説明

電界通信装置

【課題】単一の電界通信装置で方式の異なる通信を可能にする。
【解決手段】接触した電界伝達媒体に対して電界を誘起させて、前記電界を利用した電界信号の形式で情報を送受信するアンテナ部と、前記アンテナ部を介して受信した電界信号の波形を検出する波形検出部と、前記波形検出部の検出結果に基づいて、電界通信方式の種別を特定する判別部と、前記判別部によって特定された電界通信方式に基づいて、前記受信した電界信号を復調すると共に、前記アンテナ部を介して送信する情報を前記特定された電界通信方式の電界信号に変調する変調・復調部と、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界伝達媒体に電界を誘起して通信を行う電界通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体を電界伝達媒体として利用して通信を行う電界通信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。電界通信装置は、人体に対して情報を送受信するアンテナ部と、当該アンテナ部を駆動して情報の送受信を行うための通信部と、装置全体の動作を司る制御部と、を備えている。アンテナ部は、電界を生じさせる一対の電極と、この一対の電極を絶縁する絶縁膜と、を備えている。このような電界通信装置によれば、アンテナ部に接触された人体に電界が誘起され、その電界を利用した電界信号の形式での通信、すなわち電界通信が行える。
【0003】
具体的な使用態様としては、二つの電界通信装置を対にして、一方を設備(自動販売機、駅の改札、PC(Personal Computer)、ドアや門扉など)に設置し、他方を人体に携帯端末として所持させる態様が考えられる。このような使用態様によれば、ユーザ(人体)が設備側の電界通信装置に触れることで、セキュリティ認証や課金、位置情報等のデータ収集など、目的に応じた通信を行える。例えば、商店や自動販売機において決済する場合、ユーザは、電子マネー機能を備える電界通信装置(電子マネーカードや携帯電話など)を身につけることで、当該電界通信装置を取り出すことなく、人体を介した電界通信により決済できる。
【0004】
現在は、商店のキャッシュレジスタの脇や自動販売機に設けられた端末に、ユーザが所持するカード等をかざすタイプの電子マネーが普及している。このような電子マネーには、Edy(登録商標)、Suica(登録商標)、nanaco(登録商標)、WAON(登録商標)等、様々な種類がある。これらの電子マネーは、それぞれが互いに異なる通信方式を利用している。このため、商店や自動販売機に導入されている端末の種類によって、電子マネーの種類を使い分ける必要がある。例えば、JR東日本(登録商標)の駅ナカ(ecute(登録商標))ではSuica(登録商標)等を、セブンイレブン(登録商標)ではnanaco(登録商標)等を、それぞれ使うことになる。すなわち、商店や自動販売機に合わせて複数種類の電子マネーを持ち歩くことになる。
【0005】
電界通信装置についても、開発する会社毎に異なる通信方式を採用している。具体的に、通信方式は、二つの変調方式に分類できる。二つの変調方式には、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)変調方式と、FSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)変調方式と、がある。ASK変調方式は、送信データのビット列に対応して電界信号の振幅のみを変化させる。FSK変調方式は、アナログ信号における周波数変調に相当し、ビットデータが「0」のときに電界信号を低周波に、ビットデータが「1」のときに電界信号を高周波に、それぞれ変化させる。
【0006】
ASK変調方式には、電界信号の周波数に18[MHz]を使用する方式と、電界信号の周波数に10[MHz]を使用する方式と、電界信号の周波数に5[MHz]を使用する方式と、の三つがある。FSK変調方式には、電界信号の周波数に10[MHz]を使用する方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−188835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、電界通信装置には複数種類の通信方式が採用されているから、電界通信装置による電子マネーが普及する頃には、現在の電子マネーと同様、電子マネーの種類を使い分ける必要が生じると予想される。すなわち、ユーザは、商店や自動販売機に合わせて複数種類の電子マネーを持ち歩かなければならず、非常に不便であると考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、単一の電界通信装置で方式の異なる通信を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、接触した電界伝達媒体に対して電界を誘起させて、前記電界を利用した電界信号の形式で情報を送受信するアンテナ部と、前記アンテナ部を介して受信した電界信号の波形を検出する波形検出部と、前記波形検出部の検出結果に基づいて、電界通信方式の種別を特定する判別部と、前記判別部によって特定された電界通信方式に基づいて、前記受信した電界信号を復調すると共に、前記アンテナ部を介して送信する情報を前記特定された電界通信方式の電界信号に変調する変調・復調部と、を備えることを特徴とする、電界通信装置である。
【0011】
本発明によれば、受信した電界信号の電界通信方式を特定し、かつ特定された電界通信方式に基づいて電界信号を変調または復調するので、単一の電界通信装置で方式の異なる通信が可能になる。
【0012】
(2)また本発明は、前記判別部は、前記波形検出部の検出結果に基づいて、電界信号の変調方式を求めて、該求めた変調方式に基づいて電界通信方式の種別を特定することを特徴とする、上記(1)に記載の電界通信装置である。
【0013】
(3)さらに本発明は、前記波形検出部は、ゼロ電圧を第1の閾値と設定して、電界信号が前記第1の閾値を超えるタイミングに第1のパルス信号を出力する第1のコンパレータと、ゼロ電圧以外の所定電圧を第2の閾値と設定して、電界信号が前記第2の閾値を超えるタイミングに第2のパルス信号を出力する第2のコンパレータと、前記第1のパルス信号のパルス数をカウントする第1のパルスカウンタと、前記第2のパルス信号のパルス数をカウントする第2のパルスカウンタと、を有し、前記判別部は、前記第1のパルス信号のパルス数に対する前記第2のパルス信号のパルス数の比に基づいて、電界信号の変調方式を特定することを特徴とする、上記(2)に記載の電界通信装置である。
【0014】
(4)しかも本発明は、前記判別部は、前記波形検出部から出力される前記第1のパルス信号のパルス数に基づいて、前記受信した電界通信の波形の周波数を求め、該周波数および前記特定した変調方式に基づいて、電界通信方式の種別を特定することを特徴とする、上記(3)に記載の電界通信装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記(1)乃至(4)に記載の電界通信装置によれば、単一の電界通信装置で方式の異なる通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電界通信装置の通信に係わる基本構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る電界通信装置の要部を概略的に示すブロック図である。
【図3】各電界通信方式における電界信号およびパルス信号の波形図である。
【図4】通信方式判別処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る電界通信装置について詳細に説明する。なお、本発明が以下の実施形態にて説明する電界通信装置の構成に限定されるものではない。
【0018】
<基本構成>まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る電界通信装置の通信に係わる基本構成について説明する。なお、図1は、本発明に係る電界通信装置1の通信に係わる基本構成を示す概略構成図である。
【0019】
図1に示す電界通信装置1は、電界伝達媒体である人体10に電界を誘起させて、該誘起させた電界を利用した電界信号の形式で、様々な情報を送受信する。換言すれば、電界通信装置1は、互いに絶縁され隔離された一対の陽極(+)側電極と負極(−)側電極とを有する電極板を備えており、人体10がこの電極に触れることにより、人体10に電界が誘起されて電界伝達媒体となり、電界通信が可能となる。
【0020】
具体的に電界通信装置1は、人体10と接触可能に配置され、当該人体10に対して電界を誘起させて、該誘起させた電界を利用した電界信号の形式で情報を送受信するアンテナ部2を有する通信部3と、装置全体の動作を司る制御部4と、を備えている。
【0021】
アンテナ部2は、人体10に結合するための陽極(+)側電極21と、グランド(GND)と結合するための負極(−)側電極22と、これら両電極21、22が互いに接触することを防止するための絶縁体からなる絶縁膜23と、を有している。これら一対の+側電極21および−側電極22は、情報を送受信するために必要に応じて受信電極または送信電極として機能する。また、絶縁膜23は、板状(薄膜形状)に成形され、+側電極21および−側電極22間に介在される。なお、以下において、これら+側電極21および−側電極22を便宜上、単に電極21、22と称する場合がある。
【0022】
通信部3は、電界通信を行う駆動回路として機能する各種電子部品を備えている。この通信部3は、電界検出部32および送信回路37を介してアンテナ部2に接続されていると共に、入出力回路(以下、「I/O回路」と称す)31を介して制御部4に接続されている。
【0023】
具体的に通信部3は、制御部4からI/O回路31を介して入力される送信情報に基づく電界を、アンテナ部2を介して人体10に誘起させる。また、通信部3は、人体10から誘起されて伝達されてくる電界に基づく受信情報を、アンテナ部2を介して受信する。さらに、通信部3は、制御部4からの送信情報をI/O回路31を介して受信すると、この送信情報の出力レベルをレベル調整回路35で調整して変調回路36に供給する。
【0024】
変調回路36は、レベル調整回路35からの送信情報を変調し、この変調された送信情報を送信回路37に供給する。
【0025】
送信回路37は、変調回路36で変調された送信情報に相当する電界を送信電極として機能する電極22に供給し、これにより送信情報に基づく電界を電極22から絶縁膜23および電極21を順次介して人体10に誘起させ、この誘起した電界を人体10の他の部位に設けられた不図示の電界通信端末などに伝達する。
【0026】
また、通信部3は、受信電極として機能するアンテナ部2を介して、人体10の他の部位から誘起されて伝達されてくる受信情報としての電界を受信すると、該電界を電界検出部32に結合する。
【0027】
電界検出部32は、結合された電界により電気光学素子が共振して、レーザ光の偏光変化を増大し、電気信号を復調回路33に供給する。
【0028】
復調回路33は、電界検出部32から供給された電気信号を復調し、信号処理回路34に供給する。信号処理回路34は、復調回路33で復調された電気信号に対して低雑音増幅、雑音除去、波形整形などの信号処理を施し、I/O回路31を介してウェアラブルコンピュータ等の制御部4に供給する。
【0029】
なお、アンテナ部2、電界検出部32および送信回路37は、RF(Radio Frequency、高周波)部38を構成する。また、復調回路33および変調回路36は、変調・復調部39を構成する。
【0030】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたウェアラブルコンピュータ等の小型コンピュータで構成されている。
【0031】
具体的な使用態様としては、二つの電界通信装置を対にして、一方を設備(自動販売機、駅の改札、PC(Personal Computer)、ドアや門扉など)に設置し、他方となるICカードや携帯電話などを人体10(ユーザ)に所持させる態様が考えられる。このような使用態様によれば、人体10が設備側の電界通信装置に触れることで、セキュリティ認証や課金、位置情報等のデータ収集など、目的に応じた通信を行える。
【0032】
以下に説明する実施形態の場合、ユーザが所持する電界通信装置1は、飲料物などの各種商品を販売する自動販売機50(図2参照)に設置された、電界通信装置として機能するICカードリーダライタ(以下、「ICカードR/W」と称す)51(図2参照)との間で、電子マネー情報を電界通信する。これにより、各種商品の購入時に電子マネーで決済できる。
【0033】
すなわち、ユーザは、電子マネー機能を備える電界通信装置(例えば、電界通信装置を備えたICカードやこのようなICカードが搭載された携帯電話など)を身につけることで、決済に際して当該電界通信装置を取り出すことなく、自身の人体10の一部(指先など)でICカードR/W51に触れることで、人体10を介した電界通信により決済できる。
【0034】
<本発明を適用した電界通信装置>次に、図2を用いて、本発明を適用した電界通信装置1の一実施形態について説明する。図2に示す電界通信装置1は、図1にて説明をした電界通信に係わる基本構成を装置内に含む装置である。なお、図2は、本発明に係る電界通信装置1の要部を概略的に示すブロック図である。同図においては、図1との対応部分に同一符号を付して示し、その構成・作用についてはほぼ同様であることから説明が重複するため、ここでは、便宜上、詳細な説明を割愛する。
【0035】
図2に示す電界通信装置1は、複数種類の電子マネー機能を有するICカードに適用される。この電界通信装置1は、自動販売機50に設置された電界通信装置(ICカードR/W51)との間で、電界通信により、自動販売機50に対応する電界通信方式の電子マネーで決済を行う。また、図2に示す電界通信装置1は、複数の通信方式で通信が可能であって、複数の通信方式の中から、外部から(電界伝達媒体である人体等を介して)受信した電界通信の通信方式を特定して、特定した通信方式で通信する装置である。具体的には、3種類の通信方式に対応する装置であって、ASK変調方式とFSK変調方式の二つの変調方式に対応しており、またASK変調方式は、周波数の異なる2つの通信方式に対応している。なお、これらASK変調方式の2つの通信方式は、以後タイプ1とタイプ2として説明する。
【0036】
上記の通り外部から受信した電界通信の通信方式を特定するために、電界通信装置1は、受信した電界通信の波形を検出する波形検出部100を備えている。この波形検出部100は、第1および第2のコンパレータ101,102と、第1および第2のパルスカウンタ103,104と、を有している。
【0037】
第1のコンパレータ101は、ゼロ電圧を第1の閾値と設定して、電界信号が第1の閾値を超えるタイミングに第1のパルス信号を出力する。第2のコンパレータ102は、ゼロ電圧以外の所定電圧を第2の閾値と設定して、電界信号が第2の閾値を超えるタイミングに第2のパルス信号を出力する。
【0038】
第1のパルスカウンタ103は、第1のコンパレータ101から出力された第1のパルス信号のパルスを予め定められた所定のサンプル期間カウントし、第1のパルス数として出力する。第2のパルスカウンタ104は、第2のコンパレータ102から出力された第2のパルス信号のパルスを予め定められた所定のサンプル期間カウントし、第2のパルス数として出力する。第1のパルス数と第2のパルス数は通信部3のI/O回路31を介して制御部4へと入力される。
【0039】
詳しくは図3を用いて後述するが、制御部4は、以上の波形検出部100から出力される第1のパルス数に対する第2のパルス数の比に基づいて、電界信号の波形を特定して電界信号の変調方式がASK変調方式とFSK変調方式のどちらかを特定する。また、第1のパルス数から受信した電界信号の波形の周波数を求めてASK変調方式のうちタイプ1の方式かタイプ2の方式のどちらかを特定する。
【0040】
変調・復調部39は、上記3種類の電界通信方式に対応した三組の復調回路33および変調回路36を備えている。具体的に、変調・復調部39は、二種類のASK変調方式(タイプ1、タイプ2)と、FSK変調方式と、に対応するタイプ1の通信方式の変調・復調部39aと、タイプ2の通信方式の変調・復調部39bと、FSK変調方式の変調・復調部39cと、を備えている。
【0041】
これら波形検出部100および複数の変調復調部39a,39b,39cは、I/O回路31を介して制御部4に接続されている。
【0042】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、これらを互いに接続するバス40と、を備えている。制御部4は、バス40を介して通信部3のI/O回路31に接続されている。このように構成された電界通信装置1の制御部4は、波形検出部100から入力された第1のパルス数と第2のパルス数の比や周波数を求めて電界信号の電界通信方式を特定し、上記3つの変調・復調部(39a,39b,39c)の中から、特定した電界通信方式に対応する変調・復調部を選択して、受信した電界信号を復調し、送信する情報を特定した電界通信方式に変調することで送受信を実行する。
【0043】
次に、電界通信装置1における電界通信方式の特定の流れについて、図2および図3に基づいて説明する。図3は、各電界通信方式における電界信号およびパルス信号の波形図である。
【0044】
まず、電界通信方式を特定する流れの説明に先立ち、各電界通信方式における電界信号およびパルス信号について、図3を用いて説明する。
【0045】
図3は、ASK変調方式(タイプ1)、ASK変調方式(タイプ2)およびFSK変調方式のそれぞれについて、電界信号の波形、第1のコンパレータ101から出力される第1のパルス信号の波形、および第2コンパレータ102から出力される第2のパルス信号の波形を示す。電界信号の波形は、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示す。第1および第2のパルス信号は、縦軸がオン(「1」)およびオフ(「0」)を示し、横軸が時間を示す。
【0046】
一つ目に、ASK変調方式(タイプ1およびタイプ2)を説明する。ASK変調方式の電界信号は、周波数が一定である。このため、電界信号が入力された第1のコンパレータ101は、電界信号の周期と同じく一定の周期で第1のパルス信号を順次出力する。また、電界信号は、振幅が大と小との二段階で変化する。大きい振幅は、第2のコンパレータ102における第2の閾値より大きく、小さい振幅は、第2のコンパレータ102における第2の閾値より小さい。このため、電界信号が入力された第2のコンパレータ102は、電界信号の振幅が大の場合に、電界信号の周期と同じく一定の周期で第2のパルス信号を順次出力すると共に、電界信号の振幅が小の場合に、第2のパルス信号を出力しない。このようなASK変調方式の電界信号は、所定のサンプル期間における第1のパルス信号のパルス数に対して第2のパルス信号のパルス数の比が1:1にならない。従って、パルス数の比が1:1にならない場合、電界信号は、ASK変調方式の波形であると特定できる。
【0047】
また、タイプ1およびタイプ2は、互いに電界信号の周波数が異なる。このため、第1のコンパレータ101から出力される第1のパルス信号のパルス数は、タイプ1およびタイプ2で互いに異なる。従って、第1のパルス信号のパルス数によって、タイプ1およびタイプ2のいずれかであるかを特定できる。具体的には、単に第1のパルス数に対して予め設定されているタイプ1の基準数とタイプ2の基準数とを比較することでタイプを特定している。または、パルス数から周波数を求めてタイプ1とタイプ2を特定する。
【0048】
二つ目に、FSK変調方式を説明する。電界信号は、振幅が一定である。この振幅は、第2のコンパレータ102における第2の閾値より大きい。このため、電界信号が入力された第1のコンパレータ101および第2のコンパレータ102は、それぞれ、電界信号の周期と略同じ周期で第1のパルス信号、あるいは第2のパルス信号を出力する。このようなFSK変調方式の電界信号は、所定のサンプル期間における第1のパルス信号に対する第2のパルス信号の比が1:1になる。以上からすると、パルス数の比が1:1になる電界信号は、FSK変調方式の波形であると特定できる。
【0049】
図2に戻って説明する。電界通信装置1が自動販売機50のICカードR/W51と電界通信した場合、波形検出部100では、電界検出部32から出力された電界信号が第1および第2のコンパレータ101,102に入力される。電界信号が入力された第1のコンパレータ101は、パルスカウンタ103に対して第1のパルス信号を出力する。電界信号が入力された第2のコンパレータ102は、パルスカウンタ104に対して第2のパルス信号を出力する。第1のパルス信号が入力されたパルスカウンタ103は、サンプル期間におけるパルス数をカウントする。第2のパルス信号が入力されたパルスカウンタ104は、サンプル期間におけるパルス数をカウントする。
【0050】
制御部4は、波形検出部100から出力された検出結果を、I/O回路31、バス40を順次介してCPU41へ入力する。CPU41は、波形検出部100による検出結果に基づいて、電界通信方式を判別する。
【0051】
具体的には、制御部4は、第1のパルス信号のパルス数に対する第2のパルス信号のパルス数の比に基づいて、変調方式を判別する。制御部4は、パルス数の比が1:1ではない場合、ASK変調方式であると判別すると共に、パルス数の比が1:1の場合、FSK変調方式であると判別する。
【0052】
また、制御部4は、ASK変調方式であると判別する場合、第1のパルス信号のパルス数に基づいて、ASK変調方式のタイプ1であるかタイプ2であるかを判別する。
【0053】
次に、電界通信装置1を用いて電子マネー決済する場合において、電界通信方式を判別する処理について、図4を用いて説明する。なお、図4は、通信方式判別処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
CPU41は、電界通信装置1を所持するユーザが自動販売機50の商品選択ボタン等に触れることで、ICカードR/W51との電界通信を開始し、図4に示す通信方式判別処理を実行する。まず、ICカードR/W51から代金の引き落とし要求、および当該要求された代金の金額情報を電界信号として受信すると(ステップS1)、ステップS2に移行して受信した電界信号に基づいて、当該電界信号の振幅が安定したか否かを判断する。このとき、電界信号の振幅が安定しない場合、当該振幅が安定するまで、このルーチンを繰り返す。一方、このステップS1において、電界信号の振幅が安定すると、ステップS3に移行して、第1および第2のパルスカウンタ103,104をクリアする。
【0055】
ステップS4に移行して、第1および第2のコンパレータ101,102から出力される第1および第2のパルス信号を、第1および第2のパルスカウンタ103,104で一定期間サンプリングする。ステップS5に移行して、第1および第2のパルスカウンタ103,104でカウントした第1および第2のパルス信号のパルス数を比較する。
【0056】
ステップS6に移行して、ステップS5における比較結果に基づいて、電界信号がASK変調方式であるか否かを判別する。ステップS6において、ASK変調方式であると判断した場合、ステップS7に移行する。
【0057】
ステップS7では、第1のパルスカウンタ103でカウントした第1のパルス信号のパルス数に基づいて、電界信号の周波数を算出する。ステップS8に移行して、ステップS7において算出したパルス信号の周波数が、設定されている通信方式、すなわちタイプ1またはタイプ2をサポートしているか否か判断する。ステップS8において、サポートしていると判断した場合、ステップS9に移行する。一方、ステップS8において、サポートしていない場合、ステップS1に戻って再びこのルーチンを繰り返す。
【0058】
ステップS6において、ASK変調方式でないと判断した場合、ステップS10に移行する。ステップS10に移行して、ステップS5における比較結果に基づいて、変調方式がFSK変調方式であるか否かを判断する。ステップS10において、FSK変調方式であると判断した場合、ステップS9に移行する。一方、ステップS10において、FSK変調方式でないと判別した場合、ステップS1に戻って再びこのルーチンを繰り返す。
【0059】
ステップS9では、ステップS8またはステップS10において変調・復調部39a,39b,39cの中から特定した電界通信方式に対応する変調・復調部39を選択する。ステップS11に移行して、電界信号の送受信を開始する。
【0060】
以上、説明したように、本発明によれば、受信した電界信号の電界通信方式の種別を特定し、かつ特定された電界通信方式に基づいて、送信する情報を電界信号に変調し、受信した電界信号を復調するので、単一の電界通信装置で方式の異なる通信が可能になる。
【0061】
以上、本発明を実施形態により詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も本発明の範囲に含まれるものである。
【0062】
すなわち、上記実施形態において、各構成要素の数量は適宜変更できる。例えば、変調・復調部39における復調回路33および変調回路36の数量が挙げられる。
【符号の説明】
【0063】
1 電界通信装置
2 アンテナ部
3 通信部
4 制御部(判別部)
10 人体(電界通信媒体)
21,22 電極
23 絶縁膜
31 I/O回路(入出力回路)
32 電界検出部
33 復調回路
34 信号処理回路
35 レベル調整回路
36 変調回路
37 送信回路
38 RF部
39,39a,39b,39c 変調・復調部
40 バス
41 CPU
42 ROM
43 RAM
50 自動販売機
51 ICカードリーダライタ(ICカードR/W)
100 波形検出部
101 第1のコンパレータ
102 第2のコンパレータ
103 パルスカウンタ
104 パルスカウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触した電界伝達媒体に対して電界を誘起させて、前記電界を利用した電界信号の形式で情報を送受信するアンテナ部と、
前記アンテナ部を介して受信した電界信号の波形を検出する波形検出部と、
前記波形検出部の検出結果に基づいて、電界通信方式の種別を特定する判別部と、
前記判別部によって特定された電界通信方式に基づいて、前記受信した電界信号を復調すると共に、前記アンテナ部を介して送信する情報を前記特定された電界通信方式の電界信号に変調する変調・復調部と、を備えることを特徴とする、
電界通信装置。
【請求項2】
前記判別部は、前記波形検出部の検出結果に基づいて、電界信号の変調方式を求めて、該求めた変調方式に基づいて電界通信方式の種別を特定することを特徴とする、
請求項1に記載の電界通信装置。
【請求項3】
前記波形検出部は、ゼロ電圧を第1の閾値と設定して、電界信号が前記第1の閾値を超えるタイミングに第1のパルス信号を出力する第1のコンパレータと、ゼロ電圧以外の所定電圧を第2の閾値と設定して、電界信号が前記第2の閾値を超えるタイミングに第2のパルス信号を出力する第2のコンパレータと、前記第1のパルス信号のパルス数をカウントする第1のパルスカウンタと、前記第2のパルス信号のパルス数をカウントする第2のパルスカウンタと、を有し、
前記判別部は、前記第1のパルス信号のパルス数に対する前記第2のパルス信号のパルス数の比に基づいて、電界信号の変調方式を特定することを特徴とする、
請求項2に記載の電界通信装置。
【請求項4】
前記判別部は、前記波形検出部から出力される前記第1のパルス信号のパルス数に基づいて、前記受信した電界通信の波形の周波数を求め、該周波数および前記特定した変調方式に基づいて、電界通信方式の種別を特定することを特徴とする、
請求項3に記載の電界通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−134701(P2012−134701A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284114(P2010−284114)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)