通信手段として、人体を介して電界を伝搬させる人体通信の研究が活発化してきている(先行技術文献を参照)。これは一対の対向電極を利用して通信内容に応じた電界を人体などの電界伝達媒体に誘起し、別の一対の対向電極を介して人体に誘起された電界を検出して通信内容を受信するものである。
【0003】
図17は、従来の電界通信システムの構成図である。
【0004】
ユーザUは、対向する一対の電極11、12と通信部13を有する携帯端末1を携帯しており、携帯端末1から送信される識別情報(ID)などを含む信号は、対向する一対の第1電極21、第2電極22’とこれらの電極に同軸ケーブル等の信号ケーブル3で接続された通信部23を有する設置端末2’で受信される。通信には交番信号を用いるので、各電極は絶縁物で被覆されていてもよい。
【0005】
ここで、第1電極21、第2電極22’は同一形状、同一寸法であり、上方からこれらの電極を見下ろした場合、床側の第2電極22’は第1電極21の影に完全に隠れることになる。終端抵抗232は信号ケーブル3の終端抵抗であり、受信器231の入力部での受信信号の反射を抑えて良好な受信を実現する。第2電極22’の下側、例えば、建物の床下等には、導電性の建物骨材4が配置される。床が内部に導電性の部材を含む場合はこれが建物骨材4に相当する。第2電極22’と建物骨材4は浮遊容量C2’を介して容量結合する。電極12と建物骨材4は浮遊容量C3を介して容量結合する。
【0006】
携帯端末1の通信部13は、電極12を基準として、電界を電極11に印加する。電界は、電流(変位電流など)、電圧等に変化しながら、経路R1’を進んでいく。
【0007】
つまり、電界は、人体B、第1電極21、信号ケーブル3の一方の線路、終端抵抗232、信号ケーブル3の他方の線路、第2電極22’、浮遊容量C2’、建物骨材4、浮遊容量C3を経由して、電極12に戻ってくる。
【0008】
通信部13は、上記の電界に対し、送信内容に応じた信号を重畳する。通信部23においては、受信器231が終端抵抗232の両端に発生した電圧を検出し増幅して、送信内容を取得する。こうして、携帯端末1と設置端末2’の間で通信が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−174570号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】F. Y. Shih et al., IEEE Trans. Power Electron., vol. 11, no.1, pp. 170-181, 1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、送信信号のキャリア周波数をfc、浮遊容量C2’の容量値をC2’とすると、浮遊容量C2’には、式(1)に示す交流抵抗があり、これは信号電流を減少させる要因になる。
【0012】
1/(2・π・fc・C2’) (1)
さらに、容量値C2’は、第2電極22’から建物骨材4までの距離に依存するので、設置端末2’の設置場所毎に信号の損失量が異なることになり、通信回線の設計が極めて難しいという課題があった。
【0013】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は信号量の設置場所依存性を排除して信号量を増強すると共に、放射性の雑音の取り込みを極力抑えた高SNRの電界通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、人体に誘起される電界を利用して通信を行う電界通信システムであって、人体に電界を誘起するための対向する一対の電極、および当該一対の電極に信号を送信する通信部を有する携帯端末と、人体に誘起された電界を検出するための第1電極、当該第1電極より面積において大きく、かつ当該第1電極の周囲に配置され、かつ前記一対の電極の一方に容量結合する第2電極、および当該第1電極、当該第2電極から信号を受信する通信部を有する設置端末とを備えることを特徴とする電界通信システムをもって解決手段とする。
【0015】
例えば、前記第2電極に孔が形成され、前記第1電極が前記孔に配置され、前記第1電極と前記第2電極とが空間における同一平面を構成するように配置されている。
【0016】
例えば、前記第2電極が分割され、かつ当該分割により生じた各分割片が互いに電気的に接続されている。
【0017】
例えば、人体を含んで構成されるアンテナの共振周波数を調整するためのリアクタンスが前記第1電極と前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線に挿入されている。
【0018】
例えば、前記リアクタンスは、前記第1電極に対向する第3電極と前記第1電極とから構成される平板コンデンサである。
【0019】
例えば、前記リアクタンスと前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線および前記第2電極と前記設置端末の通信部と接続する第2信号線にコモンモードチョークが挿入されている。
【0020】
例えば、前記携帯端末の通信部と前記設置端末の通信部は双方向で信号を送信でき、前記設置端末の通信部から送信される信号のうちの前記第1電極と前記第2電極とで反射する信号成分を減少させる終端回路が、前記第1電極と前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線および前記第2電極と前記設置端末の通信部とを接続する第2信号線の、前記第1電極および前記第2電極側の終端部に設けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電界通信システムによれば、信号量の設置場所依存性を排除して信号量を増強すると共に、放射性の雑音の取り込みを極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図2】第1の実施の形態における電界通信システムの電極の上面図である。
【図3】第2の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図4】第2の実施の形態における電界通信システムの電極の上面図である。
【図5】第3の実施の形態における電界通信システムの電極の上面図である。
【図6】第1〜第3の実施の形態における課題を説明するための図である。
【図7】モノポール・アンテナの周波数特性を説明するための図である。
【図8】人体をモノポール・アンテナに見立てた時の第1の設計指針を示す図である。
【図9】人体をモノポール・アンテナに見立てた時の第2の設計指針を示す図である。
【図10】モノポール・アンテナの共振周波数の調整方法を説明するための図である。
【図11】第4の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図12】第5の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図13】第6の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図14】第7の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図15】第8の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図16】第9の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図17】従来の電界通信システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態における電界通信システムの構成図であり、図2は、電界通信システムで使用される電極の上面図である。
【0025】
図1に示すように、電界通信システムは、人体Bに誘起される電界を利用して通信を行う電界通信システムであって、人体BをもつユーザUに携帯される携帯端末1と、例えば床に設けられる設置端末2とを備える。
【0026】
携帯端末1は、人体Bに電界を誘起するための対向する一対の電極11、12および電極11、12に信号を送信する通信部13を有する。
【0027】
設置端末2は、人体Bに誘起された電界を検出するための第1電極21、第1電極21より面積において大きく、かつ第1電極21の周囲に配置され、かつ電極12に浮遊容量C1を介して容量結合する第2電極22、および第1電極21、第2電極22から信号を受信する通信部23を有する。
【0028】
第1電極21、第2電極22は、通信部23に対し、同軸ケーブル等の信号ケーブル3で接続される。
【0029】
第1電極21は第2電極22の上側つまり人体B側、第2電極22は第1電極21の下側つまり床側に配置される。第2電極22の下側、例えば、建物の床下等には、導電性の建物骨材4が配置される。床が内部に導電性の部材を含む場合はこれが建物骨材4に相当する。第2電極22と建物骨材4は浮遊容量C2を介して容量結合する。
【0030】
通信部23は、受信器231と終端抵抗232を備える。受信器231は、電源VDDから給電され、受信信号を増幅し、端子Outから出力する。終端抵抗232は、受信器231の入力部での受信信号の反射を抑えて良好な受信を実現する。
【0031】
図2に示すように、第2電極22は、大面積化され、よって、第1電極21より面積において大きい。また、第2電極22は、第1電極21の下側に配置されている。よって、上方から見下ろした場合、第2電極22は、第1電極21の影には隠れない。
【0032】
携帯端末1の通信部13は、電極12を基準として、電界を電極11に印加する。電界は、電流(変位電流など)、電圧等に変化しながら、経路R1を進んでいく。
【0033】
つまり、電界は、人体B、第1電極21、信号ケーブル3の一方の線路、終端抵抗232、信号ケーブル3の他方の線路、第2電極22、浮遊容量C1を経由して、電極12に戻ってくる。
【0034】
通信部13は、上記の電界に対し、送信内容に応じた信号を重畳する。通信部23においては、受信器231が終端抵抗232の両端に発生した電圧を検出し増幅して、送信内容を取得する。こうして、携帯端末1と設置端末2の間で通信が行われる。
【0035】
経路R1には、信号量の損失の原因となる浮遊容量C2が含まれないが、このことは重要である。つまり、第2電極22を大面積化して、電極12と建物骨材4との間を遮断し、さらに、第1電極21を取り囲むように第2電極22を配置したので、建物骨材4を経由する電流の経路が発生しない。また、第2電極22を大面積化したので、浮遊容量C1の容量値が大きくなる。すなわち、損失が減って大きな受信信号(終端抵抗232に流れる電流によって、その両端に発生する電圧)を得られるだけでなく、第1電極21および第2電極22の設置場所によって受信信号量が変わるという不確定性要素を排除することができる。
【0036】
[第2の実施の形態]
図3は、第2の実施の形態における電界通信システムの構成図であり、図4は、電界通信システムで使用される第1電極21、第2電極22の上面図である。
【0037】
第1の実施の形態の電界通信システムとの違いは、第2電極22に孔221が形成され、第1電極21が孔221に配置され、第1電極21と第2電極22とが空間における同一平面を構成するように配置されていることである。第1電極21が孔221に配置されることにより、第1電極21、第2電極22により段差が生じるのを防止することができる。また、第1電極21と第2電極22の間の浮遊容量が、第1の実施の形態の電界通信システムの場合に比べて非常に小さくなるので、損失が減り、終端抵抗232の両端に大きな受信信号を得ることができる。
【0038】
[第3の実施の形態]
図5は、第3の実施の形態における電界通信システムで使用される第1電極21、第2電極22の上面図である。
【0039】
第1および第2の実施の形態の変形として、第2電極22を分割し、分割により生じた各分割片22aを、導線、ケーブル等(図示せず)を用い、互いに電気的に接続してもよい。第1および第2の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
[第1〜第3の実施の形態における課題の説明]
ここで、第2電極22を大面積化する際に発生する課題を図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
図6は、第1〜第3の実施の形態における課題を説明するための図である。第1の実施の形態において、ユーザUが立位にて第1電極21の上に乗った状態を図6(a)に示す。人体Bは良導体であるので、図6(b)に示すように、第2電極22を大地面(導電性)、身長をアンテナ長とするモノポール・アンテナ5が構成される。モノポール・アンテナ5の等価回路は、図6(c)に示すように、抵抗R、インダクタンスL、キャパシタンスCからなる直列共振回路である。共振周波数f0、インダクタンスL、キャパシタンスCの関係は、式(2)の通りである。
【0042】
f0=1/(2π(L・C)1/2) (2)
無線通信において、モノポール・アンテナは共振周波数f0、すなわちアンテナ高(導体長)hが波長λの1/4となる周波数で使用される。人体Bを線状アンテナ近似(導体幅ゼロ)すると、アンテナ高hと共振周波数f0には、式(3)の関係が成り立つ。
【0043】
f0=c/(4・h) (3)
式(3)に光速:c=3×108[m/s]、身長:h=1.7[m]を代入して、
f0=44[MHz]
を得る。
【0044】
モノポール・アンテナは概して狭帯域であり、図7に示すように、共振周波数f0の近傍のみでアンテナ利得が高くなる。これは電波として空気中を伝搬する放射性雑音の内、特に共振周波数f0の近傍の雑音を拾い易いことを意味しており、共振周波数f0が電界通信で用いるキャリア周波数fcに接近していると雑音の大きい電界通信システムになる。
【0045】
キャリア周波数fcを中心とする通信帯域の雑音を下げるには図8に示す、共振周波数f0の高域側シフト、もしくは図9に示す、共振周波数f0の低域側シフトが有効である。共振周波数f0の高域側シフトは図10に示すように、モノポール・アンテナ5に容量性のリアクタンス6(すなわちキャパシタンスC6)を直列接続して、キャパシタンスCとキャパシタンスC6の合成容量を下げることで実現できる。合成容量は式(4)で与えられる。
【0046】
C・C6/(C+C6) (4)
図10において、リアクタンス6として、誘導性のリアクタンス(すなわちインダクタンスL6)を接続した場合は、インダクタンスLとインダクタンスL6の合成インダクタンスは式(5)で与えられる。
【0047】
L+L6 (5)
すなわちインダクタンスが大きくなるので、共振周波数f0は低域側にシフトする。以下では説明が煩雑になるのを避けるために、主に第2の実施の形態を例に、リアクタンスの適用法を示すが、第1および第3の実施の形態でも同様な効果がある。
【0048】
[第4の実施の形態]
図11は、第4の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0049】
第1の実施の形態の電界通信システムとの違いは、人体Bを含んで構成されるアンテナの共振周波数を調整するためのリアクタンス6が第1電極21と設置端末2の通信部23とを接続する第1信号線31に挿入されていることである。リアクタンス6は、上記のキャパシタンスC6またはインダクタンスL6である。リアクタンス6を調整することで、アンテナの共振周波数f0と信号のキャリア周波数fcの差を大きくでき、これにより、通信帯域の雑音を下げることができる。
【0050】
[第5の実施の形態]
図12は、第5の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0051】
第2の実施の形態の電界通信システムとの違いは、人体Bを含んで構成されるアンテナの共振周波数を調整するためのリアクタンス6が第1電極21と設置端末2の通信部23とを接続する第1信号線31に挿入されていることである。リアクタンス6を調整することで、アンテナの共振周波数f0と信号のキャリア周波数fcの差を大きくでき、これにより、通信帯域の雑音を下げることができる。
【0052】
[第6の実施の形態]
図13は、第6の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0053】
第5の実施の形態の電界通信システムとの違いは、リアクタンス6は、第1電極21に対向する第3電極24と第1電極21とから構成される平板コンデンサであることである。
【0054】
こうすることで、リアクタンス6を第1電極21と一体に構成にでき、リアクタンス6を外付けしなくてよく、設置端末2を容易に製造することができる。
【0055】
[第7の実施の形態]
図14は、第7の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0056】
第6の実施の形態の電界通信システムとの違いは、リアクタンス6と通信部23とを接続する第1信号線31および第2電極22と通信部23と接続する第2信号線32にコモンモードチョーク7が挿入されていることである。信号ケーブル3を伝搬する信号からコモンモードチョーク7により同相雑音成分が除去されるので、通信部23の入力雑音(終端抵抗232の両端の雑音に相当)が減少し、高いSNRを得ることができる。
【0057】
[第8の実施の形態]
図15は、第8の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0058】
第8の実施の形態では、携帯端末1の通信部13と設置端末2の通信部23は双方向で信号を送信できるようになっている。
【0059】
このため、通信部23は、受信器231と終端抵抗232と送信器233と切り替えスイッチ234とを有する。送信器233は、電源VDDから給電され、端子Inに入力された信号を切り替えスイッチ234の端子Tに出力する。
【0060】
切り替えスイッチ234において、通信部23から信号を送信する送信モードのときは、端子N、Tが接続され、一方、通信部23が信号を受信する受信モードのとき、端子N、Rが接続される。
【0061】
また、通信部23から送信される信号のうちの第1電極21と第2電極22とで反射する信号成分を減少させる終端回路8が、第1電極21と通信部23とを接続する第1信号線31および第2電極22と通信部23とを接続する第2信号線32の、第1電極21および第2電極22側の終端部に設けられている。
【0062】
電界通信は、大気中への電波の放射を極力抑えるべく、理想的にはゼロにすべく、図8および図9に示したように、人体Bにより構成されるアンテナの利得が低い状態で使用するので、送信電力はアンテナから大気中に放射されずに第1電極21、第2電極22で全反射される。終端回路8は、この不要電力を吸収(熱に変換)して、送信波形の歪を抑えるという作用効果をもたらす。終端回路8の設計に関しては、信号ケーブル3からアンテナ(人体B)側を見たインピーダンスが信号ケーブル3の特性インピーダンスに整合するように回路定数を選べばよく、市中技術にて容易に実現可能である。
【0063】
[第9の実施の形態]
図16は、第9の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0064】
第8の実施の形態の電界通信システムとの違いは、第1電極21、第2電極22を壁面に設けたことである。携帯端末1を携帯したユーザU(人体B)は、手などの身体部位を壁面の第1電極21に接触させることにより、携帯端末1と設置端末2の間の通信経路を形成して、識別情報(ID)を用いた通信による認証を行う。符号Fは電気的にフローティング状態に設定された床であり、オフィス等の2重床構造にて容易に実現できる。床Fと設置端末2の設置環境内の金属物(建物骨材4等)の間の浮遊容量を小さく設定することにより、静電結合による雑音の混入を抑えることができる。
【0065】
以上のように、各実施の形態の電界通信システムによれば、携帯端末1の電極12の主たる容量結合先が建物骨材4ではなく、設置端末2の第2電極22になるように、第2電極22の大きさと形状を設定しているので、受信信号量の設置場所依存性のない、再現性の良い通信が可能である。また、設置端末2の第2電極22と建物骨材4との間の浮遊容量(図17に示す浮遊容量C2’に相当)を通信のクリティカルパスから排除したことにより、信号の損失(浮遊容量C2’における電圧降下に起因する信号電流の減少)が減って、受信信号量が大きくなる。
【0066】
また、第2電極22に孔221が形成され、第1電極21が孔221に配置され、第1電極21と第2電極22とが空間における同一平面を構成するように配置されているので、段差が生じるのを防止することができる。
【0067】
また、第1電極21と通信部23とを接続する第1信号線31にリアクタンス6を挿入して、人体Bにより構成されるアンテナの共振周波数をキャリア周波数を中心とする通信周波数帯域から遠ざけているので、放射性雑音の少ない、高SNRが得られる。
【0068】
また、リアクタンス6と設置端末2の通信部23とを接続する第1信号線31および第2電極22と通信部23と接続する第2信号線32にコモンモードチョーク7を挿入して、同相雑音成分を除去しているので、高SNRが得られる。
【0069】
また、設置端末2の通信部23から送信される信号のうちの第1電極21と第2電極22とで反射する信号成分を減少させる終端回路8が、第1信号線31および第2信号線32の、第1電極21および第2電極22側の終端部に設けられているので、送信波形の歪を抑えることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…携帯端末
2…設置端末
3…信号ケーブル
4…建物骨材
5…モノポール・アンテナ
6…リアクタンス
7…コモンモードチョーク
8…終端回路
11、12…電極
13、23…通信部
21…第1電極
22…第2電極
22a…分割片
24…第3電極
31…第1信号線
32…第2信号線
221…孔
231…受信器
232…終端抵抗
233…送信器
234…スイッチ
B…人体
U…ユーザ
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体などの電界伝達媒体に電界を誘起し、その誘起された電界を検出して通信を行う電界通信システムに関するものであり、特に「信号(Signal)」対「雑音(Noise)」比(以下「SNR」と記す)を改善して良好な通信を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電波を空中に伝搬させる無線通信に代わる通信手段として、人体を介して電界を伝搬させる人体通信の研究が活発化してきている(先行技術文献を参照)。これは一対の対向電極を利用して通信内容に応じた電界を人体などの電界伝達媒体に誘起し、別の一対の対向電極を介して人体に誘起された電界を検出して通信内容を受信するものである。
【0003】
図17は、従来の電界通信システムの構成図である。
【0004】
ユーザUは、対向する一対の電極11、12と通信部13を有する携帯端末1を携帯しており、携帯端末1から送信される識別情報(ID)などを含む信号は、対向する一対の第1電極21、第2電極22’とこれらの電極に同軸ケーブル等の信号ケーブル3で接続された通信部23を有する設置端末2’で受信される。通信には交番信号を用いるので、各電極は絶縁物で被覆されていてもよい。
【0005】
ここで、第1電極21、第2電極22’は同一形状、同一寸法であり、上方からこれらの電極を見下ろした場合、床側の第2電極22’は第1電極21の影に完全に隠れることになる。終端抵抗232は信号ケーブル3の終端抵抗であり、受信器231の入力部での受信信号の反射を抑えて良好な受信を実現する。第2電極22’の下側、例えば、建物の床下等には、導電性の建物骨材4が配置される。床が内部に導電性の部材を含む場合はこれが建物骨材4に相当する。第2電極22’と建物骨材4は浮遊容量C2’を介して容量結合する。電極12と建物骨材4は浮遊容量C3を介して容量結合する。
【0006】
携帯端末1の通信部13は、電極12を基準として、電界を電極11に印加する。電界は、電流(変位電流など)、電圧等に変化しながら、経路R1’を進んでいく。
【0007】
つまり、電界は、人体B、第1電極21、信号ケーブル3の一方の線路、終端抵抗232、信号ケーブル3の他方の線路、第2電極22’、浮遊容量C2’、建物骨材4、浮遊容量C3を経由して、電極12に戻ってくる。
【0008】
通信部13は、上記の電界に対し、送信内容に応じた信号を重畳する。通信部23においては、受信器231が終端抵抗232の両端に発生した電圧を検出し増幅して、送信内容を取得する。こうして、携帯端末1と設置端末2’の間で通信が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−174570号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】F. Y. Shih et al., IEEE Trans. Power Electron., vol. 11, no.1, pp. 170-181, 1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、送信信号のキャリア周波数をfc、浮遊容量C2’の容量値をC2’とすると、浮遊容量C2’には、式(1)に示す交流抵抗があり、これは信号電流を減少させる要因になる。
【0012】
1/(2・π・fc・C2’) (1)
さらに、容量値C2’は、第2電極22’から建物骨材4までの距離に依存するので、設置端末2’の設置場所毎に信号の損失量が異なることになり、通信回線の設計が極めて難しいという課題があった。
【0013】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は信号量の設置場所依存性を排除して信号量を増強すると共に、放射性の雑音の取り込みを極力抑えた高SNRの電界通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、人体に誘起される電界を利用して通信を行う電界通信システムであって、人体に電界を誘起するための対向する一対の電極、および当該一対の電極に信号を送信する通信部を有する携帯端末と、人体に誘起された電界を検出するための第1電極、当該第1電極より面積において大きく、かつ当該第1電極の周囲に配置され、かつ前記一対の電極の一方に容量結合する第2電極、および当該第1電極、当該第2電極から信号を受信する通信部を有する設置端末とを備えることを特徴とする電界通信システムをもって解決手段とする。
【0015】
例えば、前記第2電極に孔が形成され、前記第1電極が前記孔に配置され、前記第1電極と前記第2電極とが空間における同一平面を構成するように配置されている。
【0016】
例えば、前記第2電極が分割され、かつ当該分割により生じた各分割片が互いに電気的に接続されている。
【0017】
例えば、人体を含んで構成されるアンテナの共振周波数を調整するためのリアクタンスが前記第1電極と前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線に挿入されている。
【0018】
例えば、前記リアクタンスは、前記第1電極に対向する第3電極と前記第1電極とから構成される平板コンデンサである。
【0019】
例えば、前記リアクタンスと前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線および前記第2電極と前記設置端末の通信部と接続する第2信号線にコモンモードチョークが挿入されている。
【0020】
例えば、前記携帯端末の通信部と前記設置端末の通信部は双方向で信号を送信でき、前記設置端末の通信部から送信される信号のうちの前記第1電極と前記第2電極とで反射する信号成分を減少させる終端回路が、前記第1電極と前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線および前記第2電極と前記設置端末の通信部とを接続する第2信号線の、前記第1電極および前記第2電極側の終端部に設けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電界通信システムによれば、信号量の設置場所依存性を排除して信号量を増強すると共に、放射性の雑音の取り込みを極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図2】第1の実施の形態における電界通信システムの電極の上面図である。
【図3】第2の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図4】第2の実施の形態における電界通信システムの電極の上面図である。
【図5】第3の実施の形態における電界通信システムの電極の上面図である。
【図6】第1〜第3の実施の形態における課題を説明するための図である。
【図7】モノポール・アンテナの周波数特性を説明するための図である。
【図8】人体をモノポール・アンテナに見立てた時の第1の設計指針を示す図である。
【図9】人体をモノポール・アンテナに見立てた時の第2の設計指針を示す図である。
【図10】モノポール・アンテナの共振周波数の調整方法を説明するための図である。
【図11】第4の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図12】第5の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図13】第6の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図14】第7の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図15】第8の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図16】第9の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【図17】従来の電界通信システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態における電界通信システムの構成図であり、図2は、電界通信システムで使用される電極の上面図である。
【0025】
図1に示すように、電界通信システムは、人体Bに誘起される電界を利用して通信を行う電界通信システムであって、人体BをもつユーザUに携帯される携帯端末1と、例えば床に設けられる設置端末2とを備える。
【0026】
携帯端末1は、人体Bに電界を誘起するための対向する一対の電極11、12および電極11、12に信号を送信する通信部13を有する。
【0027】
設置端末2は、人体Bに誘起された電界を検出するための第1電極21、第1電極21より面積において大きく、かつ第1電極21の周囲に配置され、かつ電極12に浮遊容量C1を介して容量結合する第2電極22、および第1電極21、第2電極22から信号を受信する通信部23を有する。
【0028】
第1電極21、第2電極22は、通信部23に対し、同軸ケーブル等の信号ケーブル3で接続される。
【0029】
第1電極21は第2電極22の上側つまり人体B側、第2電極22は第1電極21の下側つまり床側に配置される。第2電極22の下側、例えば、建物の床下等には、導電性の建物骨材4が配置される。床が内部に導電性の部材を含む場合はこれが建物骨材4に相当する。第2電極22と建物骨材4は浮遊容量C2を介して容量結合する。
【0030】
通信部23は、受信器231と終端抵抗232を備える。受信器231は、電源VDDから給電され、受信信号を増幅し、端子Outから出力する。終端抵抗232は、受信器231の入力部での受信信号の反射を抑えて良好な受信を実現する。
【0031】
図2に示すように、第2電極22は、大面積化され、よって、第1電極21より面積において大きい。また、第2電極22は、第1電極21の下側に配置されている。よって、上方から見下ろした場合、第2電極22は、第1電極21の影には隠れない。
【0032】
携帯端末1の通信部13は、電極12を基準として、電界を電極11に印加する。電界は、電流(変位電流など)、電圧等に変化しながら、経路R1を進んでいく。
【0033】
つまり、電界は、人体B、第1電極21、信号ケーブル3の一方の線路、終端抵抗232、信号ケーブル3の他方の線路、第2電極22、浮遊容量C1を経由して、電極12に戻ってくる。
【0034】
通信部13は、上記の電界に対し、送信内容に応じた信号を重畳する。通信部23においては、受信器231が終端抵抗232の両端に発生した電圧を検出し増幅して、送信内容を取得する。こうして、携帯端末1と設置端末2の間で通信が行われる。
【0035】
経路R1には、信号量の損失の原因となる浮遊容量C2が含まれないが、このことは重要である。つまり、第2電極22を大面積化して、電極12と建物骨材4との間を遮断し、さらに、第1電極21を取り囲むように第2電極22を配置したので、建物骨材4を経由する電流の経路が発生しない。また、第2電極22を大面積化したので、浮遊容量C1の容量値が大きくなる。すなわち、損失が減って大きな受信信号(終端抵抗232に流れる電流によって、その両端に発生する電圧)を得られるだけでなく、第1電極21および第2電極22の設置場所によって受信信号量が変わるという不確定性要素を排除することができる。
【0036】
[第2の実施の形態]
図3は、第2の実施の形態における電界通信システムの構成図であり、図4は、電界通信システムで使用される第1電極21、第2電極22の上面図である。
【0037】
第1の実施の形態の電界通信システムとの違いは、第2電極22に孔221が形成され、第1電極21が孔221に配置され、第1電極21と第2電極22とが空間における同一平面を構成するように配置されていることである。第1電極21が孔221に配置されることにより、第1電極21、第2電極22により段差が生じるのを防止することができる。また、第1電極21と第2電極22の間の浮遊容量が、第1の実施の形態の電界通信システムの場合に比べて非常に小さくなるので、損失が減り、終端抵抗232の両端に大きな受信信号を得ることができる。
【0038】
[第3の実施の形態]
図5は、第3の実施の形態における電界通信システムで使用される第1電極21、第2電極22の上面図である。
【0039】
第1および第2の実施の形態の変形として、第2電極22を分割し、分割により生じた各分割片22aを、導線、ケーブル等(図示せず)を用い、互いに電気的に接続してもよい。第1および第2の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
[第1〜第3の実施の形態における課題の説明]
ここで、第2電極22を大面積化する際に発生する課題を図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
図6は、第1〜第3の実施の形態における課題を説明するための図である。第1の実施の形態において、ユーザUが立位にて第1電極21の上に乗った状態を図6(a)に示す。人体Bは良導体であるので、図6(b)に示すように、第2電極22を大地面(導電性)、身長をアンテナ長とするモノポール・アンテナ5が構成される。モノポール・アンテナ5の等価回路は、図6(c)に示すように、抵抗R、インダクタンスL、キャパシタンスCからなる直列共振回路である。共振周波数f0、インダクタンスL、キャパシタンスCの関係は、式(2)の通りである。
【0042】
f0=1/(2π(L・C)1/2) (2)
無線通信において、モノポール・アンテナは共振周波数f0、すなわちアンテナ高(導体長)hが波長λの1/4となる周波数で使用される。人体Bを線状アンテナ近似(導体幅ゼロ)すると、アンテナ高hと共振周波数f0には、式(3)の関係が成り立つ。
【0043】
f0=c/(4・h) (3)
式(3)に光速:c=3×108[m/s]、身長:h=1.7[m]を代入して、
f0=44[MHz]
を得る。
【0044】
モノポール・アンテナは概して狭帯域であり、図7に示すように、共振周波数f0の近傍のみでアンテナ利得が高くなる。これは電波として空気中を伝搬する放射性雑音の内、特に共振周波数f0の近傍の雑音を拾い易いことを意味しており、共振周波数f0が電界通信で用いるキャリア周波数fcに接近していると雑音の大きい電界通信システムになる。
【0045】
キャリア周波数fcを中心とする通信帯域の雑音を下げるには図8に示す、共振周波数f0の高域側シフト、もしくは図9に示す、共振周波数f0の低域側シフトが有効である。共振周波数f0の高域側シフトは図10に示すように、モノポール・アンテナ5に容量性のリアクタンス6(すなわちキャパシタンスC6)を直列接続して、キャパシタンスCとキャパシタンスC6の合成容量を下げることで実現できる。合成容量は式(4)で与えられる。
【0046】
C・C6/(C+C6) (4)
図10において、リアクタンス6として、誘導性のリアクタンス(すなわちインダクタンスL6)を接続した場合は、インダクタンスLとインダクタンスL6の合成インダクタンスは式(5)で与えられる。
【0047】
L+L6 (5)
すなわちインダクタンスが大きくなるので、共振周波数f0は低域側にシフトする。以下では説明が煩雑になるのを避けるために、主に第2の実施の形態を例に、リアクタンスの適用法を示すが、第1および第3の実施の形態でも同様な効果がある。
【0048】
[第4の実施の形態]
図11は、第4の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0049】
第1の実施の形態の電界通信システムとの違いは、人体Bを含んで構成されるアンテナの共振周波数を調整するためのリアクタンス6が第1電極21と設置端末2の通信部23とを接続する第1信号線31に挿入されていることである。リアクタンス6は、上記のキャパシタンスC6またはインダクタンスL6である。リアクタンス6を調整することで、アンテナの共振周波数f0と信号のキャリア周波数fcの差を大きくでき、これにより、通信帯域の雑音を下げることができる。
【0050】
[第5の実施の形態]
図12は、第5の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0051】
第2の実施の形態の電界通信システムとの違いは、人体Bを含んで構成されるアンテナの共振周波数を調整するためのリアクタンス6が第1電極21と設置端末2の通信部23とを接続する第1信号線31に挿入されていることである。リアクタンス6を調整することで、アンテナの共振周波数f0と信号のキャリア周波数fcの差を大きくでき、これにより、通信帯域の雑音を下げることができる。
【0052】
[第6の実施の形態]
図13は、第6の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0053】
第5の実施の形態の電界通信システムとの違いは、リアクタンス6は、第1電極21に対向する第3電極24と第1電極21とから構成される平板コンデンサであることである。
【0054】
こうすることで、リアクタンス6を第1電極21と一体に構成にでき、リアクタンス6を外付けしなくてよく、設置端末2を容易に製造することができる。
【0055】
[第7の実施の形態]
図14は、第7の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0056】
第6の実施の形態の電界通信システムとの違いは、リアクタンス6と通信部23とを接続する第1信号線31および第2電極22と通信部23と接続する第2信号線32にコモンモードチョーク7が挿入されていることである。信号ケーブル3を伝搬する信号からコモンモードチョーク7により同相雑音成分が除去されるので、通信部23の入力雑音(終端抵抗232の両端の雑音に相当)が減少し、高いSNRを得ることができる。
【0057】
[第8の実施の形態]
図15は、第8の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0058】
第8の実施の形態では、携帯端末1の通信部13と設置端末2の通信部23は双方向で信号を送信できるようになっている。
【0059】
このため、通信部23は、受信器231と終端抵抗232と送信器233と切り替えスイッチ234とを有する。送信器233は、電源VDDから給電され、端子Inに入力された信号を切り替えスイッチ234の端子Tに出力する。
【0060】
切り替えスイッチ234において、通信部23から信号を送信する送信モードのときは、端子N、Tが接続され、一方、通信部23が信号を受信する受信モードのとき、端子N、Rが接続される。
【0061】
また、通信部23から送信される信号のうちの第1電極21と第2電極22とで反射する信号成分を減少させる終端回路8が、第1電極21と通信部23とを接続する第1信号線31および第2電極22と通信部23とを接続する第2信号線32の、第1電極21および第2電極22側の終端部に設けられている。
【0062】
電界通信は、大気中への電波の放射を極力抑えるべく、理想的にはゼロにすべく、図8および図9に示したように、人体Bにより構成されるアンテナの利得が低い状態で使用するので、送信電力はアンテナから大気中に放射されずに第1電極21、第2電極22で全反射される。終端回路8は、この不要電力を吸収(熱に変換)して、送信波形の歪を抑えるという作用効果をもたらす。終端回路8の設計に関しては、信号ケーブル3からアンテナ(人体B)側を見たインピーダンスが信号ケーブル3の特性インピーダンスに整合するように回路定数を選べばよく、市中技術にて容易に実現可能である。
【0063】
[第9の実施の形態]
図16は、第9の実施の形態における電界通信システムの構成図である。
【0064】
第8の実施の形態の電界通信システムとの違いは、第1電極21、第2電極22を壁面に設けたことである。携帯端末1を携帯したユーザU(人体B)は、手などの身体部位を壁面の第1電極21に接触させることにより、携帯端末1と設置端末2の間の通信経路を形成して、識別情報(ID)を用いた通信による認証を行う。符号Fは電気的にフローティング状態に設定された床であり、オフィス等の2重床構造にて容易に実現できる。床Fと設置端末2の設置環境内の金属物(建物骨材4等)の間の浮遊容量を小さく設定することにより、静電結合による雑音の混入を抑えることができる。
【0065】
以上のように、各実施の形態の電界通信システムによれば、携帯端末1の電極12の主たる容量結合先が建物骨材4ではなく、設置端末2の第2電極22になるように、第2電極22の大きさと形状を設定しているので、受信信号量の設置場所依存性のない、再現性の良い通信が可能である。また、設置端末2の第2電極22と建物骨材4との間の浮遊容量(図17に示す浮遊容量C2’に相当)を通信のクリティカルパスから排除したことにより、信号の損失(浮遊容量C2’における電圧降下に起因する信号電流の減少)が減って、受信信号量が大きくなる。
【0066】
また、第2電極22に孔221が形成され、第1電極21が孔221に配置され、第1電極21と第2電極22とが空間における同一平面を構成するように配置されているので、段差が生じるのを防止することができる。
【0067】
また、第1電極21と通信部23とを接続する第1信号線31にリアクタンス6を挿入して、人体Bにより構成されるアンテナの共振周波数をキャリア周波数を中心とする通信周波数帯域から遠ざけているので、放射性雑音の少ない、高SNRが得られる。
【0068】
また、リアクタンス6と設置端末2の通信部23とを接続する第1信号線31および第2電極22と通信部23と接続する第2信号線32にコモンモードチョーク7を挿入して、同相雑音成分を除去しているので、高SNRが得られる。
【0069】
また、設置端末2の通信部23から送信される信号のうちの第1電極21と第2電極22とで反射する信号成分を減少させる終端回路8が、第1信号線31および第2信号線32の、第1電極21および第2電極22側の終端部に設けられているので、送信波形の歪を抑えることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…携帯端末
2…設置端末
3…信号ケーブル
4…建物骨材
5…モノポール・アンテナ
6…リアクタンス
7…コモンモードチョーク
8…終端回路
11、12…電極
13、23…通信部
21…第1電極
22…第2電極
22a…分割片
24…第3電極
31…第1信号線
32…第2信号線
221…孔
231…受信器
232…終端抵抗
233…送信器
234…スイッチ
B…人体
U…ユーザ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に誘起される電界を利用して通信を行う電界通信システムであって、
人体に電界を誘起するための対向する一対の電極、および当該一対の電極に信号を送信する通信部を有する携帯端末と、
人体に誘起された電界を検出するための第1電極、当該第1電極より面積において大きく、かつ当該第1電極の周囲に配置され、かつ前記一対の電極の一方に容量結合する第2電極、および当該第1電極、当該第2電極から信号を受信する通信部を有する設置端末と
を備えることを特徴とする電界通信システム。
【請求項2】
前記第2電極に孔が形成され、前記第1電極が前記孔に配置され、前記第1電極と前記第2電極とが空間における同一平面を構成するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の電界通信システム。
【請求項3】
前記第2電極が分割され、かつ当該分割により生じた各分割片が互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2記載の電界通信システム。
【請求項4】
人体を含んで構成されるアンテナの共振周波数を調整するためのリアクタンスが前記第1電極と前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線に挿入されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電界通信システム。
【請求項5】
前記リアクタンスは、前記第1電極に対向する第3電極と前記第1電極とから構成される平板コンデンサであることを特徴とする請求項4記載の電界通信システム。
【請求項6】
前記リアクタンスと前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線および前記第2電極と前記設置端末の通信部と接続する第2信号線にコモンモードチョークが挿入されていることを特徴とする請求項4または5記載の電界通信システム。
【請求項7】
前記携帯端末の通信部と前記設置端末の通信部は双方向で信号を送信でき、前記設置端末の通信部から送信される信号のうちの前記第1電極と前記第2電極とで反射する信号成分を減少させる終端回路が、前記第1電極と前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線および前記第2電極と前記設置端末の通信部とを接続する第2信号線の、前記第1電極および前記第2電極側の終端部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電界通信システム。
【請求項1】
人体に誘起される電界を利用して通信を行う電界通信システムであって、
人体に電界を誘起するための対向する一対の電極、および当該一対の電極に信号を送信する通信部を有する携帯端末と、
人体に誘起された電界を検出するための第1電極、当該第1電極より面積において大きく、かつ当該第1電極の周囲に配置され、かつ前記一対の電極の一方に容量結合する第2電極、および当該第1電極、当該第2電極から信号を受信する通信部を有する設置端末と
を備えることを特徴とする電界通信システム。
【請求項2】
前記第2電極に孔が形成され、前記第1電極が前記孔に配置され、前記第1電極と前記第2電極とが空間における同一平面を構成するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の電界通信システム。
【請求項3】
前記第2電極が分割され、かつ当該分割により生じた各分割片が互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2記載の電界通信システム。
【請求項4】
人体を含んで構成されるアンテナの共振周波数を調整するためのリアクタンスが前記第1電極と前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線に挿入されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電界通信システム。
【請求項5】
前記リアクタンスは、前記第1電極に対向する第3電極と前記第1電極とから構成される平板コンデンサであることを特徴とする請求項4記載の電界通信システム。
【請求項6】
前記リアクタンスと前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線および前記第2電極と前記設置端末の通信部と接続する第2信号線にコモンモードチョークが挿入されていることを特徴とする請求項4または5記載の電界通信システム。
【請求項7】
前記携帯端末の通信部と前記設置端末の通信部は双方向で信号を送信でき、前記設置端末の通信部から送信される信号のうちの前記第1電極と前記第2電極とで反射する信号成分を減少させる終端回路が、前記第1電極と前記設置端末の通信部とを接続する第1信号線および前記第2電極と前記設置端末の通信部とを接続する第2信号線の、前記第1電極および前記第2電極側の終端部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電界通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−93812(P2013−93812A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236130(P2011−236130)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
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