説明

電着浴、電着システム、及び電着方法

電着浴、電着システム、及び電着方法が提供される。幾つかの実施形態では、前記浴、システム、及び方法を使用して金属合金コーティングを堆積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、電着浴、電着システム、及び電着方法に関する。幾つかの実施形態では、これらの浴、システム、及び方法を使用して金属合金コーティングを堆積させる。
【背景技術】
【0002】
電着は、材料を基板に堆積させるために広く用いられる方法である。電着では普通、電圧を、電着浴中に浸漬させた基板に印加して金属イオン種を浴中で還元し、これらのイオン種が、基板に金属、または金属合金、コーティングの形態で堆積する。当該電圧は、アノードとカソードとの間に電源を使用して印加することができる。アノードまたはカソードのうちの少なくとも一方が、コーティング対象の基板として機能することができる。幾つかの電着プロセスでは、電圧は、パルスめっき、交流めっき、または反転パルスめっきのような複雑な波形として印加することができる。
【0003】
種々の金属コーティング及び金属合金コーティングは、電着を使用して堆積させることができる。例えば、金属合金コーティングは、2種類以上の遷移金属を利用して得られる。タングステン系コーティングは、電着コーティングの一例である。このようなコーティングは、元素Ni,Fe,Co,B,S,及びPのうちの1種類以上の元素を含むタングステン合金とすることができる。これらのコーティングは多くの場合、望ましい特性を示し、これらの特性として、とりわけ、高硬度性、耐摩耗性、高光沢性、耐磨滅性、摺動用途における低摩擦係数を挙げることができる。
【0004】
一般的に、電着浴は1種類以上の金属源だけでなく、堆積プロセス及び/又は結果として得られるコーティングを向上させる添加剤を含む。金属源(群)は、物品に施される金属コーティングの所望の組成に基づいて選択することができる。代表的な添加剤として、とりわけ、濡れ剤(群)、光沢剤(群)、レベリング剤(群)、担体(群)、展延性剤(群)を挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新規の添加剤及び/又は添加剤の新規の組み合わせを開発して、堆積プロセス及び/又は結果として得られるコーティングを更に向上させる必要が継続的に生じている。具体的には、パルスめっき、交流めっき、または反転パルスめっきのような複雑な波形を使用する電着プロセスに効果がある新規の添加剤及び/又は新規の混合添加剤に対する必要が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電着浴及び電着方法について記載される。
1つの態様では、電着浴が提供される。前記電着浴は、タングステンイオン種及び/又はモリブデンイオン種と、第2金属のイオン種と、を含む。前記電着浴は更に、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤を含む。
【0007】
別の態様では、電着浴が提供される。前記電着浴は、タングステンイオン種及び/又はモリブデンイオン種と、第2金属のイオン種と、を含む。前記電着浴は更に、スルホプロピル化ポリアルコキシナフトール化合物を含む濡れ剤を含む。
【0008】
別の態様では、電着浴が提供される。前記電着浴は、タングステンイオン種及び/又はモリブデンイオン種と、第2金属のイオン種と、を含む。前記電着浴は更に、アニオン性
、非イオン性、または両性フルオロカーボン化合物を含む濡れ剤を含む。
【0009】
別の態様では、タングステン系コーティング及び/又はモリブデン系コーティングを電着させる方法が提供される。前記方法では、アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードを浸漬させた電着浴と、前記アノード及び前記カソードに接続される電源と、を設け、 前記電着浴は、タングステンイオン種及び/又はモリブデンイオン種と、第2金属のイオン種と、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤と、を含む。前記方法では更に、前記電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを基板に電着させる。
【0010】
別の態様では、タングステン系コーティング及び/又はモリブデン系コーティングを電着させる方法が提供される。前記方法では、アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードを浸漬させた電着浴と、前記アノード及び前記カソードに接続される電源と、を設け、前記電着浴は、タングステンイオン種及び/又はモリブデンイオン種と、第2金属のイオン種と、スルホプロピル化ポリアルコキシナフトールを含む濡れ剤と、を含む。前記方法では更に、前記電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを基板に電着させる。
【0011】
別の態様では、タングステン系コーティング及び/又はモリブデン系コーティングを電着させる方法が提供される。前記方法では、アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードを浸漬させた電着浴と、前記アノード及び前記カソードに接続される電源と、を設け、前記電着浴は、タングステンイオン種及び/又はモリブデンイオン種と、第2金属のイオン種と、アニオン性、非イオン性、または両性フルオロカーボン化合物を含む濡れ剤と、を含む。前記方法では更に、前記電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを基板に電着させる。
【0012】
別の態様では、タングステン系コーティング及び/又はモリブデン系コーティングを電着させる方法が提供される。前記方法では、アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードを浸漬させた電着浴と、前記アノード及び前記カソードに接続される電源と、を設け、前記電着浴は、タングステンイオン種及び/又はモリブデンイオン種と、第2金属のイオン種と、アルキン化合物を含む光沢剤と、を含む。前記方法では更に、前記電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを基板に電着させ、前記波形は、少なくとも1つの順方向パルスと、少なくとも1つの逆方向パルスと、を含む。
【0013】
別の態様では、電気めっき浴中のアルキニルアルコキシアルカン化合物を分析する方法が提供される。前記方法では、サンプルを、タングステンイオン種及び/又はモリブデンイオン種と、第2金属のイオン種と、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤と、を含む電気めっき浴から採取し、金属化合物を前記サンプルに添加して、金属配位化学種(金属と結合した化学種)を、前記アルキニルアルコキシアルカン化合物を前記金属化合物と反応させることにより形成する。前記方法では更に、前記金属配位化学種を分析する。
【0014】
別の態様では、電気めっき浴中のアルキン化合物を分析する方法が提供される。前記方法では、サンプルを、タングステンイオン種及び/又はモリブデンイオン種と、第2金属のイオン種と、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤と、アルキン化合物を含む補助光沢剤と、を含む電気めっき浴から採取する。前記方法では更に、前記アルキン化合物を前記サンプルから、有機溶媒を前記サンプルに添加することにより抽出し、前記アルキンを酸化剤と反応させて、反応済みアルキンを生成し、前記反応済みアルキンを分析する。
【0015】
本発明の他の態様、実施形態、及び特徴は、以下の詳細な説明から、添付の図面に関連付けて考察することにより明らかになると思われる。添付の図は模式図であり、寸法通りには描いていない。分かり易くするために、全ての構成要素に全ての図において記号を付すということを行なわず、かつ図示が、本発明に関するこの技術分野の当業者による理解を可能にするために必要ではない場合には、本発明の各実施形態の全ての構成要素を示すということも行なっていない。本明細書において参照することにより本明細書に組み込まれることになる全ての特許出願及び特許は、参照することによりこれらの特許文献の内容の全てが本明細書に組み込まれる。相容れない事態が生じる場合には、定義を含む本明細書が優先する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】1つの実施形態による電着システムを示している図。
【図2】1つの実施形態による反転パルス列を含む波形の一例を示しているグラフ。
【図3】(i)単一の順方向パルスを含む第1セグメントと、(ii)反転パルス列を含む第2セグメントと、を含む波形の一例を示しているグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
電着浴及び方法について説明する。これらの浴は、1種類以上の添加剤を含み、これらの添加剤は、所望の特性及び特徴を示すコーティングの堆積を促進し、所望の特性及び特徴として、光沢度、表面平滑性、反射率、硬度、及び延性を挙げることができる。これらのコーティングは、例えばニッケルタングステン合金のようなタングステン合金を含むことができる。幾つかの場合では、これらのコーティングは、タングステンではなく、またはタングステンの他に、モリブデンを含むことができる。以下に更に説明するように、これらの添加剤として、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤、及び/又はスルホプロピル化ポリアルコキシナフトール化合物を含む濡れ剤を挙げることができる。幾つかの実施形態では、アルキン化合物を含む光沢剤を使用する。これらの添加剤は、反転パルスのような複雑な波形を利用する電着プロセスと組み合わせて使用される場合に特に効果的であることが判明している。
【0018】
図1は、1つの実施形態による電着システム10を示している。システム10は電着浴12を含む。以下に更に説明するように、この浴は、コーティングを形成するために使用される金属源群と、1種類以上の添加剤とを含む。アノード14及びカソード16を浴中に浸漬させる。電源18をアノード及びカソードに接続する。使用中、当該電源は、アノードとカソードとの間に電圧差を生じさせる波形を生成する。電圧差によって、金属イオン種の還元が浴中で生じ、この実施形態では、これらのイオン種が、基板としても機能するカソードの上にコーティングの形態で堆積する。
【0019】
図示のシステムは、本発明を限定するために示されているのではなく、かつこの技術分野の当業者には公知の種々の変形を含むことができることを理解されたい。
電着浴は、金属源(群)及び添加剤(群)の流体担体を含む。幾つかの実施形態では、流体担体は水である。しかしながら、とりわけ、溶融塩、極低温溶媒、アルコール浴のような他の流体担体を使用してもよいことを理解されたい。この技術分野の当業者であれば、適切な流体担体を選択することができる。
【0020】
電着浴のpH(水素イオン濃度指数)は、約2.0〜12.0とすることができる。幾つかの場合では、電着浴は、約7.0〜9.0のpHを、または幾つかの場合では、約7.6〜8.4のpHを、または幾つかの場合では、約7.9〜8.1のpHを有することができる。しかしながら、pHは上に挙げた範囲の外側の値としてもよいことを理解されたい。
【0021】
幾つかの場合では、本明細書に記載される電着浴の動作温度は、30〜100℃、40〜90℃、50〜80℃の範囲である、または幾つかの場合では、50〜70℃の範囲である。しかしながら、他の温度範囲も適切であり得ることを理解されたい。
【0022】
これらの浴は、コーティングを所望の組成で堆積させるために適切な金属源を含む。金属合金を堆積させる場合、合金中の金属成分の全てが金属源を浴中に有することを理解されたい。これらの金属源は普通、流体担体中に溶解するイオン種である。以下に更に説明するように、電着プロセス中は、これらのイオン種は、金属または金属合金の形態で堆積してコーティングを形成する。一般的に、全ての適切なイオン種を使用することができる。これらのイオン種は金属塩とすることができる。例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アルミニウム、タングステン酸などを、タングステン源として、タングステンを含むコーティングを堆積させる場合に使用することができる。硝酸ニッケル、炭酸水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケルなどをニッケル源として使用して、ニッケルを含むコーティングを堆積させることができる。幾つかの場合では、これらのイオン種はモリブデンを含むことができる。これらのイオン種は例として提示されているのであり、他の多くの金属源を用いることができることを理解されたい。
【0023】
本明細書において記載されているように、電着浴は、1種類以上の成分(例えば、添加剤)を含むことができ、これらの成分によって、コーティング済み物品を形成する際の浴の性能を向上させることができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、これらの浴は少なくとも1種類の光沢剤を含むことができる。光沢剤は、本明細書において記載される浴に含有させた場合に、形成される金属コーティングの光沢度及び/又は平滑性を向上させるいずれの化学種とすることもできる。幾つかの場合では、光沢剤は中性化学種である。幾つかの場合では、光沢剤は電荷化学種である(例えば、正に帯電したイオン、負に帯電したイオン)。一連の実施形態では、光沢剤は、任意に置換されたアルキル基を含むことができる。幾つかの実施形態では、光沢剤は、任意に置換されたヘテロアルキル基を含むことができる。
【0025】
幾つかの場合では、光沢剤は、アルキニルアルコキシアルカンとすることができる。例えば、光沢剤は、次の化学式を有する化合物を含むことができる:
【0026】
【化1】

【0027】
上の化学式では、nは1〜100の整数であり、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルである。幾つかの場合では、Rは、任意にOHまたはSOで置換されたアルキル基である。幾つかの実施形態では、Rは、化学式(Rを有する基を含み、この場合、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルであり、mは、nが(m−2)以下になるような3〜103の整数である。幾つかの実施形態では、nは1〜5の整数である。幾つかの実施形態では、mは3〜7の整数である。光沢剤の幾つかの特定例として、これらには制限されないが、プロパルギル−オキソ−プロパン−2,3−ジヒドロキシ(POPDH)、及びプロパルギル−3−スルホプロピルエーテルNa塩(POPS)を挙げることができる。他のアルキニルアルコキシアルカンも光沢剤として有用となり得ることを理解されたい。
【0028】
幾つかの場合では、光沢剤はアルキンを含むことができる。例えば、アルキンはヒドロ
キシアルキンとすることができる。幾つかの実施形態では、光沢剤は、次の化学式を有する化合物を含むことができる:
【0029】
【化2】

【0030】
上の化学式では、R及びRは、同じとするか、または異ならせることができ、R及びRの各々は、任意に置換されたH、アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアミノであり、x及びyは、同じとするか、または異ならせることができ、x及びyの各々は、1〜100の整数である。幾つかの場合では、RまたはRのうちの少なくとも一方が、ヒドロキシアルキル基を含む。幾つかの例では、RまたはRのうちの少なくとも一方がアミノ官能基を含む。幾つかの実施形態では、x及びyは、同じとするか、または異ならせることができ、1〜5の整数であり、R及びRのうちの少なくとも一方が、ヒドロキシアルキル基を含む。例示的な実施形態では、アルキンは、2−ブチン−1,4−ジオールである。別の例示的な実施形態では、アルキンは、1−ジエチルアミノ−2−プロピンである。他のアルキンも、光沢剤として本発明に関連する範囲内で有用となり得ることを理解されたい。
【0031】
幾つかの場合では、光沢剤は、ベタインの系に属する分子群から選択することができ、この場合、ベタインは、正に帯電したカチオン性官能基、及び負に帯電したアニオン性官能基から成る中性電荷の化合物である。この場合、ベタインのカチオン側の例は、任意に置換されたアンモニウム基、ホスホニウム基、またはピリジニウム基とすることができ、アニオン側の例は、カルボン酸基、スルホン酸基、または硫酸基とすることができる。これらの官能基は例示であり、本発明を限定するために挙げているのではないことを理解されたい。
【0032】
幾つかの場合では、電着浴は、少なくとも2種類の光沢剤の組み合わせを含むことができる。例えば、1つの浴は、アルキニルアルコキシアルカンを含む光沢剤、及びアルキンを含む第2光沢剤の両方を含むことができる。
【0033】
これらの浴は光沢剤を、0.05g/L〜5g/L、0.05g/L〜3g/L、0.05g/L〜1g/Lの濃度で、または幾つかの場合では、0.01g/L〜1g/Lの濃度で含むことができる。幾つかの場合では、これらの浴は光沢剤を、0.05g/L〜1g/L、0.05g/L〜0.50g/L、0.05g/L〜0.25g/Lの濃度で、または幾つかの場合では、0.05g/L〜0.15g/Lの濃度で含むことができる。この技術分野の当業者であれば、特定の用途における使用に適する光沢剤の濃度、または光沢剤混合物の濃度を選択することができるであろう。
【0034】
この技術分野の当業者であれば、特定の発明における使用に適する適切な光沢剤、または光沢剤の組み合わせを選択することができるであろう。幾つかの実施形態では、アルキニルアルコキシアルカン、アルキン、または他の光沢剤は、電気めっき浴及び電気めっき浴の成分との親和性(例えば、溶解性)を呈するように選択することができる。例えば、光沢剤は、1種類以上の親水性化学種を含むことにより、より大きな親水性が光沢剤に付与されるように選択することができる。これらの親水性化学種は、例えばアミン類、チオール類、アルコール類、カルボン酸類、及びカルボン酸塩類、硫酸塩類、リン酸塩類、ポリエチレングリコール類(PEGs)、またはポリエチレングリコール誘導体類とすることができる。親水性化学種を含めることにより、水への高い溶解性を光沢剤に付与するこ
とができる。例えば、上に説明したR,R、及び/又はRは、ヒドロキシル基または硫酸基を含むように選択することができる。
【0035】
幾つかの場合では、これらの浴は、少なくとも1つの濡れ剤を含むことができる。濡れ剤とは、電着浴とコーティング対象物品の表面との濡れ性を高めることができる全ての化学種を指す。例えば、基板は親水性表面を含むことができ、濡れ剤は、基板と浴との親和性(例えば、濡れ性)を高めることができる。幾つかの場合では、濡れ剤によって、形成される金属コーティング内の欠陥の数を減らすこともできる。濡れ剤は、有機化学種、無機化学種、有機金属化学種、またはこれらの化学種の組み合わせを含むことができる。幾つかの実施形態では、濡れ剤は、電気めっき浴及び電気めっき浴の成分との親和性(例えば、溶解性)を呈するように選択することができる。例えば、濡れ剤は、アミン類、チオール類、アルコール類、カルボン酸類及びカルボン酸塩類、硫酸塩類、リン酸塩類、ポリエチレングリコール類(PEGs)、またはポリエチレングリコール誘導体類を含む1種類以上の親水性化学種を含むことにより、水への濡れ剤の溶解性を高めるように選択することができる。
【0036】
一連の実施形態では、濡れ剤は、任意に置換された芳香族基を含むことができる。例えば、濡れ剤は、1つ以上のアルキル基またはヘテロアルキル基で置換されたナフチル基を含むことができ、これらのアルキル基またはヘテロアルキル基は任意に置換される。
【0037】
幾つかの場合では、濡れ剤は、次の化学式を有するスルホプロピル化ポリアルコキシナフトールを含むことができ、
【0038】
【化3】

【0039】
上の化学式では、Rは、アルキル基またはヘテロアルキル基を含む。幾つかの場合では、Rは、SOのような電荷基を含む。例えば、濡れ剤は、基−(CHSOを含むことができる。幾つかの実施形態では、Rは、化学式(Rを有する基を含むことができ、この化学式では、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルであり、qは1〜100の整数である。例示的な実施形態では、濡れ剤は、Ralufon NAPE 14−90(Raschig GmbH社製)とすることができる。
【0040】
別の一連の実施形態では、濡れ剤は、任意に置換されたフルオロカーボンを含むことができる。フルオロカーボンは、完全に、または部分的にフッ素化することができる。濡れ剤は、アニオン性フルオロカーボン、非イオン性フルオロカーボン、及び両性フルオロカーボンから成るグループから選択することができる。例えば、アニオン性濡れ剤は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩などのようなアニオン性部分で置換されたフルオロカーボンを含むことができる。フッ素化されたアニオン性濡れ剤の一例がC17SONaである。非イオン性濡れ剤は、電気めっき浴中でほとんど解離することがなく、例えばC17−CH−CH−O−(CH−CH−O)−Hである。両性濡れ剤は、少なくとも1つのアニオン性部分及びカチオン性部分を有する。フッ素化された両性濡れ剤の一例がC13−(CH−SO−HN−(CH−N(CH−CH−COOHである。
【0041】
本明細書において記載される添加剤群は、個々に使用する、あるいは、これらの添加剤のいずれかの組み合わせとして使用するという両方の形態で使用することができるので、
コーティング品質を、光沢化、平滑化により、表面孔食が低減する傾向になることにより向上させることができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、電着浴は、更に別の添加剤を含むことができる。例えば、電着浴は、1種類以上の錯化剤を含むことができる。錯化剤とは、溶液中に含まれる金属イオンに配位することができる全ての化学種を指す。錯化剤は、クエン酸イオンのような有機化学種、またはアンモニウムイオンのような無機化学種とすることができる。幾つかの場合では、錯化剤は中性化学種である。幾つかの場合では、錯化剤は電荷化学種(例えば、負に帯電したイオン、正に帯電したイオン)である。錯化剤の例として、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、及び他のアルキルヒドロキシルカルボン酸を挙げることができる。一般的に、錯化剤または錯化剤混合物を電着浴に、10〜200g/Lの濃度範囲に収まるように添加することができ、幾つかの場合では、40〜80g/Lの範囲に収まるように添加することができる。1つの実施形態では、錯化剤はクエン酸イオンである。幾つかの実施形態では、アンモニウムイオンを電気めっき浴に電着浴中に錯化剤として含有させることにより溶液pHを調整することができる。例えば、電着浴は、1〜50g/Lの範囲の、好適には10〜30g/Lの範囲のアンモニウムイオンを含むことができる。
【0043】
この技術分野の当業者であれば、特定の用途における使用に適する光沢剤、濡れ剤、及び/又は他の添加剤の適切な組み合わせを選択することができるであろう。例えば、浴成分を選択するためのスクリーニングテストでは、コーティングを、本明細書において記載される特定の浴組成を使用して、または一連の浴組成を使用して電気めっきし、所望のコーティングまたはコーティング特性を生み出す浴組成を求めるために形成される結果として得られるコーティング(群)を比較する。一連の実施形態では、各浴組成が異なる光沢剤を含む一連の浴組成を使用して一連のコーティングを電気めっきすることができる。次に、結果として得られるコーティングの特性(例えば、外観、安定性など)を分析して、適切な光沢剤を選択することができる。濡れ剤及び/又は他の添加剤を含む他の浴成分を選択するために、同様のスクリーニングテストを用いてもよい。
【0044】
本明細書において使用するように、「alkyl(アルキル)」という用語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基のラジカルを指す。これらのアルキル基は、以下に更に完全に説明するように、任意に置換することができる。アルキル基の例として、これらには限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、2−エチルヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを挙げることができる。「ヘテロアルキル」基はアルキル基であり、この場合、少なくとも1つの原子がヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素、リンなど)であり、これらの原子のうちの残りは、炭素原子である。ヘテロアルキル基の例として、これらには限定されないが、アルコキシ、ポリ(エチレン グリコール)−、アルキル置換アミノ、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、モルホリニルなどを挙げることができる。
【0045】
「alkenyl(アルケニル)」及び「alkynyl(アルキニル)」という用語は、上に説明したアルキル基と類似し、かつ少なくとも1つの二重結合または三重結合をそれぞれ含む不飽和脂肪族基を指す。「heteroalkenyl(ヘテロアルケニル)」及び「heteroalkynyl(ヘテロアルキニル)」とは、本明細書において説明しているように、アルケニル基及びアルキニル基を指し、この場合、1つ以上の原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄など)である。
【0046】
本明細書において使用するように、「substituted(置換された)」という用語は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むと考えられ、「permissib
le(許容可能な)」とは、この技術分野の当業者には公知の化学の原子価則に従うという意味で用いられる。幾つかの場合では、「substituted(置換された)」とは普通、本明細書において説明しているように、水素を置換基で置換することを指す。しかしながら、本明細書において使用するように、「substituted(置換された)」とは、主官能基により分子が識別されるときの主官能基の置換及び/又は変換を含まないので、例えば「置換された」官能基は、置換により、異なる官能基となる。例えば、「置換されたヘテロアルキル」は、ヘテロアルキル部分をずっと含み続ける必要があり、この定義では、置換によって修飾されて、例えばアルキル基になるということはできない。広義には、許容可能な置換基は、有機化合物の非環式置換基及び環式置換基、分岐置換基及び非分岐置換基、炭素環式置換基及びヘテロ環式置換基、芳香族置換基及び非芳香族置換基を含む。例示的な置換基として、例えば本明細書において記載される置換基を挙げることができる。許容可能な置換基は、適切な有機化合物の場合には、1つ以上とすることができ、同じとするか、または異ならせることができる。本発明の目的の場合、窒素のようなヘテロ原子は、本明細書において記載される有機化合物の水素置換基及び/又はいずれかの許容可能な置換基を有することができ、これらの置換基は、ヘテロ原子の原子価を満たす。本発明は、有機化合物の許容可能な置換基によって決して限定されるものではない。
【0047】
置換基の例として、これらには限定されないが、アルキル、アリール、アラルキル、環式アルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アラールコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラールコキシ、アジド、アミノ、ハロゲン、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシ、−カルボキシアミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキシアミドアルキルアリール、カルボキシアミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキシアミドアルキル、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどを挙げることができる。
【0048】
幾つかの態様では、種々の方法を使用して電着浴中の含有物をモニタリングすることができる。例えば、これらの方法では、浴中の光沢剤(群)、濡れ剤(群)、錯化剤(群)などのような添加剤のうちの1つ以上の添加剤の濃度を求めることができる。添加剤(群)の濃度が所望の濃度を下回るか、または上回る場合、浴組成を調整して、濃度が所望範囲に収まるようにすることができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、アルキン(例えば、ヒドロキシアルキン)化合物を含む光沢剤の濃度を求める方法が提供される。幾つかの場合では、当該化合物は、2−ブチン−1,4−ジオールのようなジオールとすることができる。これらの方法では普通、サンプルを電気めっき浴から採取する。幾つかの例では、酸化剤をアルキンと反応させて反応済みのアルキンを生成する。以下に説明するように、反応済みのアルキンを分析することができる。幾つかの方法では、アルキンを、電着浴から採取したサンプルから溶媒(例えば、酢酸ブチルのような有機溶媒)を使用して抽出する。アルキンを含む溶媒は幾つかの場合では、酸化剤(例えば、過マンガン酸カリウム、クロム化合物など)を含む水溶液で処理することにより、反応済みのアルキンを生成し、視認可能な色変化を起こす。幾つかの例では、測色法を使用して、視認可能な色を持つ溶液を、既知の量のアルキンを使用して生成される一連の有色溶液と比較して、電着浴中のアルキンの濃度を求める。電着浴中のアルキンの濃度を求めることにより、電着浴に対する調整を行なって所望濃度のアルキンを生成する。
【0050】
他の実施形態では、本発明は、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤の濃度を求める方法を提供する。幾つかの実施形態では、アルキニルアルコキシアルカン化合物は、POPS及び/又はPOPDのような末端アルキンとすることができる。これらの方法では普通、サンプルを電気めっき浴から採取する。幾つかの方法では、金属化合物をサンプルに添加し、このサンプルがアルキニルアルコキシアルカン化合物と反応して、金属配位化学種(金属と結合した化学種)を形成する。以下に更に説明するように、金属配位化学種を分析することができる。幾つかの方法では、サンプルのpHを、pH7を上回る値(例えば、約pH8)に、金属化合物を添加する前にアルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)を添加することにより調整する。幾つかの方法では、アルキニルアルコキシアルカンは、金属化合物を添加して、金属配位化学種を形成するときに析出させることができ、この化学種は、溶液中の懸濁粒子の形態とすることができる。アルキニルアルコキシアルカンを析出させるために適する金属化合物の幾つかの例が、銀化合物(例えば、硝酸銀)及び/又は銅化合物[例えば、塩化銅(I)]である。懸濁粒子の形態とすることができる金属配位化学種の濁度は、例えば濁度計を使用して測定することができる。濁度対アルキニルアルコキシアルカン濃度を表わす標準曲線は、例えば既知の濃度範囲のアルキニルアルコキシアルカンを含む一連の溶液の濁度値を使用し、濁度値を、アルキニルアルコキシアルカンの既知の濃度に対してプロットすることにより作成することができる。曲線を、線形回帰のような方法を使用して、結果として得られるプロットにフィッティングさせることにより、一般式を導出することができ、アルキニルアルコキシアルカンの未知の濃度を有するサンプル中のアルキニルアルコキシアルカンの濃度を、サンプルの濁度値を式に代入することにより計算することができる。
【0051】
他の例では、電位差測定法を使用して、金属配位化学種を分析することができる。幾つかの方法では、サンプル中の未反応金属化合物の量を電位差滴定法により求め、当該量を使用して、金属化合物がアルキニルアルコキシアルカンと反応することにより形成される金属配位化学種の量を計算する。幾つかの実施形態では、チオシアン酸塩(例えば、チオシアン酸カリウム)溶液を使用して、未反応化合物を含むサンプルを滴定し、金属化合物がアルキニルアルコキシアルカンと反応した後に残留する金属化合物の量を求める。一般的に、金属化合物がアルキニルアルコキシアルカンと反応することにより形成される金属配位化学種の量は、反応中に消費される金属化合物の量に比例し、金属化合物がアルキニルアルコキシアルカンと反応した後に残留する金属化合物の量を、サンプルに添加される金属化合物の初期量から減算することにより計算することができる。金属配位化学種を、濁度を測定することにより分析する場合に関して上に説明したように、消費された滴定液の量に対するアルキニルアルコキシアルカン濃度を表わす類似の標準曲線を作成することができるので、数式により、導出対象のアルキニルアルコキシアルカンの未知の濃度を有するサンプル中のアルキニルアルコキシアルカンの濃度を計算することができる。電着浴中のアルキニルアルコキシアルカンの濃度を求めることにより、電着浴に対する調整を行なって、所望濃度のアルキニルアルコキシアルカンを生成することができる。
【0052】
更に別の実施形態では、濡れ剤の濃度を求める方法が提供される。幾つかの例では、濡れ剤は、Ralufon NAPE 14−90のようなスルホプロピル化ポリアルコキシナフトールを含む。電着浴サンプルは、溶媒(例えば、クロロホルム)及び指示薬溶液と組み合わせることができる。1つの例では、指示薬溶液は、臭化ジミジウム及びパテントブルーのような2つの指示薬色素を含む。サンプル、溶媒、及び指示薬溶液を含む混合液を、視認可能な色変化を観察することができるまで、滴定剤で滴定することができる。幾つかの例では、混合液中の溶媒はピンク色であり、塩化ベンゼトニウム(滴定剤)を混合液に、溶媒が青色になるまで添加する。滴定添加する塩化ベンゼトニウムの量に対する濡れ剤濃度を表わす標準曲線は、例えば既知の濃度範囲の濡れ剤を含む一連の溶液中に滴定添加する塩化ベンゼトニウムの量を使用し、滴定添加する塩化ベンゼトニウムの量を、濡れ剤の既知の濃度に対してプロットすることにより作成することができる。曲線を、線
形回帰のような方法を使用して、結果として得られるプロットにフィッティングさせることにより、一般式を導出することができ、濡れ剤の未知の濃度を有するサンプル中の濡れ剤の濃度を、サンプル、溶媒、及び指示薬溶液の混合液に滴定する塩化ベンゼトニウムの量を式に代入することにより計算することができる。電着浴中の濡れ剤の濃度を求めることにより、電着浴に対する調整を行なって、所望濃度の濡れ剤を生成することができる。
【0053】
一般的に、電着浴は、いずれの電着プロセスにも関連して使用することができる。電着では普通、コーティングを基板に、基板を電着浴に浸漬し、電流が2つの電極の間に、かつ電着浴中に流れることにより、すなわち2つの電極の間の電位差によって流れることにより堆積させる。例えば、本明細書において説明する方法では、アノードと、カソードと、アノード及びカソードを浸漬させた(例えば、アノード及びカソードを濡らす)電着浴と、アノード及びカソードに接続される電源と、を設けることができる。幾つかの場合では、電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを形成することができ、これについては、以下に更に完全に説明する。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの電極をコーティング対象の基板として機能させることができる。
【0054】
電着条件は、電極群の間に印加される電位を変えることにより(例えば、電位制御または電圧制御により)、または流すことができる電流または電流密度を変えることにより(例えば、電流制御または電流密度制御により)変化させることができる。幾つかの実施形態では、コーティングは、直流(DC)めっき、パルス電流めっき、反転パルス電流めっき、またはこれらのめっき法の組み合わせを使用して形成する(例えば、電着させる)ことができる。電圧、電位、電流、及び/又は電流密度のパルス、発振、及び/又は他の変化を電着プロセス中に取り入れることもでき、これについては以下に更に完全に説明する。例えば、制御電圧パルスを、制御電流パルスまたは制御電流密度パルスと交互に印加することができる。一般的に、電着プロセス中に、電位をコーティング対象の基板上に発生させ、印加電圧、電流、または電流密度を変化させて、基板上の電位に変化を与えることができる。幾つかの場合では、電着プロセスにおいて、1つ以上のセグメントを含む波形を使用することができ、各セグメントは、以下に更に完全に説明するように、特定の一連の電着条件(例えば、電流密度、電流期間、電着浴温度など)を含む。
【0055】
幾つかの実施形態では、コーティングまたはコーティングの一部分は、直流(DC)めっきを使用して電着させることができる。例えば、基板(例えば、電極)は、当該基板上に電着させることになる1種類以上の化学種を含む電着浴に浸る(例えば、浸漬する)ように配置することができる。一定の定常電流を電着浴に流して、コーティングまたはコーティングの一部分を基板に形成することができる。
【0056】
幾つかの場合では、電着方法において、電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを電着させる。当該波形は、方形波形、任意形状の非方形波形などを含むいずれの形状を有することもできる。以下に更に説明するように、異なる部分を有するコーティングを形成する場合のような幾つかの方法では、波形は異なるセグメントを有することができ、これらのセグメントを使用して異なる部分を形成する。しかしながら、全ての方法において、異なるセグメントを有する波形を使用する訳ではないことを理解されたい。
【0057】
幾つかの場合では、少なくとも1つの順方向パルス、及び少なくとも1つの逆方向パルスを含む、すなわち「反転パルス列」を含む両極性波形を使用することができる。上に述べたように、本明細書において説明する電着浴は、コーティングを、反転パルス列のような複雑な波形を使用して堆積させるために極めて適している。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの逆方向パルスが、少なくとも1つの順方向パルスの直ぐ後に続く。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの順方向パルスが、少なくとも1つの逆方向パルスの直ぐ後に続く。幾つかの場合では、両極性波形は、複数の順方向パルス及び逆方向パルスを
含む。幾つかの実施形態は、複数の順方向パルス及び逆方向パルスを含む両極性波形を含むことができ、各パルスは特定の電流密度及び期間を有する。幾つかの場合では、反転パルス列を使用することにより、形成されるコーティングの組成及び/又は粒子サイズを変化させることができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、反転パルス列は、順方向電流パルス(群)の期間に亘って積分されたときの順方向(例えば、正の)電流密度が、逆方向電流セグメントの期間に亘って積分された逆方向(例えば、負の)電流密度と同じ絶対値を持つように印加することができる。図2は、反転パルス列の一例を示しており、複数部分Aは、逆方向電流パルス(群)の期間に亘って積分された逆方向電流密度を表わし、複数部分Bは、順方向電流パルス(群)の期間に亘って積分された順方向電流密度を表わす。
【0059】
上に述べたように、幾つかの実施形態は、1つよりも多くのセグメントを有する波形を含むことができ、各セグメントは、特定の一連の電着条件を含む。すなわち、当該波形は、異なるセグメントでは異なっている。例えば、当該波形は、少なくとも1つの順方向パルス、及び少なくとも1つの逆方向パルスを含む1つのセグメント(例えば、両極性波形、または反転パルス列)と、単一の順方向または逆方向パルスを含む別のセグメントと、を含むことができる。幾つかの場合では、単一のパルスを有するセグメントは、反転パルス列を有するセグメントの手前に配置することができる。例えば、図3は、本発明の1つの実施形態による(i)単一の順方向パルスを含む第1セグメントと、(ii)反転パルス列を含む第2セグメントと、を含む波形の一例を示している。幾つかの場合では、第2セグメントは、図2に示す波形と同様である。波形は、第1及び第2セグメントの他に、更に多くのセグメントを有することができることも理解されたい。
【0060】
本発明の方法では、「合金電着物を形成し、合金電着物のナノ構造を、負電流パルス電着を使用して制御する方法、及びこのような電着物を含む物品」と題する米国特許出願公開第2006/02722949号に記載されている方法の特定の態様を利用することができ、この米国特許出願は、本明細書において参照することにより、当該特許出願の内容全体が本明細書に組み込まれる。2007年11月15日に出願され、かつ「ナノ結晶金属または合金、或いはアモルファス金属または合金の表面形態を調整する方法、及びこのような方法により形成される物品」と題する米国特許出願公開第2006/0154084号及び米国特許出願第11/985,569号、及び2008年5月14日に出願された米国特許出願第12/120,564号に記載されている方法を含む他の電着方法の態様も適しており、これらの米国特許出願は、本明細書において参照することにより、これらの特許出願の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0061】
コーティングは、1種類以上の金属を含む。例えば、コーティングは、合金(例えば、ニッケル−タングステン合金)を含むことができる。適切な合金の例は、次の元素群:とりわけ、Ni,W,Fe,B,S,Co,Mo,Cu,Cr,Zn,及びSnのうちの2種類以上の元素を含むことができる。幾つかの場合では、タングステンを含む合金(例えば、ニッケル−タングステン合金)が特に好ましい。合金の幾つかの特定例として、Ni−W,Ni−Fe−W,Ni−B−W,Ni−S−W,Co−W,Ni−Mo,Co−Mo,及びNi−Co−Wを挙げることができる。
【0062】
幾つかの場合では、コーティングは、更に別の相と組み合わせることができる。例えば、金属材料、セラミック材料、金属間材料、または他の材料から成る高硬度粒子をコーティングに含有させることができる。この技術分野の当業者であれば、固体潤滑グラファイト粒子またはMoS粒子のような他の可能な相を含有させてもよいことも理解できるであろう。
【0063】
幾つかの実施形態では、コーティングが、高毒性または他の不具合を有する元素群または化合物群をほとんど含まないことが有利である。幾つかの実施形態では、コーティングが、高毒性または他の不具合を有する化学種を使用して堆積させる元素群または化合物群をほとんど含まないことが有利である。例えば、幾つかの場合では、コーティングは、毒性のあるクロムイオン種(例えば、Cr6+)を使用してクロムを堆積させる場合が多いので、クロム(例えば、酸化クロム)を含まないようにする必要がある。このようなコーティングは、従前のコーティングよりも優れた種々の処理上の、健康上の、及び環境上の利点を実現することができる。
【0064】
コーティングは、特定の用途に適するいずれの厚さを有することもできる。例えば、合計コーティング厚さは、10nm〜1mmとすることができ;幾つかの場合では、100nm〜200μmとすることができ;幾つかの場合では、100nm〜100μmとすることができる。
【0065】
しかしながら、コーティングは、上に挙げた範囲以外の他の厚さを有することもできることを理解されたい。
幾つかの場合では、コーティングは特定の微細構造を有することができる。例えば、コーティングの少なくとも一部分はナノ結晶微細構造を有することができる。本明細書において使用するように、「nanocrystalline(ナノ結晶)」構造とは、結晶粒子の数平均サイズが1ミクロン未満である構造を指す。結晶粒子の数平均サイズは、等しく統計的な重量を各粒子に付与し、等価球状粒子直径群の全ての合計値を、本体の代表体積に含まれる粒子の合計数で割った値として計算される。幾つかの実施形態では、コーティングの少なくとも一部分はアモルファス構造を有することができる。この技術分野において知られているように、アモルファス構造は、長距離対称性を原子位置に持たないことにより特徴付けられる非結晶構造である。アモルファス構造の例として、ガラス構造またはガラス状構造を挙げることができる。幾つかの実施形態は、ナノ結晶構造を、コーティングのほぼ全体に亘って有するコーティングを提供することができる。幾つかの実施形態は、アモルファス構造を、コーティングのほぼ全体に亘って有するコーティングを提供することができる。
【0066】
本明細書において説明するように、種々の基板にコーティングを施してコーティング済み物品を形成することができる。幾つかの場合では、基板は、金属、金属合金、または金属間材料などのような電気伝導性材料を含むことができる。適切な基板は、とりわけ、鋼、銅、アルミニウム、真ちゅう、青銅、ニッケル、導電性表面を有するか、表面処理を施したポリマー、透明導電性酸化物を含む。
【0067】
以下の例は、例示のために提供されるのであり、本発明を限定するものではない。
(実施例)
本発明の幾つかの実施形態を示すために幾つかの実験を行なった。これらの実験では、Ni−W合金コーティングを水溶性電着液で形成した。
【0068】
(実施例1)
この例から、Ni−W合金コーティングを堆積させるためにアルキニルアルコキシアルカンを光沢剤として使用することができることが明らかになる。艶消し仕上げ鋼物品にNi−W合金のコーティングを、電着により水性電着浴から施した。各物品を電着浴に浸漬し、DC電流を、ステンレス鋼製の対向電極群を使用して流した。3アンペア及び60℃で10分間に亘って電着浴を空気撹拌しながら作動する267mL Hull Cell(ハルセル:電解槽)を使用して、コーティング済み物品を形成した。コーティング済み物品は、この方法を使用して、約0アンペア/平方フィート(ASF)〜225ASFの見積もり範囲の電流密度を供給する条件の下で形成された。物品は、この技術分野では公
知の如く、めっき前に化学的に作製された。
【0069】
【表1】

【0070】
溶液Aを、この例に用いた電着浴の塩基性電解液として使用し、アルキニルアルコキシアルカン系の光沢剤を、この電解液に0〜約0.5g/Lの濃度で添加した。ハルセルテストパネルを上述のように、添加剤を含まない溶液Aを用いて作製し、この電解液から形成される結果として得られるNi−W合金コーティングは、電流密度が20ASFよりも低い条件では艶消し状になり/光沢が乏しく、電流密度が20ASFよりも高い条件では、かすんで/艶消し状になった。物品1Aを基準サンプルとして利用して、添加剤を含む電着浴を使用してコーティングされる物品と比較した。
【0071】
物品1B〜Fを、溶液A、及び約0.05〜約0.5g/Lの範囲の濃度のアルキニルアルコキシアルカン添加剤を含む電着浴から作製した。コーティング済み物品の表面仕上げは、添加剤濃度及び電流密度の関数として変化し、添加剤を含む電着浴を使用して作製されたこの例の各コーティング済み物品は、基準サンプル(物品1A)と比較して、電着コーティングの光沢性/平滑性が向上した。この場合、より光沢のあるコーティングが、200ASF電流密度範囲に亘って形成された。濃度が高くなると、低い濃度よりも高い濃度で、より光沢のあるコーティングが形成された。
【0072】
(実施例2)
この例から、Ni−W合金コーティングを堆積させるためにヒドロキシアルキンを光沢剤として使用することができることが明らかになる。この例の物品は、上に説明した例1における方法と同じ方法で作製された。
【0073】
実施例1の物品1Aは、この例の基準として利用した。上に説明したように、この電解液から形成される結果として得られるNi−W合金コーティングは、電流密度が20ASFよりも低い条件では、艶消し状になり/光沢が乏しく、電流密度が20ASFよりも高い条件では、かすんで/艶消し状になった。
【0074】
実施例1の溶液Aを、この例で実際に用いた電着浴の塩基性電解液として使用し、光沢剤をこの電解液に約0.02〜約0.1g/Lの濃度で添加した。
物品2B〜Dを、溶液A、及び約0.02〜約0.1g/Lの範囲の濃度のヒドロキシアルキン添加剤を含む電着浴から作製した。コーティング済み物品の表面仕上げは、添加剤濃度及び電流密度の関数として変化し、添加剤を含む電着浴を使用して作製された例2の各コーティング済み物品は、基準サンプル(物品1A)と比較して、電着コーティングの光沢性/平滑性が向上した。濃度が高くなると、コーティングの光沢性が低電流密度から中電流密度の条件で向上した。
【0075】
(実施例3)
この例から、Ni−W合金コーティングを堆積させるためにベタインを光沢剤として使用することができることが明らかになる。この例の物品は、上に説明した実施例1における方法と同じ方法で作製された。
【0076】
実施例1の物品1Aは、この例の基準として利用した。上に説明したように、この電解液から形成される結果として得られるNi−W合金コーティングは、電流密度が20ASFよりも低い条件では、艶消し状になり/光沢が乏しく、電流密度が20ASFよりも高い条件では、かすんで/艶消し状になった。
【0077】
実施例1の溶液Aを、この例で実際に用いた電着浴の塩基性電解液として使用し、光沢剤をこの電解液に約0.1〜約10g/Lの濃度で添加した。
物品3B〜Eを、溶液A、及び約0.1g/L〜約10g/Lの範囲の濃度のベタイン添加剤を含む電着浴から作製した。コーティング済み物品の表面仕上げは、添加剤濃度及び電流密度の関数として変化し、添加剤を含む電着浴を使用して作製された例3の各コーティング済み物品は、基準サンプル(物品1A)と比較して、電着コーティングの光沢性/平滑性が向上した。濃度が高くなると、コーティングの光沢性が低電流密度から中電流密度の条件で向上した。
【0078】
(実施例4)
この例から、Ni−W合金コーティングを堆積させるためにポリアルコキシル化ナフトールを濡れ剤として使用することができることが明らかになる。この例の物品は、上に説明した例1における方法と同じ方法で作製された。
【0079】
実施例1の物品1Aは、この例の基準として利用した。上に説明したように、この溶液から形成される結果として得られるNi−W合金コーティングは、20ASF未満の電流密度では、艶消し状になり/光沢が乏しく、20ASF超の電流密度では、かすんで/艶消し状になった。
【0080】
実施例1の溶液Aを、この例で実際に用いた電着浴の塩基性電解液として使用し、濡れ剤をこの溶液に0.1〜1g/Lの濃度で添加した。
物品4B〜Fを、溶液A、及びポリアルコキシル化ナフトール及びアニオン性フルオロカーボン系から選択される0.1〜1g/Lの濃度の濡れ剤を含む電着浴から作製した。わずかな光沢が、基準サンプル(物品1A)と比較して、濡れ剤の全ての濃度で認められた。孔食が溶液Aから得られる堆積物に形成されることが判明したコーティング条件を、濡れ剤を使用して、溶液Aに関連付けながら見積もった。濡れ剤を含有させると、コーティングの孔食欠陥が減り、幾つかの場合に、完全に無くなったことが明らかになった。
【0081】
(実施例5)
この例から、Ni−W合金コーティングを堆積させるために2種類の光沢剤を組み合わせて使用することができることが明らかになる。この例の物品は、上に説明した実施例1における方法と同じ方法で作製された。
【0082】
実施例1の物品1Aは、この例の基準として利用した。上に説明したように、この溶液から形成される結果として得られるNi−W合金コーティングは、20ASF未満の電流密度では、艶消し状になり/光沢が乏しく、20ASF超の電流密度では、かすんで/艶消し状になった。
【0083】
実施例1の溶液Aを、この例で実際に用いた電着浴の塩基性電解液として使用し、例1
で使用した光沢剤(0.12,0.5g/L)、例2で使用した光沢剤(0.05g/L)、及び例3で使用した光沢剤(2g/L)を組み合わせて添加した。
【0084】
物品5B〜Eを、溶液A、及びアルキニルアルコキシアルカン添加剤、ヒドロキシアルキン添加剤、及びベタイン添加剤の組み合わせを含む電着浴から作製した。補完的に影響する光沢性/平滑性が、全ての例におけるコーティング済み物品に観察され、実際に用いた添加剤群の組み合わせを含む電着浴を使用して作製された例5の各物品は、基準サンプル(物品1A)、及び実施例1,2,3において説明した光沢剤を1種類しか含まない電着浴を使用して作製されたコーティング済み物品と比較して、堆積済みコーティングの光沢性/平滑性が向上した。
【0085】
(実施例6)
この例から、Ni−W合金コーティングを堆積させるために光沢剤と濡れ剤とを組み合わせて使用することができることが明らかになる。この例の物品は、上に説明した例1における方法と同じ方法で作製された。
【0086】
実施例1の物品1Aは、この例の基準として利用した。上に説明したように、この溶液から形成される結果として得られるNi−W合金コーティングは、20ASF未満の電流密度では、艶消し状になり/光沢が乏しく、20ASF超の電流密度では、かすんで/艶消し状になった。
【0087】
実施例1の溶液Aを、この例で実際に用いた電着浴の塩基性電解液として使用し、光沢剤(例1:0.12g/L,0.24g/L)、及び濡れ剤(例4:0.4g/L)を添加した。
【0088】
物品6B〜Cを、溶液A、及びアルキニルアルコキシアルカン添加剤及びポリアルコキシル化ナフトール添加剤の組み合わせを含む電着浴から作製した。実施例1及び4において示した光沢剤を1種類しか含まない電着浴を使用して作製されたコーティング済み物品と比較すると、表面孔食の低減傾向によって明らかなように、補完的に影響するコーティング品質が、両方の電着浴から作製されたコーティング済み物品に観察された。例6の各物品は、基準サンプル(物品1A)と比較して、堆積済みコーティングの光沢性/平滑性が向上した。
【0089】
(実施例7)
この例から、Ni−W合金コーティングを堆積させるために2種類の光沢剤と1種類の濡れ剤とを組み合わせて使用することができることが明らかになる。この例の物品は、上に説明した例1における方法と同じ方法で作製された。
【0090】
実施例1の物品1Aは、この例の基準として利用した。上に説明したように、この溶液から形成される結果として得られるNi−W合金コーティングは、20ASF未満の電流密度では、艶消し状になり/光沢が乏しく、20ASF超の電流密度がでは、かすんで/艶消し状になった。
【0091】
実施例1の溶液Aを、この例で実際に用いた電着浴の塩基性電解液として使用し、光沢剤(例1:0.12g/L,0.24g/L,0.48g/L;例2:0.075g/L)、及び濡れ剤(例4:0.4g/L)を添加した。
【0092】
物品7B〜Dを、溶液A、及びアルキニルアルコキシアルカン、ヒドロキシアルキン、及びポリアルコキシル化ナフトールの組み合わせを含む電着浴から作製した。実施例1,2,4において説明した光沢剤または濡れ剤を1種類しか含まない電着浴を使用して作製
されたコーティング済み物品と比較すると、実施例5及び6において説明した2種類の添加剤を含む電着浴を使用して作製されたコーティング済み物品と比較すると、補完的に影響する光沢性/平滑性、及び表面孔食の低減傾向が、各電着浴を使用して作製されたコーティング済み物品に観察された。実施例7の各物品は、基準サンプル(物品1A)と比較して、堆積済みコーティングの光沢性/平滑性が向上した。
【0093】
このように、本発明の少なくとも1つの実施形態の幾つかの態様について説明してきたが、この技術分野の当業者であれば、種々の変更、変形、及び改良を容易に想到し得ることを理解されたい。このような変更、変形、及び改良は、本開示の一部となるべきものであり、かつ本発明の思想及び範囲に包含されるべきものである。従って、これまでの説明及び図面は例示に過ぎない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンイオン種又はモリブデンイオン種のうちの少なくとも一方と、
第2金属のイオン種と、
アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤とを含む、電着浴。
【請求項2】
前記第2金属はニッケルである、請求項1に記載の電着浴。
【請求項3】
前記光沢剤は、化学式
【化1】

を有する化合物を含み、nは1〜100の整数であり、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルである、請求項1に記載の電着浴。
【請求項4】
は、OHまたはSOで任意に置換されたアルキル基である、請求項3に記載の電着浴。
【請求項5】
は、化学式(Rを有する基を含み、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルであり、mは3〜103の整数であり、nは(m−2)以下になる、請求項3に記載の電着浴。
【請求項6】
nは1〜5の整数である、請求項3に記載の電着浴。
【請求項7】
mは3〜7の整数である、請求項5に記載の電着浴。
【請求項8】
前記光沢剤はPOPDHを含む、請求項1に記載の電着浴。
【請求項9】
前記光沢剤はPOPSを含む、請求項1に記載の電着浴。
【請求項10】
前記浴は、0.05g/L〜0.15g/Lの前記光沢剤を含む、請求項1に記載の電着浴。
【請求項11】
更に補助光沢剤を含む、請求項1に記載の電着浴。
【請求項12】
前記補助光沢剤は、ヒドロキシアルキン化合物を含む、請求項11に記載の電着浴。
【請求項13】
前記補助光沢剤は、化学式
【化2】

を有する化合物を含み、R及びRは、同じとするか、または異ならせることができ、R及びRの各々は、任意に置換されたH、アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアミノであり、x及びyは、同じとするか、または異ならせることができ、x及びyの各々は1〜100の整数である、請求項11に記載の電着浴。
【請求項14】
またはRのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシアルキル基を含む、請求項13に記載の電着浴。
【請求項15】
x及びyは、同じとするか、または異ならせることができ、1〜5の整数であり、R及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシアルキル基を含む、請求項13に記載の電着浴。
【請求項16】
前記浴は、0.02g/L〜0.1g/Lの補助光沢剤を含む、請求項13に記載の電着浴。
【請求項17】
前記補助光沢剤はベタイン化合物を含む、請求項11に記載の電着浴。
【請求項18】
前記浴は、0.1g/L〜10g/Lの補助光沢剤を含む、請求項17に記載の電着浴。
【請求項19】
前記アルキンは2−ブチン−1,4−ジオールである、請求項13に記載の電着浴。
【請求項20】
更に、濡れ剤を含む、請求項1に記載の電着浴。
【請求項21】
前記濡れ剤は、スルホプロピル化ポリアルコキシナフトール化合物を含む、請求項20に記載の電着浴。
【請求項22】
前記濡れ剤は、アニオン性、非イオン性、または両性フルオロカーボン化合物を含む、請求項20に記載の電着浴。
【請求項23】
前記浴のpHは7〜9である、請求項1に記載の電着浴。
【請求項24】
更に水を含む、請求項1に記載の電着浴。
【請求項25】
更に錯化剤を含む、請求項1に記載の電着浴。
【請求項26】
タングステンイオン種又はモリブデンイオン種のうちの少なくとも一方と、
第2金属のイオン種と、
スルホプロピル化ポリアルコキシナフトール化合物を含む濡れ剤と、
を含む、電着浴。
【請求項27】
前記濡れ剤は、一般化学式SO−C−[O−(R)]−C10Oを有し、Rはアルキル基であり、zは1〜100の整数である、請求項26に記載の電着浴。
【請求項28】
更にアルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤を含む、請求項26に記載の浴。
【請求項29】
前記光沢剤は、化学式
【化3】

を有する化合物を含み、nは1〜100の整数であり、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルである、請求項28に記載の電着浴。
【請求項30】
は、OHまたはSOで任意に置換されたアルキル基である、請求項29に記載の電着浴。
【請求項31】
は、化学式(Rを有する基を含み、Rは、任意に置換されたアルキルまたは
ヘテロアルキルであり、mは3〜103の整数であり、nは(m−2)以下になる、請求項29に記載の電着浴。
【請求項32】
nは1〜5の整数である、請求項29に記載の電着浴。
【請求項33】
mは3〜7の整数である、請求項31に記載の電着浴。
【請求項34】
タングステンイオン種又はモリブデンイオン種のうちの少なくとも一方と、
第2金属のイオン種と、
アニオン性、非イオン性、または両性フルオロカーボン化合物を含む濡れ剤と、
を含む、電着浴。
【請求項35】
前記濡れ剤は、一般化学式SO−C−[O−(R)]−C10Oを有し、Rはアルキル基であり、zは1〜100の整数である、請求項34に記載の電着浴。
【請求項36】
更に、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤を含む、請求項34に記載の電着浴。
【請求項37】
前記光沢剤は、
【化4】

を有する化合物を含み、nは1〜100の整数であり、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルである、請求項36に記載の電着浴。
【請求項38】
は、OHまたはSOで任意に置換されたアルキル基である、請求項37に記載の電着浴。
【請求項39】
は、化学式(Rを有する基を含み、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルであり、mは3〜103の整数であり、nは(m−2)以下になる、請求項37に記載の電着浴。
【請求項40】
nは1〜5の整数である、請求項37に記載の電着浴。
【請求項41】
mは3〜7の整数である、請求項39に記載の電着浴。
【請求項42】
タングステン系コーティング又はモリブデン系コーティングのうちの少なくとも一方を電着させる方法において、
アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードを浸漬させた電着浴と、前記アノード及び前記カソードに接続される電源とを設ける工程を備え、
前記電着浴は、タングステンイオン種又はモリブデンイオン種のうちの少なくとも一方と、第2金属のイオン種と、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤とを含み、前記方法では更に、
前記電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを基板に電着させる工程を備える、
方法。
【請求項43】
前記波形は、少なくとも1つの順方向パルスと、少なくとも1つの逆方向パルスと、を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
タングステン系コーティング又はモリブデン系コーティングのうちの少なくとも一方を電着させるための方法において、
アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードを浸漬させた電着浴と、前記アノード及び前記カソードに接続される電源と、を設ける工程を備え、
前記電着浴は、タングステンイオン種又はモリブデンイオン種のうちの少なくとも一方と、第2金属のイオン種と、スルホプロピル化ポリアルコキシナフトールを含む濡れ剤とを含み、前記方法では更に、
前記電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを基板に電着させる工程を備える、
方法。
【請求項45】
前記波形は、少なくとも1つの順方向パルスと、少なくとも1つの逆方向パルスと、を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
タングステン系コーティング又はモリブデン系コーティングのうちの少なくとも一方を電着させる方法において、
アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードを浸漬させた電着浴と、前記アノード及び前記カソードに接続される電源と、を設ける工程を備え、
前記電着浴は、タングステンイオン種又はモリブデンイオン種のうちの少なくとも一方と、第2金属のイオン種と、アニオン性、非イオン性、または両性フルオロカーボン化合物を含む濡れ剤とを含み、前記方法では更に、
前記電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを基板に電着させる工程を備える、
方法。
【請求項47】
タングステン系コーティング又はモリブデン系コーティングのうちの少なくとも一方を電着させる方法において、
アノードと、カソードと、前記アノード及び前記カソードを浸漬させた電着浴と、前記アノード及び前記カソードに接続される電源とを設ける工程を備え、
前記電着浴は、タングステンイオン種又はモリブデンイオン種のうちの少なくとも一方と、第2金属のイオン種と、アルキン化合物を含む光沢剤とを含み、前記方法では更に、
前記電源を駆動して波形を生成することによりコーティングを基板に電着させる工程を備え、前記波形は、少なくとも1つの順方向パルスと、少なくとも1つの逆方向パルスとを含む、方法。
【請求項48】
前記アルキンはヒドロキシアルキンである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記アルキンはアミノアルキンである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
電気めっき浴中のアルキニルアルコキシアルカン化合物を分析する方法において、
サンプルを、タングステンイオン種又はモリブデンイオン種のうちの少なくとも一方と、第2金属のイオン種と、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤とを含む電気めっき浴から採取する工程と、
金属化合物を前記サンプルに添加して、金属配位化学種を、前記アルキニルアルコキシアルカン化合物を前記金属化合物と反応させることにより形成する工程と、
前記金属配位化学種を分析する工程とを備える、方法。
【請求項51】
前記金属化合物は銀を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記金属化合物は硝酸銀を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記金属化合物は銅を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記金属化合物は塩化銅(I)を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記金属配位化学種の分析では、濁度を測定する、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記金属配位化学種の分析では、電位差測定法を用いる、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記第2金属はニッケルである、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記光沢剤は、化学式
【化5】

を有する化合物を含み、nは1〜100の整数であり、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルである、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
前記光沢剤はPOPDHを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
前記光沢剤はPOPSを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
前記金属配位化学種は金属アセチリドを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
電気めっき浴中のアルキン化合物を分析する方法において、
サンプルを、タングステンイオン種又はモリブデンイオン種のうちの少なくとも一方と、第2金属のイオン種と、アルキニルアルコキシアルカン化合物を含む光沢剤と、アルキン化合物を含む補助光沢剤とを含む電気めっき浴から採取する工程と、
前記アルキン化合物を前記サンプルから、有機溶媒を前記サンプルに添加することにより抽出する工程と、
前記アルキンを酸化剤と反応させて、反応済みアルキンを生成する工程と、
前記反応済みアルキンを分析する工程とを備える、方法。
【請求項63】
前記有機溶媒は酢酸ブチルを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記酸化剤は過マンガン酸塩を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記酸化剤はクロム化合物を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記反応済みアルキンの分析では、比色定量法を用いる、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記アルキンはヒドロキシアルキンを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
前記ヒドロキシアルキンは2−ブチン−1,4−ジオールである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記第2金属はニッケルである、請求項62に記載の方法。
【請求項70】
前記光沢剤は、化学式
【化6】

を有する化合物を含み、nは1〜100の整数であり、Rは、任意に置換されたアルキルまたはヘテロアルキルである、請求項62に記載の方法。
【請求項71】
前記光沢剤はPOPDHを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項72】
前記光沢剤はPOPSを含む、請求項62に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−508322(P2012−508322A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535556(P2011−535556)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/005967
【国際公開番号】WO2010/053540
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(508341245)エクスタリック コーポレイション (4)
【氏名又は名称原語表記】XTALIC CORPORATION
【Fターム(参考)】