説明

電界通信装置

【課題】電界通信の状態を不安定にすることなく、電界通信媒体の接触位置を容易に特定できる電界通信装置を提供する。
【解決手段】電界通信装置は、接触した電界伝達媒体に対して電界を誘起させて情報を送受信するアンテナ部と、当該アンテナ部を駆動して情報の送受信を行う通信部と、前記アンテナ部の前記電界通信媒体と接触する表面と反対の裏面側における外周端部近傍の複数か所に配設され、前記電界伝達媒体によって前記アンテナ部が接触されたことを検出するフォースセンサと、前記アンテナ部、前記通信部および前記フォースセンサを含めた各部の動作を司り、前記アンテナ部が接触された場合、当該接触された位置を複数の前記フォースセンサによる検出結果に基づいて特定する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界伝達媒体に電界を誘起して通信を行う電界通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体を電界伝達媒体として利用して通信を行う電界通信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。電界通信装置は、人体に対して情報を送受信するアンテナ部と、当該アンテナ部を駆動して情報の送受信を行うための通信部と、装置全体の動作を司る制御部と、を備えている。アンテナ部は、電界を生じさせる一対の電極と、この一対の電極を絶縁する絶縁膜と、を備えている。このような電界通信装置によれば、アンテナ部に接触された人体内に電界が誘起され、その電界を利用した通信、すなわち電界通信が行える。
【0003】
具体的な使用態様としては、二つの電界通信装置を対にして、一方を設備(自動販売機、駅の改札、PC(Personal Computer)、ドアや門扉など)に設置し、他方を人体に携帯端末として所持させる態様が考えられる。このような使用態様によれば、ユーザ(人体)が設備側の電界通信装置に触れることで、セキュリティ認証や課金、位置情報等のデータ収集など、目的に応じた通信を行える。例えば、自動販売機を利用する場合、ユーザは、電子マネー機能を備える電界通信装置(電子マネーカードや携帯電話など)を身につけることで、決済に際して当該電界通信装置を取り出すことなく、人体を介した電界通信により決済できる。
【0004】
また、かかる電界通信装置における電界通信技術を利用したゲーム機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このゲーム機は、タッチパネル式のディスプレイが導電性を有する導電膜を備えているから、当該ディスプレイが、情報を送受信するアンテナとして機能する。このため、プレイヤであるユーザがディスプレイに触れることで、自身のゲーム機と他のゲーム機との間で、各種データの電界通信を行える。
【0005】
ところで、近年、電子マネーを例にとってみても様々な種類の電子マネー(例えば、Edy(登録商標)、Suica(登録商標)、nanaco(登録商標)、WAON(登録商標)等)が実用化されている。これらは、それぞれが互いに異なる通信方式を利用し、決済時における誤動作を防止している。
【0006】
例えば、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗では、客がキャッシュレジスタの脇に設けられたタッチパネル等の選択手段によって、電子マネーを選択できる。これにより、客が所望する電子マネーを利用して会計し得る。また、自動販売機では、店舗と同様の選択手段が設けられ、電子マネーを選択できる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−188835号公報
【特許文献2】特開2009−297228号公報
【特許文献3】特開2000−268239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の技術のように、タッチパネルに電界通信の機能を持たせることが可能であるから、特許文献3の自動販売機に、特許文献1の電界通信による決済の技術を適用することは可能と思われる。このような自動販売機によれば、客がタッチパネルに触れることで、電子マネーの選択と同時に決済できる。
【0009】
このように特許文献3の自動販売機に特許文献1の技術を適用する場合、複数のアンテナ部を並べて配置する必要がある。操作の容易性や限られたスペースでの配置上の制約から、複数のアンテナ部は、可能な限り互いに近付けて配設される。しかし、アンテナ部同士の間隔を狭くした場合、複数のアンテナ部が、ユーザの所持する電界通信装置から送信される電界の信号を受信して、ユーザが選択するアンテナ部を特定することができない可能性がある。結果として、ユーザが所望する電子マネーの種類を指定することが困難となる。そこで、自動販売機側に設置される電界通信装置において、アンテナ部における感度を弱めに設定することが考えられる。
【0010】
しかしながら、自動販売機側のアンテナ部における感度を弱くすると、ユーザの所持する電界通信端末の状況によっては、所望する電子マネーに対応するアンテナ部を選択しても反応しない、すなわちユーザの所持する電界通信端末から送信される電界の信号を受信しないおそれがある。
【0011】
また、特許文献2のタッチパネルを用いた電界通信の技術を、電子マネーの決済の際に使用する選択手段に転用することが考えられる。かかるタッチパネルは、押圧されたときに電気抵抗値の変化を捉え、押圧された位置を特定する。しかし、タッチパネルが押圧された場合、アンテナ部における電極とグランド電極との電気的特性が変化し、電界通信の状態が不安定となるおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、電界通信の状態を不安定にすることなく、電界通信媒体の接触位置を容易に特定できる電界通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明は、接触した電界伝達媒体に対して電界を誘起させて情報を送受信するアンテナ部と、前記アンテナ部を駆動して情報の送受信を行う通信部と、前記アンテナ部の前記電界通信媒体と接触する表面と反対の裏面側における外周端部近傍の複数か所に配設され、前記アンテナ部が前記電界伝達媒体に接触されたことを検出するフォースセンサと、前記アンテナ、前記通信部および前記フォースセンサを含めた各部の動作を司り、前記アンテナ部が接触された場合、当該接触された位置を複数の前記フォースセンサによる検出結果に基づいて特定する制御部と、を備えることを特徴とする、電界通信装置である。
【0014】
本発明によれば、アンテナ部が電界通信媒体に接触された場合、当該アンテナ部の裏面側における外周端部近傍の複数個所に配設されたフォースセンサの検出結果に基づいて、接触された位置を特定できる。また、接触検出手段がアンテナ部の裏面側に配設されているため、電界通信媒体とアンテナ部との電界通信が妨害されることを未然に回避できる。すなわち、電界通信の状態を良好に保てる。
【0015】
(2)また本発明は、前記アンテナ部、前記通信部および前記フォースセンサを収容する筐体と、前記アンテナ部および前記フォースセンサの間に介在され、前記通信部を実装する板状の積載部材と、前記筐体に対する前記積載部材の動きを規制するガイド部と、を備えることを特徴とする、前記(1)に記載の電界通信装置である。
【0016】
本発明によれば、筐体に対する積載部材の動きを規制するガイド部を設けることにより、アンテナ部が接触されることや筐体が振動することなどによって積載部材が動かされることを規制できる。すなわち、積載部材が筐体内でむやみに移動することを防止できる。これにより、積載部材が筐体内を移動することに起因する故障や破損の発生を未然に回避できる。
【0017】
(3)しかも本発明は、前記ガイド部として、前記積載部材に直交する直交方向の前記積載部材の動きを規制する第1のガイド部と、前記積載部材に沿う水平方向の前記積載部材の動きを規制する第2のガイド部と、を備えることを特徴とする、前記(2)に記載の電界通信装置である。
【0018】
本発明によれば、アンテナ部が接触されることや筐体が振動することなどによって積載部材が当該部材に直交する直交方向に動かされることを、第1のガイド部によって規制できる。また、アンテナ部が接触されることや筐体が振動することなどによって、積載部材が当該部材に沿う水平方向に動かされることを、第2のガイド部によって規制できる。このため、積載部材が筐体内でむやみに移動することを、確実に防止できる。これにより、積載部材が筐体内を移動することに起因する故障や破損の発生を未然に回避できる。
【0019】
(4)そのうえ本発明は、前記第1のガイド部は、前記筐体または前記積載部材に設けられることを特徴とする、前記(3)に記載の電界通信装置である。
【0020】
本発明によれば、第1のガイド部の設置位置を必要に応じて変更できる。これにより、電界通信装置を形成する際の部品配置の自由度が増す。ひいては、ニーズに応じたよりコンパクトな電界通信装置を実現できる。
【0021】
(5)さらに本発明は、前記アンテナ部は、矩形状を有し、前記フォースセンサは、前記アンテナ部の裏面側における外周端部近傍の四隅に配設されることを特徴とする、前記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の電界通信装置である。
【0022】
本発明によれば、フォースセンサをアンテナ部の裏面側における外周端部近傍の四隅に配設したので、アンテナ部が接触された位置を、容易かつ正確に特定できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記(1)乃至(5)に記載電界通信装置によれば、電界通信の状態を不安定にすることなく、電界通信媒体の接触位置を容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る電界通信装置を示す概略構成図である。
【図2】(a)電界通信装置の要部における外観を概略的に示す斜視図である。(b)電界通信装置の筐体を上方から示す外観図である。(c)筐体の構造を概略的に示す断面図である。
【図3】筐体内の要部を概略的に示す分解斜視図である。
【図4】本発明の電界通信装置を適用した電子マネー決済装置を示す概略構成図である。
【図5】タッチパネル部における押下位置検出の説明に供するグラフである。
【図6】(a)初期処理の手順を示すフローチャートである。(b)決済処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る電界通信装置について詳細に説明する。なお、本発明が以下の実施形態にて説明する電界通信装置の構成に限定されるものではない。
【0026】
<基本構成>まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る電界通信装置の基本構成について説明する。なお、図1は、本発明に係る電界通信装置を示す概略構成図である。
【0027】
図1に示す電界通信装置1は、レーザ光と電気光学結晶を用いた電気光学的手法による信号検出技術を利用する。この電界通信装置1は、送信する情報(以下、「送信情報」と称す)に基づく電界を電界伝達媒体である人体10に誘起させ、該誘起させた電界を介して電界通信することで、様々な情報を送受信する。換言すれば、電界通信装置1は、互いに絶縁され隔離された一対の陽極(+)側電極と負極(−)側電極とを有する電極板を備えており、人体10がこの電極に触れることにより、人体10内に電界が誘起されて電界伝達媒体となり、電界通信が可能となる。
【0028】
なお、電気光学素子における共振周波数は複数存在するため、変調用には送信情報の高レベルと低レベルに相当する任意の2つの共振周波数をデジタル変調周波数として利用し、この2つのデジタル変調周波数を後述する変調回路36と復調回路33に供給している。
【0029】
具体的に電界通信装置1は、人体10と接触可能に配置され、当該人体10に対して電界を誘起させて情報を送受信するアンテナ部2と、当該アンテナ部2を駆動して情報の送受信を行うための通信部3と、装置全体の動作を司る制御部4と、を備えている。
【0030】
アンテナ部2は、人体10に結合するための陽極(+)側電極21と、グランド(GND)と結合するための負極(−)側電極22と、これら両電極21、22が互いに接触することを防止するための絶縁体からなる絶縁膜23と、を有している。これら一対の+側電極21および−側電極22は、情報を送受信するために必要に応じて受信電極または送信電極として機能する。また、絶縁膜23は、板状(薄膜形状)に成形され、+側電極21および−側電極22間に介在される。なお、以下において、これら+側電極21および−側電極22を便宜上、単に電極21、22と称する場合がある。
【0031】
通信部3は、電界通信を行う駆動回路として機能する各種電子部品を備えている。この通信部3は、電界検出部32および送信回路37を介してアンテナ部2と接続されていると共に、入出力回路(以下、「I/O回路」と称す)31を介して制御部4に接続されている。
【0032】
具体的に通信部3は、制御部4からI/O回路31を介して入力される送信情報に基づく電界を、アンテナ部2を介して人体10に誘起させる。また、通信部3は、人体10から誘起されて伝達されてくる電界に基づく受信情報を、アンテナ部2(すなわち、絶縁膜23を介在した受信電極としての電極21、22)を介して受信する。さらに、通信部3は、制御部4からの送信情報をI/O回路31を介して受信すると、この送信情報のレベルをレベル調整回路35で調整して変調回路36に供給する。
【0033】
変調回路36は、レベル調整回路35からの送信情報を変調する。このとき、変調用には送信情報の高レベルと低レベルに相当する任意の2つの共振周波数をデジタル変調周波数として利用し、レベル調整回路35からの送信情報を変調し、この変調された送信情報を送信回路37に供給する。
【0034】
送信回路37は、変調回路36で変調された送信情報に相当する電界を送信電極として機能する電極22に供給し、これにより送信情報に基づく電界を電極22から絶縁膜23および電極21を順次介して人体10に誘起させ、この誘起した電界を人体10の他の部位に設けられた不図示の電界通信端末などに伝達する。
【0035】
また、通信部3は、受信電極として機能するアンテナ部2(すなわち、電極21、絶縁膜23、電極22)を介して、人体10の他の部位から誘起されて伝達されてくる受信情報としての電界を受信すると、該電界を電界検出部32に結合する。
【0036】
電界検出部32は、結合された電界により電気光学素子が共振して、レーザ光の偏光変化を増大し、前記2つのデジタル変調周波数で変調された電気信号を復調回路33に供給する。
【0037】
復調回路33は、前記2つのデジタル変調周波数を用いて、電界検出部32から供給された電気信号を復調し、信号処理回路34に供給する。信号処理回路34は、復調回路33で復調された電気信号に対して低雑音増幅、雑音除去、波形整形などの信号処理を施し、I/O回路31を介してウェアラブルコンピュータ等の制御部4に供給する。
【0038】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたウェアラブルコンピュータ等の小型コンピュータで構成されている。
【0039】
具体的な使用態様としては、二つの電界通信装置1を対にして、一方を設備(自動販売機、駅の改札、PC(Personal Computer)、ドアや門扉など)に設置し、他方を人体10(ユーザ)に携帯端末として所持させる態様が考えられる。このような使用態様によれば、人体10が設備側の電界通信装置1に触れることで、セキュリティ認証や課金、位置情報等のデータ収集など、目的に応じた通信を行える。
【0040】
以下に説明する実施形態の場合、このような電界通信装置1は、飲料物などの各種商品を販売する自動販売機に設置される。自動販売機に設置された電界通信装置1は、ユーザが所持する電界通信装置(図示省略)との間で、例えば電子マネー情報を電界通信する。これにより、各種商品の購入時に電子マネーで決済できる(詳細は、後述する図4参照)。
【0041】
すなわち、ユーザは、電子マネー機能を備える電界通信装置(例えば、電子マネーカードや携帯電話など)を身につけることで、決済に際して当該電界通信装置を取り出すことなく、自身の人体10の一部(指先など)で所定のボタン(タッチパネルなど)を押下することで、人体10を介した電界通信により決済できる。
【0042】
<本発明を適用した電界通信装置>次に、図2乃至図3を用いて、本発明を適用した電界通信装置について詳細に説明する。なお、図2(a)は、電界通信装置の要部における外観を概略的に示す斜視図である。図2(b)は、電界通信装置の筐体を上方から示す外観図である。図2(c)は、筐体の構造を概略的に示す断面図である。図3は、筐体内の要部を概略的に示す分解斜視図である。
【0043】
図2(a)〜図2(c)に示すように、本発明の一実施形態における電界通信装置1は、例えば矩形状の筐体1a内に、少なくともアンテナ部2と、通信部3とを収容する。この筐体1aは、底面側から見て上方側の一面を開放した状態で形成され、当該開放した一面を覆うように蓋部1bが配設されている。この蓋部1bは、略中央部に開口部1baが設けられ、当該開口部1baを介してアンテナ部2が露出するように配設されている。さらに、この開口部1baは、絶縁樹脂等の絶縁材料からなるシート状等の保護膜1cによって閉鎖されている。これにより、筐体1a内に外部から塵や埃などが入り込むのを防止できると共に、人体10と接触することによりアンテナ部2が摩耗するのを防止する。なお、筐体1aは絶縁性部材で成形されることが好ましい。
【0044】
蓋部1bの開口部1baから露出するアンテナ部2の上面は、全体的にタッチパネル20として機能する。タッチパネル20は、4つの領域A、B、C、Dに区画されている。本実施形態では、電界通信装置1を自動販売機(不図示)における電子マネー決済装置として適用するため、これら4つの領域A、B、C、Dには、各々Edy(商標登録)、Suica(商標登録)、nanaco(商標登録)、WAON(商標登録)等のように、4種類の電子マネーA、B、C、Dを選択可能なように割り当てている。
【0045】
なお、本実施形態の場合、タッチパネル20は、あくまでも電子マネー決済装置においてユーザが所望する電子マネーの種別を指定するための選択手段として機能すれば十分である。従って、タッチパネル20は必要に応じて表示画像などの表示内容を変更可能な所謂、液晶表示パネルを兼ね備える必要はないため、透過性の性質を有する必要はない。これにより、タッチパネル20を安価に作成することが可能である。
【0046】
本実施形態では、図3にも示すように、通信部3は、積載部材である基板5に実装され、当該基板5を介して筐体1a内に搭載される。基板5に実装された通信部3上には、アンテナ部2が積層されている。また、基板5上に実装された通信部3と、タッチパネル20として機能するアンテナ部2とは、例えばフリップチップボンディングやワイヤボンディング等の手法を用いて電気的・物理的に接続されている。
【0047】
また、基板5の通信部3を実装する側とは反対の裏面側における外周端部近傍の複数個所(ここでは、四隅の4か所)には、人体10との接触によってタッチパネル20が押下された位置を検出するフォースセンサ6a〜6dが配設されている。これらフォースセンサ6a〜6dは、基板5の四隅をそれぞれ固定保持する固定部7a〜7dを介して、基板5を固定保持する。
【0048】
さらに、図2(c)に示すように、筐体1a内には、通信部3を搭載する基板5を収容した際に、この基板5が筐体1aに対し、上下となる垂直方向に移動することを規制する第1のガイド部8aと、同じく筐体1aに対し、前後左右となる水平方向に移動することを規制する第2のガイド部8bとが設けられている。なお、第1のガイド部8aが筐体1a内に収容される場合について述べるが、本発明はこれに限らず、この第1のガイド部8aは、基板5の筐体1a内部と対峙する底面側に設けられてもよい。この第1のガイド部8aによって、タッチパネル20が強く押下された場合においても、当該押下に伴って基板5が垂直方向に動かされてフォースセンサ6a〜6dが破壊されるのを防止するように、基板5の垂直方向の動きを規制し得る。また、第2のガイド部8bは、筐体1a内に段部で形成され、この段部の段差によって基板5を位置決めし、筐体1aに対する基板5の水平方向の動きを規制し得る。
【0049】
このように構成された電界通信装置1は、図4に示すような自動販売機等における電子マネー決済装置50に適用することにより、スマートな決済を実現できる。ここで、図4を参照しながら本発明の電界通信装置1を適用した自動販売機における電子マネー決済装置50について説明する。なお、図4は、本発明の電界通信装置1を適用した電子マネー決済装置50を示す概略構成図である。同図においては、図1乃至図3との対応部分に同一符号を付して示し、その構成・作用については同様であることから説明が重複するため、ここでは、便宜上、詳細な説明を割愛するものとする。
【0050】
図4に示すように、電子マネー決済装置50は、電界通信装置1と、当該電界通信装置1を操作するタッチパネル20と、フォースセンサ6a〜6dの初期化処理や、タッチパネル20の押下位置検出処理、または電子マネー決済処理などの各種処理を実行する主制御部51と、当該主制御部51が実行する各種プログラムや設定等を記憶する記憶手段としてのメモリ52と、主制御部51と電界通信装置1とを接続するインターフェース部(I/F部)53と、外部の電子マネー管理サーバと通信するための通信装置54と、を備えている。
【0051】
なお、ここでは、電界通信装置1における通信部3に電界通信によって送受信する情報を記憶する記憶手段としてメモリ3aが設けられている。また、電界通信装置1における通信部3および制御部4は、1つのモジュールとして構成することが可能である。さらに、電界通信装置1の制御部4と電子マネー決済装置50における主制御部51とを一体成型することも可能である。
【0052】
この電子マネー決済装置50では、ユーザは、電子マネー機能を備える電界通信装置(例えば、電子マネーカードや携帯電話など)を身につけることで、決済に際して当該電界通信装置を取り出すことなく、自身の指先などの人体10の一部で、電子マネーA〜Dの中から所望する電子マネーに対応したボタン(タッチパネル20)を押下することで、人体10を介した電界通信により決済できる。
【0053】
ここで、電界通信装置1のタッチパネル20において、ユーザに押下された位置を特定するための押下位置の算出方法について、図5および図6を用いて説明する。なお、図5は、タッチパネル20における押下位置検出の説明に供するグラフである。図6(a)は、初期処理の手順を示すフローチャートである。図6(b)は、決済処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
図5のグラフにおいて、縦軸、横軸および一点鎖線で示される基板5は、フォースセンサ6aの配置される紙面上左隅の角部を基準「0」とし、横軸はx方向の位置を示し、縦軸はy方向の位置を示している。
【0055】
このとき、人体10によって、例えばPで示す位置(以下、これを押下位置Pと称す)を押下された場合、4つのフォースセンサ6a〜6dの位置(x1、y1)、(x1、y2)、(x2、y1)、(x2、y2)における荷重を、それぞれg1、g2、g3、g4とすると、押下位置Pの重心(xG、yG)は、以下の数1および数2に基づいて算出する。
【数1】

【数2】

【0056】
具体的に、4つのフォースセンサ6a〜6dにおける荷重を、例えばg1が「4g」、g2が「5g」、g3が「2g」、g4が「3g」とし、x1=1、x2=10、y1=1、y2=10とすると、押下位置Pの重心位置(xG、yG)は、前記数式1および数式2から、それぞれ、xG=4.21、yG=6.14と算出される。従って、この算出結果からタッチパネル20における電子マネーAの領域(図2参照)が押下され、電子マネーAが選択されたことが特定される。
【0057】
このような押下位置の特定方法を使用する、電子マネー決済装置50の主制御部51は、図6(a)に示す初期処理(キャリブレーション処理)を実行した後、図6(b)に示す決済処理を実行するようになっている。
【0058】
すなわち、主制御部51は、電子マネー決済装置50の電源が立ち上げられると、ステップS1において、フォースセンサ(この場合、4つのフォースセンサ6a〜6d)のキャリブレーション処理を実行する。このとき、主制御部51は、タッチされていない状態における各フォースセンサ6a〜6dの出力値を初期値として、この値を荷重が「0g」の状態であると設定してメモリ52に記憶する所謂0g調整を行う。
【0059】
次に、主制御部51は、自動販売機等の制御部から代金の引き落とし要求と、当該要求された代金の金額情報を受信すると、図6(b)に示す電子マネーの決済処理を実行する。まず、主制御部51は、ステップS10において、タッチパネル20が押下されたか否かを、4つのフォースセンサ6a〜6dから出力される出力値の変化に基づいて判断する。このステップS10においてタッチパネル20の押圧が検出されない場合、当該押下が検出されるまで、このルーチンを繰り返す。一方、このステップS10において、タッチパネル20が押下されたことを検出すると、ステップS11に移行して、当該押下された位置を算出する。次に、ステップS12に移行して、ステップS11で算出した位置に基づいて、当該位置に割り当てられた電子マネーの種類を特定する。そして、ステップS13に移行し、特定された電子マネーを用いて決済処理を実行する。
【0060】
以上、説明したように、本発明によれば、アンテナ部2が電界通信媒体に接触された場合、当該アンテナ部2の裏面側における外周端部近傍の複数か所に配設されたフォースセンサ6a〜6dの検出結果に基づいて、アンテナ部2の接触された位置を特定できる。また、フォースセンサ6a〜6dがアンテナ部2の裏面側に配設されているため、人体10とアンテナ部2との電界通信が妨害されることを未然に回避できる。すなわち、当該電界通信の状態を良好に保てる。
【0061】
また、本発明によれば、筐体1aに対する基板5の動きを規制するガイド部8a、8bを設けることにより、アンテナ部2が押下されることや筐体1aが振動することなどによって基板5が動かされることを規制できる。すなわち、基板5が筐体1a内でむやみに移動することを防止できる。これにより、基板5が筐体1a内を移動することに起因する故障や破損の発生を未然に回避できる。
【0062】
しかも、本発明によれば、アンテナ部2が押下されることや筐体1aが振動することなどによって基板5が接触される接触方向に動かされることを、第1のガイド部8aによって規制できる。また、アンテナ部2が接触されることや筐体1aが振動することなどによって、基板5が接触方向と直交する水平方向に動かされることを、第2のガイド部8bによって規制できる。このため、基板5が筐体1a内でむやみに移動することを、確実に防止できる。これにより、基板5が筐体1a内を移動することに起因する故障や破損の発生を未然に回避できる。
【0063】
そのうえ、本発明によれば、第1のガイド部8aの設置位置を必要に応じて変更できる。これにより、電界通信装置1を形成する際の部品配置の自由度が増す。ひいては、ニーズに応じたよりコンパクトな電界通信装置を実現できる。
【0064】
さらに、本発明によれば、フォースセンサ6a〜6dをアンテナ部2の裏面側における外周端部近傍の四隅に配設したので、アンテナ部2が接触された位置を、容易かつ正確に特定できる。
【0065】
以上、本発明を実施形態により詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も本発明の範囲に含まれるものである。
【0066】
すなわち、上記実施形態において、各構成要素の数量は適宜変更できる。例えば、フォースセンサの数量が挙げられる。
【符号の説明】
【0067】
1 電界通信装置
2 アンテナ部
3 通信部
4 制御部
5 基板(積載部材)
6a〜6d フォースセンサ
7a〜7d 固定部
8a 第1のガイド部
8b 第2のガイド部
10 人体(電界通信媒体)
20 タッチパネル
21、22 電極
23 絶縁膜
31 I/O回路(入出力回路)
32 電界検出部
33 復調回路
34 信号処理回路
35 レベル調整回路
36 変調回路
37 送信回路
50 電子マネー決済装置
51 主制御部
52 メモリ
53 インターフェース部
54 通信装置
60 管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触した電界伝達媒体に対して電界を誘起させて情報を送受信するアンテナ部と、
前記アンテナ部を駆動して情報の送受信を行う通信部と、
前記アンテナ部の前記電界通信媒体と接触する表面と反対の裏面側における外周端部近傍の複数か所に配設され、前記アンテナ部が前記電界伝達媒体に接触されたことを検出するフォースセンサと、
前記アンテナ部、前記通信部および前記フォースセンサを含めた各部の動作を司り、前記アンテナ部が接触された場合、当該接触された位置を複数の前記フォースセンサによる検出結果に基づいて特定する制御部と、を備えることを特徴とする、
電界通信装置。
【請求項2】
前記アンテナ部、前記通信部および前記フォースセンサを収容する筐体と、
前記アンテナ部および前記フォースセンサの間に介在され、前記通信部を実装する板状の積載部材と、
前記筐体に対する前記積載部材の動きを規制するガイド部と、を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の電界通信装置。
【請求項3】
前記ガイド部として、
前記積載部材に直交する直交方向の前記積載部材の動きを規制する第1のガイド部と、
前記積載部材に沿う水平方向の前記積載部材の動きを規制する第2のガイド部と、を備えることを特徴とする、
請求項2に記載の電界通信装置。
【請求項4】
前記第1のガイド部は、前記筐体または前記積載部材に設けられることを特徴とする、
請求項3に記載の電界通信装置。
【請求項5】
前記アンテナ部は、矩形状を有し、
前記フォースセンサは、前記アンテナ部の裏面側における外周端部近傍の四隅に配設されることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電界通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−129584(P2012−129584A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276552(P2010−276552)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)