説明

電着塗料中での次硝酸ビスマスの使用

塩基性硝酸ビスマスを含有するカチオン析出可能な電着塗料において、この場合、この電着塗料は、反応性官能基を有する少なくとも1種のバインダー及び熱架橋反応を開始することが可能な補助的反応性官能基を有する少なくとも1種の架橋剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマス化合物を含有するカチオン析出可能な電着塗料、当該電着塗料の製造方法及びその使用に関する。
【0002】
特許文献から、電着塗料を製造するために多くの例が知られている。その際、特に錫−及び/又はビスマス化合物は、架橋触媒として使用される。これに関して近年、ビスマス化合物が、架橋触媒として好ましくは使用され、それというもその高い活性に加えて、錫化合物と比較して少ない毒性を有するためである。イソシアネート基及びヒドロキシル基から成るウレタン構造形成の際の、触媒としてのビスマス化合物の使用は、以前から知られている(J.H. Saunders and K.C. Frisch,Polyurethanes, Chemistry and Technology aus High Polymers, Vol.XVI, Part 1, Interscience Publishers, a division of John Wiley and Sons, New York, 4th Printing, July 1967, Seite 167)。しかしながら、電着塗料の製造の際の触媒としてのビスマス化合物の使用は、従来、極めて制限されてきた。EP 0 642 558では、電着塗料の使用のために考えられるビスマス化合物が顕著に制限されており、それというのも、長鎖の酸の容易に使用可能な塩、たとえばビスマスオクタノエート及びビスマスネオデカノエートが、カチオン性バインダー中での使用の際に、油状分離による障害を引き起こすためである。これ以外には、無機のビスマス化合物が、バインダー又は顔料ペースト中へ混合導入により分散困難であり、かつ、この形ではわずかにのみ触媒的であるためである。EP 0 739 389において、電着塗料を用いて耐腐食性塗膜を製造するための簡単な方法が記載されており、その際、電着塗料はビスマスラクテート又はビスマスジメチルプロピオネートを含有する。さらに他の可能なビスマス化合物が挙げられているが、しかしながらここではより詳細な記載はなく、特に実施例では、乳酸及びジメチルプロピオン酸の塩のみを使用する。次硝酸ビスマスについては挙げられていない。アミノ酸(EP 0 927 232)又はアルカンスルホン酸(EP 1 163 302)をベースとする他のビスマス錯体は、電着塗料中の良好に使用可能かつ安定な触媒系として記載されている。電着塗料の耐腐食性を改善するために、DE100 01 222 A1ではコロイダルビスマスの使用が挙げられている。このドイツ特許では、脂肪族カルボン酸のビスマス塩を使用する。有機カルボン酸のビスマス塩の他の使用は、DE 44 34 593 A1の電着塗料において記載されている。この耐腐蝕性塗料を使用する場合には、毒性の成分を本質的に回避しなければならない。DE 102 36 350 A1において、次サリチル酸ビスマスを含有する電着塗料が記載されており、この場合、この塗料は良好な延び具合を有し、表面欠陥を生じることなく、かつ良好な耐腐食性を保証するものである。しかしながら、この公知の電着塗料は、十分な架橋を達成するために、かなり高い焼き付け温度を要求する。
【0003】
本発明の課題は、ビスマス化合物を含有する新規の電着塗料を見出すことであり、その際、本発明による電着塗料中での架橋反応は、可能な限り低い焼き付け温度で生じなければならない。
【0004】
驚くべきことに、架橋触媒として塩基性硝酸ビスマス(たとえば次硝酸ビスマス)を使用する場合に、支持体上に析出した塗膜の焼き付けが低い温度で可能であることが見出された。
【0005】
したがって本発明の対象は、冒頭に挙げられた種類の電着塗料であり、この場合、これはビスマス化合物が、塩基性硝酸ビスマスであることを特徴とする。
【0006】
技術水準を顧慮すれば、本発明の課題が塩基性硝酸ビスマスの使用により解決されることは驚異的であり、かつ当業者であっても予測できるものではない。特に驚くべきことに、本発明による電着塗料は簡単に製造され、貯蔵安定性であり、分散された成分の最適化された粒径を示し、かつ極めて良好に濾過可能である。これは、簡単な方法で問題なく電気泳動的に導電性支持体上に析出させることができる。得られた電着塗膜は、良好な延び具合を有し、表面障害およびピンホール(Stippen)なしに、かつ優れた耐腐食性及びエッジ保護性(Kantenschutz)を提供する。
【0007】
EP 151 0558 B1及びEP 1 518 906には、電着塗料製造のために多くの異なる金属塩、特に、硝酸のビスマス塩も使用されている。しかしながら、双方の特許文献には、塩基性硝酸ビスマスの使用は記載されていない。前記EP特許文献は、架橋触媒としての硝酸のビスマス塩の添加によって焼き付け温度が低くなることについては全く開示されていない。さらに硝酸ビスマスは、本出願において使用された水不溶性次硝酸ビスマスとは対照的に水溶性である。溶解したビスマス塩は、電着塗料中でいくつかの欠点を示す。溶解した塩は限外濾過において収容され、したがってこの方法では連続的に電着塗料から取り出される。さらに、ボディーの前処理により外来イオンが電着塗料浴中に連行されうる。この外来イオンは、溶解性のビスマス触媒を失活させうる(EP 1 342 757)。
【0008】
本発明による電着塗料は、好ましくは5〜50質量%、特に5〜35質量%の固体含量を有する。これに関して固体とは、電着塗料から製造された電着塗膜に構成する電着塗料の割合であると理解される。本発明による電着塗料は、少なくとも1個のバインダーを含有する。
【0009】
バインダーは反応性官能基を含有し、この場合、これは、架橋剤中に存在する補助的な反応性官能基と一緒になって熱的架橋反応を開始することができる。
【0010】
このバインダーは、カチオン基及び/又は潜在的にカチオン性の基を含有する。この種類のバインダーは、カチオン析出可能な電着塗料中で使用される。
【0011】
適した潜在的にカチオン性の基の例は、この場合、中和剤及び/又は四級化剤によりカチオンに変換することができるものであって、第1級、第2級又は第3級のアミノ基、第2級のスルフィド基又は第3級のホスフィン基であり、特に第3級のアミノ基又は第2級のスルフィド基である。
【0012】
適したカチオン基の例は、第1級、第2級、第3級又は第4級のアンモニウム基、第3級スルホニウム基又は第4級ホスホニウム基であり、好ましくは第4級アンモニウム基又は第3級スルホニウム基であり、しかしながら特には第4級アンモニウム基である。
【0013】
潜在的にカチオン性の基のための適した中和剤の例は、鉱酸及び有機酸、たとえば硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、ジメチルプロピオン酸、クエン酸又はスルホン酸、例えばアミドスルホン酸及びアルカンスルホン酸、たとえばメタンスルホン酸であり、特にギ酸、酢酸又は乳酸である。
【0014】
電着塗料のための適したバインダーの例は、EP 0 082 291 A 1、EP 0 234 395 A 1、EP 0 227 975 A 1、EP 0 178 531 A 1、EP 0 333 327、EP 0 310 971 A 1、EP 0 456 270 A 1、US 3,922,253 A、EP 0 261 385 A 1、EP 0 245 786 A 1、EP 0 414 199 A 1、EP 0 476 514 A 1、EP 0 817 684 A 1、EP 0 639660A 1、EP 0 595 186 A 1、DE 41 26 476 A 1、WO 98/33835、DE 33 00 570 A 1、DE 37 38 220 A 1、DE 35 18 732 A 1又はDE 196 18 379 A 1から公知である。これに関して好ましくは、第1級、第2級、第3級又は第4級のアミノ基又はアンモニウム基及び/又は第3級スルホニウム基を含有する樹脂であり、その際、アミン数は好ましくは20〜250mg/KOHであり、かつ、質量平均分子量は300〜10000ダルトンである。特に、アミノ(メタ)アクリレート樹脂、アミノエポキシド樹脂、末端二重結合を有するアミノエポキシド樹脂、第1級及び/又は第2級ヒドロキシル基を有するアミノエポキシド樹脂、アミノポリウレタン樹脂、アミノ基含有ポリブタジエン樹脂又は改質化エポキシド樹脂−二酸化炭素−アミン−反応生成物を使用する。
【0015】
適した反応性官能基の例は、ヒドロキシル基、チオール基及び第1級及び第2級のアミノ基であり、特にヒドロキシル基である。
【0016】
適した補助的反応性官能基の例は、ブロックドイソシアネート基である。
【0017】
架橋剤として、すべての通常かつ公知の架橋剤が考慮され、この場合、これは、適した補助的反応性官能基を含有する。好ましくは、ブロックドポリイソシアネート、メラミン−ホルムアルデヒド−樹脂、トリス(アルコキシカルボニル−アミノ)トリアジン及びポリエポキシドから成る基からの架橋剤を選択する。好ましくは、ブロックドポリイソシアネート及び高反応性メラミン−ホルムアルデヒド−樹脂から成る群からの架橋剤を選択する。特に好ましくは、ブロックドポリイソシアネートを使用する。
【0018】
ブロックドポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は脂肪族結合イソシアネート基を有する通常かつ公知のラッカーポリイソシアネートから製造される。
【0019】
適したラッカーポリイソシアネートの例は、たとえば、"Methoden der organischen Chemie"、Houben-Weyl、14/2巻、第4版、Georg Thieme Verlag、Stuttgart 1963、第61頁〜第70頁及びW. Siefken, Liebigs Annalen der Chemie、第562巻、第75頁〜第136頁に記載されている。
【0020】
適したラッカーポリイソシアネートの他の例は、イソシアヌレート基、ビュレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、尿素基、カルボジイミド基及び/又はウレトジオン基を有するポリイソシアネートであり、この場合、これは、常用及び公知のジイソシアネートから得ることができる。好ましくはジイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(BIC)、ダイマー脂肪酸から誘導されたジイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチル−オクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチル−ヘプタン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサン、2,4−及び/又は2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート又はこれらのポリイソシアネートからの混合物を使用する。
【0021】
ブロックドポリイソシアネートを製造するための適したブロッキング剤の例は、
i)フェノール、たとえばフェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、これら酸のエステル又は2,5−ジ−tert.−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;
ii)ラクタム、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム又はβ−プロピオラクタム;
iii)活性メチレン性化合物、たとえばジエチルマロネート、ジメチルマロネート、アセト酢酸エチルエステル又はアセト酢酸メチルエステル又はアセチルアセトン;
iv)アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、t−アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、グリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸、乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロムヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−シクロヘキシルジメタノール又はアセトシアンヒドリン;
v)メルカプタン、例えばブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプロベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール又はエチルチオフェノール;
vi)酸アミド、例えばアセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド又はベンズアミド;
vii)イミド、たとえばスクシンイミド、フタルイミド又はマレインイミド;
viii)アミン、例えばジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン又はブチルフェニルアミン;
ix)イミダゾール、たとえばイミダゾール又は2−エチルイミダゾール;
x)尿素類、たとえば尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素又は1,3−ジフェニル尿素;
xi)カルバメート、例えばN−フェニルカルバミド酸フェニルエステル又は2−オキサゾリドン;
xii)イミン、例えばエチレンイミン;
xiii)オキシム、例えばアセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセタトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノキシム、ベンゾフェノキシム又はクロロヘキサノキシム;
xiv)硫黄含有酸の塩、たとえば亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素カリウム;
xv)ヒドロキサム酸エステル、例えばベンジルメタクリロヒドロキサメート(BMH)又はアリルメタクリロヒドロキサメート;又は
xvi)置換ピラゾール、イミダゾール又はトリアゾール;並びに
xvii)1,2−ポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール;
xviii)2−ヒドロキシエステル、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート;
xix)これらブロック剤の混合物、
である。
【0022】
本発明によれば、本発明による電着塗料は、実験式4(BiNO(OH))BiO(OH)の次硝酸ビスマスを含有する。DAB7によるビスマス含量は71〜74質量%を有する。次硝酸ビスマスは市販の化合物であり、かつ、たとえばMCP HEK GmbH、Luebeckで販売されている。好ましくは、本発明による電着塗料は、その固体に対して0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜4質量%及び特に好ましくは0.2〜3質量%の次硝酸ビスマスを含有する。
【0023】
さらに本発明による電着塗料は、次硝酸ビスマスとは異なる触媒、顔料、クレーター防止用添加剤、ポリビニルアルコール、熱硬化性反応希釈剤、分子分散性溶解性染料、光保護剤、たとえばUV吸収剤及び可逆性ラジカル捕捉剤(HALS)、抗酸化剤、低沸点及び高沸点の("ロング")有機溶剤、脱気剤、湿潤剤、乳化剤、滑剤、重合阻害剤、熱不安定性ラジカル開始剤、定着剤、流れ調整剤、膜形成助剤、難燃剤、腐蝕防止剤、易流動性助剤、ワックス、乾燥剤、殺生剤を、有効量で含有することができる。
【0024】
適した添加剤の他の例は、Lehrbuch ≫Lackadditive≪ von Johan Bieleman、Wiley-VCH, Weinheim, New York, 1998, in D. Stoye und W. Freitag(編者)、≫Paints, Coatings and Solvents≪, Second, Completely Revised Edition, Wiley-VCH, Weinheim, New York, 1998, ≫14.9 Solvent Groups≪、第327頁〜第373頁に記載されている。
【0025】
好ましくは、顔料を添加剤として使用する。好ましくは、顔料は、常用かつ公知の有機及び無機の着色顔料、効果顔料、導電性顔料、防磁顔料、蛍光顔料、増量顔料及び耐腐蝕性顔料から成る群から選択される。
【0026】
本発明による電着塗料は、前記成分の混合及びホモジナイズによって及び場合によっては常用かつ公知の混合方法及び装置、たとえば攪拌槽、攪拌ミル、押出機、ニーダー、ウルトラターラックス、インラインディソルバー、スタティックミキサ、マイクロミキサ、歯付円板型分散機(Zahnkranzdispergatoren)、加圧ノズル及び/又はマイクロ流動化装置を用いて製造する。これに関して、顔料は、好ましくは顔料ペースト又は顔料調製物の形で、電着塗料中に導入する(Rompp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, ≫Pigmentpraparationen≪, Seite 452を参照)。本発明により使用された次硝酸ビスマスの他の特別な利点は、顔料ペースト及び本発明による電着塗料中において極めて良好に混合することができる点である。
【0027】
本発明による電着塗料は、通常は、導電性支持体、たとえば導電性であるか、あるいは、導電的に製造されたもの、たとえば金属化により導電性にされたプラスチック支持体であるか、あるいは、特に金属性の支持体上でカチオン析出することができる。したがって本発明は、相当する支持体上に、本発明による電着塗料をカチオン析出させる方法に関する。金属性支持体として、全ての通常の金属から成る部分、たとえば自動車工業において通常の金属部品、特に車体及びその部品を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による電着塗料(ETL1)及び比較例(ETL2)の種々の焼き付け温度での結果を示す図
【0029】
以下、本発明を、実施例及び比較例に基づいて詳細に説明する。
【0030】
実施例1:
1.1 架橋剤V1の製造(=DE19703869からの例1)
還流冷却器、内部温度計及び不活性ガス導入管を備えた反応器中に、NCO−当量(Equivalentgewicht)135を有する4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートをベースとする異性体及び高官能性オリゴマー1084部(Basonat(R) A270 BASF AG)を窒素雰囲気下に装入した。0.6部のジブチル錫ジラウレートを添加し、かつ1314部のブチルジグリコールを、70℃を下廻る生成物温度を維持する程度の速度で滴加した。この温度をさらに120分に亘って70℃に維持した。後の検査時において、NCO基はもはや検出することができなかった。70℃に冷却した。固体含量は>97%であった。
【0031】
1.2 水性バインダー分散液D1の製造(=DE19703869からの例2.3)
還流冷却器、内部温度計及び不活性ガス導入管を備えた反応器中で、188.94部のフェノール、228部のビスフェノールAからの、エポキシド当量(EEW)を有するビスフェノールAをベースとする市販のエポキシド樹脂1128部を装入し、かつ窒素下で130℃に加熱した。攪拌下で1.5gのトリフェニルホスフィンを添加し、それに対して発熱反応が生じ、かつ温度は160℃に上昇した。さらに130℃に冷却し、その後にEEWを検査した。理論値は478である。さらに15.7部のPlastilit 3060 (BASF AG)を冷却しながら添加した。95℃で115.5部のジエタノールアミンを添加し、これに対して発熱反応が生じた。40分後に、61.2部のN,N−ジメチルアミノプロピルアミンを添加した。短時間の発熱(140℃)後に、このバッチを2時間に亘って130℃で、粘度が一定に維持されるまで後反応させた。
【0032】
生じる反応混合物中に、迅速に97.6部のブチルグリコール及び812部の70℃に加熱した架橋剤V2の溶液を攪拌導入し、かつ105℃に達した。
【0033】
2400部の生じた混合物を、2173部の脱塩水及び49.3部の氷酢酸からなる予め装入された混合物中に、即時に分散させた。さらに751部の脱塩水を添加した後に、以下の固有値を有する安定した分散液が得られた:
【表1】

【0034】
1.3 練磨型樹脂溶液(Reibharzloesung)R1の製造
EP505445B1にしたがって、例1.3は、練磨型樹脂溶液を製造し、この場合、これは、付加的に2.82部の氷酢酸及び13.84部のVE−水で中和し、かつ希釈することにより、操作性を改善させた。そのため、最初の固体含量は60%減少させた。
【0035】
1.4 水性顔料ペーストの製造
1.4.1 顔料ペーストP1(本発明による顔料ペースト)
以下の成分を順々に高速ディソルバー攪拌装置に供給し、かつ30分に亘って混合した:
【表2】

【0036】
引き続いてこの混合物を、実験室用攪拌ミル中に1〜2時間に亘って12μmのヘグマンF単位(Hegman-F単位)になるまで分散させ、かつ場合によっては、さらに水を用いて、望ましい加工粘度に調整した。
【0037】
1.4.2 顔料ペーストP2(比較例)
1.4.1による方法にしたがって、顔料ペースト2を製造したが、但し、次硝酸ビスマスの代わりに6.0部の次サリチル酸ビスマス(Bi含量56〜59%、HEK-Luebeck)を添加した。
【0038】
1.5 電着塗料の製造
カチオン析出可能な電着塗料について試験するために、前記水性バインダー分散液及び顔料ペーストを以下の表にしたがって組み合わせた。その際、バインダー分散液を予め装入し、かつ脱イオン水を用いて希釈する方法でおこなった。引き続いての攪拌下で、顔料ペーストを供給した。示された値は質量部に相当する。
【0039】
【表3】

【0040】
2. 電着塗料の試験
本発明による電着塗料浴は、24時間に亘って室温で攪拌しながら老化させた。電着塗料の析出は、カチオンに帯電したリン酸亜鉛処理された鋼板上で実施した。析出時間は、32℃の浴温度で120秒であった。析出電圧は、焼き付けられた塗膜の層厚が20μmになる程度に選択された。
【0041】
析出した塗膜は、脱イオン水を用いてリンスされ、かつ設定された目的温度で15分焼き付けた。
【0042】
焼き付けられた塗膜の架橋状態を試験するために、溶剤としてのブタノン(メチルエチルケトン)に対する耐性を、DIN EN 1352311(摩擦試験)により測定した。さらに塗膜の顕著な損傷が認められるダブルストローク(Doppelhuebe)の数を測定した。100のダブルストロークの最大値の場合に、塗膜は十分なものであると評価された。
【0043】
以下の第1表及び図1は、本発明による電着塗料(ETL1)及び比較例(ETL2)の種々の焼き付け温度での結果を示す。
【0044】
このデータから、本発明による電着塗料における架橋反応が5〜10℃低い焼き付け温度ですでに十分であることが明らかとなった。
【0045】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス化合物が、塩基性硝酸ビスマスであることを特徴とする、少なくとも1種のバインダー及び少なくとも1種の架橋剤並びにビスマス化合物を含有する、カチオン析出可能な電着塗料。
【請求項2】
塩基性硝酸ビスマスが、70質量%〜75質量%のビスマス含量を有する、請求項1に記載の電着塗料。
【請求項3】
塩基性硝酸ビスマスが、実験式4(BiNO(OH))BiO(OH)の次硝酸ビスマスである、請求項1又は2に記載の電着塗料。
【請求項4】
固体含量に対して、0.05〜5質量%の塩基性硝酸ビスマスを含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の電着塗料。
【請求項5】
バインダーがカチオン基を含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の電着塗料。
【請求項6】
反応性官能基がヒドロキシル基である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の電着塗料。
【請求項7】
架橋剤が、ブロックドポリイソシアネートである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の電着塗料。
【請求項8】
顔料、増量剤、湿潤剤及び分散剤、光保護剤及び腐蝕防止剤から成る群からの、少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の電着塗料。
【請求項9】
バインダー、架橋剤およびすべての他の成分を、塩基性硝酸ビスマスと混合する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の電着塗料を製造する方法。
【請求項10】
カチオン電着塗装のための、請求項1から8までのいずれか1項に記載の電着塗料の使用。
【請求項11】
導電性表面を有する支持体のカチオン電着塗装によって、プライマー層を製造するための、請求項1から8までのいずれか1項に記載の電着塗料の使用。
【請求項12】
自動車又は自動車部品の塗装の際の、請求項1から8までのいずれか1項に記載の電着塗料の使用。
【請求項13】
カチオン析出可能な電着塗料中での架橋触媒としての、塩基性硝酸ビスマスの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−536943(P2010−536943A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520484(P2010−520484)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006642
【国際公開番号】WO2009/021719
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】